説明

空気冷却装置

【課題】潜熱冷却機能と顕熱冷却機能との相乗効果を発揮させ、飽和水蒸気になって気化しなくなっても、通過する空気の温度をさらに効果的に下げる空気冷却装置を提供する。
【解決手段】空気冷却体11を、紙材からなるベース基材12と、このベース基材12の一方の面に貼合され熱伝導率の高い金属製で厚みの薄いアルミシート13とで構成する。このアルミシート13に顕熱冷却機能を持たせている。空気が流入すると、ベース基材12にて、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。ベース基材12での潜熱冷却機能と、アルミシート13の顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。飽和水蒸気になった場合、気化による空気への冷却作用がなくなるが、空気冷却体11のアルミシート13が顕熱冷却器として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無窓畜舎、施設園芸用温室などの室内の温度を冷却したり、空気調和機の室外機の凝縮器に当てる空気を冷却する空気冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
養鶏の鶏舎内の温度を冷却するために、通称クーリングパッド( Cooling Pad )と呼ばれているものを用いている従来例として、例えば、下記に示す特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−215926号公報
【0004】
図15は上記特許文献1に記載されている鶏舎70の水平面の断面図を示し、図16は該鶏舎70の垂直面の断面図を示している。鶏舎70の一方の入気口には複数のクーリングパッド71が並設され、該鶏舎70の他方の排気口には鶏舎70内の空気を換気するための排気ファン72が並設されている。
夏場において、鶏舎70内の温度が高温になるために、鶏舎70内の温度を下げる必要があり、そのため、上記クーリングパッド71が用いられている。
【0005】
このクーリングパッド71は、紙や不織布のような水を吸収できる材料で作られているので、その上方から水を流下または滴下することによりクーリングパッド71全体を水で含浸させることで、入気口から流入する空気を冷却し、鶏舎70内の温度を低下させている。
すなわち、クーリングパッド71内では、水が気化する際の潜熱を利用して吸気された空気の温度を低下させ、この低下させた空気により鶏舎70内の温度を低下させている。
【0006】
図17〜図20はクーリングパッド71の作り方を示しており、クーリングパッド71の構造を理解し易いように、このクーリングパッド71の構造について説明する。図17において、波形形状をした波板材73を多層に積層して形成するものであり、それぞれの波板材73は、強固に加工された紙で出来ている。なお、波板材73の波形形状で形成されて連続して形成される溝74が、空気の流通路となる。
上下の波板材73を吸気方向に対して互い違いに任意の角度、例えば、30°前後に組み合わせ、上の波板材73の波の下側の頂点と、下の波板材73の波の上側の頂点とは交差する点、つまり、図18に示す黒丸(●)の部分を接着剤にて接着し、上下の波板材73を接着固定する。
【0007】
このようにして波板材73を多数積層したのが図19に示すクーリングパッド本体75であり、このクーリングパッド本体75を図中矢印のイ方向にカッター等にて切断することで、任意の厚みのクーリングパッド片76を得る。そして、図20に示すように、縦方向、横方向の矢印ロ、ハに示すようにカッター等にて切断することで、任意の大きさのクーリングパッド71を形成することができる。
このクーリングパッド71は、任意の厚みや大きさを容易に製作することができ、また、波板材73を上下に積層する際に、波板材73を任意の角度で傾斜して積層することで、外気の吸気方向に対する波板材73の各溝74の傾斜角度も任意に形成することができる。また、図17に示すように、溝74の幅寸法Lや高さ寸法Hを任意に製作することができる。
【0008】
図21は上記のようにして製作されたクーリングパッド71の要部拡大断面図を示し、クーリングパッド71の右方が鶏舎70内であり、左方から矢印に示すように空気がクーリングパッド71の溝74(以後、この溝を「空気流通路」と称する。)を通過する。
この実線で示している空気流通路74は例えば、30°の傾きで上昇し、この実線で示されている空気流通路74と幅方向で隣接し、破線で示している空気流通路74は、例えば、30°の傾きで下降している構成となっている。これらの空気流通路74がクーリングパッド71の上下方向及び左右方向に連続して形成されている。
【0009】
このようにして構成されているクーリングパッド71を上記特許文献1で用いていて、鶏舎70内の温度を、特に夏場において低下させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1で用いられているクーリングパッド71は紙材で形成されており、クーリングパッド71の表面は湿潤した紙であるため液体の様を呈している。そのため、水が浸透した紙は、気化潜熱効果は高いが、飽和水蒸気になると気化しなくなり、クーリングパッド71を通過する空気の温度をそれ以上下げることができないという問題を有している。
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、潜熱冷却機能と顕熱冷却機能との相乗効果を発揮させ、また、飽和水蒸気になって気化しなくなっても、通過する空気の温度をさらに効果的に下げることを目的とした空気冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の請求項1に記載の空気冷却装置では、所定の厚みを有する空気冷却装置本体10の上部より水を流下させ、前記空気冷却装置本体10により前記水が気化する際の潜熱を利用して吸い込んだ空気を冷却し、この冷却された空気を後方へ送り出す空気冷却装置であって、
前記空気冷却装置本体10は、断面を波形形状とした空気冷却体11を多数積層したものであり、空気の吸い込み方向における垂直方向に所定の傾斜角度で上昇た下降する空気流通路14を上下方向及び左右方向に連続して多数有しており、
前記空気冷却体11には紙材にて水が気化する際の潜熱冷却機能を持たせると共に、前記空気冷却体11の一部には熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材にて顕熱冷却機能を持たせていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の空気冷却装置では、前記空気冷却体11を、紙材からなるベース基材12と、このベース基材12の一方の面に貼合した熱伝導率の高い金属製のシート13とで構成し、前記熱伝導率の高い金属製のシート13に顕熱冷却機能を持たせていることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の空気冷却装置では、前記ベース基材12と、該ベース基材12の一方の面に貼合した熱伝導率の高い金属製のシート13とで前記空気冷却体11を構成し、一方の面に熱伝導率の高い金属製のシート13を設けた該空気冷却体11を多数積層して前記空気冷却装置本体10を構成していることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の空気冷却装置では、前記空気冷却体11を、紙材からなるベース基材12の少なくとも一方の面に円形あるいは四角形状の熱伝導率の高い金属製のシート13を多数枚貼合し、前記熱伝導率の高い金属製のシート13に顕熱冷却機能を持たせていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の空気冷却装置では、前記空気冷却体11を、紙材のみで形成した空気冷却体11aと、熱伝導率の高い金属製の板材で形成した空気冷却体11bとを素材が異なる材料で形成し、前記空気冷却体11aと空気冷却体11bとを多数積層して前記空気冷却装置本体10を構成していることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の空気冷却装置では、前記熱伝導率の高い金属製のシート13や板材を、アルミシート13やアルミ板、銀、銅、鉄のいずれかの材料を用いていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の空気冷却装置によれば、前記空気冷却体11には紙材にて水が気化する際の潜熱冷却機能を持たせると共に、前記空気冷却体11の一部には熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材にて顕熱冷却機能を持たせていることで、空気が流入すると、空気冷却体11の紙材にて、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11の紙材の潜熱冷却機能と、熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材の顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、空気冷却体11の熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材が顕熱冷却器として作用する。この熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材の顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、潜熱冷却機能を持たせている紙材と、顕熱冷却機能を持たせている熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材を用いていることで、飽和水蒸気になっても、顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
【0019】
請求項2に記載の空気冷却装置によれば、前記空気冷却体11を、紙材からなるベース基材12と、このベース基材12の一方の面に貼合した熱伝導率の高い金属製のシート13とで構成し、前記熱伝導率の高い金属製のシート13に顕熱冷却機能を持たせていることで、空気が流入すると、空気冷却体11のベース基材12では、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11のベース基材12での潜熱冷却機能と、シート13の顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、空気冷却体11のシート13が顕熱冷却器として作用する。このシート13の顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、紙材からなるベース基材12と、シート13を用いていることで、飽和水蒸気になっても、シート13の顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
【0020】
請求項3に記載の空気冷却装置によれば、前記ベース基材12と、該ベース基材12の一方の面に貼合した熱伝導率の高い金属製のシート13とで前記空気冷却体11を構成し、一方の面に熱伝導率の高い金属製のシート13を設けた該空気冷却体11を多数積層して前記空気冷却装置本体10を構成しているので、空気が流入すると、空気冷却体11のベース基材12では、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11のベース基材12での潜熱冷却機能と、シート13の顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、空気冷却体11のシート13が顕熱冷却器として作用する。このシート13の顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、紙材からなるベース基材12と、シート13を用いていることで、飽和水蒸気になっても、シート13の顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
【0021】
請求項4に記載の空気冷却装置によれば、前記空気冷却体11を、紙材からなるベース基材12の少なくとも一方の面に円形あるいは四角形状の熱伝導率の高い金属製のシート13を多数枚貼合し、前記熱伝導率の高い金属製のシート13に顕熱冷却機能を持たせているので、空気が流入すると、空気冷却体11のベース基材12では、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11のベース基材12での潜熱冷却機能と、シート13の顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、空気冷却体11のシート13が顕熱冷却器として作用する。このシート13の顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、紙材からなるベース基材12と、シート13を用いていることで、飽和水蒸気になっても、シート13の顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
【0022】
請求項5に記載の空気冷却装置によれば、前記空気冷却体11を、紙材のみで形成した空気冷却体11aと、熱伝導率の高い金属製の板材で形成した空気冷却体11bとを素材が異なる材料で形成し、前記空気冷却体11aと空気冷却体11bとを多数積層して前記空気冷却装置本体10を構成していることで、空気が流入すると、紙材で構成している空気冷却体11aにて、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11aの潜熱冷却機能と、空気冷却体11bの顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、熱伝導率の高い金属製の板材で構成した空気冷却体11bが顕熱冷却器として作用する。この空気冷却体11bの顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、空気冷却体11aと空気冷却体11bとを用いていることで、飽和水蒸気になっても、空気冷却体11bの顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
また、空気冷却装置本体10を、紙材からなる空気冷却体11aで構成しているのではなく、金属製の板材で形成した空気冷却体11bを用いているので、空気冷却装置本体10自体を補強することができる。
【0023】
請求項6に記載の空気冷却装置によれば、前記熱伝導率の高い金属製のシート13や板材を、アルミシート13やアルミ板、銀、銅、鉄のいずれかの材料を用いていることで、空気冷却装置本体10における顕熱冷却機能を一層効果的に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるベース基材の一方の面にアルミシートを貼合して空気冷却体を形成する場合の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における空気冷却体の正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における多数の空気冷却体を積層した場合の説明図である。
【図4】(a)(b)は本発明の第1の実施の形態における空気冷却装置本体の正面図及び側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における空気冷却装置本体の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における空気冷却体の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における空気冷却体の平面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるアルミシートを両面に貼合した場合の空気冷却体の説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における素材の異なる空気冷却体を交互に配置した場合の空気冷却装置本体の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態における空気冷却装置本体を畜舎内の温度を冷却する場合の例を示す概略構成図である。
【図11】本発明の実施の形態における空気冷却装置本体を支持枠で支持している状態を示す側面図である。
【図12】本発明の実施の形態における前後に膨出部を設けた場合の空気冷却装置本体の側面図である。
【図13】本発明の実施の形態における後部に膨出部を設けた場合の空気冷却装置本体の側面図である。
【図14】本発明の実施の形態における空気冷却装置本体を室外機の凝縮器を冷却する場合の例を示す概略構成図である。
【図15】従来例の鶏舎の水平面の断面図である。
【図16】従来例の鶏舎の垂直面の断面図である。
【図17】クーリングパッドを製作する場合の説明図である。
【図18】クーリングパッドを製作する場合の説明図である。
【図19】クーリングパッドを製作する場合の説明図である。
【図20】クーリングパッドを製作する場合の説明図である。
【図21】クーリングパッドの空気流通路(溝)を空気が通過する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態))
以下、本発明の第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。従来例の紙材からなるクーリングパッドは、水の潜熱を利用した気化式潜熱冷却装置である。本発明は、気化式潜熱冷却装置と、それによって冷やされた循環水の潜熱を利用した顕熱冷却装置とを組み合わせたものである。
クーリングパッドの循環水は、水の気化潜熱によって循環補給水が冷やされ、この冷やされた冷却水を利用して、空気冷却装置を通過する空気の温度を、一層下げるようにしたものである。
【0026】
熱伝導率は、一般に固体、液体、気体の順に大きく、乾燥空気や水と比べてアルミニウム、鉄、銅、銀等の固体の熱伝導率は非常に大きい。そこで、本発明では、顕熱による冷却機能を持たせるものとして、固体のアルミニウムを用いた実施形態を説明するが、アルミニウムの代わりに上記鉄、銅、銀等を用いるようにしても良い。
【0027】
本発明の空気冷却装置の構造は、基本的には従来例の図17〜図21に示すようなクーリングパッドの構造と同様であり、多数の傾斜した空気流通路を有している。そして、空気冷却装置本体10の構造自体は従来例と同様なので詳細な説明は省略する。
【0028】
先ず、図1〜図5に示すように、空気冷却装置本体10は、多数の波形形状の空気冷却体11(従来例の波板材73の形状と同じ)を積層したものであり、この空気冷却体11は、図1及び図2に示すように、波形形状とした紙材からなるベース基材12と、このベース基材12のいずれか一方の面に略全面にわたって貼合され、厚みを薄くしたアルミシート13とで構成されている。
【0029】
上記空気冷却体11の一方のベース基材12は紙材で構成しているので、水を湿潤可能とし、このベース基材12にて水が気化する際の潜熱を利用して通過する空気の温度を下げるようにしている。
また、空気冷却体11の他方のアルミシート13は、固体であり、熱伝導率の高い金属であり、このアルミシート13により顕熱冷却の機能を持たせて、潜熱冷却機能と顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて空気冷却体11を通過する空気の温度を一層下げるようにしている。
【0030】
図2に示すように、ベース基材12の一方の面にアルミシート13を貼合した空気冷却体11を、図3に示すように多数枚を積層して空気冷却装置本体10を形成する。図3は空気冷却体11を積層した状態を示しており、これを90°回転させて空気冷却装置本体10として使用するようにしている。
【0031】
すなわち、図3において、空気冷却体11の波形形状の空間部分を空気が通過する空気流通路14として用いるものであり、図4(a)は空気冷却装置本体10の正面図を、図4(b)は空気冷却装置本体10の側面図をそれぞれ示している。また、図5は空気冷却装置本体10の要部拡大断面図を示している。
空気は前後方向に空気冷却装置本体10の空気流通路14を通過するようになっており、図5では実線で示している空気流通路14は、例えば30°の傾きで後方に向けて上昇し、この実線で示されている空気流通路14と幅方向で隣接し、破線で示している空気流通路14は、例えば30°の傾きで後方に向けて下降している構成となっている。これらの空気流通路14が空気冷却装置本体10の上下方向及び左右方向に連続して形成されている。
【0032】
空気冷却装置本体10の上部から給水を行なうことで、水は各空気冷却体11を伝って下方へ流下していき、空気冷却装置本体10の下方に設けられている水回収装置(図示せず)に回収される。水が各空気冷却体11を伝って下方へ流下していくと、空気冷却体11のベース基材12は紙材にて構成されているので、ベース基材12は湿潤状態となり、他方のアルミシート13は水は吸収されず、アルミシート13の表面を伝って下方へ流下する。
【0033】
この状態で図5の矢印に示すように空気が流入すると、空気冷却体11のベース基材12では、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11のベース基材12での潜熱冷却機能と、アルミシート13の顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、空気冷却体11のアルミシート13が顕熱冷却器として作用する。このアルミシート13の顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
【0034】
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、本実施形態では、紙材からなるベース基材12と、アルミシート13を用いていることで、飽和水蒸気になっても、アルミシート13の顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
【0035】
この空気冷却装置本体10を、畜舎や鶏舎などの無窓畜舎、施設園芸用温室に用いることで、舎内の温度をさらに効果的に下げることができ、最適な空調管理を行なうことができる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図6及び図7に第2の実施形態を示す。本実施形態では、ベース基材12の一方の面に円形で薄いアルミシート13を多数貼合して形成したものであり、アルミシート13はベース基材12の任意の位置に設けるようにしても良い。このベース基材12とアルミシート13とで空気冷却体11を構成している。
【0037】
この実施形態においても、空気冷却体11はアルミシート13以外で湿潤状態となり、水が気化する際の潜熱にて通過する空気を冷却し、また、潜熱冷却機能と顕熱冷却機能との組み合わせで相乗効果を発揮させて、通過する空気の温度を効率良く低下させ、さらに飽和水蒸気になるとアルミシート13が顕熱冷却器として作用し、通過する空気の温度をさらに効果的に下げることができる。
【0038】
なお、図7に示すように、アルミシート13の形状を円形としているが、四角形状、三角形状など任意の形状(模様)でもってアルミシート13の形成するようにしても良い。
【0039】
図8はベース基材12の両面にアルミシート13を多数貼合して空気冷却体11を構成した場合を示している。アルミシート13の形状は、図7に示すような円形の形状としても良く、また、四角形状などの任意の形状(模様)でも良い。
本実施形態においても、図6の場合と同様の効果を奏するものである。
【0040】
(第3の実施の形態)
第3の実施形態を図9に示す。本実施形態では、異なる素材で構成した空気冷却体11を交互に配設したものである。一方の空気冷却体11aは紙材のみで形成し、他方の空気冷却体11bは、アルミ板で形成したものである。
紙材からなる空気冷却体11aを潜熱冷却器として作用せしめ、アルミ板で形成した空気冷却体11bを顕熱冷却器として作用せしめるようにしたものである。
【0041】
本実施形態においても先の実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、空気冷却装置本体10内に空気が流入すると、紙材で構成している空気冷却体11aにて、水が気化する際の水の潜熱によって空気が冷却される。また、空気冷却体11aの潜熱冷却機能と、空気冷却体11bの顕熱冷却機能との相乗効果を発揮せしめて、空気流通路14を通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
また、飽和水蒸気になると、気化しなくなり、空気の冷却作用が停止するが、熱伝導率の高い金属製の板材で構成した空気冷却体11bが顕熱冷却器として作用する。この空気冷却体11bの顕熱冷却作用により通過する空気の温度を、より効果的に下げることができる。
【0042】
これにより、空気冷却装置本体10に紙材のみで構成した場合では、飽和水蒸気になると、通過する空気の温度をそれ以上下げることができないが、空気冷却体11aと空気冷却体11bとを用いていることで、飽和水蒸気になっても、空気冷却体11bの顕熱冷却作用により、通過する空気の温度をさらに下げることができる。
また、空気冷却装置本体10を、紙材からなる空気冷却体11aで構成しているのではなく、アルミ板で形成した空気冷却体11bを用いているので、空気冷却装置本体10自体を補強することができる。
【0043】
なお、図9に示す例では、紙材からなる空気冷却体11aとアルミ板で形成した空気冷却体11bとは1枚ごとに交互に配設しているが、2枚〜4枚の空気冷却体11aごとに1枚の空気冷却体11bを配設するようにしても良い。
また、空気冷却体11bを、紙材からなるベース基材と、このベース基材の両面に薄いアルミシートを貼合して構成するようにしても良い。
【0044】
図10は、本空気冷却装置本体10を畜舎や鶏舎の空気の入気側に設けた空気冷却システム20の場合の例を示している。この空気冷却システム20は、本発明の空気冷却装置本体10と、この空気冷却装置本体10から流下した水を受ける排水樋21と、この排水樋21から排水管22を介して排水される水を回収する水回収装置23と、この水回収装置23に貯溜している水をポンプ24を介して空気冷却装置本体10側に送る給水管25と、この給水管25からの水を空気冷却装置本体10へ上面に給水するための給水装置26等で構成されている。
【0045】
なお、水回収装置23へは、水道水等の補給水が補給水管27から供給されるようになっており、補給水管27にはフロート弁28が介装されている。このフロート弁28は、液面に浮かぶフロート29が液面の高さに応じて上下方向に移動することにより開閉する弁である。
水回収装置23の液面が所定の高さ以下になると、フロート29が下降してフロート弁28が開いて補給水管20から水が供給される。また、補給水が供給されていって液面が所定の高さ以上になると、フロート29が上昇してフロート弁28が閉じられ、補給水管27からの水の供給が停止される。
【0046】
図11は、図10で示す空気冷却装置本体10を略口字型の支持枠31で支持固定している状態を示しており、支持枠31の各辺の両側よりフランジ32がそれぞれ突出形成されている。両フランジ32間に空気冷却装置本体10を配置することで、空気冷却装置本体10が支持枠31に固定される。
【0047】
図11に示す空気冷却装置本体10の幅でも十分に空気の温度を冷却することができるが、さらに空気冷却装置本体10を通過する空気の温度を下げる方法として、図12に示す。
図12に示すように、空気冷却装置本体10の空気が通過する方向の幅を広げるようにしたものであり、図12では前後方向に突出する膨出部33を空気冷却装置本体10の前後にそれぞれ形成している。また、膨出部33が支持枠31より外側に突出するので、膨出部33より流下する水を受けるための受片34を支持枠31の下辺に配設している。
【0048】
これにより、膨出部33の厚み分だけ空気冷却装置本体10の厚みが厚くなり、空気冷却装置本体10を通過する空気との接触面積が広くなり、つまり、冷却有効面積を広くでき、通過する空気の温度を、一層効果的に下げることができる。
【0049】
図13は、膨出部33を空気冷却装置本体10の一方側に形成した場合を示している。図13では、通過する空気の下流側に膨出部33を設けた場合を示しているが、空気の吸い込み側のみ膨出部33を一体に形成するようにしても良い。
かかる場合でも図12の場合と同様の効果を奏するものである。
【0050】
図14は、本発明の空気冷却装置本体10を空気調和機の室外機の凝縮器を冷却する場合に用いた例を示している。室外機の空冷式の凝縮器は、夏場の高温時に庫内、室内の冷却効率が落ちるために、それを防ぐために凝縮器の温度を下げるようにしたものである。
【0051】
室外機40のケース41の上部には冷却ファン42が設けられ、ケース41内の外側に凝縮器43が配置されている。そして、この凝縮器43の吸い込み空気の上流側に空気冷却装置本体10を近接して配置している。
なお、空気冷却装置本体10に水を供給して該空気冷却装置本体10を通過する空気の温度を冷却すべく水を循環させる空気冷却システム20の構成については、図10に示す場合と同様であるので、説明は省略する。
【0052】
この実施形態では、空気冷却装置本体10を室外機40の凝縮器43に近接して配置していることで、空気冷却装置本体10にて冷却された空気により凝縮器43の温度上昇を防止して、凝縮器43の効率を上げることができる。
【0053】
なお、図11〜図14で用いている空気冷却装置本体10の構成は、図3、図6、図8及び図9で示している空気冷却装置本体10のいずれかを用いているものである。
【0054】
また、熱伝導率の高い金属製のシートや板材を、アルミシート13やアルミ板、銀、銅、鉄のいずれかの材料を用いていることで、空気冷却装置本体10における顕熱冷却機能を一層効果的に発揮させることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 空気冷却装置本体
11 空気冷却体
11a、11b 空気冷却体
12 ベース基材
13 アルミシート
14 空気流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する空気冷却装置本体(10)の上部より水を流下させ、前記空気冷却装置本体(10)により前記水が気化する際の潜熱を利用して吸い込んだ空気を冷却し、この冷却された空気を後方へ送り出す空気冷却装置であって、
前記空気冷却装置本体(10)は、断面を波形形状とした空気冷却体(11)を多数積層したものであり、空気の吸い込み方向における垂直方向に所定の傾斜角度で上昇た下降する空気流通路(14)を上下方向及び左右方向に連続して多数有しており、
前記空気冷却体(11)には紙材にて水が気化する際の潜熱冷却機能を持たせると共に、前記空気冷却体(11)の一部には熱伝導率の高い金属製のシートあるいは板材にて顕熱冷却機能を持たせていることを特徴とする空気冷却装置。
【請求項2】
前記空気冷却体(11)を、紙材からなるベース基材(12)と、このベース基材(12)の一方の面に貼合した熱伝導率の高い金属製のシート(13)とで構成し、前記熱伝導率の高い金属製のシート(13)に顕熱冷却機能を持たせていることを特徴とする請求項1に記載の空気冷却装置。
【請求項3】
前記ベース基材(12)と、該ベース基材(12)の一方の面に貼合した熱伝導率の高い金属製のシート(13)とで前記空気冷却体(11)を構成し、一方の面に熱伝導率の高い金属製のシート(13)を設けた該空気冷却体(11)を多数積層して前記空気冷却装置本体(10)を構成していることを特徴とする請求項2に記載の空気冷却装置。
【請求項4】
前記空気冷却体(11)を、紙材からなるベース基材(12)の少なくとも一方の面に円形あるいは四角形状の熱伝導率の高い金属製のシート(13)を多数枚貼合し、前記熱伝導率の高い金属製のシート(13)に顕熱冷却機能を持たせていることを特徴とする請求項1に記載の空気冷却装置。
【請求項5】
前記空気冷却体(11)を、紙材のみで形成した空気冷却体(11a)と、熱伝導率の高い金属製の板材で形成した空気冷却体(11b)とを素材が異なる材料で形成し、前記空気冷却体(11a)と空気冷却体(11b)とを多数積層して前記空気冷却装置本体(10)を構成していることを特徴とする請求項1に記載の空気冷却装置。
【請求項6】
前記熱伝導率の高い金属製のシート(13)や板材を、アルミシート(13)やアルミ板、銀、銅、鉄のいずれかの材料を用いていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の空気冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−113466(P2013−113466A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258502(P2011−258502)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(500255753)有限会社アクアテック (3)
【Fターム(参考)】