説明

空気入りラジアルタイヤ

【課題】走行中繰り返し負荷を受けやすいベルト下パッドにおいて、低発熱性及び耐接着破壊性を維持しつつ、耐リバージョン性及び耐熱老化性を向上する。
【解決手段】ショルダー部4のベルト1端部とカーカスプライ2との間でタイヤ周方向に延在するベルト下パッド5が配された空気入りラジアルタイヤT1において、ベルト下パッド5に、ジエン系ゴム100重量部に対して、カーボンブラック25〜45重量部と、硫黄2〜5重量部を含有するとともに、レゾルシン又はその誘導体と、ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体とを含有し、更に1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを硫黄の0.1〜1.0倍重量部含有するゴム組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、特にタイヤショルダー部に設けられるベルト下パッドを改良した空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大型ラジアルタイヤのショルダー部には、ベルト端部とカーカスプライとの間に、タイヤ周方向に延在するベルト下パッドと称されるゴム部材が配されており、これらの部材が複雑に組み合わされて構成されている。上記ベルト下パッドには、ベルト端部とカーカスプライとの間のせん断応力を緩和させる役割があり、走行中繰り返し負荷を受けやすいことや、ベルトやカーカスプライの隣接部材であるため、低発熱性や耐接着破壊性(即ち、ベルトやカーカスプライとの間での接着破壊に耐える特性)が求められている。
【0003】
そのため、レゾルシン又はレゾルシン誘導体とそのメチレン供与体であるヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を配合して、カーカスプライとの界面破壊を抑制したり、更にスチレン化ジフェニルアミンを配合して、熱酸化劣化を抑制することがなされている(下記特許文献1,2参照)。
【0004】
一方、天然ゴム等を硫黄で加硫すると、リバージョン(加硫戻り)が起こることが知られており、タイヤ部材の中でも特にゴム成分として天然ゴムを多く含むものは、加硫時の熱安定性が良好でないと、タイヤになった後のゴム劣化が大きく、耐久性を損なうという問題がある。
【0005】
そのため、ゴム成分として一般に天然ゴムを主成分とするベルト下パッドにおいては、上記の低発熱性、耐接着破壊性を維持しつつ、耐リバージョン性、耐熱老化性を向上することが求められる。しかしながら、耐接着破壊性を改善するために、レゾルシン又はその誘導体を配合すると、耐熱老化性が低下してしまうことから、このような要求に十分に応えられていなかったのが実情である。
【0006】
なお、リバージョンを防止するために、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを配合することは、従来、タイヤトレッド用ゴム組成物について知られている(下記特許文献3参照)。しかしながら、トレッドはタイヤ加硫成形時に熱まわりのよい表層部であり、上記化合物はオーバー加硫を防止するために用いられている。そのため、タイヤ内部に配されるベルト下パッドとは事情が異なる上に、トレッド用ゴム組成物は一般に硫黄の配合量が少なく、接着性樹脂も配合しないことから、ベルト下パッドのゴム組成物とは構成上も明確に異なるものである。
【0007】
また、下記特許文献4には、タイヤコード被覆用ゴム組成物に上記化合物を配合することが開示されているが、コード被覆用ゴム組成物は、ベルト下パッドに比べてタイヤ使用時の変形量が小さいことから低発熱性が考慮されておらず、そのため、低発熱性よりも補強性を確保するために多量のカーボンブラックを配合するなど、ベルト下パッドとは構成上も要求性能も明確に異なるものである。
【0008】
このように、従来、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを用いることは知られていたものの、これをベルト下パッドにおいて所定量配合することにより、低発熱性及び耐接着破壊性を維持しつつ、耐リバージョン性及び耐熱老化性を飛躍的に向上できることは知られていなかった。
【特許文献1】特開平10−204214号公報
【特許文献2】特開2006−213784号公報
【特許文献3】特開2005−263892号公報
【特許文献4】特開2003−82586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、ベルト端部とカーカスプライとの間に配され、走行中繰り返し負荷を受けやすいベルト下パッドにおいて、低発熱性及び耐接着破壊性を維持しつつ、耐リバージョン性及び耐熱老化性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、ベルト下パッドのゴム組成物において、フェノール類化合物又はフェノール系樹脂とそのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体とともに、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを所定量配合することが有効であることを見い出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、タイヤショルダー部のベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するベルト下パッドが配された空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト下パッドに、ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラック25〜45重量部と、硫黄2〜5重量部を含有するとともに、フェノール類化合物又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂と、そのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を含有し、更に、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを前記硫黄の0.1〜1.0倍重量部含有する、ゴム組成物を用いたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベルト下パッド用のゴム組成物において、上記各成分とともに1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを所定量配合したことにより、ベルト下パッドとして要求される低発熱性及び耐接着破壊性を維持しつつ、耐リバージョン性と耐熱老化性を飛躍的に向上することができ、また、加硫速度を速くすることができる。そのため、空気入りラジアルタイヤの加硫生産性を向上しながら、ショルダー部における耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の空気入りラジアルタイヤの1実施形態を示すタイヤT1の要部拡大断面図である。符号1はスチールコードからなるベルトであり、図では4枚のベルト層が積層されている。符号2はスチールコードがラジアルに配列された1枚のカーカスプライ、符号3はトレッドゴム、符号4はショルダー部であり、符号5はベルト下パッドを示している。
【0014】
ベルト下パッド5は、ベルト1の端部とカーカスプライ2の間及びカーカスプライ2とショルダー部4におけるトレッドゴム3の間に配置される断面略三角形状をなす帯状のゴム部材からなり、タイヤ断面両側のタイヤ周方向の全周に沿って配されている。
【0015】
このベルト下パッド5には、(A)ジエン系ゴムに、(B)カーボンブラックと、(C)硫黄と、(D)フェノール類化合物又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂と、(E)そのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体と、(F)1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンとが配合されたゴム組成物が用いられている。
【0016】
該ゴム組成物において、上記(A)のゴム成分として配合されるジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム等が挙げられる。この中でも、破壊特性に優れる天然ゴムが好ましく用いられ、従って、ゴム成分は、天然ゴムを主成分とするジエン系ゴムであること、すなわち、天然ゴム単独、又は天然ゴム50重量%以上と他のジエン系ゴムとのブレンドであることが好ましい。
【0017】
(B)成分のカーボンブラックとしては、特に限定されず、ベルト下パッド5に一般に用いられているグレード、例えば、HAF、FEF、GPFのものを用いることができる。カーボンブラックは、ジエン系ゴム100重量部に対して25〜45重量部にて配合されることが好ましい。このようにカーボンブラックの配合量を少なくすることにより、タイヤ使用時に変形を受けやすいベルト下パッド5の発熱を抑えることができ、低発熱性を付与することができる。なお、カーボンブラックの配合量が25重量部より少ないと、補強性に劣る。
【0018】
(C)成分の硫黄は、ジエン系ゴム100重量部に対して2〜5重量部にて配合され、このようにトレッドゴムよりも多量に配合することにより、ベルト下パッド5としてのベルト1やカーカスプライ2に対する接着性を高めることができる。すなわち、硫黄の配合量が2重量部未満では、接着性に劣る。逆に、硫黄の配合量が5重量部を超えると、加硫速度が遅くなり、また、柔軟性が損なわれ、耐熱性が悪化する。
【0019】
(D)成分は、(E)成分のメチレン供与体に対応するメチレン受容体であり、メチレン供与体のメチレン基と硬化反応することで、ベルトやカーカスプライに対する接着性を向上することができる。
【0020】
上記フェノール類化合物には、フェノール、レゾルシンまたはこれらのアルキル誘導体が含まれる。アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールといったメチル基誘導体の他、ノニルフェノール、オクチルフェノールといった比較的長鎖のアルキル基による誘導体が含まれる。フェノール類化合物は、アセチル基等のアシル基を置換基に含むものであってもよい。
【0021】
また、フェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂には、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂(即ち、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)、クレゾール樹脂(即ち、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂)等の他、複数のフェノール類化合物からなるホルムアルデヒド樹脂が含まれる。これらは、未硬化の樹脂であって、液状又は熱流動性を有するものが用いられる。
【0022】
これらの中でも、ゴム成分や他の成分との相溶性、硬化後の樹脂の緻密さ及び信頼性の見地から、(D)成分としては、レゾルシン又はレゾルシン誘導体が好ましく、特には、レゾルシン−アルキルフェノール共縮合ホルマリン樹脂が好ましい。
【0023】
(D)成分のフェノール類化合物又はフェノール系樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対して0.5〜3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜2重量部である。(D)成分の配合量が少なすぎると、接着性に劣り、逆に多すぎると、低発熱性が損なわれ、耐久性に劣る。
【0024】
(E)成分は、(D)成分を反応、硬化させるメチレン供与体であり、ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体が用いられる。メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、メチロールメラミンの部分エーテル化物、メラミンとホルムアルデヒドとメタノールの縮合物等が用いられ、その中でもヘキサメトキシメチルメラミンが特に好ましい。
【0025】
(E)成分のヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体の配合量は、上記(D)成分に対して充分な反応、硬化を行わせるだけの量であり、具体的には、(D)成分の配合量の0.5〜2倍重量部であることが好ましい。該配合量が0.5倍重量部よりも少ないと、充分な反応、硬化を行わせることができず、逆に、2倍重量部を超えると、ゴム組成物の物性低下を招くおそれがある。
【0026】
(F)成分の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンは、耐リバージョン架橋剤であり、(C)成分の硫黄の配合量に対して0.1〜1.0倍重量部配合される。この(F)成分の化合物を配合することにより、耐リバージョン性を向上することができるとともに、低発熱性及び耐接着破壊性を損なうことなく、上記(D)成分を配合したことによる耐熱老化性の低下を打ち消して、耐熱老化性を向上することができる。(F)成分の配合量が0.1倍量よりも少ないと、このような効果を十分に発揮することできず、逆に、1.0倍量よりも多いと、スコーチ性に劣るとともに、耐疲労性が低下する。(F)成分の配合量は、より好ましくは硫黄の配合量の0.1〜0.5倍重量部、更に好ましくは0.2〜0.5倍重量部である。
【0027】
ベルト下パッド5に用いられる上記ゴム組成物には、上記した各成分の他、この種のゴム組成物に一般的に配合される各種添加剤を任意に配合することができ、その配合量も一般的な量とすることができる。任意に配合する添加剤としては、例えば、シリカ等の他の充填剤、軟化剤、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、加硫促進剤等が挙げられ、本発明の目的に反しない範囲で適宜配合することができる。
【0028】
上記ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダなどの混合機を用いて混練し作製することができ、トラックやバス、ライトトラックなどの大型空気入りラジアルタイヤのベルト下パッド5として好適に使用され、常法に従い成形加硫することにより空気入りラジアルタイヤT1を製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
下記表1,2に記載の配合に従って、実施例1〜6及び比較例1〜5のゴム組成物を密閉式バンバリーミキサーを用いて混練し作製した。表中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0031】
・天然ゴム:RSS#3、
・カーボンブラック:HAF、東海カーボン社製「シースト300」、
・p−フェニレンジアミン:フレキシス社製「サントフレックス6PPD」、
・スチレン化ジフェニルアミン:精工化学工業社製「LAS−P」、
・レゾルシン−アルキルフェノール−ホルマリン樹脂:住友化学工業社製「スミカノール620」、
・ヘキサメトキシメチルメラミン:三井サイテック社製「サイレッツ963L(HMMM)」、
・不溶性硫黄:フレキシス社製「クリステックスHS OT−20」(80重量%が硫黄分)、
・加硫促進剤NS:大内新興化学工業社製「ノクセラーNS−P」、
・チオカルバモイル化合物:1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、ランクセス社製「Vulcuren VP KA9188」。
【0032】
各ゴム組成物には、共通配合として、ジエン系ゴム100重量部に対し、オイル(ジャパンエナジー社製「JOMOプロセスNC−140」)5重量部、亜鉛華(三井金属鉱業社製「亜鉛華3号」)5重量部、ステアリン酸(花王社製)2重量部を添加した。
【0033】
得られた各ゴム組成物について、スコーチ性、加硫速度、耐リバージョン性、耐熱老化性、発熱性を評価した。また、各ゴム組成物をベルト下パッドに適用した図1に示す空気入りラジアルタイヤの試作タイヤ(タイヤサイズ:11R22.5)を作製し、耐接着破壊性、ドラム耐久性を評価した。各評価方法は以下の通りであり、結果を表1,2に示す。
【0034】
・スコーチ性:JIS K6300に準拠して、L形ロータを用いて、125℃で測定したときのスコーチタイムt35(分)を測定した。
【0035】
・加硫速度:JIS K6300に準拠して、L形ロータを用いて、150℃で測定したときのスコーチタイムt50(分)を測定した。
【0036】
・耐リバージョン性:JIS K6300に準拠して、L形ロータを用いて、180℃で測定し、トルクが最大値(MH)から、最大値の10%低下するまでの時間Δt10(分)を測定した。数値が大きいほど、耐リバージョン性に優れることを意味する。
【0037】
・耐熱老化性:各ゴム組成物を150℃×30分で加硫させて試験サンプルを作製し、該試験片につき、未老化のものと、90℃のギヤーオーブン中で96時間老化させたものを用いて、JIS K6251に準拠した引張試験を行って(3号形ダンベル使用)、100%モジュラスを測定した。老化後の測定値を未老化の測定値に対する百分率で求め、100%モジュラス変化率とした。数値が小さいほど耐熱老化性に優れることを意味する。
【0038】
・低発熱性:各ゴム組成物を150℃×30分で加硫させて試験サンプルを作製し、各サンプルを、東洋精機社製スペクトロメーターで、温度60℃、周波数50Hz、初期歪み10%、動的歪み2%で、tanδを測定した。比較例2の値を100とした指数で表示し、数値が小さいほど低発熱性に優れることを示す。
【0039】
・耐接着破壊性:試作タイヤを高速長距離バスの後輪に取り付け、20万km走行後(高速道路使用率=90%)、タイヤを分解してカーカスプライを取り出し、ベルト下パッドに隣接した部位にてプライコードにゴムが付着している割合を目視にて判定し、プライコード−ゴム付着率として表示した。数値が大きいほど、耐接着破壊性(耐プライセパレーション性)に優れることを示す。
【0040】
・ドラム耐久性:直径1.7mの鋼製ドラムを備えた室内ドラム試験機を使用し、各試作タイヤについて、空気圧をJIS D4230に規定の100%、試験速度を40km/hとし、タイヤ負荷荷重をJIS規定の140%から始め、150時間毎に荷重を10%ずつ上げてタイヤに故障が発生するまで走行試験を行った。比較例2のタイヤの故障発生までの走行距離を基準とし、比較例2よりも故障発生までの走行距離が10%以上短く劣るものを「×」、10%以上走行距離が長く優れるものを「○」、10%以内で同等のものを「△」として評価した。
【表1】

【表2】

【0041】
上記表に示すように、比較例1では、接着性樹脂であるレゾルシン誘導体及びメラミン誘導体を配合していないため、耐接着破壊性に劣っており、ドラム耐久性にも劣っていた。比較例2では、比較例1に対し、接着性樹脂を配合したことで、耐接着破壊性は改善されたものの、耐熱老化性が低下していた。比較例3では、硫黄の配合量を減らすことで、比較例2に対し、上記耐熱老化性の低下は改善され、また加硫速度も向上したが、スコーチ性と低発熱性が悪化し、またドラム耐久性の改善効果も認められなかった。
【0042】
これに対し、(F)成分の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを、硫黄の一部に置換して配合した実施例1や、硫黄量はそのままで添加した実施例2によれば、耐接着破壊性に優れる比較例2に対して、同等の耐接着破壊性を確保し、かつ低発熱性も維持しつつ、耐リバージョン性と耐熱老化性が飛躍的に向上していた。とりわけ、レゾルシン誘導体を配合したことよる比較例2の耐熱老化性の悪化を完全に打ち消して、更に比較例1よりも耐熱老化性を向上させることができた。また、スコーチ性の悪化もなく、加硫速度も速くなっており、ドラム耐久性も向上していた。実施例1に対して硫黄量を増やし上記(F)成分を減らした実施例3でも同様であった。
【0043】
一方、実施例1に対して硫黄量を減らし上記(F)成分を増やした実施例4では、実施例1よりも低発熱性は向上していたが、耐疲労性がやや低下したためか、ドラム耐久性に若干劣り、比較例2と同等程度であった。その他の性能は、実施例1と同様に優れるものであった。
【0044】
実施例1に対して接着性樹脂の配合量を減らした実施例5では、他の性能を実施例1とほぼ同等に確保しながら、低発熱性を向上することができた。また、老化防止剤を変更した実施例6では、耐接着破壊性を更に向上しつつ、低発熱性にも改善効果が認められた。
【0045】
上記(F)成分の配合量が少なすぎる比較例4では、耐リバージョン性と耐熱老化性の改善効果は認められなかった。また、(F)成分の配合量が多すぎる比較例5では、耐リバージョン性と耐熱老化性には優れていたものの、スコーチ性に劣り、また、耐疲労性が低下したためか、部材内破壊を生じ、ドラム耐久性が比較例2と同等程度であった。
【0046】
以上のように、天然ゴムを主成分とするジエン系ゴムに、所定量のカーボンブラック及び硫黄を配合するとともに、上記所定の接着性樹脂を配合した上で、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを所定量配合することにより、低発熱性と耐接着破壊性を維持しつつ、加硫速度を速くし、かつ、耐リバージョン性及び耐熱老化性を飛躍的に向上することができ、ベルト下パッドの耐久性向上によるタイヤの長寿命化と、加硫生産性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、トラックやバスなどの大型車両を始めとしてライトトラックなどに使用され、特に長距離、連続走行を伴う重荷重条件で使用される車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態を示すタイヤの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
T1……空気入りラジアルタイヤ
1……ベルト
2……カーカスプライ
3……トレッド
4……ショルダー部
5……ベルト下パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤショルダー部のベルト端部とカーカスプライとの間でタイヤ周方向に延在するベルト下パッドが配された空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記ベルト下パッドに、
ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラック25〜45重量部と、硫黄2〜5重量部を含有するとともに、フェノール類化合物又はフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂と、そのメチレン供与体としてのヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を含有し、更に、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンを前記硫黄の0.1〜1.0倍重量部含有する、ゴム組成物を用いた、
空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、前記フェノール類化合物又はフェノール系樹脂を、ジエン系ゴム100重量部に対して0.5〜3重量部含有するとともに、前記ヘキサメチレンテトラミン又はメラミン誘導体を、前記フェノール類化合物又はフェノール系樹脂の0.5〜2倍重量部含有する、請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−248769(P2009−248769A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99568(P2008−99568)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】