説明

空気清浄機

【課題】 空気中の粗塵をフィルターによらずに捕集でき、しかも、サイクロン装置のような騒音を伴うことのない空気清浄機を提供する。
【解決手段】 空気清浄機1の内部にはフィルターユニット20が塵埃捕捉面を垂直にする形で配置され、その前面はフロントパネル11で覆われている。フロントパネル11とフィルターユニット20の間の空間は通風路13となる。フロントパネル11の下部には通風路13に室内空気を導入する吸込口40が設けられ、吸込口40の奥には気流を上方に急転回させる急転回部43が形成されている。吸込口40よりも上の位置には、上昇する気流から離脱した粗塵Pを受けるダストボックス50が配置されている。吸込口40は気流を斜め下方向に誘導するものであり、吸込口40を構成する上下の導風板41、42のうち下側の導風板42は、正面から見て下方に凸に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内空気から塵埃やタバコの煙などの汚染物質を除去する空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
現代生活において、家屋には、各所の開口部を通じ、花粉や煤塵など、健康に影響をもたらす種類の微粒子が侵入する。そのため、空気清浄機のニーズは年々高まる傾向を見せている。
【0003】
空気清浄機は室内空気を循環させつつ、空気中に浮遊する塵埃や汚染物質をフィルターで捕集する。空気中に浮遊する物体にはその大きさにおいて様々なレベルのものがあり、大きなものから順に、段階的に捕集するのが通常の構成である。その中でも綿埃など「粗塵」と呼ばれるレベルのものは、ネット状の「プレフィルター」で捕集することが多かった。
【0004】
空気清浄機を長期間使用していると、フィルターに粗塵が堆積し、悪臭が発生したり、通気抵抗の増加により捕集能力が低下したりする。このため、粗塵の堆積度合いを見計らってフィルターを清掃し、場合によってはフィルターを交換する必要があった。そこで、フィルター清掃の手間を少なくするため、粗塵の捕集をサイクロン装置で行おうという考えが生まれてきた。特許文献1にサイクロン装置を備えた空気清浄機の例を見ることができる。
【特許文献1】特開2002−349918号公報(第3頁−第4頁、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイクロン装置において、塵埃捕集能力を追求しようと思えば、大量の空気を吸い込み、高速で旋回させる必要があり、騒音レベルが高まることを防げなかった。掃除機のように使用時間が限られているものであればまだしも、空気清浄機は長時間連続運転するものであり、騒音レベルの高さは商品として致命的である。本発明はこの点に鑑みなされたものであり、空気中の粗塵をフィルターによらずに捕集でき、しかも、サイクロン装置のような騒音を伴うことのない空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために本発明は、室内空気を循環させる送風機と、前記室内空気の循環気流中に配置され、垂直な塵埃捕捉面で空気中の塵埃を捕捉するフィルターユニットと、このフィルターユニットの前面を覆うフロントパネルとを備えた空気清浄機において、前記フィルターユニットとフロントパネルの間の通風路に室内空気を導入する吸込口をフロントパネルの下部に設け、この吸込口の奥には気流を上方に急転回させてフィルターユニット前面に誘導する急転回部を形成するとともに、フロントパネルにはさらに、フィルターユニットに吸い込まれる気流から離脱した粗塵を受けるダストボックスを、吸込口よりも上の位置に配置したことを特徴としている。
【0007】
この構成によると、上方に急転回した気流は、フィルターユニットに沿って上方に直線的に進みながら、少しずつフィルターユニットに吸い込まれて行く。気流はフィルターユニットに吸い込まれるとき直角に向きを変えるが、気流に含まれる粗塵は、慣性により、通風路の上部にまで進んだ後、フロントパネルとフィルターユニットの間に形成されている旋回流によって、フィルターユニットに吸い込まれる気流から離脱し、重力によってダストボックスに落下する。これにより、気流中の粗塵をフィルターユニットに吸着させることなくダストボックスに捕集することができる。サイクロン装置のように空気を旋回させ続けないので騒音レベルが低く、室内で連続使用する空気清浄機に適するものである。
【0008】
(2)また本発明は、上記構成の空気清浄機において、前記吸込口が、室内空気を斜め下方向に誘導する上下の導風板により構成されることを特徴としている。
【0009】
この構成によると、気流は斜め下に進んでから鋭角に転回して上昇することになり、気流の進入速度が増して粗塵の慣性力が増し、粗塵分離性能を向上させることができる。
【0010】
(3)また本発明は、上記構成の空気清浄機において、下側の導風板が正面から見て下方に凸に湾曲していることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、吸込口の中で送風機に近い部位と遠い部位との間の圧力が均一化され、気流は正面から見て真っ直ぐに進むため進入速度大となり、粗塵分離性能を向上させることができる。
【0012】
(4)また本発明は、上記構成の空気清浄機において、前記吸込口の断面積と前記フィルターユニットの最上流部における通風路の断面積とが略同一であることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、吸込口からの気流はフィルターユニット最上流部における通風路を真っ直ぐに通り抜けるため進入速度大となり、粗塵分離性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、室内空気をフロントパネルの下部の吸込口から吸い込んだ後、急激に上方に転回させ、その後気流の速度が落ちたところで気流から分離した粗塵をダストボックスで受け止めるようにしたものであり、空気中の粗塵をフィルターユニットに吸着させることなくダストボックスに捕集することができる。そしてこの粗塵分離メカニズムはサイクロン装置ほど騒音レベルが高くなく、空気清浄機の商品価値を損なうものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の一実施形態を図1−図3に基づき説明する。図1は空気清浄機の正面図、図2は空気清浄機の上面図、図3は空気清浄機の垂直断面図である。
【0016】
空気清浄機1の外殻部分は、平らな箱を垂直に立てた形の本体10と、本体10の前面に着脱自在に取り付けられるフロントパネル11を主たる構成要素とする。本体10の正面側にはフィルターユニット収納凹所12が形成され(図3参照)、その中に、脱臭フィルター21と集塵フィルター22を前後に重ねた構成のフィルターユニット20が収納される。脱臭フィルター21は活性炭などにより空気中の臭い成分を吸着し、集塵フィルター22は空気中の細塵を濾過する。フィルターユニット20は塵埃捕捉面が垂直になるように保持され、その状態で、フロントパネル11によって前面を覆われている。
【0017】
フィルターユニット収納凹所12の背後にはフィルターユニット20を通じて空気を吸引する送風機30が設置されている。送風機30は本体10の内部に形成したファンケーシング31と、ファンケーシング31の内部に配置されたシロッコファン32と、シロッコファン32を回転させる電動機33からなる。本体10の上面にファンケーシング31の吹出口34が開口する。吹出口34には格子状のグリル35(図2参照)が設けられている。
【0018】
フロントパネル11とフィルターユニット20の間の空間は、フィルターユニット20に気流を届けるための通風路13となる。フロントパネル11の下部には、通風路13に室内空気を導入する吸込口40が形成されている。吸込口40は上下の導風板41、42により構成される。導風板41、42は斜め下に向かって下がっており、室内空気は斜め下方向に誘導される。
【0019】
下の導風板42は、図1に見られるように、正面から見ると下方に凸に湾曲した形状となっている。このため吸込口40は、正面から見るとあたかも上弦の月のような形状を呈していて、上下方向の幅が、中央において広く、左右両端において狭くなっている。
【0020】
吸込口40の奥には、気流を上方に急転回させる急転回部43が形成されている。急転回部43に続く通風路13の断面積は、フィルターユニット20の最上流部においては、吸込口40の断面積と略同一になっている。
【0021】
フロントパネル11には、吸込口40よりも上の位置にダストボックス50が配置される。ダストボックス50は通風路13に引き出しのように挿入されるものであり、上面が開口し、正面にはつまみ51が設けられている。急転回部43で急転回した気流はダストボックス50とフィルターユニット20の間を通って上昇する。ダストボックス50とフィルターユニット20の間はそれより上の通風路13より幅が狭く、ボトルネックを形成している。
【0022】
空気清浄機1の動作は次の通りである。送風機30を駆動するとフィルターユニット20の背後に負圧が生じる。これにより、吸込口40から吸い込まれ、フィルターユニット20を通過して吹出口34から吹き出される気流が形成される。吸込口40から吸い込まれた気流は、斜め下に誘導された後、急転回部43で急激に転回し、上昇して通風路13に入る。
【0023】
通風路13に入った気流は、フィルターユニット20に沿って上方に直線的に進みながら、少しずつフィルターユニット20に吸い込まれて行く。気流はフィルターユニット20に吸い込まれるとき直角に向きを変えるが、気流に含まれる粗塵Pは、慣性によりそのまま上方への直進を続ける。通風路12の上部に達した粗塵Pは、前記ボトルネックよりも上の通風路13に形成されている旋回流によって、フィルターユニット20に吸い込まれる気流から離脱し、重力によってダストボックス50に落下する。これにより、空気中の粗塵Pをフィルターユニット20に吸着させることなくダストボックス50に捕集することができる。
【0024】
そして、吸込口40は気流を斜め下方向に誘導するので、気流は斜め下に進んでから鋭角に転回して上昇することになり、気流の進入速度が増して粗塵Pの慣性力が増し、粗塵分離性能が向上する。
【0025】
また、下側の導風板42が正面から見て下方に凸に湾曲しているので、吸込口40の中で送風機30に近い部位と遠い部位との間の圧力が均一化され、気流は正面から見て真っ直ぐに進むため進入速度大となり、粗塵分離性能が向上する。
【0026】
さらに、吸込口40の断面積とフィルターユニット20の最上流部における通風路13の断面積とが略同一であるため、吸込口40からの気流はフィルターユニット20の最上流部における通風路13を真っ直ぐに通り抜けることとなって進入速度大となり、粗塵分離性能が向上する。
【0027】
粗塵Pを分離した気流はフィルターユニット20を抜けて送風機30に吸い込まれる。その過程で空気中の臭い成分は脱臭フィルター21に吸着され、細塵は集塵フィルター22に捕集される。フィルターユニット20で清浄化された空気は吹出口34から吹き出される。これにより室内には、吸込口40から斜め下方向に吸い込まれ、吹出口34から上向きに吹き出されるという、気流の循環が生じる。
【0028】
空気清浄機1の運転を続けていると、ダストボックス50に次第に粗塵Pが集積する。粗塵集積量が多くなったら空気清浄機1の運転を止め、ダストボックス50を取り出して中の粗塵Pを捨てる。空になったダストボックス50を空気清浄機1にセットし、運転を再開する。なおダストボックス50は、粗塵集積量が一目で判るよう、少なくとも一部を透明材料で形成し、内部を透視できるようにしておくとよい。
【0029】
空気清浄機1は、気流を急転回させて粗塵Pを分離するという分離メカニズムにより、空気中の粗塵Pを捕集するのに十分な分離性能を得ることができる。サイクロン装置のように空気を旋回させ続けないので騒音レベルが低く、室内で連続使用する空気清浄機に適するものである。また粗塵Pの捕集はフロントパネル11の背後で行われるものであり、フロントパネル11は空気清浄機に通常設けられる部材なので機構的に無理がなく、デザイン的に違和感はない。
【0030】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は室内空気を清浄化する空気清浄機、空気調和機、電気セラミックファンヒータ、石油ファンヒータなどに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】空気清浄機の正面図
【図2】空気清浄機の上面図
【図3】空気清浄機の垂直断面図
【符号の説明】
【0033】
1 空気清浄機
10 本体部
11 フロントパネル
13 通風路
20 フィルターユニット
30 送風機
40 吸込口
41、42 導風板
43 急転回部
50 ダストボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気を循環させる送風機と、前記室内空気の循環気流中に配置され、垂直な塵埃捕捉面で空気中の塵埃を捕捉するフィルターユニットと、このフィルターユニットの前面を覆うフロントパネルとを備えた空気清浄機において、
前記フィルターユニットとフロントパネルの間の通風路に室内空気を導入する吸込口をフロントパネルの下部に設け、この吸込口の奥には気流を上方に急転回させてフィルターユニット前面に誘導する急転回部を形成するとともに、フロントパネルにはさらに、フィルターユニットに吸い込まれる気流から離脱した粗塵を受けるダストボックスを、吸込口よりも上の位置に配置したことを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
前記吸込口が、室内空気を斜め下方向に誘導する上下の導風板により構成されることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
下側の導風板が正面から見て下方に凸に湾曲していることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記吸込口の断面積と前記フィルターユニットの最上流部における通風路の断面積とが略同一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−263493(P2006−263493A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81118(P2005−81118)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】