説明

空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整方法及び装置

【課題】 製織中の製織状態に応じた最適な緯入れが可能となるように、サブノズルとストレッチノズルとの内の少なくとも一方からなる補助ノズルの噴射位置の調整を行う。
【解決手段】緯入れ経路に沿って配設された多数本のサブノズルを含む補助ノズルを有し、製織中に製織状態の変更を伴って製織が行われる空気噴射式織機において、前記補助ノズルのうち少なくとも1本を調整対象として設定すると共に、その調整対象の補助ノズルの噴射位置をアクチュエータにより調整可能とし、製織中における製織状態の変更に伴い、前記調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整することを特徴とする空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緯入れ経路に沿って配設された多数本のサブノズルを含む補助ノズルを有し、製織中に製織状態の変更を伴って製織が行われる空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置を調整するための方法及び装置に関する。
【0002】
なお、本出願で言う「補助ノズル」とは、少なくともサブノズルを含んだもの、詳しくは、サブノズルのみで構成される場合と、サブノズルとストレッチノズルとで構成される場合とを含んだものである。
また、本発明において、対象とするストレッチノズルは、サブノズルと同じような形態のものであって、織機に並設された補助ノズルの内の最も反給糸側、且つ、緯入れ経路の正面において、緯入れ経路から離れた位置で、空気噴射口(より詳しくは、空気噴射口から反給糸側に向かって噴射される圧縮空気の進行方向)が緯糸に対し反給糸側に鋭角をなすように配置されたものとする。
【0003】
なお、本出願で言う「噴射位置」とは、噴射高さ位置と噴射角度位置との内の少なくとも一方のことである。
また、「噴射高さ位置」とは、サブノズル及びストレッチノズルの軸線方向における空気噴射口の位置であり、基準点からある高さ位置をなす位置のことである。前記基準点は、図6に示すように、補助ノズルの軸線方向における可動範囲において、空気噴射口22aがその可動範囲の最も低いときの位置とする。
更に、「噴射角度位置」とは、補助ノズルの軸線周りにおける空気噴射口の前記軸線に対する角度的な位置のことであり、より詳しくは、図7に示すように、補助ノズルのうちサブノズル22を用いて説明すれば、サブノズル22を上方から見て、前記軸線と空気噴射口(空気噴射口の中心)22aとを結ぶ直線が緯入れ方向に対し為す角度である。
【背景技術】
【0004】
空気噴射式織機においては、緯糸を射出するメインノズルのほかに、緯入れ経路に沿って多数本のサブノズルが配設されている。そして、緯糸の緯入れが行われる際には、メインノズルから圧力空気が噴射されることによって緯糸がメインノズルから射出されて反給糸側へ向けて飛走すると共に、予め設定された期間にサブノズルから圧力空気が噴射され、そのサブノズルから噴射される圧力空気によって緯糸の飛走が助勢される。
【0005】
このような空気噴射式織機においては、サブノズルの噴射位置が緯糸の飛走に影響を与えることが知られている。このため、製織に用いられる緯糸の種類等の製織条件に応じて、サブノズルの噴射位置を調整することが従来から行われている。なお、本出願で言う「製織条件」とは、緯糸の種類、織物組織、織機の回転数等のことである。
【0006】
例えば、このようなサブノズルの噴射位置を調整するための従来技術として、本出願で言うサブノズルに、サブノズルの高さを調整可能とするモータを連結したものが、特許文献1に開示されている。これは、製織の準備段階(織機の停止状態)に、緯入れ時におけるサブノズルの空気噴射口の高さ位置をモータによって調整するものである。
【0007】
また、このようなサブノズルの噴射位置を調整するための別の従来技術として、ラック・ピニオン機構を利用したものが、特許文献2に開示されている。より詳しくは、緯入れ経路に沿って延長する1本のラックを設けると共に、このラックに本出願で言うサブノズルをそれぞれ噛み合わせて連結し、ラックの給糸側にピニオンを含む回動機構を設けたものが開示されている。これは、製織の準備段階に、緯入れ時におけるサブノズルの空気噴射口の噴射角度位置を回動機構によって調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−26958号公報
【特許文献2】実公平3−15576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、空気噴射式織機においては、運転中(製織中)に製織条件を変更して製織を行うものがある。また、その製織条件の変更に伴い、緯糸の飛走状態が変化する場合がある。従って、サブノズルの噴射位置についても、製織条件の変更に伴って変更することが望ましい。同様に、製織条件だけでなく、製織状態の変更に伴って、サブノズルの噴射位置を変更することが望ましい。なお、ここで言う「製織状態」とは、製織条件や、飛走する緯糸の先端が緯入れ経路中の所定位置に到達する時期である到達タイミング等の緯糸の飛走状態のことである。
【0010】
しかし、前記特許文献1、2に記載の従来技術では、緯入れ時におけるサブノズルの噴射位置は、製織準備段階である製織開始前に調整されて設定されるものとなっており、しかも、少なくとも製織中の緯入れ時においては一定となっている。従って、前記特許文献1、2に記載の従来技術では、製織中の製織条件の変更に伴ってサブノズルの噴射位置を変更することができず、製織条件に応じた最適な緯入れを実現することができない。
【0011】
なお、前記特許文献1には、製織中にサブノズルの噴射高さ位置を変更することが開示されている。しかし、これは、製織中における緯入れ時と非緯入れ時とでサブノズルの噴射高さ位置を変更するものであり、結局のところ、製織中の緯入れ時においてサブノズルの噴射高さ位置は、一定である。
【0012】
また、前記特許文献1、2には、本出願で言うサブノズルに対する調整のみが記載されており、サブノズルよりも反給糸側に配置されるストレッチノズルに対する調整が記載されていない。しかし、ストレッチノズルについても、サブノズルと同様の構造のものであれば、サブノズルと同様の調整が可能であると考えられる。
【0013】
本発明は、前記実情を考慮して創作されたものであり、その課題は、製織中の製織状態に応じた最適な緯入れが可能となるように、補助ノズルの噴射位置の調整を行う方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、緯入れ経路に沿って配設された多数本のサブノズルを含む補助ノズルを有し、製織中に製織状態の変更を伴って製織が行われる空気噴射式織機を前提とする。
【0015】
そして、前記空気噴射式織機における本発明による補助ノズルの噴射位置の調整方法は、前記補助ノズルのうち少なくとも1本を調整対象として設定すると共に、その調整対象の補助ノズルの噴射位置をアクチュエータにより調整可能とし、製織中における製織状態の変更に伴い、前記調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整することを特徴とする。
【0016】
また、このような調整方法に対応する本発明による補助ノズルの噴射位置の調整装置は、調整対象としての前記補助ノズルのうち少なくとも1本が、その補助ノズルを支持する支持体に対し、噴射位置を調整可能に支持されると共に、その調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整する駆動装置を含み、前記駆動装置は、前記調整対象の補助ノズルに連結されたアクチュエータと、製織中における製織状態の変更に伴い、前記調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整するように前記アクチュエータの駆動を制御する制御装置とを有することを特徴とする。
【0017】
なお、前記調整方法及び調整装置として、前記補助ノズルは、前記サブノズルに加え、これらサブノズルの反給糸側に並設されたストレッチノズルを含むものとしても良い。すなわち、前記補助ノズルの噴射位置の調整を行う際、前記補助ノズルがサブノズルのみで構成されている場合には少なくとも1本のサブノズルを、前記補助ノズルがサブノズルとストレッチノズルとで構成されている場合にはサブノズルとストレッチノズルの内の少なくとも一方に関して少なくとも1本を調整対象とする。
【0018】
また、前記調整方法及び調整装置として、データベースに予め設定された通りに補助ノズルの噴射位置を調整する場合が考えられる。
そのため、調整方法として、前記空気噴射式織機が、予め設定された複数の製織条件に従って製織中に自動的に製織条件を変更するように設定される織機である場合において、それに対応して前記噴射位置を調整するものであって、前記設定された複数の製織条件の各々に対応させた前記噴射位置を含むデータベースを予め設定しておき、製織条件の変更に際し、変更後の製織条件に応じた前記噴射位置を前記データベースから選択すると共にその選択された前記噴射位置に基づいて前記アクチュエータを駆動するものとしても良い。
同様に、前記調整装置として、前記制御装置は、前記設定された複数の製織条件の各々に対応させた前記噴射位置を含むデータベースを設定する設定器と、前記データベースから設定された製織条件に対応する前記噴射位置を選択すると共にその選択された前記噴射位置に基づいて前記調整対象の補助ノズルに連結されたアクチュエータの駆動を制御する駆動制御器とを有するものとしても良い。
【0019】
特に、前記空気噴射式織機が多色緯入れ織機であって、前記製織条件が糸種の異なる2以上の緯糸を選択的に緯入れするために設定された緯糸の選択パターンである場合には、そのときの調整方法として、前記データベースに緯入れされる各緯糸の各々に対応させた前記噴射位置を設定しておき、製織中の緯糸の切り換わりに伴い、切り換わり後の緯糸に対応する前記噴射位置に基づいて前記アクチュエータを駆動するものとしても良い。
同様に、その調整装置として、前記緯糸の選択パターンに従って緯糸選択信号を出力する緯糸選択信号発生部を含む多色緯入れ装置を備えた織機に用いるものであって、前記設定器には、緯入れされる各緯糸の各々に対応させた前記噴射位置を含むデータベースが設定されており、前記駆動制御器は、緯糸選択信号発生部からの緯糸選択信号の入力に伴い、選択される緯糸に応じた補助ノズルの噴射位置の設定値を前記データベースから読み出すものとしても良い。
【0020】
また、以上のような調整方法及び調整装置において、その調整が、設定された前記噴射位置まで適正に行われているか否かをセンサによって検出し、前記噴射位置が設定値となっていない場合において再調整が行われるようにしても良い。
【0021】
具体的には、そのような調整方法として、前記噴射位置の変更後の前記噴射位置を検出し、その検出値と製織条件に応じて選択された前記噴射位置とを比較し、両者間に偏差が生じている場合、その偏差を解消するように前記アクチュエータを駆動するものとしても良い。
同様に、そのような調整装置として、前記噴射位置を検出する噴射位置検出センサを備えると共に、前記制御装置が、前記噴射位置を変更した後の前記噴射位置検出センサの検出値と前記製織条件に応じて選択された前記噴射位置とを比較する判別器を備え、前記駆動制御器は、前記判別器による比較結果として選択された前記噴射位置と前記センサの検出値との間に偏差が生じている場合に、その偏差を解消するように前記アクチュエータを駆動するものとしても良い。
【0022】
また、本発明による調整方法及び調整装置は、前述のような製織条件の変更に応じて前記噴射位置を変更するものに限らず、センサによって検出される緯糸の飛走状態に応じて、前記噴射位置を調整する場合も含む。
【0023】
その場合の調整方法として、前記空気噴射式織機が緯糸の飛走状態を検出すべく緯入れされる緯糸の先端の通過を検出する通過検出センサを備え、前記通過検出センサの位置を緯糸の先端が通過する時点の織機主軸の回転角度に関する基準値を予め前記設定器に設定しておき、前記基準値と実際に緯糸が検出された際の前記回転角度とを比較し、両者間に偏差が生じている場合、その偏差を解消する方向へ前記アクチュエータを駆動するものとしても良い。
同様に、その場合の調整装置として、前記通過検出センサを備え、前記制御装置は、前記設定器と、前記基準値と緯入れ時に前記通過検出センサで緯糸が検出された際の前記回転角度とを比較する比較器と、その比較器による比較結果として両者間に偏差が生じている場合にその偏差を解消する方向へ前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御器とを有するものとしても良い。
【0024】
なお、ここで言う「偏差を解消する方向へ前記アクチュエータを駆動する」とは、前記偏差を減少させる又は解消するために、前記通過検出センサの位置を緯糸の先端が通過する時点が基準値へ近づく緯糸の飛走状態とするように補助ノズルの噴射位置を調整させるべく前記アクチュエータを駆動することを言う。但し、その場合のアクチュエータの駆動量は、前記偏差に応じたものであって1回の駆動で前記偏差が解消されるものに限らず、偏差の方向に応じて予め設定された所定量だけ駆動するものとしても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、製織中における製織状態の変更に伴い、調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整することで、最適な緯入れが行え、製織性や織布の品質が向上する。
【0026】
また、前記噴射位置に関するデータベースを設け、製織条件に対応する前記噴射位置を前記データベースから選択すると共に、その選択された前記噴射位置に基づいてアクチュエータが駆動されるものとすることにより、製織中に製織条件(例えば、糸種の異なる2以上の緯糸を選択的に緯入れするための緯入れパターン)が変更される空気噴射式織機においては、その製織条件の変更に伴い、変更後の製織条件に対応する前記噴射位置が前記データベースから選択され、その選択された前記噴射位置に基づいてアクチュエータが駆動されて前記噴射位置が自動的に調整されるため、織機を停止させることなく、前記噴射位置を製織中の各製織条件に応じた最適なものとすることができ、各製織条件による製織において最適な緯入れが可能となる。
【0027】
その上で、補助ノズルの噴射位置を検出する噴射位置検出センサを設け、製織条件の変更に伴って調整された前記噴射位置を前記噴射位置検出センサで検出すると共に、その検出値と変更後の製織条件に応じて設定された噴射位置(設定値)とを比較し、両者間に偏差が生じている場合にそれを解消するようにアクチュエータを駆動するものとすることにより、前記噴射位置を確実に製織条件に応じた最適なものとすることができる。
【0028】
また、緯糸の先端の通過を検出する通過検出センサを設け、前記通過検出センサの検出値(実際に緯糸を検出した時点の織機主軸の回転角度)とそのセンサの位置を緯糸の先端が通過する時点の織機主軸の回転角度に関する基準値とを比較し、両者間に偏差が生じている場合に、その偏差を解消する方向へアクチュエータを駆動するものとすることにより、緯糸の飛走状態に応じて前記噴射位置が変更され、その結果、製織の進行や外乱等の影響で変化した緯糸の飛走状態を修正することができ、適正な緯入れを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】空気噴射式織機の緯入れ装置における要部と補助ノズルの噴射位置の調整装置とを示す説明図である。
【図2】サブノズル用の駆動伝達機構等を示す説明図である。
【図3】(a)は、図2の一部切欠側面図で、(b)は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図1の実施例の変形例を示す説明図である。
【図5】補助ノズルの噴射位置の調整装置における別の実施例を示す説明図である。
【図6】補助ノズルの噴射高さ位置の説明図である。
【図7】補助ノズルの噴射角度位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明が適用される空気噴射式織機の一例として、多色の緯入れ装置を備えた織機の要部を示している。また、図1には、2種類の緯糸(給糸体Aに巻かれている緯糸a、給糸体Bに巻かれている緯糸b)を緯入れする2色の緯入れ装置11が示されており、この2色の緯入れ装置11が本発明の多色緯入れ装置に相当する。
【0031】
図1の緯入れ装置11において、緯糸aと緯糸bとは、各々の給糸体スタンド12により支持されている給糸体A又はBから引き出され、例えばドラム式の測長貯留装置13の糸巻付けアーム14の内部に導かれ、静止状態のドラム15の外周面で係止ピン16により係止されながら、糸巻付けアーム14の回転運動によりドラム15の外周面に巻き付けられる。これによって、1回の緯入れに必要な長さの緯糸aと緯糸bとは、ドラム15の外周面に巻き付けられ、緯糸の緯入れ時まで貯留されている。
【0032】
測長貯留装置13(糸巻付けアーム14の回転運動及び係止ピン16の進退運動)や、緯入れ用のメインノズル21は、緯入れ制御装置43の緯入れ制御部44によって、緯入れパターンに定められた緯糸の選択パターンに基づいて動作する。
【0033】
緯入れ開始タイミングで、緯入れ制御部44によって選択された緯糸(図示の例では緯糸b)に対応する係止ピン16が操作器17に駆動されて、ドラム15の外周面から後退すると、ドラム15の外周に巻き付けられている1回の緯入れに必要な長さの緯糸bは、ドラム15上において解舒可能な状態となる。そして、ドラム15から緯入れ用のメインノズル21に通された緯糸bは、メインノズル21が噴射動作を行うことにより、ドラム15上から解舒されて緯入れされる。
【0034】
選択された緯糸bに対応するメインノズル21は、設定された緯入れ開始タイミングで経糸の開口へ向けて圧力空気の噴射を開始し、設定された噴射期間に亘って噴射を継続することによって、所定の長さの緯糸bを射出して開口内に緯入れする。この緯入れ動作によって、緯糸bは、開口内の緯入れ経路に沿って飛走する。なお、圧力空気は、圧力空気源32から供給され、圧力調整器33により緯入れに適切な空気圧に調整されてから、電磁開閉弁34を経てメインノズル21に供給されている。電磁開閉弁34は、緯入れ制御部44の制御によって、緯入れパターンに定められた緯糸の選択パターンに基づいて動作する。
【0035】
前記のように図1の緯入れ装置11は2色の緯入れに対応するものであるが、3色以上の緯入れの場合、給糸体、測長貯留装置13及びメインノズル21等(後述の補助ノズル(本実施例では、サブノズル22と、ストレッチノズル23とから成る)、緯糸フィーラ31を除く。)は、多色数(緯糸の本数)に応じて設置され、緯入れパターンに定められた緯糸の選択パターンによって緯入れ動作が行われる。また、1色の緯入れであれば、給糸体、測長貯留装置13及びメインノズル21等は、1個だけ設置される。
【0036】
メインノズル21から射出された緯糸bが開口内の緯入れ経路に沿って飛走する過程で、補助ノズルに含まれる多数本のサブノズル22は、圧力空気を緯入れ経路であって緯糸bの飛走方向に向けてリレー的に噴射し、飛走中の緯糸bを緯入れ方向に助勢する。より詳しく言えば、前記多数本のサブノズル22は、緯入れ経路に沿って間隔をあけて配置されており、しかも、給糸側から反給糸側に向かって複数本(図示の例では4本)ずつ共通の電磁開閉弁36に接続されている。このように共通の電磁開閉弁36に接続された複数本のサブノズル22によって、1つのサブノズルグループが形成される。図では、サブノズルグループが、最も給糸側のものから並び順にG1、G2、G3、…と表示されている。
【0037】
また、圧力空気は、圧力空気源32から供給され、圧力調整器35によって適切な空気圧に調整されてから各電磁開閉弁36を経て各サブノズルグループのサブノズル22に供給されている。各電磁開閉弁36は、緯入れのときに緯入れ制御部44の制御下にあって、設定された噴射期間、対応するサブノズルグループのサブノズル22へ圧力空気を供給し、サブノズル22から圧力空気を噴射させて飛走中の緯糸bを緯入れ方向に助勢する。
【0038】
助勢された緯糸bの先端が最も反給糸側に位置するサブノズル22よりも反給糸側に至ると、補助ノズルに含まれるストレッチノズル23からの圧力空気の噴射によって、緯糸bには張力が付与される。このため、緯入れ経路に沿って配置されたサブノズル(最も反給糸側のサブノズル)22よりも反給糸側にはストレッチノズル23が間隔をあけて配置されており、しかも、サブノズル22と同様に、ストレッチノズル23には電磁開閉弁37が接続されている。
【0039】
メインノズル21、各サブノズルグループのサブノズル22及びストレッチノズル23の噴射動作により、緯糸bが正常に緯入れされたときに、その緯糸bは、図示しない筬の筬打ち運動によって織布の織り前に筬打ちされ、織布に織り込まれた後、緯入れ側で図示しない給糸カッタによって切断され、メインノズル21の内部の緯糸bから切り離される。また、緯入れが正常に行われたか否かは、緯糸bの到達を検出する緯糸フィーラ31からの信号に基づいて、織機の図示しない主制御装置によって判別される。図示の例では緯糸フィーラ31は、反給糸側の図示しない経糸列の外側(緯入れ経路に沿ってストレッチノズル23よりも反給糸側)に配置されている。
【0040】
主軸41の回転角度の検出のために、主軸41にエンコーダ42が連結されており、エンコーダ42は、製織中における主軸41の回転角度の信号を発生し、これを図示しない織機の主制御装置、並びに緯入れ制御装置43の緯入れ制御部44及び緯糸選択信号発生部45等に対し出力している。
【0041】
緯入れ制御装置43の緯糸選択信号発生部45は、エンコーダ42からの回転角度に基づいて織機の製織サイクルを把握し、緯入れパターンに予め設定されている緯糸の選択パターンに従って緯糸(緯糸a又は緯糸b)を製織サイクル毎に選択し、その選択した緯糸に対応する緯糸選択信号S1を緯入れ制御部44に対し製織サイクル毎に出力する。緯入れ制御部44は、選択された緯糸に対応する測長貯留装置13、メインノズル21、サブノズル22及びストレッチノズル23等の動作を設定された制御値に従って適切な回転角度のもとに制御して、選択された緯糸の緯入れ動作を実行させる。
【0042】
前記した緯入れ制御装置43は、機能別のブロックの組み合わせとして構成されている。このような緯入れ制御装置43は、各ブロックからなる装置を組み合わせて実現しても良いし、コンピュータに所定のソフトウェアをインストールし、そのソフトウェアを実行させることによって、コンピュータの入出力手段、記憶手段、演算制御手段及びソフトウェアが協働した各ブロックを構成し、それらブロックの組み合わせにより実現することも可能である。
【0043】
また、緯入れ制御装置43に対して製織状態のデータ等を設定するために、入力・設定表示装置46が緯入れ制御装置43に対し通信可能に接続されている。
【0044】
入力・設定表示装置46は、表示装置であり、その表示画面の一部でタッチパネル式の入力装置を兼用し、表示画面のボタンに対するタッチ操作によって、各種データの入力設定や表示の要求、あるいは各種の指令等を可能に構成されている。
【0045】
以上のような空気噴射式織機において、本発明では、緯入れ装置11は、前記した基本的な構成に加え、補助ノズルの噴射位置を調整するための調整装置を備えている。なお、本実施例では、補助ノズルとしての全てのサブノズル22(より詳しくは、全てのサブノズルグループに含まれる全てのサブノズル22)及びストレッチノズル23を調整対象とし、調整される噴射位置として噴射高さ位置と噴射角度位置の両方が調整されるものとする。そして、前記調整装置は、このような補助ノズルの噴射位置を調整する駆動装置として構成されている。
【0046】
また、本実施例では、この駆動装置は、アクチュエータと、駆動伝達機構71と、制御装置としての補助ノズル制御装置61aとから構成されるものとする。前記アクチュエータとしては、噴射高さ位置を調整する高さ位置調整用の駆動モータM1、及び噴射角度位置を調整する角度位置調整用の駆動モータM2、つまり、2つの駆動モータM1、M2が用いられるものとする。各駆動モータM1、M2は、サブノズルグループ及びストレッチノズル23に対し1組ずつ設けられ、各々の駆動伝達機構71を介して各補助ノズルに連結される。すなわち、本実施例では、サブノズル22についてはサブノズルグループ単位で噴射位置が調整される。そして、このような、各サブノズルグループに含まれるサブノズル22と各駆動モータM1、M2との駆動伝達機構71を介した連結構造を示す正面図が図2に示されており、図2の側面図と図2のA−A線断面図とが図3(a)と図3(b)とに示されている。なお、ストレッチノズル23については、1本であるため、各駆動モータM1、M2と1対1の関係で連結される(図示略)。
【0047】
サブノズル22は、一直線に延長する中空の棒体であって、その基端に圧力空気供給口が形成されると共に、その先端が袋状に塞がれた先端部の側面に空気噴射口22aが形成されている。この空気噴射口22aは、サブノズル22の軸線方向にほぼ直交する方向に向かって貫通している。空気噴射口22aが設けられる先端部よりも基端側において、各サブノズル22は、半径方向外側に向けて段差状に太く形成されており、この太い段差状部分22bにおいて、サブノズル22毎に設けられた支持体としての専用のノズルホルダ24により回動可能に且つ高さ方向に摺動可能に支持されている。このような専用のノズルホルダ24が、緯入れ経路に沿って間隔をあけてリードホルダ25に固定されることにより、各サブノズル22が緯入れ経路に沿って配置される。なお、リードホルダ25には、図示しない筬が支持されている。
【0048】
駆動伝達機構71は、高さ位置調整用として機能する部分と、角度位置調整用として機能する部分とから構成される。詳しい構成については以下の通りである。
【0049】
駆動伝達機構71における高さ位置調整用として機能する部分は、本実施例では、昇降体72を主体とするものである。そして、この昇降体72は、サブノズル22の並設方向(以下、「幅方向」と言う。)へ延在する板状のベース部材73と、ベース部材73に対して略直角を成して立設された複数の支柱74と、支柱74に支持されてベース部材73と平行に延在するガイド部材75とで構成されている。
【0050】
支柱74は、図示の例では3本であり、ガイド部材75の幅方向における両端部と中間部とを支持するように、且つ、サブノズル22の軸線方向と平行になる状態で配設される。以下、サブノズル22の軸線方向とその軸線方向に対して平行な方向とを含めて「高さ方向」と言う。
【0051】
ガイド部材75とベース部材73とは、何れも幅方向において、1つのサブノズルグループを構成する4本のサブノズル22の存在範囲と対応する長さ寸法を少なくとも有する。そして、昇降体72は、ガイド部材75とベース部材73とが、各支柱74を間に挟む形で組み合わされて一体化することで形成される。
【0052】
また、ガイド部材75とベース部材73とを連結する3本の支柱74のうちの中央部の支柱74には、ベース部材73側の端面に開口すると共に高さ方向に延在する雌ネジ孔81が形成されている。さらに、ベース部材73には、ベース部材73と前記支柱74が組み合わされた状態で雌ネジ孔81と同心的に連通する位置に抜穴82が形成されており、この抜穴82は、その内径が雌ネジ孔81の内径よりも若干大きいものとなっている。そして、昇降体72における支柱74の雌ネジ孔81には、高さ位置調整用の駆動モータM1の出力軸に取付けられると共に抜穴82を通過する雄ネジ部材83が螺挿される。この構成により、昇降体72は、駆動モータM1の出力軸の回転駆動に応じて高さ方向に昇降移動するものであり、支柱74の雌ネジ孔81と駆動モータM1の出力軸に取付けられた雄ネジ部材83とにより所謂ボールネジ機構を構成している。
【0053】
この駆動モータM1は、前記出力軸の軸心が高さ方向と平行になるよう、支持部材78に支持されている。また、この支持部材78は、リードホルダ25の下部前方において幅方向に延在するものであり、ブラケット79を介してリードホルダ25にネジ締め等で固定されている。なお、ブラケット79には、サブノズル22の下方に位置する部分に貫通孔79aが形成されており、サブノズル22に接続するチューブ22cがこの貫通孔79aを通過できるようになっている。
【0054】
さらに、支持部材78には、昇降体72の両端の支柱74のそれぞれに対応する位置で高さ方向に延在するように、一対のガイド棒77が立設されている。一方、昇降体72には、両端の支柱74の位置において、ベース部材73を貫通すると共に両端の支柱74の内部において高さ方向に延在するガイド孔76が形成されている。そして、昇降体72の各ガイド孔76に一対のガイド棒77のそれぞれが嵌挿されることにより、昇降体72は、ガイド棒77の延在方向、すなわち、高さ方向への昇降移動が案内される。
【0055】
各サブノズル22には、その基端側(より詳しくはノズルホルダ24から高さ方向において下側に突出している部分)に、ピニオン52が同心的に固定されている。また、昇降体72におけるガイド部材75には、サブノズル22と対向する側の面に開口するガイド溝75aが形成されている。そして、このガイド溝75aに対してピニオン52の外周部が挿入されることにより、サブノズル22と昇降体72とは、高さ方向への相対移動が不能な状態で連結される。従って、サブノズル22は、昇降体72の高さ方向への昇降移動に伴って高さ方向の位置が変更(調整)される。
【0056】
また、駆動伝達機構71における角度位置調整用として機能する部分は、本実施例では、ラック51と前記したピニオン52からなるラック・ピニオン機構で構成されている。
【0057】
ラック51は、幅方向において、ガイド部材75よりも長い寸法を有する。また、ラック51は、ガイド溝75aに対し幅方向へ移動可能な状態で挿入されており、その移動がガイド溝75aの内面によって案内されるものとなっている。そして、このラック51は、ガイド溝75a内においてピニオン52と噛み合っている。従って、この構成によれば、ラック51が幅方向へ移動するのに伴い、ラック51と噛み合うピニオン52が回転し、それに伴ってサブノズル22が軸心周りに正逆回転する。
【0058】
前記のように、ラック51は、幅方向の長さ寸法については、昇降体72のガイド部材75よりも長くなっている。従って、ラック51は、ガイド溝75aに挿入された状態では、その端部がガイド部材75から幅方向に突出する状態となる。そして、ラック51は、この突出した部分において、角度位置調整用の駆動モータM2の出力軸に取り付けられたピニオン53と噛み合わされている。この構成により、ラック51は、駆動モータM2の出力軸の回転に伴って幅方向に移動する。その結果、前記のようにピニオン52の回転に伴ってサブノズル22が回動し、サブノズル22の噴射角度位置が変更(調整)される。
【0059】
駆動モータM2は、昇降体72のベース部材73に支持されている。より詳しくは、ベース部材73も、ラック51と同様に、幅方向の長さ寸法についてはガイド部材75よりも長い寸法を有しており、昇降体72は、幅方向の一端側(図面右側)において、ベース部材73がガイド部材75よりも突出するように構成されている。そして、駆動モータM2は、ベース部材73におけるこの突出した部分の上面に載設されている。従って、駆動モータM2は、昇降体72の高さ方向の昇降移動に伴い、サブノズル22と共に高さ方向の位置が変更される。
【0060】
図1に示すように、各駆動モータM1、M2は、補助ノズル制御装置61aに接続されており、補助ノズル制御装置61aから励磁電流を供給されて回転駆動されることにより、サブノズル22及びストレッチノズル23を含む補助ノズルが昇降駆動されたり回転駆動されたりして、これらの噴射位置が調整される。
【0061】
補助ノズル制御装置61aは、高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bとを含む駆動制御器62と、設定器63とで構成される。設定器63は、入力・設定表示装置46と通信可能に接続されている。そして、設定器63には、この入力・設定表示装置46における入力操作によって入力設定されたサブノズル22及びストレッチノズル23の噴射位置に関するデータベースが入力・設定表示装置46から転送され、その転送されたデータベースが設定される。なお、前記のように、本実施例では、サブノズル22についてはサブノズルグループ単位で噴射位置が調整されるため、データベースにおけるサブノズル22の噴射位置は、サブノズルグループ単位で設定されているものとする。
【0062】
そして、このデータベースには、緯糸種(緯糸a、緯糸bの各々)に対応させたかたちで調整対象となるサブノズル22(各サブノズルグループ)及びストレッチノズル23の噴射位置が設定されている。
すなわち、このデータベースには、例えば、緯糸a、bのそれぞれに対応させて、緯入れされる緯糸種が緯糸aの場合には、各サブノズルグループ及びストレッチノズル23の噴射高さ位置h、及び噴射角度位置θを、サブノズルグループG1:h=r1、θ=x1°、サブノズルグループG2:h=r2、θ=x2°、サブノズルグループG3:h=r3、θ=x3°、…、ストレッチノズル23:h=rn、θ=xn°とし、緯入れされる緯糸種が緯糸bの場合には、サブノズルグループG1:h=s1、θ=y1°、サブノズルグループG2:h=s2、θ=y2°、サブノズルグループG3:h=s3、θ=y3°、…、ストレッチノズル23:h=sn、θ=yn°といったかたちで設定されている。
【0063】
駆動制御器62は、設定器63と通信可能に接続されると共に、緯入れ制御装置43における緯糸選択信号発生部45と通信可能に接続されている。また、駆動制御器62に含まれる高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bには対応する駆動モータM1、M2が接続されている。そして、製織中において緯入れされる緯糸を切り換えるために緯糸選択信号発生部45から製織サイクル毎に出力される緯糸選択信号S1が、駆動制御器62にも入力される。それにより、駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、緯糸選択信号発生部45からの緯糸選択信号S1に対応する噴射位置の設定値を、設定器63に設定されているデータベースから読み込む。そして、駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、設定器63から読み込んだ設定値に従い、対応する駆動モータM1、M2に対し励磁電流を供給して駆動モータM1、M2を駆動する。
【0064】
前記した補助ノズルの噴射位置の調整装置は、以下の手順からなる方法で補助ノズルの噴射位置を調整する。
(1)製織準備段階において、入力・設定表示装置46により、設定器63に対し前記した内容のデータベースを設定する。
(2)製織中、緯糸選択信号発生部45は、エンコーダ42からの主軸41の回転角度(以下、「クランク角度」と言う。)の信号に基づき、設定された緯糸の選択パターンに従って、緯糸選択信号S1を緯入れ制御部44に対し製織サイクル毎に出力する。緯入れ制御部44は、緯糸選択信号S1に基づいて、設定された複数の緯入れ条件の内の選択された緯糸に対応する緯入れ条件を選択し、その選択した緯入れ条件に従って、電磁開閉弁34、36、37等を駆動し、選択された緯糸の緯入れを実行する。なお、本実施例では、緯糸選択信号S1は、緯入れ終了後から次の製織サイクルの開始(クランク角度0°)前に(例えば、クランク角度340°)、緯糸選択信号発生部45から出力されるものとする。
(3)緯糸選択信号発生部45からの緯糸選択信号S1は、補助ノズル制御装置61aの駆動制御器62に対しても製織サイクル毎に出力される。駆動制御器62の高さ位置制御部62aは、その緯糸選択信号S1に基づいて、選択される緯糸種に対応する各サブノズルグループとストレッチノズル23との噴射高さ位置の設定値を設定器63から読み出す。同様に、駆動制御器62の角度位置制御部62bは、その緯糸選択信号S1の入力に伴い、選択される緯糸種に対応する各サブノズルグループとストレッチノズル23との噴射角度位置の設定値を設定器63から読み出す
(4)次いで駆動制御器62の高さ位置制御部62aは、その読み出した設定値に基づいて、各サブノズルグループとストレッチノズル23との噴射高さ位置が前記設定値になるように、対応する高さ位置調整用の駆動モータM1を一斉に駆動する。具体的には、駆動制御器62の高さ位置制御部62aは、現在の噴射高さ位置の設定値と、読み出した噴射高さ位置の設定値との偏差を求め、その偏差分の回転角度だけ対応する高さ位置調整用の駆動モータM1の出力軸を回転させるように、前記駆動モータM1に対し励磁電流を供給して、前記駆動モータM1の出力軸を回転させ、その結果、対応するサブノズルグループとストレッチノズル23の噴射高さ位置を、読み出した噴射高さ位置の設定値になるよう変更する。
駆動制御器62の角度位置制御部62bも、高さ位置制御部62aと同様の処理を行って、対応する角度位置調整用の駆動モータM2の出力軸を回転させ、その結果、対応するサブノズルグループとストレッチノズル23の噴射角度位置を、読み出した噴射角度位置の設定値になるよう変更する。
【0065】
なお、前記(4)による駆動制御器62の高さ位置制御部62aや角度位置制御部62bによる補助ノズルの噴射位置の変更(駆動モータM1、M2を駆動)は、例えば、緯糸選択信号S1が発生した次の製織サイクルにおける緯入れが開始される時点の前までに完了される。但し、緯糸選択信号S1は製織サイクル毎に出力されるものであるため、同じ種類の緯糸を連続して緯入れするような緯糸の選択パターンの場合には、読み出される噴射位置の設定値が前回の緯入れと同じ場合がある。その場合、駆動制御器62は、前記偏差を零と判断し、駆動モータM1、M2の出力軸の回転角度(補助ノズルの噴射位置)を現在位置に保持するように駆動モータM1、M2の駆動を制御する。
【0066】
以上において一例を説明した本発明による補助ノズルの噴射位置の調整装置において、図示の例では、駆動伝達機構として、ボールネジ機構やラック・ピニオン機構を用いた構成を採用しているが、これに代えて、回転ギヤ、ウォームギヤ、ウォームホイール、ベルト、チェーン等が用いられるものとしても良い。また、アクチュエータとして、前記した駆動モータM1、M2に代えて、直接的に駆動対象を駆動する直接駆動型モータや、直動型のアクチュエータ(リニアモータ)が用いられても良い。
【0067】
更に、図示の例では、サブノズルグループに含まれる複数本のサブノズル22を高さ位置調整用及び角度位置調整用の各々1つのアクチュエータと連結し、サブノズルグループ単位で複数本のサブノズル22の噴射位置を同時に調整可能とする構成としたが、これに代えて、サブノズルグループを構成するサブノズル22(図示の例では4本)よりも少ない数の複数本のサブノズル22、またはサブノズルグループを構成するサブノズル22よりも多い数の複数本のサブノズル22の噴射位置を同時に調整するものとしても良い。また、各サブノズル22に対し高さ位置調整用及び角度位置調整用の各々1つのアクチュエータを連結する構成とし、サブノズル毎に噴射位置を調整できるようにしても良い。但し、同時に噴射位置が調整されるサブノズル22が必ずしも共通のアクチュエータに連結されている必要は無く、異なるアクチュエータに連結された複数本のサブノズル22を、同時に且つ同じ調整量だけ調整するものとしても良い。
【0068】
また、前記実施例では、製織条件としての緯入れされる緯糸種に対応させて噴射角度位置が変更されるものとしたが、これに限らず、その他の製織条件(織物組織、織機の回転数等)に対応させて噴射位置が変更されるものとしても良い。更には、製織中において複数の製織条件の切り替えが同時に行われる空気噴射式織機(例えば、パイル織機)の場合には、その複数の製織条件が切り替えられる製織パターン毎に、その製織パターンの変更に応じて噴射位置が変更されるものでも良い。なお、この場合、データベースには、前記製織パターン毎に、その製織パターンにおける複数の製織条件を考慮した噴射位置が設定されるものとする。
【0069】
また、前記実施例では、緯糸選択信号S1の入力に伴って駆動制御器62が噴射位置を調整するための制御を開始し、噴射位置の変更が次の製織サイクルにおける緯入れが開始されるまで完了するものとしたが、制御の開始(アクチュエータの駆動の開始)については、緯糸選択信号S1の入力時点に限らず、予め設定されたクランク角度としても良い。但し、そのクランク角度については、次の製織サイクルにおける緯入れが開始される時点に対し、噴射位置を調整するのに要する時間を考慮して定められるものとする。そして、この場合、そのクランク角度(設定値)が設定器63に設定されると共に、エンコーダ42からのクランク角度信号が駆動制御器62に対しても出力されるものとし(図1の点線矢印参照)、クランク角度が設定器63に設定された設定値に達した時点で、駆動制御器62が噴射位置を調整するための制御を開始し、補助ノズルの噴射位置を調整するものとする。
【0070】
更に、そのように設定されたクランク角度に従って駆動制御器62が制御を開始するものとした場合には、前記実施例のように、調整対象となっている補助ノズルの噴射位置を一斉に変更することに代えて、各補助ノズルの噴射タイミングに応じて噴射位置が変更されるものとすることができる。すなわち、一般的な空気噴射式織機においては、サブノズル22の噴射時期はサブノズルグループ単位でリレー的に噴射が行われるようにサブノズルグループ単位で異ならせて設定されているため、前記実施例のように全てのサブノズル22をサブノズルグループ単位で調整する場合において、それぞれの噴射開始時期に応じて調整時期を異ならせるものとしても良い。
【0071】
また、前記実施例のように、噴射位置の設定値に従って製織中に噴射位置の調整が行われる場合において、調整後の補助ノズルの噴射位置を検出し、その噴射位置が設定された噴射位置と一致しているか否かを判別すると共に、設定された噴射位置に対し位置ズレを生じている場合には、その位置ズレを補正するようにしても良い。因みに、「位置ズレを生じている場合」とは、外乱等の影響による制御の不調や、経糸等の他の部材に引っ掛かること、あるいは装置の不具合が原因で、噴射位置が設定値にまで調整されず、調整後の噴射位置と設定値との間にズレが生じる場合をいう。
【0072】
図4には、このような位置ズレを補正することのできる補助ノズルの噴射位置の調整装置における補助ノズル制御装置61bが、図1の実施例の補助ノズル制御装置61aの変形例として示されている。また、この調整装置では、各アクチュエータ(駆動モータM1、M2)又は各補助ノズル(各サブノズルグループに含まれる全サブノズル22のうちの1つ及びストレッチノズル23)に設けられた図示しないセンサであって補助ノズルの噴射位置を検出するセンサ(噴射位置検出センサ(詳しくは、噴射高さ位置検出センサと噴射角度位置検出センサ))が備えられているものとする。そして、補助ノズル制御装置61bは、図1の実施例における補助ノズル制御装置61aの駆動制御器62(高さ位置制御部62aと角度位置制御部62b)、設定器63に加え、上記噴射位置検出センサに接続された判別器64を有するものとしてある。
【0073】
この補助ノズル制御装置61bにおける判別器64は、駆動制御器62に対しても通信可能に接続されている。そして、このような補助ノズル制御装置61bにおいては、調整対象である補助ノズルの噴射位置(噴射高さ位置と噴射角度位置)の調整後、その補助ノズルの噴射位置が噴射位置検出センサによって検出され、その検出された噴射位置の検出値が判別器64に対して出力される。そして、判別器64は、前記検出値と駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bから読み出した設定値とを比較し、その比較結果として両者間に偏差が生じている場合、判別結果を駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力する。
【0074】
より詳しくは、以下の手順による方法で、調整装置が補助ノズルの噴射位置の位置ズレを補正する。
(1)駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、噴射位置の調整のために対応する駆動モータM1、M2を回転駆動した後、設定器63から読み出した調整対象となるサブノズル22(各サブノズルグループ)及びストレッチノズル23の噴射位置の設定値を判別器64に対し出力する。
(2)噴射位置検出センサは、サブノズルグループ及びストレッチノズル23の噴射位置を検出し、駆動モータM1、M2の出力軸の回転駆動が完了した後の所定のタイミング(例えば、予め設定されたクランク角度)で、その検出値を示す検出信号を判別器64に対し出力する。
(3)判別器64は、調整対象毎にサブノズルグループ及びストレッチノズル23の前記設定値と前記検出値とを比較し、偏差(ズレ)が生じている場合には、その偏差量(高さ位置のズレ量と、回転角度のズレ量)を示す偏差信号を判別結果として駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力する。ズレが生じていない場合は、偏差量が無いもの(=0)として、その偏差量=0を示す偏差信号を駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力するか、又は偏差信号を駆動制御器62に対し出力しない。
(4)駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、ズレが生じている場合には、その偏差信号に基づいて、偏差量を解消するように、詳しくは、偏差量=0となる差分の回転角度だけ対応する駆動モータM1、M2の出力軸を回転させるように、駆動モータM1、M2に対し励磁電流を供給して、駆動モータM1、M2を駆動する。
また、駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、ズレが生じていない場合には、その偏差量=0を示す偏差信号に基づいて、又は偏差信号がないことに基づき、駆動モータM1、M2の出力軸を現在の角度位置に保持するように駆動モータの駆動を制御する。
【0075】
また、図4の変形例では、噴射位置を1回調整する毎に、位置ズレが生じているかを判別しているが、これに限らず、噴射位置を複数回調整する毎に、位置ズレを判別するものであっても良い。
【0076】
以上で説明した実施例では、製織条件の切り換わりに伴い、その製織条件に応じて噴射位置を変更するものとしたが、これに代えて、緯糸の飛走状態を検出し、その検出結果に基づいて噴射位置を変更するものとしても良い。
【0077】
すなわち、図1の実施例では、製織条件の切り換わりに伴って緯糸の飛走状態が変化することを想定し、その製織条件の切り換わりに伴って噴射位置を変更するものとした。しかし、緯糸の飛走状態の変化は、同じ給糸体(給糸体A、又は給糸体B)から解舒されて緯入れされる緯糸においても、製織の進行に伴う緯糸の解舒抵抗の変化等に起因して生じる場合がある。従って、緯糸の飛走状態を検出し、その検出結果に基づいて噴射位置を調整するものとしても良い。なお、緯糸の飛走状態の検出について、緯糸の飛走状態が変化すると緯糸の先端が緯入れ経路中の所定位置を通過する際のタイミング(クランク角度)が変化するため、緯入れ経路上(例えば、中間の所定位置、或いは反給糸側の所定位置)に緯糸の先端の通過(到達)を検出するセンサを設け、その検出によって飛走状態を検出するものとすればよい。
【0078】
以下では、上記のような緯糸の飛走状態の検出結果に基づいて補助ノズルの噴射位置を調整する調整装置の実施例について、図5に基づいて説明する。但し、この実施例による調整装置は、基本的には補助ノズル制御装置を除いて図1の実施例と同じであるため、図5には、本実施例による補助ノズル制御装置61cのみを示し、以下では、その補助ノズル制御装置61cを中心に説明する。
【0079】
図5に示すように、補助ノズル制御装置61cは、図1の実施例における補助ノズル制御装置61aの駆動制御器62(高さ位置制御部62aと角度位置制御部62b)、設定器63に加え、比較器65を有している。また、この補助ノズル制御装置61cにおける比較器65は、駆動制御器62、設定器63、及び図示しない主制御装置に対し、通信可能に接続されているものとする。
【0080】
また、この実施例では、前記緯糸の先端の通過(到達)を検出するセンサ(通過検出センサ)として、空気噴射式織機の反給糸側の経糸列の外側に設けられた緯糸フィーラ(図1参照)31が用いられるものとする。そして、この緯糸フィーラ31(通過検出センサ)は、前記主制御装置に対し接続されており、緯入れされた緯糸の先端がその検知域に達したことを検出し、それに伴って緯糸検出信号を前記主制御装置に対し出力する。そして、この緯糸検出信号に基づいて、前記主制御装置は、緯糸の到達タイミング(実際の緯糸の到達タイミング(検出値))を求め、その求められた検出値を比較器65に対し出力する。
【0081】
一方、補助ノズル制御装置61cの設定器63には、目標の到達タイミングである基準値が設定されると共に、この基準値と実際の緯糸の到達タイミング(検出値)との偏差量に対応させた補助ノズルの位置調整量(高さ位置調整量及び角度位置調整量)が設定される。また、補助ノズル制御装置61cの比較器65は、前記検出値の入力に応じて前記基準値を設定器63から読み出し、前記検出値と前記基準値とを比較する。そして、比較器65は、その比較結果として両者間に偏差が生じている場合、その偏差量を示す偏差信号を駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力する。
【0082】
より詳しくは、以下の手順による方法で、調整装置が補助ノズルの噴射位置の変更をする。
(1)通過検出センサ(緯糸フィーラ31)は、緯入れされた緯糸の先端の通過を検出すると、これを示す検出信号を図示しない主制御装置に対し出力する。
(2)主制御装置は、その検出信号に基づいて、実際の緯糸の到達タイミング(検出値)を求め、求められた検出値を比較器65に対し出力する。
(3)比較器65は、検出値の入力に応じて設定器63から目標の到達タイミング(基準値)を読み出し、その読み出した基準値と前記検出値とを比較する。
(4)比較器65は、その比較の結果として、前記基準値と前記検出値とに偏差が生じている場合は、その偏差量を示す偏差信号を駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力する。偏差が生じていない場合は、偏差量が無い(=0)として、その偏差量=0を示す偏差信号を駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力するか、又は偏差信号を駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bに対し出力しない。
(5)駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、偏差が生じている場合には、その偏差信号に基づき、前記偏差を解消する方向へ対応する駆動モータM1、M2の出力軸を回転駆動し、噴射位置を変更する。詳しくは、駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、前記偏差量に応じた位置調整量を設定器63から読み出し、その読み出した位置調整量分の回転角度だけ対応する駆動モータM1、M2の出力軸を回転させるように、対応する駆動モータM1、M2に対し励磁電流を供給し、対応する駆動モータM1、M2を駆動する。
また、駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、偏差が生じていない場合には、その偏差量=0を示す偏差信号に基づいて、又は偏差信号がないことに基づき、駆動モータM1、M2の出力軸を現在の角度位置に保持するように駆動モータM1、M2の駆動を制御する。
【0083】
以上の(1)〜(5)の処理は、緯入れ毎に行われても良いし、何回かに1回という具合に定期的に行われても良いし、特別に設定された時期に行われても良い。また、予め設定された期間毎に通過検出センサによる検出値の平均値を求め、その平均値と基準値とを比較して偏差の有無を判別するようにしても良い。
【0084】
以上で説明した本実施例の調整方法において、設定器63には、偏差量をパラメータとし、その偏差量に応じた位置調整量が設定されるものとしたが、偏差量と調整前の補助ノズルの噴射位置とをパラメータとし、それらに応じた位置調整量が設定されても良い。例えば、前記偏差量がγであり、調整前の補助ノズルの噴射位置のうちの噴射高さ位置がh1、噴射角度位置がθ1の場合、高さ位置調整量をX、角度位置調整量をαとし、また、前記偏差量が同様にγであっても、調整前の補助ノズルの噴射位置のうちの噴射高さ位置がh2、噴射角度位置がθ2の場合、高さ位置調整量をY、角度調整量をβとする。このようにすれば、位置調整量の設定がより緻密なものとなる。
【0085】
また、偏差量に対応させた位置調整量を予め設定しておき、求められた偏差量に応じて対応する駆動モータM1、M2を駆動するものとしたが、これに代えて、偏差の方向のみに基づいて所定の位置調整量だけ調整するものとしても良い。なお、ここで言う偏差の方向とは、基準値に対する検出値の大小関係であって、+、−のいずれかとなる。そして、この場合、設定器63には、前記の偏差量に応じた位置調整量に代えて、所定の位置調整量のみが設定される。但し、設定器63に設定される位置調整量は、偏差の方向(+、−)に応じて異なる値としても良い。
【0086】
具体的には、前記(5)の制御において、駆動制御器62の高さ位置制御部62aと角度位置制御部62bは、偏差が生じている場合には、その偏差信号の入力に応じて位置調整量を設定器63から読み出し、偏差信号で示されている偏差の方向に対応する方向へ、読み出した位置調整量分の回転角度だけ駆動モータM1、M2の出力軸を回転させるように、駆動モータM1、M2に対し励磁電流を供給し、駆動モータM1、M2を駆動する。そして、前記した(1)〜(4)と、偏差の方向のみを考慮する今回の対応を含む(5)の処理を偏差が解消されるまで繰り返す。
【0087】
ところで、前記では、緯糸の飛走状態の検出を、緯入れ経路の反給糸側に設けられた緯糸フィーラ31の配置位置へ緯糸の先端が到達するタイミングで検出するものとしたが、これに限らず、織幅方向における緯入れ経路の中間の所定位置(以下、単に「中間の所定位置」と言う。)へ緯糸の先端が到達するタイミングを検出することにより行ってもよい。この場合の検出には、反給糸側の緯糸フィーラ31に代えて、測長貯留装置13に付設される解舒センサや、中間の所定位置に設けられる専用センサが用いられる。
【0088】
例えば、解舒センサを用いる場合について、この解舒センサは、図1の実施例で説明した測長貯留装置13に付設されるものであり、測長貯留装置13のドラム15に巻き付けられている緯糸の1巻毎の解舒を検出するものである。より詳しくは、図1で示した測長貯留装置13のドラム15の外周面には、1回の緯入れに必要な長さの緯糸が巻きつけられて、係止ピン16により緯糸が係止されている。そして、緯入れ開始時において、係止ピン16がドラム15の外周面から後退して緯糸の係止を解除すると共にメインノズル21が噴射動作を行うことにより、ドラム15上から緯糸が解舒されて緯入れが行われる。このときに、解舒センサは、解舒された緯糸が解舒センサのセンサ領域を横切った回数を検出し、その信号を緯入れ制御装置43(緯入れ制御部44)等へ出力する。それにより、緯入れ制御装置43は、ドラム15上から所定長さの緯糸が解舒されたことを把握し、それに基づいて再び係止ピン16により緯糸を係止することによって、所定長さ分の緯糸を緯入れする。
【0089】
解舒センサを用いる場合において、例えば、1回の緯入れに必要な長さの緯糸がドラム15に対して4巻であるとすると、実際の緯入れ中に2巻分の緯糸が解舒(検出)されるタイミングは、緯糸の先端部が中間の所定位置に到達することに相当する。そこで、解舒センサからの信号に基づき、例えば主制御装置がそのタイミング(検出値)をクランク角度に基づいて求め、その求められた検出値を比較器65に対し出力するものとすれば良い。また、この場合、設定器63には、前記2巻分の緯糸が解舒されるタイミングの基準値がクランク角度で設定される。そして、比較器65が、前記基準値と、前記検出値とを比較するものとすれば良い。
【0090】
また、専用センサを用いる場合には、中間の所定位置の付近に緯糸の先端部を検出できるようにセンサを設けると共に、設定器63には、そのセンサの位置を緯糸の先端が通過するタイミングの基準値がクランク角度で設定されるものとする。そして、そのセンサからの信号に基づき、前記と同様に、例えば主制御装置が中間の所定位置における緯糸の到達タイミング(検出値)をクランク角度に基づいて求め、比較器65がその検出値と前記基準値とを比較するものとすれば良い。
【0091】
本発明は以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
【0092】
前記実施例では、全ての補助ノズル(全てのサブノズルグループに含まれるサブノズル22及びストレッチノズル23)を調整対象とし、これら全てのサブノズル22及びストレッチノズル23の噴射位置を調整する、すなわち、織機上の全ての補助ノズルを調整対象とするものであったが、これに限らず、本発明による調整装置においては、一部のサブノズル22のみを調整対象とするものとしても良い。
【0093】
例えば、サブノズルグループ単位でそれに含まれる全サブノズル22を調整対象として設定する場合において、緯糸の飛走状態への影響が小さいサブノズルグループ(例えば、織幅方向の中間に位置するサブノズルグループ等)に含まれる全サブノズル22を、調整対象から除外しても良い。また、全部又は一部のサブノズルグループに含まれる一部のサブノズル22のみを調整対象となる補助ノズルとしても良い。この場合でも、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0094】
ストレッチノズル23についても、調整対象となる補助ノズルから除外しても良い。ストレッチノズル23については、緯糸の飛走ではなく、緯入れされた緯糸の伸張状態を維持するためのものであるが、ストレッチノズル23の噴射位置を調整することによる緯糸の伸張状態への影響が小さい製織条件等の変更の場合には、ストレッチノズル23を調整対象から除外しても良い。
【0095】
また、前記実施例では、噴射高さ位置及び噴射角度位置の両者について調整されるものとしたが、これに限らず、前記両者の何れか一方のみ調整されても良い。
【0096】
更に、前記実施例では、2種類の緯糸を緯入れする空気噴射式織機に適用されたが、これに限らず、1種類又は3種類以上の緯糸を緯入れする空気噴射式織機に適用されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0097】
A給糸体
B給糸体
a緯糸
b緯糸
S1緯糸選択信号
M1駆動モータ
M2駆動モータ
【0098】
11緯入れ装置
12給糸体スタンド
13測長貯留装置
14糸巻付けアーム
15ドラム
16係止ピン
17操作器
21メインノズル
22サブノズル
22a空気噴射口
22b段差状部分
22cチューブ
23ストレッチノズル
24ノズルホルダ(支持体)
25リードホルダ
31緯糸フィーラ(通過検出センサ)
32圧力空気源
33圧力調整器
34電磁開閉弁
35圧力調整器
36電磁開閉弁
37電磁開閉弁
41主軸
42エンコーダ
43緯入れ制御装置
44緯入れ制御部
45緯糸選択信号発生部
46入力・設定表示装置
51ラック
52ピニオン
53ピニオン
61a補助ノズル制御装置(制御装置)
61b補助ノズル制御装置(制御装置)
61c補助ノズル制御装置(制御装置)
62駆動制御器
62a高さ位置制御部
62b角度位置制御部
63設定器
64判別器
65比較器
71駆動伝達機構
72昇降体
73ベース部材
74支柱
75ガイド部材
75aガイド溝
76ガイド孔
77ガイド棒
78支持部材
79ブラケット
79a貫通孔
81雌ネジ孔
82抜穴
83雄ネジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入れ経路に沿って配設された多数本のサブノズルを含む補助ノズルを有し、製織中に製織状態の変更を伴って製織が行われる空気噴射式織機において、
前記補助ノズルのうち少なくとも1本を調整対象として設定すると共に、その調整対象の補助ノズルの噴射位置をアクチュエータにより調整可能とし、
製織中における製織状態の変更に伴い、前記調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整することを特徴とする空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整方法。
【請求項2】
前記補助ノズルは、前記サブノズルに加え、これらサブノズルの反給糸側に並設されたストレッチノズルを含むことを特徴とする請求項1に記載の補助ノズルの噴射位置の調整方法。
【請求項3】
前記空気噴射式織機が、予め設定された複数の製織条件に従って製織中に製織条件を変更する織機であって、
前記設定された複数の製織条件の各々に対応させた前記噴射位置を含むデータベースを予め設定しておき、
製織条件の変更に際し、変更後の製織条件に対応する前記噴射位置を前記データベースから選択すると共にその選択された前記噴射位置に基づいて前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載の補助ノズルの噴射位置の調整方法。
【請求項4】
前記空気噴射式織機が前記製織条件として設定された緯糸の選択パターンに従って製織中に糸種の異なる2以上の緯糸を選択的に緯入れする多色緯入れ装置を有する織機であって、
前記データベースには緯入れされる各緯糸の各々に対応させた前記噴射位置が設定されており、
製織中の緯糸の切り換わりに伴い、切り換わり後の緯糸に対応する前記噴射位置に基づいて前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項3に記載の補助ノズルの噴射位置の調整方法。
【請求項5】
前記噴射位置の変更後の前記噴射位置を検出し、その検出値と製織条件に応じて選択された前記噴射位置とを比較し、
両者間に偏差が生じている場合、その偏差を解消するように前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項3又は4に記載の補助ノズルの噴射位置の調整方法。
【請求項6】
前記空気噴射式織機が緯入れされる緯糸の先端の通過を検出する通過検出センサを備え、前記通過検出センサの位置を緯糸の先端が通過する時点の織機主軸の回転角度に関する基準値を予め設定しておき、
前記基準値と実際に緯糸が検出された際の前記回転角度とを比較し、両者間に偏差が生じている場合、その偏差を解消する方向へ前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項1又は2に記載の補助ノズルの噴射位置の調整方法。
【請求項7】
緯入れ経路に沿って配設された多数本のサブノズルを含む補助ノズルを有し、製織中に製織状態の変更を伴って製織が行われる空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置であって、
調整対象としての前記補助ノズルのうち少なくとも1本が、その補助ノズルを支持する支持体に対し、噴射位置を調整可能に支持されると共に、その調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整する駆動装置を含み、
前記駆動装置は、前記調整対象の補助ノズルに連結されたアクチュエータと、製織中における製織状態の変更に伴って前記調整対象の補助ノズルの噴射位置を調整するように前記アクチュエータの駆動を制御する制御装置とを有することを特徴とする空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置。
【請求項8】
前記補助ノズルは、前記サブノズルに加え、これらサブノズルの反給糸側に並設されたストレッチノズルを含むことを特徴とする請求項7に記載の空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置。
【請求項9】
前記空気噴射式織機が、予め織機に設定された複数の製織条件に従って製織中に製織条件を変更する織機であって、
前記制御装置は、前記設定された複数の製織条件の各々に対応させた前記噴射位置を含むデータベースを設定する設定器と、前記データベースから設定された製織条件に対応する前記噴射位置を選択すると共にその選択された前記噴射位置に基づいて前記調整対象の補助ノズルに連結されたアクチュエータの駆動を制御する駆動制御器とを有することを特徴とする請求項7又は8に記載の空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置。
【請求項10】
前記空気噴射式織機が、前記製織条件として設定された緯糸の選択パターンに従って糸種の異なる2以上の緯糸を選択的に緯入れする多色緯入れ装置であり、前記緯糸の選択パターンに従って緯糸選択信号を出力する緯糸選択信号発生部を含む多色緯入れ装置を備えた織機であって、
前記設定器には、緯入れされる各緯糸の各々に対応させた前記噴射位置を含むデータベースが設定されており、
前記駆動制御器は、緯糸選択信号発生部からの緯糸選択信号の入力に伴い、選択される緯糸に応じた補助ノズルの噴射位置の設定値を前記データベースから読み出すことを特徴とする請求項9に記載の空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置。
【請求項11】
前記噴射位置を検出する噴射位置検出センサを備えると共に、
前記制御装置が前記噴射位置を変更した後の前記噴射位置検出センサの検出値と前記製織条件に応じて選択された前記噴射位置とを比較する判別器を備え、
前記駆動制御器は、前記判別器による比較結果として選択された前記噴射位置と前記センサの検出値との間に偏差が生じている場合に、その偏差を解消するように前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項9又は10に記載の空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置。
【請求項12】
前記空気噴射式織機が緯入れされる緯糸の先端の通過を検出する通過検出センサを備え、
前記制御装置は、前記通過検出センサの位置を緯糸の先端が通過する時点の織機主軸の回転角度に関する基準値を設定する設定器と、前記基準値と緯入れ時に前記通過検出センサで緯糸が検出された際の前記回転角度とを比較する比較器と、その比較器による比較結果として両者間に偏差が生じている場合にその偏差を解消する方向へ前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御器とを有することを特徴とする請求項7又は8に記載の空気噴射式織機における補助ノズルの噴射位置の調整装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate