説明

空調方法および二酸化炭素の利用方法ならびに空調システム

【課題】二酸化炭素の発生を抑制可能な電気自動車等において、二次電池等の電力を暖房等の空調のヒーターのために消費するのを抑制して航続距離やライフの減少を防ぎ、効率良く空気を調和することができるとともに、工場等から排出される二酸化炭素の処理問題を解決することができる空調方法および二酸化炭素の利用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載した自動車において、人が乗るための車室内の空気を調和する方法であって、車室内の空気を、メタノールと酸化性ガスを触媒に供給し、メタノールを燃焼させて発生する熱を利用することによって調和し、触媒に供給するメタノールとして、二酸化炭素を原料にして製造したメタノールを用いる空調方法および二酸化炭素の利用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車やハイブリッド(ガソリンエンジン+電気)車、燃料電池自動車のように、二次電池や燃料電池を利用して車輪をモーターで駆動させる自動車の空調方法に関する。また、二酸化炭素の利用方法に関し、特には工場等から排出される排ガス中の二酸化炭素を自動車で利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の一つとして二酸化炭素の増加が挙げられている。二酸化炭素は地球温暖化の要因の一つとして挙げられており、その発生、例えば自動車等から排出されるガス量を抑制しようとしている。そこで、二酸化炭素を排出しない、あるいは、従来品に比べて二酸化炭素の発生を抑制可能な電気自動車やハイブリッド車、燃料電池自動車など(以下、電気自動車等と呼ぶ)の開発に期待が寄せられている。
【0003】
一方、このような電気自動車等では、空調に関して問題点が挙げられている。従来では、暖房用として、PTCヒーターで循環している水を温める方式や、PTCヒーターで空気を直接暖める方式のように電気を使用したヒーターを使用していた(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、これらの自動車では、ガソリン車に比べてエンジンの廃熱が少ないため、例えば電気自動車であれば、空調の際、二次電池に充電した電力をヒーターで消費することになる。しかも、PTCヒーター等の伝熱式ヒーターは電力消費が大きい。
【0005】
このようにヒーターに二次電池等の電力がまわされるため、その分だけ、これらの電気自動車等の航続距離が落ちるという問題があった。そのため、二次電池であれば充電頻度も高くなり、電池自体のライフも短くなる。燃料電池においても燃料の消費が早くなる。
【0006】
また、ヒートポンプ方式を使用した暖房システムも考えられているが、外気温が低いと著しく効率が下がる。また外気から熱を汲みだして暖房するので、あまりに外気温が低いと熱交換器が凍結してしまうという問題がある。特に、ヒーターが必要な寒冷地でヒートポンプ方式ヒーターは効率が著しく低下してしまう。
【0007】
ところで、上記のような電気自動車等によって、自動車からの二酸化炭素の排出量の抑制が試みられているものの、例えば工場等においては二酸化炭素が依然として大気中に排出されている。この工場から排出される二酸化炭素も大量であり、環境上好ましくない。一部で地中に埋める等の手段がとられてはいるがコストがかかってしまう。
このように、工場等から排出される二酸化炭素の処理についても改善策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−147138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の発生を抑制可能な電気自動車等において、二次電池等の電力を暖房等の空調のヒーターのために消費するのを抑制して航続距離やライフの減少を防ぎ、効率良く空気を調和することができるとともに、工場等から排出される二酸化炭素の処理問題を解決することができる空調方法および二酸化炭素の利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載した自動車において、人が乗るための車室内の空気を調和する方法であって、前記車室内の空気を、メタノールと酸化性ガスを触媒に供給し、メタノールを燃焼させて発生する熱を利用することによって調和し、前記触媒に供給するメタノールとして、二酸化炭素を原料にして製造したメタノールを用いることを特徴とする空調方法を提供する。
【0011】
このような空調方法によって、電気自動車等において、従来のようにPTCヒーターに二次電池等の電力を消費する必要がなく、車室内の空気を調和することが可能である。空調のヒーターのために二次電池等の電力を消費する必要をなくすことができるため、その分、従来よりも車輪の駆動に電力をまわすことができ、航続距離を伸ばすことができる。
【0012】
また、車輪の駆動に電力をより多くまわすことができるため、二次電池の充電の頻度を従来に比べて減らすことができ、電池自体のライフを延ばすことができるし、燃料電池においても、車輪駆動以外のための燃料の消費を抑制することができる。
【0013】
さらには、従来のようなヒートポンプ方式のヒーターと異なり、寒冷地等でも外気温に左右されることなく効率良く空調を行うことが可能である。
【0014】
また、空調の際に使用するメタノールは、二酸化炭素を原料にして製造する。例えば工場等から排出される二酸化炭素を原料に用いれば、大気中に排出する二酸化炭素の量を抑制することができ、二酸化炭素の増加による地球環境の悪化を抑制することができる。
【0015】
空調時にメタノールを燃焼させることで二酸化炭素が発生し、大気中に排出されたとしても、そのメタノールは、元々は、例えば大気中に工場等から排出される二酸化炭素から製造されたものとすることができたり、あるいは直接大気中から集められた二酸化炭素から製造されたものとすることができるので、地球環境全体からすると二酸化炭素を再利用していることになる。したがって、地球環境全体において、二酸化炭素の増加を抑制することができる。
【0016】
そして、上記のように二酸化炭素の発生を抑制できることから、電気自動車等の需要がさらに高まり、その産業分野を活性化させることができる。電気自動車等の生産が促され、ガソリン車に代わって使用され、一層、二酸化炭素の抑制を図ることが可能になる。
【0017】
このとき、前記メタノールを、二酸化炭素と、水素を含むガスを反応させて製造することができる。
このような二酸化炭素からのメタノールの製造方法はよく知られており、低コストで実施できる。
【0018】
また、本発明は、二酸化炭素の利用方法であって、二酸化炭素を原料にしてメタノールを製造し、該製造したメタノールと酸化性ガスを触媒に供給し、メタノールを燃焼させて発生する熱を利用して、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載した自動車において、人が乗るための車室内の空気を調和することで、二酸化炭素を利用することを特徴とする二酸化炭素の利用方法を提供する。
【0019】
このような二酸化炭素の利用方法によって、例えば工場等から排出される二酸化炭素を原料にメタノールを製造すれば、大気中の二酸化炭素が増加するのを抑制することができる。地球環境全体において二酸化炭素のリサイクルが可能になり、これによって二酸化炭素の増加による地球環境の悪化を防ぐことができる。
【0020】
加えて、電気自動車等において、空調の際にPTCヒーターに二次電池等の電力を消費する必要がないため、空調を行いつつ、従来よりも車輪の駆動に電力をまわすことができる。その結果、航続距離を伸ばすことができるし、二次電池の充電の頻度を減らし、電池自体のライフを延ばすことができる。燃料電池においても、車輪駆動以外のための燃料の消費を抑制することができる。また、効率良く空調を行うことができ、寒冷地等でも外気温に左右されない。
【0021】
そして、これらの航続距離の向上、効率の良い空調、二酸化炭素の増加の抑制等の点から、電気自動車等の産業分野を活性化させることができる。
【0022】
このとき、前記メタノールを製造するとき、二酸化炭素と、水素を含むガスを反応させて製造することができる。
このような二酸化炭素からのメタノールの製造方法はよく知られており、低コストで実施できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の空調方法や二酸化炭素の利用方法であれば、電気自動車等において、メタノールを燃焼させて発生した熱を利用して、効率良く車室内の空気を調和することができ、その結果、二次電池や燃料電池による電力を、ヒーターに費やすことをなくし、空調に要する消費量を極めて低減することができる。そのため、車の航続距離を伸ばしたり、電池のライフを延ばすことができる。
【0024】
同時に、特には工場等から排出される大量の二酸化炭素を再利用することができ、二酸化炭素の処理問題、二酸化炭素の増加による地球環境問題の解決手段の一つを提供することが可能である。加えて、電気自動車等の産業分野を活性化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の二酸化炭素の利用方法によって構築される二酸化炭素を中心とする循環システムを示す説明図である。
【図2】メタノールの使用と空調の関係を示す説明図である。
【図3】本発明の空調方法を実施する際に使用可能な空調システムの一例を示す概略図である。
【図4】触媒ヒーターを用いた暖房の仕組みの一例を示す説明図である。
【図5】触媒ヒーターを用いた暖房の仕組みの他の例を示す説明図である。
【図6】触媒ヒーターを用いた冷房の仕組みの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来の電気自動車や燃料電池自動車等で用いられている空調システムでは、二次電池や燃料電池からの電力をPTCヒーターで消費してしまうため、その分、車輪の駆動にまわす分が減り、航続距離、充電頻度に悪い影響を及ぼしていた。
【0027】
そこで本発明者らは、二次電池等からの電力をPTCヒーターのために使用して車室内の空調を行うのではなく、メタノールを燃料とし、触媒を介してその燃焼により発生する熱を利用して車室内の空調を行う方法に想到した。このようなものであれば、十分に効率良く空調を行うことが可能であるとともに、電池からの電力を空調のヒーターに割く必要性をなくすことができ、車輪の駆動のためにより多くの電力を費やすことが可能になる。そのため、航続距離を伸ばすことができる。また、その結果、電池のライフも延ばすことができる。
【0028】
さらには、上記空調方法に使用するメタノールとして、二酸化炭素から製造したものを用いることにより、地球環境全体において、二酸化炭素を中心とした循環システムを構築することができる。特には、工場等から大量に排出される二酸化炭素の処理に役立てることができ、地球環境全体における二酸化炭素の増加を抑制することが可能になる。
本発明者らは、これらのことを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本発明における二酸化炭素の利用方法について説明する。
図1は、本発明の二酸化炭素の利用方法によって構築される二酸化炭素を中心とする循環システムの一例である。図1に示すように、例えば工場等から大量に排出される排ガス中の二酸化炭素(つまり、従来では大気中に排出されていた二酸化炭素)を収集する(図1(A))。
【0030】
なお、この収集した二酸化炭素は次の工程のメタノールの製造の際に原料として用いられるが、その収集先、収集方法等は特に限定されない。二酸化炭素を排出する工場あるいはガソリン自動車その他の排ガスから直接二酸化炭素を収集するのが効率が良いが、大気中から収集しても良い。上記のように工場等から排出されるものを集めれば、大気中の二酸化炭素の増加を防止する点で実に有効である。
【0031】
次に、収集した二酸化炭素を原料としてメタノールを製造する(図1(B))。
この収集した二酸化炭素からメタノールを製造する方法については特に限定されない。その都度、コスト等を考慮して適切な方法を用いればよく、例えば従来から知られているように、二酸化炭素と、水素を含むガスを触媒上で反応させることによってメタノールを合成することができる。
【0032】
そして、製造されたメタノールを、電気自動車等の車室内の空気を調和するために使用する。より具体的には、図2に示すように、そのメタノールを燃焼し、発生する熱を利用して空調を行う(図1(C))。図2は、メタノールの使用と空調の関係を示した説明図である。上記のようにして製造したメタノールを、酸化性ガスとともに触媒に供給し、メタノールを燃焼させて熱を発生させる。ここで、酸化性ガスは特に限定されず、例えば空気を用いることができる。
【0033】
この燃焼によって発生した熱を利用することによって、車室内の空気を調和する。なお、メタノールの燃焼によって発生した熱を用い、その結果、空調を行うことができれば良く、その利用の仕方は特に限定されない。より具体的な熱の利用の仕方については後述する。
【0034】
また、メタノールの燃焼によって発生した二酸化炭素は電気自動車等の外、すなわち大気中へ排出される(図1(D))。
一方、工場等では生産ラインで外部から大気を取り込み使用するので、地球環境全体からみると、電気自動車等の空調の際に排出される二酸化炭素は、大気を介して、再度工場等から排出され、収集されることになる(図1(A))。
【0035】
このように、従来では単に工場等から排出されるだけであり、地球環境上問題となっていた二酸化炭素を、本発明の二酸化炭素の利用方法によって、電気自動車等の空調時に使用するメタノールの原料として利用することができる。すなわち、大気中に排出され、特に利用されることのなかった工場等からの二酸化炭素を有効に利用することができる。
【0036】
一方で、空調時にはメタノールを燃焼するため、二酸化炭素が発生して大気中へ排出されるが、そのメタノールは、元々、大気中に排出されるはずだった二酸化炭素を原料に製造しているので、メタノールを燃焼して空調を行いつつも、地球環境全体からすると二酸化炭素の新たな増加を防ぐことができ、地球環境の悪化の進行を妨げることができる。
【0037】
そして、上記のように工場等から排出される二酸化炭素の処理問題の解決手段を提示するとともに、電気自動車等の空調に関する問題の解決手段を提示することができる。すなわち、空調のヒーター等に二次電池等の電力を大きく消費するのを防ぐことができ、その結果、その分電力を車輪の駆動にまわすことができ、航続距離を伸ばすことができる。ひいては電池自体のライフを延ばすことにもつながる。しかも、効率良く、安定して暖房等の空調を行うことができる。
【0038】
さらには、これらの効果から、電気自動車等の需要が増し、その産業分野を活性化させることができる。電気自動車等がさらに使用されることで、より地球環境における二酸化炭素の発生・増加を抑制することが可能になる。
【0039】
次に、上記の本発明の二酸化炭素の利用方法として、より具体的な実施形態を説明する。ここでは、電気自動車等における本発明の空調方法を実施する際に使用可能な空調システムを挙げて説明する。
【0040】
まず、電気自動車等に使用するメタノールを製造するために必要となる原料を用意する。なお、ここでは、二酸化炭素と水素を含むガスを反応させてメタノールを製造する場合について説明するが、これに限らず、少なくとも二酸化炭素を用いてメタノールを製造する方法であれば良い。
【0041】
二酸化炭素の収集方法は、上述したように特に限定されないが、工場等から大量排出される排気ガス中から二酸化炭素を分離・収集すれば、効率的であるし大気中の二酸化炭素の増加を防止する点で実に有効である。また、大気中から直接収集しても良い。簡便性やコスト等を考慮して、その都度適切な方法を用いて用意することができる。
【0042】
そして、上記のようにして得た二酸化炭素と、別途調達してきた水素等を混ぜる。なお、メタノールの合成にあたって、原料ガスとして一酸化炭素をさらに加えることもできる。これらのガスを混合して反応管内に供給し、触媒を用いてメタノールを製造する。
【0043】
このとき、例えば、銅/亜鉛系または銅/亜鉛/クロム系の触媒を用い、温度を200〜300℃、圧力を100〜200気圧の条件とすることができる。当然、これらの触媒に限定されず、他の触媒、例えばニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウムなどから得られた金属触媒等も挙げられる。適宜、触媒を工夫することができる。例えば、銅系の触媒にジルコニアを結合させたりするなど、他の材料を加えたりすることができる。また、用いる触媒によって、より低温、低圧の条件のもとでメタノールを製造することができる。
これらの製造条件は限定されることなく、二酸化炭素を原料としてメタノールを製造することができれば良く、コスト等の面から適宜決定することができる。
【0044】
このようにして得たメタノールを、電気自動車等の車室内の空気を調和するために使用する。
ここで、まず、上記メタノールを使用して空調を行うことができる空調システムの一例について説明する。ただし、当然これに限定されず、メタノールを燃焼でき、それによって発生する熱を車室の空調に利用できる構造を有するものであれば良い。
【0045】
図3にその空調システム1の一例の概略を示す。なお、図3では、空調システム1が組み込まれた自動車2を合わせて図示している。
また、ここでは自動車2は二次電池を搭載した電気自動車を例に挙げて説明するが、その他ハイブリッド車(特には電気で駆動させる割合が高いもの)、二次電池の代わりに燃料電池を搭載した燃料電池自動車とすることもできる。
【0046】
自動車2は人が乗るための車室3の他、モーター室4、車輪5を備えており、モーター室4内には二次電池6およびモーター7が搭載されている。車輪5は、二次電池6によってモーター7を回転させることで駆動させることができる。
なお、図3では、モーター室4は自動車2の下部に設けられているが、これに限定されず、他の条件に応じて適切な位置に設けることができる。
【0047】
そして、このような自動車2に組み込まれた空調システム1の主な構成としては、空調用ダクト8、空調用ファン9、触媒ヒーター10が挙げられる。
ここで、触媒ヒーターとは、触媒と、触媒に燃料を供給するための燃料タンクを備えたものであり、触媒に酸化性ガスと燃料タンクからの燃料を供給することで熱を発生させるものである。本発明においては、上述のように二酸化炭素を原料として製造したメタノールを燃料とする。
【0048】
そして、車室3には、車室3内の空気を吸気するための吸気口11や、車室3内に空気を送風するための送風口12が形成されており、これらの吸気口11や送風口12は空調用ダクト8とつながっている。
【0049】
また、空調用ファン9は空調用ダクト8内に配設されており、この空調用ファン9を回転させることで、吸気口11から車室3内の空気を吸気し、空調用ダクト8を通して送風口12から車室3内に空気を送風可能になっている。
このような仕組みにより、車室3内の空気を循環することができる。
【0050】
また、触媒ヒーター10が配設されており、該触媒ヒーター10によって発生する熱を利用して、空調用ダクト8内の空気が調和されるよう構成されている。そして、このように循環可能に空調用ダクト8内を流れる空気が調和されることにより、車室3内の空気を調和することができる。
【0051】
以下、空調システム1の各部についてさらに詳述する。
まず、触媒ヒーター10についてさらに説明する。
図4は、触媒ヒーターを用いた暖房の仕組みの一例を示すものであり、触媒ヒーターの一例が図示されている。
【0052】
触媒ヒーター10は、触媒13が担持された担体(触媒体14)と燃料タンク15を有している。触媒体14と燃料タンク15の間には、燃料供給管16と、燃料の他に酸化性ガス(例えば空気)が透過可能な燃料透過膜17が配設されており、これらを通して燃料タンク15内の燃料を触媒13を有する触媒体14へ均一に供給可能になっている。
【0053】
触媒13としては、例えば、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、モリブデン、タングステン、スズ、ニオブ系あるいはチタン系の酸化物に炭素および窒素を配合したもの、及びそれらの組合せからなるものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。この他、一般的に触媒ヒーターで用いられる触媒を用いることができる。
また、形状も特に限定されないが、表面積を大きくし、反応効率を上げるために、例えば1〜100nmの微粒子のものを用いると好ましい。
【0054】
担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミック系、アルミニウム、ステンレス等の金属系、または、硝子繊維、ポリイミド、PTFE等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。この他、一般的に触媒ヒーターで用いられる担体を用いることができる。
なお、特には、例えばアルミナ系やジルコニア系のファインセラミックス、ステンレス、炭化珪素、カーボン等を担体とすることで、遠赤外線を輻射するものとすることができる。例えば、触媒ヒーターの配置位置によって、遠赤外線によって車室内の人を暖めることもできるからである。
また、形状も特に限定されないが、例えば、効率を考慮してハニカム状のものを用いることができる。
【0055】
これらの触媒13、担体は、使用する燃料(メタノール)を反応させることが出来れば良く、都合により適宜決定することができる。条件に応じて、触媒13、担体を選択し、例えば触媒13を担体に均一にコーティングすることにより、適切な触媒体14を用意することができる。
【0056】
また、燃料タンク15は使用する燃料(メタノール)を適切に貯蔵することができるものであれば良い。大きさや形状等は、自動車2の内部のスペースに応じて適宜決定することができる。
【0057】
また、燃料供給管16の形状、数等は特に限定されない。適切に燃料を触媒体14に供給することができれば良い。
燃料透過膜17としては、触媒ヒーター10の温度が高温になるため、例えば、耐熱温度の高いセラミックフィルターやグラスウール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、シリコーンゴム、ゴムなどが挙げられる。これ以外にも、その都度適切なものを用意することができる。このような燃料透過膜17を配設すれば、燃料は燃料透過膜17を浸透して拡散するため、触媒体14に均一に燃料を供給することができる。
【0058】
ここで、触媒ヒーター10を用いた暖房の仕組みについて例を挙げて説明する。なお、当然これに限定されず、触媒ヒーター10を用いた他の暖房の仕組みとすることができる。
図3、4に示すように、この例では、触媒ヒーター10の触媒13を有する触媒体14は空調用ダクト8内に配設されている。この場合、酸化性ガスは空調用ダクト8内を流れる車室3内からの空気である。
【0059】
また、図5に、触媒ヒーターを用いた暖房の仕組みの他の一例を示す。図5に示すように、この例では、触媒ヒーター10はさらに熱伝導体18を有している。該熱伝導体18は触媒13を有する触媒体14に接続されており、空調用ダクト8内に挿入されている。この熱伝導体18は材質や形状等、特に限定されず、触媒13上で発生した熱を効率良く空調用ダクト8内の空気に伝えることができるものを用いれば良い。
【0060】
一方、触媒体14は空調用ダクト8の外に配設されており、触媒体14に空気等の酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給管19が別個に設けられている。なお、酸化性ガス供給管19は触媒体14の上流および下流で例えば車外へ通じており、触媒体14に供給する空気等の酸化性ガスは、別個に配設したファン等を用いて車外から取り入れることができる。また、触媒13上での反応に使用されなかった酸化性ガスや、反応で生成された水(発生した熱により水蒸気となっている)は車外へ排出される。
【0061】
次に、触媒ヒーター10を用いた冷房の仕組みについて一例を挙げて説明する。
空調システム1は、さらに車室3内を冷房する機能を具備することができる。この場合、図6に示すように、冷媒20を収容する冷媒室21がさらに配設されており、該冷媒室21内を空調用ダクト8が挿通している。また、触媒ヒーター10(特に触媒体14)が、冷媒室21の近傍に配置されている。
【0062】
冷媒20としては、地球温暖化係数の低いフッ素系冷媒HFO−1234yfやHFO−1234zf、およびそれらの異性体、R−134aなどのフッ素系冷媒、二酸化炭素、アンモニア、炭化水素系などが挙げられる。この他、一般的に使用される冷媒を用いることができる。
また、冷媒室21の大きさや形状、冷媒室21を挿通する空調用ダクト8の配置等は特に限定されないが、後述するように、ヒートポンプ方式によって空調用ダクト8内の空気が冷やされるように適宜決定することができる。
さらには、触媒ヒーター10の配置も特に限定されないが、例えば、冷媒20が溜まっている冷媒室21の底付近に配置することができる。このような位置であれば、触媒ヒーター10によって効率良く冷媒20を加熱し、気化させることができる。
なお、当然この例に限定されず、触媒ヒーター10を用いた他の冷房の仕組みとすることができる。
【0063】
以上のような空調システム1を用い、メタノールを燃焼させて熱を発生させ、その熱を利用して車室3内の空気を調和することができる。
例えば図4の構造を有し、車室3内を暖房する場合、空調用ファン9によって吸気口11から吸気されて空調用ダクト8内を通る空気を、触媒体14中の触媒13上へ供給して、燃料タンク15から供給する燃料(メタノール)と反応させる。これによって熱が発生する。そして、発生した熱により、空調用ダクト8内の空気を暖め、送風口12から送風して車室3内を暖房する。
【0064】
また、図5の構造を有し、車室3内を暖房する場合、燃料タンク15から燃料(メタノール)を、酸化性ガス供給管19から空気等を触媒体14に供給して反応させ、熱を発生させる。この発生した熱が熱伝導体18に伝熱され、この熱伝導体18を介して空調用ダクト8内の空気を暖め、それによって車室3内を暖房することができる。
【0065】
さらに、図6の構造を有し、車室3内を冷房する場合、触媒ヒーター10の触媒体14に燃料(メタノール)および酸化性ガスを供給し、反応により熱を発生させる。この熱によって冷媒室21内の冷媒20が気化する。気化した冷媒20は、その後冷えて、例えば冷媒室21内上方に配置された空調用ダクト8付近で凝結するものの、空調用ダクト8内の空気から熱を奪い、再度気化する。このようなヒートポンプ方式によって、空調用ダクト8内の空気を冷やして車室3内を冷房することができる。
【0066】
以上のようにして、メタノールの燃焼によって発生した熱を利用し、車室3内の空気を調和する一方で、メタノールの燃焼によって発生した二酸化炭素や水蒸気は、各ダクトを通して、また車室3に備えられた窓を通して車外(大気中)へと排出される。
【0067】
以上のような本発明の空調方法によって、上述したように、電気自動車等の車室内の空調、航続距離、搭載された電池自体のライフを改善することができる。
また、空調時の燃料として二酸化炭素から製造したメタノールを使用するので、工場等からの二酸化炭素の排出に関する問題、さらには二酸化炭素を要因とする地球温暖化等の環境問題に対して本発明は有効な手段となり得る。
そして、電気自動車等の産業分野を活性化させることができ、ひいては二酸化炭素の増加のさらなる抑制につなげることができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
1…空調システム、 2…自動車、 3…車室、 4…モーター室、
5…車輪、 6…二次電池、 7…モーター、 8…空調用ダクト、
9…空調用ファン、 10…触媒ヒーター、 11…吸気口、 12…送風口、
13…触媒、 14…触媒体、 15…燃料タンク、 16…燃料供給管、
17…燃料透過膜、 18…熱伝導体、 19…酸化性ガス供給管、
20…冷媒、 21…冷媒室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載した自動車において、人が乗るための車室内の空気を調和する方法であって、
前記車室内の空気を、メタノールと酸化性ガスを触媒に供給し、メタノールを燃焼させて発生する熱を利用することによって調和し、
前記触媒に供給するメタノールとして、二酸化炭素を原料にして製造したメタノールを用いることを特徴とする空調方法。
【請求項2】
前記メタノールを、二酸化炭素と、水素を含むガスを反応させて製造することを特徴とする請求項1に記載の空調方法。
【請求項3】
二酸化炭素の利用方法であって、
二酸化炭素を原料にしてメタノールを製造し、
該製造したメタノールと酸化性ガスを触媒に供給し、メタノールを燃焼させて発生する熱を利用して、車輪をモーターで駆動させるための二次電池または燃料電池を搭載した自動車において、人が乗るための車室内の空気を調和することで、
二酸化炭素を利用することを特徴とする二酸化炭素の利用方法。
【請求項4】
前記メタノールを製造するとき、二酸化炭素と、水素を含むガスを反応させて製造することを特徴とする請求項3に記載の二酸化炭素の利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143760(P2011−143760A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4333(P2010−4333)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(593145766)美浜株式会社 (10)
【Fターム(参考)】