説明

空冷式熱交換器

【課題】液滴が空冷式熱交換器本体の奥側まで侵入し易くなるようにして冷却性能を向上させる。
【解決手段】扁平状に水を噴出させるノズルを備える。ノズルは、熱交換器本体20を挟んでファンと反対側の位置に配置されるとともに、熱交換器本体20における上側の部位に水を略水平方向に広がるように噴射する。ノズルは、水平配管42に沿って複数設けられる。熱交換器本体20の面積に対する各ノズルの噴射面積の割合は、それぞれ0.05%以上で、0.4%以下に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式ヒートポンプ等に適用される空冷式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空冷式の熱交換器として、下記特許文献1及び2に開示されているように、水をスプレーノズルから熱交換器本体に向かって散布し、その水を蒸発させることによって冷却するようにしたものが知られている。具体的に特許文献1のものでは、熱交換器本体の空気の吸い込み側にノズルを設け、このノズルから水を円錐状あるいは角錐状に熱交換器本体に散布するようにしている。そして、噴出する水の平均粒子径を200μ〜450μmとすることで、通常の風では吹き飛ばされずに熱交換器本体に到達し、しかも熱交換器本体に付着した水が直ちに滴下しないようになることが示されている。一方、特許文献2のものでは、平面視で略U字状に形成された熱交換器本体の内側、すなわち、熱交換器本体に対してファン側にノズルが配設されている。そして、ノズルが上下方向よりも左右方向に拡がるように水を散布させることで、熱交換器本体の内側面に吹きかけられた水が上部から下部に向かって流れるようにすることができ、これにより、同心円状に散布すると水がかかったりかからなかったりするエリアを小さくでき、スケールの発生を抑制できることが示されている。
【特許文献1】特開2000−18769号公報
【特許文献2】特開2006−10150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の発明を検証すべく行った実験では、平均粒子径300μmとして円錐状に噴霧すると、熱交換器本体のフィンに到達するまでにあまり水が蒸発せず、したがって水の蒸発に伴う空気の冷却効果を充分に得ることができず、またフィンに到達した細かな粒子がフィン間に充分に入らないという現象もあり、この構成では充分な冷却性能を得るのが困難であった。一方、特許文献2のものでは、水を上下方向よりも左右方向に拡がるように噴出させるとしても、ノズルがファン側に配設されるため、空気の流れに逆らう方向に水を噴出させる構成となり、このために熱交換器本体の内側の面しか濡らすことができない。したがって、特許文献2のものでも、充分な冷却性能を得るのは困難である。
【0004】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液滴が空冷式熱交換器(熱交換器本体)の奥側まで侵入し易くなるようにして冷却性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明は、熱交換器本体よりも上側に配設されたファンの駆動によって空気を通過させる空冷式熱交換器であって、扁平状に水を噴出させるノズルを備え、前記ノズルは、前記熱交換器本体を挟んで前記ファンと反対側の位置に配置されるとともに、前記熱交換器本体における上側の部位に水を略水平方向に広がるように噴射する。
【0006】
本発明では、ノズルが熱交換器本体に対して空気の吸い込み側に配置されており、しかもファンが上側に配置されることで空気流速が速くなっている熱交換器本体の上寄りの部位にノズルが水を噴射する構成としているので、熱交換器本体の奥側まで水を侵入させることができる。これにより噴射された水による熱交換器本体の冷却効率を向上することができる。さらに、熱交換器本体における上側の部位に略水平方向に広がって水が噴射されるようにしており、上側の部位に噴霧された水が熱交換器本体の表面を自然流下するため、熱交換器本体の上側の部位から下部に亘る範囲を濡らすことができる。これにより、濡れ面積を拡大でき、冷却性能を向上させることができる。
【0007】
ここで、前記空冷式熱交換器は、前記ノズルが水平方向に複数設けられているのが好ましい。また前記空冷式熱交換器は、略水平に延びるように配設された水平配管が設けられ、前記ノズルは、前記水平配管に沿って複数設けられているのが好ましい。
【0008】
この態様では、ノズルが水平方向に並んで複数配設されるので、各ノズルの噴射面積を増大させなくても、熱交換器本体に散水される面積を増大させることができる。この結果、熱交換器本体の横幅によらず、熱交換器本体における所定高さの位置のほぼ全域に亘って水を散水することができる。
【0009】
この態様において、前記熱交換器本体の面積に対する前記各ノズルの噴射面積の割合は、それぞれ0.4%以下に設定されているのが好ましい。
【0010】
この態様では、各ノズルによって熱交換器本体に散水される面積が熱交換器本体面積の0.4%以下になるようにノズルが設定されているので、ノズルから噴出される水を熱交換器本体の所定の部位に集中して吹き掛けることができる。この結果、熱交換器本体に対する液滴の打力を上げることができ、これにより熱交換器本体の奥側まで水を確実に侵入させることができる。そして、熱交換器本体では奥側まで侵入するうちに液滴が液膜となるため、重力及び表面張力により自然流下し易くなる。これにより、熱交換器本体の濡れ面積を拡大でき、冷却性能を確実に向上させることができる。したがって、本態様によれば、ノズルの噴射面積を小さくすることで熱交換器本体内に水を侵入させ易くするとともに液滴の自然流下による熱交換器本体の濡れ面積の拡大によって冷却性能を向上させることができる。
【0011】
そして、前記熱交換器本体の面積に対する前記各ノズルの噴射面積の割合は、0.05%以上に設定されているのが好ましい。
【0012】
この態様では、ノズルが水平方向に並ぶように設けられる場合に、散水面積を確保しつつ、ノズル数が増えすぎないようにすることができる。
【0013】
また、前記熱交換器本体は一対に設けられるとともにV字状に配置され、前記ファンは、前記両熱交換器本体の間でこれら熱交換器本体よりも上側に配置され、前記ノズルは、前記両熱交換器本体を挟んでその両側にそれぞれ配設されているのが好ましい。
【0014】
この態様では、熱交換器本体の上側の部位で空気流速が速くなるので、それを利用して熱交換器本体の奥側まで水を侵入させることができる。そして、水が略水平方向に広がるようにノズルが設定されることにより、熱交換器本体の上下で空気流速が異なるとしてもその影響を低減できる。この結果、円錐状に噴霧されるノズルを用いる場合に比べて、熱交換器本体奥側まで水が侵入する水量を設定しやすくすることができる。
【0015】
この態様において、前記熱交換器本体は、前記V字の上端部での幅に応じた幅を有する直方体状に組まれた枠体によって支持されており、前記枠体を構成するフレーム材と前記熱交換器本体との間の空間を、前記ノズルが設けられた水平配管が通過しているのが好ましい。
【0016】
この態様では、枠体を構成するフレーム材と熱交換器本体との間の空間を利用して水平配管が配設されるので、装置寸法が大きくなるのを防止することができる。
【0017】
また、前記空冷式熱交換器は、円錐状又は角錐状に水を噴出する第2のノズルを備えていてもよく、この場合には、前記第2のノズルは、前記熱交換器本体を挟んで前記ファンと反対側の位置に配置されるとともに、前記ノズルによって噴射される範囲よりも下側の範囲を少なくとも含むように前記熱交換器本体に水を噴射するのが好ましい。
【0018】
この態様では、第2のノズルによって熱交換器本体の全体をより均等に濡らし易くすることができる。すなわち、前記扁平状に水を噴出させるノズルにより、従来よりも少ない散水量で同等の冷却性能を発揮させることができ、散水量を増やすとさらに冷却性能を向上できるが、ある条件以上になると散水量を増やしても冷却性能は限界に達する。その理由は、自然流下で熱交換器全体を均等に濡らすことに限界があるからである。そのため、扁平状に水を噴出させるノズルにより熱交換器本体の上側の部位を濡らすことに加え、円錐状又は角錐状に水を噴出させる第2のノズルを使ってその下側の範囲を直接濡らすようにすることで、熱交換器本体の全体をより均等に濡らし易くすることができる。これにより、冷却性能の限界を上げることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、液滴が空冷式熱交換器(熱交換器本体)の奥側まで侵入し易くなり、これにより冷却性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る空冷式熱交換器の第1実施形態が適用された空冷式ヒートポンプ10を示している。同図に示すように、この空冷式ヒートポンプ10は、フレーム材を直方体状に組み付けて構成される枠体12を有している。この枠体12は、その上端部に水平配置された上フレーム材14と、高さ方向中間部に水平配置された中間フレーム材15と、下端部に水平配置された下フレーム材16とを備えている。これら上フレーム材14、中間フレーム材15及び下フレーム材16は、それぞれ矩形状に組まれるものである。そして、これら上フレーム材14、中間フレーム材15及び下フレーム材16は、その隅角部を上下に延びるように配設される複数の柱フレーム材18によって互いに結合されている。また柱フレーム材18は、枠体12の長手方向中央部にも配設されている。
【0022】
枠体12は、中間フレーム材15によって上下2つの空間に分けられていて、上側空間には複数の熱交換器本体20が配置される一方、下側空間には配管類が配置されている。この配管類には、空冷式ヒートポンプ10の冷媒回路を構成する配管、圧縮機、膨張機等が含まれている。
【0023】
上フレーム材14には、互いに直交するように配設された縦フレーム材24及び横フレーム材25が架設されていて、上フレーム材14によって構成される矩形面が縦横2列ずつの4つの矩形領域に仕切られている。熱交換器本体20は、各矩形領域にそれぞれ2つずつペアーとなって合計8つ設けられている。そして、熱交換器本体20は、横長矩形状に形成されるとともに長手方向が前記各矩形領域の長辺に沿って配設され、図2にも示すように、一対の熱交換器本体20がそれぞれV字状に配置されている。
【0024】
図2の左右方向における枠体12の幅は、同方向に並ぶ2つのV字の上端部での幅に対応した幅となっている。すなわち、枠体12の幅は、一対の熱交換器本体20が形成するV字の上端部での幅に応じた幅となっている。
【0025】
熱交換器本体20は、それぞれ枠体12によって支持されている。具体的に、一対の熱交換器本体20のうち外側(枠体12の両端側)に配置される熱交換器本体20の上端部は、上フレーム材14に結合され、内側に配置される熱交換器本体20の上端部は縦フレーム材24に結合されている。そして、これら熱交換器本体20の下端部は何れも中間フレーム材15に結合されている。
【0026】
上フレーム材14には、ファン28(図1参照)が垂直軸まわりに回転する姿勢で固定されている。ファン28は、この熱交換器本体20の長さ方向に沿って複数(図例では3つ)配設されている。
【0027】
ファン28は、図2から明らかなように、V字を形成する一対の熱交換器本体20間の領域でこれら熱交換器本体20よりも上側に配置されている。この配置関係により、熱交換器本体20では上部ほど空気流速が速くなる。
【0028】
本実施形態に係る空冷式熱交換器は、各熱交換器本体20にそれぞれ散水手段40が設けられている。すなわち、本実施形態では、8つの散水手段40が設けられている。
【0029】
各散水手段40は、水平配管42と、この水平配管42に接続された複数のノズル44とをそれぞれ備えている。水平配管42は熱交換器本体20の長手方向に熱交換器本体20に沿って延びるように配置されている。水平配管42は、図示省略しているが水供給源に接続されている。この水供給源として例えば水道が挙げられる。
【0030】
水平配管42は、ブラケット46に固定されている。ブラケット46は、例えば中間フレーム材15及び柱フレーム材18に固定されていて、柱フレーム材18の内側に位置するように配置されている。そして、水平配管42は、その両端部及び中央部に相当する位置でブラケット46によって支持されており、柱フレーム材18と熱交換器本体20との間の間隙を通るように水平配置されている。
【0031】
ノズル44は、水平配管42に所定の間隔をおいて取り付けられたエルボ管継手48に設けられている。そして、ノズル44は、1つの熱交換器本体20に対して例えば8個所の部位に散水されるような配置となっている。
【0032】
ノズル44は、扁平状の水を噴出させるように構成されていて、噴出された水が略水平方向に広がって熱交換器本体20に吹き掛けられるように設定されている。そして、水が熱交換器本体20に吹き掛けられる方向が、ファン28の駆動によって吸い込まれる空気の流れ方向に沿うように設定されている。
【0033】
水が吹き掛けられる部位は、熱交換器本体20の高さに対する80〜90%の高さ位置に設定されている。この範囲に設定することで、ノズル44が枠体12からはみ出さないように維持しつつ、散水された液滴の自然流下による濡れ面積の拡大を図ることができる。
【0034】
ここで、本発明に係る空冷式熱交換器による冷却性能評価を行った結果について説明する。この評価は、熱交換器本体20が図1に示すように8つ設けられる空冷式ヒートポンプ10による評価であり、下記表1に示す実施例と比較例を比較することにより行った。なお、以下のパーセントによる表記は、熱交換器本体20の面積、高さ又は幅に対する割合を示すものである。
【0035】
【表1】

【0036】
各熱交換器本体20に設けられるノズル44の個数は、実施例では8つであり、比較例では4つとなる。実施例では、図3(a)に示すように熱交換器本体20に対して、幅12.5%、高さ0.8%の領域Aが8つ水平方向に並ぶように水が噴射される。そして、1つの熱交換器本体20の面積に対する散水面積の割合は、0.8%となっている。また、熱交換器本体20の面積に対する1つのノズル44による噴射面積(領域Aの面積)の割合は0.1%となっている。一方、比較例では、4つのノズル44が水平方向に並べられていて、図3(b)に示すように、これらノズル44によって散水される4つの領域Bが熱交換器本体20のほぼ全域に亘る。そして、1つの熱交換器本体20の面積に対する散水面積の割合は100%であり、熱交換器本体20の面積に対する1つのノズル44の噴射面積(領域Bの面積)の割合は25%となっている。なお、これら領域の面積計算では、単純化するために、散水される領域の高さと幅を単純にかけ合わせたものを用いている。
【0037】
次に、打力と噴射面積との関係について説明する。図4は、1つのノズル44による噴射面積と打力との関係を示している。同図からわかるように、1つのノズル44の噴射面積が大きくなると次第に打力は小さくなる。
【0038】
1つのノズル44の噴射面積が前記実施例の4倍、すなわち幅25%、高さ1.6%の場合でも、そのときの打力は比較例に比べて充分に大きく、ノズル44の数も半減する。熱交換器本体20の面積に対するこのときの噴射面積の割合は0.4%となるので、この面積割合が0.4%以下であれば、液滴の打力を比較例に比べて充分に上げることができ、水を熱交換器本体20の奥側まで充分に侵入させることができる。一方、1つのノズル44の噴射面積が幅6.2%、高さ0.8%の場合には、1つの熱交換器本体20あたり16個のノズル44を設置することが必要となる。この場合の前記面積割合は0.05%であり、この面積が0.05%以上であれば、散水面積を確保しつつノズル44が増えすぎないようにすることができる。
【0039】
次に、本発明に係る空冷式熱交換器の冷却性能の評価方法について説明する。この評価においては、図5(a)(b)に示すように、熱交換器本体入口側(1)での空気の温度及び湿度、熱交換器本体出口側(3)での空気の温度、ファン出口側(4)での空気の温度及び湿度を測定した、また水量及び風量を測定し、熱交換器本体20へ流入する風速を求めた。また、熱交換器本体前後(1)→(3)での空気の湿度の変化から熱交換器本体20における蒸発量を求めた。
【0040】
また、比較例においては、ノズル44から噴出された水が熱交換器本体20に到達するまで((1)→(2))に一部蒸発するため、その蒸発量を計算した。この計算は、液滴周りの表面積及び熱伝達率を用いて行った。そして、空気の温度、湿度、水量及び風量を用いて、熱交換器本体20を通過する際((2)→(3))の蒸発量を求めた。また蒸発量を物質伝達率で割るとフィンの濡れ面積が求まる。この濡れ面積は、熱交換器本体20全体のフィン面積のうち、濡れたフィンの面積を指している。
【0041】
以上の手順により計測された結果に対し、水量と濡れ面積との関係を図6に示す。図6は、水量と濡れ面積との関係を実施例と比較例の各々において、比較例の所定の値に対する相対比で示したものである。実施例では、散水面積が小さいにも拘らず、比較例に対して濡れ面積が増大している。また、その濡れ面積の増大の程度は、水量が増えるほど顕著である。これは、実施例では、ノズル44から噴出された水が熱交換器本体20に到達する前に蒸発しないことと、打力が大きいことにより熱交換器本体20の奥側まで水が侵入して液膜を作ってフィン間を自然流下しやすいことによる。
【0042】
図7はアプローチ温度を比較したものである。アプローチ温度とは、冷媒の凝縮温度と湿球温度との温度差を意味している。アプローチ温度は熱交換器本体20の性能を代表するパラメータであり、アプローチ温度が低い方が熱交換器本体20の性能がよく、成績係数(COP)が上がる。
【0043】
図7は、横軸に乾球温度(DB)と湿球温度(WB)の温度差DWを取っている。比較例では温度差DWが高くなるにつれてアプローチ温度が高くなるのに対し、実施例では温度差DWが上昇してもアプローチ温度は上昇せずにほぼ安定している。したがって、実施例では温度差DWが大きくなっても熱交換器本体20の性能は低下することなく安定し、全体的に見れば比較例に対して冷却性能が高くなっていることが分かる。比較例において温度差DWの上昇によってアプローチ温度が上昇するのは、比較例では1つのノズル44の噴射面積が広いために、温度差DWが大きくなると熱交換器本体20に到達するまでに蒸発する蒸発量が増大するが、その冷却効果は小さく、フィンに到達した細かい粒子がフィン内に充分に入らず、フィンを濡らす必要量が減ってしまってフィンの濡れ面積が小さくなり、その結果、アプローチ温度が上昇するものと推測される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱交換器本体20に対して吸い込み側に配置されており、しかもファン28が上側に配置されることで空気流速が速くなっている熱交換器本体20の上寄りの部位にノズル44が水を噴射する構成としているので、熱交換器本体20の奥側まで水を侵入させることができる。これにより噴射された水による熱交換器本体20の冷却効率を向上することができる。さらに、熱交換器本体20における上側の部位に略水平方向に広がって水が噴射されるようにしており、上側の部位に噴霧された水が熱交換器本体20の表面で自然流下するため、熱交換器本体20の上側の部位から下部に亘る範囲を濡らすことができる。これにより、濡れ面積を拡大でき、冷却性能を向上させることができる。
【0045】
しかも、各ノズル44の噴射面積が熱交換器本体面積の0.4%以下になるようにノズル44が設定されているので、ノズル44から噴出される水を熱交換器本体20の所定の部位に集中して吹き掛けることができる。この結果、熱交換器本体20に対する液滴の打力を上げることができ、これにより熱交換器本体20の奥側まで水を確実に侵入させることができる。そして、熱交換器本体20では奥側まで侵入するうちに液滴が液膜となるため、重力及び表面張力により自然流下し易くなる。これにより、熱交換器本体20の濡れ面積を拡大でき、冷却性能を確実に向上させることができる。したがって、本実施形態によれば、ノズル44の噴射面積を小さくすることで熱交換器本体20内に水を侵入させ易くするとともに液滴の自然流下による熱交換器本体20の濡れ面積の拡大によって冷却性能を向上させることができる。
【0046】
また本実施形態では、ノズル44が水平方向に並んで複数配設されるので、各ノズル44の噴射面積を増大させなくても、熱交換器本体20に散水される面積を増大させることができる。この結果、熱交換器本体20の横幅によらず、熱交換器本体20における所定高さの位置のほぼ全域に亘って水を散水することができる。無論、ノズル44による熱交換器本体20への散水の結果、熱交換器本体20の表面に充分な広さの濡れ面積が確保できれば、1つの熱交換器本体20に対し1つのノズル44が設けられるのみでも構わない。本発明は、ノズル44の数を限定するものではない。
【0047】
また本実施形態では、熱交換器本体20の面積に対する各ノズル44の噴射面積の割合を0.05%以上としているので、散水面積を確保しつつ、ノズル44の数が増えすぎないようにすることができる。
【0048】
また本実施形態では、V字状に配置された一対の熱交換器本体20の間でこれら熱交換器本体20よりも上側にファン28が配置されるとともに、熱交換器本体20を挟んでその両側にノズル44がそれぞれ配設されている。このため、熱交換器本体20の上側で空気流速が速くなっており、本実施形態ではそれを利用して熱交換器本体20の奥側まで水を侵入させることができる。そして、水が略水平方向に広がるようにノズル44が設定されることにより、熱交換器本体20の上下で空気流速が異なるとしてもその影響を低減できる。この結果、円錐状に噴霧されるノズルを用いる場合に比べて、熱交換器本体奥側まで水が侵入する水量を設定しやすくすることができる。
【0049】
また本実施形態では、枠体12を構成する柱フレーム材18と熱交換器本体20との間の空間を利用して水平配管42が配設されるので、空冷式ヒートポンプ10の寸法が大きくなるのを防止することができる。しかもノズル44が水平配管42に取り付けられたエルボ管継手48に設けられているので、ノズル44の設置スペースが拡大されるのを抑制することができる。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。前記実施形態では、V字状に配設された熱交換器本体20が横に並設されて全体としてW字状に配設された構成にしたが、熱交換器本体20を逆M字状に配設してもよい。すなわち、外側の熱交換器本体20がほぼ垂直に起立した姿勢で配設される構成としてもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、複数の熱交換器本体20を有する空冷式ヒートポンプ10に適用した例について説明したが、熱交換器本体20が1つだけ設けられる空冷式ヒートポンプ10に本発明を適用してもよい。
【0052】
(実施形態2)
前記第1実施形態では、散水手段40が水平配管42とノズル44を備える構成について説明したが、本発明の第2実施形態では、図8に示すように第1実施形態と異なり、散水手段40が、水平配管42と、ノズル(第1のノズル)44と、第2の水平配管50と、第2のノズル52とを備えている。
【0053】
第2水平配管50は、図示省略している水供給源に対して水平配管42と並列に接続されており、水供給源から供給される水が水平配管42と第2水平配管50とに分流されるようになっている。第2水平配管50はブラケット46に固定され、熱交換器本体20の長手方向に延びるように配置されている。
【0054】
第2ノズル52は、円錐状に水を噴出させるフルコーン型ノズルであり、第2水平配管50に接続されたエルボ配管54に設けられている。第2ノズル52は、熱交換器本体20の中央高さよりも下に配置され、第1ノズル44によって散水される領域Aよりも下側の領域に散水するような向きに設置されている。第2ノズル52は、第1ノズル44と同じ数だけ設ける必要はなく、領域Aの下側の領域のほぼ全体をカバーできるように配設されていればよい。第2ノズル52によって散水される領域は、第1ノズル44によって散水される領域Aと一部重なっていてもよいが、散水量を抑制する観点から領域Aと重ならない方が望ましい。
【0055】
なお、第2ノズル52は円錐状に噴霧させる構成に限られず、角錐状に噴霧する構成でもよい。また、円錐状に水を噴出される構成として、断面が完全な円形状に噴出される構成や、断面が長円形状に噴出される構成等が該当する。
【0056】
ここで、第1実施形態による空冷式ヒートポンプのCOPと、第2実施形態による空冷式ヒートポンプのCOPとを比較する。図9は、横軸に水量(相対比)を取り、縦軸にCOPの相対値を取ったものである。水量(相対比)とは、水供給源から供給される所定の供給水量を1.0とした場合の相対水量を意味しており、COPの相対値とは、ある供給水量のときのCOPを1.00としたたきの相対COP値を意味している。
【0057】
この図からわかるように、第1実施形態の空冷式ヒートポンプでは、散水量が増加した場合に冷却性能が頭打ちするのに対し、第2実施形態の空冷式ヒートポンプでは、前記頭打ちする水量以上に散水量を増やすと、冷却性能が更に上昇する。これは、第1実施形態では自然流下によって熱交換器本体20の全体を濡らすようにしているため、熱交換器本体20の全体を均等に濡らすことに限界があるからである。したがって、第2実施形態のように、第1ノズル44により熱交換器本体20の上側の部位を濡らすことに加え、円錐状に水を噴出させる第2ノズル52を使って領域Aの下側の範囲を直接濡らすようにすることで、熱交換器本体20の全体をより均等に濡らし易くすることができる。これにより、冷却性能の限界値を上げることができる。
【0058】
なお、その他の構成、作用及び効果は第1実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態1に係る空冷式熱交換器が適用された空冷式ヒートポンプの斜視図である。
【図2】前記空冷式ヒートポンプの側面図である。
【図3】熱交換器本体に水が噴射される領域を説明するための図であり、(a)は実施例の場合で、(b)は比較例の場合である。
【図4】噴射面積と打力との関係を示す特性図である。
【図5】(a)(b)は冷却性能を評価するための手順を説明するための図である。
【図6】水量と濡れ面積との関係を示す特性図である。
【図7】乾球温度と湿球温度との温度差と、アプローチ温度との関係を示す特性図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る空冷式熱交換器が適用された空冷式ヒートポンプの側面図である。
【図9】水量とCOPとの関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0060】
10 空冷式ヒートポンプ
12 枠体
18 柱フレーム材
20 熱交換器本体
28 ファン
40 散水手段
42 水平配管
44 ノズル
46 ブラケット
48 エルボ管継手
50 第2水平配管
52 第2ノズル
54 エルボ配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器本体よりも上側に配設されたファンの駆動によって空気を通過させる空冷式熱交換器であって、
扁平状に水を噴出させるノズルを備え、
前記ノズルは、前記熱交換器本体を挟んで前記ファンと反対側の位置に配置されるとともに、前記熱交換器本体における上側の部位に水を略水平方向に広がるように噴射する空冷式熱交換器。
【請求項2】
前記ノズルは、水平方向に複数設けられている請求項1に記載の空冷式熱交換器。
【請求項3】
略水平に延びるように配設された水平配管が設けられ、
前記ノズルは、前記水平配管に沿って複数設けられている請求項2に記載の空冷式熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換器本体の面積に対する前記各ノズルの噴射面積の割合は、それぞれ0.4%以下に設定されている請求項1から3の何れか1項に記載の空冷式熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換器本体の面積に対する前記各ノズルの噴射面積の割合は、0.05%以上に設定されている請求項4に記載の空冷式熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換器本体は一対に設けられるとともにV字状に配置され、
前記ファンは、前記両熱交換器本体の間でこれら熱交換器本体よりも上側に配置され、
前記ノズルは、前記両熱交換器本体を挟んでその両側にそれぞれ配設されている請求項1に記載の空冷式熱交換器。
【請求項7】
前記熱交換器本体は、前記V字の上端部での幅に応じた幅を有する直方体状に組まれた枠体によって支持されており、
前記枠体を構成するフレーム材と前記熱交換器本体との間の空間を、前記ノズルが設けられた水平配管が通過している請求項6に記載の空冷式熱交換器。
【請求項8】
円錐状又は角錐状に水を噴出する第2のノズルを備え、
前記第2のノズルは、前記熱交換器本体を挟んで前記ファンと反対側の位置に配置されるとともに、前記ノズルによって噴射される範囲よりも下側の範囲を少なくとも含むように前記熱交換器本体に水を噴射する請求項1に記載の空冷式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−327736(P2007−327736A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124793(P2007−124793)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】