説明

空冷システムおよびそれを備えるハイブリッド車両

【課題】モータのみでの走行中であってもインバータ装置の冷却にエンジンを利用することのできる冷却システムおよびそれを備えるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】本明細書では、エンジンと、少なくとも1つのモータと、モータに電力を供給するインバータ装置を備えるハイブリッド車両において、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムを開示する。その空冷システムでは、インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐している。その空冷システムでは、エンジンが停止している状況でインバータ装置が高温となるか、エンジンが停止している状況で別のモータのロックが検出されると、モータによりエンジンを空転駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、空冷システムおよびそれを備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ハイブリッド車両において、電気エネルギーによる駆動力は、高電圧のバッテリから供給される直流電力をインバータ装置によって交流電力に変換し、これにより交流モータを回転させることにより得ている。また、ハイブリッド車両の減速時には、逆に交流モータの回生発電により得られる回生エネルギーをバッテリに蓄電することにより、エネルギーを無駄なく利用して走行している。
【0003】
このようなハイブリッド車両において、インバータ装置はスイッチング素子のスイッチング動作に伴い発熱する。そのため、インバータ装置が過熱しないように冷却システムが設けられている。インバータ装置専用の冷却装置を備える車両もあるが、冷却効率を向上させるため、エンジンの動力の一部をインバータ装置の冷却に利用することが提案されている。例えば特許文献1にはエンジンの吸気でインバータ装置冷媒の熱交換を促進する技術が開示されている。また、特許文献2には、エンジンの吸気経路内にインバータの冷却フィンを配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−184633号公報
【特許文献2】特開2004−9939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある種のハイブリッド車両は、エンジンとモータを併用する走行モードのほかに、エンジンを停止し、モータのみで走行するモード(例えばEV走行モードなどと呼ばれることがある)の2種類の走行モードを有する。EV走行モードでは、エンジンの動力をインバータ装置の冷却に利用することはできなくなる。従来の技術では、せっかくエンジン動力を利用した冷却システムを導入しても、インバータ装置専用の冷却器を小さくすることができない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、モータのみの走行中であってもインバータ装置の冷却にエンジンを利用することのできる冷却システムおよびそれを備えるハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、エンジンと、少なくとも1つのモータと、モータに電力を供給するインバータ装置を備えるハイブリッド車両において、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムを開示する。その空冷システムでは、インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐している。その空冷システムでは、エンジンが停止している状況で、インバータ装置が高温となると、モータでエンジンを空転駆動させる。なお、ここで、「エンジンを空転駆動させる」とは、エンジンから車輪への動力伝達経路を遮断しておいてモータでエンジンを回転させることを意味する。従って、「エンジンが停止している状況」とは、より厳密には、燃料によるエンジン駆動が停止している状況、を意味する。
【0008】
上記の空冷システムでは、インバータ装置へ送る冷却用空気として、エンジンルーム内の空気ではなく、エンジンへの吸気経路を介して車外の空気を取り込むことができる。エンジンルーム内の空気を冷却用空気として取り込む場合には、インバータ装置へ送られる際の空気の温度は80℃〜90℃程度となってしまい、十分な冷却能力を発揮することが困難となってしまう。上記の空冷システムでは、エンジンへの吸気経路を介して車外の空気を冷却用空気として取り込むことで、インバータ装置へ送られる際の空気の温度を40℃〜60℃程度に抑えることができ、冷却能力を向上することができる。
【0009】
そして、上記の空冷システムでは、エンジンが停止している状況で、インバータ装置が高温となると、エンジンを空転駆動させる。エンジンの空転駆動によって、エンジンへの吸気経路が負圧化されて、車外からの空気が流入しやすくなる。これによって、インバータ装置に冷却用空気を送風する際の圧力損失を低下させることができ、インバータ装置が高温となった場合の冷却能力を向上することができる。モータのみで走行しており、燃料を使ったエンジン駆動を行ってしていない状況においてインバータが高温となった場合、燃料を使うことなく、しかも既存のシステムを使ってエンジンを回転させてインバータ装置を効率よく冷却することができる。
【0010】
本明細書が開示する別の空冷システムは、エンジンと、第1及び第2モータと、それらのモータに電力を供給するインバータ装置を備えるハイブリッド車両において、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムである。その空冷システムでは、インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐している。その空冷システムでは、エンジンが停止している状況で、第2モータのロックが検出されると、第1モータでエンジンを空転駆動させる。
【0011】
例えばヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御において、車輪を回転させようとしてモータに電力を供給するが車輪が回転しない状態、いわゆるロック状態となることがある。ロック状態になるとインバータ装置は最大出力で電力を供給しようとするので、過熱しやすい。上記の空冷システムでは、ヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御などにおける第2モータのロック状態の発生を検知すると、実際のインバータ装置の温度に関わらず、第1モータでエンジンを空転駆動させて冷却能力を向上させる。実際にインバータ装置が高温となる前に冷却能力を高めることができる。空冷システムの制御遅れに起因してインバータ装置が過剰に高温となってしまう事態を防ぐことができる。なお、ロック状態はヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御以外においても、例えば車輪止めに車輪がぶつかっているときなどでも発生する。
【0012】
本明細書では、ハイブリッド車両も開示する。そのハイブリッド車両は、エンジンと、少なくとも1つのモータと、モータに電力を供給するインバータ装置と、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムを備えている。そのハイブリッド車両では、インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐している。そのハイブリッド車両では、エンジンが停止している状況で、インバータ装置が高温となると、モータでエンジンを空転駆動させる。
【0013】
本明細書で開示される別のハイブリッド車両は、エンジンと、第1及び第2モータと、それらのモータに電力を供給するインバータ装置と、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムを備えるハイブリッド車両である。そのハイブリッド車両では、インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐している。そのハイブリッド車両では、エンジンが停止している状況で、第2モータのロックが検出されると、第1モータでエンジンを空転駆動させる。
【発明の効果】
【0014】
本願明細書が開示する空冷システムおよびハイブリッド車両によれば、モータのみの走行中であってもインバータ装置の冷却にエンジンを利用することができ、インバータ装置の冷却性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1のハイブリッド自動車10の構成を模式的に示す図である。
【図2】実施例1の空冷システム28の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
図1に本実施例のハイブリッド自動車10の動力出力機構の概略を示す。ハイブリッド自動車10は、駆動輪12と、減速機14と、動力分割機構16と、エンジン18と、第1モータジェネレータ(MG)20と、第2MG22と、インバータ装置24と、バッテリ26と、空冷システム28と、コントローラ30を備えている。
【0017】
駆動輪12は、タイヤ34とシャフト36を備えている。シャフト36には、減速機14の動力伝達ギア38が取り付けられている。減速機14の動力取出ギア40は、動力分割機構16の第3軸42に取り付けられている。第3軸42を回転させると、その回転は減速機14を介してシャフト36に伝達し、タイヤ34を回転させる。
【0018】
動力分割機構16は、3本の軸(第1軸44、第2軸46、及び、第3軸42)を有する。動力分割機構16の第3軸42には、第2MG22が連結されている。動力分割機構16の第1軸44には、エンジン18が連結されている。動力分割機構16の第2軸46には、第1MG20が連結されている。動力分割機構16は、第1軸44、第2軸46及び第3軸42を、予め定められた関係で相互に連携して回転させる。動力分割機構16は、エンジン18の出力トルクと第1MG20の出力トルクを合わせたトルクを第3軸42に伝達したり、あるいは、第1軸44(エンジン18)と第2軸46(第1MG20)は相互に連携しつつ回転するが、第1軸44と第3軸42との間の動力伝達を遮断したりする。後者の典型的な利用形態は、MG1をセルモータとして用いてエンジン18を回転させることである。なお、典型的には、動力分割機構16はプラネタリギアセットであって、第1軸44はプラネタリギアセットのキャリア軸に相当し、第2軸46はサンギア軸に相当し、第3軸42はリングギア軸に相当する。
【0019】
エンジン18は、燃料の爆発・燃焼による圧力変動を利用して、第1軸44を回転駆動する。エンジン18の動作は、コントローラ30により制御される。エンジン18には、吸気ダクト32を介して燃焼用の空気が供給される。吸気ダクト32を介して車外から流入する空気は、エアクリーナ(図示せず)で粉塵などを分離した後、エンジン18に供給される。
【0020】
第1MG20は三相交流線48によってインバータ装置24と接続している。第1MG20は、第2軸46の回転を受けて発電し、発電した電力をインバータ装置24に送る。また、第1MG20は、インバータ装置24から供給される電力を利用して、第2軸46を回転駆動する。
【0021】
第2MG22は三相交流線50によってインバータ装置24と接続している。第2MG22は、第3軸42の回転を受けて発電し、発電した電力をインバータ装置24に送る。また、第2MG22は、インバータ装置24から供給される電力を利用して、第3軸42を回転駆動する。なお、第1MG20は主として発電に用いられるとともに、予備的な動力源あるいはセルモータとして用いられる。第MG22は主として車輪駆動に用いられるとともに、予備的な発電装置(主として回生用)として用いられる。
【0022】
インバータ装置24は、コントローラ30からの制御信号に従って動作する。バッテリ26から第1MG20へ電力を供給する際には、インバータ装置24は、バッテリ26からの直流電力を交流電力に変換して、第1MG20へ出力する。第1MG20からバッテリ26へ電力を供給する際には、インバータ装置24は、第1MG20からの交流電力を直流電力に変換して、バッテリ26へ出力する。また、第1MG20から第2MG22へ電力を供給する際には、インバータ装置24は、第1MG20からの交流電力を直流電力に変換した後、その直流電力を交流電力に変換して、第2MG22へ出力する。
【0023】
バッテリ26から第2MG22へ電力を供給する際には、インバータ装置24は、バッテリ26からの直流電力を交流電力に変換して、第2MG22へ出力する。第2MG22からバッテリ26へ電力を供給する際には、インバータ装置24は、第2MG22からの交流電力を直流電力に変換して、バッテリ26へ出力する。
【0024】
インバータ装置24には、インバータ装置24の温度(インバータ温度)Tinvを検出する温度センサ52が設けられている。温度センサ52は、その検出したインバータ温度をコントローラ30へ出力する。
【0025】
インバータ装置24には、負荷率制御部54が設けられている。負荷率制御部54は、温度センサ52で検出されたインバータ温度Tinvを制限開始温度Tlimと比較する。制限開始温度Tlimは、インバータ装置24を構成するIGBT素子などのスイッチング素子の耐熱温度等に基づいて、予め設定されている。インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlim以上となると、負荷率制御部54は、インバータ装置24から第2MG22に供給される駆動電流の制限を開始する。これによって、インバータ装置24の過剰な発熱が防止され、インバータ装置24の耐熱性が確保される。
【0026】
空冷システム28は、コントローラ30と、エンジン18と、インバータ装置24と、温度センサ52と、吸気ダクト32と、冷却風ダクト56と、ファン58から構成されている。
【0027】
冷却風ダクト56は、エンジン18の吸気ダクト32から分岐している。冷却風ダクト56にはファン58が設けられている。ファン58が回転駆動すると、吸気ダクト32から冷却風ダクト56に空気が吸い込まれ、インバータ装置24に冷却用空気が送られる。ファン58の動作は、コントローラ30によって制御される。ファン58は、コントローラ30から目標回転数Rtが指示されると、その目標回転数Rtを実現するように動作する。
【0028】
コントローラ30は、温度センサ52からのインバータ温度Tinvに基づいて、ファン58の目標回転数Rtを設定し、その目標回転数Rtをファン58へ出力する。具体的には、インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlimに満たない場合には、インバータ温度Tinvの上昇に従って、ファン58の目標回転数Rtを増加させる。この際のインバータ温度Tinvと目標回転数Rtの関係は、予め目標回転数設定用マップとしてコントローラ30の記憶領域(図示せず)に格納されており、インバータ温度Tinvが与えられると、目標回転数設定用マップから対応する回転数を抽出して、目標回転数Rtとして設定する。インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlim以上となると、コントローラ30は、ファン58の目標回転数Rtをファン58で実現することができる最大回転数Rmaxに設定する。このようにファン58の回転数を制御することで、インバータ温度Tinvの上昇を抑えて、インバータ装置24の負荷率が制限される事態を防ぐことができる。
【0029】
ハイブリッド自動車10は、通常走行時には、エンジン18と第2MG22を併用する走行モードで動作する。エンジン18を始動する際には、バッテリ26からの電力を用いて第1MG20が第2軸46を回転駆動し、第1軸44を回転させる。すなわち、第1MG20は、エンジン18のセルモータの役割を果たす。エンジン18が始動した後は、エンジン18で生成された動力が、動力分割機構16により、第2軸46と第3軸42に分配される。第3軸42に分配された動力は、減速機14を介してシャフト36に伝達し、駆動輪12を回転させる。また、第2軸46に分配された動力により第1MG20が発電し、この発電された電力がインバータ装置24を介して第2MG22に供給され、第2MG22によっても第3軸42を回転駆動する。
【0030】
ハイブリッド自動車10は、発進時や低中速での走行の際には、エンジン18を停止したまま、第2MG22のみで走行するEV走行モードで動作する。EV走行モードでは、バッテリ26からの電力がインバータ装置24を介して第2MG22に供給され、第2MG22によって第3軸42を回転駆動する。第2MG22から第3軸42に付与された動力は、減速機14を介してシャフト36に伝達し、駆動輪12を回転させる。なお、「エンジン18を停止する」とは、燃料供給によるエンジン18の駆動を停止する、という意味である。
【0031】
上記したEV走行モードにおいて、第2MG22にロック状態が発生する場合がある。例えば、ハイブリッド自動車10が坂道を登坂中に停車し、その後に発進する際に、ヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御が行われる場合がある。ヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御では、運転者がブレーキペダルからアクセルペダルに踏み換えて発進するまでの間、ハイブリッド自動車10が坂道を後退してしまわないように、機械的なブレーキによる制動力を駆動輪12に自動的に付与する。ヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御では、シャフト36に制動力が付与されているので、第2MG22が第3軸42を回転駆動しようとしても、第3軸42は回転しない。すなわち、第2MG22においてロック状態が発生する。このロック状態で第2MG22を回転駆動しようとすると、インバータ装置24の特定のIGBT素子に過大な直流電流が流れる。その結果、当該IGBT素子の熱負荷が急激に増加することになる。
【0032】
このように熱負荷が急増した場合には、インバータ温度Tinvの上昇比率が高くなるため、早急に空冷システム28の冷却能力を高めることが必要となる。しかしながら、温度センサ52から与えられるインバータ温度Tinvの検出値に基づいてファン58の回転数を設定する構成では、冷却能力を温度上昇に追従させることができない可能性がある。すなわち、上記のようなインバータ温度Tinvに基づいた冷却能力の制御では、インバータ装置24の温度上昇に対する制御応答性が劣るため、急激な熱負荷の増加を抑えることができないという問題が生じる。
【0033】
そこで、本実施例の空冷システム28では、ヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御など、第2MG22のロック状態が発生している場合には、インバータ温度Tinvの高低に拘らず、ファン58の目標回転数Rtをファン58が実現可能な最大回転数Rmaxに設定する構成とする。これにより、実際に第2MG22にロック状態が発生し、インバータ装置24の通過電流が急激に増加した場合であっても、インバータ温度Tinvの上昇に対する冷却能力の制御応答性が確保されるため、インバータ装置24の温度上昇を抑えることができる。また、インバータ装置24の温度上昇が抑えられることによって、第2MG22の負荷率に対する制限が緩和される。
【0034】
また、本実施例のハイブリッド自動車10では、エンジン18が停止している状況において、ファン58を最大回転数Rmaxで回転させる場合には、第1MG20によりエンジン18を空転駆動させて、吸気ダクト32を介したエンジン18への吸気を行う。エンジン18を空転駆動することによって、吸気ダクト32が負圧化されて車外からの空気が流入しやすくなり、ファン58の回転により冷却用空気を吸い込む際の圧力損失を低下させることができる。通常、ヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御の実行時はエンジン18が停止しているが(エンジン18への燃料供給は停止しているが)、上記のようにエンジン18を空転駆動させることによって、ファン58を最大回転数Rmaxで回転させる際の冷却能力を向上することができる。なお、エンジン18を空転駆動させる際には、動力分割機構16によりエンジン18と第3軸42の間の動力伝達が遮断されるように、第1MG20および第2MG22の動作が制御される。より具体的には、第1軸44と第2軸46は連動させ、第1軸44(第2軸46)と第3軸42の間の動力伝達は遮断する。
【0035】
図2は本実施例の空冷システム28の動作を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS2では、コントローラ30が、温度センサ52からインバータ温度Tinvの検出値を受け取る。
【0037】
ステップS4では、コントローラ30が、インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlim以上であるか否かを判定する。インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlimに満たない場合(NOの場合)、処理はステップS6へ進む。
【0038】
ステップS6では、コントローラ30が、第2MG22においてロック状態が発生しているか否かを判定する。例えば、ハイブリッド自動車10がヒルホールド制御やヒルスタートアシスト制御を実行中である場合は、第2MG22においてロック状態が発生していると判定される。ステップS6でロック状態が発生していない場合(NOの場合)、処理はステップS8へ進む。
【0039】
ステップS8では、コントローラ30が、予め記憶領域に格納されている目標回転数マップを用いて、インバータ温度Tinvに対応する回転数を抽出して、目標回転数Rtとして設定する。そして、ステップS16において、目標回転数Rtを実現するように、ファン58を回転駆動する。
【0040】
ステップS4で、インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlim以上の場合(YESの場合)、あるいは、ステップS6で、ロック状態が発生している場合(YESの場合)、処理はステップS10へ進む。
【0041】
ステップS10では、コントローラ30が、エンジン18が停止しているか否かを判定する。エンジン18が停止している場合(YESの場合)には、ステップS12で、コントローラ30が、第1MG20によるエンジン18の空転駆動を指示した後、ステップS14へ進む。これにより、エンジン18が空転駆動を開始し、吸気ダクト32を介して車外の空気がエンジン18へ取り込まれる。ステップS10でエンジン18が停止していない場合(NOの場合)には、そのままステップS14へ進む。
【0042】
ステップS14では、コントローラ30が、ファン58の目標回転数Rtを最大回転数Rmaxに設定する。その後、ステップS16において、目標回転数Rtを実現するように、ファン58が回転駆動する。
【0043】
本実施例の空冷システム28では、インバータ装置24へ送る冷却用空気として、エンジンルーム内の空気ではなく、吸気ダクト32からの車外の空気を取り込むことができる。エンジンルーム内の空気を冷却用空気として取り込む場合には、インバータ装置24へ送られる際の空気の温度は80℃〜90℃程度となってしまい、十分な冷却能力を発揮することが困難となってしまう。本実施例の空冷システム28では、吸気ダクト32からの車外の空気を冷却用空気として取り込むことで、インバータ装置24へ送られる際の空気の温度を40℃〜60℃程度に抑えることができ、冷却能力を向上することができる。
【0044】
本実施例の空冷システム28では、エンジン18が停止している状況で、インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlim以上である場合、あるいは第2MG22でロック状態が発生している場合には、第1MG20によってエンジン18を空転駆動し、かつファン58を最大回転数Rmaxで回転させる。エンジン18の空転駆動によって吸気ダクト32が負圧化されて、車外の空気が流入しやすくなるので、ファン58の回転によって車外から冷却用空気を取り込む際の圧力損失を低下させることができる。インバータ装置24への送風量を増加させ、冷却能力を向上することができる。
【0045】
実施例に関する留意点を述べる。上記の実施例では、空冷システム28のファン58がインバータ装置24を冷却するための専用のファンである構成を例として説明したが、ファン58はラジエータファンや他のファンで兼用してもよい。図2のフローチャートの処理において、ステップS4(インバータ温度Tinvが制限開始温度Tlim以上の場合にステップS10へ移行する分岐判断)と、ステップS6(ロック状態が発生している場合にステップS10へ移行する分岐判断)は、両方が用意されていることが好ましいが、それぞれの処理に利点があるので、いずれか一方だけであってもよい。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
10 ハイブリッド自動車
12 駆動輪
14 減速機
16 動力分割機構
18 エンジン
20 第1MG
22 第2MG
24 インバータ装置
26 バッテリ
28 空冷システム
30 コントローラ
32 吸気ダクト
34 タイヤ
36 シャフト
38 動力伝達ギア
40 動力取出ギア
42 第3軸
44 第1軸
46 第2軸
48 三相交流線
50 三相交流線
52 温度センサ
54 負荷率制御部
56 冷却風ダクト
58 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、少なくとも1つのモータと、モータに電力を供給するインバータ装置を備えるハイブリッド車両において、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムであって、
インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐しており、
エンジンが停止している状況で、インバータ装置が高温となると、モータでエンジンを空転駆動させることを特徴とする空冷システム。
【請求項2】
エンジンと、第1及び第2モータと、第1及び第2モータに電力を供給するインバータ装置を備えるハイブリッド車両において、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムであって、
インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐しており、
エンジンが停止している状況で、第2モータのロックが検出されると、第1モータでエンジンを空転駆動させることを特徴とする空冷システム。
【請求項3】
エンジンと、少なくとも1つのモータと、モータに電力を供給するインバータ装置と、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムを備えるハイブリッド車両であって、
インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐しており、
エンジンが停止している状況で、インバータ装置が高温となると、モータでエンジンを空転駆動させることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項4】
エンジンと、第1及び第2モータと、第1及び第2モータに電力を供給するインバータ装置と、インバータ装置に冷却用空気を送風する空冷システムを備えるハイブリッド車両であって、
インバータ装置に冷却用空気を供給する冷却用空気経路が、エンジンへの吸気経路から分岐しており、
エンジンが停止している状況で、第2モータのロックが検出されると、第1モータでエンジンを空転駆動させることを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−43453(P2013−43453A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180129(P2011−180129)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】