説明

空気式防舷材の空気圧センサ装置及び空気式防舷材

【課題】通常は電池の消耗を抑えて着岸時或いは接舷時において空気式防舷材内部の空気圧の値をリアルタイムに近く頻繁に取得することができる空気式防舷材の空気圧センサ装置及びこれを備えた空気式防舷材を提供する。
【解決手段】空気圧センサ11によって検出した内部空気圧の値としきい値とを比較し、検出値がしきい値よりも小さいときに送信間隔時間t1で検出値を含む情報を送信し、検出値がしきい値以上のときに送信間隔時間t1の1/10以下の短い送信間隔時間t2で検出値を含む情報を送信する。さらに、空気圧センサ装置において、送信間隔時間を時間t1から時間t2に変更したときから時間t1以上の時間t3が経過したときに送信時間間隔を時間t1に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の係留時或いは接岸時に使用する空気式防舷材の空気圧センサ装置及びこれを備えた空気式防舷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶が着岸するとき或いは接舷するときは、船体の損傷を防ぐために操船者は多大な注意を払う必要がある。
【0003】
周知のSTS(Ship-To-Ship)やFPSO(Floating Production Storage and Offloading)等において、原油タンカーなどの2つの船舶を洋上で接舷して船舶間で荷役を行う際には、船舶同士を近距離に近づけて係留しなければならないため、船舶間に配置する防舷材の設計および操船者の操船技術が非常に重要視されている。
【0004】
これに類似した技術として、特開2005−212693号公報に開示される操船支援装置、特開2006−162292号公報に開示される操船支援システム、特開平5−233999号公報に開示される船舶安全管理支援装置、特開2005−208011号公報に開示される監視システム、特開2003−276677号公報に開示される船舶の離着支援装置、特開2002−162467号公報に開示される監視方法、特開平9−35200号公報に開示される移動体監視システム等が知られている。
【0005】
また、着岸や接舷を容易に行うためのシステムとして特許文献1(特許4221054号公報)に開示されるシステムが知られている。このシステムでは、岸壁と船体との間及び船体同士の間に、例えば特許文献2(特開平8−043226号公報)や特許文献3(特開平9-318478号公報)に開示されるような空気式防舷材を配置し、着岸時或いは接舷時における空気式防舷材内部の空気圧の値を検出してこの空気圧の値に基づいて容易に操船を行えるようにしている。
【0006】
この空気式防舷材に設けられている空気圧センサ装置としては、外部から電波によって駆動電力の供給を受けるタイプと内蔵電池によって駆動するタイプがあり、電波を用いて検出結果の情報を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4221054号公報
【特許文献2】特開平8−043226号公報
【特許文献3】特開平9-318478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内蔵電池によって駆動する空気圧検出装置を備えた空気式防舷材では、検出結果情報の送信間隔時間が予め設定されているのが一般的である。この送信間隔時間は、必要な検出結果情報を得ることができ且つ電池の消耗を必要最小限に抑えるように設定されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献7に開示されているシステムに用いられる空気式防舷材においては、着岸時或いは接舷時には空気式防舷材に加わる圧力が過度に増大しないように、空気式防舷材内部の空気圧の値をリアルタイムに近く頻繁に取得して、空気式防舷材を損傷するような圧力或いは自動リーク装置によって空気式防舷材内部の空気をリークさせるような圧力が加わらないようにすることが好ましい。この自動リーク装置は、空気式防舷材に所定のしきい値以上の圧力が加わったときに空気式防舷材が破壊しないように内部の空気を外部に排出するための装置である。このリーク装置が作動して内部の空気が外部に排出されてしまうと、通常の空気式防舷材の機能を発揮しなくなってしまう。
【0010】
したがって、本発明の目的は、通常は電池の消耗を抑えて着岸時或いは接舷時において空気式防舷材内部の空気圧の値をリアルタイムに近く頻繁に取得することができる空気式防舷材の空気圧センサ装置及びこれを備えた空気式防舷材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、ゴムを主体として構成された袋体と、該袋体の側部に設けられた口金とを有する空気式防舷材本体の内部に装着され、該空気式防舷材本体の内部空気圧を空気圧センサによって検出し、検出した内部空気圧の情報を外部に伝送する空気式防舷材の空気圧センサ装置において、予め設定された空気圧しきい値を記憶しているしきい値記憶手段と、前記空気圧センサによって検出した内部空気圧の検出値と前記しきい値とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果に基づいて、前記検出値が前記しきい値よりも小さいときに前記検出値を含む情報を送信間隔時間t1で送信し、前記検出値が前記しきい値以上のときに前記送信間隔時間t1の1/10以下の短い送信間隔時間t2で前記検出値を含む情報を送信する送信手段とを備えた。
【0012】
さらに、前記空気圧センサ装置において、送信間隔時間を時間t1から時間t2に変更したときから前記時間t1以上の予め設定されている時間t3が経過したときに前記送信時間間隔を前記時間t1に変更して前記検出値を含む情報を送信する手段を備えた。
【0013】
本発明の空気圧センサ装置によって、着岸時や接舷時に空気式防舷材に加わる圧力が増加すると空気圧検出結果情報の送信間隔時間が時間t2に設定されて短くなり、通常よりも頻繁に空気圧検出結果情報を取得することができる。さらに、送信間隔時間を時間t1から時間t2に変更したときから時間t3が経過すると空気圧検出結果情報の送信間隔時間が通常の送信間隔時間t1に戻る。これにより、着岸或いは接舷が終了して空気式防舷材に加わる圧力が定常値に戻った後は、電池の消費電力を必要最小限とすることができる。
【0014】
本発明は、上記の空気圧センサ装置を備えた空気式防舷材を構成することにより、内部空気圧が増加した際に通常よりも頻繁に空気圧検出結果情報を取得することができる空気式防舷材を構成した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空気圧センサ装置及び空気式防舷材は、検出対象となる空気圧或いは防舷材の内部空気圧が増加した際に、通常よりも頻繁に空気圧検出結果情報を取得することができ、空気圧の値をリアルタイムに近く頻繁に取得することができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における空気式防舷材を示す外観図
【図2】船体着岸時の空気式防舷材の使用例を示す図
【図3】2つの船体の接舷時における空気式防舷材の使用例を示す図
【図4】本発明の一実施形態における空気圧センサ装置の電気系回路を示すブロック図
【図5】本発明の一実施形態における空気圧センサ装置の消費電流測定結果を示す図
【図6】本発明の一実施形態における検出空気圧と情報送信間隔時間との関係を示す図
【図7】本発明の一実施形態における送信時間間隔を説明する図
【図8】本発明の一実施形態におけるコントローラの詳細動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態における空気式防舷材を示す外観図である。図において、1は空気式防舷材で、例えば、直径約1〜2m、長さ約3〜4mのゴムチューブの両端を密閉した俵形状を成す本体1Aと、本体1Aの一端に設けられた口金1Bからなる空気の充填口を有し、この口金(充填口)1Bを介して内部に空気が所定内圧まで充填されている。さらに、口金1Bの近傍には、本体1Aの内部空気圧の値を検出してその検出結果の情報を電磁波によって送信する空気圧センサ装置10が設けられている。
【0019】
この空気式防舷材1は、例えば、図2に示すように船舶100が岸壁200に着岸するときのクッション材として用いられたり、図3に示すように海上において一方の船舶100を他方の船舶300に接舷させるときのクッション材として用いられる。このように着岸するとき或いは接舷するときには、岸壁200と船舶100との間の距離或いは船舶100,200の船体間の距離が安定するまでの間に、空気式防舷材1に圧力が加わるので、空気式防舷材1の内部空気圧が短時間の内に増大して再び通常の圧力に戻る。本実施形態における空気圧センサ装置10は、上記のように空気式防舷材1の内部空気圧が増大したときには短い送信時間間隔t2で検出した空気圧値の情報を送信することによってリアルタイムに近い状態で内部空気圧値の情報を得ることができ、空気式防舷材1の内部空気圧が通常の範囲内の値であるときは所定の送信時間間隔t1で検出した空気圧値の情報を送信することによって電池の消耗を必要最小限にしている。
【0020】
本実施形態における空気圧センサ装置10は、図4の電気系回路ブロック図に示すように、空気圧センサ11と、アナログ/ディジタル(以下、A/Dと称する)変換器12、コントローラ13、高周波回路14、アンテナ15、電池16から構成されている。
【0021】
空気圧センサ11は、例えば静電容量式圧力センサ、半導体圧力センサ、圧電式圧力センサ等の何れかからなり、空気式防舷材本体1Aの内部空気圧の値に対応して電圧が変化するアナログ電気信号を出力する。
【0022】
A/D変換器12は、空気圧センサ11から出力されたアナログ信号を入力して、このアナログ信号の電圧値をディジタル値に変換して、そのディジタルデータを出力する。
【0023】
コントローラ13は、周知のCPU及びディジタル/アナログ(以下、D/Aと称する)変換器から構成され、CPUは電源が供給されて駆動すると、所定の時間間隔でA/D変換器12を介して空気圧センサ14から出力されるアナログ信号をディジタルデータとして入力し、これに基づく空気式防舷材1内部の空気圧値の情報をD/A変換器を介して高周波回路14に出力する。
【0024】
高周波回路14は、例えば300MHzの搬送波を、コントローラ13から入力した空気圧値の情報を表す信号に基づいて変調し、これをアンテナ15に供給してアンテナ15から電波として送信する。
【0025】
電池16は、空気圧センサ11と、A/D変換器12、コントローラ13、高周波回路14に駆動電力を供給する。電池16から電力供給対象となる各回路に流れる電流は、空気圧センサ11によって空気圧を検出するときと、この検出結果を送信するときに通常よりも大きくなる。すなわち、図5に示すように、空気圧センサ11によって空気圧を検出する時間T1(=4.64ms)の間には電池16から駆動対象の電気回路に流れる電流は約0.8〜1.8mAであり、検出結果を送信する時間T2(=1.6ms)の間には電池16から駆動対象の電気回路に流れる電流は約3.8〜6.3mAである。
【0026】
また、コントローラ13は、予め設定された空気圧しきい値P1が記憶されたメモリを有しており、空気圧センサ11によって検出された内部空気圧の検出値と空気圧しきい値P1とを比較し、比較の結果に基づいて、図6及び図7に示すように、空気圧検出値がしきい値P1よりも小さい状態Aのときに空気圧検出値を含む情報を送信間隔時間t1で送信し、空気圧検出値がしきい値P1以上の状態Bのときに送信間隔時間t1の1/10以下の短い送信間隔時間t2で空気圧検出値を含む情報を送信する。本実施形態では、通常、空気式防舷材1の内部空気圧は50kPaに設定しており、55kPa(=P1)以上になると送信間隔時間をt2に変更している。また、図6における、空気圧値P2は空気式防舷材1の内部の空気を外部にリークするための圧力上限値であり、空気式防舷材1には安全弁(図示せず)が設けられており、この安全弁は、内部空気圧の値が175kPa(=P2)を超えた場合に働くようになっている。
【0027】
さらに、コントローラ13は、送信間隔時間を時間t1から時間t2に変更したときから時間t1以上の予め設定されている時間t3が経過したときに送信時間間隔を時間t1に変更して空気圧検出値を含む情報を送信する。なお、本実施形態では、時間t1を60秒、時間t2を1秒、時間t3を5分に設定している。
【0028】
次に、コントローラ13の動作の詳細を図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0029】
コントローラ13は、動作を開始すると、コントローラ13に備わる第2タイマーを初期化するとともに第2タイマーによる計時を停止する(S1)。次いで、コントローラ13は情報の送信間隔時間taを時間t1に設定し(S2)、第1タイマーを初期化するとともに第1タイマーによる計時を開始する(S3)。さらにコントローラ13は、空気圧センサ11によって空気式防舷材1の内部空気圧値を検出し(S4)、この検出結果の空気圧値を含む検出空気圧値情報を高周波回路14を介して送信する(S5)。
【0030】
この後、コントローラ13は、送信間隔時間taが時間t1に設定されているか否かを判定する(S6)。この判定の結果、送信間隔時間taが時間t1に設定されていないときは、コントローラ13は、送信間隔時間taが時間t2に設定されているものとして第2タイマーの計時時間が時間t3以上であるか否かを判定し(S7)、第2タイマーの計時時間が時間t3以上のときは前記S1の処理に移行し、第2タイマーの計時時間が時間t3に満たないときは前記S3の処理に移行する。
【0031】
また、前記S6の判定の結果、送信間隔時間taが時間t1に設定されているとき、及び前記S7の判定の結果、第2タイマーの計時時間が時間t3に満たないときは、コントローラ13は、検出空気圧値が空気圧値P1より小さいか否かを判定する(S8)。この判定の結果、検出空気圧値が空気圧値P1以上のときは、コントローラ13は、送信間隔時間taを時間t2に設定して(S9)、第2タイマーを初期化するとともに第2タイマーによる計時を開始する(S10)。
【0032】
この後、コントローラ13は、第1タイマーの計時時間が時間taに等しい或いは時間ta以上であるか否かを判定する(S11)。この判定の結果、第1タイマーの計時時間が時間ta以上になったときに前記S3の処理に移行する。
【0033】
以上のように、本実施形態の空気式防舷材1によれば、着岸時や接舷時に空気式防舷材1に加わる圧力が増加すると空気圧センサ装置10による空気圧検出結果情報の送信間隔時間が時間t2に設定されて短くなり、通常よりも頻繁に空気圧検出結果情報を取得することができる。さらに、送信間隔時間を時間t1から時間t2に変更したときから時間t3が経過すると空気圧検出結果情報の送信間隔時間が通常の送信間隔時間t1に戻る。これにより、着岸或いは接舷が終了して空気式防舷材1に加わる圧力が定常値に戻った後は、電池16の消費電力は必要最小限とされる。また、本実施形態の空気圧センサ装置10によっても、検出対象となる空気圧が増加した際に、通常よりも頻繁に空気圧検出結果情報を取得することができ、空気圧の値をリアルタイムに近く頻繁に取得することができるという利点を有する。
【符号の説明】
【0034】
1…空気式防舷材、1A…空気式防舷材本体、1B…口金、10…空気圧センサ装置、11…空気圧センサ、12…A/D変換器、13…コントローラ、14…高周波回路、15…アンテナ、16…電池、100,300…船舶、200…岸壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを主体として構成された袋体と、該袋体の側部に設けられた口金とを有する空気式防舷材本体の内部に装着され、該空気式防舷材本体の内部空気圧を空気圧センサによって検出し、検出した内部空気圧の情報を外部に伝送する空気式防舷材の空気圧センサ装置において、
予め設定された空気圧しきい値を記憶しているしきい値記憶手段と、
前記空気圧センサによって検出した内部空気圧の検出値と前記しきい値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果に基づいて、前記検出値が前記しきい値よりも小さいときに前記検出値を含む情報を送信間隔時間t1で送信し、前記検出値が前記しきい値以上のときに前記送信間隔時間t1の1/10以下の短い送信間隔時間t2で前記検出値を含む情報を送信する送信手段とを備えている
ことを特徴とする空気式防舷材の空気圧センサ装置。
【請求項2】
前記送信間隔時間を時間t1から時間t2に変更したときから前記時間t1以上の予め設定されている時間t3が経過したときに前記送信時間間隔を前記時間t1に変更して前記検出値を含む情報を送信する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の空気式防舷材の空気圧センサ装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の空気圧センサ装置を備えていることを特徴とする空気式防舷材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−266365(P2010−266365A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118740(P2009−118740)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】