説明

空気清浄装置

【課題】光触媒を利用した空気清浄装置に関し,光触媒を含む脱臭フィルタの全面に光が照射され効率よく脱臭フィルタを再生することができる空気清浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光触媒を活性化させる光源としてのランプ2と、前記ランプ2の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタ3と、前記脱臭フィルタ3に空気を送る送風手段としてのファン4を備え、複数の前記脱臭フィルタ3を近接して配置するとともに、前記ランプ2からの光が前記脱臭フィルタ3にあたるように前記脱臭フィルタ3を可動させることにより、脱臭フィルタ3全体に光が照射され、効率よく汚染物質を除去できる空気清浄装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を利用した空気清浄装置に関し,特に室内空間や車内空間において汚染物質を除去する空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンや酸化タングステン,酸化亜鉛のような半導体の金属酸化物は光触媒と呼ばれている。光触媒に紫外線を照射すると、ヒドロキシラジカル(・OH)などの活性種が発生し、脱臭あるいは殺菌などの効果が発揮されることが知られており、空気清浄機やエアコンなどの脱臭フィルタとして応用されている。空気清浄機では、光触媒を担持した脱臭フィルタと紫外線を発生する光源をどのように配置して光照射を行うかについて様々な提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1記載の流体浄化装置は、図9に示すように、ケース31内部に備えた励起光源32からの光により光触媒を励起させて流体を浄化する装置であって、前記ケース31内部に、励起光源32の周囲を間隔をおいて包囲するように、微細な網の目構造の筒体で、その内、外周面を含む全表面に光触媒を有する光触媒体33を設けたものである。この構成によって、光触媒体33の表面積が大きくなり、通過する流体に乱流が生じるため、流体中の臭気物質との接触割合が大きくなって、臭気物質を短時間で効率よく酸化分解できることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2記載の空気浄化装置は、図10に示すように、光触媒を含む筒状の脱臭フィルタ41と紫外線光源42を備え、前記脱臭フィルタ41の上流側に前記紫外線光源42を設けるとともに、前記紫外線光源42からの光の照射位置が変化するように、前記脱臭フィルタ41を可動する構成としたものである。この構成によって、紫外線光源42を移動させることなく、脱臭フィルタ全体の再生率を向上させることが記載されている。
【特許文献1】特開平11−276558号公報
【特許文献2】特開2002−263175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される従来例にあっては、筒状の全表面に光触媒を有した光触媒体33に対して、内表面側から光を照射するものであり、外表面側の光触媒には直接光が照射されないために外表面の光触媒が徐々に劣化し、十分な臭気分解性能が得られなくなるという課題があった。
【0006】
また、特許文献2に示される従来の方法では、紫外線光源42からの光の利用効率が悪いという問題があった。すなわち、紫外線光源42からは全周方向に光が放射されるが、脱臭フィルタ41に面していない側の光は無駄になってしまうという課題があった。反射板44を利用して脱臭フィルタ41に光を反射しても、反射板44の光反射率は100%ではなく、紫外線光源42からの距離が遠くなると光強度は減衰するという光の性質からも、効率よく脱臭フィルタ41を再生することができないという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、光触媒を含む脱臭フィルタの全面に光が照射され効率よく汚染物質を除去できる空気清浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の空気清浄装置は,請求項1記載のとおり、光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記光源からの光が前記脱臭フィルタにあたるように前記脱臭フィルタを可動させることを特徴としたものである。光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記脱臭フィルタまたは/および前記光源を可動させて前記脱臭フィルタに前記光源の光を照射することを特徴としたものである。
【0009】
また、本発明の空気清浄装置は、光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記脱臭フィルタが光源を中心として回転することを特徴としたものである。
【0010】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタが円筒状であることを特徴としたものである。
【0011】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタに少なくとも0.01mW/cm2以上の紫外線を照射することを特徴としたものである。
【0012】
また、本発明の空気清浄装置は、光源をU字型に屈曲させたことを特徴としたものである。
【0013】
また、本発明の空気清浄装置は、円筒状の脱臭フィルタの内面側に光触媒が多く存在することを特徴としたものである。
【0014】
また、本発明の空気清浄装置は、光触媒が酸化チタンであることを特徴としたものである。
【0015】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタが吸着剤を含むことを特徴としたものである。
【0016】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタがマンガン、銀、銅、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケルから選ばれる少なくとも1種類の金属酸化物を含むことを特徴としたものである。
【0017】
また、本発明の空気清浄装置は、光透過性のバインダーで光触媒を固定化したことを特徴としたものである。
【0018】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタが網状、スリット状、ハニカム状のいずれかであることを特徴としたものである。
【0019】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタの周囲に光反射作用を有する反射板を備えたことを特徴としたものである。
【0020】
また、本発明の空気清浄装置は、円筒状の脱臭フィルタの内部に、円盤状の形状保持部材を備えたことを特徴としたものである。
【0021】
また、本発明の空気清浄装置は、円筒状の脱臭フィルタの一端が閉止され、他端から空気を通過させることを特徴としたものである。
【0022】
また、本発明の空気清浄装置は、円筒状の脱臭フィルタの一端の閉止部が光反射作用を有することを特徴としたものである。
【0023】
また、本発明の空気清浄装置は、光源を消灯した時には、脱臭フィルタを可動させないことを特徴としたものである。
【0024】
また、本発明の空気清浄装置は、脱臭フィルタの上流側に集塵フィルタを備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光触媒を含む脱臭フィルタの全面、光触媒を含む脱臭フィルタの全体に光が照射され効率よく汚染物質を除去でき、脱臭フィルタを再生することができる空気清浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の空気清浄装置は上記目的を達成するために、光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記光源からの光が前記脱臭フィルタにあたるように前記脱臭フィルタを可動させることを特徴とする。フィルタを可動させることにより光源とフィルタの相対位置が変化するため、脱臭フィルタ全体に光をあてることができる。光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記脱臭フィルタまたは前記光源を可動させて前記脱臭フィルタに前記光源の光を照射することにより、前記光源からの前記脱臭フィルタへの光の照射角度が変化し、照射面が変化することになり、影の部分が減少し、脱臭フィルタ全体に光が照射され、脱臭力、脱臭効率が向上することとなる。
【0027】
また、複数の光源と脱臭フィルタを近接して配置することにより、複数の光源からの光が脱臭フィルタに照射され、さらに影になる部分を無くしてフィルタ全体に光をあてることができる。光が脱臭フィルタ全体、全面にまんべんなくあたっているので、脱臭効率のよい空気清浄装置を得ることができる。また、陰になって光触媒が働かず、脱臭フィルタに臭気が濃縮されて再放出することがない。
【0028】
光触媒を活性化させる光源としてはブラックライト、冷陰極管、殺菌灯、蛍光灯などのランプや紫外線LED、プラズマ発光などが挙げられる。光触媒を励起することができればいかなる手段を用いてもよいが,冷陰極管は比較的低コストであり,耐久寿命も長いことから光源として好ましい。
【0029】
光触媒としては、酸化スズ、酸化亜鉛、三酸化タングステン、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化ビスマスなどの金属酸化物、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化モリブデンなどの金属硫化物、チタンナイトライドなどの窒化物が挙げられ、安全性、経済性などの面から、酸化チタンが好ましい。また、光触媒の表面にPt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、Cu、Zn等の助触媒を添加してもよい。
【0030】
光触媒を含む脱臭フィルタは、光触媒を基材表面に担持したものである。光触媒を担持する基材としては、セラミックハニカム、発泡セラミック、発泡ウレタン、ガラス、グラスファイバークロス、アルミハニカム、不織布、抄紙ハニカムなど様々なものが挙げられるが,紫外線に対する強度を有していることが望ましい。また、光触媒性能と担持強度が確保できる材質であることが望ましく,セラミックハニカムや発泡セラミックは基材自体が多孔質であるため担持強度を確保しやすく,且つ基材自体への悪臭物質の吸着も期待できることから基材に適している。また、グラスファイバーを幾本も束ねて一本の糸とし,それを織り込んだ生機と呼ばれるグラスファイバークロスは一本の糸が三次元構造を有しているために担持強度を確保しやすく,且つ素材がガラスであるためにUV透過性に優れ,これも基材に適している。
【0031】
脱臭フィルタは、ランプの周囲を取り囲むことができれば特に問題はなく、正多角形の筒状や円筒状などにすればよい。このような形状にすることにより、ランプの光を周囲の対面する脱臭フィルタに効率的に照射することができる。
【0032】
送風手段としては、本体内部に風を取り込むことができれば特に問題はなく、プロペラファン、シロッコファン、ターボファンなどあらゆる送風手段を利用することができる。
【0033】
また、触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記脱臭フィルタが光源を中心として回転することを特徴としたものであり、光源と脱臭フィルタの距離が一定になるので光量の変動がなく、脱臭性能が良いという作用を有する。
【0034】
また、脱臭フィルタが円筒状であることを特徴としたものであり、光源と脱臭フィルタの距離が一定になるので光量の変動がなく、脱臭性能が良いという作用を有する。
【0035】
また、脱臭フィルタに少なくとも0.01mW/cm2以上の紫外線を照射することを特徴としたものであり、脱臭フィルタに吸着した臭気を十分に分解できる空清浄装置を得ることができる。
【0036】
また、光源をU字型に屈曲させたことを特徴としたものである。冷陰極管や殺菌灯などの光源の端子部近辺は紫外線の発光強度が弱いが、U字型にすることによって端子部を円筒の片端面に集約することができ、脱臭フィルタに面する部分に発光強度の弱い部分が存在せず、光を効率よく照射して脱臭性能のよい空気清浄装置を得ることができる。
【0037】
また、円筒状の脱臭フィルタの内面側に光触媒が多く存在することを特徴としたものであり、光強度の強い場所に光触媒を多く存在させることができ、効率よく臭気を分解することができる。例えば、酸化チタン含有量の多い脱臭フィルタと、少ない脱臭フィルタを貼り合わせ、酸化チタン含有量の多いフィルタが内面側に位置するように円筒状に加工する方法を用いることができる。また、光触媒を担持する基材に酸化チタンを含むスラリーを噴霧してコーティングし、このときに表裏の面でスラリー中の酸化チタン濃度を変化させる方法などもある。
【0038】
また、光触媒が酸化チタンであることを特徴としたものであり、光触媒活性が高く、安全性、経済性に優れた空気清浄装置を得ることができる。
【0039】
また、脱臭フィルタが吸着剤を含むことを特徴としたものであり、吸着剤が臭気を濃縮し、光触媒で効率よく脱臭することができる。また、光源を点灯していないときでも吸着剤が働き、脱臭作用を発揮することができる。吸着剤としては、活性炭,ゼオライト,シリカゲル,セピオライト、珪藻土などのメソ〜マイクロ孔を有した多孔質材料が挙げられる。酸化チタン自体には悪臭物質を吸着する性質はほとんどなく,悪臭を光触媒で分解するためには一旦吸着剤で悪臭物質を捕獲する必要がある。基材に酸化チタンと吸着剤の両方を担持する場合,双方を事前に混合してから基材に担持する方法が最も簡便であり,酸化チタンへの悪臭物質の接触効率を考えても均一に混和することが望ましいが,このとき酸化チタンが励起する400nm以下の紫外波長領域に吸収端を持つような吸着剤を混ぜると,吸着剤が紫外線を吸収してしまい,酸化チタンの励起効率が著しく低下してしまう恐れがある。400nm以下の紫外波長領域に吸収端を持たない吸着剤としてはゼオライトやシリカゲルなどが適しており,特にゼオライトを疎水化処理したハイシリカゼオライトは400nm付近にほとんど吸収波長を持たず,且つ疎水化処理することで悪臭物質を吸着する能力が向上するために光触媒と混合する吸着剤として好適である。光触媒と吸着剤は任意の比率で混合して用いることができる。
【0040】
また、脱臭フィルタがマンガン、銀、銅、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケルから選ばれる少なくとも1種類の金属酸化物を含むことを特徴としたものであり、光触媒の脱臭性能が弱い硫黄系の臭気を、金属酸化物が効率よく脱臭することができる。特に硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系の臭気は、酸化チタンで除去されにくいので、マンガン、銅、コバルト、鉄などを添加すると、酸化チタンの脱臭能力を補完することができる。これらの成分は触媒として、あるいは吸着剤として作用する。また、硫黄系の臭気による光触媒の劣化が少ない空気清浄装置を得ることができる。
【0041】
また、光透過性のバインダーで光触媒を固定化したことを特徴としたものであり、バインダーが光を吸収しないので、光触媒に強い光を照射され脱臭性能がよいという作用を有する。脱臭フィルタは、光触媒を基材に担持して作成することができる。微粉末あるいはゾル状の光触媒と接着成分としてのバインダーを混ぜてスラリー状とし,それを基材表面に担持後,乾燥すると、光触媒を含む脱臭フィルタを作成することができる。スラリーには吸着剤や界面活性剤や抗菌剤、防カビ剤などが混合されていてもよい。吸着剤を混合させた場合、吸着剤で臭気を吸着し、高濃度に濃縮された状態で光触媒と臭気の反応が起こるので、脱臭効率を向上させることができるという作用を得ることができる。また、空気清浄装置の運転停止時など、光源の光が照射されていないときにも脱臭作用を発揮することができる。
【0042】
接着成分としては種々のバインダーを用いることができるが、光透過性のバインダーが好適であり、ケイ素化合物を使うと良い。ケイ素化合物は、光触媒を固定化するとともに、光を透過し、あるいは反射するので、光触媒に効率的に光をあてることができる。ケイ素化合物としては、シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、コロイダルシリカ、シリケート化合物の加水分解物などが挙げられる。シリケート化合物としては、テトラエトキシシランおよびその重合体であるメトキシポリシロキサン、エトキシポリシロキサン、ブトキシポリシロキサン、リチウムシリケートなどが挙げられ、これらの金属アルコキシド類は、水と酸または塩基によって加水分解され、バインダーとして用いることができる。また、シリコーン樹脂を用いてもよい。これらのケイ素化合物と光触媒を混合し、基材に塗布し、乾燥させることにより光触媒の固定化ができる。
【0043】
また、脱臭フィルタが網状、スリット状、ハニカム状のいずれかであることを特徴としたものであり、通気性に優れ、臭気を含む空気が効率的に脱臭フィルタを通過することができるという作用を有する。脱臭フィルタの形状としてはランプの周囲を取り囲むことができ、かつ通気性が必要である。これらを兼ね備える形状として、網状、スリット状、ハニカム状、不織布状などが挙げられる。これらの形状を複合あるいは積層してもよい。網状のフィルタを円筒形にし、ランプを中心として配置すると簡単で効率のよい脱臭フィルタを得ることができる。
【0044】
また、脱臭フィルタの周囲に光反射作用を有する反射板を備えたことを特徴としたものであり、脱臭フィルタを透過した未反応の紫外線を反射して、脱臭性能を向上させることができる。
【0045】
また、円筒状の脱臭フィルタの内部に、円盤状の形状保持部材を備えたことを特徴としたものであり、脱臭フィルタの変形を防止し、光源と脱臭フィルタの距離が一定になるので光量の変動がなく、脱臭性能が良いという作用を有する。変形防止部材はリング状あるいは円形網状の樹脂材料あるいは金属材料などを利用することができる。
【0046】
また、円筒状の脱臭フィルタの一端が閉止され、他端から空気を通過させることを特徴としたものである。円筒の面に直交して空気を流す場合、脱臭フィルタを空気が2回通過する。一方、この方法では、脱臭フィルタを空気が1回だけ通過することになり、圧力損失を低減することができる。圧力損失が低いので、処理風量を高めることができる。
【0047】
また、円筒状の脱臭フィルタの一端の閉止部が光反射作用を有することを特徴としたものであり、閉止部に照射された光を反射し、脱臭フィルタに光をあてることができる。
【0048】
また、光源を消灯した時には、脱臭フィルタを可動させないことを特徴としたものであり、光触媒による再生を行う必要がない場合に余計なエネルギーを消費することがないという作用を有する。方法として光源と脱臭フィルタの回転モーターのスイッチを連動させる方法、光源の周辺に設けた光検知センサの信号を受けたときだけに脱臭フィルタを可動させる信号を送るように制御する方法などが挙げられる。
【0049】
また、脱臭フィルタの上流側に集塵フィルタを備えたことを特徴としたものであり、脱臭フィルタと光源にほこりが付着しにくくなるので、ほこりによる光照射強度の低下を防ぐことができるという作用を有する。集塵フィルタとしては、不織布、ガラス繊維、網などの一般的な粒子捕集用フィルタを用いることができる。
【0050】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが,本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
本発明の空気清浄装置は、図1および図2に示すように、本体1の内部に光触媒を活性化させる光源としてのランプ2と、前記光源としてのランプ2の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタ3と、前記脱臭フィルタ3に空気を送る送風手段としてのファン4を備え、複数の前記脱臭フィルタ3を近接して配置するとともに、前記光源としてのランプ2からの光が前記脱臭フィルタ3にあたるように前記脱臭フィルタ3を可動させることを特徴としたものである。送風手段としてのファン4は、ファンモーター5で駆動することにより、外部の汚染物質を含む空気を本体1の内部に取り込み、脱臭フィルタ3に送ることができる。
【0052】
ランプ2は複数設けられており、ランプ2からの光は周囲の脱臭フィルタ3とともに、近接する場所に備えられた脱臭フィルタ3にも照射されるようになっている。脱臭フィルタ3は、ランプ2の周囲にそれぞれ1個ずつ備えられており、脱臭フィルタ全体にランプの光があたるように可動することができる。脱臭フィルタ3を可動させるために、円筒状の脱臭フィルタ3には閉止部6が設けられ、回転モーター7が接続されている。回転モーター7を駆動させることによって、脱臭フィルタ3を回転させることができる。回転モーター7は連続して回転させてもよいし、間欠的に回転させてもよい。
【0053】
ランプは単独で用いると、筒状の脱臭フィルタの内面のみに照射され、脱臭フィルタの外面には直接照射することができない。図2に示すように、複数のランプを用いることにより、脱臭フィルタ3aの内部にあるランプ2aが、近接する別の脱臭フィルタ3bの外面側に光を照射できるようになる。ここで、脱臭フィルタ3の内外面に0.01mW/cm2以上の紫外線があたるように、近接する脱臭フィルタの距離を調節することによって、性能のよい空気清浄装置を得ることができる。
【0054】
脱臭フィルタ3あるいは/およびランプ2を可動させることによりランプ2と脱臭フィルタ3の相対位置が変化するため、ランプ2からの脱臭フィルタ3への光の照射角度、照射面が変化し、ランプ2からの光が当たらない影の部分が減少し、脱臭フィルタ3の全体に光が照射され、脱臭性能が向上することとなる。
【0055】
また、脱臭フィルタ3の外部に光の反射板8を設けると、反射された光が脱臭フィルタ3の外面側にあたるので、さらに脱臭性能を向上させることができる。また、脱臭フィルタ3を、光源としてのランプ2を中心として回転させることにより、時間平均として脱臭フィルタの全体に同じ強度の光をあてることができ、脱臭フィルタ全体をむらなく再生することができる。
【0056】
なお、図1および図2ではランプ1本をフィルタ1枚が取り囲む形状を示したが、ランプ1本に対してフィルタが多層になるように周囲を取り囲んでもよい。このとき、脱臭フィルタの組成が違っていてもよく、例えば、ランプに近い内層側に酸化チタンの多い脱臭フィルタを配置し、その外層に酸化チタンと吸着剤とMnO2等の金属酸化物を含むフィルタを配置してもよい。脱臭フィルタを通過するごとに紫外線強度は減衰するので、実用的には1〜3層の脱臭フィルタを重ねる方法がよい。
【0057】
(実施の形態2)
本発明による空気清浄装置の別の形態を図3に示す。本体1の内部に光触媒を活性化させる光源としてのU字型に屈曲させたU字型ランプ9と、前記光源としてのU字型ランプ9の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタ3と、前記脱臭フィルタ3に空気を送る送風手段としてのファン4を備え、複数の前記脱臭フィルタ3を近接して配置するとともに、前記光源としてのU字型ランプ9からの光が前記脱臭フィルタ3にあたるように前記脱臭フィルタ3を可動させることを特徴としたものである。送風手段としてのファン4は、ファンモーター5で駆動することにより、外部の汚染物質を含む空気を本体1の内部に取り込み、脱臭フィルタ3に送ることができる。一般的にランプは管の両端部の発光強度が弱いという特性がある。また、管の両端には構造上ソケットを備えることが必要であった。ランプをU字型にすることにより、発光強度の弱い部分を片側だけに集約することができ、特に脱臭フィルタ3の上部に照射される光強度を強くして、脱臭性能を向上させることができるという作用を得ることができる。また、U字型のランプにすることによって底面でランプを固定するソケット部を2個にすることができ、直管を1個のソケットで固定するときよりも機械的強度を向上させることができるという作用を得ることができる。
【0058】
脱臭フィルタ3を可動させるために、円筒状の脱臭フィルタ3の上部には閉止部6が設けられ、回転可能な軸で支持されている。閉止部6はアルミニウム製で、光反射作用を有している。ローラー10は、図示しない脱臭フィルタ3の下部にも設けられた凹凸を有する支持体と密着している。ローラー10は回転モーター11に接続され、回転モーター11を駆動させることによって、脱臭フィルタ3を回転させることができる。脱臭フィルタ3を、光源としてのU字形に屈曲させたランプ2を中心として回転させることにより、時間平均として脱臭フィルタの全体に同じ強度の光をあてることができ、脱臭フィルタ全体をむらなく再生することができる。
【0059】
(実施の形態3)
本発明による脱臭装置の別の形態を図4および図5に示す。本体12の内部に光触媒を活性化させる光源としてのランプ13と、前記光源としてのランプ13の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタ14と、前記脱臭フィルタ14に空気を送る送風手段としてのファン15を備え、複数の前記脱臭フィルタ14を近接して配置するとともに、前記光源としてのランプ13からの光が前記脱臭フィルタ14にあたるように前記脱臭フィルタ14を回転させる。ランプ13およびファンモーター16は、通気性を有するように多数の開口部を設けた支持部材17に固定されている。外部の汚染された空気は、ファンモーター16を駆動することにより、集塵フィルタ18、脱臭フィルタ14、支持部材17、送風手段としてのファン15の順に通過する。ここで、集塵フィルタ18によって、汚染された空気中に含まれる塵埃やカビや花粉等の粒子が取り除かれるため、本体内部を清潔に保つことができる。粒子が付着しないので、光源としてのランプ13の光が粒子付着によって減衰することがないという作用を得ることができる。
【0060】
図6に示すように、脱臭フィルタ14は、円筒の上部が閉止部19で閉止されており、閉止部19の中心に備えられた回転軸20を通じて回転モーター21と接続されている。回転モーター21を駆動させることによって、脱臭フィルタ14を回転させることができる。回転モーター21は連続して回転させてもよいし、間欠的に回転させてもよい。脱臭フィルタ3の内部には、脱臭フィルタの変形を防止するため、形状保持部材としてのリング状の金属部材が設けられている。脱臭フィルタ14を、ランプ13を中心として回転させることにより、時間平均として脱臭フィルタの全体に同じ強度の光をあてることができ、脱臭フィルタ全体をむらなく再生することができる。
【0061】
上記の構成により、外部の汚染された空気は、集塵フィルタ18と脱臭フィルタ14の働きによって浄化されるので、効率よく汚染物質を除去でき、まんべんなく脱臭フィルタを再生することができる空気清浄装置とすることができる。
【0062】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
【実施例1】
【0063】
粉末状の酸化チタンを8wt%、吸着剤としてのハイシリカゼオライトを20wt%、コロイダルシリカを60wt%、精製水を12w%の比率になるように材料を計量して混合した後、ボールミルで24時間分散混合してスラリーを作成した。出来上がったスラリーに、開口率29%のグラスファイバークロスをディップして光触媒を含浸させ、エアブローして余剰液を排除した後、120℃の乾燥機で30分乾燥させ、光触媒を含む脱臭フィルタを作成した。
【0064】
作成した脱臭フィルタを5cm×10cmの大きさに切断し、64Lのアクリルボックスに入れた。脱臭フィルタに任意の強度の紫外線が照射されるように、調整して光源としてのブラックライトを設置した。アクリルボックスを密閉し、100ppmのアセトアルデヒドガスを導入した。ボックス内の空気をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーでアセトアルデヒド濃度を経時的に測定した。
【0065】
図7に紫外線照度を変化させたときの、アセトアルデヒド濃度の変化を示す。縦軸はアセトアルデヒド濃度の初期値を100%としたときの、臭気残存率である。試験は、最初の120分間は光を照射せず、120分後にランプを点灯した。図7からわかるように、吸着剤の作用によって、アセトアルデヒドは光照射なしでも減衰し、120分後の残存率は約40%となった。ランプを点灯すると、グラフの傾きが変化し、紫外線強度が強いほど早く脱臭できることがわかる。吸着のみの時に比べてグラフの傾きが急になっていることから、紫外線強度は0.01mW/cm2以上あれば十分な脱臭作用を発揮することができると考えられる。
【実施例2】
【0066】
実施例1と同じ方法で、網状の脱臭フィルタを作成した。ランプとしての冷陰極管から20mmの距離に脱臭フィルタを置き、紫外線強度計を用いて、脱臭フィルタを通過する紫外線強度を測定した。脱臭フィルタで光をさえぎった時の紫外線の減衰率から、フィルタを積層したときに各フィルタ表面に照射される紫外線強度を計算よりもとめた。結果を図8に示す。光は脱臭フィルタを通過するごとに減衰し、透過率13%の脱臭フィルタでは3枚重ねた時に紫外線強度が0.01mW/cm2以下になった。フィルタの開口率と積層枚数の組み合わせによって、フィルタ通過後の紫外線強度をコントロールできることがわかった。
【0067】
作成した網状の脱臭フィルタを用いて、4本のランプと4本の脱臭フィルタを持つ空気清浄装置を作成した。脱臭フィルタの円筒の半径は35mm、長さは470mm、脱臭フィルタの各円筒間の距離は5mmとした。このときの脱臭フィルタ表面の紫外線強度を測定すると、円筒の内面側は1.3mW/cm2であり、外面側は0.4mW/cm2となった。作成した空気清浄装置を容積23m3の室内に設置し、室内のアセトアルデヒド濃度が0.34ppmになるように調製した。空気清浄装置を運転し、初期および60分後のガス濃度を測定した。このとき、脱臭フィルタを通過する風量は5m3/minとした。アセトアルデヒド濃度の測定は、室内の空気をDNPH濃縮管に捕集し、アセトニトリルで抽出して、液体クロマトグラフィーで定量する方法によって行った。その結果、初期のアセトアルデヒド濃度0.34ppmが60分後に0.12ppmとなった。脱臭率は65%となり、高い脱臭性能を有する空気清浄装置を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の空気清浄装置では、光触媒を含む脱臭フィルタの全面に光が照射され、効率よく汚染物質を除去できる空気清浄装置を提供することができ、室内空間や車内空間において汚染物質を除去する空気清浄装置やエアコンなどに応用展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1の空気清浄装置の概略側面断面図
【図2】本発明の実施の形態1の空気清浄装置の概略平面断面図
【図3】本発明の実施の形態2の空気清浄装置の概略側面断面図
【図4】本発明の実施の形態3の空気清浄装置の概略側面断面図
【図5】本発明の実施の形態3の空気清浄装置の概略平面断面図
【図6】本発明の実施の形態3の空気清浄装置の斜視図
【図7】本発明の実施例1の脱臭性能を示すグラフ
【図8】本発明の実施例2の紫外線強度を示すグラフ
【図9】従来例の流体浄化装置の概略断面図
【図10】従来例の空気浄化装置の概略断面図
【符号の説明】
【0070】
1 本体
2 ランプ
3 脱臭フィルタ
4 ファン
5 ファンモーター
6 閉止部
7 回転モーター
8 反射板
9 U字型ランプ
10 ローラー
11 回転モーター
12 本体
13 ランプ
14 脱臭フィルタ
15 ファン
16 ファンモーター
17 支持部材
18 集塵フィルタ
19 閉止部
20 回転軸
21 回転モーター
22 形状保持部材
31 ケース
32 励起光源
33 光触媒体
34 ファン
35 反射板
41 脱臭フィルタ
42 紫外線光源
43 集塵フィルタ
44 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記光源からの光が前記脱臭フィルタにあたるように前記脱臭フィルタを可動させることを特徴とした空気清浄装置。
【請求項2】
光触媒を活性化させる光源と、前記光源の周囲に配置された光触媒を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタに空気を送る送風手段を備え、複数の前記脱臭フィルタを配置するとともに、前記脱臭フィルタが光源を中心として回転することを特徴とした空気清浄装置。
【請求項3】
脱臭フィルタが円筒状であることを特徴とした請求項1または2記載の空気清浄装置。
【請求項4】
脱臭フィルタに少なくとも0.01mW/cm2以上の紫外線を照射することを特徴とした請求項1乃至3いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項5】
光源をU字型に屈曲させたことを特徴とした請求項1乃至4いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項6】
円筒状の脱臭フィルタの内面側に光触媒が多く存在することを特徴とした請求項3乃至5いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項7】
光触媒が酸化チタンであることを特徴とした請求項1乃至6いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項8】
脱臭フィルタが吸着剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項9】
脱臭フィルタがマンガン、銀、銅、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケルから選ばれる少なくとも1種類の金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項10】
光透過性のバインダーで光触媒を固定化したことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項11】
脱臭フィルタが網状、スリット状、ハニカム状のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項12】
脱臭フィルタの周囲に光反射作用を有する反射板を備えたことを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項13】
円筒状の脱臭フィルタの内部に、円盤状の形状保持部材を備えたことを特徴とする請求項3乃至12いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項14】
円筒状の脱臭フィルタの一端が閉止され、他端から空気を通過させることを特徴とする請求項3乃至13いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項15】
円筒状の脱臭フィルタの一端の閉止部が光反射作用を有することを特徴とする請求項3乃至14いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項16】
光源を消灯した時には、脱臭フィルタを可動させないことを特徴とする請求項1乃至15いずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項17】
脱臭フィルタの上流側に集塵フィルタを備えたことを特徴とする請求項1乃至16いずれかに記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−78058(P2009−78058A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250897(P2007−250897)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】