説明

積層熱交換器

【課題】 流通媒体をUターンさせるヘッダタンクの強度向上を安価に行うことが可能な積層熱交換器を提供する。
【解決手段】第1のチューブ2a内を有する第1の熱交換器2Aと、第1の熱交換器2Aに積層配置されてこれから流れてきた流通媒体を流す第2の熱交換器2Bとが、一対のヘッダタンク3、4を備える。一方のヘッダタンク3の内部には、第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bの一端側部分間を連通不能に仕切る第1の仕切り壁33を配置する。他方のヘッダタンク4の内部には、第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bの他端側部分間を仕切るとともに他端部分間で流通媒体を流すことが可能な連通路43dを形成した第2の仕切りプレート43を配置して取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの熱交換器を積層して一方の熱交換器から他方の熱交換器へ共通する流通媒体を流しながら、それぞれで冷却するようにした積層熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
積層熱交換器は、車載時に車幅方向を大きくすることなく、冷却面積を拡大することができる。このような従来の積層熱交換器としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の従来の積層熱交換器にあっては、離間した一対のヘッダパイプ(ヘッダタンクに相当)間が、複数の貫通孔を設けた扁平チューブで連結される。そして、入口、出口が設けられた方のヘッダパイプの内部空間が、このU字状の横断面を2分して長さ方向に一体成形されて突出する仕切りプレートにて入口側用と出口側用とに2分されるとともに、複数の貫通孔も入口側用と出口側用とに2分される。また、他方のヘッダパイプを横断面U字状に形成されてこの内部空間にて複数の貫通孔がすべて連通されることにより、ここで入口側の貫通孔から流れてきた炭酸ガス(冷媒)を出口側の貫通孔へとUターンさせて方向変換するようにされている。
【0004】
また、特許文献2に記載の従来の積層熱交換器にあっては、離間した一対のヘッダ(ヘッダタンクに相当)間が、複数の扁平チューブで連結されている。そして、炭酸ガス(冷媒)をUターンさせる方のヘッダは、境界壁を介して両側にそれぞれ円弧状の筒状部分を一体的に設けた横断面ω状の(2つの円弧状部分を形成した)内側部材と、チューブの端部が挿入されるチューブ挿入孔が形成された外側部材と、が組み合されることで構成されている。その内側部材には、境界壁に入口側と出口側とを連通する連通路(連通孔)が形成されて、この深さが筒状部分の両側端よりチューブの長手方向の奥まで届く位置に設定され、この連通路に挿入されるチューブの端部が筒状部分の両側端に当たって位置決めされた状態で、連通路の奥側部分を介して入口側と出口側とが連通するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−288476号公報
【特許文献2】特許第4334266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の積層熱交換器にあっては、また、冷媒をUターンさせる側のヘッダパイプは半円筒状であり、かつその内部に仕切り部等の強度部材を有してないので、その分、強度的に弱くなり、ヘッダパイプの厚さを大きくしなければならず、大型化、コスト高になるといった問題がある。
一方、上記特許文献2に記載の従来の積層熱交換器にあっては、冷媒をUターンさせる方のヘッダタンクは、1枚のプレートをプレスで折り曲げてω状にし、この断面中央位置に仕切り部が形成されるとともに、この仕切り部にコア部のチューブの端部部分を嵌合させるチューブ孔と両側を連通する連通孔とを有する仕切り部がパンチプレスにて設けられているが、このように複雑に折り曲げて形成した仕切り部では、加工工数も大変となってコスト高となるだけでなく、残留応力も高くなって強度的に弱くならざるを得ないといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、冷媒等の流通媒体をUターンさせるヘッダタンクの強度の向上を安価な構成で行うことができる積層熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、請求項1に記載の本発明による積層熱交換器は、
離間された一対のヘッダタンク間を接続・連通する複数の第1のチューブ内を流れる流通媒体を冷却する第1の熱交換器と、
第1の熱交換器に積層配置されて、一対のヘッダタンク間を接続・連通する複数の第2のチューブ内を第1のチューブから流れてきた流通媒体を流してこの流通媒体をさらに冷却する第2の熱交換器と、
を備え、
一対のヘッダタンクのうちの一方の内部のヘッダタンクには、この内部にそれぞれ開口連通する第1のチューブおよび第2のチューブの一端側部分の間を連通不能に仕切る第1の仕切り壁を設けた積層熱交換器において
一対のヘッダタンクのうちの他方のヘッダタンクの内部に配置してこの内部空間を仕切り、かつこの仕切られた内部空間同士を連通して第1のチューブから流れてきた流通媒体を第2のチューブへ流す連通路を形成した仕切りプレートを、他方のヘッダタンク内に取り付けた、
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項1に記載の積層熱交換器において、
第1のチューブおよび第2のチューブの他端部分を、連通路と同じ高さ位置でこの連通路を挟む位置に配置した、
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項1又は請求項2に記載の積層熱交換器において、
連通路の上下方向長さを、第1のチューブおよび第2のチューブの他端部分の上下方向長さより長くした、
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
連通路が、仕切りプレートの長手方向に直交する幅方向に延びるスリットである、
ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
連通路を、仕切りプレートのこの幅方向端部のいずれか一方の側面側に設けた、
ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
第1の仕切り壁が、連通路を形成する前の仕切りプレートと同じ形状の仕切りプレートであり、
一方のヘッダタンクおよび他方のヘッダタンクが、それぞれ同じ形状のタンクプレートとチューブプレートを、これらの内部に前記仕切りプレートを配置した状態で、組み付けて構成した、
ことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項6項に記載の積層熱交換器において、
第一方のヘッダタンクおよび他方のヘッダタンクが、これら両者間でそれぞれ同じ形状にしたタンクプレートとチューブプレートを、これらの内部に仕切りプレートを配置した状態で組み付けて構成した、
ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載の本発明による積層熱交換器は、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
第1の熱交換器を、これを冷却する空気流の下流側に、また第2の熱交換器を、空気流の上流側にそれぞれ積層配置した、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、大きい内部圧力を受けるため肉厚、大型で高価なヘッダタンクに代えて、小型で安価な、形状の仕切りプレートをヘッダタンク内でこれに結合して固定する構成としたため、ヘッダタンクは薄型、軽量にしても十分な耐圧強度を確保することができ、したがって大型化を抑えるとともにコストの低減も可能となる。
【0017】
また、請求項2に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、第1のチューブおよび第2のチューブの他端部分を、連通路と同じ高さ位置で連通路を挟む位置に配置したので、第1のチューブから流れ出た流通媒体を第2のチューブへUターンさせる際、その流れを上下方向に乱すことなくスムーズに方向変換させることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、連通路の上下方向長さを、第1のチューブおよび第2のチューブの他端部分の上下方向長さより長くして連通路の連通面積を拡大したので、第1のチューブから流れ出た流通媒体を第2のチューブへUターンさせる際、連通路を介してスムーズに流すことができる。
【0019】
また、請求項4に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、連通路を、第2の仕切りプレートの長手方向に直交する幅方向に延びるスリットで構成したので、第2のチューブが多数設けられても、これに対応する分を容易に第2仕切りプレートに形成でき、また、その場合に、円形孔等を形成する場合とは異なり、その強度が極端に弱くなる部分が生じるのをなくすことができる。
【0020】
また、請求項5に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、連通路を、第2の仕切りプレートのこの幅方向端部のいずれか一方の側面側に設けたので、流通媒体を第2のヘッダタンクの内面に沿ってスムーズに流すことができる。
【0021】
また、請求項6に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、第1の仕切り壁を、連通路を形成する前の仕切りプレートと同じ形状の仕切りプレートとし、第1のヘッダタンクおよび第2のヘッダタンクを、これら両者間でそれぞれ同じ形状のタンクプレートとチューブプレートを組み付けて構成したので、両ヘッダタンク間でタンクプレートとチューブプレートをそれぞれ共用しながら、連通孔の有無のみ異なる第1の仕切りプレート、第2の仕切りプレートを装着するだけでよく、安価かつ容易に一対のヘッダタンクを製造することができる。
また、一方のヘッダタンクに使用する仕切りプレートと他方のヘッダタンクに使用する仕切りプレートには、後者は前者に連通路を形成するだけで良いから、材料のすべて、加工の大部分を共用化してさらなるコストの低減が可能となる。
さらに、チューブプレートのみを変更して取り付けるチューブ数を変更したり、あるいはタンクプレートのみを変更してタンク容量を変更したりして、車載に応じてヘッダタンクの変更を容易かつ安価に行うことができる。
【0022】
また、請求項7に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、連通路の有無のみ異なる仕切りプレートを、それぞれ第1のヘッダタンクおよび第2ヘッダタンクのタンクプレートとチューブプレートに結合して固定するようにしたので、第1のヘッダタンクおよび第2ヘッダタンクの強度を向上させることができる。
【0023】
また、請求項8に記載の本発明の積層熱交換器にあっては、第1の熱交換器を、これを冷却する空気流の下流側に、また第2の熱交換器を、空気流の上流側にそれぞれ積層配置したので、冷却媒体を全体的により均一に冷却することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施例1の積層熱交換器を示す斜視図である。
【図2】実施例1の積層熱交換器の分解斜視図である。
【図3】実施例1の積層熱交換器で用いられる第1のチューブの端部部分を固定したタンクプレートおよびその近くに配置された第2の仕切りプレート、タンクプレートの結合状態を示し、図1中のS3−S3線に沿って切断した部分拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。なお、各実施例にあって、同じ構成部品・部分には同じ番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0026】
まず、実施例1の積層熱交換器1の全体構成を説明する。
この実施例1の積層熱交換器1は、たとえば、自動車の前部に搭載されてその室内用空調システムで用いられる冷凍サイクルやヒートポンプサイクルの一部を構成するコンデンサである。
図1および図2に示すように、積層熱交換器1は、第1の熱交換器2Aと、この第1の熱交換器2Aの車両前側(すなわち車両走行中に車両前方から後方へ流れてくる空気流の上流側)に積層配置された第2熱交換器2Bと、を有する。第1の熱交換器2Aと第2の熱交換器2Bは、後述するように、これら両者間が連通するように接続されて、たとえば炭酸ガスといった冷媒(本発明の流通媒体に相当)を空冷するように構成されている。
【0027】
第1の熱交換器2Aと第2の熱交換器2Bとの車両幅方向両端側には、それぞれ左側ヘッダタンク3および右側ヘッダタンク4が設けられる。これらの構造については、後で詳しく説明する。
左側ヘッダタンク3および右側ヘッダタンク4の車両後方側部分の間には、第1の熱交換器2A用の複数の第1のチューブ2aが上下方向に並べられて配設される。また第1のチューブ2aと前後方向に所定の隙間を空けた、左側ヘッダタンク3および右側ヘッダタンク4の車両前方側部分の間には、第2の熱交換器2B用の複数の第2のチューブ2bが上下方向に並べられて配設される。
【0028】
これら第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bの両端部部分は、ヘッダタンク3、4の内部とそれぞれ連通するようにこれらに固着される。なお、実施例1では、第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bは、扁平チューブで構成され、それぞれが同じ高さ位置となるように配置されている。
【0029】
第1のチューブ2aと第2のチューブ2bとの両チューブのうち、最上方に位置する両チューブの上にはアッパフィン部2cが、また最下方に位置する両チューブの下にはロアフィン部2dが配置される。アッパフィン部2cとロアフィン部2dは、いずれも第1、第2のチューブ2a、2bの両方に上下からそれぞれ被さるような車両前後方向の長さ、かつ車両幅方向の長さを有している。
【0030】
このように第1のチューブ2a、第2のチューブ2b、アッパフィン部2cおよびロアフィン部2dが第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4との間に結合配置された状態で、これらの上下にそれぞれレインフォースメント5、6が配置され、これらの両端部が第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4とにそれぞれ結合される。
【0031】
次に、第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4の構造について、図2および図3に基づき、より詳細に説明する。
まず、第1のヘッダタンク3から説明すると、同図に示すように、第1のヘッダタンク3は、タンクプレート31と、これに車幅方向内側から組み付けられるチューブプレート32と、これらで形成される空間を車両方向前後の各空間に分割する第1の仕切りプレート33と、上記空間の上方開口部および下方開口部をそれぞれ上下から閉塞するアッパ閉塞プレート34およびロア閉塞プレート35と、を有する。
【0032】
タンクプレート31は、横断面コ字状に形成され、その高さ方向の中央部付近で車両後方側に流体媒体を流入させるためのインレット孔31aが、また車両前方側に流体媒体を流出させるためのアウトレット孔31bが形成され、インレットポート部コネクタ7aおよびアウトレットポート用コネクタ7bそれぞれ取り付けられる。インレットポート部7aおよびアウトレットポート部7bは、他の車載部品(たとえばコンプレッサやレシーバタンクなど)に配管で接続される。なお、図1では、インレットポート部コネクタ7aおよびアウトレットポート用コネクタ7bは、コネクタ7としてまとめて描いてある。
【0033】
タンクプレート31には、さらに上下両端部位に取付孔31c、31cが形成されてアッパ閉塞プレート34およびロア閉塞プレート35の突起34a、35aがそれぞれ挿入固定される。これら両取付孔31c、31cの間には、複数の係合孔31dが上下方向に沿って形成されて、第1の仕切りプレート33の複数の外側突起33aがそれぞれ対応する位置で挿入係合される。この状態では、アッパ閉塞プレート34、ロア閉塞プレート35の外側端部分および両側面部分の外側の方が、タンクプレート31の内面に沿うようになる。
【0034】
一方、チューブプレート32は、横断面がコ字状をしており、この両側面部分がタンクプレート31の両側面部分に、これら両プレート31、32が第1の仕切りプレート33を挟んだ状態で組み付けられることで、流通媒体が入る内部空間を形成する。チューブプレート32には、第1のチューブ2aの本数分だけ、これらの一端部分が挿入固定される第1の固定孔32aが車両後方側位置で上下方向に沿って形成されるとともに、その第1の固定孔32aから所定距離だけ離れた車両前方側位置で、第2のチューブ2bの本数分だけ(本実施例では第1のチューブ2bと同じ本数)これらの一端部分が挿入固定される第2の固定孔32bが上下方向に沿って形成されている。
そして、第1の固定孔32aおよび第2の固定孔32bには、それぞれ対応する位置で第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bの一端部分が固定される。なお、互いに対応する第1の固定孔32aと第2の固定孔32bとは、同じ高さ位置に設定される。
【0035】
チューブプレート32には、第1の固定孔32aと第2の固定孔32bとの車両前後方向の間で、隣合う第1の固定孔32a同士の上下方向の中間位置(したがって、隣り合う第2の固定孔32b同士の上下方向の中間位置)に、上下方向に沿って複数の係合孔32cが形成されて、第1の仕切りプレート33の複数の内側突起33bが挿入係合される。
【0036】
なお、第1の仕切りプレート33の車幅方向外側の上下端側にはそれぞれ係止孔33c、33cが設けられて、アッパ閉塞プレート34、ロア閉塞プレート35の係止孔35a、35aが係止される。この状態では、アッパ閉塞プレート34、ロア閉塞プレート35の内側端部分および両側面部分の内側の方が、チューブプレート32の内面に沿うようになる。
【0037】
以上のようにして、構成された第1のヘッダタンク3では、この内部空間が第1の仕切りプレート33により車両前後の空間に分割され、車両後方側の空間は、第1のチューブ2aおよびインレットポート用コネクタ7aに連通し、車両前方側の空間は第2のチューブ2bおよびアウトレットポート用コネクタ7bに連通することとなる。
【0038】
次に、第2のヘッダタンク4の構成につき、説明する。
第2のヘッダタンク4も左側のヘッダタンク同様に構成されるが、第1のヘッダタンク3に対して車幅方向に対称に配置される点、および第2の仕切りプレート43の形状が第1の仕切りプレート33と一部形状が異なる点で相違する。すなわち、タンクプレート31、41、チューブプレート32、42、アッパ閉塞プレート34、44、ロア閉塞プレート35、45はいずれのヘッダタンク3、4でも同じ形状であり、組み付け方向が異なるだけである。
【0039】
第2のヘッダタンク4は、タンクプレート41と、これに車両幅方向の内側から組み付けられるチューブプレート42と、これらで形成される空間を車両方向前後の各空間に分割する第2の仕切りプレート43と、上記空間の上方開口部および下方開口部をそれぞれ上下から閉塞するアッパ閉塞プレート44およびロア閉塞プレート45と、を有する。
【0040】
タンクプレート41は、横断面コ字状に形成され、その車両前後方向の中央位置で、上下両端部位に取付孔41a、41aが形成されて、アッパ閉塞プレート44およびロア閉塞プレート45の突起44a、45aがそれぞれ挿入固定される。また、これら両取付孔41a、41aの間には、複数の係合孔41bが上下方向に沿って形成されて、第2の仕切りプレート43の複数の外側突起43aが挿入係合される。この状態では、アッパ閉塞プレート44、ロア閉塞プレート45の外側端部分および両底側面部分の外側の方が、タンクプレート41の内面に沿うようになる。
【0041】
一方、チューブプレート42は、横断面がコ字状をしており、この両側面部分がタンクプレート41の両側面部分に、これら両プレート41、42が第2の仕切りプレート43を挟んだ状態で組み付けられることで、流通媒体が入る内部空間を形成するようにされている。チューブプレート42には、車両後方側位置で第2のチューブ2bの本数分だけこれらの一端部分が挿入固定される複数の第1の固定孔42aが上下方向に沿って形成されるとともに、第1の固定孔32aの所定距離前方側位置で第2のチューブ2bの本数分だけこれらの一端部分が挿入固定される第2の複数の固定孔42bが上下方向に沿って形成されていて、それぞれ第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bの他端部分が固定される。なお、対応する第1の固定孔42aと第2の固定孔42bとは、同じ高さ位置に設定される。
【0042】
チューブプレート42には、第1の固定孔42aと第2の固定孔42bとの車両前後方向の間で、隣合う第1の固定孔42a同士の上下方向の中間位置(したがって、隣り合う第2の固定孔42b同士の上下方向の中間位置)に、上下方向に沿って複数の係合孔42cが形成されて、第2の仕切りプレート43の複数の内側突起43bが挿入係合される。
【0043】
なお、第2の仕切りプレート43の車幅方向外側の上下端側にはそれぞれ係止孔43c、43cが設けられて、アッパ閉塞プレート44、ロア閉塞プレート45の係止孔45a、45bが係止される。この状態では、アッパ閉塞プレート44、ロア閉塞プレート45の内側端部分および両側面部分の内側の方が、チューブプレート42の内面に沿うようになる。
【0044】
また、第2の仕切りプレート43の車幅方向内側端部分には、水平方向に延ばされたスリット43d(本発明の連通路に相当)が上下方向にわたって複数個設けられ、第2の仕切りプレート43の長手方向に直交する幅方向へ伸ばされている。これらのスリット43dは、車両内側へ開口され、第1のチューブ2aおよび第2のチューブ2bのそれぞれの高さ位置に応じて設けられる。
【0045】
図3に、第1のチューブ2a、タンクプレート41、チューブプレート42、第2の仕切りプレート43の結合状態を拡大して示す。なお、図3は図1中のS3−S3線に沿って切断し、車両前方側をみた部分拡大断面図である。
同図から分かるように、右側のヘッダタンク4の一部を構成するチューブプレート42の第1の固定孔42aを形成する部分は、バーリング加工などでタンクプレート41側へ向けてお椀状に突出させられ、第1の固定孔42aより若干広いタンクプレート41とは反対側の開口部から第1のチューブ2aが挿入固定される。それらの車両側前方には第2の仕切りプレート43が配置固定されるが、この第2の仕切りプレート43に設けたスリット43dが第1のチューブ2aと同じ中心軸高さ位置にあるようにされるとともに、スリット43dの開口の高さ方向長さが第1のチューブ2aの厚み(外面での高さ)方向長さより大きく設定してある。なお、図3では見えないが、第2の仕切りプレート43の車両前後方向の前方には、第2のチューブ2bがチューブプレート42の第2の固定孔42bに第1のチューブ2aの場合と同様に挿入固定されている。なお、第2のチューブ2bの外面での高さ(厚み)は、第1のチューブ2aと同じである。
【0046】
上記のように構成された積層熱交換器1は、すべての部品がアルミ、またはアルミ合金で形成されており、仮組みされた後、たとえばロー部材が接合箇所に貼り付けられた状態にて加熱炉で熱処理され一体化される。
【0047】
上記のように構成した実施例1の積層熱交換器1は、以下のように作用する。
インレットポート用コネクタ7aから第1のヘッダタンク3の車両後方空間に流入された流通媒体は、車両後方側に位置する複数の第1のチューブ2aを介して第2のヘッダタンク4の内部へと流れ込む。このとき、車両前方から後方へと流れ込んで来た空気流(図1および図2中にこの空気流の流れ方向を矢印AFで示す)は、第2のチューブ2bを通過した後、第1のチューブ2a同士の隙間を通過する際、ここを流れる流通媒体と熱交換が行われ、この結果、流通媒体が冷却される。
【0048】
このようにして冷却された流通媒体は、第1のチューブ2aの他端部分の開口から第2のヘッダタンク4の車両後方側空間に入り、第2の仕切りプレート43のスリット43aを通過して第2のヘッダタンク4の車両前方側空間に入る。スリット43aは、第1のチューブ2aの他端部分の外形高さより大きな高さで開口されており、また第1のチューブ2aや第2のチューブ2bと同じ高さ位置に設けられているため、流れが乱されにくくスムーズに第2のヘッダタンク4の車両前方側空間へ流れ込む。
【0049】
第2のヘッダタンク4の車両前方側空間に流れ込んだ流通媒体は、第2のチューブ2aを通って、今度は第1のチューブ2aのときの流れとは対向する方向へ流れて第1のヘッダタンク3の車両前側空間へと流れる。この際、第2のチューブ2bを流れる流通媒体は、すでに第1のチューブ2aを流れたときに冷却されているが、第2のチューブ2a間の隙間を流れる空気流は第1のチューブ2aの隙間を流れるときより低い温度を有するので、この空気流と熱交換することで、さらに冷却される。第1のヘッダタンク3の車両前側空間へと流れ込んだ流通媒体は、アウトレットポート用コネクタ7bを介して他の車載装置へと流れていく。
【0050】
以上、説明したように、実施例1の積層熱交換器1にあっては、以下の効果を有する。
流通媒体をUターンさせる第2のヘッダタンク4の内部に、第2の仕切りプレート43を配置して第2のヘッダタンク4の内部空間を2分した状態で固定し、この第2の仕切りプレート43に上記2分した内部空間を連通して第1のチューブから流れてきた流通媒体を第2のチューブへ流すスリット43dを設けたので、第2のヘッダタンク4は、強度的に向上することとなり、タンクプレート41やチューブプレート42の厚さを従来のように厚くして大型化する必要はない。しかも、タンクプレート41やチューブプレート42は、従来のようにプレスにてω状にした複雑な形状にする場合に比べて、残留応力も小さくなってそれらの強度も増し、また加工も容易となってコスト高を抑えることが可能となる。
【0051】
また、第1、第2の仕切りプレート33、43は、両内部空間から圧を対向して受けるため、上記部品のような強度は必要としないため、薄肉化でき安価となる。また、第2の仕切りプレート43は、第1の仕切りプレート33を用いてこれにスリット43dを形成するだけだから、これらもさらに安くすることが可能となる。
また、第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4には、この内部で第1の仕切りプレート33、第2の仕切りプレート43が固定されるので、第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4の強度を向上させることができる。
【0052】
また、第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4の主要部分(本発明の外側部材に相当)を構成するタンクプレート31、41、チューブプレート32、42、アッパ閉塞プレート34、44およびロア閉塞プレート35は第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4で共通とし、これらのヘッダタンク3、4内を仕切る第1の仕切りプレート33、第2の仕切りプレート43を別体としてヘッダタンク3、4に取り付けるようにしたので、両ヘッダタンク3、4のうち、高い内部圧力に耐えるように肉厚で大きく形成せざるを得ない部品を共用化することができ、小型で安い仕切りプレート33、43のみを変更するだけで両ヘッダタンク3、4を得ることができ、コストの低減が図れる。
【0053】
また、第2の仕切りプレート43の連通路としてスリット43dを形成するようにしたので、円形孔を上下方向に複数形成する場合のように一部強度的に弱い箇所が生じるような虞はない。また、スリット43dを第2の仕切りプレート43のいずれかの端部側に形成したので、流通媒体が第2ヘッダタンク4の内面に沿ってスムーズに流れるようになる。さらに、スリット43dの高さ位置を第1、第2のチューブ2a、2bの高さ位置と同じ位置にしたので、流通媒体がUターンするとき、流れに乱れが生じにくくなる。さらに、スリット43dの開口高さ方向長さを第1、第2のチューブ2a、2bの高さ方向長さより大きくしたので、流通媒体がスムーズに流れるようになる。
【0054】
また、第1のチューブ2aを空気流の下流側に、また第2のチューブ2bを空気流の上流側に配置したので、空気流とそれらチューブ2a、2bを通過する流通媒体の温度差を均一化き、安定した冷却が可能となる。
なお、第2のヘッダタンク内で流通媒体がUターンできるので、パイプ等でUターンさせる従来の積層熱交換器に比べ、よりコンパクト化が可能となる。
【0055】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0056】
たとえば、本発明の積層熱交換器1は、室内空調用システムのコンデンサであったが、これに限られない。
また、第2の仕切りプレート43にあっては、スリット43dがそのチューブ2a、2b側端に形成したが、逆のタンクプレート41側に形成してもよい。また、連通路は、スリット以外の形状であっても良い。
また、隣接するチューブ間にフィンを設けるものであってもよく、チューブ数等は必要に応じて適宜設定することができる。
【0057】
さらに、本発明にあっては、実施例のように、第1のヘッダタンク3と第2のヘッダタンク4とは、同じ形状のタンクプレート31、41、チューブプレート32、42である必要はなく、また、第1の仕切りプレート33、第2の仕切りプレート43を異ならせたり、あるいは第1の仕切りプレート33の代わりにタンクプレート31、チューブプレート32に一体形成した仕切り壁部で形成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 積層熱交換器
2A 第1の熱交換器
2B 第2の熱交換器
2a 第1のチューブ
2b 第2のチューブ
2c アッパフィン部
2d ロアフィン部
3 第1のヘッダタンク
31 タンクプレート
31a インレット孔
31b アウトレット孔
31c 取付孔
31d 係合孔
32 チューブプレート
32a 第1の固定孔
32b 第2の固定孔
32c 係合孔
33 第1の仕切りプレート
33a 外側突起
33b 内側突起
33c 係止孔
34 アッパ閉塞プレート
35 ロア閉塞プレート
4 第2のヘッダタンク
41 タンクプレート
41a 取付孔
41b 係合孔
46 チューブプレート
42a 第1の固定孔
42b 第2の固定孔
42c 係合孔
43 第2の仕切りプレート
43a 外側突起
43b 内側突起
43c 係止孔
43d スリット
44 アッパ閉塞プレート
45 ロア閉塞プレート
5,6 レインフォースメント
7 コネクタ
7a インレットポート用コネクタ
7b アウトレットポート用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間された一対のヘッダタンク間を接続・連通する複数の第1のチューブ内を流れる流通媒体を冷却する第1の熱交換器と、
該第1の熱交換器に積層配置されて、前記一対のヘッダタンク間を接続・連通する複数の第2のチューブ内を前記第1のチューブから流れてきた前記流通媒体を流して該流通媒体をさらに冷却する第2の熱交換器と、
を備え、
前記一対のヘッダタンクのうちの一方の内部のヘッダタンクには、この内部にそれぞれ開口連通する第1のチューブおよび第2のチューブの一端側部分の間を連通不能に仕切る第1の仕切り壁を設けた積層熱交換器において
前記一対のヘッダタンクのうちの他方のヘッダタンクの内部に配置してこの内部空間を仕切り、かつこの仕切られた内部空間同士を連通して前記第1のチューブから流れてきた前記流通媒体を前記第2のチューブへ流す連通路を形成した仕切りプレートを、前記他方のヘッダタンク内に取り付けた、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の積層熱交換器において、
前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの前記他端部分は、前記連通路と同じ高さ位置で該連通路を挟む位置に配置した、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層熱交換器において、
前記連通路の上下方向長さは、前記前記第1のチューブおよび前記第2のチューブの前記他端部分の上下方向長さより長くした、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
前記連通路は、前記仕切りプレートの長手方向に直交する幅方向に延びるスリットである、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
前記連通路は、前記仕切りプレートの該幅方向端部のいずれか一方の側面側に設けた、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
前記第1の仕切り壁は、前記連通路を形成する前の前記仕切りプレートと同じ形状の仕切りプレートであり、
前記第一方のヘッダタンクおよび前記他方のヘッダタンクは、これら両者間でそれぞれ同じ形状のタンクプレートとチューブプレートを、これらの内部に前記仕切りプレートを配置した状態で、組み付けて構成した、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項7】
請求項6項に記載の積層熱交換器において、
前記仕切りプレートは、それぞれ前記第1のヘッダタンクおよび前記第2ヘッダタンクを構成するタンクプレートとチューブプレートとに結合して固定した、
ことを特徴とする積層熱交換器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の積層熱交換器において、
前記第1の熱交換器はこれを冷却する空気流の下流側に、また前記第2の熱交換器は前記空気流の上流側にそれぞれ積層配置した、
ことを特徴とする積層熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2731(P2013−2731A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134079(P2011−134079)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】