説明

空気調和装置

【課題】天井設置や天井埋め込み型等の空気調和装置において、より薄型化、コンパクト化された装置を提供する。
【解決手段】空気調和装置100内における空気の流路として、ターボファン6の回転によりケーシング1の吸気口2から導入された外気がターボファン6の外周部10から熱交換器8を介して排気口3から排出される第1の流路11と、ターボファン6の外周部10からケーシング1の底板4と、ファンベース15との間を通り、モータ5のステータフレーム13の上部のコーナ部13aに設けられた複数の冷却用溝14を介し、ファンベース15の中央部15aの通気口16を通り、吸気口2から導入される外気と合流する第2の流路12とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、業務用や車両用の天井設置型や天井埋め込み型、壁掛け型などの空気調和装置に関するもので、特に薄型化をはかった空気調和装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和装置において、密封空間に配置されたファンモータの加熱による不具合発生を防止するために、種々の方策がなされている。その1つとしての斜流送風機において、ケーシング内にモータと羽根車とを収納し、モータをケーシングの背面板に取りつけるとともに、羽根車は截頭円錐状のボスの中空部にモータが位置し、かつボスの大径端部とケーシングの背面板に隙間Sを存してモータを取りつけ、羽根車の回転時にボスの小径端部から吸い込まれた空気が、ボス円錐面の外面を流通した後、ボスの大径端部から前記隙間Sを通ってボスの中空部内に流入した吹き出し空気の一部をボスの截頭面に設けた通風穴から外方に流出させる技術が示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭62−018717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に示された技術では、最近の空気調和装置に対するより薄型化、コンパクト化要求に対しては、必ずしも充分に対応することが不可能という問題点がある。すなわち空気調和装置の基本性能を維持しながら要求されている薄型化、コンパクト化を図るために、単にケーシング内のモータと羽根車間の隙間を狭くしようとすると、圧損が大きくなりモータの過熱防止に必要な冷却風の供給が充分に行われないという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、モータの基本性能を損なわずに密閉された状態での過熱を防止した薄型化、コンパクト化された空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る空気調和装置は、ケーシング内の底板に設置されたモータと、該モータの上部にターボファンが直結され、ケーシングには、ターボファンと対向する上部に吸気口が、ターボファンの外周部に対向して熱交換器が設けられているとともに、該熱交換器と対向する側部に排気口が設けられているものであり、空気調和装置内における空気の流路として、ターボファンの回転によって吸気口から導入される外気が、ターボファンの外周部から熱交換器を介して排気口から排出される第1の流路と、この第1の流路から分岐してターボファンの外周部から底板とファンベースとの間を通り、モータのステータフレームの上部のコーナ部に設けられた複数の冷却用溝を介し、ファンベースの中央部の通気口を通り、吸気口から導入される外気と合流する第2の流路とが設けられているものである。
【0007】
第2の発明に係る空気調和装置は、ケーシング内の底板に設置されたモータと、該モータの上部にプロペラファンが直結され、ケーシングには、プロペラファンと対向する上部に吸気口が、プロペラファンの外周部に対向して熱交換器が設けられているとともに、該熱交換器と対向する側部には排気口が設けられているものであり、プロペラファンの回転によって吸気口から導入される外気が、プロペラファンの外周部から、およびモータのステータフレームの上部のコーナ部に設けられた複数の冷却用溝を通り、熱交換器を介して排気口から排出されるものである。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る空気調和装置は上記のように吸気された外気が第2の流路であるモータのステータフレームの上部のコーナ部に設けられた複数の冷却用溝を通るので、圧損を少なくしモータを効率よく冷却することが可能となり、モータおよび空気調和装置の基本性能や風量を損なうことなく、薄型化、コンパクト化された空気調和装置を得ることができる。
【0009】
また、第2の発明に係る空気調和装置も上記のように吸気された外気がモータのステータフレームの上部のコーナ部に設けられた複数の冷却用溝を通るので、圧損を少なくしモータを効率よく冷却することが可能となり、上記第1の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1による空気調和装置を示す断面図である。
【図2】実施の形態1によるモータの内部構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態1によるモータのステータを示す正面断面図である。
【図4】実施の形態1によるステータフレームに設けられた冷却用溝を示す図である。
【図5】実施の形態1によるステータを内部から見た展開図である。
【図6】実施の形態2による空気調和装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、実施の形態1による空気調和装置100の構造を示す断面図である。図1において空気調和装置100は、ケーシング1内に設置されたモータ5の上部に直結されたターボファン6と、熱交換器8を主な構成要素とする。尚、モータ5とターボファン6とで送風機7を構成する。ケーシング1の上部には外気を導入する吸気口2が、側部9にはターボファン6が送り出す空気を排出する排気口3が設けてあり、またケーシング1の底板4にモータ5が設置されている。このケーシング1に支持される熱交換器8はターボファン6の外周部10に対向して設けてあり、この熱交換器8と対向するケーシング1の側部9に前記排気口3が設けられている。
【0012】
図2にモータ5の内部構造を示す。図2において、モータ5はステータ50とロータ51に大別される。ステータ50は、鉄心18とこの鉄心18に絶縁ボビン19に巻線されたコイル20と、これらの固定と外郭の形成を兼ねて一体的に形成された樹脂モールド成形品のステータフレーム13とにより構成されている。ここで樹脂としては一般に市販されているアルミナ粉末を混入した熱伝導性の良い樹脂を用いる。ロータ51は、ステータフレーム13に固定された軸受25を介して回転可能に支持されるシャフト26と、このシャフト26に設けられた永久磁石24によって構成されている。
図3にステータ50の正面断面図を示す。図3において、鉄心18には複数極(図3では9極)のティース18aが設けられているとともに、各ティース18aには、コイル20が集中巻きされている。ここで鉄心18は薄鋼板を打ち抜き後積層されたものである。
【0013】
この実施の形態1において、図1に示すようにモータ5のステータフレーム13の上部のコーナ部13aが、ターボファン6のファンベース15に最も近接する部位となっている。この部位では後述するターボファン6の生成する空気流の抵抗が増大する。従って図1、図2および後述する図4に示すように、ステータフレーム13の上部のコーナ部13aに断面略長方形状の複数の冷却用溝14を設け、この冷却用溝14内を空気が流れることにより圧損増加を防止している。
尚、当然のことながら前記コーナ部13aとファンベース15との間にも空気は流れる。さらにモータ5の上部のターボファン6が直結されるファンベース15の中央部15aには複数個の通気口16が設けてあり、この通気口16を通り前記冷却用溝14から送出される空気がターボファン6内に戻され、吸気口2から導入される外気と合流する。
図4はモータ5を上部、すなわちターボファン6側から見たステータフレーム13に設けられた冷却用溝14を示す平面図である。
図5には、図3に示したステータ50の内径側から見た平面展開図を示す。図5から判るように、ステータフレーム13に設けられた複数極である複数のティース18aに巻線されたコイル20のコイルエンド31部分は大きなコイルコーナR部30を形成しているため、隣接するコイル間つまり極間にはコイル20の無いデッドスペース27が生じる。
図4に示すように上記デッドスペース27に相当する部位のステータフレーム13の外側のコーナ部13aにX−X矢視で示すように冷却用溝14が設けられており、空気は矢印Aから矢印Bの流路を通る。
【0014】
次にこの空気調和装置100における空気の流れを主体とする動作を図に基づいて説明する。
図1に示すように、モータ5の駆動によりターボファン6が回転すると、ケーシング1の上部吸気口2から外気が導入される。この流入した外気の空気はターボファン6の外周部10から第1の流路11である熱交換器8を介して温度調節され排気口3からケーシング1の外部に排出される。この第1の流路11を流れる空気は空気調和装置100の本来の機能であり、例えば室内や車両内の冷暖房に供される。一方、ターボファン6の外周部10から前記第1の流路11から一部の空気流が分岐して、ターボファン6のファンベース15とケーシング1の底板4との間からモータ5のステータフレーム13に至りステータフレーム13の冷却用溝14をAからBへと通り、さらにファンベース15の中央部15aに設けられた通気口16から、ターボファン6内の前述した第1の流路の空気と合流する第2の流路12が形成される。この第2の流路12を通る空気は、熱交換器8を介するものではないのでモータ5に対しては、常に冷却風として機能する。従って、ステータフレーム13に設けられた冷却用溝14を冷却風が通ることにより、モータ5が冷却される。
【0015】
このように空気調和装置100の薄型化、コンパクト化を行う為に、モータ5とターボファン6との間隔を狭くしても、冷却風が第2の流路12を形成するステータフレーム13の冷却用溝14を通る冷却風通路が確保されてモータ5が冷却される。
従って、コイル20自体の通電に伴う発熱を効率よく放熱して銅損増大を防止し、軸受25等の機械損による温度上昇も低下可能となる。それに伴い、永久磁石24の温度上昇も抑制可能となり、長寿命化し、モータ5の性能を損なうことなく、結果として優れた性能を備えた薄型化、コンパクト化された省エネの空気調和装置100を得ることができる。
【0016】
実施の形態2.
次に実施の形態2を図に基づいて説明する。
図6は、実施の形態2による空気調和装置100の構造を示す断面図であり、前述した実施の形態1の図1ではターボファン6がモータ5の上部に直結されていたのが、この実施の形態2では前記ターボファン6に代替してプロペラファン29をモータ5の上部に直結したものであり、それ以外は図1と同一であるので説明を省略する。
次に動作を説明する。
モータ5の駆動によりプロペラファン29が回転し、吸気口2から導入された外気は、熱交換器8を通り温度調節されて排気口3から外部に排出される。またプロペラファン29の内径側を通る空気は、モータ5のステータフレーム13の冷却用溝14をBからAへと通りモータ5を冷却して、前記熱交換器8を介して外部に排出される。
このようにこの実施の形態2でも、プロペラファン29と近接するステータフレーム13の上部のコーナ部13aに冷却用溝14を設けているので、冷却風通路が確保されてモータ5が冷却され、結果として空気調和装置100の薄型化、コンパクト化が可能となる。
【0017】
実施の形態3.
次に実施の形態3について説明する。
前記実施の形態1は空気調和装置100の第1の流路および第2の流路の一部であるステータフレーム13の冷却用溝14を空気(冷却風)が流れる構成により、また実施の形態2もプロペラファン29の内径側からステータフレーム13の冷却用溝14を通る空気(冷却風)によりモータ5の過熱を防止したものであった。しかしながら前記実施の形態1、2によるモータ5の構造は、空気調和装置100に限定して使用されるものではなく、一般的な用途のモータであって、例えば電気装荷がきびしく、温度上昇が大きな自然空冷式のモータにも適用可能である。すなわちモータ5のステータフレーム13に複数の冷却用溝14が冷却ファンとして作用し、放熱面積が拡大してモータ5の過熱を抑制する。従って強制的な通風冷却を備えた装置以外のモータとしても適用できるという利点がある。
【0018】
実施の形態4.
上記実施の形態1、2では、ステータフレーム13を熱伝導性の良い樹脂モールド成形フレームとする例を示したが、これに限らず、鉄やその合金等の熱伝導性のよい金属性フレームであってもよい。
また、冷却用溝14は断面形状を略長方形状のものを示したがこれに限らずコイル20間のデッドスペース27形状に対応した、例えば逆凸字状や、さらにはステータフレーム13の製作性からU字形状等であってもよい。ここで溝断面の終端は面取りをすることで冷却風路面積が大きくなる。さらに実施の形態1、2のモータ5のステータは9極の場合であって冷却用溝14も極間に設けられた9本の例を示したが、これに限らずモータ5に要求される機能に応じた6極、12極に対応した6本、12本の冷却用溝14であってもよく、また必ずしも極間毎に設ける必要もない。またティース18aに巻きつけるコイル20は、ティース18aの先端側(ロータ側)に集中するように巻線することで、デッドスペース27を大きくすることができ、大きな冷却用溝14の形成が可能となる。
またさらに、冷却用溝14は図1、図2、図4で示した例では直線状に形成された例を示したが、モータ5の回転方向、つまりターボファン6あるいはプロペラファン29の回転方向と同じ方向に実施の形態1ではステータフレーム13の下方から上方に、すなわち図1のAからBにかけて、実施の形態2ではステータフレーム13の上方(B)から下方(A)にかけてスキューして設けてもよく、その結果圧損が低減される。
【符号の説明】
【0019】
1 ケーシング、2 吸気口、3 排気口、4 底板、5 モータ、
6 ターボファン、8 熱交換器、9 側部、10 外周部、11 第1の流路、
12 第2の流路、13 ステータフレーム、13a コーナ部、14 冷却用溝、
15 ファンベース、16 通気口、29 プロペラファン、50 ステータ、
100 空気調和装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内の底板に設置されたモータと、該モータの上部にターボファンが直結された空気調和装置であって、前記ケーシングには、前記ターボファンと対向する上部に吸気口が、前記ターボファンの外周部に対向して熱交換器が設けられているとともに、該熱交換器と対向する側部に排気口が設けられているものであり、前記空気調和装置内における空気の流路として、前記ターボファンの回転によって前記吸気口から導入される外気が、前記ターボファンの外周部から前記熱交換器を介して前記排気口から排出される第1の流路と、この第1の流路から分岐して前記ターボファンの外周部から前記底板とファンベースとの間を通り、前記モータのステータフレームの上部のコーナ部に設けられた複数の冷却用溝を介し、前記ファンベースの中央部の通気口を通り、前記吸気口から導入される外気と合流する第2の流路とが設けられていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
ケーシング内の底板に設置されたモータと、該モータの上部にプロペラファンが直結された空気調和装置であって、前記ケーシングには、前記プロペラファンと対向する上部に吸気口が、前記プロペラファンの外周部に対向して熱交換器が設けられているとともに、該熱交換器と対向する側部には排気口が設けられているものであり、前記プロペラファンの回転によって前記吸気口から導入される外気が、前記プロペラファンの外周部から、および前記モータのステータフレームの上部のコーナ部に設けられた複数の冷却用溝を通り、前記熱交換器を介して前記排気口から排出されることを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
前記ステータフレームは熱伝導性樹脂モールド成形フレームあるいは金属製フレームであることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記冷却用溝は、前記ターボファンあるいはプロペラファンの回転方向と同じ方向にスキューして設けられていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記冷却用溝は、前記モータのステータの極間毎に設けられていることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225541(P2012−225541A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91652(P2011−91652)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】