積層造形装置
【課題】精度の高い積層造形物の製造に応ずることができる上に装置の小型化にも応ずることができるものとする。
【解決手段】粉末層形成手段と、粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させて硬化層を形成する光学機器とを備え、粉末層の形成と硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された造形物を製造するものにおいて、粉末層及び硬化層がその上面側に形成されるベース11と、該ベースの外周を囲んでいるとともにベースに対して上下移動自在な昇降枠12と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備える。粉末層は昇降枠の内周面で囲まれたベース上方空間に形成されるものであり、ベースを動かさずにベース上に粉末層(硬化層)を積み上げていくことができるために、高精度なものを容易に得ることができる。
【解決手段】粉末層形成手段と、粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させて硬化層を形成する光学機器とを備え、粉末層の形成と硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された造形物を製造するものにおいて、粉末層及び硬化層がその上面側に形成されるベース11と、該ベースの外周を囲んでいるとともにベースに対して上下移動自在な昇降枠12と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備える。粉末層は昇降枠の内周面で囲まれたベース上方空間に形成されるものであり、ベースを動かさずにベース上に粉末層(硬化層)を積み上げていくことができるために、高精度なものを容易に得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末材料を光ビームで焼結または溶融固化させることで三次元形状の積層造形物を製造する積層造形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層造形物の製造に、選択的粉末焼結積層として知られている製造方法がある。これは無機質あるいは有機質の粉末からなる粉末層の形成と、この粉末層の所定箇所を光ビ−ムの照射で焼結または溶融固化させて硬化層を形成するということを繰り返すことで、多数の硬化層を積層一体化して造形物を製造する方法であり、特開2002−115004号公報(特許文献1)においては、上記に加えて、それまでに作成した造形物の表面の除去加工を行う工程を、繰り返される硬化層の作成工程中に挿入することで、造形物表面をその形状にかかわらず低コストで滑らかに仕上げることができるようにすることが示されている。
【0003】
しかしながら、上記のものでは製造する積層造形物の精度の点で問題を有している。すなわち、厚みの薄い粉末層を次々と形成するために、上記造形部は図22に示すように、造形ステージ61とこの造形ステージ61を昇降させる昇降機構62及び造形ステージ61を囲む造形枠63で構成し、更に粉末供給部は材料タンク65とこの材料タンク65に収めた粉末材料を押し上げる昇降機構66及び昇降テーブル67、そして材料タンク65の上層に位置する材料粉末を造形ステージ61側に送るとともに表面を均す材料供給ブレード68で構成していた。
【0004】
このものでは、上記造形ステージ61上に形成した粉末層の所定箇所を焼結または溶融固化させることで硬化層を形成した後の次層の粉末層の形成は、造形ステージ61を下降させるとともに、上記昇降テーブル67を一段上昇させて材料供給ブレード68を駆動することで造形ステージ61側に粉末を供給して行うわけであるが、造形物がその上に形成される造形ステージ61が可動であるために、光ビームの照射による焼結または溶融固化や、加工機による除去工程の実施に際し、造形テーブル61上にそれまでに形成した造形物が微小ながらも位置ずれしてしまうものであり、これ故にμmオーダーの精度の造形物を製造することは困難である。
【0005】
また、造形ステージ61及び昇降テーブル67を昇降させるための昇降機構62,66はこれら造形ステージ61や昇降テーブル67の下方に設置せざるを得ず、このために造形部の全高Hは造形ステージ61(及び昇降テーブル67)の昇降範囲H1の倍以上の高さとなってしまい、装置全体の全高を抑えることが困難である。なお、図中H2は昇降機構62(66)における軸駆動範囲を示している。
【特許文献1】特開2002−115004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、精度の高い積層造形物の製造に応ずることができる上に装置の小型化にも応ずることができる積層造形装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る積層造形装置は、無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させて硬化層を形成する光学機器とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造する積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、固定されている該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備えて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることに第1の特徴を有しており、無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させて硬化層を形成する光学機器と、切削除去加工用の加工機とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造するとともに上記繰り返しの間に上記加工機による切削除去加工をそれまでに積層一体化された三次元造形物の表面に対して行う積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備え、少なくとも3軸制御可能な数値制御工作機械である上記加工機におけるテーブルに上記ベースが固定されて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることに第2の特徴を有している。
【0008】
ベースを動かさずにベース上に粉末層(硬化層)を積み上げていくことができるために、高精度なものを容易に得ることができる。
【0009】
前記粉末層形成手段は、前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートに設けた粉末材料供給口から上記ベース上面と上記昇降枠とで囲まれる空間に粉末を供給するものとして設けられていると、コンパクトに構成することが容易となる。
【0010】
上記スライドプレートのスライド方向と直交する方向における上記粉末材料供給口の幅が同方向における上記ベースの幅よりも大であることが粉末供給をむら無く行うという点で有利となる。
【0011】
上記スライドプレートに粉末の嵩密度を高めるための部材を設けておくことも好ましい。焼結または溶融固化させた後の密度を高くすることができるからである。
【0012】
そして上記スライドプレートが粉末層表面を均すための部材を備えていると、摩擦による摩耗劣化の防止と安定した粉末供給の点で有利となるとともに硬化層の表面の荒れを少なくすることができる。
【0013】
また、上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて前記昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えたものとするのも好ましい。雰囲気ガスの使用量を抑えつつ硬化層の酸化による問題を避けることができる。
【0014】
上記覆い枠の内部に供給される雰囲気ガスを旋回流とする旋回流形成手段を備えたものでは、雰囲気ガスの充填を効率良く行うことができる。
【0015】
上記覆い枠の内部空間における酸素濃度を測定する酸素濃度計を備え、前記雰囲気ガス供給手段が上記酸素濃度計の出力に応じて雰囲気ガスの供給を行うものであると、雰囲気ガスの使用量を更に抑えることができる。
【0016】
上記覆い枠の内部空間を上下に移動するピストンを備えて、該ピストンの上下動で雰囲気ガスの給排がなされるものであれば、雰囲気ガスの給排を迅速に行うことができる。
【0017】
また、上記ウィンドウがfθレンズで形成されていると、精度の良い焼結または溶融固化を行うことができるものとなる。
【0018】
上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃手段を備えていることも好ましい。焼結時に発生するヒュームによる汚れを落として、焼結を適切に行うことができる。この清掃手段としては、上記昇降枠に設けられて上記覆い枠内を上下移動するとともに回転して上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃部材を備えたものを好適に用いることができる。
【0019】
また、前記覆い枠が前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なものとして複数設けられているとともに、複数の覆い枠のうちのある覆い枠がベース上にある時に他の覆い枠が清掃手段によって清掃される位置にあると、焼結と清掃とを同時に行うことができ、清掃動作による製造時間の増大を防ぐことができる。
【0020】
前記光学機器は覆い枠上に設置されたものであってもよい。
【0021】
更に、前記昇降枠の上面に設けられて前記光学機器からの光ビームによってマーキングがなされるマークターゲットと、このマークターゲットに付されたマーキングの位置を測定して光学機器による光ビームの照射位置の補正データを得る測定装置とを備えていると、光ビームの照射による焼結または溶融固化の精度を高くすることができる。
【0022】
前記昇降枠の上面に前記光学機器からの光ビームのパワーを測定するパワー測定装置を配していると、適切なパワーによる精度の良い焼結または溶融固化を行うことができる上に、清掃手段を備えたものでは清掃のタイミングを適切に知ることができる。
【0023】
また、請求項1または2記載の積層造形装置において、上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えており、前記粉末層形成手段は昇降枠の上面に沿ってスライド自在とされたスライドプレートに設けられており、上記覆い枠は上記スライドプレートの一部として設けられているものも好ましい。粉末層の形成と不活性雰囲気下での焼結または溶融固化とをスライドプレートのスライドによって得ることができて、効率の良い積層造形物の製造を行うことができる。
【0024】
更に前記昇降枠が、複数設けられている前記ベースの各外周を囲むとともに各ベースに対して上下移動自在となっており、この昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートを備え、前記粉末層形成手段は上記スライドプレートに設けられて上記複数のベースの上方に前記スライドプレートのスライドによって選択的に粉末層を形成するものであれば、単一の昇降枠の昇降動作と該昇降枠に対するスライドプレートのスライド動作で複数のベース上に夫々粉末層を形成していくことができる。
【0025】
前記スライドプレートは加工機における工具を通すための切削用開口を備えたものであってもよい。スライドプレートのスライドだけで粉末供給と焼結または溶融固化と切削加工の状態を切り換えることができる。
【0026】
前記スライドプレートがベース上の未硬化粉末を吸引除去する吸引部を備えたものであると、切削加工に際して未硬化粉末が邪魔になったり加工精度を低下させたりしてしまう事態が生じるのを防ぐことができる。
【0027】
そして前記スライドプレートは、前記昇降枠の上面に沿って回転スライドするものであれば、スライドプレートに多くのものを組み込む時にもコンパクトにまとめることができる。
【0028】
前記光学機器が、光ビームの照射面からの高さ位置を可変として設けられていると、造形速度や精度に応じた光ビーム照射を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、ベースを動かさずにベース上に粉末層(硬化層)を積み上げていくことができるものであり、このためにベース上に形成される造形物の精度を悪化させることになる要因を無くすことができて、高精度な積層造形物の製造が容易となる。
【0030】
また、加工機による切削除去加工をそれまでに積層一体化された造形物の表面に対して行うことを粉末層の形成と硬化層の形成の繰り返しの間に行うものにおいては、切削除去加工の際にそれまでに積層一体化された造形物がぶれてしまうことがなく、このものにおいても高精度な積層造形物の製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1に本発明に係る積層造形装置の一例を示す。この積層造形装置は、造形部10と造形部10上に配した粉末供給部15とからなる造形機1、造形部10に対して光ビームLを照射する光学機器2、そして除去加工のための加工機3とからなる。
【0032】
上記加工機3は、テーブル(マシニングテーブル)30と少なくとも3軸制御が可能な主軸台31とを備える数値制御工作機械であり、その主軸台31のスピンドルヘッド32には除去加工のためのエンドミル33がセットされる。そしてこの加工機3におけるテーブル30上に前記造形機1がセットされるとともに、積層造形物が上面に形成されるベース11がテーブル30に固定されて設置されており、上記光学機器2は上記主軸台31にセットされたものとなっている。なお、図示例ではスピンドルヘッド32がX,Z軸方向に可動でテーブル30がY軸方向に可動のものとなっている。
【0033】
ここにおける造形機1の造形部10は、上述のように上記テーブル30上に固定されたベース11上に積層造形物を形成するもので、ベース11上に粉末層を形成するために、ベース11の四周を囲むとともに上記テーブル30上にセットされたリニア駆動機構からなる昇降機構13によって昇降する昇降枠12を備えている。この昇降枠12はベース11に対して上昇させた時、ベース11上に昇降枠12で囲んだ十分な高さの空間を形成することができる厚みを少なくともベース11を囲む部分に有している。
【0034】
また、粉末供給部15は、上記昇降枠12の上面上に粉末を送り込む粉末供給機(図示せず)と、図3にも示すように上記昇降枠12の上面に配した材料供給ブレード16と、この材料供給ブレード16を水平に駆動する駆動部17とからなるものとして形成している。
【0035】
ここで用いる材料粉末8は、無機質(金属やセラミック)の粉末、あるいは有機質(プラスチック)の粉末であり、光学機器2で照射する光ビームによって焼結または溶融固化させて硬化層を得ることができるものであれば、その種類を問わないが、図示例のものでは平均粒径20μmの球形の鉄粉を用いている。
【0036】
前記加工機3は、数値制御工作機械、殊に切削工具であるエンドミル33を自動交換可能なマシニングセンタで構成している。上記エンドミル33には超硬素材の二枚刃ボールエンドミルが主として用いられ、加工形状や目的に応じてスクエアエンドミル、ラジアスエンドミル、ドリルなども用いられる。
【0037】
粉末8を焼結するための光ビームLを照射する光学機器2は、レーザ発振器で構成した光源21と、集光レンズ、所定位置に光ビームLを照射するために光ビームLの方向を偏向するガルバノメータミラー等からなるスキャン機構22で構成され、ここではスピンドルヘッド32側面にスキャン機構22の部分を固定し、光源21とスキャン機構22とを光ファイバ23で接続したものとしてある。上記光源21としては、粉末が鉄粉である場合、炭酸ガスレーザ(出力500W)やNd:YAGレーザ(出力500W)などを使用する。
【0038】
上記スキャン機構22(光学機器2)は、図2(a)に示すように、スピンドルヘッド32の側面に設けた取付台310に着脱自在としたり、図2(b)に示すように、スピンドルヘッド32のコレットチャックによってエンドミル33に代えて装着されるようにしたものであってもよい。後者の場合、光ビームLの照射時とエンドミル33による加工時とでスピンドルヘッド32をほぼ同じ位置においておくことができるために、主軸台31側面に光学機器2がある場合に比してスピンドルヘッド32の全移動範囲を小さくすることができて、相対的に大きい造形物を製造することができることになる。しかもエンドミル33を用いて切削を行う時には、光学機器2が主軸台31に無いために、エンドミル33による加工時に上記光ファイバ23などが邪魔にならず、切削時の振動の影響も小さくなる。
【0039】
上記積層造形装置を用いて積層造形物を製造するにあたっては、昇降枠12の上面に粉末8を供給し、昇降枠12の上面をベース11上に固定した造形用プレートの上面より僅かに高くした状態でブレード16を水平駆動することで上記粉末8をベース11上に供給するとともに均すことで第1層目の粉末層を形成し、次いで造形部10の上方に位置させた光学機器2からの光ビームLを上記粉末層の硬化させたい箇所に照射することで粉末8を焼結させて硬化層を形成する。
【0040】
この後、昇降枠12を所定量だけ上げた状態で粉末8の供給と均すことを行って、第1層目の粉末層(と硬化層)の上に第2層目の粉末層を形成し、この第2層目の粉末層の硬化させたい箇所に光ビームLを照射することで粉末を焼結させて下層の硬化層と一体化した次の硬化層を形成する。
【0041】
昇降枠12を上昇させて新たな粉末層を形成し、光ビームLを照射して所要箇所を硬化させて硬化層とするという工程を繰り返すことで、目的とする三次元形状の造形物9を硬化層の積層物としてベース11上の上記造形用プレート上に製造するものであり、粉末層の厚みとしては、得られた積層造形物を成形用金型などに利用する場合、0.05mm程度とするのが好ましい。
【0042】
光ビームLの照射経路(ハッチング経路)は、積層造形物の三次元CADデータから予め作成しておく。すなわち、三次元CADモデルから生成したSTL(Standard Triangulation Language)データを等ピッチ(粉末層の厚みを0.05mmとした場合、0.05mmピッチ)でスライスした各断面の輪郭形状データを用いて各層毎の光ビームLの照射経路を作成する。この時、積層造形物の少なくとも最表面が高密度(気孔率5%以下)となるように焼結させることができるように光ビームLの照射を行い、内部は低密度となるように焼結させることで、つまりは形状モデルデータを予め、表層部と内部とに分割しておき、内部についてはポーラスとなるような焼結条件、表層部はほぼ粉末が溶融して高密度となる条件で光ビームLを照射することで、緻密な表面を持つ造形物を高速に得ることができる。
【0043】
そして、上記粉末層を形成しては光ビームLを照射して硬化層を形成するということを繰り返していくのであるが、それまでに焼結させた硬化層の全厚みがたとえば加工機3におけるエンドミル33の工具長さなどから求めた所要の値になれば、エンドミル33を造形部10の上方に位置させて、エンドミル33によってそれまでに造形した造形物9の表面(主として上部側面)を切削する。
【0044】
この加工機3による切削除去加工によって、造形物9の表面に付着した粉末による余剰硬化部を除去することができるために、造形物9表面に高密度部を全面的に露出させることができる。この加工が終了すれば、再度粉末層の形成と焼結とを繰り返す。
【0045】
加工機3による切削加工経路は、光ビームLの照射経路と同様に三次元CADデータから予め作成しておく。この時、等高線加工を適用して加工経路を決定するが、Z方向(上下方向)ピッチは焼結時の積層ピッチにこだわる必要はなく、緩い傾斜の場合はZ方向ピッチをより細かくして補間することで、さらに滑らかな表面を得られるようにしてもよい。
【0046】
図4に粉末供給部15の他例を示す。ここにおける粉末供給部15は、昇降枠12の上面に沿ってスライド移動自在なスライドプレート18に上下に貫通する粉末供給口19を形成したものとなっており、該粉末供給口19がベース11上ではなく昇降枠12上に位置する状態で図示しない粉末供給機から粉末供給口19に粉末を入れ、次いで上記粉末供給口19がベース11を横切るようにスライドプレート18をスライドさせることによって粉末8をベース11上に供給するとともに均すのである。なお、光ビームLの照射による焼結は、粉末供給口19をベース11上に位置させて粉末供給口19を通じて粉末層に光ビームLを照射したり、スライドプレート18をベース11上から退去させた状態で行う。
【0047】
この時、粉末供給口19の幅(スライドプレート18のスライド方向と直交する方向の長さ)は、図5(a)に示すようにベース19の同方向の幅よりも大きくしておくことで、ベース11上の各部に粉末をむら無く供給することができる。なお、粉末供給口19は図のような方形である必要はなく、ベース19上の全域に粉末8を供給することができるものであれば、長方形や円形や楕円形はもちろん他の形状のものであってもよい。
【0048】
また、図5(b)に示すように、スライドプレート18内に上下方向を軸として該軸回りに回転自在な回転プレート190を設けて、この回転プレート190に粉末供給口19を形成すると、回転プレート190の回転によって粉末供給口19の上記方向の幅を変化させることができる。
【0049】
粉末供給口19の内側壁に図5(c)に示すような凹凸191を設けておくことも好ましい。粉末供給口19内の上記幅方向の一方側に粉末8が偏ってしまうというような事態が生じるのを防ぐのに有効である。余剰粉末を回収する回収部をスライドプレート18もしくは昇降枠12に設けておいてもよい。余剰粉末がスライドプレート18のスライド動作を損なってしまう事態が生じるのを防ぐことができる。
【0050】
粉末供給口19を有するスライドプレート18のスライド動作でベース11上の昇降枠12で囲まれた造形用空間に粉末8を供給するものにおいては、図6に示すように、粉末供給口19内にある粉末8上に錘81を載せて粉末8に圧力を加えたり、振動発生装置82を設けて振動を粉末8に加えることができるようにしておくと、粉末8の嵩密度を高くしてベース11上に供給することができるために、粉末層の密度が高くなって焼結密度も高いものを得ることができることになる。
【0051】
上記の例ではスライドプレート18そのものがベース11上の粉末層の表面を均す部材を兼ねているが、図7に示すように、スライドプレート18における粉末供給口19のスライド方向前後(前もしくは後ろのいずれか一方だけであってもよい)に粉末8を均すためのブレード16を設けてもよい。これは軽量化のためにスライドプレート18を軽金属などで形成する場合に有効である。なお、ブレード16で粉末層表面を均す時、この表面には異常焼結で生じた硬質な突起物が存在している可能性があるために、ブレード16には鋼製やセラミック製のものが好適である。
【0052】
また、上記突起物の除去を確実にするために、図7(b)に示すように、スライドプレート18の下面側にロータリー刃83を配して、スライドプレート18の下面と一致する刃の高さとなっている上記ロータリー刃83で上記突起物を切削できるようにすることも好ましい。ロータリー刃83は別途専用モータで駆動するもののほか、スライドプレート18のスライド移動を利用してロータリー刃83を回転させる機構(たとえばラックアンドピニオン機構)を用いて駆動するようにしてもよい。
【0053】
ところで、光ビームLを粉末層に照射して焼結を行う時、粉末層が大気に開放された状態では、使用する粉末8の材料種別によっては酸化が生じてきれいに焼結させることができないことがある。この種の問題は不活性雰囲気中で光ビームLを照射することで対処するわけであるが、ここでは図8に示すように、底面開口の開口面積がベース11の上面の面積以上であるとともに上面がウインドウ41で閉じられた覆い枠40を昇降枠12上に配置し、覆い枠40で囲んだ空間内に不活性な雰囲気ガス(たとえば窒素やアルゴン)を充填した状態で光ビームLの照射を上記ウインドウ41を通じて行うことで対応している。図中45は雰囲気ガス発生装置またはタンク、46は焼結時に発生するヒュームなどを捕集する集塵機、47はガス供給口、48はガス排出口である。ベース11上の覆い枠40で囲まれた小さな空間だけに雰囲気ガスを充填すればよいために、雰囲気ガスの給排に要する時間や使用する雰囲気ガス量を抑えることができる。
【0054】
雰囲気ガスの使用量の低減という点では、覆い枠40の内部空間の酸素濃度を計測する酸素濃度計49を設けて、あらかじめ定めた酸素濃度より上記空間内の酸素濃度が高くなった場合に雰囲気ガスを供給するようにしてもよい。
【0055】
なお、上記ウィンドウ41は光ビームLがYAGレーザの場合は石英ガラスで、光ビームLが炭酸ガスレーザである場合はジンクセレンなどを使用することで光ビームLの透過性を高くしているが、単なる平行板ではなく、fθレンズとして機能するようにしておくと、光ビームLの焼結面でのスポット径を一定にすることができるために、精度の良い焼結を行うことができる。もちろん、ダイナミックフォーカスレンズを使用してスポット径を一定にしてもよいが、この場合は光学機器2側に追加部材として配置しなくてはならず、光学機器2が大きく且つ重くなるという問題を有するものとなる。
【0056】
また、上記覆い枠40は、昇降枠12上面に沿ってスライド自在なスライドプレート18として設けておくと、前記粉末層の形成時及び除去加工時と、光ビームLを照射することによる焼結時とにおける覆い枠40の移動を簡便に行わせることができる。
【0057】
雰囲気ガスの給排に要する時間やその換気効率、そしてウィンドウ41の汚れ防止などの点から、覆い枠40に設けるガス供給口47や排気口48は、図9に示すように、雰囲気ガスが上方から斜め下方に向けて且つ覆い枠40の内周面に沿って覆い枠40の内部空間に入るようにしておくことが望ましい。上記空間内に入る雰囲気ガスが上記空間内で上方側から下方側へと旋回しながら流れるようにしておくわけである。
【0058】
上記ウィンドウ41が前述のヒュームによって汚れて時間経過に従い光ビームLの透過率が低下してしまう点については、このウィンドウ41を清掃するための清掃手段を昇降枠12に組み込んでおくことが好ましい。この清掃手段の一例を図10に示す。昇降枠12を上下に貫通する開口内に、昇降用シリンダー53によって昇降駆動されるとともにモータ52によって回転駆動される清掃部材51を配置してある。クリーニングペーパや不織布などが表面に設けられているとともに洗浄剤(高圧エア、水など)を噴出する噴出口を備えた清掃部材51は、洗浄剤によるウィンドウ41内面や覆い枠40内壁の洗浄及び汚れの拭き取りを行う。なお、ここでの昇降用シリンダー53は、テーブル30上にセットされているために、清掃部材51の昇降量は昇降枠12の昇降量も含めて行うものとなっている。
【0059】
不活性雰囲気を形成する上記覆い枠40は、昇降枠12上に複数設けたり、あるいは図11に示すように、複数の個別のウィンドウ41を備えたものとして、あるウィンドウ41がベース11上に位置する時、他のウィンドウ41が清掃機構上に位置するようにしておくと、焼結と上記クリーニングとを同時に行うことができることになり、クリーニングによる待ち時間を無くすことができて積層造形物の製造に要する時間を短くすることができる。
【0060】
上記清掃部材51をピストンとして利用することで覆い枠40内の雰囲気ガスの強制給排を清掃部材51で行うようにしてもよい。清掃部材51を上昇させることで覆い枠40の内部空間からの雰囲気ガスの排出を行い、清掃部材51を下降させることで覆い枠40の内部空間に雰囲気ガスを吸引するのである。この場合、ガス供給口47とガス排出口48はバルブを備えたものとし、これらバルブを清掃部材(ピストン)51の昇降に連動させて開閉する。
【0061】
図12は昇降枠12上に光ビームLを照射してマーキングするためのマークターゲット55を設けるとともに、マークターゲット55上のマーキングの位置を測定するための照射位置測定装置25を設けたものを示しており、図12(a)に示すようにマークターゲット55上の予め定められた位置(1点でも複数点でも可)に光ビームLを照射してクロスライン等のマーキングを行い、次いで図12(b)に示すように照射位置測定装置25(の撮像素子)で上記マーキングを撮像して画像処理によってマーキングの位置の測定を行い、マーキングの位置に誤差がある場合は光学機器2におけるガルバノメータミラーの回転角の補正を行うことで、光学機器2による光ビームLの照射位置精度を高精度に保つ。特に上記構成であれば、積層造形物の製造途中においても光ビームLの照射位置の補正を簡単に行うことができるために、高精度な焼結に有利である。
【0062】
図13は昇降枠12上に光ビームLのパワーを測定するためのパワーメータ56を配置した例を示している。覆い枠40で覆ってウィンドウ41を通してパワーメータ56に光ビームLを照射した時のパワーメータ56の出力と、覆い枠40をパワーメータ56上から外して光ビームLを直接パワーメータ56に照射した時のパワーメータ56の出力との差から、ウィンドウ41の汚れ具合による光ビームLの減衰率を求めることができるために、前記清掃手段によるウィンドウ41の清掃タイミングを容易に且つ適切に設定することができて、製造効率を高めることができるとともに、良好な焼結を常に得ることができるものとなる。
【0063】
単一のスライドプレート18に上記覆い枠40と粉末供給部15とを設けてもよい。この場合の一例を図14に示す。昇降枠12の上面に沿って直線状にスライド自在となっているスライドプレート18の長手方向一端側に粉末供給口19を設けて粉末供給部15とし、スライドプレート18の他端側をウィンドウ41が設けられた覆い枠40としている。このスライドプレート18は、昇降枠12の側面に設けたリニアモータ等のリニア駆動部で昇降枠12上面に沿ってスライドする。
【0064】
図14に示す状態からスライドプレート18を図14中の左方に移動させることで、ベース11上への新たな粉末層の形成を行い、次いでウィンドウ41を通じて粉末層に光ビームLの照射を行うことで焼結を行う。加工機3による加工を造形物9に対して行う時は、図の位置までスライドプレート18を復帰させてベース11上を開放する。
【0065】
図15に別の例を示す。ここでのスライドプレート18は、昇降枠12上でモータ58により軸回りに回転スライドする円盤となっている。また、このスライドプレート18は粉末供給口19を備える粉末供給部15とウィンドウ41を有する覆い枠40とを兼ねている上に、加工機3による除去加工の時のための切削用開口39が上下に貫通形成されたものとなっている。
【0066】
スライドプレート18を回転させることで、スライドプレート18の周部に設けた粉末供給部15と光ビームLの照射の際の覆い枠40と除去加工の際の切削用開口39とをベース11上に順次入れ換えて位置させることができる。また図示例においては、覆い枠40の部分と切削用開口39との間に複数の小孔38を設けているが、これはベース11上の粉末(や除去加工に際して生じた切り屑)を吸引する際に用いるもので、焼結後に除去加工を行うに当たって未焼結粉末を除いた状態で行うことで未焼結粉末が造形品を傷付けてしまうことを防いだり、除去加工で生じた切り屑を除いて次に形成する粉末層に切り屑が混じることを防ぐ。
【0067】
覆い枠40を兼ねるスライドプレート18に粉末供給口19と粉末吸引機構とを設けた例を図17に示す。直線スライドする上記スライドプレート18のスライド方向一端側に粉末供給口19を、覆い枠40の部分を挟んだ他端側に粉末吸引用の吸引ノズル185を配している。該吸引ノズル185は、スライドプレート18の上記他端側にスライド方向と直交する方向に長いスリット184に沿ってスライド移動自在として配置しており、粉末8の焼結後、あるいは除去加工後、図17(c)に示すようにスライドプレート18のスリット184を有する他端部をベース11上に位置させて吸引ノズル185をスリット184に沿ってスライドさせつつ未焼結粉末の吸引除去あるいは切り屑の吸引除去を行う。
【0068】
このような吸引除去を行えば、次に粉末8を供給して硬化させることで硬化層を形成するにあたり、粉末層をスパッタなどが混入していない均質なものとすることができ、また切り屑が混じっていないものとすることができるために、良質な硬化層を形成することができる。なお、粉末除去を行った場合、次の粉末供給に際しては、粉末供給部15からはより多くの粉末8を供給して粉末層を形成することになる。
【0069】
ところで、粉末供給部15や覆い枠40、更には切削用開口39等をスライドプレート18に一体に設ける場合、複数のベース11と単一の昇降枠12とに組み合わせると、一方のベース11に粉末を供給している時に他のベース11上で焼結や切削加工を行ったり、あるベース11上で焼結を行っている時に他のベース11上で切削加工を行ったりすることができるものとなり、複数の造形物を同時に効率良く製造することができるものとなる。
【0070】
また、スライドプレート18を上述のように回転スライドするものとして設ける場合、その周部に粉末供給部15や覆い枠40、切削用開口39等を複数配置する時にも、コンパクトに構成することができるほか、上述のように複数のベース11と単一の昇降枠12とに組み合わせることにも容易に対応することができる。
【0071】
上記の各例では、光学機器2を加工機3上に設置していたが、図17に示すように覆い枠40(スライドプレート18)上に光学機器2を設置したものであってもよい。
【0072】
また、光学機器2を加工機3の主軸台31に着脱自在に取り付けるものとする場合、図18に示すように、光学機器2を着脱自在とするための取付台31に、光学機器2の取付位置を上下方向に変更することができるものを用いることも好ましい。
【0073】
光学機器2を高い位置に取り付けると、加工面までの距離が長くなるために、この距離が短い場合に比して、スキャン機構22の振り角度が同じでも加工面での走査距離が長くなり、同じ角速度で振っても加工面での速度は速くなる。その代わりに振り角度に誤差があると、加工面での照射位置誤差が大きくなる。
【0074】
従って、広範囲を高速に走査することが求められているとともに積層造形物に求められる精度がさほど高くない場合は、光学機器2を高い位置に取り付けることで、より高速な硬化層の形成を行うことができ、精度良く走査したい場合は低い位置に光学機器2を取り付けるのである。
【0075】
同じ積層造形物に対する光ビームLの照射でも、外面となる部分を形成する時は低い位置に、内部領域の塗り潰しを行う場合は高い位置に光学機器2を取り付けるようにしてもよい。
【0076】
図19は、スライドプレート18に設けた材料供給口19の上面開口を閉じるカバー193を設けた例を示している。該カバー193は、材料の粉末8にごみやほこりが混じったり、焼結時に発生するスパッタ、あるいは切削除去加工時に発生する切り屑などが粉末8に混じることを防ぐ。
【0077】
このカバー193は、スライドプレート18のスライド動作に応じて自動開閉されるようにしておくことが好ましく、図20に示すものでは、回転自在に支持されているカバー193がストッパー194との当接で回転して材料供給口19の上面開口を開く。
【0078】
図21は昇降枠12の上面に溜まった余剰の粉末8を排出するための排出口125を昇降枠12に設けたものを示している。昇降枠12とスライドプレート18との間には、きわめて小さい隙間しかなく、ベース11上の造形部上に溜まるとともに昇降枠12の上面よりも高い位置にきた粉末や切り屑、スパッタ等は、スライドプレート18のスライド時に昇降枠12上面の周辺部へと押し出されてしまう。
【0079】
上記排出口125は、このような粉末や切り屑等を排出し、スライドプレート18のスライド動作の妨げになったりすることを防ぐ。なお、排出口125を通じて排出したものは、篩いにかけて粉末8は回収することで再利用する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態の一例の概略断面図である。
【図2】(a)(b)は夫々同上の光学機器の取り付け例を示す概略図である。
【図3】同上の粉末供給部の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)(c)は概略断面図である。
【図4】同上の粉末供給部の他例を概略断面で示す説明図である。
【図5】(a)は同上の粉末供給部の平面図、(b)は更に他例の概略平面図、(c)は更に他の例の概略平面図である。
【図6】粉末供給部の更に他例の概略断面図である。
【図7】(a)(b)は粉末供給部の別の例の概略断面図である。
【図8】不活性雰囲気を形成するための覆い枠の一例を示す概略断面図である。
【図9】(a)(b)は覆い枠の他例の水平断面図と概略断面図である。
【図10】清掃部材の一例を示す概略断面図である。
【図11】2組の清掃部材を設けた例を示しており、(a)(b)は共に概略断面図である。
【図12】(a)(b)は光ビーム照射位置補正のための構成の一例を示す概略断面図である。
【図13】(a)(b)は光ビームのパワー測定のための構成の一例を示す概略断面図である。
【図14】別の実施形態の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は概略縦断面図、(c)は概略横断面図である。
【図15】更に別の実施形態の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図16】光学機器の他の配置例を示す概略断面図である。
【図17】粉末吸引機構を備えた例を示しており、(a)はスライドプレートの水平断面図、(b)(c)は概略断面図である。
【図18】光学機器を着脱自在とした場合の別の例の概略断面図である。
【図19】材料供給口にカバーを設けた例の概略断面図である。
【図20】(a)(b)は材料供給口にカバーを設けた他の例の斜視図である。
【図21】昇降枠に排出口を設けた例の概略断面図である。
【図22】従来例を示すもので、(a)は要部破断斜視図、(b)は部分断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 造形機
2 光学機器
3 加工機
8 粉末
9 硬化層
10 造形部
11 ベース
12 昇降枠
15 粉末供給部
L 光ビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末材料を光ビームで焼結または溶融固化させることで三次元形状の積層造形物を製造する積層造形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層造形物の製造に、選択的粉末焼結積層として知られている製造方法がある。これは無機質あるいは有機質の粉末からなる粉末層の形成と、この粉末層の所定箇所を光ビ−ムの照射で焼結または溶融固化させて硬化層を形成するということを繰り返すことで、多数の硬化層を積層一体化して造形物を製造する方法であり、特開2002−115004号公報(特許文献1)においては、上記に加えて、それまでに作成した造形物の表面の除去加工を行う工程を、繰り返される硬化層の作成工程中に挿入することで、造形物表面をその形状にかかわらず低コストで滑らかに仕上げることができるようにすることが示されている。
【0003】
しかしながら、上記のものでは製造する積層造形物の精度の点で問題を有している。すなわち、厚みの薄い粉末層を次々と形成するために、上記造形部は図22に示すように、造形ステージ61とこの造形ステージ61を昇降させる昇降機構62及び造形ステージ61を囲む造形枠63で構成し、更に粉末供給部は材料タンク65とこの材料タンク65に収めた粉末材料を押し上げる昇降機構66及び昇降テーブル67、そして材料タンク65の上層に位置する材料粉末を造形ステージ61側に送るとともに表面を均す材料供給ブレード68で構成していた。
【0004】
このものでは、上記造形ステージ61上に形成した粉末層の所定箇所を焼結または溶融固化させることで硬化層を形成した後の次層の粉末層の形成は、造形ステージ61を下降させるとともに、上記昇降テーブル67を一段上昇させて材料供給ブレード68を駆動することで造形ステージ61側に粉末を供給して行うわけであるが、造形物がその上に形成される造形ステージ61が可動であるために、光ビームの照射による焼結または溶融固化や、加工機による除去工程の実施に際し、造形テーブル61上にそれまでに形成した造形物が微小ながらも位置ずれしてしまうものであり、これ故にμmオーダーの精度の造形物を製造することは困難である。
【0005】
また、造形ステージ61及び昇降テーブル67を昇降させるための昇降機構62,66はこれら造形ステージ61や昇降テーブル67の下方に設置せざるを得ず、このために造形部の全高Hは造形ステージ61(及び昇降テーブル67)の昇降範囲H1の倍以上の高さとなってしまい、装置全体の全高を抑えることが困難である。なお、図中H2は昇降機構62(66)における軸駆動範囲を示している。
【特許文献1】特開2002−115004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、精度の高い積層造形物の製造に応ずることができる上に装置の小型化にも応ずることができる積層造形装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る積層造形装置は、無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させて硬化層を形成する光学機器とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造する積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、固定されている該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備えて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることに第1の特徴を有しており、無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させて硬化層を形成する光学機器と、切削除去加工用の加工機とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造するとともに上記繰り返しの間に上記加工機による切削除去加工をそれまでに積層一体化された三次元造形物の表面に対して行う積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備え、少なくとも3軸制御可能な数値制御工作機械である上記加工機におけるテーブルに上記ベースが固定されて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることに第2の特徴を有している。
【0008】
ベースを動かさずにベース上に粉末層(硬化層)を積み上げていくことができるために、高精度なものを容易に得ることができる。
【0009】
前記粉末層形成手段は、前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートに設けた粉末材料供給口から上記ベース上面と上記昇降枠とで囲まれる空間に粉末を供給するものとして設けられていると、コンパクトに構成することが容易となる。
【0010】
上記スライドプレートのスライド方向と直交する方向における上記粉末材料供給口の幅が同方向における上記ベースの幅よりも大であることが粉末供給をむら無く行うという点で有利となる。
【0011】
上記スライドプレートに粉末の嵩密度を高めるための部材を設けておくことも好ましい。焼結または溶融固化させた後の密度を高くすることができるからである。
【0012】
そして上記スライドプレートが粉末層表面を均すための部材を備えていると、摩擦による摩耗劣化の防止と安定した粉末供給の点で有利となるとともに硬化層の表面の荒れを少なくすることができる。
【0013】
また、上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて前記昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えたものとするのも好ましい。雰囲気ガスの使用量を抑えつつ硬化層の酸化による問題を避けることができる。
【0014】
上記覆い枠の内部に供給される雰囲気ガスを旋回流とする旋回流形成手段を備えたものでは、雰囲気ガスの充填を効率良く行うことができる。
【0015】
上記覆い枠の内部空間における酸素濃度を測定する酸素濃度計を備え、前記雰囲気ガス供給手段が上記酸素濃度計の出力に応じて雰囲気ガスの供給を行うものであると、雰囲気ガスの使用量を更に抑えることができる。
【0016】
上記覆い枠の内部空間を上下に移動するピストンを備えて、該ピストンの上下動で雰囲気ガスの給排がなされるものであれば、雰囲気ガスの給排を迅速に行うことができる。
【0017】
また、上記ウィンドウがfθレンズで形成されていると、精度の良い焼結または溶融固化を行うことができるものとなる。
【0018】
上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃手段を備えていることも好ましい。焼結時に発生するヒュームによる汚れを落として、焼結を適切に行うことができる。この清掃手段としては、上記昇降枠に設けられて上記覆い枠内を上下移動するとともに回転して上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃部材を備えたものを好適に用いることができる。
【0019】
また、前記覆い枠が前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なものとして複数設けられているとともに、複数の覆い枠のうちのある覆い枠がベース上にある時に他の覆い枠が清掃手段によって清掃される位置にあると、焼結と清掃とを同時に行うことができ、清掃動作による製造時間の増大を防ぐことができる。
【0020】
前記光学機器は覆い枠上に設置されたものであってもよい。
【0021】
更に、前記昇降枠の上面に設けられて前記光学機器からの光ビームによってマーキングがなされるマークターゲットと、このマークターゲットに付されたマーキングの位置を測定して光学機器による光ビームの照射位置の補正データを得る測定装置とを備えていると、光ビームの照射による焼結または溶融固化の精度を高くすることができる。
【0022】
前記昇降枠の上面に前記光学機器からの光ビームのパワーを測定するパワー測定装置を配していると、適切なパワーによる精度の良い焼結または溶融固化を行うことができる上に、清掃手段を備えたものでは清掃のタイミングを適切に知ることができる。
【0023】
また、請求項1または2記載の積層造形装置において、上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えており、前記粉末層形成手段は昇降枠の上面に沿ってスライド自在とされたスライドプレートに設けられており、上記覆い枠は上記スライドプレートの一部として設けられているものも好ましい。粉末層の形成と不活性雰囲気下での焼結または溶融固化とをスライドプレートのスライドによって得ることができて、効率の良い積層造形物の製造を行うことができる。
【0024】
更に前記昇降枠が、複数設けられている前記ベースの各外周を囲むとともに各ベースに対して上下移動自在となっており、この昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートを備え、前記粉末層形成手段は上記スライドプレートに設けられて上記複数のベースの上方に前記スライドプレートのスライドによって選択的に粉末層を形成するものであれば、単一の昇降枠の昇降動作と該昇降枠に対するスライドプレートのスライド動作で複数のベース上に夫々粉末層を形成していくことができる。
【0025】
前記スライドプレートは加工機における工具を通すための切削用開口を備えたものであってもよい。スライドプレートのスライドだけで粉末供給と焼結または溶融固化と切削加工の状態を切り換えることができる。
【0026】
前記スライドプレートがベース上の未硬化粉末を吸引除去する吸引部を備えたものであると、切削加工に際して未硬化粉末が邪魔になったり加工精度を低下させたりしてしまう事態が生じるのを防ぐことができる。
【0027】
そして前記スライドプレートは、前記昇降枠の上面に沿って回転スライドするものであれば、スライドプレートに多くのものを組み込む時にもコンパクトにまとめることができる。
【0028】
前記光学機器が、光ビームの照射面からの高さ位置を可変として設けられていると、造形速度や精度に応じた光ビーム照射を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、ベースを動かさずにベース上に粉末層(硬化層)を積み上げていくことができるものであり、このためにベース上に形成される造形物の精度を悪化させることになる要因を無くすことができて、高精度な積層造形物の製造が容易となる。
【0030】
また、加工機による切削除去加工をそれまでに積層一体化された造形物の表面に対して行うことを粉末層の形成と硬化層の形成の繰り返しの間に行うものにおいては、切削除去加工の際にそれまでに積層一体化された造形物がぶれてしまうことがなく、このものにおいても高精度な積層造形物の製造が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1に本発明に係る積層造形装置の一例を示す。この積層造形装置は、造形部10と造形部10上に配した粉末供給部15とからなる造形機1、造形部10に対して光ビームLを照射する光学機器2、そして除去加工のための加工機3とからなる。
【0032】
上記加工機3は、テーブル(マシニングテーブル)30と少なくとも3軸制御が可能な主軸台31とを備える数値制御工作機械であり、その主軸台31のスピンドルヘッド32には除去加工のためのエンドミル33がセットされる。そしてこの加工機3におけるテーブル30上に前記造形機1がセットされるとともに、積層造形物が上面に形成されるベース11がテーブル30に固定されて設置されており、上記光学機器2は上記主軸台31にセットされたものとなっている。なお、図示例ではスピンドルヘッド32がX,Z軸方向に可動でテーブル30がY軸方向に可動のものとなっている。
【0033】
ここにおける造形機1の造形部10は、上述のように上記テーブル30上に固定されたベース11上に積層造形物を形成するもので、ベース11上に粉末層を形成するために、ベース11の四周を囲むとともに上記テーブル30上にセットされたリニア駆動機構からなる昇降機構13によって昇降する昇降枠12を備えている。この昇降枠12はベース11に対して上昇させた時、ベース11上に昇降枠12で囲んだ十分な高さの空間を形成することができる厚みを少なくともベース11を囲む部分に有している。
【0034】
また、粉末供給部15は、上記昇降枠12の上面上に粉末を送り込む粉末供給機(図示せず)と、図3にも示すように上記昇降枠12の上面に配した材料供給ブレード16と、この材料供給ブレード16を水平に駆動する駆動部17とからなるものとして形成している。
【0035】
ここで用いる材料粉末8は、無機質(金属やセラミック)の粉末、あるいは有機質(プラスチック)の粉末であり、光学機器2で照射する光ビームによって焼結または溶融固化させて硬化層を得ることができるものであれば、その種類を問わないが、図示例のものでは平均粒径20μmの球形の鉄粉を用いている。
【0036】
前記加工機3は、数値制御工作機械、殊に切削工具であるエンドミル33を自動交換可能なマシニングセンタで構成している。上記エンドミル33には超硬素材の二枚刃ボールエンドミルが主として用いられ、加工形状や目的に応じてスクエアエンドミル、ラジアスエンドミル、ドリルなども用いられる。
【0037】
粉末8を焼結するための光ビームLを照射する光学機器2は、レーザ発振器で構成した光源21と、集光レンズ、所定位置に光ビームLを照射するために光ビームLの方向を偏向するガルバノメータミラー等からなるスキャン機構22で構成され、ここではスピンドルヘッド32側面にスキャン機構22の部分を固定し、光源21とスキャン機構22とを光ファイバ23で接続したものとしてある。上記光源21としては、粉末が鉄粉である場合、炭酸ガスレーザ(出力500W)やNd:YAGレーザ(出力500W)などを使用する。
【0038】
上記スキャン機構22(光学機器2)は、図2(a)に示すように、スピンドルヘッド32の側面に設けた取付台310に着脱自在としたり、図2(b)に示すように、スピンドルヘッド32のコレットチャックによってエンドミル33に代えて装着されるようにしたものであってもよい。後者の場合、光ビームLの照射時とエンドミル33による加工時とでスピンドルヘッド32をほぼ同じ位置においておくことができるために、主軸台31側面に光学機器2がある場合に比してスピンドルヘッド32の全移動範囲を小さくすることができて、相対的に大きい造形物を製造することができることになる。しかもエンドミル33を用いて切削を行う時には、光学機器2が主軸台31に無いために、エンドミル33による加工時に上記光ファイバ23などが邪魔にならず、切削時の振動の影響も小さくなる。
【0039】
上記積層造形装置を用いて積層造形物を製造するにあたっては、昇降枠12の上面に粉末8を供給し、昇降枠12の上面をベース11上に固定した造形用プレートの上面より僅かに高くした状態でブレード16を水平駆動することで上記粉末8をベース11上に供給するとともに均すことで第1層目の粉末層を形成し、次いで造形部10の上方に位置させた光学機器2からの光ビームLを上記粉末層の硬化させたい箇所に照射することで粉末8を焼結させて硬化層を形成する。
【0040】
この後、昇降枠12を所定量だけ上げた状態で粉末8の供給と均すことを行って、第1層目の粉末層(と硬化層)の上に第2層目の粉末層を形成し、この第2層目の粉末層の硬化させたい箇所に光ビームLを照射することで粉末を焼結させて下層の硬化層と一体化した次の硬化層を形成する。
【0041】
昇降枠12を上昇させて新たな粉末層を形成し、光ビームLを照射して所要箇所を硬化させて硬化層とするという工程を繰り返すことで、目的とする三次元形状の造形物9を硬化層の積層物としてベース11上の上記造形用プレート上に製造するものであり、粉末層の厚みとしては、得られた積層造形物を成形用金型などに利用する場合、0.05mm程度とするのが好ましい。
【0042】
光ビームLの照射経路(ハッチング経路)は、積層造形物の三次元CADデータから予め作成しておく。すなわち、三次元CADモデルから生成したSTL(Standard Triangulation Language)データを等ピッチ(粉末層の厚みを0.05mmとした場合、0.05mmピッチ)でスライスした各断面の輪郭形状データを用いて各層毎の光ビームLの照射経路を作成する。この時、積層造形物の少なくとも最表面が高密度(気孔率5%以下)となるように焼結させることができるように光ビームLの照射を行い、内部は低密度となるように焼結させることで、つまりは形状モデルデータを予め、表層部と内部とに分割しておき、内部についてはポーラスとなるような焼結条件、表層部はほぼ粉末が溶融して高密度となる条件で光ビームLを照射することで、緻密な表面を持つ造形物を高速に得ることができる。
【0043】
そして、上記粉末層を形成しては光ビームLを照射して硬化層を形成するということを繰り返していくのであるが、それまでに焼結させた硬化層の全厚みがたとえば加工機3におけるエンドミル33の工具長さなどから求めた所要の値になれば、エンドミル33を造形部10の上方に位置させて、エンドミル33によってそれまでに造形した造形物9の表面(主として上部側面)を切削する。
【0044】
この加工機3による切削除去加工によって、造形物9の表面に付着した粉末による余剰硬化部を除去することができるために、造形物9表面に高密度部を全面的に露出させることができる。この加工が終了すれば、再度粉末層の形成と焼結とを繰り返す。
【0045】
加工機3による切削加工経路は、光ビームLの照射経路と同様に三次元CADデータから予め作成しておく。この時、等高線加工を適用して加工経路を決定するが、Z方向(上下方向)ピッチは焼結時の積層ピッチにこだわる必要はなく、緩い傾斜の場合はZ方向ピッチをより細かくして補間することで、さらに滑らかな表面を得られるようにしてもよい。
【0046】
図4に粉末供給部15の他例を示す。ここにおける粉末供給部15は、昇降枠12の上面に沿ってスライド移動自在なスライドプレート18に上下に貫通する粉末供給口19を形成したものとなっており、該粉末供給口19がベース11上ではなく昇降枠12上に位置する状態で図示しない粉末供給機から粉末供給口19に粉末を入れ、次いで上記粉末供給口19がベース11を横切るようにスライドプレート18をスライドさせることによって粉末8をベース11上に供給するとともに均すのである。なお、光ビームLの照射による焼結は、粉末供給口19をベース11上に位置させて粉末供給口19を通じて粉末層に光ビームLを照射したり、スライドプレート18をベース11上から退去させた状態で行う。
【0047】
この時、粉末供給口19の幅(スライドプレート18のスライド方向と直交する方向の長さ)は、図5(a)に示すようにベース19の同方向の幅よりも大きくしておくことで、ベース11上の各部に粉末をむら無く供給することができる。なお、粉末供給口19は図のような方形である必要はなく、ベース19上の全域に粉末8を供給することができるものであれば、長方形や円形や楕円形はもちろん他の形状のものであってもよい。
【0048】
また、図5(b)に示すように、スライドプレート18内に上下方向を軸として該軸回りに回転自在な回転プレート190を設けて、この回転プレート190に粉末供給口19を形成すると、回転プレート190の回転によって粉末供給口19の上記方向の幅を変化させることができる。
【0049】
粉末供給口19の内側壁に図5(c)に示すような凹凸191を設けておくことも好ましい。粉末供給口19内の上記幅方向の一方側に粉末8が偏ってしまうというような事態が生じるのを防ぐのに有効である。余剰粉末を回収する回収部をスライドプレート18もしくは昇降枠12に設けておいてもよい。余剰粉末がスライドプレート18のスライド動作を損なってしまう事態が生じるのを防ぐことができる。
【0050】
粉末供給口19を有するスライドプレート18のスライド動作でベース11上の昇降枠12で囲まれた造形用空間に粉末8を供給するものにおいては、図6に示すように、粉末供給口19内にある粉末8上に錘81を載せて粉末8に圧力を加えたり、振動発生装置82を設けて振動を粉末8に加えることができるようにしておくと、粉末8の嵩密度を高くしてベース11上に供給することができるために、粉末層の密度が高くなって焼結密度も高いものを得ることができることになる。
【0051】
上記の例ではスライドプレート18そのものがベース11上の粉末層の表面を均す部材を兼ねているが、図7に示すように、スライドプレート18における粉末供給口19のスライド方向前後(前もしくは後ろのいずれか一方だけであってもよい)に粉末8を均すためのブレード16を設けてもよい。これは軽量化のためにスライドプレート18を軽金属などで形成する場合に有効である。なお、ブレード16で粉末層表面を均す時、この表面には異常焼結で生じた硬質な突起物が存在している可能性があるために、ブレード16には鋼製やセラミック製のものが好適である。
【0052】
また、上記突起物の除去を確実にするために、図7(b)に示すように、スライドプレート18の下面側にロータリー刃83を配して、スライドプレート18の下面と一致する刃の高さとなっている上記ロータリー刃83で上記突起物を切削できるようにすることも好ましい。ロータリー刃83は別途専用モータで駆動するもののほか、スライドプレート18のスライド移動を利用してロータリー刃83を回転させる機構(たとえばラックアンドピニオン機構)を用いて駆動するようにしてもよい。
【0053】
ところで、光ビームLを粉末層に照射して焼結を行う時、粉末層が大気に開放された状態では、使用する粉末8の材料種別によっては酸化が生じてきれいに焼結させることができないことがある。この種の問題は不活性雰囲気中で光ビームLを照射することで対処するわけであるが、ここでは図8に示すように、底面開口の開口面積がベース11の上面の面積以上であるとともに上面がウインドウ41で閉じられた覆い枠40を昇降枠12上に配置し、覆い枠40で囲んだ空間内に不活性な雰囲気ガス(たとえば窒素やアルゴン)を充填した状態で光ビームLの照射を上記ウインドウ41を通じて行うことで対応している。図中45は雰囲気ガス発生装置またはタンク、46は焼結時に発生するヒュームなどを捕集する集塵機、47はガス供給口、48はガス排出口である。ベース11上の覆い枠40で囲まれた小さな空間だけに雰囲気ガスを充填すればよいために、雰囲気ガスの給排に要する時間や使用する雰囲気ガス量を抑えることができる。
【0054】
雰囲気ガスの使用量の低減という点では、覆い枠40の内部空間の酸素濃度を計測する酸素濃度計49を設けて、あらかじめ定めた酸素濃度より上記空間内の酸素濃度が高くなった場合に雰囲気ガスを供給するようにしてもよい。
【0055】
なお、上記ウィンドウ41は光ビームLがYAGレーザの場合は石英ガラスで、光ビームLが炭酸ガスレーザである場合はジンクセレンなどを使用することで光ビームLの透過性を高くしているが、単なる平行板ではなく、fθレンズとして機能するようにしておくと、光ビームLの焼結面でのスポット径を一定にすることができるために、精度の良い焼結を行うことができる。もちろん、ダイナミックフォーカスレンズを使用してスポット径を一定にしてもよいが、この場合は光学機器2側に追加部材として配置しなくてはならず、光学機器2が大きく且つ重くなるという問題を有するものとなる。
【0056】
また、上記覆い枠40は、昇降枠12上面に沿ってスライド自在なスライドプレート18として設けておくと、前記粉末層の形成時及び除去加工時と、光ビームLを照射することによる焼結時とにおける覆い枠40の移動を簡便に行わせることができる。
【0057】
雰囲気ガスの給排に要する時間やその換気効率、そしてウィンドウ41の汚れ防止などの点から、覆い枠40に設けるガス供給口47や排気口48は、図9に示すように、雰囲気ガスが上方から斜め下方に向けて且つ覆い枠40の内周面に沿って覆い枠40の内部空間に入るようにしておくことが望ましい。上記空間内に入る雰囲気ガスが上記空間内で上方側から下方側へと旋回しながら流れるようにしておくわけである。
【0058】
上記ウィンドウ41が前述のヒュームによって汚れて時間経過に従い光ビームLの透過率が低下してしまう点については、このウィンドウ41を清掃するための清掃手段を昇降枠12に組み込んでおくことが好ましい。この清掃手段の一例を図10に示す。昇降枠12を上下に貫通する開口内に、昇降用シリンダー53によって昇降駆動されるとともにモータ52によって回転駆動される清掃部材51を配置してある。クリーニングペーパや不織布などが表面に設けられているとともに洗浄剤(高圧エア、水など)を噴出する噴出口を備えた清掃部材51は、洗浄剤によるウィンドウ41内面や覆い枠40内壁の洗浄及び汚れの拭き取りを行う。なお、ここでの昇降用シリンダー53は、テーブル30上にセットされているために、清掃部材51の昇降量は昇降枠12の昇降量も含めて行うものとなっている。
【0059】
不活性雰囲気を形成する上記覆い枠40は、昇降枠12上に複数設けたり、あるいは図11に示すように、複数の個別のウィンドウ41を備えたものとして、あるウィンドウ41がベース11上に位置する時、他のウィンドウ41が清掃機構上に位置するようにしておくと、焼結と上記クリーニングとを同時に行うことができることになり、クリーニングによる待ち時間を無くすことができて積層造形物の製造に要する時間を短くすることができる。
【0060】
上記清掃部材51をピストンとして利用することで覆い枠40内の雰囲気ガスの強制給排を清掃部材51で行うようにしてもよい。清掃部材51を上昇させることで覆い枠40の内部空間からの雰囲気ガスの排出を行い、清掃部材51を下降させることで覆い枠40の内部空間に雰囲気ガスを吸引するのである。この場合、ガス供給口47とガス排出口48はバルブを備えたものとし、これらバルブを清掃部材(ピストン)51の昇降に連動させて開閉する。
【0061】
図12は昇降枠12上に光ビームLを照射してマーキングするためのマークターゲット55を設けるとともに、マークターゲット55上のマーキングの位置を測定するための照射位置測定装置25を設けたものを示しており、図12(a)に示すようにマークターゲット55上の予め定められた位置(1点でも複数点でも可)に光ビームLを照射してクロスライン等のマーキングを行い、次いで図12(b)に示すように照射位置測定装置25(の撮像素子)で上記マーキングを撮像して画像処理によってマーキングの位置の測定を行い、マーキングの位置に誤差がある場合は光学機器2におけるガルバノメータミラーの回転角の補正を行うことで、光学機器2による光ビームLの照射位置精度を高精度に保つ。特に上記構成であれば、積層造形物の製造途中においても光ビームLの照射位置の補正を簡単に行うことができるために、高精度な焼結に有利である。
【0062】
図13は昇降枠12上に光ビームLのパワーを測定するためのパワーメータ56を配置した例を示している。覆い枠40で覆ってウィンドウ41を通してパワーメータ56に光ビームLを照射した時のパワーメータ56の出力と、覆い枠40をパワーメータ56上から外して光ビームLを直接パワーメータ56に照射した時のパワーメータ56の出力との差から、ウィンドウ41の汚れ具合による光ビームLの減衰率を求めることができるために、前記清掃手段によるウィンドウ41の清掃タイミングを容易に且つ適切に設定することができて、製造効率を高めることができるとともに、良好な焼結を常に得ることができるものとなる。
【0063】
単一のスライドプレート18に上記覆い枠40と粉末供給部15とを設けてもよい。この場合の一例を図14に示す。昇降枠12の上面に沿って直線状にスライド自在となっているスライドプレート18の長手方向一端側に粉末供給口19を設けて粉末供給部15とし、スライドプレート18の他端側をウィンドウ41が設けられた覆い枠40としている。このスライドプレート18は、昇降枠12の側面に設けたリニアモータ等のリニア駆動部で昇降枠12上面に沿ってスライドする。
【0064】
図14に示す状態からスライドプレート18を図14中の左方に移動させることで、ベース11上への新たな粉末層の形成を行い、次いでウィンドウ41を通じて粉末層に光ビームLの照射を行うことで焼結を行う。加工機3による加工を造形物9に対して行う時は、図の位置までスライドプレート18を復帰させてベース11上を開放する。
【0065】
図15に別の例を示す。ここでのスライドプレート18は、昇降枠12上でモータ58により軸回りに回転スライドする円盤となっている。また、このスライドプレート18は粉末供給口19を備える粉末供給部15とウィンドウ41を有する覆い枠40とを兼ねている上に、加工機3による除去加工の時のための切削用開口39が上下に貫通形成されたものとなっている。
【0066】
スライドプレート18を回転させることで、スライドプレート18の周部に設けた粉末供給部15と光ビームLの照射の際の覆い枠40と除去加工の際の切削用開口39とをベース11上に順次入れ換えて位置させることができる。また図示例においては、覆い枠40の部分と切削用開口39との間に複数の小孔38を設けているが、これはベース11上の粉末(や除去加工に際して生じた切り屑)を吸引する際に用いるもので、焼結後に除去加工を行うに当たって未焼結粉末を除いた状態で行うことで未焼結粉末が造形品を傷付けてしまうことを防いだり、除去加工で生じた切り屑を除いて次に形成する粉末層に切り屑が混じることを防ぐ。
【0067】
覆い枠40を兼ねるスライドプレート18に粉末供給口19と粉末吸引機構とを設けた例を図17に示す。直線スライドする上記スライドプレート18のスライド方向一端側に粉末供給口19を、覆い枠40の部分を挟んだ他端側に粉末吸引用の吸引ノズル185を配している。該吸引ノズル185は、スライドプレート18の上記他端側にスライド方向と直交する方向に長いスリット184に沿ってスライド移動自在として配置しており、粉末8の焼結後、あるいは除去加工後、図17(c)に示すようにスライドプレート18のスリット184を有する他端部をベース11上に位置させて吸引ノズル185をスリット184に沿ってスライドさせつつ未焼結粉末の吸引除去あるいは切り屑の吸引除去を行う。
【0068】
このような吸引除去を行えば、次に粉末8を供給して硬化させることで硬化層を形成するにあたり、粉末層をスパッタなどが混入していない均質なものとすることができ、また切り屑が混じっていないものとすることができるために、良質な硬化層を形成することができる。なお、粉末除去を行った場合、次の粉末供給に際しては、粉末供給部15からはより多くの粉末8を供給して粉末層を形成することになる。
【0069】
ところで、粉末供給部15や覆い枠40、更には切削用開口39等をスライドプレート18に一体に設ける場合、複数のベース11と単一の昇降枠12とに組み合わせると、一方のベース11に粉末を供給している時に他のベース11上で焼結や切削加工を行ったり、あるベース11上で焼結を行っている時に他のベース11上で切削加工を行ったりすることができるものとなり、複数の造形物を同時に効率良く製造することができるものとなる。
【0070】
また、スライドプレート18を上述のように回転スライドするものとして設ける場合、その周部に粉末供給部15や覆い枠40、切削用開口39等を複数配置する時にも、コンパクトに構成することができるほか、上述のように複数のベース11と単一の昇降枠12とに組み合わせることにも容易に対応することができる。
【0071】
上記の各例では、光学機器2を加工機3上に設置していたが、図17に示すように覆い枠40(スライドプレート18)上に光学機器2を設置したものであってもよい。
【0072】
また、光学機器2を加工機3の主軸台31に着脱自在に取り付けるものとする場合、図18に示すように、光学機器2を着脱自在とするための取付台31に、光学機器2の取付位置を上下方向に変更することができるものを用いることも好ましい。
【0073】
光学機器2を高い位置に取り付けると、加工面までの距離が長くなるために、この距離が短い場合に比して、スキャン機構22の振り角度が同じでも加工面での走査距離が長くなり、同じ角速度で振っても加工面での速度は速くなる。その代わりに振り角度に誤差があると、加工面での照射位置誤差が大きくなる。
【0074】
従って、広範囲を高速に走査することが求められているとともに積層造形物に求められる精度がさほど高くない場合は、光学機器2を高い位置に取り付けることで、より高速な硬化層の形成を行うことができ、精度良く走査したい場合は低い位置に光学機器2を取り付けるのである。
【0075】
同じ積層造形物に対する光ビームLの照射でも、外面となる部分を形成する時は低い位置に、内部領域の塗り潰しを行う場合は高い位置に光学機器2を取り付けるようにしてもよい。
【0076】
図19は、スライドプレート18に設けた材料供給口19の上面開口を閉じるカバー193を設けた例を示している。該カバー193は、材料の粉末8にごみやほこりが混じったり、焼結時に発生するスパッタ、あるいは切削除去加工時に発生する切り屑などが粉末8に混じることを防ぐ。
【0077】
このカバー193は、スライドプレート18のスライド動作に応じて自動開閉されるようにしておくことが好ましく、図20に示すものでは、回転自在に支持されているカバー193がストッパー194との当接で回転して材料供給口19の上面開口を開く。
【0078】
図21は昇降枠12の上面に溜まった余剰の粉末8を排出するための排出口125を昇降枠12に設けたものを示している。昇降枠12とスライドプレート18との間には、きわめて小さい隙間しかなく、ベース11上の造形部上に溜まるとともに昇降枠12の上面よりも高い位置にきた粉末や切り屑、スパッタ等は、スライドプレート18のスライド時に昇降枠12上面の周辺部へと押し出されてしまう。
【0079】
上記排出口125は、このような粉末や切り屑等を排出し、スライドプレート18のスライド動作の妨げになったりすることを防ぐ。なお、排出口125を通じて排出したものは、篩いにかけて粉末8は回収することで再利用する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態の一例の概略断面図である。
【図2】(a)(b)は夫々同上の光学機器の取り付け例を示す概略図である。
【図3】同上の粉末供給部の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)(c)は概略断面図である。
【図4】同上の粉末供給部の他例を概略断面で示す説明図である。
【図5】(a)は同上の粉末供給部の平面図、(b)は更に他例の概略平面図、(c)は更に他の例の概略平面図である。
【図6】粉末供給部の更に他例の概略断面図である。
【図7】(a)(b)は粉末供給部の別の例の概略断面図である。
【図8】不活性雰囲気を形成するための覆い枠の一例を示す概略断面図である。
【図9】(a)(b)は覆い枠の他例の水平断面図と概略断面図である。
【図10】清掃部材の一例を示す概略断面図である。
【図11】2組の清掃部材を設けた例を示しており、(a)(b)は共に概略断面図である。
【図12】(a)(b)は光ビーム照射位置補正のための構成の一例を示す概略断面図である。
【図13】(a)(b)は光ビームのパワー測定のための構成の一例を示す概略断面図である。
【図14】別の実施形態の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は概略縦断面図、(c)は概略横断面図である。
【図15】更に別の実施形態の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は概略縦断面図である。
【図16】光学機器の他の配置例を示す概略断面図である。
【図17】粉末吸引機構を備えた例を示しており、(a)はスライドプレートの水平断面図、(b)(c)は概略断面図である。
【図18】光学機器を着脱自在とした場合の別の例の概略断面図である。
【図19】材料供給口にカバーを設けた例の概略断面図である。
【図20】(a)(b)は材料供給口にカバーを設けた他の例の斜視図である。
【図21】昇降枠に排出口を設けた例の概略断面図である。
【図22】従来例を示すもので、(a)は要部破断斜視図、(b)は部分断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 造形機
2 光学機器
3 加工機
8 粉末
9 硬化層
10 造形部
11 ベース
12 昇降枠
15 粉末供給部
L 光ビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させてして硬化層を形成する光学機器とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造する積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、固定されている該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備えて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることを特徴とする積層造形装置。
【請求項2】
無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させてして硬化層を形成する光学機器と、切削除去加工用の加工機とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造するとともに上記繰り返しの間に上記加工機による切削除去加工をそれまでに積層一体化された三次元造形物の表面に対して行う積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備え、少なくとも3軸制御可能な数値制御工作機械である上記加工機におけるテーブルに上記ベースが固定されて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることを特徴とする積層造形装置。
【請求項3】
前記粉末層形成手段は、前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートに設けた粉末材料供給口から上記ベース上面と上記昇降枠とで囲まれる空間に粉末を供給するものとして設けられていることを特徴とする1または2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
上記スライドプレートのスライド方向と直交する方向における上記粉末材料供給口の幅が同方向における上記ベースの幅よりも大であることを特徴とする請求項3記載の積層造形装置。
【請求項5】
上記スライドプレートは粉末の嵩密度を高めるための部材を備えていることを特徴とする請求項3または4記載の積層造形装置。
【請求項6】
上記スライドプレートは粉末層表面を均すための部材を備えていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項7】
上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて前記昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項8】
上記覆い枠の内部に供給される雰囲気ガスを旋回流とする旋回流形成手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の積層造形装置。
【請求項9】
上記覆い枠の内部空間における酸素濃度を測定する酸素濃度計を備えており、前記雰囲気ガス供給手段は上記酸素濃度計の出力に応じて雰囲気ガスの供給を行うものであることを特徴とする請求項7または8記載の積層造形装置。
【請求項10】
上記覆い枠の内部空間を上下に移動するピストンを備えて、該ピストンの上下動で雰囲気ガスの給排がなされるものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項11】
上記ウィンドウがfθレンズで形成されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項12】
上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃手段を備えていることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項13】
上記清掃手段は、上記昇降枠に設けられて上記覆い枠内を上下移動するとともに回転して上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃部材を備えたものであることを特徴とする請求項12記載の積層造形装置。
【請求項14】
前記覆い枠が前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なものとして複数設けられているとともに、複数の覆い枠のうちのある覆い枠がベース上にある時に他の覆い枠が清掃手段によって清掃される位置にあることを特徴とする請求項12または13記載の積層造形装置。
【請求項15】
前記光学機器が上記覆い枠上に設置されていることを特徴とする請求項7〜14のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項16】
前記昇降枠の上面に設けられて前記光学機器からの光ビームによってマーキングがなされるマークターゲットと、このマークターゲットに付されたマーキングの位置を測定して光学機器による光ビームの照射位置の補正データを得る測定装置とを備えていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項17】
前記昇降枠の上面に前記光学機器からの光ビームのパワーを測定するパワー測定装置を配していることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項18】
上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えており、前記粉末層形成手段は昇降枠の上面に沿ってスライド自在とされたスライドプレートに設けられており、上記覆い枠は上記スライドプレートの一部として設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の積層造形装置。
【請求項19】
前記昇降枠は、複数設けられている前記ベースの各外周を囲むとともに各ベースに対して上下移動自在となっており、この昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートを備え、前記粉末層形成手段は上記スライドプレートに設けられて上記複数のベースの上方に前記スライドプレートのスライドによって選択的に粉末層を形成するものであることを特徴とする請求項1または2記載の積層造形装置。
【請求項20】
前記スライドプレートは前記加工機における工具を通すための切削用開口を備えていることを特徴とする請求項18または19記載の積層造形装置。
【請求項21】
前記スライドプレートは前記ベース上の未硬化粉末を吸引除去する吸引部を備えていることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項22】
前記スライドプレートは前記昇降枠の上面に沿って回転スライドするものであることを特徴とする請求項18〜21のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項23】
前記光学機器は、光ビームの照射面からの高さ位置を可変として設けられていることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項1】
無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させてして硬化層を形成する光学機器とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造する積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、固定されている該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備えて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることを特徴とする積層造形装置。
【請求項2】
無機質あるいは有機質の粉末材料の層を形成する粉末層形成手段と、上記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結または溶融固化させてして硬化層を形成する光学機器と、切削除去加工用の加工機とを備えて、粉末層形成手段による粉末層の形成と、光学機器による硬化層の形成とを繰り返すことで複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造するとともに上記繰り返しの間に上記加工機による切削除去加工をそれまでに積層一体化された三次元造形物の表面に対して行う積層造形装置であって、上記粉末層及び上記硬化層がその上面側に形成されるベースと、該ベースの外周を囲んでいるとともに該ベースに対して上下移動自在な昇降枠と、該昇降枠を上下に移動させる昇降駆動手段とを備え、少なくとも3軸制御可能な数値制御工作機械である上記加工機におけるテーブルに上記ベースが固定されて、上記粉末層は上記昇降枠の内周面で囲まれた前記ベース上方空間に形成されるものであることを特徴とする積層造形装置。
【請求項3】
前記粉末層形成手段は、前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートに設けた粉末材料供給口から上記ベース上面と上記昇降枠とで囲まれる空間に粉末を供給するものとして設けられていることを特徴とする1または2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
上記スライドプレートのスライド方向と直交する方向における上記粉末材料供給口の幅が同方向における上記ベースの幅よりも大であることを特徴とする請求項3記載の積層造形装置。
【請求項5】
上記スライドプレートは粉末の嵩密度を高めるための部材を備えていることを特徴とする請求項3または4記載の積層造形装置。
【請求項6】
上記スライドプレートは粉末層表面を均すための部材を備えていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項7】
上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて前記昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項8】
上記覆い枠の内部に供給される雰囲気ガスを旋回流とする旋回流形成手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の積層造形装置。
【請求項9】
上記覆い枠の内部空間における酸素濃度を測定する酸素濃度計を備えており、前記雰囲気ガス供給手段は上記酸素濃度計の出力に応じて雰囲気ガスの供給を行うものであることを特徴とする請求項7または8記載の積層造形装置。
【請求項10】
上記覆い枠の内部空間を上下に移動するピストンを備えて、該ピストンの上下動で雰囲気ガスの給排がなされるものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項11】
上記ウィンドウがfθレンズで形成されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項12】
上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃手段を備えていることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項13】
上記清掃手段は、上記昇降枠に設けられて上記覆い枠内を上下移動するとともに回転して上記ウィンドウの内面を含む上記覆い枠の内面を清掃する清掃部材を備えたものであることを特徴とする請求項12記載の積層造形装置。
【請求項14】
前記覆い枠が前記昇降枠の上面に沿ってスライド自在なものとして複数設けられているとともに、複数の覆い枠のうちのある覆い枠がベース上にある時に他の覆い枠が清掃手段によって清掃される位置にあることを特徴とする請求項12または13記載の積層造形装置。
【請求項15】
前記光学機器が上記覆い枠上に設置されていることを特徴とする請求項7〜14のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項16】
前記昇降枠の上面に設けられて前記光学機器からの光ビームによってマーキングがなされるマークターゲットと、このマークターゲットに付されたマーキングの位置を測定して光学機器による光ビームの照射位置の補正データを得る測定装置とを備えていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項17】
前記昇降枠の上面に前記光学機器からの光ビームのパワーを測定するパワー測定装置を配していることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項18】
上面開口に光ビームを透過するウィンドウを備え且つ下面が開放されて昇降枠上に配される覆い枠と、該覆い枠内に雰囲気ガスを供給する雰囲気ガス供給手段とを備えており、前記粉末層形成手段は昇降枠の上面に沿ってスライド自在とされたスライドプレートに設けられており、上記覆い枠は上記スライドプレートの一部として設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の積層造形装置。
【請求項19】
前記昇降枠は、複数設けられている前記ベースの各外周を囲むとともに各ベースに対して上下移動自在となっており、この昇降枠の上面に沿ってスライド自在なスライドプレートを備え、前記粉末層形成手段は上記スライドプレートに設けられて上記複数のベースの上方に前記スライドプレートのスライドによって選択的に粉末層を形成するものであることを特徴とする請求項1または2記載の積層造形装置。
【請求項20】
前記スライドプレートは前記加工機における工具を通すための切削用開口を備えていることを特徴とする請求項18または19記載の積層造形装置。
【請求項21】
前記スライドプレートは前記ベース上の未硬化粉末を吸引除去する吸引部を備えていることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項22】
前記スライドプレートは前記昇降枠の上面に沿って回転スライドするものであることを特徴とする請求項18〜21のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項23】
前記光学機器は、光ビームの照射面からの高さ位置を可変として設けられていることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−7669(P2009−7669A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143148(P2008−143148)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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