説明

空気電池

【課題】イオン液体を用いた電解液中において、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行し、起電力が高く、安全性に優れた空気電池を提供する。
【解決手段】負極となるアルミニウム板10側と、正極となるPt板11側とを隔膜12で仕切り、負極側の電解液をEMIC:無水AlCl=1:2(モル比)とし、正極側の電解液をEMIC:無水AlCl=2:1(モル比)とする。気体導入管5から酸素を吹き込むことにより、負極側ではアルミニウム板10からアルミニウムが酸化されて溶け出し、正極側ではPt上で酸素の還元が起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体を電解液として用いた空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を利用するため、その分だけ電池重量を小さくすることができ、単位重量当たりの容量を大きくすることが可能となる。従来から、負極を亜鉛とし、電解液として水酸化カリウム等の強アルカリ水溶液を用いた空気電池が知られており、ギブスの自由エネルギーから求めた理論起電力は1.65Vとなる。
【0003】
しかし、アルカリ溶液を用いた空気電池では、副反応として負極から水素が発生し、容量の低下を引き起こすという問題があった。
【0004】
このため、電解液を非水系の溶媒を用いる空気電池も提案されている。電解液を非水系にすれば、水の電気分解が起こらないため、電解液の電位窓を広げることができる。このため、アルミニウムやリチウムなど、極めて卑な金属を負極として利用することが可能となり、電池の起電力を大きくすることができる。
【0005】
例えば特許文献1では、負極としてアルミニウムを用い、電解液として、ポリプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン(体積比1:2)と1モルのHPH22を使用して、IEC規格44サイズのボタン型電池を作製している。
【0006】
また、特許文献2では、負極としてリチウムを用い、非水電解液として1Mの六フッ化リン酸リチウムを支持塩としエチレンカーボネート30重量部とジエチルカーボネート70重量部からなる溶液を用いて空気電池を作製している。
【0007】
しかし、これらの有機溶媒を用いた空気電池では、蒸気圧の高い有機溶媒を用いるため、空気極からの電解液の揮発が顕著となり、発火等の危険性がある。
【0008】
こうした有機溶媒を用いた空気電池の問題点を解決するために、不揮発性で発火の危険性が少ないイオン液体を非水電解質として用いた空気電池が提案されている(例えば、特許文献3、4)。これらの空気電池は非水溶媒であるイオン液体を用いるため、電解液の電位窓を広げることができる。このため、極めて卑な金属であるリチウムを負極として用いることができ、高い起電力を有する。また、イオン液体を溶媒としているため、発火の危険性が少なく、安全性にも優れている。
【0009】
一方、空気電池に関する技術ではないが、本発明の空気電池に関連する技術として、AlClと1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(以下「EMIC」という)とを混合した常温型溶融塩浴からのアルミニウムの電析に関する論文(非特許文献1)がある。また、AlClとイオン液体とを混合した常温型溶融塩浴中における酸素の電気化学的還元についての論文(非特許文献2、3)がある。非特許文献2では、AlClとEMICとを混合した常温型溶融塩浴における酸素の還元反応が確認されており、非特許文献3では、トリメチル−n−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド中における酸素の酸化波・還元波を観察している。
【0010】
【特許文献1】特開平5−258782号公報(段落番号0011)
【特許文献2】特開2008−198590号公報(段落番号0018)
【特許文献3】特開2005−26023号公報
【特許文献4】特開2008−66202号公報
【非特許文献1】小浦延幸ら 表面技術 Vol.55 No6 (2004) 409-416
【非特許文献2】Inorg.Chem.1991,30,1149-1151
【非特許文献3】第38回溶融塩化学討論会要旨集 P23-24(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記イオン液体を電解液の溶媒として用いたとしても、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行せず、空気電池を構成することが困難な場合があった。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、イオン液体を溶媒とした電解液中において、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行し、起電力が高く、安全性に優れた空気電池を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の空気電池は、金属からなる負極と、酸素還元触媒機能を有する正極とがイオン液体を含む非水電解液に接する空気電池であって、
該負極と該正極とはイオンの透過が可能な隔膜によって隔てられており、該負極側の電解液は該負極金属の電気化学的溶解を可能とする負極溶解電解液であり、該正極側の電解液は溶存酸素の電気化学的還元を可能とする酸素還元電解液であることを特徴とする。
【0014】
本発明の空気電池では、電解液が隔膜を境にして負極側と正極側とで異なる組成の電解液とされている。すなわち、負極側の電解液は負極金属の電気化学的溶解を可能とする負極溶解電解液とされているため、負極側での酸化反応が負極金属の溶解反応として円滑に行なわれる。また、正極側の電解液は溶存酸素の電気化学的還元を電気化学的に行うことを可能とする酸素還元電解液とされているため、酸素還元の触媒機能を有する正極側で、溶存酸素の電気化学的還元が円滑に行なわれる。このため、大電流を流すことができる。また、電解液として蒸気圧の小さいイオン液体を用いているため、発火の危険性が少なく、安全性に優れている。
【0015】
したがって、本発明の空気電池によれば、イオン液体を溶媒とした電解液中において、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行し、起電力が高く、安全性に優れたものとなる。
【0016】
負極の金属にアルミニウムを用いる場合、負極溶解電解液は無水AlClとEMICとの混合溶融塩を用いることができる。この場合、ルイス酸であるAlClと、塩基であるEMICとの間ではルイス酸・塩基平衡を形成し、モル比で1:1を境に性質が劇的に変化することが分かっている(非特許文献1)。すなわち、その溶融塩が50mol%<AlClの場合には、AlClが形成される。そして、Alの溶解・電析はAlClの酸化・還元によって起こる(非特許文献1の409ページ)。このため、負極溶解電解液としては、無水AlClが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド1molに対して1mol以上溶解している電解液を用いることができる。
【0017】
また、酸素還元電解液は無水AlClがEMIC1molに対して1mol未満溶解している電解液とすることができる。
【0018】
さらに、酸素還元電解液に含まれているイオン液体は、疎水性のイオン液体とすることが好ましい。空気電池における陽極側には空気などの酸素を含むガスが導入されるが、この導入されたガスに混入していた水分が電解液に入ると、電解液の変質を招き、酸化還元の反応抵抗を増大させる。これに対し、イオン液体を疎水性のイオン液体とすれば、このような局部電池の形成が防止されるため、電池出力の低下を防止できる。このような疎水性のイオン液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムバイフルオライド、1,3−ジメチルイミダゾリウムバイフルオライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド等を用いることができる。
【0019】
また、前記隔膜はゲル状イオン液体とすることも好ましい。ゲル状イオン液体とは、イオン液体を酸化チタンや二酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機ナノ粒子や、ポリマー等と混合してゲル化したり、イオン液体をモノマーとして重合させてポリマー化したり、構造形成材(例えば高分子等)にイオン液体を湿潤させたり、官能基を介して自己組織化したりして、イオン液体をゲル状態としたものをいう。隔膜をゲル状イオン液体とすれば、正極側と負極側との電解液の混合を防ぎつつ、イオンを容易に透過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の空気電池に用いる負極としては、負極溶解電解液に接する負極において電気化学反応により溶解が可能な金属であれば特に限定はない。例えばLi,Al,Mg,Na,Zn,Fe等を用いることができる。
【0021】
また、本発明の空気電池に用いる正極としては、酸素還元の触媒機能を有する電極であれば良い。このような電極としてはPt、Niやペロブスカイト型等の酸化物等の酸素還元触媒能を有する触媒をカーボン等の担体に担持させた電極等を用いることができる。
【0022】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、イオン液体とは、融点が180℃以下でカチオン部分とアニオン部分とからなるイオン性物質のことをいう。イオン液体のカチオン部分としては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。
【0023】
上記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムイオン等のジアルキルイミダゾリウムイオン;3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等のトリアルキルイミダゾリウムイオン等をあげることができる。
【0024】
上記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−プロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2−イソプロポキシエチル)−N−メチルピロリジニウムイオン等をあげることができる。
【0025】
また、上記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウムイオン、N−エチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムイオン、N−ヘキシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムイオン、N−デシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−ドデシル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N−エチルピペリジニウムイオン、N−(2−エトキシエチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(2−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン、N−エチル−N−(4−メトキシフェニル)ピペリジニウムイオン等をあげることができる。
【0026】
さらに、上記第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N,N−テトラメチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルプロピルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルブチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルペンチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルヘプチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルオクチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルデシルアンモニウムイオン、N,N,N−トリメチルドデシルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチルヘキシルアンモニウムイオン、2−メトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−エトキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、2−プロポキシ−N,N,N−トリメチルエチルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルプロピルアンモニウムイオン、N−(2−メトキシエチル)−N,N−ジメチルブチルアンモニウムイオン等をあげることができる。
【0027】
また、上記第四級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換された第四級ホスホニウムカチオン等があげられる。
【0028】
さらに、上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム等の炭素数1〜16のアルキル基により置換されたピリジニウムカチオン等があげられる。
【0029】
一方、上記イオン液体のアニオン部分としては、通常、Cl、Br、I、BF4、BF3 2 5、PF6、NO3、CF3 CO2、CF3SO3 、(CF3SO22、(FSO22、(CF3SO23、(C25SO22等があげられる。
【0030】
<実験例>
以下本発明の空気電池の作用効果を立証するための実験例について述べる。
(実験例1)
実験例1では、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と無水AlClとをモル比で1:2で溶解した電解液を用意し、図1に示すように、100mlの電解セル1に入れた。そしてリード線2aを取り付けたアルミニウム板2(3cm×6cm)とリード線3aを取り付けたPt板3(2cm×1cm)とを電解液に浸漬した。さらに、リード線2a、3aをゼロシャントアンメータ4に接続し、Pt板3の下から気体導入管5を介して酸素又はアルゴンをバブリングさせながら、短絡電流の時間経緯を測定した。また、Pt板3及び気体導入管5は、底に多孔質ガラス板6が嵌められたガラス管7内に入れ、液絡を取りつつも負極側から隔離した状態で測定を行なった。
【0031】
(実験例2)
実験例2では、実験例1における電解液の代わりに、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIC)と無水AlClとをモル比で2:1で溶解した電解液を用いた。その他の測定条件及び測定装置は実験例1と同様であり、説明を省略する。
【0032】
<結果>
その結果、EMIC:無水AlClがモル比で1:2とされた実験例1では、図2に示すように、Ar導入及び酸素導入のいずれの場合にも、短絡電流はほとんど流れなかった。この結果はEMIC:無水AlClがモル比で1:2の電解液では、AlとPtとをEMIC:無水AlCl=1:2(モル比)の電解液に浸漬しても、空気電池を構成することはできないことが分かった。
【0033】
これに対し、EMIC:無水AlClがモル比で2:1とされた実験例2では、図3に示すように、酸素導入した場合、短絡開始直後においては、短絡電流が流れるが、徐々に電流が低下した。このことから、AlとPtとをEMIC:無水AlCl=2:1(モル比)の電解液に浸漬すれば、空気電池としての機能を発揮するが、電池容量は小さく、電流も不安定となることが分かった。
【0034】
非特許文献1によれば、実験例1の電解液組成ではAlの電気化学的酸化は可能であるが、それにもかかわらず短絡電流が流れなかったのは、EMIC:無水AlCl=1:2という電解液では、AlとPtとを短絡させた電位において、溶存酸素の電気化学的還元はできないことが分かる。
【0035】
一方、実験例2において用いたEMIC:無水AlCl=2:1(モル比)という電解液では、溶存酸素の電気化学的還元が可能であることが分かっており(非特許文献2)、Alの電気化学的酸化も可能であることが分かる。ただし、短絡電流は時間とともに低下したことから、この電解液組成では、円滑なAlの電気化学的酸化を継続させることができないことが分かった。
【0036】
<実施形態1>
以上の結果から、負極側を実験例1で用いた電解液とし、正極側を実験例2で用いた電解液とすれば、継続的に電流を取り出すことのできる空気電池となることが分かる。すなわち、図3に示すように、負極となるアルミニウム板10側と、正極となるPt板11側とを隔膜12で仕切り、負極側にEMIC:無水AlCl=1:2(モル比)からなる負極溶解電解液13を入れ、正極側をEMIC:無水AlCl=2:1(モル比)からなる酸素還元電解液14とすれば、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行し、起電力が高く、安全性に優れた空気電池とすることができる。
【0037】
この空気電池は、負極側の電解液と正極側の電解液とが隔膜12で仕切られているため、それらの電解液どうしが混合することを防ぐことができる。隔膜12の材料としては、電池の中で正極と負極を隔離し、かつ電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保できる材料であれば用いることができる。このような材料としては、多孔性のプラスチック材料や、多孔性のセラミックス材料や、イオン交換膜や、ゲル状イオン液体からなる膜等を用いることができる。
【0038】
そして、正極側に気体導入管5から酸素をバブリングさせることにより、酸素Pt板11上で酸素の還元が起こり、負極側ではPt板11上での酸素の還元に見合うだけの量のAlの電気化学的酸化反応が起こる。これらの正極及び負極での反応は円滑に起こり、大きな電流が長時間にわたって流すことができる。
したがって、この空気電池によれば、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行する空気電池となる。
【0039】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の空気電池は、イオン液体を溶媒とした電解液中において、負極及び正極の電気化学反応が円滑に進行し、起電力が高く、安全性に優れた空気電池を提供することができる。このため、容量が大きく、電流の取り出しも大きくすることができる空気電池として、電源等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実験例1及び実験例2における短絡電流測定方法を示す模式図である。
【図2】実験例1におけるAl電極とPt電極との短絡電流の経時変化を示すグラフである。
【図3】実験例2におけるAl電極とPt電極との短絡電流の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施形態の空気電池の模式図である。
【符号の説明】
【0042】
2…負極(アルミニウム板)
3…正極(Pt板)
12…隔膜
13…負極溶解電解液
14…酸素還元電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる負極と、酸素還元触媒機能を有する正極とがイオン液体を含む非水電解液に接する空気電池であって、
該負極と該正極とはイオンの透過が可能な隔膜によって隔てられており、該負極側の電解液は該負極金属の電気化学的溶解を可能とする負極溶解電解液であり、該正極側の電解液は溶存酸素の電気化学的還元を可能とする酸素還元電解液であることを特徴とする空気電池。
【請求項2】
前記負極はアルミニウムからなり、前記負極溶解電解液は無水AlClが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド1molに対して1mol以上溶解していることを特徴とする請求項1記載の空気電池。
【請求項3】
前記酸素還元電解液は無水AlClが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド1molに対して1mol未満溶解していることを特徴とする請求項1又は2記載の空気電池。
【請求項4】
前記酸素還元電解液中に含まれているイオン液体は疎水性のイオン液体であることを特徴とする請求項1又は2記載の空気電池。
【請求項5】
前記隔膜はゲル状イオン液体からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の空気電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−129495(P2010−129495A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305741(P2008−305741)
【出願日】平成20年11月29日(2008.11.29)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】