説明

空気入りタイヤの製造方法

【課題】ユニフォミティに優れる空気入りタイヤ18の提供。
【解決手段】このタイヤ18は、周方向に延在する複数の主溝38aを有するトレッド20と、トレッド20の半径方向内側に位置するバンド30と、バンド30の半径方向内側に位置するベルト28とを備える。これら主溝38aは、赤道上にはない。バンド30は、第一リボン52a及び第二リボン52bを用いて形成される。赤道に一番近い主溝38aが基準主溝38asとされ、この基準主溝38asの直下において、第一リボン52aの先端62a及び第二リボン52bの先端62bがベルト28に積層される。第一リボン52aは、ベルト28の第一端に向かってベルト28の上を螺旋状に巻回される。第二リボン52bは、ベルト28の第二端に向かってベルト28の上を螺旋状に巻回される。第一リボン52a及び第二リボン52bは、長さ方向に延在するコードを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドの外面は、トレッド面をなしている。通常このトレッド面には、溝が刻まれている。これにより、トレッドパターンが形成されている。この溝は、モールドのキャビティ面に設けられた凸条がローカバー(未架橋タイヤ)に押し当てられることにより形成される。このトレッドの形成に関する検討例が、特開2008−284815公報に開示されている。
【0003】
タイヤのベルトは、通常はバンドで覆われる。バンドは、コードを含んでいる。コードは、実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンドは、いわゆるジョイントレス構造を有する。バンドは、ベルトを拘束する。これにより、ベルトのリフティングが抑制される。
【0004】
バンドは、リボンが螺旋状に巻回されることにより形成される。リボンは、コードとトッピングゴムとからなる。バンドを有するタイヤ及びその製造方法について、様々な検討がなされている。この検討例が、特開2002−144815公報及び特開2009−051417公報に開示されている。
【0005】
図5には、従来のタイヤ2の製造方法におけるバンド4の形成状況が、このバンド4を有するタイヤ2の断面とともに示されている。図5中、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表している。このバンド4は、カーカス6と積層されたベルト8とトレッド10との間に位置している。このバンド4は、第一リボン12a及び第二リボン12bを用いて形成されている。第一リボン12aは、赤道面からベルト8の第一端(図示されず)に向かって螺旋状に巻回されている。第二リボン12bは、赤道面からベルト8の第二端(図示されず)に向かって螺旋状に巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−284815公報
【特許文献2】特開2002−144815公報
【特許文献3】特開2009−051417公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示されているように、このタイヤ2は複数の主溝14aと複数の副溝14bとを有している。これら主溝14aは、周方向に延びている。図示されているように、このタイヤ2の赤道上には主溝14aは設けられていない。
【0008】
第一リボン12a及び第二リボン12bのそれぞれは、赤道面に対して僅かに傾斜している。このため、従来の製造方法では、第一リボン12a及び第二リボン12bの巻き始めの部分に、第一リボン12a及び第二リボン12bのない部分(以下、隙間16)が形成されてしまう。
【0009】
前述したように、第一リボン12aは赤道面からベルト8の第一端に向かって螺旋状に巻回され、第二リボン12bはこの赤道面からベルト8の第二端に向かって螺旋状に巻回されている。このため、上記隙間16は赤道面上に位置している。このタイヤ2の赤道面上には、この隙間16のある部分とこの隙間16のない部分とが混在している。言い換えれば、このタイヤ2の赤道部分には、この隙間16に起因した凹凸が存在している。前述したように、このタイヤ2の赤道上には主溝14aは設けられていない。このため、この凹凸がタイヤ2のユニフォミティに反映されてしまう。このタイヤ2は、ユニフォミティに劣る。
【0010】
本発明の目的は、ユニフォミティに優れる空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、周方向に延在する複数の主溝を有するトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するバンドと、このバンドのさらに半径方向内側に位置するベルトとを備えており、これら主溝が赤道上にはない空気入りタイヤを製造する方法に関する。この空気入りタイヤの製造方法は、回転可能な円筒状のドラムと、第一リボンを送り出すとともに軸方向に移動可能な第一ヘッドと、第二リボンを送り出すとともに軸方向に移動可能な第二ヘッドとを備えたフォーマーにおいて実施される。この製造方法は、
(1)上記ドラムにシートが巻回され、ベルトが得られる工程
(2)上記複数の主溝のうち、上記赤道に一番近い主溝が基準主溝とされ、上記ベルトの、この基準主溝の直下となる部分に、上記第一ヘッドから送り出された第一リボンの先端及び上記第二ヘッドから送り出された第二リボンの先端が積層される工程
及び
(3)上記ドラムを回転させるとともに上記ベルトの第一端に向かって上記第一ヘッドを軸方向に移動させることにより上記第一リボンが螺旋状に巻回され、このドラムを回転させるとともにこのベルトの第二端に向かって上記第二ヘッドを軸方向に移動させることにより上記第二リボンが螺旋状に巻回される工程
を含む。この第一リボン及び第二リボンのそれぞれは、その長さ方向に延在するコードを含んでいる。
【0012】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記第一リボン及び第二リボンの積層工程において、
この第一リボンは、その先端における、この第一リボンの上記ベルト第二端側の縁が上記基準主溝のこのベルト第一端側の縁よりも軸方向内側に位置するようにこのベルトに積層される。この第二リボンは、その先端における、この第二リボンの上記ベルト第一端側の縁がこの基準主溝のこのベルト第二端側の縁よりも軸方向外側に位置するようにこのベルトに積層される。
【0013】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記複数の主溝のそれぞれは、5.0mm以上15.0mm以下の幅と6.0mm以上12.0mm以下の深さとを有している。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤは、周方向に延在する複数の主溝を有するトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するバンドと、このバンドのさらに半径方向内側に位置するベルトとを備えている。これら主溝は、赤道上にはない。上記バンドは、第一リボン及び第二リボンを用いて形成されている。上記複数の主溝のうち、上記赤道に一番近い主溝が基準主溝とされ、この基準主溝の直下において、上記第一リボンの先端及び上記第二リボンの先端は上記ベルトに積層されている。この第一リボンは、このベルトの第一端に向かってこのベルト上を螺旋状に巻回されている。この第二リボンは、このベルトの第二端に向かってこのベルト上を螺旋状に巻回されている。この第一リボン及び第二リボンのそれぞれは、その長さ方向に延在するコードを含んでいる。
【0015】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記バンドにおいて、上記第一リボンの先端における、この第一リボンの上記ベルト第二端側の縁は、上記基準主溝のこのベルト第一端側の縁よりも軸方向内側に位置している。上記第二リボンの先端における、この第二リボンの上記ベルト第一端側の縁は、この基準主溝のこのベルト第二端側の縁よりも軸方向外側に位置している。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記複数の主溝のそれぞれは、5.0mm以上15.0mm以下の幅と6.0mm以上12.0mm以下の深さとを有している。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤでは、第一リボン及び第二リボンの巻き始めの部分に形成される隙間は、赤道に一番近い基準主溝の直下に存在している。このタイヤでは、主溝のない赤道の部分に隙間は存在していない。このタイヤでは、この隙間によるユニフォミティへの影響が抑えられている。本発明の製造方法は、赤道上に主溝を有さないタイヤのユニフォミティの向上に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のタイヤのバンドの形成に用いられるリボンの一部が示された断面斜視図である。
【図3】図3は、図1に示されたタイヤのバンドの形成開始の状態が示された平面図である。
【図4】図4は、図1に示されたタイヤのバンドの形成状況が示された平面図である。
【図5】図5は、従来のタイヤ製造方法によるバンドの形成状況が示された平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1に示されたタイヤ18は、トレッド20、サイドウォール22、ビード24、カーカス26、ベルト28、バンド30、インナーライナー32及びチェーファー34を備えている。このタイヤ18は、チューブレスタイプである。このタイヤ18は、乗用車に装着される。
【0021】
図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ18は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ18の赤道面を表す。
【0022】
トレッド20は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッド20は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド20は、トレッド面36を備えている。このトレッド面36は、路面と接地する。
【0023】
このタイヤ18のトレッド面36には、溝38が刻まれている。これにより、トレッドパターンが形成されている。トレッド面36において、溝38のない部分はランドと称される。トレッド面36は、溝38とランド40とからなる。
【0024】
このタイヤ18のトレッド面36には、4の主溝38aと3の副溝38bとが設けられている。言い換えれば、このタイヤ18のトレッド20は複数の主溝38aと複数の副溝38bとを有している。これら主溝38aは、周方向に延在している。これら主溝38aのそれぞれは、同等の幅と同等の深さを有している。図1中、両矢印Wは主溝38aの幅を表している。両矢印Dは、この主溝38aの深さを表している。このタイヤ18では、主溝38aの幅Wは5.0mm以上15.0mm以下である。この主溝38aの深さDは、6.0mm以上12.0mm以下である。
【0025】
副溝38bは、周方向に延在している。副溝38bは、主溝38aよりも幅狭である。このタイヤ18では、この副溝38bの幅は5.0mm未満である。副溝38bは、主溝38aよりも浅い。このタイヤ18では、この副溝38bの深さは6.0mm未満である。
【0026】
図示されているように、このタイヤ18の赤道上には主溝38aはない。本明細書では、軸方向に並列した複数の主溝38aのうち、赤道に一番近い主溝38asは基準主溝と称される。
【0027】
サイドウォール22は、トレッド20の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール22は、架橋ゴムからなる。サイドウォール22は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール22は、カーカス26の外傷を防止する。
【0028】
ビード24は、サイドウォール22よりも半径方向略内側に位置している。ビード24は、コア42と、このコア42から半径方向外向きに延びるエイペックス44とを備えている。コア42は、リング状である。コア42は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア42にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス44は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス44は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0029】
カーカス26は、カーカスプライ46からなる。カーカスプライ46は、両側のビード24の間に架け渡されており、トレッド20及びサイドウォール22の内側に沿っている。カーカスプライ46は、コア42の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。
【0030】
図示されていないが、カーカスプライ46は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス26はラジアル構造を有する。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。バイアス構造のカーカス26が採用されてもよい。
【0031】
ベルト28は、バンド30の半径方向内側に位置している。ベルト28は、カーカス26の半径方向外側に位置している。ベルト28は、カーカス26と積層されている。ベルト28は、カーカス26を補強する。ベルト28は、内側層48a及び外側層48bからなる。図示されていないが、内側層48a及び外側層48bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、10°以上35°以下である。内側層48aのコードの傾斜方向は、外側層48bのコードの傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。
【0032】
バンド30は、トレッド20の半径方向内側に位置している。バンド30は、ベルト28を覆っている。このタイヤ18では、バンド30は赤道面からベルト28の端50に向かって延在している。このバンド30は、ベルト28の第一端50aからその第二端50bに向かって軸方向に延在している。このバンド30は、フルバンドである。図示されていないが、このバンド30は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンド30は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコードによりベルト28が拘束されるので、ベルト28のリフティングが抑制される。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0033】
このタイヤ18では、バンド30は図2に示されたリボン52を用いて形成される。このリボン52は、複数のコード54とトッピングゴム56とからなる。これらコード54のそれぞれは、このリボン52の長さ方向に延在している。図示されているように、このタイヤ18では、リボン52は11本のコード54を含んでいる。このリボン52に含まれるコード54の本数及びこのリボン52の幅は、加工性等が考慮され適宜決められる。
【0034】
このタイヤ18は、次のようにして製造される。複数のコード54がトッピングゴム56とともに押し出され、リボン52が得られる。この製造方法では、リボン52は2本準備される。これらリボン52は、他の部材とともにフォーマー(図示されず)に供給される。
【0035】
フォーマーは、円筒状のドラム、第一ヘッド及び第二ヘッドを備えている。ドラムは、回転可能である。第一ヘッドは、準備された2本のリボン52のうちの一方(以下、第一リボン52a)を送り出すとともに軸方向に移動可能である。第二ヘッドは、他方のリボン52(以下、第二リボン52b)を送り出すとともに軸方向に移動可能である。このフォーマーでは、第一ヘッド及び第二ヘッドはそれぞれ独立して可動しうる。
【0036】
この製造方法では、ドラムを回転させることにより、カーカスプライ46がこのドラムに巻回される。これにより、筒状のカーカスプライ46が得られる。筒状のカーカスプライ46に第一シートが巻回され、ベルト28の一部をなす内側層48aが形成される。この内側層48aに第二シートが巻回され、ベルト28の他の一部をなす外側層48bが形成される。これにより、ベルト28が得られる。このベルト28の上に第一リボン52a及び第二リボン52bが巻回され、バンド30が形成される。
【0037】
図3には、図1に示されたタイヤ18の断面の一部とともにそのバンド30の形成開始の状態が示されている。この図3において、実線L1は基準主溝38asのベルト28第一端50a側の縁58aを通り赤道面に平行な第一面を表している。実線L2は、この基準主溝38asのベルト28第二端50b側の縁58bを通り赤道面に平行な第二面を表している。この図3では、第一面L1から第二面L2までの領域が両矢印RAで示されている。このベルト28における領域RAは、タイヤ18において基準主溝38asの直下となる部分である。この領域RAの幅は、基準主溝38asの幅と一致している。実線LSは、領域RAの幅方向ににおける中心を表している。この中心LSの位置は、基準主溝38asの幅方向における中心の位置と一致している。
【0038】
この製造方法では、第一ヘッド60aから第一リボン52aが送り出される。第二ヘッド60bから、第二リボン52bが送り出される。第一リボン52aの先端62a及び第二リボン52bの先端62bが、領域RAに積層される。
【0039】
この製造方法では、第一リボン52a及び第二リボン52bの積層に際しては、領域RAの中心LSがベルト28にマーキングされる。言い換えれば、基準主溝38asの中心がベルト28にマーキングされる。この製造方法では、この中心LSに第一リボン52aの先端62aにおけるベルト28の第二端50b側の縁64a(以下、第一縁)が合わせられる。この製造方法では、第一リボン52aは、その第一縁64aが第一面L1よりも軸方向内側に位置するようにベルト28に積層される。
【0040】
この製造方法では、第二リボン52bは第一リボン52aの隣に積層される。このとき、第二リボン52bの先端62bにおけるベルト28の第一端50a側の縁64b(以下、第二縁)が中心LSに合わせられる。この製造方法では、第二リボン52bは、その第二縁64bが第二面L2よりも軸方向外側に位置するようにベルト28に積層される。この製造方法では、第一リボン52aの先端62a及び第二リボン52bの先端62bをベルト28に積層することにより、バンド30の形成が開始される。
【0041】
この製造方法では、ドラムの回転が開始されると、第一ヘッド60aが第一リボン52aを送り出しながらベルト28の第一端50aに向かって軸方向に移動させられる。ドラムを回転させるとともに第一ヘッド60aを軸方向に移動させるので、第一リボン52aが螺旋状に巻回される。
【0042】
この製造方法では、このドラムの回転開始により、第二ヘッド60bが第二ヘッド60bが第二リボン52bを送り出しながらベルト28の第二端50bに向かって軸方向に移動させられる。ドラムを回転させるとともに第二ヘッド60bを軸方向に移動させるので、第二リボン52bが螺旋状に巻回される。
【0043】
この製造方法では、第一リボン52aがベルト28の第一端50aに到達すると、第一リボン52aの巻回しは終了する。第二リボン52bがベルト28の第二端50bに到達すると、この第二リボン52bの巻回しは終了する。この製造方法では、このようにして、ベルト28の第一端50aから第二端50bまでを覆うバンド30が得られる。トレッド20等の部材がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤとも称される)が得られる。
【0044】
この製造方法では、ローカバーはモールド(図示されず)に投入される。これにより、ローカバーの外面がモールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ18が得られる。
【0045】
図4には、図1に示されたタイヤ18の断面の一部とともにそのバンド30の形成状況が示されている。図示されているように、このバンド30には、第一リボン52aからなる部分と第二リボン52bからなる部分との間に、この第一リボン52a及び第二リボン52bのない部分(以下、隙間66)が形成されている。
【0046】
この製造方法では、第一リボン52a及び第二リボン52bの巻き始めは、ベルト28における領域RAの部分において開始される。前述したように、この領域RAはタイヤ18において基準主溝38asの直下となる部分である。このため、隙間66は基準主溝38asの直下に存在している。この製造方法によれば、主溝38aのないトレッド20の赤道の部分にこの隙間66は形成されない。このタイヤ18では、従来のタイヤ2のように、赤道の直下にこの隙間66に起因した凹凸が存在していない。このタイヤ18では、第一リボン52a及び第二リボン52bの巻き始めの部分に形成される隙間66による、ユニフォミティへの影響が抑えられている。この製造方法は、赤道上に主溝38aを有さないタイヤ18のユニフォミティの向上に寄与しうる。
【0047】
このタイヤ18では、隙間66の直上に主溝38aが存在している。言い換えれば、路面とこの隙間66との間に主溝38aが存在している。このため、この隙間66に起因した凹凸がユニフォミティに反映されにくい。このタイヤ18では、この隙間66による、ユニフォミティへの影響が抑えられている。この製造方法は、赤道上に主溝38aを有さないタイヤ18のユニフォミティの向上に寄与しうる。
【0048】
この製造方法では、第一リボン52a及び第二リボン52bの積層工程において、第一リボン52aはその第一縁64aが軸方向において第一面L1よりも内側に位置するように積層され、第二リボン52bはその第二縁64bは軸方向において第二面L2よりも外側に位置するように積層されるのが好ましい。これにより、第一リボン52aからなる部分と第二リボン52bからなる部分との間に形成される隙間66の全体が基準主溝38asの直下に配置される。このタイヤ18では、この隙間66による、ユニフォミティへの影響が効果的に抑えられている。この製造方法は、赤道上に主溝38aを有さないタイヤ18のユニフォミティの向上に寄与しうる。
【0049】
この製造方法では、第一リボン52a及び第二リボン52bの積層工程において、図3に示されたように第一縁64aが中心LSに合わせられて第一リボン52aがベルト28に積層され、第二縁64bが中心LSに合わせられて第二リボン52bがベルト28に積層されるのがより好ましい。これにより、第一リボン52aからなる部分と第二リボン52bからなる部分との間に形成される隙間66の大きさが最小限に抑えられる。この製造方法によれば、この隙間66によるユニフォミティへの影響が最小限に抑えられたタイヤ18が得られうる。この製造方法は、赤道上に主溝38aを有さないタイヤ18のユニフォミティ向上に寄与しうる。
【0050】
この製造方法では、第一リボン52a及び第二リボン52bの巻回しは赤道面からベルト28の第一端50a側に軸方向にずれた位置から開始される。このため、第一ヘッド60aによる第一リボン52aの巻回し回数は第二ヘッド60bによる第二リボン52bの巻回し回数よりも少ない。前述したように、この製造方法では、トレッド20に設けられた複数の主溝38aのうち、赤道に一番近い主溝38asが基準主溝とされ、この基準主溝38asの直下となる部分において、第一リボン52a及び第二リボン52bの巻回しが開始されている。このため、この製造方法では、第一ヘッド60aによる第一リボン52aの巻回し回数と第二ヘッド60bによる第二リボン52bの巻回し回数との乖離が最小限に抑えられている。この製造方法では、第一ヘッド60aによる第一リボン52aの巻回し回数と第二ヘッド60bによる第二リボン52bの巻回し回数との乖離による生産性の低下が効果的に抑えられている。この製造方法では、生産性を低下させることなく、赤道上に主溝38aを有さないタイヤ18のユニフォミティが効果的に向上される。
【0051】
本発明では、タイヤ18の各部材の寸法及び角度は、タイヤ18が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ18に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ18には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ18が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ18が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ18の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0053】
[実施例1]
図1に示された構造を備えた空気入りタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、「185/60R15 84H」である。この製作に際しては、円筒状のドラムと、第一ヘッドと、第二ヘッドとを備えたフォーマーにおいて、ドラムにシートが巻回され、ベルトが形成された。このベルトの、基準主溝asの直下となる部分に、図3で示されたように、第一ヘッドから送り出された第一リボンの先端及び上記第二ヘッドから送り出された第二リボンの先端が積層された。ドラムを回転させるとともにベルトの第一端に向かって第一ヘッドを軸方向に移動させることにより、第一リボンが螺旋状に巻回された。このドラムを回転させるとともにこのベルトの第二端に向かって第二ヘッドを軸方向に移動させることにより、第二リボンが螺旋状に巻回された。これにより、バンドが形成された。この実施例1では、第一リボンからなる部分と第二リボンからなる部分との間に形成される隙間は基準主溝の直下に存在している。このことが、表中、「隙間の位置」の欄に記載されている。この実施例1では、第一リボンの巻回し回数は6回とされた。第二リボンの巻回し回数は、8回とされた。主溝の幅Wは、6.4mmとされた。主溝の深さは、7.8mmとされた。
【0054】
[比較例1]
タイヤの赤道の直下となる部分に第一リボン及び第二リボンの先端を積層してこれらリボンの巻回しを開始し、そして、第一リボン及び第二リボンそれぞれの巻回し回数を7回とした他は実施例1と同様にして、タイヤを製作した。この比較例1では、バンドの隙間は赤道の直下に存在している。この比較例1は、従来の製造方法である。
【0055】
[比較例2]
基準主溝のさらに軸方向外側にある主溝(以下、第二主溝)の直下となる部分に第一リボン及び第二リボンの先端を積層してこれらリボンの巻回しを開始し、第一リボンの巻回し回数を4回とし、そして、第二リボンの巻回し回数を10回とした他は実施例1と同様にして、タイヤを製作した。この比較例2では、バンドの隙間は第二主溝の直下に存在している。
【0056】
[ユニフォミティ]
「JASO C607:2000」に規定されたユニフォーミティ試験方法に準拠して、下記に示す条件にて、ラジアル・フォース・バリエーション(RFVOA、RFV1H)及びラジアル・ラン・アウト(RRO11H)を測定した。20本のタイヤを測定した結果の平均値が、下記の表1に示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
リム幅:5.5インチ
内圧:200kPa
荷重:3.67kN
速度:60rpm
【0057】
[生産性]
タイヤの生産に要する時間を計測した。その結果が、下記の表1に、比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、評価が高い。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明された方法は、種々のタイヤの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0061】
2、18・・・タイヤ
4、30・・・バンド
8、28・・・ベルト
10、20・・・トレッド
12a、12b・・・リボン
14a、14b、38、38a、38b、38as・・・溝
16、66・・・隙間
36・・・トレッド面
52、52a、52b・・・リボン
54・・・コード
56・・・トッピングゴム
58a、58b、64a、64b・・・縁
60a、60b・・・ヘッド
62a、62b・・・先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に延在する複数の主溝を有するトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するバンドと、このバンドのさらに半径方向内側に位置するベルトとを備えており、これら主溝が赤道上にはないタイヤを製造する方法であって、
回転可能な円筒状のドラムと、第一リボンを送り出すとともに軸方向に移動可能な第一ヘッドと、第二リボンを送り出すとともに軸方向に移動可能な第二ヘッドとを備えたフォーマーにおいて、
上記ドラムにシートが巻回され、ベルトが得られる工程と、
上記複数の主溝のうち、上記赤道に一番近い主溝が基準主溝とされ、上記ベルトの、この基準主溝の直下となる部分に、上記第一ヘッドから送り出された第一リボンの先端及び上記第二ヘッドから送り出された第二リボンの先端が積層される工程と、
上記ドラムを回転させるとともに上記ベルトの第一端に向かって上記第一ヘッドを軸方向に移動させることにより上記第一リボンが螺旋状に巻回され、このドラムを回転させるとともにこのベルトの第二端に向かって上記第二ヘッドを軸方向に移動させることにより上記第二リボンが螺旋状に巻回される工程とを含んでおり、
この第一リボン及び第二リボンのそれぞれが、その長さ方向に延在するコードを含んでいる空気入りタイヤの製造方法
【請求項2】
上記第一リボン及び第二リボンの積層工程において、
この第一リボンが、その先端における、この第一リボンの上記ベルト第二端側の縁が上記基準主溝のこのベルト第一端側の縁よりも軸方向内側に位置するようにこのベルトに積層され、
この第二リボンが、その先端における、この第二リボンの上記ベルト第一端側の縁がこの基準主溝のこのベルト第二端側の縁よりも軸方向外側に位置するようにこのベルトに積層される請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
上記複数の主溝のそれぞれが、5.0mm以上15.0mm以下の幅と6.0mm以上12.0mm以下の深さとを有している請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
周方向に延在する複数の主溝を有するトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するバンドと、このバンドのさらに半径方向内側に位置するベルトとを備えており、
これら主溝が、赤道上にはなく、
上記バンドが、第一リボン及び第二リボンを用いて形成されており、
上記複数の主溝のうち、上記赤道に一番近い主溝が基準主溝とされ、
この基準主溝の直下において、上記第一リボンの先端及び上記第二リボンの先端が上記ベルトに積層されており、
この第一リボンが、このベルトの第一端に向かってこのベルト上を螺旋状に巻回されており、
この第二リボンが、このベルトの第二端に向かってこのベルト上を螺旋状に巻回されており、
この第一リボン及び第二リボンのそれぞれが、その長さ方向に延在するコードを含んでいる空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記バンドにおいて、
上記第一リボンの先端における、この第一リボンの上記ベルト第二端側の縁が、上記基準主溝のこのベルト第一端側の縁よりも軸方向内側に位置しており、
上記第二リボンの先端における、この第二リボンの上記ベルト第一端側の縁が、この基準主溝のこのベルト第二端側の縁よりも軸方向外側に位置している請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記複数の主溝のそれぞれが、5.0mm以上15.0mm以下の幅と6.0mm以上12.0mm以下の深さとを有している請求項4又は5に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−28070(P2013−28070A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165562(P2011−165562)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】