説明

空気入りタイヤ、タイヤ成型装置及び成型方法

【課題】 リボン状ゴムを積層して形成した部分を有する空気入りタイヤにおいて、サイドウォール等のリボン状ゴムの積層部の表面から割れが進展するのを抑制し、空気入りタイヤの耐久性を向上させる。
【解決手段】 リボン状ゴム50を巻回・積層して形成した空気入りタイヤのサイドウォール31等の積層部40の外表面に、1枚のシート状ゴムを貼り付けて形成した表面層41を設け、積層部40の凹凸や接合不良を覆ってタイヤ表面を平滑化し、屈曲時の引っ張り力Pや圧縮力Qでタイヤ表面から割れが進展するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、タイヤ成型装置及び成型方法に関し、特に、リボン状ゴムを積層して形成した空気入りタイヤに割れが生じるのを抑制して耐久性を向上させた空気入りタイヤ、タイヤ成型装置及び成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、ゴム部材からなるトレッドやサイドウォール等の複数のタイヤ構成部材から構成され、これら各部材を組み合わせて未加硫のグリーンタイヤ(生タイヤ)を成型し、加硫成型して所定形状の製品タイヤが製造される。従来、グリーンタイヤの成型には、これら各タイヤ構成部材を予め所定の仕上げ形状に形成しておき、それらを成型ドラム上で順次貼り合わせる等して成型する方法が広く採用されている。
【0003】
この方法では、タイヤ構成部材は、例えば押出機等により成形され、そのゴム吐き出し口に取り付けられた口金の開口部から所定の仕上げ断面形状で連続して押し出され、裁断等されて形成される。従って、この方法では、タイヤ構成部材の断面サイズが大きくなるため、その成形に必要な口金及び押出機も大型化するとともに、それぞれのタイヤ構成部材に対して、その断面形状に応じた多種類の口金を予め準備する必要がある。また、形状の異なるタイヤ構成部材を成形する度に、押出機の口金交換や調整等の作業も必要であり、特に多品種少量生産を行おうとする場合には、生産効率が非常に低下するという問題がある。
【0004】
このような問題に対処するため、従来、円筒状やトロイダル状の成型ドラムの外面に未加硫のリボン状ゴムを螺旋状に巻回して積層する等して、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型装置が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
図7は、この従来のタイヤ成型装置80の概略を示す側面図である。
このタイヤ成型装置80は、図示のように、円筒状の成型ドラム81と、リボン状ゴムを押し出し成形する押出機82から構成される。成型ドラム81は、図示しない駆動手段により回転軸81Aを中心に図の矢印Sで示す方向に回転する。押出機82は、複数(図では3個)のゴム材料の供給装置83と、ゴム材料を押出機82内部に投入するためのホッパ84と、押出機82を成型ドラム81の軸方向と平行に移動させる移動機構85と、リボン状ゴムを所定の断面形状に押し出し成形する口金86とを有する。
【0006】
このタイヤ成型装置80は、所定の断面形状のリボン状ゴムを口金86から連続して押し出し(図の矢印T)、回転する成型ドラム81の外周面の所定位置にガイドローラ87で案内して貼り付ける。この貼り付けを行いつつ、移動機構85により押出機82を成型ドラム81の軸方向と平行に移動させ、成型ドラム81の外周面にリボン状ゴムを螺旋状に巻回して積層し、所定の断面形状のタイヤ構成部材を形成する等してグリーンタイヤを成型する。
【0007】
図8は、このような成型に用いられるリボン状ゴム及びその積層状態を示すリボン状ゴムの長手方向に直交する方向の断面図である。
前記タイヤ成型装置80は、図8Aに示すような断面矩形のリボン状ゴム50を、図8Bに示すように、その一部を重ねながら1層又は複数層積層することでグリーンタイヤの各部材を所定の断面形状に形成する。従って、このタイヤ成型装置80では、このような形状のリボン状ゴムを成形する口金86を数種類準備すればよく、タイヤ構成部材を一体成形する場合に比べて口金86の数を大幅に減少できる。また、大型の押出機82を必要とせず、更に、口金86の調整等の段取り作業の時間を大幅に短縮できるため、多品種少量生産にも容易に対応できる。
【0008】
しかしながら、このようにリボン状ゴム50を積層してグリーンタイヤを成型する場合には、リボン状ゴム50間等の接合が不十分となり、製品タイヤのゴムに割れ等の欠陥が生じる恐れがある。また、重ね合わせたリボン状ゴム50の縁部には、図8Bに示すように、段差51が生じるが、加硫成型時に段差51部分が十分に型付けされずに製品タイヤにベアや割れが発生することがある。その結果、製品タイヤの耐久性の低下や、タイヤの外観の悪化等の問題も生じやすくなる。
【0009】
また、リボン状ゴム50を複数層積層した場合には、内層側の段差51部分にエアが閉じこめられて製品タイヤにエア溜まりが生じることがある。加えて、タイヤ外表面の段差51部分と加硫用金型の内周面の間に閉じこめられたエアも、加硫成型時のゴムの流れによってタイヤ内部に巻き込まれることがある。このようにして製品タイヤにエア溜まりが生じた場合には、車両走行時にその部分に応力が集中して他の部分に比べて亀裂が発生しやすくなり、空気入りタイヤの耐久性が低下するという問題も生じる。更に、タイヤ側面のサイドウォールでは、段差51部分に金型離型剤等の異物が溜まりやすく、加硫成形時の加圧によってグリーンタイヤが膨張すると、段差51部分のゴムが変形して異物がゴム内に閉じこめられ、製品タイヤの表面に異物の咬込み部分(接合不良)が生じて割れの発生原因となる恐れもある。
【0010】
そこで、このような問題に対処するため、リボン状ゴム50を積層することによって形成される段差51部分の凸部をローラにより磨り潰すようにしたタイヤ成型装置が知られている(特許文献2参照)。
【0011】
図9は、この従来のタイヤ成型装置90の概略を示す側面図である。
タイヤ成型装置90は、図7に示すタイヤ成型装置80と同様に、円筒状の成型ドラム91と、押出機等のリボン状ゴム50の供給装置92と、リボン状ゴム50を案内する2つのガイドローラ93、94等を有し、供給装置92から供給されるリボン状ゴム50をガイドローラ93、94により案内して、回転する成型ドラム91の外周面に一部を重ねながら螺旋状に巻回する。更に、このタイヤ成型装置90は、回転自在な円盤状のローラ95と、ローラ95を成型ドラム91の外周面に押し付ける駆動機構96とを有しており、成型ドラム91の外周面にリボン状ゴム50を巻回しながら、リボン状ゴム50の表面をローラ95の外周面で押圧する。
【0012】
このようなローラ95、又はブラシ等で押圧を行った場合には、リボン状ゴム50同士やリボン状ゴム50とその下に巻かれた他の部材等が強固に圧着されるとともに、リボン状ゴム50表面の段差51の凸部が磨り潰され、図8Cに示すように、その表面を平滑化できる。従って、このタイヤ成型装置90では、リボン状ゴム50同士の接合不良や段差51を原因とした上記した加硫成型時のベア、又は、エア溜まりや異物の咬込み等により生じる製品タイヤの割れ等を抑制できるとともに、リボン状ゴム50等のゴム部材間の接合力が向上するため、製品タイヤの耐久性を高めることができる。
【0013】
しかしながら、このようにタイヤ表面を平滑化しつつ部材同士を圧着した場合であっても、製品タイヤの表面に微小な接合不良や凹凸が残ることがあり、それらを起点として走行中に受ける繰り返し負荷や変形等により、図8Dに示すような割れ52が製品タイヤの表面から進展する恐れがある。特に、タイヤの側面を保護するサイドウォールは、走行中に絶えず屈曲されて伸長・圧縮変形を繰り返し受ける部分であるとともに、その屈曲量も他の部分に比べて最も大きくなる。従って、その際の変形量や伸縮力も最も大きく、上記したタイヤ表面から割れが進展する恐れが最も大きくなる。
【0014】
【特許文献1】特開2000−79643号公報
【特許文献2】特開2004−216603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、リボン状ゴムを積層して形成した部分を有する空気入りタイヤにおいて、サイドウォール等のリボン状ゴムの積層部の表面から割れが進展するのを抑制し、空気入りタイヤの耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、リボン状ゴムを積層して形成した積層部を有する空気入りタイヤであって、前記積層部の外表面の少なくとも一部に、前記タイヤの外表面を平滑化するシート状ゴムを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された空気入りタイヤにおいて、前記積層部が、サイドウォールであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された空気入りタイヤにおいて、前記シート状ゴムの厚さが、0.05mm以上2mm以下であることを特徴とする。
請求項4の発明は、トロイダル状又は円筒状の外面を有する回転可能な成型ドラムと、該成型ドラムに未加硫のリボン状ゴムを供給する手段と、該リボン状ゴムを前記成型ドラムの外面に巻回して積層する積層手段とを備え、該積層手段により前記リボン状ゴムを積層して所定の断面形状の積層部を形成し、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型装置において、前記リボン状ゴムの積層部に未加硫のシート状ゴムを供給する手段と、該シート状ゴムを前記リボン状ゴムの積層部の外表面の少なくとも一部に貼り付ける貼付手段とを備え、前記シート状ゴムにより前記積層部の外表面を平滑化することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載されたタイヤ成型装置において、前記シート状ゴムを供給する手段が、室温の又は加熱された前記シート状ゴムを供給することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4又は5に記載されたタイヤ成型装置において、前記シート状ゴムを供給する手段は、前記シート状ゴムを押し出し成形する押出機を有し、該押出機により押し出し成形された前記シート状ゴムを前記貼付手段により前記リボン状ゴムの積層部の外表面に貼り付けることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項4ないし6のいずれかに記載されたタイヤ成型装置において、前記リボン状ゴムの積層部が、サイドウォールであることを特徴とする。
請求項8の発明は、タイヤ成型方法であって、トロイダル状又は円筒状の外面を有する成型ドラムの外面に未加硫のリボン状ゴムを巻回して積層し、所定の断面形状の積層部を形成する工程と、該積層部の外表面の少なくとも一部に未加硫のシート状ゴムを貼り付ける工程とを有し、前記シート状ゴムにより前記積層部の外表面を平滑化することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項8に記載されたタイヤ成型方法において、前記シート状ゴムを貼り付ける工程は、室温の又は加熱された前記シート状ゴムを貼り付けることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項8又は9に記載されたタイヤ成型方法において、前記積層部が、サイドウォールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リボン状ゴムを積層して形成したグリーンタイヤのサイドウォール等の外表面にシート状ゴムを貼り付けて表面層を形成したため、タイヤ表面が平滑化して割れの起点を無くすことができ、タイヤ表面から割れが進展するのを抑制して空気入りタイヤの耐久性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のタイヤ成型装置1の一部を模式的に示す側面図であり、リボン状ゴムの積層に関する部分を拡大して示す。
このタイヤ成型装置1は、図7、図9に示す前記従来のタイヤ成型装置80、90と同様に、未加硫のリボン状ゴム50の一部を重ね合わせて積層し、所定の断面形状のサイドウォール等を形成してグリーンタイヤを成型する装置であり、図示のように、成型ドラム2と、押出機3と、それらの間に配置された一対のローラ4、5とを備える。
【0019】
成型ドラム2は、円筒状又は成型するグリーンタイヤの形状に対応したトロイダル状をなし、図示しない駆動手段により軸線回りに回転する。押出機3は、未加硫のリボン状ゴム50を供給する手段であり、所定の断面形状の口金を有し、そこからゴムを連続して押し出してリボン状ゴム50(図8A参照)を成形する。一対のローラ4、5は、成型ドラム2に対向して位置し、一方(図では上方)のローラ4が他方(図では下方)のローラ5よりも大径に形成される。このローラ4、5は、リボン状ゴム50を成型ドラム50に向かって搬送しつつ、その位置と角度を制御し、大径な一方のローラ4で成型ドラム2の外面上にリボン状ゴム50を貼り付ける。
【0020】
このタイヤ成型装置1は、以上の構成により、押出機3から供給されるリボン状ゴム50を、ローラ4、5により位置と角度を制御しつつ回転する成型ドラム2の外面上に螺旋状に巻回して積層し、所定の断面形状に形成する。トロイダル状の成型ドラム2の場合には、このようにサイドウォールやトレッド等を形成する等して所定形状のグリーンタイヤを成型し、また、円筒状の成型ドラム2の場合には、円筒状に成型したゴム部材の中央部分をトロイダル状に膨出させつつ、サイドウォールやトレッド等を以上のように形成して所定形状のグリーンタイヤを成型する。
【0021】
このグリーンタイヤのリボン状ゴム50の積層部表面には、上記したようにリボン状ゴム50が重なり合って縁部に段差(図8B参照)が形成される。従って、このグリーンタイヤをそのまま、又は表面の段差を磨り潰して平滑化してから加硫成型した場合には、上記したように製品タイヤの表面、特に転動時に最も大きく屈曲するサイドウォールの表面に割れ等が生じる恐れがある。そこで、本実施形態のタイヤ成型装置1では、以上の成型に続けて、グリーンタイヤのリボン状ゴム50の積層部(ここではサイドウォール)の外表面に、比較的薄肉で幅広なシート状ゴムを貼り付けて表面層を形成し、割れの起点となる段差や凹凸等を覆ってタイヤ表面から割れが進展するのを抑制する。従って、タイヤ成型装置1は、以上に加えて、未加硫のシート状ゴムをグリーンタイヤへ供給する供給手段と、供給されたシート状ゴムを所定位置に貼り付ける貼付手段とを備える。
【0022】
ここで、シート状ゴムの貼り付けには、コールド方式とホット方式の2種類の方式がある。コールド方式は、ゴム成形装置で形成したシート状ゴムを冷却して一旦リール等の巻物に巻き取り、巻物から巻き出しながらシート状ゴムを室温で貼り付ける方式である。従って、この方式では、タイヤ成型装置1にシート状ゴムの巻物を取り付けてグリーンタイヤまで供給する装置が設けられ、この装置とシート状ゴムの巻物等でシート状ゴムの供給手段を構成する。一方、ホット方式は、ゴム成形装置で形成したシート状ゴムを冷却せずにグリーンタイヤ表面に直接貼り付ける方式である。従って、この方式では、タイヤ成型装置1にシート状ゴムの供給手段であるシート状ゴムの成形装置等が設けられる。
【0023】
このように、装置の構成や貼り付け時の温度等は異なるものの、両方式とも、シート状ゴムは、ゴム成形装置、例えばカレンダー装置や押出機等により、貼り付ける部分に応じた幅及び所定の厚さに成形される。
図2は、このゴム成形装置の例を示す概略側面図であり、図2Aはカレンダー装置を示し、図2Bは押出機を示す。
【0024】
カレンダー装置10は、図2Aに示すように、図示しない駆動手段により回転する円筒状のロール11、12を複数本(本実施形態では2本)備えており、各ロール11、12は、軸方向が平行に、かつ成形するシート状ゴム55の厚さに対応した所定の間隔を外周面間に開けて上下方向に並列して設けられている。このカレンダー装置10は、ロール11、12間に送られる(図の矢印V1)加熱された配合ゴム56を、互いに逆方向に回転(図の矢印R)するロール11、12間で圧延し、所定の厚さと幅のシート状ゴム55を連続して成形する(図の矢印V2)。
【0025】
一方、押出機20は、図2Bに示すように、配合ゴム56等を加熱・混練して押し出す押出機本体21と、そのゴム吐き出し口22の先端に設けられた一対の円筒状のローラ26、27からなるローラヘッド25とを有する。押出機本体は、略円筒状のシリンダ23と、シリンダ23内部で回転する螺旋状のフライトを有する図示しないスクリュと、シリンダ23側面に設けられた配合ゴム56等をシリンダ23内部に投入するためのホッパ24と、シリンダ先端のゴム吐き出し口22と、シリンダ23等を加熱して機体内部のゴムを所定温度に加熱する図示しない加熱手段とを備える。ローラヘッド25の一対のローラ26、27は、軸方向が平行に、かつ成形するシート状ゴム55の厚さに対応した所定の間隔を外周面間に開けて上下方向に並列して設けられている。
【0026】
押出機20は、以上のように構成され、ホッパ24からシリンダ23内に投入(図の矢印W1)される配合ゴム56等を、回転するスクリュによりゴム吐き出し口22方向に向かって螺旋状に搬送しながら加熱・混練し(図の矢印S)、ゴム吐き出し口22から押し出す。この押し出したゴムをローラヘッド25の互いに逆方向に回転(図の矢印G)する一対のローラ26、27間で圧延し、所定の厚さと幅のシート状ゴム55を連続して成形する(図の矢印W2)。なお、ローラヘッド25の代わりにゴム吐き出し口22先端に口金を装着し、その開口部から所定の断面形状のシート状ゴム55を連続して押し出して成形するようにしてもよい。
【0027】
本実施形態のタイヤ成型装置1は、以上のように成形したシート状ゴム55をグリーンタイヤ側面の両サイドウォールの所定位置に貼付手段により貼り付けて、リボン状ゴム50を積層して形成した積層部の外表面に1枚のシート状ゴム55からなる表面層を形成する。なお、シート状ゴム55は、ゴムの粘性を利用してサイドウォールに押し付けて貼り付けてもよく、接着剤等をサイドウォール又はシート状ゴム55の貼付面に塗布した後、サイドウォールに押し付けて貼り付けてもよい。特に、シート状ゴム55を成形しつつ貼り付けるホット方式では、コールド方式よりもゴムの温度が高く、その粘性も高いため、シート状ゴム55を粘性のみで貼り付けても充分な貼り付け強度が得られる。
【0028】
図3は、シート状ゴム55をグリーンタイヤ30の両サイドウォール31へ貼り付けている状態を模式的に示す斜視図である。
なお、このタイヤ成型装置1では、シート状ゴム55の貼り付けをグリーンタイヤ30の両側面で同時に行うが、その手順は同様であるため、以下ではグリーンタイヤ30の一方の側面のサイドウォール31への貼り付け手順について説明する。
【0029】
まず、タイヤ成型装置1は、図3Aに示すように、グリーンタイヤ30を停止させた状態で、図示しないシート状ゴム55の供給手段から、サイドウォール31にシート状ゴム55を供給する(図の矢印K)。次に、シート状ゴム55の先端がサイドウォール31の所定位置に達したときに、例えば図示しないセンサがこれを検知すると、シート状ゴム55の先端を図示しない押圧部材でタイヤ幅方向外側から押圧し、サイドウォール31の所定位置に圧着する。その後、押圧部材をシート状ゴム55から離して略同位置に回転自在な円筒状のローラ6を押し付ける。このとき、ローラ6の軸方向が、サイドウォール31の外面と略平行に、かつグリーンタイヤ30の回転方向(図3Bの矢印F)と略直交するように押し付ける。
【0030】
次に、図3Bに示すように、シート状ゴム55の供給速度に同期させてグリーンタイヤ30を同方向(図の矢印F)に回転させ、シート状ゴム55をサイドウォール31に沿って貼り付ける。このとき、シート状ゴム55をローラ6で押圧して、下層の部材との間のエアを抜きながらリボン状ゴムの積層部表面の凹凸に合わせてシート状ゴム55を変形させつつ圧着して貼り付ける。また、シート状ゴム55のタイヤ半径方向外側のゴムを引き伸ばしながら、サイドウォール31の形状に対応した略環状になるようにシート状ゴム55を変形させつつ貼り付ける。
【0031】
その状態でシート状ゴム55の供給とグリーンタイヤ30の回転を続行し、図3Cに示すように、グリーンタイヤ30が一周してシート状ゴム55の先端が貼り付け開始位置に達したときに、例えば図示しないセンサがこれを検知すると、グリーンタイヤ30の回転を停止して図示しない切断手段によりシート状ゴム55を切断する。その後、ローラ6を表面から離して貼り付け作業を終了するが、このとき、切断したシート状ゴム55の後端部はローラ6で押圧されて先端部と接合している。
【0032】
ここで、シート状ゴム55の厚さが0.05mmよりも薄い場合には、引っ張り強度が不足して、貼り付け時の変形で破れる恐れがあるとともに、リボン状ゴムの積層部表面の凹凸等に起因する割れを抑制できない恐れがある。逆に、2mmよりも厚い場合には、シート状ゴム55の剛性が高くなり、貼り付け作業等が困難になるとともに、柔軟性が低下して積層部表面の凹凸に対応した変形が困難となり、部材間にエアが残る恐れがある。従って、シート状ゴム55の厚さは、0.05mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0033】
なお、ローラ6のタイヤ回転方向下流側に、回転自在な円筒状のブラシを設けてサイドウォール31の表面に押し付け、貼り付けられたシート状ゴム55をブラッシングして、その幅方向の両端まで確実にサイドウォール31に貼り付けるようにしてもよい。また、サイドウォール31の表面を予めローラやブラシ等で押圧又はブラッシングしてリボン状ゴムの積層部表面を平滑化してからシート状ゴム55の貼り付けを行ってもよい。
【0034】
更に、シート状ゴム55は、予め貼り付けに必要な所定長さに切断してから供給してもよく、貼り付けもサイドウォール31の片面ずつ行う、即ち、一方の面にシート状ゴム55を貼り付けた後にグリーンタイヤ30をタイヤ半径方向を中心に180度旋回させて、他方の面の貼り付けを行ってもよい。このように片面ずつ貼り付ける場合には、タイヤ成型装置1に、片面の貼り付けが終了した後にグリーンタイヤ30を旋回させて、他方の面を貼付手段側に向けるための旋回装置を設ける必要があるが、シート状ゴム55の供給手段や貼付手段はグリーンタイヤ30の片面のみに設ければよい。
【0035】
また、上記したホット方式により貼り付けを行う場合には、シート状ゴム55の成形装置(図2参照)の各ローラでシート状ゴム55の貼り付けを行ってもよい。
図4は、押出機20を用いてホット方式でシート状ゴム55をサイドウォール31へ貼り付けている状態を模式的に示すタイヤ半径方向から見た側面図である。
【0036】
この場合には、図示のように、押出機20先端のローラヘッド25の一方(図では上方)のローラ26を他方(図では下方)のローラ27よりも大径にし、シート状ゴム55の貼り付け時には、ローラ26の外周面をサイドウォール31の所定位置に押し付ける。その状態で、ゴム吐き出し口22からゴムを押し出してローラヘッド25のローラ26、27間で圧延して、所定の断面形状のシート状に成形しつつ、ローラ26でサイドウォール31の所定位置にシート状ゴム55を貼り付ける。即ち、ローラ26、27を互いに逆方向(図の矢印G)に回転させてシート状ゴム55を供給(図の矢印K)し、グリーンタイヤ30を回転(図の矢印F)させて、図3と同様にシート状ゴム55をサイドウォール31へ貼り付ける。
【0037】
以上説明したようにシート状ゴム55を貼り付けると、図3Cに示すように、グリーンタイヤ30側面のサイドウォール31の外表面に、1箇所の接合部57で接合された略環状の表面層が形成される。その後、グリーンタイヤ30は、タイヤ成型装置1から取り外されて図示しない搬送装置により加硫成型装置に搬送され、金型内で加硫成型されて所定形状の空気入りタイヤ(製品タイヤ)が製造される。
【0038】
図5は、加硫成型後の空気入りタイヤのサイドウォール31の構造、及びタイヤ転動時の状態を模式的に示すタイヤ幅方向の拡大断面図である。
この空気入りタイヤは、図5Aに示すように、サイドウォール31に、リボン状ゴム50を螺旋状に巻回・積層して形成した内層側の積層部40と、その外側のシート状ゴム55を貼り付けて形成した表面層41とを備える。即ち、タイヤ側面のサイドウォール31の外表面は、1枚のゴム層により形成される。
【0039】
ここで、サイドウォール31は、タイヤ転動時に最も大きく屈曲して、無負荷状態(図5A)と伸縮状態(図5B、C)の間で変形を繰り返す。即ち、屈曲時には、図5Bに示すように、タイヤ幅方向外側に向かって湾曲して、引っ張り力(図の矢印P)が作用して表面層41等が同方向に伸張するか、又は、図5Cに示すように、逆方向のタイヤ幅方向内側に向かって湾曲して、圧縮力(図の矢印Q)が作用して表面層41等が同方向に圧縮される。
【0040】
このように、サイドウォール31は、走行中に大きな力が作用して伸張・圧縮変形を繰り返し受けるため、リボン状ゴム50の積層のみでサイドウォール31を形成した場合には、上記したように表面に残る微小な凹凸等を起点として表面から割れが進展する恐れがある。また、リボン状ゴム50に接合不良が生じた場合には、伸張時の引っ張り力で接合不良部が開き、又は、圧縮力で接合不良部の両面が横方向にずれて、割れが内部等に向かって進展する恐れがある。
【0041】
しかしながら、この空気入りタイヤでは、リボン状ゴム50の積層部40の外表面にシート状ゴム55を貼り付けて形成した表面層41を設けたため、割れの起点となる凹凸等を覆って表面を平滑化でき、そこから割れが進展するのを抑制できる。同時に、表面層41により、接合不良部が開きにくく、又は、ずれにくくなるため、サイドウォール31の表面から割れが進展するのを抑制でき、空気入りタイヤの耐久性を向上できる。
【0042】
なお、本実施形態では、幅広のシート状ゴム55をサイドウォール31の全面に貼り付けたが、シート状ゴム55の幅を狭くしてタイヤ半径方向に一部重なるようにずらす等してサイドウォール31に貼り付けてもよく、幅狭のシート状ゴム55を特に大きく屈曲する部分のみに貼り付けて、サイドウォール31の必要な部分のみに表面層41を形成してもよい。また、表面層41の強度を高めるため、同一箇所にシート状ゴム55を2周以上貼り付けて、表面層41を2枚以上のシート状ゴム55で形成してもよい。
【0043】
更に、グリーンタイヤ30のリボン状ゴム50を積層して形成した他の部分、例えばトレッド等にシート状ゴム55を貼り付けて表面層を形成してもよい。この場合にも、サイドウォール31の場合と同様に、表面からの割れの進展を抑制でき、空気入りタイヤの耐久性を向上できる。
【0044】
(走行試験)
本発明の効果を確認するため、上記したようにサイドウォール31にシート状ゴム55を貼り付けて形成した実施例のタイヤ(以下、実施品という)と、リボン状ゴムを積層してその表面をローラで押圧して部材同士の圧着と凸部の磨り潰しを行って形成した比較例のタイヤ(以下、比較品1という)と、リボン状ゴムの積層のみで形成した比較例のタイヤ(以下、比較品2という)を製造し、走行試験を行った。各タイヤの製造条件や形状等は、以上の違いの他は全て同一であり、それぞれ同数本製造して所定距離走行したときの割れの発生率を比較した。
【0045】
図6は、走行試験の結果を示すグラフであり、図の横軸は走行距離(万km)を示し、縦軸は割れの発生率(%)を示す。
各タイヤの割れの発生率は、所定の走行距離までに割れの発生したタイヤの累計本数を、試験したタイヤの総本数で除した値であり、百分率で示す。また、図中、実施品の割れの発生率は円印で、比較品1は三角印で、比較品2はバツ印で示す。
【0046】
図示のように、約3万km走行したときの割れの発生率は、比較品2の30%に対して、比較品1と実施品は0%であり、これらでは割れは発生しなかった。約6万km走行したときの割れの発生率は、比較品2の55%に対して、比較品1は0.1%と僅かに割れが発生したが、実施品では0%であり割れは発生しなかった。約10万km走行したときの割れの発生率は、比較品2は100%と全てに割れが発生し、また、比較品1では0.2%と割れた本数が増加したのに対し、実施品では0%と割れは全く発生しなかった。以上の結果から、本発明により、表面からの割れの進展を抑制でき、空気入りタイヤの耐久性を向上できることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態のタイヤ成型装置の一部を模式的に示す側面図である。
【図2】シート状ゴム成形装置の例を示す概略側面図であり、Aはカレンダー装置、Bは押出機である。
【図3】シート状ゴムをグリーンタイヤの両サイドウォールへ貼り付けている状態を模式的に示す斜視図である。
【図4】押出機を用いてホット方式でシート状ゴムをグリーンタイヤのサイドウォールへ貼り付けている状態を模式的に示すタイヤ半径方向から見た側面図である。
【図5】本実施形態の空気入りタイヤのサイドウォールの構造及びタイヤ転動時の状態を模式的に示すタイヤ幅方向の拡大断面図である。
【図6】走行試験の結果を示すグラフである。
【図7】従来のタイヤ成型装置の概略を示す側面図である。
【図8】従来のタイヤ成型方法に用いるリボン状ゴム及びその積層状態を示すリボン状ゴムの長手方向に直交する方向の断面図である。
【図9】従来のタイヤ成型装置の概略を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・タイヤ成型装置、2・・・成型ドラム、3・・・押出機、4・・・ローラ、5・・・ローラ、6・・・ローラ、10・・・カレンダー装置、11・・・ロール、12・・・ロール、20・・・押出機、21・・・押出機本体、22・・・ゴム吐き出し口、23・・・シリンダ、24・・・ホッパ、25・・・ローラヘッド、26・・・ローラ、27・・・ローラ、30・・・グリーンタイヤ、31・・・サイドウォール、40・・・積層部、41・・・表面層、50・・・リボン状ゴム、55・・・シート状ゴム、56・・・配合ゴム、57・・・接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボン状ゴムを積層して形成した積層部を有する空気入りタイヤであって、
前記積層部の外表面の少なくとも一部に、前記タイヤの外表面を平滑化するシート状ゴムを備えたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載された空気入りタイヤにおいて、
前記積層部が、サイドウォールであることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された空気入りタイヤにおいて、
前記シート状ゴムの厚さが、0.05mm以上2mm以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
トロイダル状又は円筒状の外面を有する回転可能な成型ドラムと、
該成型ドラムに未加硫のリボン状ゴムを供給する手段と、
該リボン状ゴムを前記成型ドラムの外面に巻回して積層する積層手段とを備え、
該積層手段により前記リボン状ゴムを積層して所定の断面形状の積層部を形成し、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型装置において、
前記リボン状ゴムの積層部に未加硫のシート状ゴムを供給する手段と、
該シート状ゴムを前記リボン状ゴムの積層部の外表面の少なくとも一部に貼り付ける貼付手段とを備え、
前記シート状ゴムにより前記積層部の外表面を平滑化することを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたタイヤ成型装置において、
前記シート状ゴムを供給する手段が、室温の又は加熱された前記シート状ゴムを供給することを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載されたタイヤ成型装置において、
前記シート状ゴムを供給する手段は、前記シート状ゴムを押し出し成形する押出機を有し、
該押出機により押し出し成形された前記シート状ゴムを前記貼付手段により前記リボン状ゴムの積層部の外表面に貼り付けることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載されたタイヤ成型装置において、
前記リボン状ゴムの積層部が、サイドウォールであることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項8】
トロイダル状又は円筒状の外面を有する成型ドラムの外面に未加硫のリボン状ゴムを巻回して積層し、所定の断面形状の積層部を形成する工程と、
該積層部の外表面の少なくとも一部に未加硫のシート状ゴムを貼り付ける工程とを有し、
前記シート状ゴムにより前記積層部の外表面を平滑化することを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項9】
請求項8に記載されたタイヤ成型方法において、
前記シート状ゴムを貼り付ける工程は、室温の又は加熱された前記シート状ゴムを貼り付けることを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載されたタイヤ成型方法において、
前記積層部が、サイドウォールであることを特徴とするタイヤ成型方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−106354(P2007−106354A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301730(P2005−301730)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】