説明

空気入りラジアルタイヤ

【課題】嵌合性を損なうことなく軽量化を達成しうる空気入りラジアルタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、一対のビード8を備える。両ビード8のそれぞれは、コア24を備えている。このコア24は、ハイブリッドコード42にトッピングゴム44を被覆して得られたストランド38が周方向に複数回巻回されることにより形成されている。上記ハイブリッドコード42は、その材質がスチールであるワイヤー46と、このワイヤー46を被覆する編物層48とを備えている。この編物層48は、アラミド繊維からなるフィラメントの平編みにより構成されている。このワイヤー46を有するハイブリッドコード42は適度な剛性を有するので、このタイヤ2は嵌合性に優れる。アラミド繊維からなる編物層48は、ワイヤー46の使用量の削減に寄与しうる。このタイヤ2は、嵌合性を損なうことなく軽量化を達成しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、一対のビードを備えている。両ビードのそれぞれは、サイドウォールよりも半径方向略内側に位置している。このビードにより、タイヤはリムに固定される。
【0003】
ビードは、コアと、このコアから半径方向外向きに延びるエイペックスとを備えている。コアは、周方向に延在するコードを含む。このコードには通常、スチール製のコード(以下、スチールコード)が使用される。スチールコードは、タイヤの質量に影響する。タイヤの質量を軽減するために、上記コアの構成について様々な検討がなされている。
【0004】
コアに使用されるコードとして、上記スチールコード以外にアラミド繊維からなるコード(以下、アラミドコード)が選定される場合がある。アラミドコードは、スチールコードと同等の強度を有する。アラミドコードは、スチールコードに比べて軽い。アラミドコードの使用は、タイヤの軽量化に寄与しうる。
【0005】
耐破壊圧力性能を向上させつつ軽量化にも役立つ空気入りタイヤが、特開平7−156618号公報に開示されている。このタイヤでは、ビードコアは、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)を用いた第一のコードを含む内のリング体と、スチールからなる第二のコードを含む外のリング体とからなる。
【特許文献1】特開平7−156618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記アラミドコードは、上記スチールコードに比べて柔軟である。軽量化の観点から、スチールコードに代えてアラミドコードが使用されたコアは、柔軟性に富む。柔軟なコアを有するタイヤをリムに嵌め込むのは容易ではない。このようなタイヤは、嵌合性に劣る。タイヤの嵌合性を損なうことなく、軽量化を達成することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、嵌合性を損なうことなく軽量化を達成しうる空気入りラジアルタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、一対のビードを備えている。両ビードのそれぞれは、コアを備えている。このコアは、ハイブリッドコードにトッピングゴムを被覆して得られたストランドが周方向に複数回巻回されることにより形成されている。上記ハイブリッドコードは、その材質がスチールであるワイヤーと、このワイヤーを被覆する編物層とを備えている。この編物層は、アラミド繊維からなるフィラメントの平編みにより構成されている。
【0009】
本発明に係る他の空気入りラジアルタイヤは、一対のビードを備えている。両ビードのそれぞれは、コアを備えている。このコアは、ハイブリッドコードにトッピングゴムを被覆して得られたストランドが周方向に複数回巻回されることにより形成されている。上記ハイブリッドコードは、その材質がスチールであるワイヤーとアラミド繊維からなる2本のヤーンとを撚り合わせて形成されている。
【発明の効果】
【0010】
この空気入りラジアルタイヤでは、コアに含まれるハイブリッドコードがワイヤーを含んでいる。このワイヤーの材質は、スチールである。ハイブリッドコードは、適度な剛性を有する。コアの真円度が適切に保持されうるので、このタイヤは嵌合性に優れる。このハイブリッドコードは、ワイヤーを被覆する編物層又はワイヤーと共に撚り合わされるヤーンを含んでいる。この編物層又はヤーンは、アラミド繊維からなる。アラミド繊維は、高い強度を有する上に軽量である。この編物層又はヤーンは、ワイヤーの使用量を削減しうる。ハイブリッドコードは、ビードの強度を損なうことなくタイヤの軽量化に寄与しうる。このタイヤは、嵌合性を損なうことなく軽量化を達成しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2の一部が示された断面図である。この図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ2は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14、インナーライナー16及びチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0013】
トレッド4は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、トレッド面20を備えている。このトレッド面20は、路面と接地する。トレッド面20には、溝22が刻まれている。この溝22により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4に溝22が刻まれなくてもよい。
【0014】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール6は、カーカス10の外傷を防止する。
【0015】
ビード8は、サイドウォール6よりも半径方向略内側に位置している。ビード8は、コア24と、このコア24から半径方向外向きに延びるエイペックス26とを備えている。コア24は、リング状である。エイペックス26は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス26は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0016】
カーカス10は、第一カーカスプライ28及び第二カーカスプライ30からなる。第一カーカスプライ28及び第二カーカスプライ30は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。第一カーカスプライ28及び第二カーカスプライ30は、コア24の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。
【0017】
図示されていないが、第一カーカスプライ28及び第二カーカスプライ30は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。バイアス構造のカーカスが採用されてもよい。
【0018】
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層32及び外側層34からなる。図示されていないが、内側層32及び外側層34のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、10°以上35°以下である。内側層32のコードの傾斜方向は、外側層34のコードの傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。
【0019】
バンド14は、ベルト12を覆っている。図示されていないが、このバンド14は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンド14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコードによりベルト12が拘束されるので、ベルト12のリフティングが抑制される。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0020】
インナーライナー16は、カーカス10の内周面に接合されている。インナーライナー16は、架橋ゴムからなる。インナーライナー16には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する役割を果たす。
【0021】
チェーファー18は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー18がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。チェーファー18は、通常は布とこの布に含浸したゴムとからなる。ゴム単体からなるチェーファーが用いられてもよい。
【0022】
図2は、加硫工程前のコア24の一部が示された拡大断面斜視図である。この図2において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向である。矢印線Aが、周方向を表している。本明細書では、この加硫工程前のコア24は成形体36と称される。この成形体36は、周方向に延在する長尺のストランド38を備えている。
【0023】
上記成形体36は、半径方向に積み重ねられた4のレイヤー40からなる。これらレイヤー40のそれぞれは、半径方向内側から順に、第一のレイヤー40a、第二のレイヤー40b、第三のレイヤー40c及び第四のレイヤー40dと称される。図示されているように、第一のレイヤー40aでは4のストランド38の断面が軸方向に並んでいる。第二のレイヤー40b及び第三のレイヤー40cのそれぞれでは、5のストランド38の断面が軸方向に並んでいる。第四のレイヤー40dでは、4のストランド38の断面が軸方向に並んでいる。
【0024】
図3は、図2の成形体36を構成するストランド38の一部が示された分解斜視図である。ストランド38は、ハイブリッドコード42とトッピングゴム44とからなる。ハイブリッドコード42は、トッピングゴム44で被覆されている。ハイブリッドコード42は、ワイヤー46と、このワイヤー46を被覆する編物層48とを備えている。ワイヤー46の材質は、スチールである。編物層48は、アラミド繊維からなるフィラメントの平編みにより構成されている。このような編物層48は、編組とも称される。
【0025】
このタイヤ2は、次にようにして得られる。編組機において、編物層48で被覆されたワイヤー46からなるハイブリッドコード42が準備される。このハイブリッドコード42は、トッピングゴム44とともに押出機に供給される。この押出機において、ハイブリッドコード42にトッピングゴム44が被覆され、ストランド38が形成される。
【0026】
ストランド38は、コア形成用ドラム(図示されず)に供給される。このドラムにおいて、ストランド38がその外面に沿って4回巻回される。この巻回しにより、上記第一のレイヤー40aが形成される。この第一のレイヤー40aの半径方向外側において、このストランド38がさらに5回巻回される。この巻回しにより、この第一のレイヤー40aの半径方向外側に上記第二のレイヤー40bが形成される。この第二のレイヤー40bの半径方向外側において、このストランド38がさらに5回巻回される。この巻回しにより、この第二のレイヤー40bの半径方向外側に上記第三のレイヤー40cが形成される。この第三のレイヤー40cの半径方向外側において、このストランド38がさらに4回巻回される。この巻回しにより、この第三のレイヤー40cの半径方向外側に上記第四のレイヤー40dが形成される。このようにしてストランド38が軸方向及び半径方向に整列されつつ周方向に18回巻回されることにより、図2で示された成形体36が形成される。この成形体36の半径方向外側にエイペックス26が積層され、タイヤ2のビード8が構成される。このビード8が、タイヤ2を構成するカーカス10、トレッド4等の他のゴム部材と共にフォーマーに供給される。
【0027】
このタイヤ2では、上記成形体36はコア24の構成以外は従来の成形体と同等の構成を有しているので、この成形体36の形成には、従来からある既存の編組機、押出機、コア形成用ドラム等の設備が使用されうる。
【0028】
図示されていないが、上記ビード8はフォーマーに巻かれたカーカス10に組み合わされる。成形体36に含まれるハイブリッドコード42に、その材質がスチールであるワイヤー46が含まれているので、ビード8の真円度が十分に保持される。このため、ビード8はカーカスに容易に組み合わされる。この組み合わせの後、カーカス10がビード8で折り返される。ベルト12、サイドウォール6、バンド14、トレッド4等のゴム部材が組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤとも称される)が得られる。このローカバーは、開かれたモールドに投入される。ローカバーは、モールド内で加圧され、かつ加熱される。加圧及び加熱により、ゴム組成物が流動する。加熱により、ゴム組成物が架橋反応を起こし、上記成形体36からコア24が形成される。このようにして、図1で示されたタイヤ2が得られる。
【0029】
前述したように、上記ハイブリッドコード42に含まれるワイヤー46の材質はスチールである。このタイヤ2では、ハイブリッドコード42が適度な剛性を有するので、コア24の真円度が適切に保持されうる。このタイヤ2をリムに嵌め込むことは容易である。このタイヤ2は、嵌合性に優れる。
【0030】
前述したように、上記ハイブリッドコード42はアラミド繊維からなる編物層48を含んでいる。アラミド繊維は、高い強度を有する上に軽量である。この編物層48は、ワイヤー46の細径化に寄与しうる。換言すれば、この編物層48の使用により、ワイヤー46の使用量が低減されうる。このハイブリッドコード42は、ビード8の強度を適切に維持しつつタイヤ2の軽量化に寄与しうる。
【0031】
このタイヤ2では、上記編物層48は、多数のフィラメントが束50とされ、この束50の平編みにより構成されている。より詳細には、この編物層48は、緯糸としての多数の一の束50aと経糸としての多数の他の束50bとから構成されている。図示されているように、各一の束50aは一本の他の束50bの上下を交互に通っている。各他の束50bは、一本の一の束50aの上下を交互に通っている。このような編物層48は、伸縮性を有する。この伸縮性は、応力の散逸に寄与しうる。この編物層48を有するコア24は、タイヤ2の耐久性に寄与しうる。
【0032】
このタイヤ2では、上記束50は、多数のフィラメントが撚り合わされて形成されている。ハイブリッドコード42がビード8の強度を適切に維持しつつタイヤ2の軽量化に寄与しうるという観点から、この束50の撚り数は、30回/10cm以上が好ましく、50回/10cm以下が好ましい。本発明では、撚り数は、JIS L 1017に準じて計測される。
【0033】
このタイヤ2では、ハイブリッドコード42がビード8の強度を適切に維持しつつタイヤ2の軽量化に寄与しうるという観点から、上記束50に含まれるフィラメントの繊度は0.8dtex以上が好ましく、1.3dtex以下が好ましい。この束50に含まれるフィラメントの本数は、300本以上が好ましく、5000本以下が好ましい。
【0034】
このタイヤ2の嵌合性を損なうことなくその軽量化を達成しうるという観点から、上記ワイヤー46の外径は0.1mm以上が好ましく、0.5mm以下であるのが好ましい。
【0035】
本発明では、タイヤ2及び後述するタイヤ52の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2、52が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2、52に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2、52には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2、52が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2、52が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ2、52の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【0036】
図4は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ52のビードの一部が示された拡大断面斜視図である。この図4において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向である。矢印線Aが、周方向を表している。この図4には、加硫工程前にあるビードのコアとしての成形体54が示されている。この成形体54は、周方向に延在する長尺のストランド56を備えている。なお、このタイヤ52におけるコア以外の構成は、図1に示されたタイヤ2と同等である。
【0037】
上記成形体54は、半径方向に積み重ねられた4のレイヤー58からなる。これらレイヤー58のそれぞれは、半径方向内側から順に、第一のレイヤー58a、第二のレイヤー58b、第三のレイヤー58c及び第四のレイヤー58dと称される。図示されているように、第一のレイヤー58aでは4のストランド56の断面が軸方向に並んでいる。第二のレイヤー58b及び第三のレイヤー58cのそれぞれでは、5のストランド56の断面が軸方向に並んでいる。第四のレイヤー58dでは、4のストランド56の断面が軸方向に並んでいる。
【0038】
図5は、図4の成形体54を構成するストランド56の一部が示された分解斜視図である。ストランド56は、ハイブリッドコード60とトッピングゴム62とからなる。ハイブリッドコード60は、トッピングゴム62で被覆されている。ハイブリッドコード60は、ワイヤー64と、2本のヤーン66とを撚り合わせて形成されている。ワイヤー64の材質は、スチールである。ヤーン66は、アラミド繊維からなる。
【0039】
このタイヤ52は、次にようにして得られる。撚り線機を用いて、ワイヤー64と2本のヤーン66とが撚り合わされて、ハイブリッドコード60が準備される。このハイブリッドコード60は、トッピングゴム62とともに押出機に供給される。この押出機において、ハイブリッドコード60にトッピングゴム62が被覆され、ストランド56が形成される。
【0040】
ストランド56は、コア形成用ドラム(図示されず)に供給される。このドラムにおいて、ストランド56がその外面に沿って4回巻回される。この巻回しにより、上記第一のレイヤー58aが形成される。この第一のレイヤー58aの半径方向外側において、このストランド56がさらに5回巻回される。この巻回しにより、この第一のレイヤー58aの半径方向外側に上記第二のレイヤー58bが形成される。この第二のレイヤー58bの半径方向外側において、このストランド56がさらに5回巻回される。この巻回しにより、この第二のレイヤー58bの半径方向外側に上記第三のレイヤー58cが形成される。この第三のレイヤー58cの半径方向外側において、このストランド56がさらに4回巻回される。この巻回しにより、この第三のレイヤー58cの半径方向外側に上記第四のレイヤー58dが形成される。このようにしてストランド56が、軸方向及び半径方向に整列されつつ周方向に18回巻回されることにより、図4で示された成形体54が形成される。この成形体54の半径方向外側にエイペックスが積層され、タイヤ52のビードが構成される。このビードが、タイヤ52を構成するカーカス、トレッド等の他のゴム部材と共にフォーマーに供給される。
【0041】
図示されていないが、上記ビードは、フォーマーに巻かれたカーカスに組み合わされる。成形体54に含まれるハイブリッドコード60に、その材質がスチールであるワイヤー64が含まれているので、ビードの真円度が十分に保持される。このため、ビードはカーカスに容易に組み合わされる。この組み合わせの後、カーカスがビードで折り返される。ベルト、サイドウォール、バンド、トレッド等のゴム部材が組み合わされ、ローカバーが得られる。ローカバーは、開かれたモールドに投入される。ローカバーは、モールド内で加圧され、かつ加熱される。加圧及び加熱により、ゴム組成物が流動する。加熱により、ゴム組成物が架橋反応を起こし、上記成形体54からコアが形成される。このようにして、タイヤ52が得られる。
【0042】
前述したように、上記ハイブリッドコード60に含まれるワイヤー64の材質はスチールである。このタイヤ52では、ハイブリッドコード60が適度な剛性を有するので、コアの真円度が適切に保持されうる。このタイヤ52をリムに嵌め込むことは容易である。このタイヤ52は、嵌合性に優れる。
【0043】
前述したように、上記ハイブリッドコード60に含まれるヤーン66はアラミド繊維からなる。アラミド繊維は、高い強度を有する上に軽量である。ヤーン66は、ワイヤー64の細径化に寄与しうる。換言すれば、このヤーン66の使用により、ワイヤー64の使用量が低減されうる。このハイブリッドコード60は、ビードの強度を適切に維持しつつタイヤ52の軽量化に寄与しうる。
【0044】
タイヤ52の嵌合性を損なうことなくその軽量化を達成しうるという観点から、上記ハイブリッドコード60の撚り数は30回/10cm以上が好ましく、50回/10cm以下が好ましい。
【0045】
タイヤ52の嵌合性を損なうことなくその軽量化を達成しうるという観点から、上記ワイヤー64の外径は0.1mm以上が好ましく、0.5mm以下であるのが好ましい。上記ヤーン66の外径は0.1mm以上が好ましく、0.5mm以下が好ましい。
【0046】
このタイヤ52では、ヤーン66は複数本のアラミド繊維からなるフィラメントが撚り合わされて形成される。ハイブリッドコード60がビードの強度を適切に維持しつつタイヤ52の軽量化に寄与しうるという観点から、上記ヤーン66に含まれるフィラメントの本数は、300本以上が好ましく、5000本以下が好ましい。このフィラメントの繊度は、0.8dtex以上が好ましく、1.3dtex以下が好ましい。上記ヤーン66の撚り数は、30回/10cm以上が好ましく、50回/10cm以下が好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0048】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備えた実施例1の乗用車用空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、「215/45 R17」である。このタイヤのビードは、図2で示された成形体から形成されたコアを有する。この成形体の形成には、図3に示された構成を有するストランドが用いられた。このストランドの外径は、1.2mmとされた。ハイブリッドコードに含まれるワイヤーの外径は、0.3mmとされた。このワイヤーに被覆された編物層を構成するフィラメントの繊度は、1.0dtexとされた。
【0049】
[実施例2]
コアを図4に示された成形体から形成した他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。この成形体の形成には、図5に示された構成を有するストランドが用いられた。このストランドの外径は、1.2mmとされた。ハイブリッドコードに含まれるワイヤーの外径は、0.4mmとされた。このワイヤーに撚り合わされたヤーンの外径は、0.4mmとされた。
【0050】
[比較例1]
コアの形成に、1.2mmの外径を有するスチール製ワイヤーにトッピングゴムを被覆したストランドが使用された他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。このストランドの外径は、1.8mmとされた。
【0051】
[比較例2]
15000dtexの繊度を有するアラミド繊維からなるヤーンを2撚りして得られたコードを接着剤処理してコアを形成した他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。このコードの外径は、1.2mmとされた。
【0052】
[タイヤの質量の評価]
試作タイヤの質量を計測した。この結果が、下記表1に比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、タイヤ質量が軽いことを表している。
【0053】
[タイヤの嵌合性の評価]
試作タイヤをリム(サイズ:17×8−J)に嵌め込むのに要する時間を計測した。この結果が、下記表1に比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、嵌合性に優れることを表している。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示されるように、実施例のタイヤは軽い上に嵌合性に優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るタイヤは、種々の車両に装着されうる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、加硫工程前のコアの一部が示された拡大断面斜視図である。
【図3】図3は、図2の成形体を構成するストランドの一部が示された分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤのビードの一部が示された拡大断面斜視図である。
【図5】図5は、図4の成形体を構成するストランドの一部が示された分解斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
2、52・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・ベルト
14・・・バンド
16・・・インナーライナー
18・・・チェーファー
24・・・コア
26・・・エイペックス
28・・・第一カーカスプライ
30・・・第二カーカスプライ
32・・・内側層
34・・・外側層
36、54・・・成形体
38、56・・・ストランド
40、58・・・レイヤー
42、60・・・ハイブリッドコード
44、62・・・トッピングゴム
46、64・・・ワイヤー
48・・・編物層
50・・・束
66・・・ヤーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードを備えるタイヤであって、
両ビードのそれぞれが、コアを備えており、
このコアが、ハイブリッドコードにトッピングゴムを被覆して得られたストランドが周方向に複数回巻回されることにより形成されており、
上記ハイブリッドコードが、その材質がスチールであるワイヤーと、このワイヤーを被覆する編物層とを備えており、
この編物層が、アラミド繊維からなるフィラメントの平編みにより構成されている空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
一対のビードを備えるタイヤであって、
両ビードのそれぞれが、コアを備えており、
このコアが、ハイブリッドコードにトッピングゴムを被覆して得られたストランドが周方向に複数回巻回されることにより形成されており、
上記ハイブリッドコードが、その材質がスチールであるワイヤーとアラミド繊維からなる2本のヤーンとを撚り合わせて形成されている空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173437(P2010−173437A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17429(P2009−17429)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】