説明

空中気象レーダ体積バッファを使用して雹および雷を推定するシステムおよび方法

【課題】起こり得る雷および雹の気象条件の出力を改善する気象レーダシステムを提供すること。
【解決手段】例示的なシステムは、気象レーダ反射率値を受信して、3次元バッファ内に記憶し、外部空気温度値を受信し、受信した外部空気温度値に基づいて凍結レベルを決定するプロセッサを含む。プロセッサは、決定された凍結レベルよりも上の3次元バッファのセルに記憶された反射率値が第1の閾値量よりも大きいとき、雷アイコンを生成する。また、プロセッサは、決定された凍結レベルに1.6kmを加え、決定された凍結レベルと1.6kmとの和におけるセルに記憶された反射率値が第2の閾値量よりも大きいとき、雹アイコンを生成する。生成された雹および雷アイコンに関するセルに対応する高度値が、表示用に選択されたとき、表示装置は、雹および雷アイコンを表示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]空中気象レーダシステムは、それらが1950年代に導入されて以来、レーダ視界の分野において、主として気象「反射率」の表示を提供してきた。反射率は、レーダパラメーターであり、降水率とほぼ相関がある。これらの最初のレーダは、グレースケールでのみ反射率を表示し、必ずしも十分に較正されなかった。しかし、当初は、雨が降る場所および降らない場所を判別する能力は、無視界飛行または悪天候を避ける極めて旧式の周航を行うことに対する大きい改善であった。
【0002】
[0002]気象レーダが発達するにつれて、単色ではあるが個別レベルの反射率表示をもたらすデジタルレーダの発表が最初になされるなど、改善された表示能力と共に、反射率測定の精度の改善がなされた。これに続いて、緑色、黄色、および赤色として表示される反射率レベルの増加を可能にするカラー表示部が導入された。
【0003】
[0003]1980年代に、乱気流検出能力をもたらすいくつかのレーダが導入された。1990年代には、いくつかの航空輸送分野レーダにおいて予測的ウインドシア検出および警告能力が導入された。
【0004】
[0004]2004年に、Honeywell International,Inc.は、体積バッファ能力を有するレーダのシリーズを発表し、それらによって、反射率データの表示および分析において著しい改善がもたらされた。
【0005】
[0005]これら全てが著しく改善されている間に、気象反射率および乱気流表示機能は、搭乗員に危険の直接表示をもたらす所望の目標に関して、いくつかの制限を有する。たとえば、
− 反射率は、危険と直接関係がない。層状雲降水において、必ずしも気象に関係する危険はないのであるが、赤色レベル表示がしばしば現れる可能性がある。
− 乱気流検出が、40NMまでの範囲に限られる(とはいえ、これを60NMまで拡張するためにいくつかの改善が行われている途上である可能性がある)。
【0006】
[0006]逆に、空中気象レーダが検出することができる反射率または乱気流レベルに関係がない気象的危険が存在し、最も顕著には、晴天乱気流(しばしば、無降水気団の境界または山が誘発する活動が原因)があり、また氷結状態も含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]いずれにしても、定時運航および燃料効率が強調される現在の運転環境を考慮すると、正しい意思決定を確実に行うために気象的危険に関して可能な限り多くの情報を航空機搭乗員に提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本発明は、範囲制限なしに雷および雹の気象条件の存在を予測する気象レーダシステムを提供する。例示的なシステムは、レーダ信号を生成し、レーダ信号に基づいた気象レーダ反射率値を受信する。プロセッサは、気象レーダ反射率値を受信して、3次元バッファ内に記憶し、外部空気温度値を受信し、受信した外部空気温度値に基づいて凍結レベルを決定する。プロセッサは、決定された凍結レベルよりも上の3次元バッファの1つまたは複数のセルに記憶された反射率値が第1の閾値量よりも大きいとき、1つまたは複数の雷アイコンを生成する。生成された雷アイコンに関する1つまたは複数のセルに対応する高度値が、表示用に選択されたとき、表示装置は、1つまたは複数の雷アイコンを表示する。
【0009】
[0009]それに加えて、プロセッサは、決定された凍結レベルに1.6キロメートル(km)を加え、決定された凍結レベルと1.6kmとの和における3次元バッファの1つまたは複数のセルに記憶された反射率値が第2の閾値量よりも大きいとき、1つまたは複数の雹アイコンを生成する。生成された雹アイコンに関する1つまたは複数のセルに対応する高度値が、表示用に選択されたとき、表示装置は、1つまたは複数の雹アイコンを表示する。
【0010】
[0010]本発明の好ましく選択的な実施形態は、以下の図面を参照して以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態により形成されるシステムの概略ブロック図である。
【図2】図1に示されたシステムによって実行される例示的な処理のフローチャートである。
【図3】3次元バッファ内に記憶された反射率値の図式的表現の層の概略斜視図である。
【図4】雹および雷の存在の推定に関して生成された雹および雷アイコンを示す気象表示部の例示的なスクリーン・ショットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015]図1は、改善された気象レーダ表示機能を提供する気象表示システム30の実施形態を示す。例示的な気象表示システム30は、気象レーダシステム40および表示部/インターフェイスフロントエンド38を含み、航空機システム46からの情報を受信する。表示部/インターフェイスフロントエンド38は、プロセッサ42、メモリ43、表示装置44、ユーザインターフェイス48、およびデータベース32を含む。レーダシステム40の例は、レーダコントローラ50(ユーザインターフェイス48に結合する)、送信機52、受信機54、およびアンテナ56を含む。レーダコントローラ50は、アンテナ56を通して信号を送信および受信する送信機52および受信機54を制御する。気象レーダシステム40および表示部/インターフェイスフロントエンド38は、航空機システム46に電子的に結合する。
【0013】
[0016]レーダは、本明細書で信号と呼ばれる電磁エネルギーパルスの送信信号に依存する。アンテナ56は、所望の射程領域画像の全幅と比較すると狭めて信号パルスの送信信号に焦点を合わせる。懐中電灯からの光と同様に、この狭い信号は、その経路内のいずれの目標にも照射し、照射された目標は、電磁エネルギーを反射させてアンテナに戻す。
【0014】
[0017]反射率データは、雲または嵐などの気象目標内、あるいは液体(雨など)および/または凍結液滴(雹、みぞれ、および/または雪)を発生させる雲または嵐の近傍の領域内に存在する液体および/または凍結液滴によって反射されてレーダに戻るレーダ信号のその一部分に対応する。
【0015】
[0018]レーダコントローラ50は、送信された信号パルスがアンテナから目標まで到達しアンテナ56に戻るまでの遷移にかかる時間の長さに基づいて、アンテナに対する気象目標までの距離を計算する。距離と時間との関係は、一定で真空中ではほぼ光速である信号の速度に対して線形である。
【0016】
[0019]システム30のメモリ43は、反射率データを記憶する3次元体積バッファを含む。システム30は、体積バッファに記憶された反射率値に基づいて、雷および/または雹の発生を推定する能力を有する。
【0017】
[0020]図2は、図1に示されたシステムによって実行される例示的な処理80のフローチャートである。最初に、ブロック84において、プロセッサ42は、レーダシステム40からのレーダ反射率値を受信し、それらの値を3次元バッファ内に記憶する。次に、ブロック86において、プロセッサ42は、航空機システム46から受信した現在の航空機高度および現在の外部空気温度に基づいて、凍結レベルを決定する。凍結レベルは、標準減率を使用して、現在の航空機高度および外部空気温度から計算されるが、その他の温度計算モデルを使用することができる。
【0018】
[0021]一実施形態において、雷および雹の決定は、決定ブロック87において同時に実行される。雷の決定に関し、処理80は、決定ブロック88において、決定された凍結レベルよりも上の3次元バッファ内に記憶された反射率値が所定の量よりも大きくなるか否かを決定する。この条件は、所定の量よりも上の反射率値を有する閾値数の隣接セルを要求するさらなる限定を含むこともできる。記憶された反射率値が所定の量より大きくないとき、処理80は、ブロック84、またはその他のセルをチェックするためにブロック88に戻る。セルの反射率値または閾値数の隣接セルの反射率値が、閾値量よりも大きいとき、ブロック90において、雷アイコンが、生成され、また気象表示部(または多機能表示部(MFD))上に表示される。次に、処理80は、反復するためにブロック84に戻る。
【0019】
[0022]雹の決定に関し、ブロック100において、凍結レベルに1.6kmが加えられる。次に、処理80は、決定ブロック102において、閾値量よりも大きい反射率値を有する閾値数よりも多い3次元バッファ内の隣接セルが存在するか否かを決定する。単一のセルが、この条件を満たすことができる。この条件を満たす複数のセルがあるとき、プロセッサ42は、ブロック104において、雹アイコンを生成し、また気象表示部またはMFD上にそれを表示する。ブロック104の後、または決定ブロック102の条件を満たさないとき、処理80は、反復するためにブロック84に戻る。
【0020】
[0023]一実施形態において、雷の存在を決定する反射率閾値は、35dBZ(Z(レーダエコー強度/反射率)のデシベル)に設定され、雷基準高度は、凍結レベルに対して設定される。
【0021】
[0024]一実施形態において、雷の存在可能性を決定する前に、さらなる制限が含まれる。図2のブロック88の後、プロセッサ42は、エコー頂点温度を計算し、エコー頂点温度が閾値温度よりも冷たいとき、雷アイコンが出力される。エコー頂点温度は、以下の式より計算することができる。
【0022】
(エコー頂点温度)=(外部空気温度)−[(エコー頂点高度)−(航空機高度)]*(標準大気減率)
[0025]エコー頂点高度は、3次元バッファ内に記憶された反射率値を使用して、または受信したレーダ走査データを分析することによって決定することができる。閾値温度の例は、−20℃であるが、その他の温度を使用することができる。
【0023】
[0026]図3は、3次元バッファ内に記憶された反射率値(セル)の平坦スライス面120の概略斜視図である。雹基準高度平面126は、凍結レベルと閾値量(たとえば、1.6km)との和に等しい。その他の閾値量を使用することができる。この例において、雹基準高度平面126は、平面126の上下の平面のデータの補間である。平面126において、閾値数の隣接セルにおける反射率値が所定の反射率値よりも上であるとき、それらの値は、雹危険領域と推定される。一実施形態において、雹の推定をもたらす所定の反射率値は、45dBZである。
【0024】
[0027]図4は、3次元バッファ内に記憶されたレーダ反射率値を使用して雷および雹の推定がなされることが終了した後に、図1のシステム30によって生成された気象表示部150のスクリーン・ショット(神の目の視界)である。雷アイコン154は、雷の推定を示すために表示される。雹アイコン156は、雹の推定を示すために表示される。
【0025】
[0028]一実施形態においては、3次元バッファは、使用されない。システムは、データが受信され次第、凍結レベルに関するレーダ反射率データまたは雹基準高度におけるレーダ反射率データのいずれかを分析する。バッファリングは、ほとんど、または全く行われない。
【0026】
[0029]凍結レベルに対するその他の高度を使用することができる。
独占権または特権が主張される本発明の実施形態は、以下に定義される。
【符号の説明】
【0027】
30 気象表示システム
38 表示部/インターフェイスフロントエンド
40 気象レーダシステム
120 平坦スライス面
126 雹基準高度平面
154 雷アイコン
156 雹アイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象レーダ反射率値を自動的に受信するステップと、
外部空気温度値を自動的に受信するステップと、
前記受信した外部空気温度値に基づいて凍結レベルを自動的に決定するステップと、
受信した反射率値が、前記決定された凍結レベルに基づいたそれぞれの雷または雹の閾値量よりも大きいとき、1つまたは複数の雷または雹アイコンを自動的に生成するステップと、
表示選択に基づいて気象表示部上に1つまたは複数の雷または雹アイコンを自動的に表示するステップと、
前記気象レーダ反射率値を3次元バッファ内に自動的に記憶するステップとを含み、
1つまたは複数の雹アイコンを自動的に生成する前記ステップは、
前記決定された凍結レベルに閾値を自動的に加えるステップと、
決定された凍結レベルと前記閾値との和よりも上の前記3次元バッファの1つまたは複数のセルに記憶された反射率値が、雹閾値量よりも大きいとき、1つまたは複数の雹アイコンを自動的に生成するステップと、
前記生成された雹アイコンに関する前記1つまたは複数のセルに対応する高度値が、表示用に選択されたとき、前記気象表示部上に前記1つまたは複数の雹アイコンを自動的に表示するステップとを含む、
航空機上で実現される方法。
【請求項2】
1つまたは複数の雹アイコンを自動的に生成する前記ステップは、閾値数の隣接セルが前記雹閾値量よりも大きい反射率値を有するときのみ、1つまたは複数の雹アイコンを自動的に生成するステップをさらに含み、前記雹閾値量は、45dBZからの閾値量内であり、前記閾値は、1.6kmからの閾値内であり、
1つまたは複数の雷アイコンを自動的に生成するステップは、前記受信した反射率値が前記決定された凍結レベルよりも上のそれぞれの雷閾値量よりも大きく、エコー頂点温度がエコー頂点温度閾値よりも低いとき、前記1つまたは複数の雷アイコンを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気象レーダ反射率値を受信し、
外部空気温度値を受信し、
前記受信した外部空気温度値に基づいて凍結レベルを決定し、
受信した反射率値が前記決定された凍結レベルに基づいたそれぞれの雷または雹閾値量よりも大きいとき、1つまたは複数の雷または雹アイコンを生成するように構成され、メモリおよびレーダ要素と信号通信するプロセッサ(42)と、
前記プロセッサと信号通信し、表示選択に基づいて前記1つまたは複数の雷または雹アイコンを表示するように構成された表示装置(44)と、
3次元バッファを含むメモリと、を含み、
前記プロセッサは、
前記決定された凍結レベルに閾値を加え、
前記決定された凍結レベルと前記閾値との和における前記3次元バッファの1つまたは複数のセルに記憶された反射率値が、前記雹閾値量よりも大きいとき、1つまたは複数の雹アイコンを生成するようにさらに構成され、
前記表示装置は、前記生成された雹アイコンに関する前記1つまたは複数のセルに対応する高度値が、表示用に選択されたとき、前記表示装置が前記1つまたは複数の雹アイコンを表示し、
前記雹閾値量は、45dBZからの閾値量内である、
レーダ信号を生成し、前記生成されたレーダ信号に基づいた気象レーダ反射率値を受信するレーダ要素を含む気象レーダシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−128150(P2011−128150A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−266501(P2010−266501)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】