説明

空気浄化方法及びその装置

【課題】空気中の浮遊粒子、特に油分が低い油性の臭気成分を空気中から容易に除去することができる空気浄化方法及びその装置を提供する。
【解決手段】浮遊粒子を含む空気1aと界面活性剤の水溶液3とから気泡5を生成し、浮遊粒子を気泡5の表面に吸着させることにより除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の浮遊粒子を除去する空気浄化方法及びその装置に関し、詳しくは空気中に浮遊する粉塵、細菌、花粉及び油分が低い油性の臭気物質などの浮遊粒子を、界面活性剤の水溶液の泡に吸着させて除去する空気浄化方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電気集塵装置、ミストコレクター及び活性炭空気浄化装置を適宜な順序で組み合わせることにより、空気中に浮遊する油性の臭気成分である高・低粘度タールを効率的に捕集・除去することができる排煙吸着空気清浄方法及び装置が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、この排煙吸着空気浄化装置は、油性の臭気成分の油分が低いと浄化効果が低下してしまうという問題があった。また、油性の臭気成分以外の浮遊粒子、例えば粉塵、細菌、花粉などを空気中から容易に除去することができないという問題もあった。
【特許文献1】特許第2958735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、空気中の浮遊粒子、特に油分が低い油性の臭気成分を空気中から容易に除去することができる空気浄化方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、浮遊粒子を含む空気と界面活性剤の水溶液とから気泡を生成し、浮遊粒子を気泡表面に吸着させることにより前記空気から除去することを特徴とする空気浄化方法である。
【0006】
その界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤である。浮遊粒子は、粉塵、細菌及び花粉から選ばれるうち少なくとも1つである。
【0007】
浮遊粒子が、油性の臭気成分である場合には、気泡表面に吸着された油性の臭気成分を界面活性剤で乳化する。また、界面活性剤で乳化された油性の臭気成分に含まれる有機溶剤を、乳酸菌ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus Lactis)で分解処理する。
【0008】
上記の空気浄化方法を適用する本発明の空気浄化装置は、浮遊粒子を含む気体と界面活性剤の水溶液との混合物を生成する混合手段の上方に有孔板を配置して、その混合物を有孔板に吹きつけて気泡を生成させるようにしたことを特徴とし、この有孔板の下流側に除湿機又は活性炭を配置する。
【0009】
また、この空気浄化装置は、浮遊粒子が油性の臭気物質の場合には、界面活性剤で乳化された油性の臭気成分を含む液体を、乳酸菌ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus Lactis)の培養基の上に流す処理装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気浄化方法によれば、浮遊粒子を含む空気と界面活性剤の水溶液とから気泡を生成して浮遊粒子を気泡表面に吸着させて空気中から除去するようにしたため、空気中の浮遊粒子、特に油分が低い油性の臭気成分を空気中から容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の実施形態からなる空気浄化装置を図1及び図2に示す。
【0013】
この空気浄化装置は、浮遊粒子を含む空気1aをブロワー2により吸引し、混合手段4において界面活性剤の水溶液(以下、単に「水溶液」という。)3と混合してから、有孔板であるパンチングメタル6に吹きつけて気泡5を生成させるものである。
【0014】
ブロワー2の吸入口には、浮遊粒子を含む空気1aを導入するダクト9が接続されており、出口側には空気浄化装置下部に通じる導風管10が設けられている。この浮遊粒子は、油性の臭気成分以外のものとしては粉塵、細菌及び花粉が、油性の臭気成分としてはキシレン、トルエン又は樹脂ガスが、それぞれ例示される。空気浄化装置内の底部には水溶液3が貯留しており、それに浸るようにして混合手段4が設置されている。
【0015】
混合手段4は、開口部11を有する支持板12からなり、その開口部11の上部空間が導風管10の出口から開口部11の上方へかけて徐々に狭くなるように斜板13が取り付けられている。
【0016】
支持板12の上面及び上方には、内面が円弧状に形成された複数の反転板14が設置されている。それらの反転板14の上方には、パンチングメタル6、第1〜第3泡切板7A〜7C及び除湿機8が上に向かって順に配置されている。
【0017】
パンチングメタル6には、約1〜5mmの大きさの多数の小孔15が形成されており、反転板14を包むように蓋状に取り付けられている。また、泡切板7A〜7Cは、複数の金属製の平板を笠状に組み合わせて構成される。
【0018】
このような構造を有する空気浄化装置の作用を以下に示す。
【0019】
ダクト9を通じてブロワー2に吸引された浮遊粒子を含む空気1aは、導風管10を経由して反転板14へ向かって流れる。このとき通過する開口部11の上部空間は、導風管10の出口から開口部11に向かって徐々に狭くなるため、浮遊粒子を含む空気1aは流速が早くなると同時に圧力が低下するので、図3に示すように、開口部11から水溶液3を吸い込んで気液混合物16となる。この気液混合物16は、反転板14に衝突し、その内面に沿って移動することにより方向転換されてパンチングメタル6の底面に吹きつけられる。
【0020】
反転板14の内面形状や設置位置は、気液混合物16がパンチングメタル6の底面に均等に吹き付けるように設定されることが望ましく、例えば反転板14の一部を変形させて気液混合物16の流れる方向を調整してもよい。
【0021】
パンチングメタル6に吹きつけられた気液混合物16は、界面活性剤が水の表面張力を下げて水の表面を広がりやすくしているため、小孔15を通過する際に気泡5を生成する。このように気泡5を生成することで、水溶液3の接触表面積が大きくなるため、浮遊粒子が気泡5の表面に吸着することにより除去される。また、浮遊粒子が油性の臭気成分の場合には、気泡5に吸着してから更に界面活性剤と反応して乳化されるため、油分が少ない場合でも容易に除去することができる。
【0022】
気泡5の生成が泡切板7Aの下端部付近で収まるように、界面活性剤にはカチオン性やアニオン性(イオン性)のものよりも気泡が生成しにくいノニオン性(非イオン性)のもの、例えばポリオキシエチレンエーテルやポリアルキレンアルキルエーテルが好ましく用いられる。なお、このノニオン性の界面活性剤でも気泡5の生成量が多すぎる場合には、例えばシリコンエマルジョン系の消泡剤を添加して生成量を調整する。
【0023】
また、浮遊粒子が細菌の場合には、空気浄化装置内での細菌の繁殖を抑えるため、水溶液3にあらかじめ抗菌剤(例えば、銀イオン系、亜鉛イオン系又は有機系など)や、カルキ系の消毒薬を添加しておくとよい。
【0024】
気泡5は一定の時間が経過すると潰れて、浮遊粒子が混合する水溶液(浮遊粒子が油性の臭気成分の場合にはエマルション)17となって下方へ落下して滞留する。また、浮遊粒子が除去された空気1bは、上方へ流れる間に第1〜第3泡切板7A〜7Cに衝突して水切りされ、水分19が下方へ落下する。そして、除湿機8で乾燥された後に排気口18から外部へ放出される。なお、浮遊粒子が油性の臭気成分の場合には、除湿機8の代わりに活性炭フィルターを配置して残存する臭気成分を吸着することが望ましい。
【0025】
以上のように、空気に含まれる浮遊粒子は、界面活性剤の水溶液から生成した気泡表面に吸着させることにより効率的に除去することができる。また、浮遊粒子が油分が低い油性の臭気成分の場合でも、気泡表面に吸着させ、更に乳化されるため容易に除去することが可能である。
【0026】
また、本空気浄化装置は、フィルター類が少なく圧損の低下が小さいため、ブロワーを小型化して運転コストを下げることができる。
【0027】
油性の臭気成分を含む空気の浄化により発生したエマルション17を含む溶液(以下、単に「処理溶液」という。)に、トルエンやキシレンなどの有機溶剤が残存する場合には、そのまま外部環境へ放出することはできない。そのため、処理溶液中の有機溶剤を分解して無害化することが必要となる。
【0028】
図4は、本発明の空気浄化装置で発生する処理溶液の処理装置である。
【0029】
この処理装置は、筐体20内に収められた乳酸菌ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus Lactis)(以下、単に「乳酸菌」という。)の培養基21に、処理溶液を繰り返し流すことにより含有する有機溶剤を分解するものである。
【0030】
培養基21は、木片、腐葉土又は木炭に乳酸菌を植え付けたものであり、上下をフィルター22により固定されている。この培養基21の上方には、処理溶液を培養基21に向けて散布するスプレーノズル28が複数設置されている。
【0031】
培養基21とスプレーノズル28を収納する筐体20の壁23は断熱材から構成され、その内部は温度モニター24の測定値を基にヒーター25の加熱温度を制御する制御手段(図示せず)により、乳酸菌の働きが活発になる温度(例えば、約30〜40℃)に保持されるようになっている。
【0032】
筐体20の外部には、筐体20の下部とスプレーノズル28を接続する循環ポンプ26と循環パイプ27が設置されている。
【0033】
本処理装置の作用を以下に説明する。
【0034】
空気浄化装置から吸水管29を通じて筐体20内へ導入され下部に貯留した処理溶液31は、循環ポンプ26と循環パイプ27を通じて上部へ汲み上げられ、スプレーノズル28から培養基21に向かって散布される。散布された処理溶液31に含まれる有機溶剤は、培養基21の表面を伝わって流れ落ちる間に乳酸菌の働きにより分解される。
【0035】
この工程を所定の時間(例えば、48〜100時間程度)の間、連続的又は間欠的に行った後に、処理溶液31はドレン管30を通じて外部へ排出される。
【0036】
このような処理装置を空気浄化装置に備えることにより、油性の臭気成分を含む空気を浄化する際に発生する処理溶液に有機溶剤が残存する場合でも無害化することができるため、外部環境へ放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態からなる空気浄化装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる空気浄化装置の側部断面図である。
【図3】図1における空気浄化装置の下部拡大断面図である。
【図4】本発明の空気浄化装置が備える処理装置の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1a 浮遊粒子を含む空気
3 界面活性剤の水溶液
4 混合手段
5 気泡
6 パンチングメタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊粒子を含む空気と界面活性剤の水溶液とから気泡を生成し、浮遊粒子を気泡表面に吸着させることにより前記空気から除去する空気浄化方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤である請求項1に記載の空気浄化方法。
【請求項3】
前記浮遊粒子が、粉塵、細菌及び花粉から選ばれる少なくとも1つである請求項1又は2に記載の空気浄化方法。
【請求項4】
前記浮遊粒子が、油性の臭気成分であって、気泡表面に吸着された油性の臭気成分を界面活性剤で乳化する請求項1又は2に記載の空気浄化方法。
【請求項5】
界面活性剤で乳化された油性の臭気成分に含まれる有機溶剤を、乳酸菌ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus Lactis)で分解処理する請求項4に記載の空気浄化方法。
【請求項6】
浮遊粒子を含む気体と界面活性剤の水溶液との混合物を生成する混合手段の上方に有孔板を配置して、その混合物を有孔板に吹きつけて気泡を生成させるようにした空気浄化装置。
【請求項7】
前記有孔板の下流側に除湿機又は活性炭を配置した請求項6に記載の空気浄化装置。
【請求項8】
前記浮遊粒子が、油性の臭気物質であって、界面活性剤で乳化された該油性の臭気成分を含む液体を、乳酸菌ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus Lactis)の培養基の上に流す処理装置を備えた請求項7に記載の空気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−161573(P2008−161573A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356367(P2006−356367)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000129482)株式会社クラウド (8)
【Fターム(参考)】