説明

積層構造体

【課題】オレフィン系重合体を含む層と、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、両層を強力に接着せしめる接着剤を介して積層された、積層構造体を提供すること。
【解決手段】(A)オレフィン系重合体を含む層、(B)ポリオレフィンセグメント[S]と、極性ポリマーセグメント[S]とを有するハイブリッドポリマー[P]を含む層、(C)芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、この順に積層している構造を少なくても一部に有し、層(C)を構成する樹脂の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が18.5以上21未満であり、[S]が実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーから構成され、かつ[S]の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が19以上21未満であることを特徴とする積層構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機重合体層又は無機物質層が積層している積層構造体に関する。詳しくは、本発明は、オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層と、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、特定のハイブリッドポリマーを含む層を介して接着されている積層構造を少なくとも一部に有している積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン系樹脂などの基材に、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などの極性基含有樹脂の基材を積層するための接着剤として、スチレン・共役ジエン・スチレン系ブロック共重合体の水添物に無水マレイン酸をグラフト重合させた変性ブロック共重合体、また、該重合体と粘着付与材とからなる接着剤樹脂組成物、または該重合体と溶媒からなる接着剤が知られている(特許文献1、2、3)。しかし、これらの接着剤の接着力は十分でない。この原因として、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などは一般に反応性が劣り、従来汎用的に使用されている無水マレイン酸やエポキシといった反応基をグラフトしたポリオレフィンでは積層構造体の成形中に十分に反応が進行せず、したがって接着強度も発現しないことが挙げられる。また、スチレン・共役ジエン・スチレン系ブロック共重合体の水添物とオレフィン・アクリレートランダムコポリマーを含む混合物をポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体の接着剤として用いる方法も開示されている(特許文献4)。しかし、この方法も接着力は十分でない。
【0003】
さて一般的には、上記したような積層フイルムの製造は、溶剤型接着剤を用いて各プラスチックフイルム間の接着・積層を行う方法と、ホットメルト接着剤を用いて積層する方法に二大別される。従来より、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂からなるフィルムを、他のポリマーフイルムと積層する場合には、溶剤型接着剤が汎用されてきた。この原因として、前述したようにこれらの樹脂は通常反応性が劣り、ホットメルト接着剤では接着性が劣ることが挙げられる。しかしながら、有機溶剤の使用による自然環境汚染、作業環境の悪化や安全性の点で問題があり、溶剤型接着剤を用いない積層技術が求められている。また、極性基含有樹脂基材のうち、ポリカーボネートフイルムやアクリル樹脂フイルムなどは耐溶剤性が劣るため、選択可能な溶剤も限定されていた。
【0004】
また、ポリオレフィンセグメントと極性ポリマーセグメントとからなるハイブリッドポリマーを用いて、極性ビニル系プラスチック、芳香族ビニル系重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、エンジニアリングプラスチック、生物由来ポリマー、熱可塑性エラストマー、天然製または人工繊維、無機ガラスおよび金属から選ばれる少なくとも1種とポリオレフィンとを接着させた積層構造体が開示されている(特許文献5)。しかしながらこの文献には、カルボン酸を分子鎖内に有し、したがって反応性の高いポリエステルなどの材料に対して接着性を示す極性ポリマーセグメントの構造は開示されているものの、上記のように反応性に劣る芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂に対して接着性を示す極性ポリマーセグメントの構造は開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−45532号公報
【特許文献2】特開平11−131037号公報
【特許文献3】特公昭63−65116号公報
【特許文献4】特開平10−130453号公報
【特許文献5】特開2008−1099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の従来技術に鑑み、本発明は、オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層と、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、両層を強力に接着せしめる接着剤を介して積層された、積層構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層と、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、特定のハイブリッドポリマーを含むホットメルト型接着剤層を介して積層された構造をとることにより、強力に接着されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A) オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層、
(B) ポリオレフィンセグメント[S]と、極性ポリマーセグメント[S]とを有するハイブリッドポリマー[P]を含む層、
(C)芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層、
が、層(A)/層(B)/層(C)の順に積層している構造を少なくても一部に有し、層(C)を構成する樹脂の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が18.5以上21未満であり、極性ポリマーセグメント[S]が実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーから構成され、かつ極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が19以上21未満であることを特徴とする積層構造体である。
【0009】
また、前記極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーターと前記層(C)を構成する樹脂の溶解度パラメーターとの差の絶対値が1((J/cm1/2)未満であることが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記極性ポリマーセグメント[S]を構成するラジカル重合性モノマーが、芳香族ビニルモノマー、ニトリル基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸誘導体から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、特にスチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
【0011】
また、前記ハイブリッドポリマー[P]中のポリオレフィンセグメント[S]の含有量が10重量%以上90重量%以下であることが好ましく、前記ポリオレフィンセグメント[S]が、プロピレン系重合体残基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層と、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層との層間接着力に優れた積層構造体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、(A)オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層、(B)ポリオレフィンセグメント[S]と、極性ポリマーセグメント[S]とを有するハイブリッドポリマー[P]を含む層、(C)芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、層(A)/層(B)/層(C)の順に積層している構造を少なくても一部に有する積層構造体[I]である。以下、層(A)、層(B)及び層(C)を構成する成分をこの順に詳細に説明した後に、層(A)/層(B)/層(C)の順に積層している構造を少なくても一部に有する積層構造体[I]について説明する。
【0014】
層 (A)
層(A)は、オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層である。なお、本発明において、「主要」とは、全体に占める重量割合が70重量%以上であることをいう。層(A)におけるオレフィン系重合体の含有量は、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90%以上である。
【0015】
本発明に関わるオレフィン系重合体とは、エチレンおよび炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくても1種のオレフィンを用いて(共)重合することによって得られる重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどを例示することができる。
【0016】
オレフィン系重合体として具体的には、ポリエチレン、ホモプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)等のホモポリオレフィン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のブロックポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体等のオレフィン系共重合体、及びこれらの二種以上からなる組成物等が挙げられる。なお、オレフィン系重合体が立体規則性を有する場合はシンジオタクチックポリオレフィン、アイソタクチックポリオレフィンのいずれであってもよい。また、層(A)には、必要に応じて、オレフィン系樹脂に通常添加される公知の添加剤、例えば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、グラスファイバー等の無機フィラー、染顔料、酸化防止剤、加工安定剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、核剤、滑剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤等を含有させることができる。
【0017】
更に、層(A)には、必要に応じて、上記オレフィン系樹脂以外の樹脂成分を含有させることもできる。
【0018】
層 (B)
本発明に係わる層(B)は、層(A)と層(C)を接着するための接着層として機能する重合体層である。層(B)は、ポリオレフィンセグメント[S]と、極性ポリマーセグメント[S]とを有するハイブリッドポリマー[P]を含んでなる層である。
【0019】
本発明に係るハイブリッドポリマー[P]は、ポリオレフィンセグメント[S]と極性ポリマーセグメント[S]とを有するハイブリッドポリマーであり、[S]と[S]との結合様式によって、ハイブリッドポリマー[P]とハイブリッドポリマー[P]に二大別される。ハイブリッドポリマー[P]は、下記イメージ式(i)で表される骨格を持ち、[S]中の炭素原子と[S]中の炭素原子が直接結合した構造を持つハイブリッドポリマーである。ハイブリッドポリマー[P]は、[S]中の炭素原子と[S]中の炭素原子がヘテロ原子またはヘテロ原子を含む結合基によって結合された構造(イメージ式ii)を有する。二つの構造を模式的に以下に示す。以下、ハイリッドポリマー[P]とハイブリッドポリマー[P]について、主に構成要素と製法の視点からその特徴を述べる。
【0020】
【化1】

【0021】
(式(ii)中、Qはヘテロ原子を含む結合基を示す。)
【0022】
ハイブリッドポリマー[P
◆ポリオレフィンセグメント[S
ハイブリッドポリマー[P]においては、ポリオレフィンセグメント[S]は、化学構造式上は、ポリオレフィンをハロゲン化して得られるハロゲン変性ポリオレフィン[S’]からハロゲンラジカルが取り除かれた化学構造式を有するセグメントであることが好ましい。ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]は、通常は分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上のポリオレフィン[S’’]をハロゲン化して得られる。
【0023】
ポリオレフィン[S’’]は、炭素原子数が2〜20のオレフィンから導かれる繰返し単位からなるポリオレフィンであり、具体的には炭素原子数が2〜20のオレフィンから選ばれるオレフィンの単独重合体またはランダム共重合体である。このポリオレフィンが立体規則性を有する場合は、アイソタクチックポリオレフィン、シンジオタクチックポリオレフィンのいずれであってもよい。炭素数が2〜20のオレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物を例示できる。
【0024】
直鎖状のα−オレフィンとして具体的には、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のものを例示できる。
【0025】
分岐状のα−オレフィンとして具体的には、例えば3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは5〜10のものを例示できる。
【0026】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素原子数が3〜20、好ましくは3〜10のものを例示できる。
【0027】
ポリオレフィン[S’’]のGPC分子量プロファイルは実質的にポリオレフィンセグメント[S]のGPC分子量プロファイルに同一であり、重量平均分子量(Mw)は、通常1,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜400,000、さらに好ましくは10,000〜300,000の範囲にある。またポリオレフィン[S’’]およびポリオレフィンセグメント[S]の、GPCで求めた分子量分布(Mw/Mn)が1〜10、好ましくは1.5〜8、より好ましくは1.6〜7、さらに好ましくは1.7〜6、特に好ましくは1.8〜5である。
【0028】
ポリオレフィンセグメント[S]としては、炭素数3以上のα−オレフィンを少なくとも1種含む単独重合体もしくは共重合体、または、エチレンと環状オレフィンとの共重合体が好ましい。さらに、炭素数3以上のα−オレフィン成分に起因する立体規則性が認められることがより好ましく、立体規則性が高いアイソタクティシティを示すことが特に好ましい。このようなセグメントの中でも、ポリオレフィンセグメント[S]はDSCで測定した融点(Tm)に起因する吸熱ピークが50℃以上、好ましくは60〜200℃、より好ましくは70〜180℃、特に好ましくは100〜180℃である結晶性ポリオレフィン残基であることが好ましい。
【0029】
このような性質を具備する結晶性ポリオレフィンは、ポリエチレンもしくは高立体規則性を示すポリオレフィンである。ポリエチレンの中でも炭素数3以上のα−オレフィン成分の共重合量が0〜10mol%が好ましく、0〜7mol%がより好ましい。高結晶性・高立体規則性ポリオレフィンの中でも、プロピレン系重合体が好ましく、α−オレフィンの共重合量が0〜10mol%である高立体規則性プロピレン系重合体が好ましく、α−オレフィンの共重合量が0〜7mol%である高立体規則性プロピレン系重合体が好ましく、高立体規則性プロピレンホモポリマーが更に好ましい。
【0030】
ポリオレフィンセグメント[S]の前駆体となるポリオレフィン[S’’]の製造は従来公知のオレフィン重合触媒の存在下に行われる。従来公知のオレフィン重合用触媒としては、TiCl系触媒、MgCl担持型TiCl系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒、ポストメタロセン系触媒などが挙げられ、MgCl担持型TiCl系触媒もしくはメタロセン系触媒を用いて製造されていることが好ましい。
【0031】
本発明に係るハロゲン変性ポリオレフィン[S’]は、上記したポリオレフィン[S’’]を公知のハロゲン化剤を用いるハロゲン化方法によって製造することができる。ハロゲン化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、五塩化リン、五臭化リン、五ヨウ化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、臭化チオニル、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロログルタルイミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N’−ジブロモイソシアヌル酸、N−ブロモアセトアミド、N−ブロモカルバミド酸エステル、ジオキサンジブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド、ピロリドンヒドロトリブロミド、次亜塩素酸tert−ブチル、次亜臭素酸tert−ブチル、塩化銅(II)、臭化銅(II)、塩化鉄(III)、塩化オキサリル、IBrなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは塩素、臭素、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロログルタルイミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N’−ジブロモイソシアヌル酸であり、より好ましくは臭素、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ブロモグルタルイミド、N,N’−ジブロモイソシアヌル酸などのN−Br結合を有する化合物である。なお、ハロゲン化剤との反応においては、反応を促進するために必要に応じて、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルラジカルなどに代表される開始剤を添加することもできる。
【0032】
このようにして得られたハロゲン変性ポリオレフィン[S’]のハロゲン含有率は、通常0.01〜70重量%、好ましくは0.02〜50重量%、さらに好ましくは0.05〜30重量%である。なお、本発明のハロゲン変性ポリオレフィン[S’]中に存在するハロゲン原子含有量は、例えば元素分析やイオンクロマトグラフィーなどの方法により測定することができる。また、ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]中に存在する炭素−炭素二重結合含有量は、例えば赤外分光法や核磁気共鳴法(NMR)などの方法により測定することができる。さらに、炭素−炭素二重結合のアリル位に存在するハロゲン原子については、例えばNMRにより確認および定量することができる。アリル位に存在するハロゲン原子確認の具体例としては、例えば臭素化ポリプロピレンの重水素化オルトジクロロベンゼンを溶媒に用いたプロトンNMRにおいて、炭素−炭素二重結合に基づくシグナルは通常δ4.5〜6.0ppmの範囲に観測され、臭素原子が結合したアリル位のメチレン基およびメチン基は通常δ3.5〜4.5ppmに観測される。アリル位以外のメチレン基およびメチン基に臭素原子が導入された場合のシグナル位置は通常、δ3.0〜3.5ppmであるため、臭素原子がアリル位に存在しているかそうでないかは容易に識別可能である。加えて、例えばプロトン−プロトン二次元NMR(HH−COSY)を用いることにより、上記炭素−炭素二重結合に基づくシグナルと、臭素原子が結合したメチレン基およびメチン基のシグナルとの相関関係を確認することも可能である。
【0033】
このようにして得られるハロゲン変性ポリオレフィン[S’]は、重合体主鎖の末端に下記一般式(I)〜(III)で表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が接続された構造、および/または重合体主鎖中に下記一般式(IV)〜(VII)で表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が挿入された構造を有する。
【0034】
【化2】

【0035】
上記一般式(I)〜(VII)において、Xはハロゲン原子を表し、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R3c、R4a、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7bは水素原子、ハロゲン原子、一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0036】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、好ましくは塩素または臭素である。
【0037】
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、ビニル、アリル、イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基、エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、トリル、iso−プロピルフェニル、tert−ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ−t−ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基などが挙げられる。上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル、クミルなどのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0038】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基、アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基などで置換されていてもよい。
【0039】
これらのうち炭化水素基としては、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0040】
酸素含有基は、基中に酸素原子を1〜5個含有する基であり、具体的には、例えばアルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシル基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、アルコキシ基、アリーロキシ基、アセトキシ基、カルボニル基、ヒドロキシル基などが好ましい。なお酸素含有基が炭素原子を含む場合は、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の範囲にあることが望ましい。これらの酸素含有基のうち、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなどが、アリーロキシ基としては、フェノキシ、2,6−ジメチルフェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシなどが、アシル基としては、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、p−クロロベンゾイル、p−メトキシベンソイルなどが、エステル基としては、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、p−クロロフェノキシカルボニルなどが好ましく例示される。
【0041】
窒素含有基は、基中に窒素原子を1〜5個含有する基であり、具体的には、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどが挙げられ、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ニトロ基、シアノ基が好ましい。なお、窒素含有基が炭素原子を含む場合は、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の範囲にあることが望ましい。これらの窒素含有基のうち、アミド基としては、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルベンズアミドなどが、アミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが、イミド基としては、アセトイミド、ベンズイミドなどが、イミノ基としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどが好ましく例示される。
【0042】
本発明に係わるハロゲン変性ポリオレフィン[S’]においては、炭素−炭素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造を開始剤構造として利用し、後述するラジカル重合性モノマーを重合することによって極性ポリマーセグメント[S]を導入することができる。流動性と接着性能の観点から平均ハロゲン原子導入数、すなわち極性ポリマーセグメント[S]の導入本数としては、0.3〜10本が好ましく、0.5〜8本がより好ましく、0.7〜5本がさらに好ましい。
【0043】
ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]のポリマー1本鎖あたりの平均ハロゲン導入数Nは以下のように求めた。GPCより求められる[S’]の数平均分子量をMn、H−NMRから求められる、[S’]を構成するモノマーの平均分子量をFw(ave)、[S’]中の炭素−炭素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造を形成するハロゲン基の全モノマー連鎖単位に対するモル含有量を、n(mol%)としたとき、ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]のポリマー1本鎖あたりの平均ハロゲン導入数N(本/鎖)は次式により求められる。
【0044】
N=n×Mn/[Fw(ave)×100]
【0045】
◆極性ポリマーセグメント[S
本発明に係るハイブリッドポリマーを構成する極性ポリマーセグメント[S]とは、実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーから選ばれる1種以上のモノマーの単独重合体または共重合体である。本発明で実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーとは、カルボン酸基、水酸基、エポキシ、アミン、イミン、カルボジイミド、シランなどの反応性を有する基をモノマー中に持たないモノマーであることを言う。
【0046】
本発明で用いられる実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーとしては、具体的には、以下のモノマーが挙げられる。(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。また、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドの誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族ビニルモノマーが挙げられる。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマーが挙げられる。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの実質的に反応性を有しないラジカル重合性のモノマーは、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0047】
本発明で用いられる極性ポリマーセグメント[S]を構成する実質的に反応性を有しないラジカル重合性のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸誘導体、ニトリル基含有ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリルが更に好ましく、特にメタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリルが最も好ましく用いることができる。
【0048】
本発明において、極性ポリマーセグメント[S]を構成するラジカル重合性モノマーには、通常、反応性を有するモノマーは使用しない。反応性を有するモノマーとしては、不飽和カルボン酸およびその誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物などのカルボン酸基、水酸基、エポキシ基などを有するモノマーが挙げられる。これらのモノマーは高い溶解度パラメーターを示すため、(共)重合することによって極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーターが上昇し、かえって被着樹脂との溶解性を低下させ、接着性を阻害する場合がある。
【0049】
本発明においてハイブリッドポリマー[P]中の極性ポリマーセグメント[S]の数平均分子量Mn(S)はハロゲン変性ポリオレフィン[S’]のポリマー1本鎖あたりの平均ハロゲン導入数N(本/鎖)、ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]の数平均分子量Mn(S’)、およびハイブリッドポリマー[P]における極性ポリマーセグメント[S]の割合R(S)=[S]/([S]+[S])(重量%)より以下の式にて求めることができる。
【0050】
Mn(S)=Mn(S’)×R(S)/((100−R(S))×N)
【0051】
ハイブリッドポリマー[P]中の極性ポリマーセグメント[S]の数平均分子量Mn(S)は1,000〜500,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、3,000〜100,000であることがさらに好ましい。分子量がこの範囲より高いときには流動性が低下し、成形性が悪化する。この範囲より低いときには接着性能が低下する。
【0052】
本発明の積層構造体においては、ハイブリッドポリマー[P]中の極性ポリマーセグメント[S]は、層(B)中のハイブリッドポリマー[P]の層(C)への溶解性が良好となるという理由によって、溶解度パラメーター((J/cm1/2)が19以上21未満の範囲であり、好ましくは19以上20未満の範囲である実質的に反応性を有しないラジカル重合性重合性モノマーの重合体である。溶解度パラメーターがこの範囲にあることにより、特異的に芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂との接着性を発現する。
【0053】
極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーターは極性ポリマーセグメント[S]を構成する(共)重合体の組成から計算できる。なお、本発明において溶解度パラメーターは、極性ポリマーセグメント[S]の組成をMillion Zillion Software, Inc.製CHEOPS Ver. 4.0に入力し、計算した。
【0054】
本発明に係わるハイブリッドポリマー[P]は、上記ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]をマクロ開始剤として、前記した実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上のモノマーをラジカル(共)重合することにより製造される。ラジカル(共)重合方法は特に制限されるものではないが、通常は原子移動ラジカル(共)重合法が好んで用いられる。なお、本発明のマクロ開始剤とは、原子移動ラジカル(共)重合の開始能を有する重合体であり、分子鎖中に原子移動ラジカル(共)重合の開始点となりうる部位を有する重合体を表す。
【0055】
本発明における原子移動ラジカル(共)重合とは、リビングラジカル(共)重合の一つであり、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてラジカル重合性モノマーをラジカル(共)重合する方法である。例えば、Matyjaszewskiら、Chem. Rev., 101, 2921 (2001)、WO96/30421号パンフレット、WO97/18247号パンフレット、WO98/01480号パンフレット、WO98/40415号パンフレット、WO00/156795号パンフレット等に関連情報が開示されている。用いられる開始剤としては、例えば有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物が挙げられるが、特に炭素−炭素二重結合または炭素−酸素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造が開始剤構造として好適である。本発明に係わるハロゲン変性ポリオレフィン[S’]においては、炭素−炭素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造を開始剤構造として利用することができる。
【0056】
本発明に係わるハロゲン変性ポリオレフィン[S’]をマクロ開始剤とするハイブリッドポリマー[P]の製造方法は、基本的には上記変性ポリオレフィン[S’]の存在下、遷移金属を中心金属とする金属錯体を重合触媒としてラジカル重合性モノマーを原子移動ラジカル(共)重合させるものである。
【0057】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2’−ビピリジル、もしくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、又はテトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0058】
原子移動ラジカル(共)重合方法は特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状・懸濁重合などを適用することができる。本発明のラジカル(共)重合において使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0059】
反応温度はラジカル重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100〜250℃である。好ましくは−50〜180℃であり、更に好ましくは0〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0060】
ハイブリッドポリマー[P]における極性ポリマーセグメント[S]の割合、[S]/([S]+[S])(重量%)は、10〜90%が好ましく、15〜85%がより好ましく、20〜60%が特に好ましい。極性ポリマーセグメント[S]の割合がこの範囲にあると、ハイブリッドポリマー[P]の層(C)への溶解性および分子運動性が高いために層(B)と層(C)との接着強度が高まる。
【0061】
上記の方法により生成したハイブリッドポリマー[P]は、重合に用いた溶媒や未反応のモノマーの留去あるいは貧溶媒による再沈殿などの公知の方法を用いることにより単離される。更に、得られたポリマーをソックスレー抽出装置を用い、クロロホルム、アセトンやTHFなどの極性溶媒で処理することで、副生したホモラジカル重合体を抽出し、副生ホモラジカル重合成分を定量することが可能である。副生ホモラジカル重合成分は、層(A)もしくは層(C)いずれの層に対しても接着に寄与しないためにできる限り少ないことが望ましい。具体的には、ハイブリッドポリマー[P]をクロロホルム、アセトンやTHFを溶媒として抽出した副生ホモラジカル重合成分量は、0〜10wt%が好ましく、0〜5wt%がより好ましく、0〜2wt%が特に好ましい。
【0062】
ハイブリッドポリマー[P
前記イメージ式(ii)で表されるハイブリッドポリマー[P]においては、ポリオレフィンセグメント[S]と極性ポリマーセグメント[S]の構成成分は、各々既述したハイブリッドポリマー[P]中の[S]および[S]と同一である。イメージ式(ii)におけるQの態様、並びに[S]、[S]およびQから構成されるハイブリッドポリマー[P]の代表的製造方法は本出願人によって出願され、既に公開されている特開2004−131620号公報に開示されている方法を制限無く使用することができる。代表的には、ハイブリッドポリマー[P]は下記一般式[C−1]で表される構成単位と、下記一般式[C−2]で表される構成単位および下記一般式[C−3]で表される構成単位から選ばれる少なくとも一種類の構成単位を含む。
【0063】
【化3】

【0064】
一般式[C−1]におけるRは、水素原子または炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基を示し、一般式[C−2]および一般式[C−3]におけるRは炭素原子数1〜18の直鎖もしくは分岐状の脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基を示し、一般式[C−3]におけるFはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基を示し、一般式[C−2]および一般式[C−3]におけるFは不飽和基を含む基を示し、Zはラジカル重合によって得られる重合体セグメントを示し、Wはアルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、シロキシ基およびメルカプト基から選ばれる基を示し、nは1〜3の整数、mは0、1または2であり、nが2または3のときZは互いに同一でも異なっていてもよく、mが2のときWは互いに同一でも異なっていてもよく、WはRの同一または異なる原子に環状構造で結合していても良い。なお、ハイブリッドポリマー[P]が、前記[C−2]のみから構成されている仮想的なケースでは、骨格[C−2]中の主鎖部分(−CH−CH−)が前記で表されるイメージ式(ii)における[S]に相当し、骨格[C−2]中のZが前記イメージ式(ii)における[S]に相当し、その他残り部分(−R(W)−F−)が前記イメージ式のQに相当する。
【0065】
ハイブリッドポリマー[P]において好ましい構造は、ハイブリッドポリマー[P]に対して説明したものと同様である。
【0066】
ただし、ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]のポリマー1本鎖あたりの平均ハロゲン導入数Nは以下のように求めた。GPCより求められる[S’]の数平均分子量をMn、H−NMRから求められる、[S’]を構成するモノマーの平均分子量をFw(ave)、[S’]中のハロゲン基の全モノマー連鎖単位に対するモル含有量を、n(mol%)としたとき、ハロゲン変性ポリオレフィン[S’]のポリマー1本鎖あたりの平均ハロゲン導入数N(本/鎖)は次式により求められる。
【0067】
N=n×Mn/[Fw(ave)×100]
以上、ハイブリッドポリマー[P] および[P] について詳説した。
【0068】
本発明の積層構造体を構成する層(B)は、前記ハイブリッドポリマー[P]、好ましくはハイブリッドポリマー[P]および/またはハイブリッドポリマー[P]を含んでなる層である。通常は、ハイブリッドポリマー[P]を必須構成成分として、前記ポリオレフィンセグメント[S]と同質のポリオレフィン[R]および、前記した極性ポリマーセグメント[S]と同質の極性ポリマー[Q]から選ばれる1種以上から構成される。なお、本発明において「同質の」とは、ポリオレフィンセグメント[S]中の、極性ポリマーセグメント[S]と結合している炭素原子、或いは極性ポリマーセグメント[S]中の、ポリオレフィンセグメント[S] と結合している炭素原子が水素原子で置換された化学構造を持つことを意味する。
【0069】
本発明に係わる層(B)における[P]と[Q]と[R]の合計に占めるハイブリッドポリマー[P]の重量割合は、通常1〜100重量%、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは1〜30重量%である。
【0070】
なお、層(B)がハイブリッドポリマー[P]と前記極性ポリマー[Q]を含み、前記ポリオレフィン[R]を含まない場合は、[Q]/[S](重量比)、すなわち、成分[Q]重量を成分[P]中の極性ポリマーセグメント[S]重量で除した値が、0.5未満、好ましくは0.4未満、さらに好ましくは0.3未満である要件を満たすことによって、層(B)および層(C)と強力な接着力を発現する。
【0071】
また、層[B]において[P]と[Q]と[R]以外の構成成分は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されるものではない。層(B)を構成する樹脂組成物において、[P]と[Q]と[R]以外の構成成分として樹脂を添加する場合は[P]と[Q]と[R]の合計が層(B)の1〜100重量%であり、好ましくは50〜100重量%であり、さらに好ましくは70〜100重量%となるように添加される。層(B)に添加される添加剤成分としては、タルク、シリカ、マイカ、クレー、グラスファイバー等の無機フィラー、染顔料、酸化防止剤、加工安定剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、核剤、滑剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤等である。
【0072】
本発明の層(B)を構成する樹脂組成物の製造方法は、従来公知の方法を採用できる。たとえば、各成分を一括で、または逐次に、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいはこのような方法で混合して得られた混合物を、さらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒あるいは得られた樹脂塊を粉砕することによって得ることができる。
【0073】
層 (C)
層(C)は、芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種から選ばれる層である。さらに層(C)は、構成する樹脂の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が18.5以上21未満、好ましくは18.5以上20.5未満である層である。
【0074】
層(C)において用いられる芳香族ビニル樹脂とは、芳香族ビニルモノマーを成分として含有するモノマーを重合して得られる重合体のことである。芳香族ビニルモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等を挙げることができる。芳香族ビニル樹脂の例としては、芳香族ビニル単独重合体のみならず、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等の各種ゴム質重合体を含有する芳香族ビニル重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等を例示することができる。特に溶解度パラメーターが18.5J/m以上21J/m未満である芳香族ビニル樹脂としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体が例示される。
【0075】
層(C)において用いられるポリカーボネート樹脂としては、実質的ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン、炭酸ジエステルまたはハロゲンホルメートとを反応させて得られるポリカーボネートを挙げることができる。その場合に、原料であるジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」と呼ぶ場合がある)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらのうちでもビスフェノールAが好ましい。また、ポリカーボネートは、必要に応じて、三官能以上のポリヒドロキシ化合物に誘導される構造単位の1種または2種以上を少量であれば有していてもよい。
【0076】
層(C)において用いられるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位から主としてなるアクリル系重合体を挙げることができる。その場合に、アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位の割合が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを挙げることができ、(メタ)アクリル樹脂はこれらの(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上から誘導される構造単位を有していることができる。また、アクリル樹脂は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル以外の不飽和モノマーから誘導される構造単位の1種または2種以上を有していてもよい。例えば、メタクリル系樹脂は、(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマーから誘導される構造単位を好ましくは50重量%以下の割合で有していてもよく、またスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどの芳香族ビニルモノマーから誘導される構造単位などを好ましくは10重量%以下の割合で有していてもよい。
【0077】
アクリル樹脂の中でも(メタ)アルキルエステルを50重量%以上共重合した(メタ)アクリル樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを80重量%以上共重合した(メタ)アクリル樹脂がさらに好ましい。
【0078】
積層構造体
本発明の積層構造体では、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体または材料の種類、積層構造体における全体の層数、積層構造体の用途などに応じて調節し得るが、一般には、層(A)の厚さを10μm〜5mm、層(B)の厚さを1μm〜1mm、層(C)の厚さを10μm〜5mmにしておくことが、積層構造体の製造の容易性、層間接着力などの点から好ましい。
【0079】
また本発明の積層構造体では、層間接着力の観点から、層(B)中に含まれる前記ハイブリッドポリマー[P]の極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーターと、層(C)の溶解度パラメーターとの差の絶対値が、1((J/cm1/2)未満となるように、層(B)および層(C)を選択することが好ましい。
【0080】
本発明の積層構造体における全体の層数は特に制限されず、層(A)/層(B)/層(C)の順に積層している構造を少なくとも一部に有する積層構造体である限りはいずれでもよい。また、本発明の積層構造体は、層(A)、層(B)および層(C)の三層のみから形成されていても、またはそれらの三種の層と共に、層(A)〜層(C)を構成している材料以外の他の材料からなる層の1つまたは2つ以上を有していてもよい。
【0081】
本発明の積層構造体の例としては、層(A)/層(B)/層(C)からなる3層構造物;層(C)/層(A)/層(B)/層(C)からなる4層構造物;層(A)/層(B)/層(C)/層(B)/層(A)からなる5層構造物;層(C)/層(B)/層(A)/層(B)/層(C)からなる5層構造物;層(C)/層(A)/層(B)/層(C)/層(B)/層(A)/層(C)からなる7層構造物などを挙げることができる。
【0082】
本発明の積層構造体の製造法としては、例えば、
(1)層(A)用の重合体、層(B)用の重合体および層(C)用の重合体又は材料を少なくとも用いて、それらをフィルム状、シート状、板状に溶融共押出成形して、それぞれの層の押出成形と同時に積層させて積層構造体を製造する方法;
(2)層(A)および/または層(C)を構成するフイルム、シート、板などの成形品を予め製造しておき、重合体層(B)を溶融押出成形しながら、また層(A)および層(C)の一方が予め成形されたものでない場合はそれをも溶融押出成形しながら、予め製造しておいた層(A)用の成形品および/または層(C)用の成形品と積層して一体化させて積層構造体を製造する方法;
(3)層(A)を構成するフイルム、シート、板などの成形品と、層(C)を構成するフイルム、シート、板などの成形品を予め製造しておき、更に層(B)用の重合体も予めフイルムやシート状に成形しておき、層(B)用のフイルムまたはシートを層(A)用の成形品と層(C)用の成形品との間に挟んで加熱下に層(B)用のフイルムまたはシートを溶融させて層(A)と層(C)を層(B)を介して接着・一体化させて積層構造体を製造する方法;
(4)層(A)用の重合体、層(B)用の重合体および層(C)用の重合体又は材料を少なくとも用いて、3種類の重合体又は材料を、射出のタイミングをずらして金型内に射出することにより、積層成形体を製造する方法;
などを挙げることができる。
【0083】
上記の(1)〜(4)の方法のいずれの場合にも、溶融した層(B)を介して層(A)と層(C)が接着され、接着剤層が有機溶剤を含まないので、有機溶剤による自然環境の破壊や、作業環境の悪化、溶剤の回収などの問題や手間を生ずることなく、目的とする積層構造体を得ることができる。そのうちでも、上記した(1)の共押出成形による方法が、工程数が少なくてすみ生産性が高く、しかも層(A)、層(B)および層(C)間の接着強度が高くて、層間剥離のない積層構造体を得ることができるので好ましい。
【0084】
共押出成形法によって本発明の積層構造体を製造する場合は、積層構造体の層数などに応じて、例えば3台以上の押出機を1つのダイに結合して、複数の重合体をダイの内側または外側で積層一体化して製造することができる。その場合のダイとしては、Tダイ、環状ダイなどを使用することができ、押出機やダイの形状や構造などは特に制限されない。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明において採用した分析方法、並びに使用した原料および被着体は、以下の通りである。
【0086】
[m1]ポリオレフィンセグメント[S]の分子量および分子量分布(GPC)
ポリオレフィンセグメント[S]の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、以下の装置および条件を用いてGPCで測定した。
装置:Waters社製、GPC150CV
カラム:PLカラム(Mixed−B,350mm×2)(ポリマーラボラトリーズ社製)
データ処理装置:ミレニアム
測定温度:135℃
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン
【0087】
[m2]ハロゲン原子導入数およびハイブリッドポリマーPの組成(H−NMR)
ハロゲン原子導入数およびハイブリッドポリマーPの組成は、以下の装置および条件を用いてH−NMRで測定した。
測定装置:日本電子製JNMGSX−400型核磁気共鳴装置
試料管:5mmφ
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン−d
測定温度:120℃
測定幅:8000Hz
パルス幅:7.7μs(45°)
パルス間隔:6.0s
測定回数:〜8000回
【0088】
[m3]融点(DSC)
融点(Tm)は、以下の装置および条件を用いてDSCで測定した。
測定装置:SEIKO製DSC6220示差走査熱量計
測定温度:20℃から200℃
昇温速度:10℃/分
測定された融解ピークの頂点を示す温度を融点とした。
【0089】
[m4]界面接着強度
界面接着強度は、剥離雰囲気温度23℃、剥離速度500mm/分、ピール幅15mmの条件でT型剥離して求めた。また、(B)層と(C)層のはく離の際の形態は以下のように判定した。
樹脂切れ : (C)層が破壊して剥離した状態
剥離面不良: 剥離の際に(C)層に(B)層が残って剥離した状態
良好 : 剥離の際に(C)層に(B)層が残らず、接着強度を発現せずに剥離した状態
接着不可 : 剥離試験を行う前に試料調整段階で剥離してしまったもの
【0090】
[使用原料]
ポリオレフィンB−1
株式会社プライムポリマー製ランダムポリプロピレン(MFR=7g/10分、引張弾性率950MPa、引張破壊呼びひずみは200%以上である)
ポリオレフィンB−2
三井化学株式会社製プロピレン系エラストマー樹脂ノティオ(グレードPN2070、プロピレン含有量71モル%であり、エチレンおよびブテンー1を含むエラストマーである。ショアーA硬度(ASTM D2240)75、融点138℃、密度(ASTM D1505)867kg/m、メルトフローレイト(ASTM D1238)7.0g/10min)
ポリオレフィンB−3
三井化学株式会社製エチレン・・1−ブテンランダムエラストマー樹脂タフマー(グレードA4050、MFR190=6g/10分)
【0091】
[被着体]
積層構造体の層(C)として使用する被着体は、以下のように作製したものを用いた。
アクリロニトリル・スチレンランダム共重合体
アクリロニトリル・スチレンランダム共重合体(日本エイアンドエル製 グレード100PCF、溶解度パラメーター(SP)20.1((J/cm1/2)、以下ASとする)を温度220℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを作製した。
ポリカーボネート
ビスフェノールAを原料としたポリカーボネート(帝人化成製 グレードL1225Y、溶解度パラメーター(SP)19.7((J/cm1/2)、以下PCとする)を温度250℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを作製した。
ポリエチレンテレフタレート
ポリエチレンテレフタレート(三井化学製 グレードJ135T、溶解度パラメーター(SP)20.9((J/cm1/2)、以下PETとする)を温度280℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを作製した。
ポリスチレン
ポリスチレン(日本ポリスチレン製 グレードG430、溶解度パラメーター(SP)18.7((J/cm1/2)、以下PSとする)を温度220℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを作製した。
【0092】
[製造例1]
ポリプロピレン(プライムポリマー社製S119)をガラス製反応器に入れ、ポリマー濃度が50g/Lになるよう、クロロベンゼンを加えて120℃で2時間加熱撹拌した。その後、ポリプロピレン100重量部に対して10重量部のN−ブロモスクシンイミドを加えて100℃で2時間溶液状態で反応を行った。反応液を4Lのアセトン中に注ぎ、析出したポリマーをろ過した。ポリマーを再度アセトンに入れ10分間攪拌することで固液洗浄した後に再度濾取し、80℃、10Torr(1.33kPa)の減圧条件下で10時間乾燥させた。該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=78,800、Mn=37,100、Mw/Mn=2.1であった。また、H−NMR測定で得られた臭素原子の導入量は4.3個/ポリプロピレン一分子鎖であった。このハロゲン変性ポリプロピレンをガラス製重合器に入れ、メタクリル酸メチル(MMA)が1.6Mになるように調製したトルエン溶液を、ポリマー濃度が50g/Lになるように加え、窒素バブリングによる脱酸素操作を行った。その後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、1当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。80℃で2時間重合したところで、氷浴で冷却し、ポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを減圧下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー[P−1]』と呼ぶ)。H−NMRよりポリプロピレンとポリメタクリル酸メチルが59/41(重量比)で存在し、ポリオレフィンセグメント[S]がポリプロピレンであり、極性ポリマーセグメント[S]がポリメタクリル酸メチルであるグラフトポリマーであることが確認された。また、ハロゲン変性ポリプロピレンの数平均分子量、臭素原子導入量、および重量比から計算したポリメタクリル酸メチルセグメントの数平均分子量は6,000であり、計算した溶解度パラメーターは19.1((J/cm1/2)であった。得られたポリマー5gを室温下、クロロホルム100ml中で1時間攪拌し、ろ過、減圧乾燥して回収されたポリマー量は4.98gであった。したがって、このポリマーの室温クロロホルム抽出量は0.4%(ハイブリッド化していないポリメタクリル酸メチル成分)と算出された。同様の操作を繰り返して、所定量のハイブリッドポリマーP−1を得た。
【0093】
[製造例2]
ポリプロピレン(プライムポリマー社製S119)をガラス製反応器に入れ、ポリマー濃度が50g/Lになるよう、クロロベンゼンを加えて120℃で2時間加熱撹拌した。その後、ポリプロピレン100重量部に対して2.5重量部のN−ブロモスクシンイミドを加えて100℃で2時間溶液状態で反応を行った。反応液を4Lのアセトン中に注ぎ、析出したポリマーをろ過した。ポリマーを再度アセトンに入れ10分間攪拌することで固液洗浄した後に再度濾取し、80℃、10Torr(1.33kPa)の減圧条件下で10時間乾燥させた。該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=123,000、Mn=43,900、Mw/Mn=2.8であった。また、H−NMR測定で得られた臭素原子の導入量は1.8個/ポリプロピレン一分子鎖であった。このハロゲン変性ポリプロピレンをガラス製重合器に入れ、スチレン/アクリロニトリル混合液(体積比80/20)を、ポリマー濃度が50g/Lになるように加え、窒素バブリングによる脱酸素操作を行った。その後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、3.4等量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。90℃で6時間重合したところで、氷浴で冷却し、ポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを減圧下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(P−2)』と呼ぶ)。H−NMRよりプロピレン、スチレンおよびアクリロニトリルが53/32/15(重量比)で存在し、ポリオレフィンセグメント[S]がポリプロピレンであり、極性ポリマーセグメント[S]がスチレン−アクリロニトリル共重合体であるグラフトポリマーであることが確認された。重量比などから計算した極性ポリマーセグメントの数平均分子量は22,000であり、溶解度パラメーターは20.6((J/cm1/2)であった。得られたポリマー5gを室温下、クロロホルム100ml中で1時間攪拌し、ろ過、減圧乾燥して回収されたポリマー量は4.95gであった。したがって、このポリマーの室温クロロホルム抽出量(ハイブリッド化していないスチレン/アクリロニトリル共重合体成分)は1.0%と算出された。同様の操作を繰り返して、所定量のハイブリッドポリマーP−2を得た。
【0094】
[製造例3]
特開2002−145944号公報記載の方法に準じて製造したプロピレン/10−ウンデセン−1−オール共重合ポリマーを、ガラス製反応器に入れ、ポリマー濃度が100g/Lになるよう、ヘキサンを加えスラリー状態にした。ポリマーに存在する水酸基の量に対し、5倍当量の2−ブロモイソ酪酸ブロミドを添加し、60℃に昇温し、3時間加熱撹拌した。反応液を、20℃/hの冷却速度で20℃まで冷却し、ポリマーを濾別した。ポリマーを、再度アセトンに入れ10分間攪拌することで固液洗浄した後に再度濾取した。得られた白色ポリマーを50℃、10Torr(1.33kPa)の減圧条件下で10時間乾燥させた。高温GPC分析の結果、ポリプロピレン換算重量平均分子量Mw=106,000、ポリプロピレン換算数平均分子量Mn=56,400であり、DSCの測定結果より融点が154℃であり、H−NMR分析より、2−ブロモイソ酪酸ブロミド由来の臭素が導入された末端が平均導入本数として1.8本/鎖であった。このハロゲン変性ポリプロピレンをガラス製重合器に入れ、スチレン/アクリロニトリル混合液(モル比で7:3)を、ハロゲン変性プロピレン濃度が85g/Lになるように加え、スラリー状に懸濁させた後に窒素バブリングによる脱酸素操作を行った。次に、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、3.1当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。75℃で4.5時間重合したところで、ポリマースラリーを濾別し、再度大量のメタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(P−3)』と呼ぶ)。
H−NMRよりプロピレン、スチレンおよびアクリロニトリルが59/26/15(重量比)で存在し、ポリオレフィンセグメント[S]がポリプロピレンであり、極性ポリマーセグメント[S]がスチレン−アクリロニトリル共重合体であるグラフトポリマーであることが確認された。重量比などから計算した極性ポリマーセグメントの数平均分子量は22,000であり、溶解度パラメーターは20.9((J/cm1/2)であった。
沸騰アセトンによるソックスレー抽出操作を行うと、0.39wt%の抽出成分(ハイブリッド化していないスチレン/アクリロニトリル共重合体成分)が得られた。同様の操作を繰り返して、所定量のハイブリッドポリマーP−3を得た。
【0095】
[比較製造例1]
製造例3に記載した方法に準拠して合成したハロゲン変性ポリプロピレン(ポリプロピレン換算重量平均分子量Mw=82,800、ポリプロピレン換算数平均分子量Mn=41,300、臭素平均導入本数として1.3本/鎖)をガラス製重合器に入れ、スチレンモノマーを、ポリマー濃度が189g/Lになるように加え、窒素バブリングによる脱酸素操作を行った。その後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、1.5当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。100℃で5時間重合したところで、氷浴で冷却し、ポリマーを析出させた後、濾過し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(CP−1)』と呼ぶ)。
【0096】
[比較製造例2]
製造例3に記載した方法に準拠して合成したハロゲン変性ポリプロピレン(ポリプロピレン換算重量平均分子量Mw=82,800、ポリプロピレン換算数平均分子量Mn=41,300、臭素平均導入本数として1.3本/鎖)を、スチレン/メタクリル酸メチル(モル比で7:3)のモノマー混合液を、ポリマー濃度が189g/Lになるように加え、窒素バブリングによる脱酸素操作を行った。その後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、3.0当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。100℃で5時間重合したところで、氷浴で冷却し、ポリマーを析出させた後、濾過し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(CP−2)』と呼ぶ)。
【0097】
[比較製造例3]
製造例3にて用いたハロゲン変性ポリプロピレン100重量部をSUS製重合器に入れ、トルエン 1400重量部、アクリル酸n−ブチル73重量部、メタクリル酸グリシジル33重量部を加え、スラリー状に懸濁させた。このスラリー溶液を窒素バブリングによる脱酸素操作を行った後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、1.0当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。80℃で4時間重合したところで、ポリマースラリーを濾別し、再度大量のメタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(CP−3)』と呼ぶ)。沸騰アセトンによるソックスレー抽出操作を行うと、0.7wt%の抽出成分(ハイブリッド化していないアクリル酸ブチル/メタクリル酸グリシジル共重合体成分)が得られた。
【0098】
[比較製造例4]
製造例3にて用いたハロゲン変性ポリプロピレン100重量部をSUS製重合器に入れ、トルエン 410重量部、アクリル酸ブチル467重量部、マレイン酸無水物120重量部を加え、スラリー状に懸濁させた。このスラリー溶液を窒素バブリングによる脱酸素操作を行った後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、0.5当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。80℃で4時間重合したところで、ポリマースラリーを濾別し、再度大量のメタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(CP−4)』と呼ぶ)。沸騰アセトンによるソックスレー抽出操作を行うと、1.0wt%の抽出成分(ハイブリッド化していないアクリル酸ブチル/マレイン酸無水物共重合体成分)が得られた。
【0099】
[比較製造例5]
製造例3にて用いたハロゲン変性ポリプロピレンをガラス製重合器に入れ、スチレンモノマーを、ポリマー濃度が189g/Lになるように加え、窒素バブリングによる脱酸素操作を行った。その後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、1.5当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。100℃で5時間重合したところで、氷浴で冷却し、ポリマーを析出させた後、濾過し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(CP−5)』と呼ぶ)。
【0100】
[比較製造例6]
製造例3にて用いたハロゲン変性ポリプロピレン100重量部をSUS製重合器に入れ、トルエン 650重量部、アクリル酸n−ブチル467重量部、メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)53重量部を加え、スラリー状に懸濁させた。このスラリー溶液を窒素バブリングによる脱酸素操作を行った後、臭化銅(I):N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)の1:2(mol比)のトルエン溶液をハロゲン変性ポリプロピレンのハロゲン含有量に対し、1.5当量の臭化銅(I)となるように加え、加温・攪拌した。85℃で4.5時間重合したところで、ポリマースラリーを濾別し、再度大量のメタノールで洗浄した。得られたポリマーを10Torr(1.33kPa)の減圧条件下、80℃で乾燥することで白色のポリマーを得た(以下の説明では、このポリマーを『ハイブリッドポリマー(CP−6)』と呼ぶ)。沸騰アセトンによるソックスレー抽出操作を行うと、0.9wt%の抽出成分(ハイブリッド化していないアクリル酸n−ブチル/メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)共重合体成分)が得られた。
【0101】
製造例1〜3および比較製造例1〜6で得られたハイブリッドポリマーのH−NMRより求めた組成分析結果、および組成分析結果から計算した極性セグメント数平均分子量や溶解度パラメーターを表1に纏めた。
【0102】
【表1】

【0103】
[実施例1]
[1]株式会社プライムポリマー製ランダムポリプロピレン(グレードF227D;MFR=7.0g/10分、引張弾性率950MPa、引張破壊呼びひずみ200%以上)を温度200℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを得た。
[2]ポリオレフィンB−1を75重量部、および前記製造例1で得られたハイブリッドポリマー(P−1)25重量部を予備混合し、株式会社テクノベル製二軸押出機KZW−15G ダイ径15mmφ、L/D=30二軸押出機を用いて200℃の温度で溶融混練した後ストランド状に押出し、切断してペレットを製造した。このペレットを80℃の減圧乾燥機で一晩加熱して、ポリオレフィンB−1とハイブリッドポリマーP−1との重合体組成物を得た。この重合体組成物を温度200℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを得た。
[3]層(A)として上記[1]で作製したランダムポリプロピレンのプレスシートを用い、層(B)として上記[2]で作製したハイブリッドポリマーを含む重合体組成物のプレスシートを用い、層(C)としてアクリロニトリル・スチレンランダム共重合体(AS)のプレスシートを用いて、220℃に設定したヒートシール試験機にて60秒間ヒートシールを行い、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、(B)層と(C)層との界面接着強度を、剥離雰囲気温度23℃、剥離速度500mm/分、ピール幅15mmの条件でT型剥離して求めた。その結果を表2に示した。
【0104】
[実施例2]
層(C)としてポリカーボネート(PC)のプレスシートを用い、ヒートシール温度を250℃にした以外は実施例1と同様にして、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、実施例1と同様にして(B)層と(C)層との界面接着強度を求めた。その結果を表2に示した。
【0105】
[比較例1]
層(C)としてポリエチレンテレフタレート(PET)のプレスシートを用い、ヒートシール温度を240℃にした以外は実施例1と同様にして、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、実施例1と同様にして(B)層と(C)層との界面接着強度を求めた。その結果を表2に示した。
【0106】
[実施例3]
実施例1の[2]において、ポリオレフィンB−1を50重量部、ハイブリッドポリマー(P−1)を50重量部用いた以外は、実施例1と同様な方法で溶融混練およびプレス成形の後に三層からなる積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表2に示す。
【0107】
[実施例4]
実施例1の[2]において、ポリオレフィンB−1を50重量部、ハイブリッドポリマー(P−1)を50重量部用い、層(C)としてポリカーボネート(PC)のプレスシートを用い、ヒートシール温度を250℃にした以外は、実施例1と同様な方法で溶融混練およびプレス成形の後に三層からなる積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表2に示す。
【0108】
[比較例2]
実施例1の[2]において、ポリオレフィンB−1を50重量部、ハイブリッドポリマー(P−1)を50重量部用い、層(C)としてポリエチレンテレフタレート(PET)のプレスシートを用い、ヒートシール温度を240℃にした以外は、実施例1と同様な方法で溶融混練およびプレス成形の後に三層からなる積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表2に示す。
【0109】
実施例1〜4と比較例1、2との対比から、ハイブリッドポリマー(P−1)を含む層(B)はASおよびPCに対して強い接着性を示すものの、PETに対する接着性は低いことが分かる。
【0110】
[比較例3〜5]
ポリオレフィンB−1を50重量部、無水マレイン酸を過酸化物にてグラフトしたマレイン酸グラフトポリプロピレン(ポリプロピレンの数平均分子量3.0万、マレイン酸のグラフト量1.0wt%、ポリプロピレンの数平均分子量とマレイン酸のグラフト量から計算されたポリプロピレン1分子鎖あたりのマレイン酸のグラフト個数3個、以下mPPとする)50重量部を用いた以外は、実施例1、2および比較例1とそれぞれ同様な方法でAS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表2に示す。
【0111】
溶解度パラメーターが26.2((J/cm1/2)であるマレイン酸をグラフトしたグラフトポリプロピレンは、AS、PC、PETいずれに対しても接着性が低いことが分かる。
【0112】
[比較例6〜8]
ポリオレフィンB−1を75重量部、旭化成ケミカルズ株式会社製スチレン・エチレン/ブテン・スチレンブロック共重合体(グレードH1062、カタログに記載されたスチレンの含有量17wt%、以下SEBS1とする)25重量部を用いた以外は、実施例1、2および比較例1とそれぞれ同様な方法でAS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表2に示す。溶解度パラメーターが18.7((J/cm1/2)であるスチレンをブロック構造として有するSEBS1は、AS、PC、PETいずれに対しても接着性が低いことが分かる。
【0113】
[比較例9〜23]
表2に示したハイブリッドポリマーを使用した以外は実施例1、2および比較例1とそれぞれ同様な方法でAS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表2に示す。
【0114】
溶解度パラメーターが本特許の範囲外のハイブリッドポリマーはAS、PCおよびPETに対して接着性を示さず、また溶解度パラメーターが本特許の範囲内にあっても反応性を有するモノマーを共重合していると、AS、PCに対して接着性を示さないことがわかる。
【0115】
【表2】

【0116】
[実施例5]
[1]株式会社プライムポリマー製ランダムポリプロピレン(グレードF227D;MFR=7.0g/10分、引張弾性率950MPa、引張破壊呼びひずみ200%以上)を温度200℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを得た。
[2]ポリオレフィンB−2を70重量部、ポリオレフィンB−3を20重量部、および前記製造例1で得られたハイブリッドポリマー(P−1)10重量部を予備混合し、株式会社テクノベル製二軸押出機KZW−15G ダイ径15mmφ、L/D=30二軸押出機を用いて200℃の温度で溶融混練した後ストランド状の押出し、切断してペレットを製造した。このペレットを80℃の減圧乾燥機で一晩加熱して、ポリオレフィンB−2、B−3とハイブリッドポリマーP−1との重合体組成物を得た。この重合体組成物を温度200℃、圧力100kg・cmでプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ100μm、長さ80mm、幅15mmの大きさのプレスシートを得た。
[3]層(A)として上記[1]で作製したランダムポリプロピレンのプレスシートを用い、層(B)として上記[2]で作製したハイブリッドポリマーを含む重合体組成物のプレスシートを用い、層(C)としてアクリロニトリル・スチレンランダム共重合体(AS)のプレスシートを用いて、220℃に設定したヒートシール試験機にて60秒間ヒートシールを行い、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、(B)層と(C)層との界面接着強度を、剥離雰囲気温度23℃、剥離速度500mm/分、ピール幅15mmの条件でT型剥離して求めた。その結果を表3に示した。
【0117】
[実施例6]
層(C)としてポリスチレン(PS)のプレスシートを用いた以外は実施例5と同様にして、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、実施例5と同様にして(B)層と(C)層との界面接着強度を求めた。その結果を表3に示した。
【0118】
[実施例7]
層(C)としてポリカーボネート(PC)のプレスシートを用い、ヒートシール温度を250℃にした以外は実施例5と同様にして、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、実施例5と同様にして(B)層と(C)層との界面接着強度を求めた。その結果を表3に示した。
【0119】
[比較例24]
層(C)としてポリエチレンテレフタレート(PET)のプレスシートを用い、ヒートシール温度を240℃にした以外は実施例5と同様にして、三層からなる積層構造体を製造した。得られた積層構造体について、実施例5と同様にして(B)層と(C)層との界面接着強度を求めた。その結果を表3に示した。
【0120】
実施例5〜7と比較例24との対比から、ハイブリッドポリマー(P−1)を含む層(B)はAS、PSおよびPCに対して強い接着性を示すものの、PETに対する接着性は低いことが分かる。
【0121】
[実施例8〜19、比較例25]
表3に記載した配合量で層(B)を成形した以外は、実施例5〜7および比較例24とそれぞれ同様な方法でAS、PS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表3に示す。
【0122】
[比較例26〜29]
ハイブリッドポリマーを使用せず、表3に記載した配合量で層(B)を成形した以外は、実施例5〜7および比較例24とそれぞれ同様な方法でAS、PS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表3に示す。ハイブリッドポリマーを含有した場合に比べ、AS、PS、PCに対する接着性が著しく低いことが分かる。
【0123】
[比較例30〜41]
層(B)にmPP、SEBS1、もしくは旭化成ケミカルズ株式会社製スチレン・エチレン/ブテン・スチレンブロック共重合体(グレードH1043、カタログに記載されたスチレンの含有量67wt%、以下SEBS2とする)をそれぞれ使用した以外は、実施例5〜7および比較例24とそれぞれ同様な方法でAS、PS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表4に示す。
【0124】
[比較例42〜57]
層(B)に表4に記載のハイブリッドポリマーを用いた以外は、実施例5〜7および比較例24とそれぞれ同様な方法でAS、PS、PCおよびPETを被着体とする三層積層構造体を製造し、界面接着強度を求めた。結果を表4に示す。溶解度パラメーターが本特許の範囲外のハイブリッドポリマーは接着性が悪く、また溶解度パラメーターが本特許の範囲内にあっても反応性を有するモノマーを共重合していると、接着性を示さないことがわかる。
【0125】
【表3】

【0126】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の積層構造体は、それを構成している層(A)、層(B)、層(C)の性質などに応じて種々の用途に使用することができ、例えば、食品や医療用薬剤の包装材料;衣料用包装材料;その他の製品用の包装材料;壁紙や化粧板などのような建材用;電気絶縁用フイルム;粘着フイルムやテープ用基材;マーキングフイルム;農業用フイルム;テーブルクロス、レインコート、傘、カーテン、カバー類などの雑貨用;金属板やその他の材料とのラミネート用などの種々の用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オレフィン系重合体を主要な構成成分として含む層、
(B)ポリオレフィンセグメント[S]と、極性ポリマーセグメント[S]とを有するハイブリッドポリマー[P]を含む層、
(C)芳香族ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれる少なくても1種からなる層が、
層(A)/層(B)/層(C)の順に積層している構造を少なくても一部に有し、層(C)を構成する樹脂の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が18.5以上21未満であり、極性ポリマーセグメント[S]が実質的に反応性を有しないラジカル重合性モノマーから構成され、かつ極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーター((J/cm1/2)が19以上21未満であることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
前記極性ポリマーセグメント[S]の溶解度パラメーターと前記層(C)を構成する樹脂の溶解度パラメーターとの差の絶対値が1((J/cm1/2)未満であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記極性ポリマーセグメント[S]を構成するラジカル重合性モノマーが、芳香族ビニルモノマー、ニトリル基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸誘導体から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記極性ポリマーセグメント[S]を構成するラジカル重合性モノマーが、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項3に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記ハイブリッドポリマー[P]中のポリオレフィンセグメント[S]の含有量が10重量%以上90重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記ポリオレフィンセグメント[S]が、プロピレン系重合体残基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層構造体。

【公開番号】特開2010−194984(P2010−194984A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45106(P2009−45106)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】