説明

空調制御装置および空調制御方法

【課題】室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図る。
【解決手段】空調制御装置1は、運転機特定部11と隣接機特定部12と隣接機制御部14とを備え、室内機群の動作を統括して制御する。運転機特定部11は、室内機群に含まれる室内機30a,30b,・・・,30yのうち空調運転を行う運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rを特定する。隣接機特定部12は、室内機群に含まれる室内機30a,30b,・・・,30yのうち運転機に隣接する隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wを特定する。隣接機制御部14は、隣接機に気流生成運転を行わせる。この気流は、空調対象空間Mから運転機の空調運転によって空調された空気が拡散することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの空間に設置された空気調和装置の複数の室内機からなる室内機群の動作を統括して制御する空調制御装置および空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オフィスフロアや飲食店などの開けた広い1つの空間が空調される場合において、そのような空間には複数の室内機が設置されることがある。そして、通常、各室内機に対しては、独立した運転設定が可能となっている。したがって、開けた広い1つの空間に複数の室内機が設置されている場合において、そのような開けた広い1つの空間の一部の空間のみを空調したい場合には、その開けた広い1つの空間に設置された全ての室内機のうち、その一部の空間に対応する室内機のみに空調運転を行わせることになる。
【0003】
一方で、特許文献1には、空調運転の対象となる空間における空調運転効率を向上させるために、空調運転の対象となる空間とそれ以外の空間とを仕切るエアカーテンを生成するエアカーテン生成装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−323594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開けた広い1つの空間の一部の空間のみをその一部の空間に対応する室内機によって空調する場合、その一部の空間に対応する室内機によって空調された空気はその付近の空間へと拡散し、結果として、空調を必要としていない空間まで空調してしまうことがある。
【0005】
そこで、このような一部の空間を仕切るために特許文献1に示されるようなエアカーテン生成装置を導入しようとすると、設置スペースの確保が困難であったり、コストが嵩んだりなどの新たな問題が生じることになる。また、たとえこのような問題を克服したとしても、仕切るべき空間の位置が予め定まらないような場合には、エアカーテン生成装置を導入すべき位置を特定することができず、エアカーテン生成装置を導入することは実際上著しく困難である。
【0006】
本発明の目的は、室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る空調制御装置は、運転機特定部と、隣接機特定部と、運転機制御部と、隣接機制御部とを備え、室内機群の動作を統括して制御する。室内機群は、1つの空間に設置された空気調和装置の複数の室内機からなる。運転機特定部は、室内機群に含まれる室内機のうち空調運転を行う室内機である運転機を特定する。隣接機特定部は、室内機群に含まれる室内機のうち運転機に隣接する室内機である隣接機を特定する。運転機制御部は、運転機に空調運転を行わせる。隣接機制御部は、隣接機に気流生成運転を行わせる。気流生成運転は、気流を生成する運転である。この気流は、空調対象空間から運転機の空調運転によって空調された空気が拡散することを抑制する。空調対象空間は、室内機群の設置された1つの空間の一部であって、運転機の空調運転の対象となる空間である。
【0008】
この空調制御装置は、複数の室内機の設置された1つの空間のうち空調することを希望する空間(空調対象空間)を空調することが可能な室内機(運転機)に、空調運転を行わせる。そして、運転機に隣接する室内機(隣接機)に、気流生成運転を行わせる。なお、隣接機は、空調対象空間内にあってもよいし、空調対象空間外にあってもよい。隣接機は、気流生成運転を行うことにより、空調対象空間から空調された空気が拡散することを抑制する気流を生成する。これにより、この空調制御装置では、室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図ることができる。
【0009】
第2発明に係る空調制御装置は、第1発明に係る空調制御装置であって、気流生成運転は、サーモオフ運転である。
【0010】
この空調制御装置は、隣接機に、気流生成運転としてサーモオフ運転、すなわち、送風のみを行う送風モードでの運転を行わせる。これにより、この空調制御装置では、空調対象空間から空調された空気が拡散することを抑制する気流を生成することができる。
【0011】
第3発明に係る空調制御装置は、第1発明に係る空調制御装置であって、気流生成運転は、微冷房運転または微暖房運転である。
【0012】
この空調制御装置は、隣接機に、気流生成運転として微冷房運転または微暖房運転を行わせる。これにより、この空調制御装置では、微冷却または微加熱された空気で気流を生成することにより、空調対象空間から空調された空気が拡散することを抑制しつつ、運転機の冷房運転または暖房運転を補助することができる。
【0013】
第4発明に係る空調制御装置は、第1発明から第3発明のいずれかに係る空調制御装置であって、隣接機は、室内機群の設置された空間の天井に設置されている。気流生成運転は、下向きまたは斜め下向きに送風する送風運転である。
【0014】
この空調制御装置は、隣接機に、気流生成運転として下向きまたは斜め下向きに送風を行わせる。これにより、この空調制御装置では、空調対象空間とその外部の空間との境界に空気の壁を形成し、空調対象空間から空調された空気が拡散することをより効果的に抑制することができる。
【0015】
第5発明に係る空調制御装置は、第1発明から第4発明のいずれかに係る空調制御装置であって、運転指令入力部をさらに備える。運転指令入力部は、利用者に室内機群に含まれる室内機に対する運転指令を入力させる。運転機特定部は、運転指令入力部を介して入力された運転指令に基づいて、運転機を特定する。
【0016】
この空調制御装置では、運転機の特定は、利用者が運転指令入力部を介して入力した運転指令に基づいて行われる。運転指令入力部とは、例えば、各室内機を制御するための個別リモコンであってもよいし、複数の室内機を制御するための集中リモコンであってもよい。これにより、この空調制御装置では、運転機を利用者の手動で指定することができる。
【0017】
第6発明に係る空調制御装置は、第1発明から第4発明のいずれかに係る空調制御装置であって、生体位置特定部をさらに備える。生体位置特定部は、室内機群の設置された空間内に存在している生体の位置を特定する。運転機特定部は、生体位置特定部により特定される生体の位置に基づいて、運転機を特定する。
【0018】
この空調制御装置では、運転機の特定は、生体位置特定部により特定された、室内機群の設置された空間内に存在する生体の位置に基づいて行われる。これにより、この空調制御装置では、運転機を自動的に特定することができる。
【0019】
第7発明に係る空調制御装置は、第1発明から第6発明のいずれかに係る空調制御装置であって、隣接機は、複数の吹き出し方向調整手段を有する。吹き出し方向調整手段は、隣接機から吹き出される空気の方向を調整する。気流生成運転は、隣接機から空調対象空間に向かう方向にのみ空気を吹き出させるように複数の吹き出し方向調整手段を独立して制御することにより、上記気流を生成する運転である。
【0020】
この空調制御装置により制御される隣接機には、互いに独立した動作が可能な複数の吹き出し方向調整手段が備わっている。吹き出し方向調整手段とは、例えば、室内機のケーシングに形成された吹き出し口を開閉するフラップである。そして、この空調制御装置は、この複数の吹き出し方向調整手段を別個に制御することにより、隣接機に隣接機から空調対象空間に向かう方向にのみ空気を吹き出させ、隣接機から空調対象空間に向かわない方向への送風を控えさせる。これにより、この空調制御装置では、隣接機に不必要な送風を控えさせることにより、さらなる省エネルギーを図ることができる。
【0021】
第8発明に係る空調制御装置は、第1発明から第7発明のいずれかに係る空調制御装置であって、隣接機特定部は、運転機特定部により運転機として複数の室内機が特定された場合、少なくとも1の運転機に隣接する全ての室内機のうち運転機でない室内機のみを隣接機として特定する。運転機制御部は、運転機特定部により運転機として特定された複数の室内機のうち隣接機に隣接する室内機に、隣接機に隣接しない室内機よりも能力を弱めた空調運転を行わせる。
【0022】
空調対象空間の内部の空間であって空調対象空間の外部の空間との境界付近の空間内の空気は、空調対象空間外へと流出しやすい。そこで、この空調制御装置では、空調対象空間に対応する全ての室内機のうちこのような境界付近の空間に対応する室内機に対しては、このような境界付近の空間よりも内側の空間に対応する室内機に対するよりも能力を弱めた空調運転を行わせる。これにより、この空調制御装置では、空調対象空間における空調運転効率を向上させることができる。
【0023】
第9発明に係る空調制御装置は、第1発明から第8発明のいずれかに係る空調制御装置であって、記憶部をさらに備える。記憶部は、配置情報を記憶する。配置情報は、室内機群に含まれる室内機の、室内機群の設置された空間内における配置に関する情報である。隣接機特定部は、記憶部に記憶されている配置情報に基づいて、隣接機を特定する。
【0024】
この空調制御装置は、室内機群を構成する室内機の配置情報を記憶している。これにより、この空調制御装置では、室内機の隣接機を特定することができる。
【0025】
第10発明に係る空調制御装置は、第1発明に係る空調制御装置であって、運転機および隣接機は、空調対象空間内に存在する。
【0026】
この空調制御装置は、気流生成運転を、空調対象空間内の室内機である隣接機に行わせる。すなわち、隣接機に通常の空調運転を行わせないことにより、より省エネルギーを図ることができる。
【0027】
第11発明に係る空調制御装置は、第10発明に係る空調制御装置であって、運転機制御部は、運転機に冷房運転を行わせる。隣接機制御部は、隣接機の風向を、隣接機の近傍の生体に向かう方向となるように制御する。
【0028】
この空調制御装置は、運転機の冷房運転時においては、隣接機に、隣接機の近傍の生体に向けて空気を吹き出させる。したがって、隣接機が通常の空調運転を行わないことにより隣接機の近傍の空間の温度が上昇したとしても、隣接機の近傍に居る生体にとっての体感温度を下げることができる。
【0029】
第12発明に係る空調制御装置は、第10発明に係る空調制御装置であって、隣接機は、空間の天井に設置されている。運転機制御部は、運転機に冷房運転を行わせる。運転機制御部は、運転機の風向を、隣接機に向かう方向となるように制御する。
【0030】
この空調制御装置は、運転機に、天井に配置されている隣接機に向けて冷気を吹き出させる。これにより、空調対象空間においては、天井付近に重い冷気が溜まることになり、冷気が除々に床付近まで降りてくることになる。したがって、空調対象空間を均一に冷房することができる。
【0031】
第13発明に係る空調制御装置は、第10発明に係る空調制御装置であって、隣接機は、空気を吸い込む吸い込み口および複数の吹き出し方向調整手段を有する。吹き出し方向調整手段は、吹き出される空気の方向を調整する。気流生成運転は、複数の吹き出し方向調整手段のうち、吸い込み口よりも運転機から遠い吹き出し方向調整手段のみから気流を生成させる運転である。
【0032】
この空調制御装置により制御される隣接機には、互いに独立した動作が可能な複数の吹き出し方向調整手段が備わっている。吹き出し方向調整手段とは、例えば、室内機のケーシングに形成された吹き出し口を開閉するフラップである。そして、この空調制御装置は、複数の吹き出し方向調整手段のうち、吸い込み口よりも運転機から遠い位置にある吹き出し方向調整手段のみから気流を生成させ、近い位置にある吹き出し方向調整手段からの送風を控えさせる。これにより、この空調制御装置では、運転機からの空調された空気が隣接機の近傍の空間に到達し易くなっている。
【0033】
第14発明に係る空調制御装置は、運転機特定ステップと、隣接機特定ステップと、第1制御ステップと、第2制御ステップとを備え、室内機群の動作を統括して制御する。室内機群は、1つの空間に設置された空気調和装置の複数の室内機からなる。運転機特定ステップは、室内機群に含まれる室内機のうち空調運転を行う室内機である運転機を特定する。隣接機特定ステップは、室内機群に含まれる室内機のうち運転機に隣接する室内機である隣接機を特定する。第1制御ステップは、運転機に空調運転を行わせる。第2制御ステップは、隣接機に気流生成運転を行わせる。気流生成運転は、気流を生成する運転である。この気流は、空調対象空間から運転機の空調運転によって空調された空気が拡散することを抑制する。空調対象空間は、室内機群の設置された1つの空間の一部であって、運転機の空調運転の対象となる空間である。
【0034】
この空調制御方法では、複数の室内機の設置された1つの空間のうち空調することを希望する空間(空調対象空間)を空調することが可能な室内機(運転機)に、空調運転を行わせる。そして、運転機に隣接する室内機(隣接機)に、気流生成運転を行わせる。なお、隣接機は、空調対象空間内にあってもよいし、空調対象空間外にあってもよい。隣接機は、気流生成運転を行うことにより、空調対象空間から空調された空気が拡散することを抑制する気流を生成する。これにより、この空調制御方法では、室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図ることができる。
【発明の効果】
【0035】
第1発明に係る空調制御装置では、室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図ることができる。
【0036】
第2発明に係る空調制御装置では、空調対象空間から空調された空気が拡散することを抑制する気流を生成することができる。
【0037】
第3発明に係る空調制御装置では、微冷却または微加熱された空気で気流を生成することにより、空調対象空間から空調された空気が拡散することを抑制しつつ、運転機の冷房運転または暖房運転を補助することができる。
【0038】
第4発明に係る空調制御装置では、空調対象空間とその外部の空間との境界に空気の壁を形成し、空調対象空間から空調された空気が拡散することをより効果的に抑制することができる。
【0039】
第5発明に係る空調制御装置では、運転機を利用者の手動で指定することができる。
【0040】
第6発明に係る空調制御装置では、運転機を自動的に特定することができる。
【0041】
第7発明に係る空調制御装置では、隣接機に不必要な送風を控えさせることにより、さらなる省エネルギーを図ることができる。
【0042】
第8発明に係る空調制御装置では、空調対象空間における空調運転効率を向上させることができる。
【0043】
第9発明に係る空調制御装置では、室内機の隣接機を特定することができる。
【0044】
第10発明に係る空調制御装置では、隣接機に通常の空調運転を行わせないことにより、より省エネルギーを図ることができる。
【0045】
第11発明に係る空調制御装置では、隣接機が通常の空調運転を行わないことにより隣接機の近傍の空間の温度が上昇したとしても、隣接機の近傍に居る生体にとっての体感温度を下げることができる。
【0046】
第12発明に係る空調制御装置では、空調対象空間を均一に冷房することができる。
【0047】
第13発明に係る空調制御装置では、運転機からの空調された空気が隣接機の近傍の空間に到達し易くなっている。
【0048】
第14発明に係る空調制御装置では、室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る空調制御装置1について説明する。
【0050】
<空調制御装置の設置環境>
図1は、空調制御装置1により制御される空気調和装置の室内機30a,30b,・・・,30yが設置された室内空間Aの様子を示す。室内空間Aは、オフィスフロアや飲食店などの開けた広い1つの空間である。
【0051】
室内空間Aの天井には、複数の室内機30a,30b,・・・,30yが適当な間隔を開けて埋め込まれている。図1中、破線で区切られたセル空間Sa,Sb,・・・,Syは、仮想的に分割された空間であって、それぞれ室内機30a,30b,・・・,30yに対応しており、それぞれの内部に設置された室内機30a,30b,・・・,30yが空調運転の対象とする空間である。
【0052】
<空調制御装置の構成>
図2は、空調制御装置1の構成を示すブロック図である。空調制御装置1は、制御部10および記憶部20を有している。空調制御装置1は、通信ネットワーク3を介して各室内機30a,30b,・・・,30yの制御部35に接続されており、制御部35を介して各室内機30a,30b,・・・,30yの各部の動作を制御することができるようになっている。この通信ネットワーク3は、空調制御装置1と室内機30a,30b,・・・,30yなどの機器とが接続される空調専用のネットワークであってもよいし、イーサネット(登録商標)などに準拠した汎用のネットワークであってもよい。
【0053】
制御部10は、記憶部20に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、運転機特定部11、隣接機特定部12、運転機制御部13および隣接機制御部14などとして動作する。これらの各部11〜14の動作の詳細については後述する。
【0054】
記憶部20は、室内空間A内における室内機30a,30b,・・・,30yの配置に関する情報をまとめた配置情報管理テーブル21を記憶している。図3に示すように、配置情報管理テーブル21は、各室内機30a,30b,・・・,30yとその室内機30a,30b,・・・,30yに隣接する最大4台の室内機30a,30b,・・・,30yとを対応付ける情報を1つの行データとして管理している。
【0055】
<空気調和装置の構成>
以下では、主として室内機30aについての説明を行うが、その他の室内機30b,・・・,30yについても同様であるものとする。
【0056】
図4に示すように、室内機30aは、冷媒連絡配管4を介して室外機40に連結されている。なお、簡単のため、図4においては略記しているが、空調制御装置1により制御される空気調和装置はマルチシステムの空気調和装置であり、室内機30a,30b,・・・,30yは並列に接続されている。
【0057】
室内機30aのケーシング内には、ファンモータにより回転駆動される室内ファン36が設けられており、この室内ファン36の回転によりセル空間Sa内の空気が吸い込み口33(図5参照)を介して室内機30aのケーシング内へと吸い込まれる。こうして室内機30aのケーシング内へと吸い込まれた空気は、室内機30aのケーシング内に設けられた室内側熱交換器37内を流れる冷媒との間で熱交換を行い、冷房モードでの運転時(室外機40の四路切換弁44が実線の状態にある場合)には冷却され、暖房モードでの運転時(室外機40の四路切換弁44が破線の状態にある場合)には加熱される。
【0058】
一方、室内側熱交換器37において熱交換を行った冷媒は、冷媒連絡配管4を介して室外機40へと送られる。室外機40のケーシング内には、室外側熱交換器41、室外ファン42、圧縮機43、四路切換弁44および膨張弁45が設けられている。そして、室外ファン42が、ファンモータにより回転駆動されることにより、室外の空気が室外機40のケーシング内に吸い込まれ、吸い込まれた空気と室外側熱交換器41内を流れる冷媒との間での熱交換が促される。室外側熱交換器41内を流れる冷媒は、冷房モードでの運転時(室外機40の四路切換弁44が実線の状態にある場合)には放熱し、暖房モードでの運転時(室外機40の四路切換弁44が破線の状態にある場合)には吸熱する。
【0059】
図5は、室内機30aの外観図である。室内機30aのケーシングの底面34には、セル空間Sa内の空気を吸い込む吸い込み口33と、セル空間Sa内に空気を吹き出す4つの吹き出し口32a〜32dとが形成されている。底面34は、室内空間Aに面する化粧面であり、略四角形の形状を有している。4つの吹き出し口32a〜32dは、それぞれ略四角形の底面34の4辺に沿って形成されており、底面34の中央に略四角形に形成されている吸い込み口33を囲んでいる。また、底面34には、各吹き出し口32a〜32dを開閉するフラップ31a〜31dが設けられている。室内機30aから吹き出される空気の進路は、このフラップ31a〜31dの傾きによって決定されることになる。
【0060】
ここで再び図2を参照すると、室内機30aは、制御部35を有している。この制御部35は、フラップ31a〜31dを開閉するモータに接続されており、フラップ31a〜31dの開閉を制御することができる。また、この制御部35は、室内ファン36を回転駆動するファンモータに接続されており、室内ファン36の回転数を制御することができる。さらに、この制御部35は、リモコン40aと有線または無線通信することができる。利用者は、このリモコン40aを介して室内機30aに対する運転指令、例えば、運転のオンオフや運転モード、設定温度、風量、風向などを入力することができるようになっている。なお、図2では、各室内機30a,30b,・・・,30yにリモコン40a,40b,・・・,40yが1つずつ対応するように描かれているが、他の実施形態においては、任意の数のリモコンを用意することができる。
【0061】
<空調制御装置の動作>
図6は、空調制御装置1が空気調和装置の室内機30a,30b,・・・,30yを制御する処理の流れを示すフローチャートであり、この処理は、利用者がリモコン40a,40b,・・・,40yを介して室内機30a,30b,・・・,30yのいずれかの運転(但し、送風のみを行う送風モードでの運転を除く。以下、明示されない場合を除いて第1実施形態の説明において同じ。)を開始または停止させた時に開始する。利用者によってリモコン40a,40b,・・・,40yに入力された運転指令は、それぞれ室内機30a,30b,・・・,30yの制御部35および通信ネットワーク3を介して空調制御装置1の制御部10へと送信される。
【0062】
以下、室内空間Aのうち、利用者がセル空間Sf〜Sh,Sk〜Sm,Sp〜Srから構成される空間M(図1参照)のみを空調することを希望している場合を具体例として挙げて、図6に示す処理について説明する。この具体例では、利用者は、リモコン40a,40b,・・・,40yを介して、室内空間Aに設置されている全ての室内機30a,30b,・・・,30yのうち、空間Mに設置されている室内機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rの運転を選択する。すなわち、空間Mは、利用者が空調することを希望している空調対象空間である。例えば、空間Mは、利用者が在席することになる在席空間であり、空間Mに含まれないセル空間Sa〜Se,Si,Sj,Sn,So,Ss,St,Su〜Syは、利用者が存在しない不在空間である。
【0063】
ステップS1では、制御部10は、運転機特定部11として動作する。運転機特定部11は、リモコン40a,40b,・・・,40yから送られてきた運転指令に基づいて、全ての室内機30a,30b,・・・,30yのうち現在利用者が運転させることを選択している室内機(以下、運転機)30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rを特定する。
【0064】
次に、ステップS2では、制御部10は、ステップS1において特定された運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rが、全ての室内機30a,30b,・・・,30yの一部に相当するか否かを判定する。一部に相当する場合、すなわち、現在利用者により一部の室内機のみの運転が選択されている場合には、処理はステップS3に進み、そうでない場合には、処理はステップS6に進む。上記具体例の場合には、処理は、ステップS3に進むことになる。
【0065】
ステップS3では、制御部10は、隣接機特定部12として動作する。隣接機特定部12は、ステップS1において特定された運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rに隣接する室内機(以下、隣接機)30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wを特定する。なお、このステップS3において隣接機とされるのは、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rのいずれかに隣接する全ての室内機30a〜30c,30f〜30i,30k〜30n,30p〜30s,30u〜30wのうち、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rそのものでない室内機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wである。より具体的には、隣接機特定部12は、記憶部20に記憶されている配置情報管理テーブル21を参照して、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rのいずれかに隣接する室内機30a〜30c,30f〜30i,30k〜30n,30p〜30s,30u〜30wを全て特定した後、特定した全ての室内機30a〜30c,30f〜30i,30k〜30n,30p〜30s,30u〜30wから運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rそのものを除外することにより隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wを特定する。なお、隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wは、空間Mに隣接する隣接空間(セル空間Sa〜Sc,Si,Sn,Ss,Su〜Sw)内に存在することになる。隣接空間(セル空間Sa〜Sc,Si,Sn,Ss,Su〜Sw)は、空調対象空間ではないセル空間Sa〜Se,Si,Sj,Sn,So,Ss,St,Su〜Syに含まれることになる。
【0066】
そして、ステップS3の後、処理は、ステップS4およびステップS5に進む。ステップS4とステップS5は、並列に実行される。
【0067】
ステップS4では、制御部10は、運転機制御部13として動作する。運転機制御部13は、利用者が空調することを希望している空間Mを2つのブロックに分割する。2つのブロックとは、空間Mとその外側の空間(セル空間Sa〜Se,Si,Sj,Sn,So,Ss,St,Su〜Sy)との境界を規定する境界側空間M1と、境界側空間M1に囲まれる内側空間M2とである。そして、運転機制御部13は、内側空間M2内の室内機30k,30lに対しては、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定のとおりの制御を行う。一方、運転機制御部13は、境界側空間M1内の室内機30f〜30h,30m,30p〜30rに対しては、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された諸設定よりも能力を弱めた制御、例えば、設定温度を冷房運転モードであれば所定量だけ上げ、暖房モードであれば所定量だけ下げ、風量を所定段階だけ下げた制御を行う。
【0068】
このように、このステップS4では、利用者が空調することを希望していない空間(セル空間30a〜30e,30i,30j,30n,30o,30s〜30y)へと拡散しやすい境界側空間M1内の空気を能力を弱めて空調することにより、省エネルギーを実現することができる。
【0069】
また、ステップS5では、制御部10は、隣接機制御部14として動作する。隣接機制御部14は、ステップS3において特定された隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wにサーモオフ運転、すなわち、送風のみを行う送風モードでの運転を行わせる。このとき、隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの風向は、下向き、または、隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの外側に向けた斜め下向き、あるいは、これらの方向間をスイングするスイングモードとされる。なお、ここでいう「斜め下向き」とされる具体的な角度は、室内機30a,30b,・・・,30y間の距離に応じて予め定められていてもよいし、こうした距離に関する情報が予め記憶されている記憶部20を参照して、自動的に算出されるようになっていてもよい。あるいは、風向は、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rでの設定が「下向き」であればより下向きになるように調整されるなど、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rでの設定に合わせて決定されるようになっていていてもよい。さらに、風量は、「強風」等として一律に定められていてもよいし、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rでの設定が「強風」であれば「強風」、「弱風」であれば「弱風」など、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rでの設定に合わせて決定されるようになっていていてもよい。
【0070】
これにより、このステップS5では、利用者が空調することを希望している空間M内の運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rにより空調された空気が、利用者が空調することを希望している空間Mから拡散することを抑制することができる。
【0071】
なお、運転機特定部11により運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rとしても、隣接機特定部12により隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wとしても特定されなかった室内機30d,30e,30j,30o,30t,30x,30yは、利用者により送風モードでの運転が選択されていない限り、停止状態に保たれることになる。
【0072】
図7は、上記具体例におけるステップS4およびステップS5が実行されている間の室内空間Aの様子を示している。
【0073】
なお、ステップS2の後に処理がステップS6へと進んだ場合には、室内空間A内の各室内機30a,30b,・・・,30yが、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定のとおりに制御されることになる。
【0074】
<特徴>
上記実施形態では、複数の室内機30a,30b,・・・,30yの設置された、開けた広い1つの室内空間Aにおいて、利用者により一部の室内機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rのみの空調運転が指令された場合には、そのような一部の室内機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rを囲む室内機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wが送風運転を行うことにより、空調すべき空間Mがエアカーテンで包まれることになる。これにより、空調すべき空間Mから空調された空気が流出することが抑制されるようになっており、省エネルギーを実現することができる。
【0075】
<変形例>
(1)
上記実施形態では、図6のステップS4において、利用者が空調することを希望している空間Mが2つのブロック(境界側空間M1および内側空間M2)に分割され、ブロックごとに異なる制御が行われるようになっているが、このような制御が省略されてもよい。すなわち、空間M全体に対して、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された諸設定のとおりの制御が行われてもよい。
【0076】
(2)
上記実施形態では、図6のステップS5において、隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wはサーモオフ運転を行うように制御されるが、微冷房運転または微暖房運転を行うように制御されてもよい。この場合、この隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの微冷房運転または微暖房運転により、利用者が空調することを希望している空間Mの冷房運転または暖房運転が補助されることになる。
【0077】
(3)
上記実施形態において、室内空間A内に存在する人や動物などの生体の位置を自動的に検知することができる位置特定システムが導入されてもよい。例えば、このような位置特定システムとして、室内空間A内の適当な複数の場所に赤外線センサが設置されてもよいし、室内空間A内の生体が発信器を携帯し、この発信器からの信号を検出可能な受信器が室内空間A内の適当な複数の場所に設置されてもよい。また、発信器としては、ICタグなどが用いられてもよい。位置特定システムとして発信器および受信器が導入される場合には、制御部10などが、受信器により受信された発信器からの信号に基づいて、発信器の位置を三角測量などの方法によって特定する。さらに、主として室内空間Aがオフィスフロアなどである場合であるが、このような位置特定システムとして室内空間Aに導入されている入退室管理システムや、室内空間A内で働く従業員が使用する、在室状況を示す情報を手動で入力可能なパソコンを、空調制御装置1に連動させることにより利用してもよい。
【0078】
そして、この場合において、このような位置特定システムにより特定された生体の位置情報は、空調制御装置1の制御部10へと送信される。そして、図6のステップS2では、運転機特定部11は、リモコン40a,40b,・・・,40yから送られてきた運転指令に加えて、または代わりとして、位置特定システムにより特定された生体の位置情報に基づいて、運転機を特定する。また、この場合、図6の処理は、制御部10にリモコン40a,40b,・・・,40yから利用者により入力された運転指令が送信されてきた場合に加えて、または代わりとして、位置特定システムから生体の位置情報が送信されてきた場合に実行されるようになっていてもよい。
【0079】
(4)
上記実施形態において、各室内機30a,30b,・・・,30yのフラップ31a〜31dの開閉がフラップ31a〜31dごとに独立して制御可能になっていてもよい。
【0080】
そして、この場合において、図6のステップS5における隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wのサーモオフ運転が、以下のように制御されるようになっていてもよい。
【0081】
すなわち、隣接機制御部14は、各隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの4つのフラップ31a〜31dのうち、運転機30f〜30h,30k〜30m,30p〜30rに対応する空間Mに向けて送風を行うことができるフラップのみから空気を吹き出させる。例えば、隣接機制御部14は、各隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの4つのフラップ31a〜31dのうち、吸い込み口33よりも空間Mに近いフラップのみから空気を吹き出させ、その他のフラップからの空気の吹き出しを控えさせる。なお、この変形例では、例えば、記憶部20には、配置情報管理テーブル21に代えて図8に示す配置情報管理テーブル22が記憶されている。すなわち、配置情報管理テーブル22には、各室内機30a,30b,・・・,30yの各フラップ31a〜31dに隣接する室内機30a,30b,・・・,30yを示す情報が管理されている。これにより、隣接機制御部14は、この配置情報管理テーブル22を参照して、利用者が空調することを希望している空間Mに向けて送風を行うことができるフラップを特定することができる。
【0082】
(5)
上記実施形態において、利用者がリモコン40a,40b,・・・,40yなどを介して各室内機30a,30b,・・・,30yに対して「エアカーテンモード」を選択することができるようになっていてもよい。
【0083】
この場合、空調制御装置1の制御部10では、図6の処理に代えて以下の処理が実行される。
【0084】
すなわち、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して「エアカーテンモード」が選択された室内機30a,30b,・・・,30yに対しては、制御部10が、図6のステップS5または変形例(2)と同様に、サーモオフ運転、微冷房運転または微暖房運転を行わせる。このとき、「エアカーテンモード」が選択された室内機30a,30b,・・・,30yの風向は、下向き、または「エアカーテンモード」が選択された室内機30a,30b,・・・,30yの外側に向けた斜め下向き、あるいは、これらの方向間をスイングするスイングモードとされる。また、図6のステップS5と同様に、ここでいう「斜め下向き」とされる具体的な角度は、室内機30a,30b,・・・,30y間の距離に応じて予め定められていてもよいし、こうした距離に関する情報が予め記憶されている記憶部20を参照して、自動的に算出されるようになっていてもよい。
【0085】
一方、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して「エアカーテンモード」以外のモード(例えば、冷房運転モード、暖房運転モード)が選択された室内機30a,30b,・・・,30yに対しては、制御部10は、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定のとおりの制御を行う。
【0086】
(6)
上記実施形態において、空調制御装置1における図6の処理に代えて以下の処理が実行されるようになっていてもよい。
【0087】
すなわち、各室内機30a,30b,・・・,30yが、それぞれの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値に応じて制御されるようになっていてもよい。各室内機30a,30b,・・・,30yの制御部35は、吸い込み温度センサの出力値に基づいて、空調すべき空間Mから冷気または暖気が流出してきていると判断される場合には、ステップS5または変形例(2)と同様に、室内機30a,30b,・・・,30yにサーモオフ運転、微冷房運転または微暖房運転を行わせる。このとき、風向は、下向き、または室内機30a,30b,・・・,30yの外側に向けた斜め下向き、あるいは、これらの方向間をスイングするスイングモードとされる。なお、図6のステップS5と同様に、ここでいう「斜め下向き」とされる具体的な角度は、室内機30a,30b,・・・,30y間の距離に応じて予め定められていてもよいし、こうした距離に関する情報が予め記憶されている記憶部20を参照して、自動的に算出されるようになっていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態のステップS5において、各隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値に応じて、隣接機30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30wの運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定が調整されるようになっていてもよい。
【0089】
(7)
空調制御装置1は、室内機30a,30b,・・・,30yを含む空気調和装置の集中リモコンであってもよい。したがって、利用者は、空調制御装置1の入力部(図示されない)を介して、各室内機30a,30b,・・・,30yに対する運転指令を入力することも可能である。なお、空調制御装置1の入力部(図示されない)を介して入力された運転指,1令は、リモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転指令と同様に処理される。
【0090】
(8)
上記変形例(1)〜(6)を任意に組み合わせてもよい。
【0091】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る空調制御装置101について説明する。なお、第2実施形態と第1実施形態とで共通する構成要素については、同じ参照符号を付している。以下、第1実施形態との差異を中心として説明を行う。
【0092】
<空調制御装置の設置環境>
図9は、空調制御装置101により制御される空気調和装置の室内機130a,130b,・・・,130yが設置された室内空間Bの様子を示す。室内空間Bは、オフィスフロアや飲食店などの開けた広い1つの空間である。
【0093】
室内空間Bの天井には、複数の室内機130a,130b,・・・,130yが適当な間隔を開けて埋め込まれている。図9中、破線で区切られたセル空間Ta,Tb,・・・,Tyは、仮想的に分割された空間であって、それぞれ室内機130a,130b,・・・,130yに対応しており、それぞれ室内機130a,130b,・・・,130yを含む空間である。また、セル空間Ta,Tb,・・・,Tyは、それぞれその内部の室内機130a,130b,・・・,130yの空調運転の対象となっているだけでなく、その周囲の空間Ta,Tb,・・・,Tyに含まれる室内機130a,130b,・・・,130yの空調運転の対象ともなっている。すなわち、例えば、空調機130gは、セル空間Tgだけでなく、その周囲のセル空間Ta〜Tc,Tf,Th,Tk〜Tmをも空調運転の対象としている。
【0094】
<空調制御装置の構成>
図10は、空調制御装置101の構成を示すブロック図である。空調制御装置101は、制御部10および記憶部20を有している。空調制御装置101は、通信ネットワーク3を介して各室内機130a,130b,・・・,130yの制御部35に接続されており、制御部35を介して各室内機130a,130b,・・・,130yの各部の動作を制御することができるようになっている。
【0095】
制御部10は、記憶部20に記憶されている制御プログラムを読み出して実行することにより、運転機特定部111、隣接機特定部112、運転機制御部113および隣接機制御部114などとして動作する。これらの各部111〜114の動作の詳細については後述する。
【0096】
記憶部20は、室内空間B内における室内機130a,130b,・・・,130yの配置に関する情報をまとめた配置情報121を記憶している。配置情報121は、例えば、室内空間B内を地図化した地図情報であり、各室内機130a,130b,・・・,130yの互いの位置関係を示す情報を有している。
【0097】
<空気調和装置の構成>
図11および図12に示すように、室内機130aは、第1実施形態に係る室内機30aと同様の構成を有している。また、室内機130b,・・・,130yについても、第1実施形態に係る室内機30b,・・・,30yと同様の構成を有している。
【0098】
<空調制御装置の動作>
図13は、空調制御装置101が空気調和装置の室内機130a,130b,・・・,130yを制御する処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、利用者がリモコン40a,40b,・・・,40yを介して室内機130a,130b,・・・,130yのいずれかの運転(但し、送風のみを行う送風モードでの運転を除く。以下、明示されない場合を除いて第2実施形態の説明において同じ。)を開始または停止させた時に開始する。利用者によってリモコン40a,40b,・・・,40yに入力された運転指令は、それぞれ室内機130a,130b,・・・,130yの制御部35および通信ネットワーク3を介して空調制御装置101の制御部10へと送信される。
【0099】
以下、室内空間Bのうち、利用者がセル空間Tf〜Th,Tk〜Tm,Tp〜Trから構成される空間N(図9参照)のみを空調することを希望している場合を具体例として挙げて、図13に示す処理について説明する。この具体例では、利用者は、リモコン40a,40b,・・・,40yを介して、室内空間Bに設置されている全ての室内機130a,130b,・・・,130yのうち、空間Nに設置されている室内機130f〜130h,130k〜130m,130p〜130rの運転を選択する。すなわち、空間Nは、利用者が空調することを希望している空調対象空間である。例えば、空間Nは、利用者が在席することになる在席空間であり、空間Nに含まれないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyは、利用者が存在しない不在空間である。
【0100】
ステップS101では、制御部10は、リモコン40a,40b,・・・,40yから送られてきた運転指令に基づいて、全ての室内機130a,130b,・・・,130yのうち現在利用者が運転させることを選択している室内機130f〜130h,130k〜130m,130p〜130rを特定する。そして、制御部10は、記憶部20に記憶されている配置情報121を参照して、利用者が運転させることを選択している室内機130f〜130h,130k〜130m,130p〜130rに対応する空間Nを特定する。続いて、制御部10は、利用者が空調することを希望している空間Nを、2つのブロックに分割することを試みる。2つのブロックとは、空間Nとその他の空間(セル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Ty)との境界を規定する境界側空間N1と、境界側空間N1に囲まれる内側空間N2とである。そして、制御部10は、空間Nを2つのブロックに分割することができた場合、すなわち、境界側空間N1および内側空間N2がともに存在する場合には、処理はステップS102に進み、そうでない場合には、処理はステップS106に進む。上記具体例の場合には、処理は、ステップS102に進むことになる。
【0101】
次に、ステップS102では、制御部10は、運転機特定部111として動作する。運転機特定部111は、記憶部20に記憶されている配置情報121を参照して、ステップS101で導出された内側空間N2内の室内機130k,130l(以下、運転機)を特定する。
【0102】
ステップS103では、制御部10は、隣接機特定部112として動作する。隣接機特定部112は、記憶部20に記憶されている配置情報121を参照して、ステップS101で導出された境界側空間N1内の室内機130f〜130h,130m,130p〜130r(以下、隣接機)を特定する。なお、境界側空間N1と内側空間N2とが隣接しているため、これらの空間にそれぞれ含まれる隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rと運転機130k,130lとも隣接していることになる。
【0103】
そして、ステップS103の後、処理は、ステップS104およびステップS105に進む。ステップS104とステップS105は、並列に実行される。
【0104】
ステップS104では、制御部10は、運転機制御部113として動作する。運転機制御部113は、運転機130k,130lを、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定のとおりに制御する。
【0105】
また、ステップS105では、制御部10は、隣接機制御部114として動作する。隣接機制御部114は、ステップS103において特定された隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rにサーモオフ運転、すなわち、送風のみを行う送風モードでの運転を行わせる。このとき、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風向は、下向き、または、外側に向けた斜め下向き、あるいは、これらの方向間をスイングするスイングモードとされる。なお、ここでいう「斜め下向き」とされる具体的な角度は、室内機130a,130b,・・・,130y間の距離に応じて予め定められていてもよいし、こうした距離に関する情報が予め記憶されている記憶部20を参照して、自動的に算出されるようになっていてもよい。あるいは、風向は、運転機130k,130lでの設定が「下向き」であればより下向きになるように調整されるなど、運転機130k,130lでの設定に合わせて決定されるようになっていていてもよい。さらに、風量は、「強風」等として一律に定められていてもよいし、運転機130k,130lでの設定が「強風」であれば「強風」、「弱風」であれば「弱風」など、運転機130k,130lでの設定に合わせて決定されるようになっていていてもよい。
【0106】
これにより、このステップS105では、利用者が空調することを希望している空間N内の運転機130k,130lにより空調された空気が、利用者が空調することを希望している空間Nから拡散することを抑制することができる。
【0107】
なお、運転機特定部111により運転機130k,130lとしても、隣接機特定部112により隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rとしても特定されなかった室内機130a〜130e,130i,130j,130n,130o,130s,130t,130u〜130yは、利用者により送風モードでの運転が選択されていない限り、停止状態に保たれることになる。
【0108】
図14は、上記具体例におけるステップS104およびステップS105が実行されている間の室内空間Bの様子を示している。
【0109】
なお、ステップS101の後に処理がステップS106へと進んだ場合には、室内空間B内の各室内機130a,130b,・・・,130yが、利用者によりリモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定のとおりに制御されることになる。
【0110】
<特徴>
上記実施形態では、複数の室内機130a,130b,・・・,130yの設置された、開けた広い1つの室内空間Bにおいて、利用者により一部の室内機130f〜130h,130k〜130m,130p〜130rのみの空調運転が指令された場合には、境界側空間N1内の室内機130f〜130h,130m,130p〜130rが送風運転を行うことにより、空調すべき空間Nがエアカーテンで包まれることになる。境界側空間N1とは、空間Nとその他の空間(セル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Ty)との境界を空間N側において規定する空間である。これにより、空調すべき空間Nから空調された空気が流出することが抑制されるようになっており、省エネルギーを実現することができる。
【0111】
<変形例>
(1)
上記実施形態では、図13のステップS105において、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rはサーモオフ運転を行うように制御されるが、微冷房運転または微暖房運転を行うように制御されてもよい。この場合、この隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの微冷房運転または微暖房運転により、利用者が空調することを希望している空間Nの冷房運転または暖房運転が補助されることになる。
【0112】
(2)
上記実施形態において、室内空間B内に存在する人や動物などの生体の位置を自動的に検知することができる位置特定システムが導入されてもよい。例えば、このような位置特定システムとして、室内空間B内の適当な複数の場所に赤外線センサが設置されてもよいし、室内空間B内の生体が発信器を携帯し、この発信器からの信号を検出可能な受信器が室内空間B内の適当な複数の場所に設置されてもよい。また、発信器としては、ICタグなどが用いられてもよい。位置特定システムとして発信器および受信器が導入される場合には、制御部10などが、受信器により受信された発信器からの信号に基づいて、発信器の位置を三角測量などの方法によって特定する。さらに、主として室内空間Bがオフィスフロアなどである場合であるが、このような位置特定システムとして室内空間Bに導入されている入退室管理システムや、室内空間B内で働く従業員が使用する、在室状況を示す情報を手動で入力可能なパソコンを、空調制御装置101に連動させることにより利用してもよい。
【0113】
そして、この場合において、このような位置特定システムにより特定された生体の位置情報は、空調制御装置101の制御部10へと送信される。そして、図13のステップS102では、運転機特定部111は、リモコン40a,40b,・・・,40yから送られてきた運転指令に加えて、または代わりとして、位置特定システムにより特定された生体の位置情報に基づいて、運転機および隣接機を特定する。また、この場合、図13の処理は、制御部10にリモコン40a,40b,・・・,40yから利用者により入力された運転指令が送信されてきた場合に加えて、または代わりとして、位置特定システムから生体の位置情報が送信されてきた場合に実行されるようになっていてもよい。
【0114】
(3)
上記実施形態において、各室内機130a,130b,・・・,130yのフラップ31a〜31dの開閉がフラップ31a〜31dごとに独立して制御可能になっていてもよい。
【0115】
そして、この場合において、図13のステップS105における隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rのサーモオフ運転が、以下のように制御されるようになっていてもよい。
【0116】
すなわち、隣接機制御部114は、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの4つのフラップ31a〜31dから別々の方向に空気を吹き出させる。したがって、例えば、吸い込み口33よりも内側空間N2から遠い(空調対象空間でないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyに近い)フラップからは下向きに吹き出させ、吸い込み口33よりも内側空間N2に近い(空調対象空間でないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyから遠い)フラップからは斜め下向きに吹き出させる(図15(a)参照)。あるいは、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの4つのフラップ31a〜31dのうち、吸い込み口33よりも内側空間N2から遠い(空調対象空間でないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyに近い)フラップのみから空気を吹き出させる(図15(b)参照)。このとき、吸い込み口33よりも内側空間N2から近い(空調対象空間でないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyから遠い)フラップからは、空気の吹き出しが行われない。
【0117】
なお、この変形例では、例えば、記憶部20に記憶されている配置情報121が、各室内機130a,130b,・・・,130yにおける各フラップ31a〜31dの位置を示す情報を有している。これにより、隣接機制御部114は、この配置情報121を参照して、吸い込み口33よりも内側空間N2に近いまたは遠いフラップを特定することができる。
【0118】
(4)
上記実施形態のステップS105において、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値に応じて、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの運転モードや設定温度、風量、風向などの諸設定が調整されるようになっていてもよい。
【0119】
(5)
上記実施形態において、利用者により冷房モードが選択されている場合において、隣接機制御部114は、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rからの送風の方向が境界側空間N1内の人や動物などの生体に向かう方向となるような制御を行ってもよい(図16参照)。なお、図16に示す例では、変形例(3)のように、各室内機130a,130b,・・・,130yの各フラップ31a〜31dは、独立して開閉可能になっている。そして、この場合において、空調制御装置101には、室内空間B内に存在する生体の位置を自動的に検知することができる位置特定システムが接続されていてもよい。このような位置特定システムとしては、変形例(2)において例示したものがある。このような位置特定システムにより特定された生体の位置情報は、空調制御装置101の制御部10へと送信される。そして、図13のステップS105では、隣接機制御部114が、位置特定システムにより特定された生体の位置情報に基づいて、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風向を制御する。
【0120】
上記実施形態では、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rが利用者により選択されたとおりの運転を行わないために、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rに対応する境界側空間N1では温度が高くなって快適さが損なわれる虞がある。そこで、当該変形例では、運転機130k,130lが冷房運転を行う場合には、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rからそれぞれの近傍に存在する生体に向けて空気を吹き出させることとしている。すなわち、当該変形例では、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rが扇風機としての役割を果たすことになり、境界側空間N1内の気流が促進され、境界側空間N1と内側空間N2との間の体感温度の差が縮まって、上記問題が解消されるようになっている。
【0121】
また、当該変形例では、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rが設置された境界側空間N1と、空調対象空間でないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyとの温度差があまり大きくならないため、冷気が空間Nから拡散することが抑制されるようになっている。
【0122】
さらに、境界側空間N1(セル空間Tf〜Th,Tm,Tp〜Tr)と内側空間N2(セル空間Tk,Tl)との間の体感温度の差が指数化されて計測され、当該体感温度の差が所定値以下となるように、隣接機制御部114により各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風向が制御されるようになっていてもよい。この場合において、当該体感温度の差を所定値以下に保つことができない場合には、運転機130k,130lの能力、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの能力、または、その双方の能力を上げるような制御が為されてもよい。なお、体感温度の差とは、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rおよび運転機130k,130lの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値やドラフト感に対する利用者の好み等に関する情報に基づいて指数化され得る。また、体感温度の差の代わりに、境界側空間N1(セル空間Tf〜Th,Tm,Tp〜Tr)の快適性が指数化されて計測されるようになっていてもよい。なお、快適性とは、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値やドラフト感に対する利用者の好み等に関する情報に基づいて指数化され得る。
【0123】
(6)
上記実施形態において、利用者により冷房モードが選択されている場合において、隣接機制御部114は、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風量が、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rに対して利用者により選択された設定値よりも大きくなるような制御を行ってもよい。あるいは、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風量が、運転機130k,130lにおいて選択されている設定値よりも所定の段階だけ大きくなるような制御を行ってもよい。あるいは、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風量が、最大の風量に設定されるような制御を行ってもよい。
【0124】
上記実施形態では、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rが利用者により選択されたとおりの運転を行わないために、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rに対応する境界側空間N1では温度が高くなって快適さが損なわれる虞がある。そこで、当該変形例では、運転機130k,130lが冷房運転を行う場合には、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風量を大きくすることとしている。すなわち、当該変形例では、境界側空間N1内の気流が促進され、境界側空間N1と内側空間N2との間の体感温度の差が縮まって、上記問題が解消されるようになっている。
【0125】
また、当該変形例では、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rが設置された境界側空間N1と、空調対象空間でないセル空間Ta〜Te,Ti,Tj,Tn,To,Ts,Tt,Tu〜Tyとの温度差があまり大きくならないため、冷気が空間Nから拡散することが抑制されるようになっている。
【0126】
さらに、境界側空間N1(セル空間Tf〜Th,Tm,Tp〜Tr)と内側空間N2(セル空間Tk,Tl)との間の体感温度の差が指数化されて計測され、当該体感温度の差が所定値以下となるように、隣接機制御部114により各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風量が制御されるようになっていてもよい。この場合において、当該体感温度の差を所定値以下に保つことができない場合には、運転機130k,130lの能力、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの能力、または、その双方の能力を上げるような制御が為されてもよい。なお、体感温度の差とは、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rおよび運転機130k,130lの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値やドラフト感に対する利用者の好み等に関する情報に基づいて指数化され得る。また、体感温度の差の代わりに、境界側空間N1(セル空間Tf〜Th,Tm,Tp〜Tr)の快適性が指数化されて計測されるようになっていてもよい。なお、快適性とは、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの吸い込み口33付近に取り付けられた吸い込み温度センサの出力値やドラフト感に対する利用者の好み等に関する情報に基づいて指数化され得る。
【0127】
(7)
上記実施形態において、利用者により冷房モードが選択されている場合において、運転機制御部113は、各運転機130k,130lからの送風の方向が隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rに向かう方向となるような制御を行ってもよい(図17参照)。この場合、各運転機130k,130lの風向は概ね水平になり、空間Nの天井付近では天井を這うような気流が形成されることになる。これにより、下方に溜まり易い性質のある冷気が空間Nの天井付近に溜まり易くなり、運転機130k,130lから吹き出された冷気が直ちに空間Nの床付近へと拡散するのではなく、天井付近に溜められた冷気が時間をかけて除々に床付近に向けて拡散してゆくことになる。したがって、当該変形例では、空間N全体を均一に冷房することができる。
【0128】
なお、図17に示す例では、変形例(3)のように、各室内機130a,130b,・・・,130yの各フラップ31a〜31dが独立して開閉可能になっており、各運転機130k,130lの各フラップ31a〜31dからの気流が互いに衝突することがないように制御されている。その結果、空間Nの天井を這うような気流が、運転機130k,130lから隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rに向かって流れ易くなっている。そして、運転機130k,130lからの冷気が、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rからの下向きまたは斜め下向きの気流と合流して、空間N内に旋回気流が形成されることになる。これにより、空間N全体を均一に冷房することができるようになっている。
【0129】
さらに、図17に示す例では、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rは、隣接機制御部114により以下のように制御されている。すなわち、隣接機制御部114は、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの各フラップ31a〜31dのうち、運転機130k,130lに近い側のフラップからの送風を停止させ、吸い込み口33よりも内側空間N2から遠いフラップのみから空気を吹き出させている。これにより、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rは、運転機130k,130lからの冷気を吸い込み口33を介して吸い込み易くなっており、当該冷気が隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rから吹き出されることにより、運転機130k,130lで生成された冷気が空間N内に行き渡るようになっている。
【0130】
さらに、当該変形例において、変形例(5)および(6)のように、隣接機制御部114が、境界側空間N1と内側空間N2との間の体感温度の差や境界側空間N1の快適性に基づいて、各隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rの風向および風量の制御を行ってもよい。したがって、隣接機130f〜130h,130m,130p〜130rからの送風を境界側空間N1内の生体に向けながら、空間N内に旋回気流を形成することも可能である。
【0131】
(8)
空調制御装置101は、室内機130a,130b,・・・,130yを含む空気調和装置の集中リモコンであってもよい。したがって、利用者は、空調制御装置101の入力部(図示されない)を介して、各室内機130a,130b,・・・,130yに対する運転指令を入力することも可能である。なお、空調制御装置101の入力部(図示されない)を介して入力された運転指令は、リモコン40a,40b,・・・,40yを介して入力された運転指令と同様に処理される。
【0132】
(9)
上記変形例(1)〜(6)を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、室内機群の設置された1つの空間の一部の空間にのみ空調が必要とされる場合において、その一部の空間における空調運転効率を向上させ、省エネルギーを図ることができるという効果を有し、1つの空間に設置された空気調和装置の複数の室内機からなる室内機群の動作を統括して制御する空調制御装置および空調制御方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空調制御装置により制御される空気調和装置の室内機の設置された室内空間の様子を示す図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る空調制御装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る配置情報管理テーブルを示す図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る空気調和装置の構成を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る室内機の外観図。
【図6】本発明の第1実施形態に係る空調制御装置が室内機を制御する処理の流れを示すフローチャート。
【図7】本発明の第1実施形態に係る空調制御中の室内空間の様子を示す図。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例(4)に係る配置情報管理テーブルを示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る空調制御装置により制御される空気調和装置の室内機の設置された室内空間の様子を示す図。
【図10】本発明の第2実施形態に係る空調制御装置の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る空気調和装置の構成を示す図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る室内機の外観図。
【図13】本発明の第2実施形態に係る空調制御装置が室内機を制御する処理の流れを示すフローチャート。
【図14】本発明の第2実施形態に係る空調制御中の室内空間の様子を示す図。
【図15】(a)本発明の第2実施形態の変形例(3)に係る空調制御中の室内空間の様子を示す図。(b)本発明の第2実施形態の別の変形例(3)に係る空調制御中の室内空間の様子を示す図。
【図16】本発明の第2実施形態の変形例(5)に係る空調制御中の室内空間の様子を示す図。
【図17】本発明の第2実施形態の変形例(7)に係る空調制御中の室内空間の様子を示す図。
【符号の説明】
【0135】
1,101 空調制御装置
10 制御部
11,111 運転機特定部
12,112 隣接機特定部
13,113 運転機制御部
14,114 隣接機制御部
20 記憶部
21,22 配置情報管理テーブル(配置情報)
30a,30b,・・・,30y 室内機
30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r 運転機
30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w 隣接機
31a〜31d フラップ(吹き出し方向調整手段)
33 吸い込み口
40a,40b,・・・,40y リモコン
121 配置情報
130a,130b,・・・,130y 室内機
130k,130l 運転機
130f〜130h,130m,130p〜130r 隣接機
A,B 室内空間
M,N 空調対象空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの空間(A,B)に設置された空気調和装置の複数の室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)からなる室内機群の動作を統括して制御する空調制御装置(1,101)であって、
前記室内機群に含まれる室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)のうち空調運転を行う室内機である運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)を特定する運転機特定部(11,111)と、
前記室内機群に含まれる室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)のうち前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)に隣接する室内機である隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w,130f〜130h,130m,130p〜130r)を特定する隣接機特定部(12,112)と、
前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)に空調運転を行わせる運転機制御部(13,113)と、
前記空間(A,B)の一部であって前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)の空調運転の対象となる空調対象空間(M,N)から前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)の空調運転によって空調された空気が拡散することを抑制する気流を生成する気流生成運転を前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w,130f〜130h,130m,130p〜130r)に行わせる隣接機制御部(14,114)と、
を備える、空調制御装置(1,101)。
【請求項2】
前記気流生成運転は、サーモオフ運転である、
請求項1に記載の空調制御装置(1,101)。
【請求項3】
前記気流生成運転は、微冷房運転または微暖房運転である、
請求項1に記載の空調制御装置(1,101)。
【請求項4】
前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w,130f〜130h,130m,130p〜130r)は、前記空間(A,B)の天井に設置されており、
前記気流生成運転は、下向きまたは斜め下向きに送風する送風運転である、
請求項1から3のいずれかに記載の空調制御装置(1,101)。
【請求項5】
利用者に前記室内機群に含まれる室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)に対する運転指令を入力させる運転指令入力部(40a,40b,・・・,40y)、
をさらに備え、
前記運転機特定部(11,111)は、前記運転指令入力部(40a,40b,・・・,40y)を介して入力された前記運転指令に基づいて、前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)を特定する、
請求項1から4のいずれかに記載の空調制御装置(1,101)。
【請求項6】
前記空間(A,B)内に存在している生体の位置を特定する生体位置特定部、
をさらに備え、
前記運転機特定部(11,111)は、前記生体位置特定部により特定される前記生体の位置に基づいて、前記運転機を特定する、
請求項1から4のいずれかに記載の空調制御装置(1,101)。
【請求項7】
前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w)は、吹き出される空気の方向を調整する複数の吹き出し方向調整手段(31a〜31d)を有し、
前記気流生成運転は、前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w)から前記空調対象空間(M)に向かう方向にのみ空気を吹き出させるように前記複数の吹き出し方向調整手段(31a〜31d)を独立して制御することにより前記気流を生成する運転である、
請求項1から6のいずれかに記載の空調制御装置(1)。
【請求項8】
前記隣接機特定部(12)は、前記運転機特定部(11)により前記運転機として複数の室内機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r)が特定された場合、少なくとも1の前記運転機に隣接する全ての室内機(30a〜30c,30f〜30i,30k〜30n,30p〜30s,30u〜30w)のうち前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r)でない室内機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w)のみを前記隣接機として特定し、
前記運転機制御部(13)は、前記運転機特定部(11)により前記運転機として特定された複数の室内機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r)のうち前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w)に隣接する室内機(30f〜30h,30m,30p〜30r)に、前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w)に隣接しない室内機(30k,30l)よりも能力を弱めた空調運転を行わせる、
請求項1から7のいずれかに記載の空調制御装置(1)。
【請求項9】
前記室内機群に含まれる室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)の前記空間(A,B)内における配置に関する配置情報(21,22,121)を記憶する記憶部(20)、
をさらに備え、
前記隣接機特定部(12,112)は、前記記憶部(20)に記憶されている前記配置情報(21,22,121)に基づいて、前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w,130f〜130h,130m,130p〜130r)を特定する、
請求項1から8のいずれかに記載の空調制御装置(1,101)。
【請求項10】
前記運転機(130k,130l)および前記隣接機(130f〜130h,130m,130p〜130r)は、前記空調対象空間(N)内に存在する、
請求項1に記載の空調制御装置(101)。
【請求項11】
前記運転機制御部(113)は、前記運転機(130k,130l)に冷房運転を行わせ、
前記隣接機制御部(114)は、前記隣接機(130f〜130h,130m,130p〜130r)の風向を、前記隣接機(130f〜130h,130m,130p〜130r)の近傍(N2)の生体に向かう方向となるように制御する、
請求項10に記載の空調制御装置(101)。
【請求項12】
前記隣接機(130f〜130h,130m,130p〜130r)は、前記空間(B)の天井に設置されており、
前記運転機制御部(113)は、前記運転機(130k,130l)に冷房運転を行わせ、
前記運転機制御部(113)は、前記運転機(130k,130l)の風向を、前記隣接機(130f〜130h,130m,130p〜130r)に向かう方向となるように制御する、
請求項10に記載の空調制御装置(101)。
【請求項13】
前記隣接機(130f〜130h,130m,130p〜130r)は、空気を吸い込む吸い込み口(33)および吹き出される空気の方向を調整する複数の吹き出し方向調整手段(31a〜31d)を有し、
前記気流生成運転は、前記複数の吹き出し方向調整手段(31a〜31d)のうち、前記吸い込み口(33)よりも前記運転機(130k,130l)から遠い吹き出し方向調整手段(31a〜31d)のみから前記気流を生成させる運転である、
請求項10に記載の空調制御装置(101)。
【請求項14】
1つの空間(A,B)に設置された空気調和装置の複数の室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)からなる室内機群の動作を統括して制御する空調制御方法であって、
前記室内機群に含まれる室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)のうち空調運転を行う室内機である運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)を特定する運転機特定ステップと、
前記室内機群に含まれる室内機(30a,30b,・・・,30y,130a,130b,・・・,130y)のうち前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)に隣接する室内機である隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w,130f〜130h,130m,130p〜130r)を特定する隣接機特定ステップと、
前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)に空調運転を行わせる第1制御ステップと、
前記空間(A,B)の一部であって前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)の空調運転の対象となる空調対象空間(M,N)から前記運転機(30f〜30h,30k〜30m,30p〜30r,130k,130l)の空調運転によって空調された空気が拡散することを抑制する気流を生成する気流生成運転を前記隣接機(30a〜30c,30i,30n,30s,30u〜30w,130f〜130h,130m,130p〜130r)に行わせる第2制御ステップと、
を備える、空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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