説明

空調装置

【課題】室内を好適に空調可能な空調装置を提供する。
【解決手段】実施例1の空調装置は、エンジン3と、エンジン用ラジエータ5と、モータ7と、PCU9と、電装系用ラジエータ11と、ケミカルヒートポンプ13と、第1空調用熱交換器15と、熱電変換モジュール17と、一面側熱交換器19と、他面側熱交換器21と、第2空調用熱交換器23とを備えている。ケミカルヒートポンプ13における蒸発室44には配管53が接続され、蒸発室44と第1空調用流路14とが熱的に接続されている。また、他面側熱交換器21を介して熱電変換モジュール17と第2空調用流路16とが熱的に接続されている。この空調装置では、第1空調用熱交換器15が蒸発室44内の冷熱に基づいた第1空調を行い、第2空調用熱交換器23が熱電変換モジュール17による吸熱に基づいた第2空調を行う。また、第1空調用熱交換器15と第2空調用熱交換器23とで、混合空調を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図4に従来の暖房装置が開示されている。この暖房装置は、第1ヒートポンプとしての熱電変換モジュールと、第2ヒートポンプ及び空調用熱交換器としての圧縮回路と、電動ファンとを備えている。
【0003】
熱電変換モジュールは、吸熱面によって吸熱を行い得るとともに、放熱面によって放熱を行い得る。圧縮回路は、冷媒を圧縮可能な圧縮器と、凝縮器と、蒸発器とが配管によって接続されることで構成されている。電動ファンは、熱電変換モジュールの吸熱面の近傍に設けられ、熱電変換モジュールに対して空気を供給可能になっている。また、熱電変換モジュールの放熱面と圧縮回路の蒸発器とが当接されている。このため、圧縮回路の蒸発器は熱電変換モジュールの放熱面による放熱に基づき、更に放熱を行い得る。そして、圧縮回路の凝縮器は、空調用熱交換器として機能し、内部を流通する冷媒との熱交換によって加熱された空気を室内に供給することが可能である。
【0004】
この暖房装置では、熱電変換モジュールが行う放熱に基づいて、圧縮回路が冷媒の圧縮及び凝縮を行うため、圧縮回路が単独で冷媒の圧縮及び凝縮を行った場合と比較して、凝縮室内における冷媒の熱量をより大きくすることが可能になっている。このため、この暖房装置では、より高い温度で室内を暖房することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−227840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の暖房装置では、圧縮回路で得られた高温の空気のみが室内に供給されることから、暖房時における温度調整を行い難く、室内を好適な状態で空調し難い問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、室内を好適に空調可能な空調装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調装置は、一方が放熱部となり、他方が吸熱部となる熱伝達部を有するヒートポンプと、
前記熱伝達部に熱的に接続され、熱交換媒体が循環可能な循環流路と、
前記循環流路に接続される空調用熱交換器とを備え、
前記ヒートポンプは第1ヒートポンプ及び第2ヒートポンプを少なくとも有し、
前記循環流路は第1循環流路及び第2循環流路を少なくとも有し、
前記第1ヒートポンプの一方の前記熱伝達部には前記第1循環流路が熱的に接続され、前記第1循環流路には前記第2ヒートポンプの他方の前記熱伝達部が熱的に接続され、前記第2ヒートポンプの一方の前記熱伝達部には前記第2循環流路が熱的に接続され、
前記第1循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する第1接続状態と、該第1循環流路を除く他の前記循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する第2接続状態とを切り替える切替手段を備えていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明の空調装置では、第1ヒートポンプが行った吸熱に基づき、第1ヒートポンプ以外となる第2ヒートポンプ等が更に吸熱を行うことができる。また、第1ヒートポンプが行った放熱に基づき、第1ヒートポンプ以外となる第2ヒートポンプ等が更に放熱を行うことができる。このため、第1循環流路を流通する熱交換媒体と、第1循環流路以外となる第2循環流路等の循環流路を流通す熱交換媒体とで、温度差が生じることとなる。
【0010】
つまり、冷房時においては、第2循環流路等の熱交換媒体が第1循環流路内の熱交換媒体よりも低温となる。このため、第2接続状態は第1接続状態と比較して、より低い温度で室内の冷房を行うことが可能である。また、暖房時においては、第2循環流路等の熱交換媒体が第1循環流路内の熱交換媒体よりも高温となる。このため、第2接続状態は第1接続状態と比較して、より高い温度で室内の暖房を行うことが可能である。
【0011】
そして、この空調装置では、第1接続状態と第2接続状態とを切替手段によって切り替えることが可能である。このため、この空調装置では、目的に応じ、第1接続状態による空調と、第2接続状態による空調とを使い分けることが可能であり、空調時における温度調整を行い易くなっている。
【0012】
したがって、この空調装置によれば、室内を好適に空調可能である。
【0013】
ヒートポンプとしては、ケミカルヒートポンプ、熱電変換モジュール、圧縮回路等を採用することが可能である。また、各ヒートポンプは、それぞれ同じものを採用することができ、また互いに異なるものを採用することもできる。
【0014】
本発明の空調装置はヒートポンプ及び循環流路の数が2である場合に限られない。例えば、ヒートポンプの数が3であることにより、3つの熱伝達部を備え、循環流路の数が3であることにより第1〜3循環流路を備える構成とすることができる。この場合、第1ヒートポンプの一方の熱伝達部には第1循環流路が熱的に接続され、第1循環流路には第2ヒートポンプの他方の熱伝達部が熱的に接続され、第2ヒートポンプの一方の熱伝達部には第2循環流路が熱的に接続され得る。そして、第2循環流路には第3ヒートポンプの他方の熱伝達部が熱的に接続され、第3ヒートポンプの一方の熱伝達部には第3循環流路が熱的に接続され得る。また、この場合、第2循環流路と空調用熱交換器とを接続する状態を第2接続状態としても良く、第3循環流路と空調用熱交換器とを接続する状態を第2接続状態としても良い。また、第2循環流路と空調用熱交換器とを接続する状態と、第3循環流路と空調用熱交換器とを接続する状態とを併せて第2接続状態としても良い。ヒートポンプ及び循環流路の数が4以上の場合も同様である。
【0015】
また、本発明の空調装置が車両に搭載される場合には、エンジンやモータ等の冷却水の他、LLC(ロングライフクーラント)等で構成された冷却液等を熱交換媒体として採用することができる。さらに、本発明の空調装置において、室内とは、建物における内部空間を意味するだけではなく、広く、車両等の室内空間等の意味も有している。
【0016】
本発明の空調装置において、第1ヒートポンプは第1吸熱部と第1放熱部とを有し得る。また、第2ヒートポンプは第2吸熱部と第2放熱部とを有し得る。さらに、第1ヒートポンプの第1吸熱部には第1循環流路が熱的に接続され、第1循環流路には第2ヒートポンプの第2放熱部が熱的に接続され、第2ヒートポンプの第2吸熱部には第2循環流路が熱的に接続され得る。そして、切替手段は、第1循環流路と空調用熱交換器とを接続する第1接続状態と、第2循環流路と空調用熱交換器とを接続する第2接続状態とを切り替え得る(請求項2)。この場合、空調装置は、例えば図1に示すような構成とすることができる。以下、図1に示す空調装置を基にこの空調装置の作用効果を説明する。
【0017】
この空調装置は、第1ヒートポンプ100と、第2ヒートポンプ101と、第1循環流路102と、第2循環流路103と、空調用熱交換器104と、切替手段としての分岐弁105a、105b及び流路108a、108b、109a、109bと、放熱流路106と、熱交換器107とを備えている。
【0018】
第1循環流路102は、第1吸熱部100aに熱的に接続されているとともに、第2放熱部101bと熱的に接続されている。第2循環流路103は、第2吸熱部101aに熱的に接続されている。放熱流路106は、第1放熱部100bと熱的に接続されているとともに、熱交換器107と接続されている。第1循環流路102、第2循環流路103及び放熱流路106にはそれぞれ熱交換媒体が流通している。また、第1循環流路102と空調用熱交換器104とは、流路108a、108b及び分岐弁105aを介して接続されており、第2循環流路103と空調用熱交換器104とは、流路109a、109b及び分岐弁105bを介して接続されている。なお、図1中の矢印は熱交換媒体の流通方向を示している。
【0019】
この空調装置では、第1吸熱部100aによる吸熱を受けて、第1循環流路102内の熱交換媒体の熱が冷却される。このため、分岐弁105aが第1循環流路102と流路108a、108bとを連通させることで、空調用熱交換器104において、第1接続状態による空調(以下、第1空調という。)が行われる。このため、室内は第1空調によって冷房される。なお、第1吸熱部100aによって吸熱された熱交換媒体の熱は、第1放熱部100bから放熱流路106内の熱交換媒体に放熱され、熱交換器107において、空調装置の外部に放出されることとなる。
【0020】
一方、第1空調よりも強い冷房を行う場合には、第2循環流路103内の熱交換媒体の熱を第2吸熱部101aによって吸熱させる。この際、第2放熱部101bは、第1循環流路102内の冷却された熱交換媒体に対して放熱を行うため、第2吸熱部101aでは、熱交換媒体からより多くの熱を吸熱することが可能となる。このため、第2循環流路103内の熱交換媒体は、第1循環流路102内の熱交換媒体よりも冷却される。そして、分岐弁105aが第2循環流路102と流路108a、108bとを連通させることにより、空調用熱交換器104において、第2接続状態による空調(以下、第2空調という。)が行われる。こうして、室内は第2空調によって、より強く冷房されることとなる。なお、この際、分岐弁105aが第1循環流路102と流路108a、108bとを連通させることで、第1空調と第2空調とによる混合空調を行うことも可能であり、これによる室内の冷房も可能である。
【0021】
また、本発明の空調装置において、第1ヒートポンプは第1吸熱部と第1放熱部とを有し得る。また、第2ヒートポンプは第2吸熱部と第2放熱部とを有し得る。さらに、第1ヒートポンプの第1放熱部には第1循環流路が熱的に接続され、第1循環流路には第2ヒートポンプの第2吸熱部が熱的に接続され、第2ヒートポンプの第2放熱部には第2循環流路が熱的に接続され得る。そして、切替手段は、第1循環流路と空調用熱交換器とを接続する第1接続状態と、第2循環流路と空調用熱交換器とを接続する第2接続状態とを切り替え得る(請求項3)。この場合、空調装置は、例えば図2に示すような構成とすることができる。以下、図2に示す空調装置を基にこの空調装置の作用効果を説明する。
【0022】
この空調装置では、第1循環流路102が第1放熱部100bに熱的に接続されているとともに、第2吸熱部101aと熱的に接続されている。また、第2循環流路103は、第2放熱部101bに熱的に接続されている。放熱流路106は、第1吸熱部100aと熱的に接続されているとともに熱交換器107と接続されている。他の構成は図1に示す空調装置と同様である。なお、図2においても、矢印は熱交換媒体の流通方向を示している。
【0023】
この空調装置では、第1吸熱部100aが放熱流路106内の熱交換媒体の熱を吸熱し、第1放熱部100bが第1循環流路102内の熱交換媒体に対して放熱する。このため、第1循環流路102の熱交換媒体が加熱される。このため、分岐弁105aが第1循環流路102と流路108a、108bとを連通させることで、空調用熱交換器104では第1空調が行われ、室内は第1空調によって暖房される。
【0024】
一方、第1空調よりも強い暖房を行う場合には、第2循環流路103内の熱交換媒体に対して第2放熱部101bが放熱を行う。この際、第2吸熱部101aは、第1循環流路102内の加熱された熱交換媒体から吸熱を行うため、第2放熱部101bではより多くの熱を放熱することが可能となる。このため、第2循環流路103内の熱交換媒体は、第1循環流路102内の熱交換媒体よりも加熱される。そして、分岐弁105bが第2循環流路103と流路109a、109bとを連通させることにより、空調用熱交換器104において第2空調が行われる。こうして、室内は第2空調によって、より強く暖房されることとなる。なお、上記の図1に示す空調装置と同様の方法よって、この空調装置においても第1空調と第2空調とによる混合空調を行うことも可能であり、これによる室内の暖房も可能である。
【0025】
本発明の空調装置は、空調用熱交換器を複数備え得る。そして、いずれか一つの空調用熱交換器は第1循環流路に接続され、他の空調用熱交換器は、第1循環流路を除く他の循環流路に接続され得る(請求項4)。この場合、上記の第1空調と第2空調とがそれぞれ別々の空調用熱交換器によって行われることとなる。
【0026】
また、本発明の空調装置において、空調用熱交換器は一つであり得る。そして、空調用熱交換器は、第1循環流路と、第1循環流路を除く他の循環流路とに接続され得る(請求項5)。この場合には、上記の図1及び図2に示したように、空調装置の構成を簡略化できる。このため、この空調装置では、室内を好適に空調できるとともに、その製造コストを削減することも可能となる。
【0027】
第1ヒートポンプは、化学物質を加熱し、反応物質を蒸気化する再生室と、第1接続流路により再生室と接続され、蒸気化した反応物質を凝縮する凝縮室と、第2接続流路により凝縮室と接続され、凝縮した反応物質を気化する蒸発室と、第3接続流路により蒸発室とされているとともに、第4接続流路及び第5接続流路により再生室と接続され、気化した反応物質を化学物質に吸収させる吸収室とを有するケミカルヒートポンプであり得る。また、第1循環流路は蒸発室に接続され得る。さらに、第2ヒートポンプは、吸熱面と放熱面とを有する熱電変換モジュールであり得る。そして、第2循環流路は吸熱面に熱的に接続されていることが好ましい(請求項6)。
【0028】
この場合、蒸発室において冷却された第1循環流路内の熱交換媒体に対して熱電変換モジュールの放熱部は放熱を行うことが可能になる。このため、熱電変換モジュールの吸熱部は第2循環流路内の熱交換媒体からより多くの熱を吸熱することが可能となる。このため、蒸発室と接続する第1循環流路内の熱交換媒体と比較して、熱電変換モジュールの吸熱面と熱的に接続する第2循環流路内の熱交換媒体は、より冷却されることとなる。このため、この空調装置では、第1空調に基づく室内の冷房を行う他、第2空調に基づき、室内をより強く冷房することが可能となる。また、第1空調と第2空調とによる混合空調によって室内の空調を行うことも可能である。
【発明の効果】
【0029】
この空調装置によれば、室内を好適に空調可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の空調装置を示す模式構造図である。
【図2】本発明の空調装置を示す模式構造図である。
【図3】実施例1の空調装置を示す模式構造図である。
【図4】実施例1の空調装置に係り、第1空調時の状態を示す模式構造図である。
【図5】実施例1の空調装置に係り、第2空調時の状態を示す模式構造図である。
【図6】実施例1の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図7】実施例1の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図8】実施例1の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図9】実施例2の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図10】実施例3の空調装置を示す模式構造図である。
【図11】実施例3の空調装置に係り、第1空調時の状態を示す模式構造図である。
【図12】実施例3の空調装置に係り、第2空調時の状態を示す模式構造図である。
【図13】実施例3の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図14】実施例3の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【図15】実施例3の空調装置に係り、暖房時の状態を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。実施例1〜3の空調装置は、車室内の空調を行う装置としてハイブリッド車両(以下、単に車両という。)に搭載されている。
【0032】
(実施例1)
図3に示すように、実施例1の空調装置は、エンジン3と、エンジン用ラジエータ5と、モータ7と、駆動回路としてのPCU(パワーコントロールユニット)9と、電装系用ラジエータ11と、ケミカルヒートポンプ13と、第1空調用熱交換器15と、熱電変換モジュール17と、一面側熱交換器19と、他面側熱交換器21と、第2空調用熱交換器23とを備えている。
【0033】
エンジン3は、車両の走行状況等に応じてモータ7と択一的に駆動されて車両を走行させる。エンジン3には図示しないウォータジャケットが形成されているおり、このウォータジャケット内を流通するエンジン冷却液によりエンジン3を冷却又は暖機することが可能となっている。また、エンジン3には排気ガスを車室外に放出するマフラ(図示しない)が設けられている。
【0034】
エンジン用ラジエータ5は車室外に設けられている。エンジン用ラジエータ5は、その内部をエンジン冷却液が流通可能に構成されている。エンジン用ラジエータ5は、エンジン用ラジエータ5内のエンジン冷却液と、エンジン用ラジエータ5周りの空気、すなわち、車室外の空気との間で熱交換を行うことでエンジン冷却液を冷却することが可能となっている。このエンジン用ラジエータ5の容量は、エンジン3の冷却の冷却に必要とされる最小限の大きさとされている。また、エンジン用ラジエータ5は電動ファン5aを有している。この電動ファン5aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0035】
エンジン3とエンジン用ラジエータ5とは配管24〜27によって接続されている。これらの配管24〜27によってエンジン用放熱流路10が構成されている。これらの配管24〜27内にも上記のエンジン冷却液が流通しており、エンジン冷却液は、エンジン3とエンジン用ラジエータ5との間を循環することが可能となっている。また、配管25と配管26との間には分岐弁V1が設けられている。なお、分岐弁とは、一方の流路を他方の複数の流路に分岐可能、すなわち、一方の流路を他方の流路の少なくとも一つと連通させ、他方の残りの流路とは非連通とすることを切り替え可能な切替弁をいう。
【0036】
配管24はエンジン用ラジエータ5とエンジン3とに接続されている。配管25はエンジン3と分岐弁V1とに接続されている。配管27は配管26と接続され、配管26とエンジン用ラジエータ5とを接続している。この配管27には第1ポンプP1が設けられている。配管26は一端側で分岐弁V1と接続され、他端側で配管27と接続されている。分岐弁V1及び第1ポンプP1は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第1ポンプP1は配管24側又は配管25側に設けられても良い。
【0037】
また、分岐弁V1には配管28の一端側が接続されており、配管28の他端側は配管27に接続されている。この配管28は、後述する再生室41内に延びており、配管28は、この再生室41内において、その一部が蛇行するように形成されている。この配管28内を流通する高温のエンジン冷却液は、再生室41を加熱する熱媒として機能する。
【0038】
モータ7は、PCU9及び図示しない制御装置と電気的に接続されており、図示しないバッテリ等の給電装置から電力の供給を受けて駆動し、車両を走行させる。また、PCU9は、モータ7を駆動させる駆動装置として機能し、インバータやコンバータ等によって構成されている。このPCU9も図示しない制御装置と電気的に接続されており、車両の走行状況に応じて給電装置がモータ7に供給する電力の制御等を行う。モータ7及びPCU9は、エンジン3の駆動により車両が走行している間、ブレーキ操作等によって生じた発熱エネルギーを回生エネルギー(回生電力)として回収(充電)すべく作動する。
【0039】
モータ7及びPCU9には図示しないウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケット内を流通する電装系冷却液によって、モータ7及びPCU9は冷却されるようになっている。なお、モータ7、PCU9の他の構成は、それぞれ公知ものと同様であり、構成に関する詳細な説明を省略する。
【0040】
電装系用ラジエータ11は車室外に設けられている。電装系用ラジエータ11は、内部を電装系冷却液が流通可能に構成されている。電装系用ラジエータ11は、電装系用ラジエータ11内の電装系冷却液と、電装系用ラジエータ11周りの空気、すなわち、車室外の空気との間で熱交換を行うことで電装系冷却液を冷却することが可能となっている。この電装系用ラジエータ11によるモータ7及びPCU9の冷却は、モータ7等の駆動による車両の走行中だけでなく、エンジン3による車両の走行中における回生エネルギーの回収時にも行われる。この電装系用ラジエータ11の容量は、モータ7、PCU9、後述する吸収室42及び凝縮室43の冷却に必要とされる最小限の大きさに構成されている。また、電装系用ラジエータは電動ファン11aを有している。この電動ファン11aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0041】
モータ7、PCU9及び電装系用ラジエータ11は配管29〜35によって接続されている。これらの配管29〜35によって電装系放熱流路12を構成している。これらの配管29〜35内にも上記の電装系冷却液が流通している。また、配管29と配管30との間には分岐弁V2が設けられており、配管34と配管35との間には分岐弁V3が設けられている。
【0042】
配管29は、電装系用ラジエータ11と分岐弁V2とに接続されている。配管31は配管30とモータ7とに接続されている。配管32は、モータ7とPCU9とに接続されている。配管33は、PCU9と電装系用ラジエータ11とに接続されている。配管30は一端側で分岐弁V2と接続され、他端側で配管31と接続されている。また、分岐弁V2には配管34の一端側が接続されており、配管34の他端側は分岐弁V3に接続されている。この配管34は、吸収室42及び凝縮室43と接続されている。配管34は、吸収室42内及び凝縮室43内に延びており、吸収室42内及び凝縮室43内において、その一部がそれぞれ蛇行するように形成されている。配管35は一端側で分岐弁V3と接続され、他端側で配管31と接続されている。配管29には第2ポンプP2が設けられている。分岐弁V2、V3及び第2ポンプP2は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第2ポンプP2は配管31〜33側に設けられても良い。
【0043】
ケミカルヒートポンプ13は吸収式ケミカルヒートポンプである。ケミカルヒートポンプ13は、化学物質としてのLiBr水溶液C1が充填された再生室41及び吸収室42と、反応物質としての水C2が貯留された凝縮室43及び蒸発室44と、第1〜5接続流路45〜49とを有している。この第4接続流路48と第5接続流路49との間には熱交換器51が設けられている。また、蒸発室44には、後述する配管53が接続されている。この蒸発室44内は、周囲の大気圧よりも減圧された状態となっている。このケミカルヒートポンプ13が第1ヒートポンプに相当し、再生室41及び凝縮室43及が第1放熱部に相当し、蒸発室44が第1吸熱部に相当する。なお、再生室41及び吸収室42に貯留される化学物質としては、NH3水溶液を採用することもできる。また、この場合、凝縮室43及び蒸発室44に貯留される反応物質はNH3となる。
【0044】
再生室41と凝縮室43とは、第1接続流路45によって接続されている。凝縮室43と蒸発室44とは、第2接続流路46によって接続されている。蒸発室44と吸収室42とは、第3接続流路47によって接続されている。再生室41と吸収室42とは、第4接続流路48及び第5接続流路49によって接続されている。第4接続流路48及び第5接続流路49にはそれぞれ第3、4ポンプP3、P4が設けられており、第2接続流路46には第5ポンプP5が設けられている。第3〜5ポンプP3〜P5は、それぞれ図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第2接続流路46には、第5ポンプP5に替えて開閉弁を設けても良く、また、第3接続流路47に開閉弁等を設けても良い。
【0045】
第1空調用熱交換器15は車室に設けられている。第1空調用熱交換器15は、内部を空調用冷却液が流通可能に構成されて、第1空調用熱交換器15内の空調用冷却液と第1空調用熱交換器15の周りの空気との間で熱交換を行うことが可能となっている。この第1空調用熱交換器15は、電動ファン15aを有している。電動ファン15aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。この電動ファン15aを作動させることで、第1空調用熱交換器15の周りの空気を車室内に供給可能、すなわち、第1空調が可能になっている。なお、上記のエンジン冷却液、電装系冷却液及び空調用冷却液が熱交換媒体に相当する。
【0046】
第1空調用熱交換器15と蒸発室44と一面側熱交換器19とは、配管53〜56によって接続されている。これらの配管53〜56によって第1空調用流路14が構成されている。この第1空調用流路14が第1循環流路に相当する。また、上記のように、配管53が蒸発室44と接続されていることから、第1空調用流路14と、第1吸熱部としての蒸発室44とは熱的に接続された状態となっている。配管53〜56内にも上記の空調用冷却液が流通しており、空調用冷却液は、凝縮室43を経由しつつ、一面側熱交換器19と第1空調用熱交換器15との間で循環可能となっている。また、配管54と配管55との間には分岐弁V4が設けられている。
【0047】
配管53は第1空調用熱交換器15と一面側熱交換器19とに接続されている。配管53は蒸発室44内に延びており、蒸発室44内で蛇行するように形成されている。配管54は一面側熱交換器19と分岐弁V4とに接続されている。配管55は分岐弁V4と第1空調用熱交換器15とに接続されている。配管56は一端側で分岐弁V4と接続され、他端側で配管53と接続されている。配管53には第6ポンプP6が設けられている。分岐弁V4及び第6ポンプP6は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第6ポンプP6は、配管54に設けられても良い。
【0048】
第2空調用熱交換器23は車室に設けられている。第2空調用熱交換器23は、内部を電装系冷却液が流通可能に構成されて、第2空調用熱交換器23内の電装系冷却液と第2空調用熱交換器23の周りの空気との間で熱交換を行うことが可能となっている。この第2空調用熱交換器23は、電動ファン23aを有している。電動ファン23aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。この電動ファン23aを作動させることで、第2空調用熱交換器23の周りの空気を車室内に供給可能、すなわち、第2空調が可能になっている。
【0049】
また、上記の電動ファン15aと電動ファン23aとは、同時に作動されることで、第1空調用熱交換器15の周りの空気と第2空調用熱交換器23の周りの空気とを混合した状態で車室内に供給可能、すなわち、混合空調が可能になっている。
【0050】
第2空調用熱交換器23とモータ7とPCU9と他面側熱交換器21とは、配管57〜63によって接続されている。これらの配管57〜63によって第2空調用流路16が構成されている。この第2空調用流路16が第2循環流路に相当する。配管57〜63内にも上記の電装系冷却液が流通しており、電装系冷却液は、第2空調用熱交換器23、モータ7、PCU9及び他面側熱交換器21の間で循環可能となっている。また、配管59と配管60と配管63との間には分岐弁V5が設けられている。
【0051】
配管57は第2空調用熱交換器23とPCU9とに接続されている。配管58はPCU9とモータ7とに接続されている。配管59はモータ7と分岐弁V5とに接続されている。配管60は一端側で分岐弁V5と接続され、他端側で配管61と接続されている。配管61は配管60と接続され、配管60と他面側熱交換器21とを接続している。配管62は他面側熱交換器21と第2空調用熱交換器23とに接続されている。配管63は一端側で分岐弁V5と接続され、他端側で配管57と接続されている。配管62には第7ポンプP7が設けられている。分岐弁V5及び第7ポンプP7は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。なお、第7ポンプP7は、配管57に設けられても良い。
【0052】
この第2空調用流路16は配管64、65を介して上記の電装系放熱流路12と接続されている。具体的には、配管64は一端側で分岐弁V3と接続され、他端側で配管61と接続されている。また、配管65は一端側で分岐弁V5と接続され、他端側で配管35と接続されている。
【0053】
熱電変換モジュール17は、一面17a側と他面17b側とをそれぞれ構成する一対の基板と各基板に挟持された複数の熱電変換素子(各基板及び各熱電変換素子はいずれも図示しない。)とを備えている。熱電変換モジュール17は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、印加される電流の向きを切り替えることにより、その一面17a側と他面17b側とで吸熱面と放熱面とを切り替えることが可能になっている。この熱電変換モジュール17が第2ヒートポンプに相当し、熱電変換モジュール17の吸熱面が第2吸熱部に相当し、熱電変換モジュール17の放熱面が第2放熱部に相当する。熱電変換モジュール17は、熱電変換モジュール17の一面17a側に設けられた一面側熱交換器19と、他面17b側に設けられた上記の他面側熱交換器21との間に位置している。これにより、第2吸熱部及び第2放熱部としての熱電変換モジュール17は、第1空調用流路14と第2空調用流路16とに熱的に接続された状態となっている。なお、熱電変換モジュール17が備える各基板や熱電変換素子の他、一面側熱交換器19及び他面側熱交換器21は、それぞれ公知のものが採用されており、熱電変換モジュール17等の構成に関する詳細な説明は省略する。また、各基板を有さないいわゆるスケルトン式の熱電変換モジュールを採用することもできる。
【0054】
これらの第1空調用流路14、第2空調用流路16、第6、7ポンプP6、P7、分岐弁V4、V5及び制御装置が切替手段に相当する。
【0055】
以上のように構成された空調装置では、エンジン3の駆動による車両の走行時(エンジン走行時)及びモータ7による車両の走行時(EV走行時)において、図4〜8に示すような状態で車室内の冷房を行う。なお、図4〜8中の破線矢印は熱の移動方向を示している。他の矢印については、以下において適宜説明する。後述の図9、11〜15も同様である。
【0056】
(エンジン走行時における冷房)
この場合、制御装置は、分岐弁V1〜V4をそれぞれ作動させる。これにより、図4に示すように、エンジン用放熱流路10では、配管25と配管28とが連通され、配管25、28と配管26とが非連通とされる。また、電装系放熱流路12では、配管29と配管34とが連通され、配管29、34と配管30とが非連通とされる。さらに、配管34と配管35とが連通され、配管34、35と配管64とが非連通とされる。分岐弁V5はいずれの配管とも接続されていない状態であるため配管35と配管65とは非連通である。第1空調用流路14では、配管54と配管55とが連通され、配管54、55と配管56とが非連通とされる。この状態で、制御装置は第1〜6ポンプP1〜P6を作動させる。これらのため、エンジン用放熱流路10、電装系放熱流路12及び第1空調用流路14では、それぞれ図4中の実線矢印方向でエンジン冷却液、電装系冷却液及び空調用冷却液がそれぞれ循環する。さらに、制御装置は電動ファン5a、11a、15aをそれぞれ作動させる。
【0057】
これにより、この空調装置では、駆動中のエンジン3によって加熱されたエンジン冷却液が配管28内を流通し、再生室41内のLiBr水溶液C1を加熱する。このため、LiBr水溶液C1では、LiBr水溶液C1から水C2が水蒸気の状態で分離される(加熱脱水)。この水蒸気となった水C2は、第1接続流路45を経由して再生室41から凝縮室43へ至る(同図中の一点鎖線矢印参照。)。この凝縮室43において、水(水蒸気)C2は、配管33内の電装系冷却液によって冷却されて凝縮し、液体の状態で凝縮室43内に貯留される。上記のように、エンジン3の駆動中はモータ7及びPCU9の発熱量が少ないことから、配管33内の電装系冷却液は水C2を十分に冷却することが可能になっている。この凝縮室43内に貯留された水C2は、第5ポンプP5により、第2接続流路46を経由して凝縮室43から蒸発室44へ至ることとなる(同図中の一点鎖線矢印参照。)。一方、水C2が分離し、脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1は、第3ポンプP3により、第4接続流路48を経由して吸収室42に至ることとなる(同図中の二点鎖線矢印参照。)。
【0058】
上記のように、蒸発室44内は周囲よりも減圧された状態となっているため、蒸発室44へ至った水C2は、蒸発室44で気化する。この際、蒸発室44内には気化熱によって冷熱が蓄えられる。この気化した水(水蒸気)C2は第3接続流路47を経由して吸収室42に至る(同図中の一点鎖線矢印参照。)。このため、吸収室42では、気化した水C2が脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1に吸収される。この際、発熱反応が生じることとなるが、配管33内の電装系冷却液によって吸収室42が高温となることが防止されている。このため、水C2が好適に吸収されることとなり、蒸発室44における水C2の気化が促進される。一方、水C2を吸収したLiBr水溶液C1は、第4ポンプP4により、第5接続流路49を経由して再生室41に至る(同図中の白色矢印参照。)。
【0059】
上記の気化熱によって蒸発室44内に蓄えられた冷熱により、配管53内の空調用冷却液が冷却される。この冷却された空調用冷却液が配管53〜55を介して第1空調用熱交換器15内に至り、第1空調用熱交換器15の周りの空気を冷却する。この冷却された空気が電動ファン15aによって車室内に供給されることにより、この空調装置では車室内の冷房を行う(第1空調)。
【0060】
一方、第4接続流路48を流通する脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1と、第5接続流路49を流通するLiBr水溶液C1とは、熱交換器51内において熱交換を行う。この際、第4接続流路48を流通する脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1は、再生室41における上記の加熱脱水によって高温となっていることから、第5接続流路49内を流通するLiBr水溶液C1は熱交換器51内で加熱され、より高温の状態で再生室41に至ることとなる。一方、第4接続流路48を流通する脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1は熱交換器51内で冷却されて吸収室42に至ることとなる。これらのため、吸収室42内では、脱水・濃縮されたLiBr水溶液C1に水C2が吸収され易くなり、また、再生室41ではLiBr水溶液C1の加熱脱水が生じ易くなる。このため、この空調装置では、ケミカルヒートポンプ13において、LiBr水溶液C1と水C2との分離及び吸収が好適に行われ、蒸発室44内に冷熱が好適に蓄えられる。このため、この空調装置では、冷房能力が高くなっている。なお、再生室41の加熱を終えた配管26内のエンジン冷却液は、配管25からエンジン用ラジエータ5に至り、エンジン用ラジエータ5の周りの空気と熱交換されて冷却されることとなる。
【0061】
また、吸収室42及び凝縮室43を経た配管34内の電装系冷却液は、モータ7及びPCU9の冷却を行った後、配管33を経て電装系用ラジエータ11に至る。そして、電装系用ラジエータ11において、車室外の空気と熱交換されて冷却されることとなる。
【0062】
また、この空調装置では、蒸発室44内の冷熱に基づく第1空調では冷房能力が不足する場合に、制御装置が分岐弁V4、V5及び第7ポンプP7をそれぞれ作動させる。これにより、図5に示すように、第1空調用流路14では、配管54と配管56とが連通され、配管54、56と配管55とが非連通とされる。また、第2空調用流路16では、配管60と配管63とが連通され、配管60と配管59、65とが非連通とされる。これらのため、第1空調用流路14及び第2空調用流路で16は、それぞれ空調用冷却液又は電装系冷却液が図5中の実線矢印方向で循環する。なお、エンジン用放熱流路10及び電装系放熱流路12では、図4に示した場合と同様にエンジン用冷却液又は電装系冷却液が循環する。この状態で、制御装置は、熱電変換モジュール17の一面17a側を放熱面とし、他面17b側を吸熱面とさせて作動させる。また、制御装置は電動ファン23aを作動させ、電動ファン15aの作動を停止させる。
【0063】
これらのため、第2空調用流路16では、他面側熱交換器21内の電装系冷却液が熱電変換モジュール17による吸熱を受けて冷却されることとなる。そして、熱電変換モジュール17が吸熱した電装系冷却液の熱は、一面側熱交換器19内において空調用冷却液に対して放熱される。この際、空調用冷却液は、蒸発室44内の冷熱によって冷却されているため、熱電変換モジュール17は、より多くの熱を空調用冷却液に対して放熱することが可能となっている。このため、他面側熱交換器21内において、電装系冷却液が十分に冷却される。このため、第2空調用流路16内の電装系冷却液は、第1空調用流路14内の空調用冷却液よりも冷却されることとなる。
【0064】
そして、この冷却された電装系冷却液が配管62を経て第2空調用熱交換器23内に至り、第2空調用熱交換器23の周りの空気を冷却する。この冷却された空気が電動ファン23aによって車室内に供給されることにより、この空調装置では車室内のより強い冷房を行う(第2空調)。
【0065】
(EV走行時における冷房)
EV走行時は、エンジン3が駆動しないため、エンジン用ラジエータ5における熱交換によって加熱されたエンジン冷却液によって、再生室が加熱されることとなる。このため、この空調装置では、上記のエンジン駆動時における冷房と同様、ケミカルヒートポンプ13における吸熱に基づく第1空調の他、熱電変換モジュール17による吸熱に基づく第2空調を行うことが可能である。
【0066】
(エンジン走行時及びEV走行時における暖房)
この場合、上記の図5に示す状態を基に、制御装置が分岐弁V4、V5を作動させる。これにより、図6に示すように、電装系放熱流路12では、配管34と配管64とが連通されるとともに配管35と配管65とが連通され、配管34と配管35とが直接的には非連通とされる。また、第2空調用流路16では、配管63と配管65とが連通され、配管63と配管59、60とが非連通とされる。つまり、配管64、65を介して、電装系放熱流路12の一部と第2空調用流路16の一部とが連通された状態とされる。
【0067】
これにより、吸収室42及び凝縮室43を経て加熱された配管34内の電装系冷却液は、配管64、61、62の順で流通し、第2空調用熱交換器23に至る。そして、この加熱された電装系冷却液により、第2空調用熱交換器23内の周りの空気が加熱される。この加熱された空気が電動ファン23aによって車室内に供給されることにより、この空調装置では車室内の暖房を行う。なお、この際、制御装置が熱電変換モジュール17の一面17a側を吸熱面とし、他面17b側を放熱面とさせて作動させることで、熱電変換モジュール17による放熱により、他面側熱交換器21内の電装系冷却液を更に加熱することも可能である。これにより、車室内のより強い暖房を行うことも可能である。
【0068】
第2空調用熱交換器23内において熱交換を終え、冷却された電装系冷却液は、配管63、65を経由して配管35に至る。そして、モータ7及びPCU9の冷却を行った後、電装系用ラジエータ11において、車室外の空気と熱交換されて冷却されることとなる。なお、分岐弁V5を切り替えて、電装系冷却液が配管58、59を経由して配管35に至るようにしても良い。この場合には、配管35に至る前の電装系冷却液によって、モータ7及びPCU9が冷却されることとなる。
【0069】
また、EV走行時等、モータ7及びPCU9が十分に発熱している状態においては、制御装置が分岐弁V4、V5を以下のように作動させることでも暖房を行うこと可能である。この場合には、図7に示すように、電装系放熱流路12では、配管34と配管35とが連通され、配管34と配管64とが非連通とされ、配管35と配管65とが非連通とされる。つまり、電装系放熱流路12と第2空調用流路16とが非連通とされた状態とされる。また、第2空調用流路16では、配管59と配管60とが連通され、配管59、60と配管63とが非連通とされる。
【0070】
この状態では、第2空調用流路16において、モータ7及びPCU9によって加熱された電装系冷却液が配管59〜62を経て第2空調用熱交換器23に至る。そして、上記の暖房と同様、加熱された空気が電動ファン23aによって車室内に供給されて車室内の暖房が行われることとなる。なお、この場合にも、熱電変換モジュール17による放熱によって、他面側熱交換器21内の電装系冷却液を更に加熱することも可能である。
【0071】
これらの各暖房時には、蒸発室44内の冷熱によって冷却された空調用冷却液が第1空調用流路14内を流通している(図6、7参照)。このため、これらの各暖房時において、制御装置が分岐弁V4を作動させるとで、配管54と配管55とを連通させて、第1空調用熱交換器15内に空調用冷却液を流通させることも可能である。これにより、第1空調用熱交換器15の周りの空気は冷却されて除湿される。このため、上記の暖房中に、制御装置が電動ファン15aを作動させることで、除湿された空気を車室内に供給し、車室内の暖房と同時に除湿を行うことも可能である。つまり、第1空調と第2空調とによる混合空調を行うことが可能である。この際、冷却及び除湿された空気は、第2空調用熱交換器23における熱交換によって加熱された空気によって再加熱された状態となる。このため、除湿によって車室内の暖房が妨げられるという状態が生じ難くなっている。
【0072】
さらに、ケミカルヒートポンプ13を作動させる必要がない場合、この空調装置では、制御装置が第3〜6ポンプP3〜P6の作動を停止させるとともに、分岐弁V1、V2、V5の切り替えを行う。また、分岐弁V3、V4については、いずれの配管とも接続しない状態とさせる。これにより、図8に示すように、エンジン用放熱流路10では、配管25と配管26とが連通され、配管25、26と配管28とが非連通とされる。また、電装系放熱流路12では、配管29と配管30とが連通され、配管29、30と配管34とが非連通とされる。第2空調用流路16では、配管59と配管60とが連通され、配管59、60と配管63とが非連通とされる。
【0073】
このため、第2空調用流路16では、電装系冷却液がモータ7及びPCU9によって加熱される。そして、第2空調用熱交換器23では、この加熱された電装系冷却液による熱交換が行われ、上記の暖房時と同様に、車室内の暖房が行われることとなる。なお、車室内の暖房に用いられなかったモータ7及びPCU9の熱は、電装系放熱流路12を流通する電装系冷却液及び電装系用ラジエータ11により車室外の空気と熱交換される。
【0074】
この状態では、エンジン用放熱流路10では、エンジン冷却液が配管28を経由しないこととなり、エンジン用放熱流路10におけるエンジン冷却液の流路抵抗が低減される。同様に、電装系放熱流路12では、電装系冷却液が配管34を経由しないこととなり、電装系放熱流路12内における電装系冷却液の流路抵抗が低減されることとなる。さらに、配管28内のエンジン冷却液によって再生室41が不必要に加熱されることが防止されるとともに、配管34内の電装系冷却液によって吸収室42及び凝縮室43が不必要に冷却されることも防止される。これらのため、この空調装置では、LiBr水溶液C1や水C2の劣化や変質を効果的に防止できる。
【0075】
このように、この空調装置では、ケミカルヒートポンプ13における蒸発室44が行った吸熱に基づき、熱電変換モジュール17が更に吸熱を行うことができる。このため、第1空調用流路14を流通する空調用冷却液と、第2空調用流路16を流通する電装系冷却液とで、温度差が生じることとなる。つまり、この空調装置では、冷房時において、第2空調用流路16の電装系冷却液が第1空調用流路14内の空調用冷却液よりも低温となる。
【0076】
具体的に説明すると、この空調装置では、駆動時におけるエンジン3の発熱やエンジン用ラジエータ5による熱交換で得られた熱を基に、ケミカルヒートポンプ13が吸熱を行っており、第1空調に用いるための冷熱が得られている。そして、熱電変換モジュール17は、このケミカルヒートポンプ13によって得られた冷熱を基に、第2空調用流路16を流通する電装系冷却液の冷却を行い、第2空調に用いるための冷熱を得ている。
【0077】
換言すれば、ケミカルヒートポンプ13の蒸発室44に蓄えられる冷熱は、エンジン3の発熱やエンジン用ラジエータ5による熱交換で得られた熱量によって左右されることから、第1空調に用いる冷熱には、温度のばらつきが生じ易くなる。これに対して、熱電変換モジュール17は、第2空調用流路16の電装系冷却液から吸熱を行い、第1空調用流路14内の冷却された空調用冷却液に対して放熱できる。このため、熱電変換モジュール17は、第2空調用流路16の電装系冷却液から安定的に多くの熱を吸熱できる。このため、第2空調用流路16を流通する電装系冷却液は、第1空調用流路14内を流通する空調用冷却液よりも低温とされることとなる。このため、冷房時において、第2空調は第1空調と比較して、より低い温度で室内の冷房を行うことが可能となっている。さらに、混合空調においては、第1空調用熱交換器15において冷却及び除湿された空気が、第2空調用熱交換器23における熱交換によって加熱された空気によって再加熱された状態となり、好適に室内の除湿を行うことが可能となっている。
【0078】
そして、この空調装置では、第1空調用流路14、第2空調用流路16、第6、7ポンプP6、P7、分岐弁V4、V5を制御装置が制御することで、第1空調と第2空調と混合空調とを切り替えることが可能となっている。このため、この空調装置では、目的に応じ、第1空調と、第2空調と、混合空調とを使い分けることが可能であり、空調時における温度調整を行い易くなっている。
【0079】
したがって、この空調装置によれば、室内を好適に空調可能である。
【0080】
(実施例2)
図9に示すように、実施例2の空調装置は、第1空調用流路14が配管71〜77によって構成されている。また、配管72と配管73との間には分岐弁V6が設けられている。
【0081】
配管71は第1空調用熱交換器15と配管72とに接続されている。配管72は一端側で分岐弁V6と接続され、他端側で配管71と接続されている。配管71は蒸発室44内に延びており、蒸発室44内で蛇行するように形成されている。配管73は一面側熱交換器19と分岐弁V6とに接続されている。配管74は一面側熱交換器19と分岐弁V4とに接続されている。配管75は分岐弁V4と第1空調用熱交換器15とに接続されている。配管76は一端側で分岐弁V4と接続され、他端側で配管71と接続されている。配管77は一端側で分岐弁V6と接続され、他端側で配管71と接続されている。配管71には第6ポンプP6が設けられている。分岐弁V6は、図示しない制御装置と電気的に接続されている。この分岐弁V6も上記の切替手段に相当する。なお、第6ポンプP6は、配管73側又は配管74側に設けられても良い。他の構成は実施例1の空調装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0082】
この空調装置では、制御装置が分岐弁V6を作動させ、配管72と配管73とを連通させ、配管72、73と配管77とを非連通とさせる状態とする。また、制御装置が適宜、分岐弁V4を作動させて、配管74と配管75とを連通させる場合と、配管74と配管76とを連通させる場合とを切り替える。これらより、第1空調用流路14において、空調用冷却液が流通し、第1空調を行うことが可能となる。また、制御装置が熱電変換モジュール17を作動させることで、熱電変換モジュール17の吸熱に基づく第2空調を行うことも可能となる。これらのため、この空調装置においてもエンジン走行時及びEV走行時に、上記の実施例1の空調装置とほぼ同様にして車室内の冷房、暖房及び除湿を行うことが可能である。
【0083】
また、この空調装置では、例えば、ケミカルヒートポンプ13を停止させた状態での車室内の暖房時において、制御装置が分岐弁V4〜V6を作動させる。これにより、第1空調用流路14では、配管74と配管75とが連通され、配管74、75と配管76とが非連通とされる。さらに、配管77と配管73とが連通され、配管73、77と配管72とが非連通とされる。一方、第2空調用流路16では、配管59と配管60とが連通され、配管59、60と配管63とが非連通とされる。この状態において、制御装置は熱電変換モジュール17の一面17a側を放熱面とし、他面17b側を吸熱面とさせて作動させる。そして、制御装置は、電動ファン15aを作動させ、電動ファン23aを停止させる。
【0084】
これにより、第2空調用流路16では、モータ7及びPCU9によって加熱された電装系冷却液が他面側熱交換器21内において、熱電変換モジュール17による吸熱を受ける。そして、第1空調用流路14では、空調用冷却液が一面側熱交換器19内において、熱電変換モジュール17による放熱を受けて加熱される。そして、この加熱された空調用冷却が配管74、75を経て第1空調用熱交換器15内に至り、第1空調用熱交換器15の周りの空気を加熱する。こうして、この空調装置では、この加熱された空気を電動ファン15aが車室内に供給することによっても、車室内の暖房を行うことができる。この場合、モータ7及びPCU9によって加熱された電装系冷却液の熱を熱電変換モジュール17が吸熱して、空調用冷却液に対して放熱するため、空調用冷却液がより加熱されることとなる。このため、車室内をより強く暖房することが可能となっている。
【0085】
この際、熱電変換モジュール17による吸熱を受けることで、第2空調用流路16内の電装系冷却液は冷却される。このため、冷却された電装系冷却液との熱交換により、第2空調用熱交換器23の周りの空気は冷却され、除湿されることとなる。このため、制御装置が電動ファン23aを作動させることで、車室内の除湿を行うことも可能である。また、この除湿された空気を第1空調用熱交換器15の周りの空気によって再加熱することも可能である。
【0086】
これらの場合において、配管72と配管73とが非連通とされていることから、第1空調用熱交換器15内の空調用冷却液は、配管71から配管77へと至ることとなる。このため、配管72内を流通する空調用冷却液によって、蒸発室44や蒸発室44内の水C2等が温められることがない。このため、この空調装置では、上記のように空調用冷却液を加熱して暖房を行っても、ケミカルヒートポンプ13内の水C2の劣化や変質を効果的に防止できる。他の作用効果は実施例1の空調装置と同様である。
【0087】
(実施例3)
図10に示すように、実施例3の空調装置は、空調用熱交換器18を一つ備えている。空調用熱交換器18は車室に設けられている。空調用熱交換器18は、第1空調用流路14及び第2空調用流路16に接続されており、内部を空調用冷却液又は電装系冷却液が流通可能に構成されている。空調用熱交換器18は、空調用熱交換器18内の空調用冷却液又は電装系冷却液と空調用熱交換器18の周りの空気との間で熱交換を行うことが可能となっている。この空調用熱交換器18は、電動ファン18aを有している。電動ファン18aは、図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0088】
また、この空調装置では、第1空調用流路14が配管78〜83によって構成されており、第2空調用流路16が配管84〜90によって構成されている。配管78と配管79との間には分岐弁V7が設けられており、配管81と配管82との間には分岐弁V8が設けられている。
【0089】
配管78は空調用熱交換器18と分岐弁V7とに接続されている。配管79は分岐弁V7と一面側熱交換器19とに接続されている。配管79は蒸発室44内に延びており、蒸発室44内で蛇行するように形成されている。配管80は一面側熱交換器19と分岐弁V4とに接続されている。配管81は一端側で分岐弁V4と接続され、他端側で分岐弁V8と接続されている。配管82は一端側で分岐弁V8と接続され、他端側で空調用熱交換器18と接続されている。配管83は一端側で分岐弁V4と接続され、他端側で配管79と接続されている。
【0090】
配管84はPCU9とモータ7とに接続されている。配管85はモータ7と分岐弁V5とに接続されている。配管86は一端側で分岐弁V5と接続され、他端側で配管87と接続されている。配管87は配管86と接続され、配管86と他面側熱交換器21とを接続している。配管87には配管64が接続されている。配管88は他面側熱交換器21と分岐弁V8とに接続されている。配管89は一端側で分岐弁V7と接続され、他端側でPCU9と接続されている。配管90は一端側で分岐弁V5と接続され、他端側で配管89と接続されている。配管88には第7ポンプP7が設けられている。なお、第7ポンプP7は、配管87、89に設けられても良い。
【0091】
第1空調用流路14と第2空調用流路16とは、分岐弁V7、V8及び配管88、89を介して接続されている。これらの分岐弁V7、V8も上記の切替手段に相当する。他の構成は実施例1の空調装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0092】
この空調装置では、エンジン走行時及びEV走行時において、以下のように第1空調及第2空調を行う。
【0093】
第1空調を行う場合、制御装置は、分岐弁V4、V7、V8をそれぞれ作動させる。これにより、図11に示すように、第1空調用流路14では、配管80と配管81とが連通され、配管80、81と配管83とが非連通とされる。また、配管78と配管79とが連通され、配管78、79と配管89とが非連通とされる。さらに、配管81と配管82とが連通され、配管81、82と配管88とが非連通とされる。これらにより、第1空調用流路14と第2空調用流路16とが非連通とされる。
【0094】
この状態で、制御装置は第1〜6ポンプP1〜P6及び分岐弁V1〜V3、V5を作動させる。また、制御装置は電動ファン5a、11a及び電動ファン18aを作動させる。なお、第1〜6ポンプP1〜P6、分岐弁V1〜V3、V5及び電動ファン5a、11aの作動による、エンジン用放熱流路10、電装系放熱流路12及び第2空調用流路16におけるエンジン冷却液又は電装系冷却液の流通については、図3に示す実施例1の空調装置と同様であり、説明を適宜省略する。
【0095】
これらにより、第1空調用流路14では、蒸発室44内の冷熱によって冷却された空調用冷却液が配管82を経て空調用熱交換器18内に至り、空調用熱交換器18の周りの空気を冷却する。この冷却された空気が電動ファン18aによって車室内に供給されることにより、第1空調としての冷房を行う。
【0096】
また、第2空調を行う場合、第1空調時の状態から制御装置が分岐弁V4、V5、V7、V8をそれぞれ作動させる。これにより、図12に示すように、第1空調用流路14では、配管80と配管83とが連通され、配管80、83と配管81とが非連通とされる。また、配管78と配管89とが連通され、配管78、89と配管79とが非連通とされる。さらに、配管88と配管88とが連通され、配管82、88と配管81とが非連通とされる。第2空調用流路16では、配管86と、配管90とが連通され、配管86と、配管85、65とが非連通とされる。これにより、第1空調用流路14の一部と第2空調用流路16の一部とが連通される。この状態で、制御装置は、熱電変換モジュール17の一面17a側を放熱面とし、他面17b側を吸熱面とさせて作動させるとともに、第7ポンプP7を作動させる。他の分岐弁V1〜V3、第1〜6ポンプP1〜P6及び電動ファン5a、11aの作動については、図4に示す実施例1の空調装置と同様である。
【0097】
これらにより、他面側熱交換器21内において、熱電変換モジュール17による吸熱を受けて冷却された電装系冷却液が配管88から配管82を経て空調用熱交換器18内に至る。そして、空調用熱交換器18の周りの空気を冷却し、電動ファン18aがこの冷却された空気を室に供給することで、第2空調としての冷房が行われる。この空調用熱交換器18内の電装系冷却液は、配管78から配管89を経てPCU9に至る。なお、一面側熱交換器19内で熱電変換モジュール17による放熱を受けた空調用冷却液は、配管80から配管83を経て配管79に至ることとなる。このため、空調用冷却液と電装系冷却液とが混合されることはない。
【0098】
一方、この空調装置において車室内の暖房を行う場合には、上記の第2空調の状態から制御装置が分岐弁V3、V5を作動させる。このため、図13に示すように、配管34と配管64とが連通され、配管34と配管35とが直接的には非連通とされる。また、分岐弁V5を介して、配管90と配管64とが連通され、配管87、90と配管86とが非連通とされる。これにより、電装系放熱流路12の一部と第2空調用流路16の一部とが連通された状態とされる。他の分岐弁V1、V2、第1〜6ポンプP1〜P6及び電動ファン5a、11aの作動については、図6に示す実施例1の空調装置と同様である。
【0099】
これにより、吸収室42及び凝縮室43を経て加熱された配管34内の電装系冷却液は、配管64、87、88、82の順で流通し、空調用熱交換器18に至る。そして、そして、空調用熱交換器18の周りの空気を加熱し、電動ファン18aがこの冷却された空気を室に供給することで、この空調装置では車室内の暖房を行うことができる。なお、この場合においても、制御装置が熱電変換モジュール17の一面17a側を吸熱面とし、他面17b側を放熱面とさせて作動させることで、熱電変換モジュール17による放熱により、他面側熱交換器21内の電装系冷却液を更に加熱することが可能である。これにより、車室内のより強い暖房を行うことも可能である。
【0100】
さらに、EV走行時等、モータ7及びPCU9が十分に発熱している状態においては、制御装置が分岐弁V3、V5を作動させて暖房を行うことも可能である。この場合には、図14に示すように、電装系放熱流路12では、配管34と配管35とが連通され、配管34と配管64とが非連通とされ、配管35と配管65とが非連通とされる。また、第2空調用流路16では、配管85と配管86とが連通され、配管85、86と配管90とが非連通とされる。これにより、電装系放熱流路12と第2空調用流路16とが非連通とされた状態となる。他の分岐弁V1、V2、第1〜6ポンプP1〜P6及び電動ファン5a、11aの作動については、図7に示す実施例1の空調装置と同様である。
【0101】
この状態では、モータ7及びPCU9によって加熱された電装系冷却液が配管85〜88及び配管82を経て空調用熱交換器18に至る。そして、上記の暖房と同様、加熱された空気が電動ファン18aによって車室内に供給されて車室内の暖房が行われることとなる。また、この場合にも、熱電変換モジュール17による放熱によって、他面側熱交換器21内の電装系冷却液を更に加熱することも可能である。なお、第2空調時と同様、これらの暖房時においても、空調用冷却液と電装系冷却液とが混合されることはない。
【0102】
また、ケミカルヒートポンプ13を作動させる必要がない場合、この空調装置では、制御装置が第3〜6ポンプP3〜P6の作動を停止させるとともに、分岐弁V1、V2、V5の切り替えを行う。また、分岐弁V3、V4については、いずれの配管とも接続しない状態とさせる。分岐弁V7、V8については、上記の暖房時と同様である。つまり、第1空調用流路14の一部と第2空調用流路16の一部とが連通された状態である。なお、エンジン用放熱流路10、電装系放熱流路12におけるエンジン冷却液又は電装系冷却液の流通については、図8に示す実施例1の空調装置と同様である。
【0103】
この場合には、図15に示すように、第2空調用流路16では、電装系冷却液がモータ7及びPCU9によって加熱され、空調用熱交換器18では、この加熱された電装系冷却液による熱交換が行われ、上記の暖房時と同様に、車室内の暖房が行われることとなる。なお、車室内の暖房に用いられなかったモータ7及びPCU9の熱は、電装系放熱流路12を流通する電装系冷却液及び電装系用ラジエータ11により車室外の空気と熱交換されることとなる。
【0104】
この空調装置では、一つの空調用熱交換器18によって車室内の冷房及び暖房を行うことができる。このため、この空調装置は、上記の実施例1、2の空調装置と比較して、空調装置の構成を簡略化できる。このため、この空調装置では、室内を好適に空調できるとともに、その製造コストを削減することも可能となっている。この空調装置における他の作用効果は、除湿された空気の再加熱を除き、実施例1の空調装置と同様である。
【0105】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0106】
例えば、実施例1、2の空調装置において、第1、2空調用熱交換器15、23の周りの空気が車室内に供給される場合と車室外に放出される場合とを切り替え可能な空調ダクトを設ける構成としても良い。この場合、例えば、図6、7に示す暖房時において、空調用冷却液との熱交換によって冷却された第1空調用熱交換器15周りの空気を車室外に放出することが可能となる。つまり、蒸発室44内の冷熱を車室外に放出することが可能となるため、暖房時において、蒸発室44内に過度に冷熱が蓄えられることを防止できる。
【0107】
また、実施例1〜3の空調装置において、ケミカルヒートポンプ13及び熱電変換モジュール17に加えて、さらにヒートポンプを設ける構成としても良い。
【0108】
さらに、第1空調用流路14を流通する空調用冷却液及び第2空調用流路16を流通する電装系冷却液に替えて、それぞれ空気等の他の熱交換媒体を採用しても良い。
【0109】
また、実施例1〜3の空調装置において、エンジン3と、モータ7及びPCU9との配置を入れ替え、エンジン3の熱を利用して車室内の暖房を行う構成としても良い。
【0110】
さらに、実施例1〜3の空調装置において、エンジン用放熱流路10又は電装系放熱流路12に対し、車両に搭載されているバッテリを接続する構成とすることもできる。この場合、バッテリの冷却を行うことも可能となる。
【0111】
また、第1空調用熱交換器15、第2空調用熱交換器23及び空調用熱交換器18によって冷却された空気を車室内の他にバッテリも供給する構成とすることで、冷却された空気によってバッテリを冷却することもできる。
【0112】
さらに、実施例1〜3の空調装置において、エンジン3と、モータ7及びPCU9とのいずれか一方のみを備える構成とすることもできる。
【0113】
また、実施例1〜3の空調装置について、エンジン3に設けられたマフラを再生室41に挿通し、マフラ内を流通する排ガスによって再生室41を加熱させる構成とすることもできる。また、マフラにも排熱バイパス通路を設け、排ガスによって再生室41を加熱する場合と加熱しない場合とを切り替え可能に構成することもできる。
【0114】
さらに、実施例1〜3の空調装置について、オイル流路を設け、エンジン3の駆動によって高温となったエンジンオイルによって再生室41を加熱する構成とすることもできる。
【0115】
また、実施例1〜3の空調装置について、エンジン3やモータ7等と再生室41とを隣接させ、駆動によるエンジン3やモータ7等の熱によって再生室41が直接加熱される構成とすることもできる。
【0116】
さらに、実施例1〜3の空調装置について、配管34は、吸収室42及び凝縮室43のいずれか一方のみと接続される構成とすることもできる。
【0117】
また、ケミカルヒートポンプ13は、空気等の不純ガスが混入すると性能が低下するおそれがあることから、例えば不純ガスの溜まりやすい吸収室42や蒸発室44に真空ポンプや追加の冷媒を入れるポート等を設けても良い。また、ケミカルヒートポンプ13は、これらに加えて冷媒のリザーバータンクを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、建物における室内の空調装置として利用可能な他、エンジンによって走行される車両、エンジンとモータとによって走行される車両及びモータによって走行される車両における車室内の空調装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0119】
13…ケミカルヒートポンプ(第1ヒートポンプ)
14…第1空調用流路(第1循環流路、切替手段)
15…第1空調用熱交換器(空調用熱交換器)
16…第2空調用流路(第2循環流路、切替手段)
17…熱電変換モジュール(第2ヒートポンプ)
17a…一面(第2吸熱部、第2放熱部)
17b…他面(第2吸熱部、第2放熱部)
18…空調用熱交換器
23…第2空調用熱交換器(空調用熱交換器)
41…再生室(第1放熱部)
42…吸収室
43…凝縮室(第1放熱部)
44…蒸発室(第1吸熱部)
45…第1接続流路
46…第2接続流路
47…第3接続流路
48…第4接続流路
49…第5接続流路
C1…Libr水溶液(化学物質)
C2…水(反応物質)
P6…第6ポンプ(切替手段)
P7…第7ポンプ(切替手段)
V4〜V8…分岐弁(切替手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が放熱部となり、他方が吸熱部となる熱伝達部を有するヒートポンプと、
前記熱伝達部に熱的に接続され、熱交換媒体が循環可能な循環流路と、
前記循環流路に接続される空調用熱交換器とを備え、
前記ヒートポンプは第1ヒートポンプ及び第2ヒートポンプを少なくとも有し、
前記循環流路は第1循環流路及び第2循環流路を少なくとも有し、
前記第1ヒートポンプの一方の前記熱伝達部には前記第1循環流路が熱的に接続され、前記第1循環流路には前記第2ヒートポンプの他方の前記熱伝達部が熱的に接続され、前記第2ヒートポンプの一方の前記熱伝達部には前記第2循環流路が熱的に接続され、
前記第1循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する第1接続状態と、該第1循環流路を除く他の前記循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する第2接続状態とを切り替える切替手段を備えていることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記第1ヒートポンプは第1吸熱部と第1放熱部とを有し、
前記第2ヒートポンプは第2吸熱部と第2放熱部とを有し、
前記第1ヒートポンプの前記第1吸熱部には前記第1循環流路が熱的に接続され、前記第1循環流路には前記第2ヒートポンプの前記第2放熱部が熱的に接続され、前記第2ヒートポンプの前記第2吸熱部には前記第2循環流路が熱的に接続され、
前記切替手段は、前記第1循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する前記第1接続状態と、前記第2循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する前記第2接続状態とを切り替える請求項1記載の空調装置
【請求項3】
前記第1ヒートポンプは第1吸熱部と第1放熱部とを有し、
前記第2ヒートポンプは第2吸熱部と第2放熱部とを有し、
前記第1ヒートポンプの前記第1放熱部には前記第1循環流路が熱的に接続され、前記第1循環流路には前記第2ヒートポンプの前記第2吸熱部が熱的に接続され、前記第2ヒートポンプの前記第2放熱部には前記第2循環流路が熱的に接続され、
前記切替手段は、前記第1循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する前記第1接続状態と、前記第2循環流路と前記空調用熱交換器とを接続する前記第2接続状態とを切り替える請求項1記載の空調装置
【請求項4】
前記空調用熱交換器を複数備え、
いずれか一つの前記空調用熱交換器は前記第1循環流路に接続され、他の前記空調用熱交換器は、該第1循環流路を除く他の前記循環流路に接続されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の空調装置。
【請求項5】
前記空調用熱交換器は一つであり、
前記空調用熱交換器は、前記第1循環流路と、該第1循環流路を除く他の前記循環流路とに接続されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の空調装置。
【請求項6】
前記第1ヒートポンプは、化学物質を加熱し、反応物質を蒸気化する再生室と、第1接続流路により該再生室と接続され、蒸気化した該反応物質を凝縮する凝縮室と、第2接続流路により該凝縮室と接続され、凝縮した該反応物質を気化する蒸発室と、第3接続流路により該蒸発室と接続されているとともに、第4接続流路及び第5接続流路により該再生室と接続され、気化した該反応物質を該第4接続流路により流入してくる該化学物質に吸収させるとともに、吸収後の該化学物質を該第5接続流路により前記再生室に流出させる吸収室とを有するケミカルヒートポンプであり、
前記第1循環流路は該蒸発室に接続され、
前記第2ヒートポンプは、吸熱面と放熱面とを有する熱電変換モジュールであり、
前記第2循環流路は該吸熱面に熱的に接続されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−236462(P2012−236462A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105593(P2011−105593)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】