穿刺装置
【課題】簡易な操作によって血液などの体液を適切に採取できるようにする。
【解決手段】 穿刺時において、指先により封鎖される開口部56aを有する本体部3Aと、上記開口部56aを覆う状態と覆わない状態とを選択可能であり、かつ上記開口部56aを覆った状態において、上記本体部3Aとの間に指先を挿入するための収容空間11を形成するための蓋4Aと、上記蓋4Aによって上記開口部56aが覆われた状態を維持するための第1および第2ロック機構7A,8Aと、を含んでおり、上記第1ロック機構7Aにおいて上記蓋4Aがロックされ、かつ上記第2ロック機構8Aにおいて上記蓋4Aがロックされない状態と、上記第2ロック機構8Aにおいて上記蓋4Aがロックされ、かつ上記第1ロック機構7Aにおいて上記蓋4Aがロックされない状態とを選択できるように構成されている。
【解決手段】 穿刺時において、指先により封鎖される開口部56aを有する本体部3Aと、上記開口部56aを覆う状態と覆わない状態とを選択可能であり、かつ上記開口部56aを覆った状態において、上記本体部3Aとの間に指先を挿入するための収容空間11を形成するための蓋4Aと、上記蓋4Aによって上記開口部56aが覆われた状態を維持するための第1および第2ロック機構7A,8Aと、を含んでおり、上記第1ロック機構7Aにおいて上記蓋4Aがロックされ、かつ上記第2ロック機構8Aにおいて上記蓋4Aがロックされない状態と、上記第2ロック機構8Aにおいて上記蓋4Aがロックされ、かつ上記第1ロック機構7Aにおいて上記蓋4Aがロックされない状態とを選択できるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先から血液などの体液を採取する際に利用される穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚から血液を採取する場合には、皮膚に針を突き刺すように構成された穿刺装置が用いられている。穿刺装置においては、血液の出液を促進するために種々の方法が採用されている。代表的なものとしては、穿刺装置に組み込んだポンプを用いて皮膚に負圧を作用させ、皮膚を盛り上げて血液を集める方法(たとえば特許文献1参照)、あるいは指を圧迫して鬱血させる方法が挙げられる(たとえば特許文献2−4参照)。
【0003】
しかしながら、負圧を作用させる方法では、穿刺装置に電動式あるいは手動式のポンプを組み込む必要がある。そのため、電動式のポンプを用いる方法では、ポンプおよびポンプの駆動源によって装置が大型化するとともに重量が大きくなる。その結果、電動式のポンプを採用した穿刺装置は、携帯性が悪いものとなってしまう。また、ポンプを駆動源によって駆動すれば、消費電力が大きくなってランニングコストが高くなる。一方、手動式のポンプを用いる方法では、負圧を発生させるためのポンプ機構を設けることによって装置構成が複雑化して製造コストが高くなり、また使用者にとっては、ポンプ機構を動作させるために煩わしい操作を強いられる。
【0004】
負圧を作用させる方法では、電動式あるいは手動式を問わず、穿刺装置の先端部を適切に皮膚に押し付けた状態を維持しなければ穿刺装置の先端部に空気が流入する。また、穿刺装置の先端部と皮膚との間に体毛が介在することによって穿刺装置の先端部に空気が流入する。その結果、負圧を作用させる方法では、何らの手立ても講じなければ、皮膚に対して適切に負圧を作用させることができないといった問題がある。
【0005】
一方、指を圧迫する方法では、穿刺装置にカフおよび駆動源を設け、駆動源によってカフに空気を注入することにより指を圧迫する方法が採用されている。そのため、カフおよび駆動源によって装置の大型化および重量増加を招き、携帯性が悪いものとなる。また、カフを駆動するための動力が必要なために、消費電力ひいてはランニングコストが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−515377号公報
【特許文献2】特開平9−89885号公報
【特許文献3】特開平9−313465号公報
【特許文献4】特開平10−5199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コスト的に有利に製造でき、少ないランニングコストで、簡易な操作によって血液などの体液を適切に採取できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、指先の穿刺対象部位に穿刺要素を突き刺して穿刺対象部位から血液を出液させるための穿刺装置であって、上記穿刺要素が移動する方向に開放しているとともに、穿刺時において、指先により封鎖される開口部を有する本体部と、上記開口部を覆う状態と覆わない状態とを選択可能であり、かつ上記開口部を覆った状態において、上記本体部との間に指先を挿入するための収容空間を形成するための蓋と、上記蓋によって上記開口部が覆われた状態を維持するための第1および第2ロック機構と、を含んでおり、上記第1ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第2ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第1ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができる一方で、上記第2ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第1ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第2ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができるように構成されていることを特徴とする、穿刺装置が提供される。
【0009】
蓋は、たとえば指先によって開口部を閉塞した状態において、蓋により開口部を覆ったときに、指先を開口部に向けて押し付けるための圧迫手段を備えたものとして構成される。
【0010】
圧迫手段は、たとえば指先の表面形状に倣った形態を有する一対の圧迫片を有するものとして構成される。
【0011】
本体部は、蓋により上記開口部を覆ったときに、指先における穿刺対象部位の周りに密着させるための密着部材を備えたものとして構成するのが好ましい。密着部材は、たとえば開口部の形状を規定する貫通孔を有するものとして構成され、弾性体により構成するのが好ましい。この場合、密着部材は、たとえば上記貫通孔が形成されたフランジ部と、このフランジ部から上方に延出する筒状部を有するものとされる。筒状部は、上方に向かうほど外径が大きくなるテーパ状に形成するのが好ましい。
【0012】
本発明の穿刺装置は、指における穿刺対象部位よりも根元側を拘束して指先を鬱血させるための拘束手段をさらに備えているのが好ましい。拘束手段は、たとえば蓋に対して揺動可能に支持される。この拘束手段は、たとえば板バネを備えたものとして構成される。拘束手段は、本体部に設けられた第1の挟持部と、蓋に設けられ、かつ第1の挟持部とともに指を挟みこむための第2の挟持部と、を有するものとして構成することもできる。
【0013】
本発明の穿刺装置は、穿刺対象部位よりも指の根元側から穿刺対象部位に向けて血液を送って、当該穿刺対象部位から血液を搾り出すための搾液手段をさらに備えていてもよい。搾液手段は、たとえば指における穿刺対象部位よりも根元側の部分に対して、指先に向けた力を作用させるための作用部材を有するものとして構成される。この作用部材は、たとえば回転体、あるいは根元側の部分から穿刺対象部位に向けた方向に移動可能な移動体として構成され、必要に応じて、シート材を介して指に接触するように構成される。
【0014】
搾液手段は、たとえば上記収容空間に挿入した指先に上記収容空間から指先を抜脱する方向に力を作用させることによって、指先に対して穿刺対象部位に向けた力を作用させるための作用部を有するものとして構成することもできる。この作用部は、たとえば収容空間において突出する板バネとして構成される。
【0015】
本発明の穿刺装置は、たとえば穿刺要素を移動させて指先における穿刺対象部位を穿刺するための穿刺機構と、穿刺装置における穿刺要素を移動させるタイミングを制御する制御部と、を備えたものとして構成される。この場合、制御部は、開口部が上記蓋によって覆われたことを確認したときに、穿刺機構によって穿刺要素を移動させるように構成するのが好ましい。
【0016】
本発明の穿刺装置は、皮膚から出液させた血液に基づいて、血液中における特定成分を分析するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の参考例に係る穿刺装置を示す正面図である。
【図2】図1に示した穿刺装置の断面図である。
【図3】図1に示した穿刺装置における穿刺機構を説明するための要部を拡大した断面図である。
【図4】図1に示した穿刺装置における搾液機構を説明するための要部を拡大した断面図である。
【図5】図1に示した穿刺装置における蓋を、この蓋の本体部を透視して示した斜視図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図1に示した穿刺装置において使用されるランセットの全体斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図8〜図10に示したランセットにおいて、キャップを取り外した状態を示す断面図である。
【図12】図8のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】ランセットの内部構成を説明するための一部を切り欠いて示した要部斜視図である。
【図14】図13に示した状態のランセットの平面図である。
【図15】ランセットの動作を説明するための断面図である。
【図16】ランセットの動作を説明するための断面図である。
【図17】ランセットに組み込まれたバイオセンサの全体斜視図である。
【図18】図17に示したバイオセンサの分解斜視図である。
【図19】図17のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【図20】図17のXX−XX線に沿う断面図である。
【図21】穿刺機構の動作を説明するための要部断面図である。
【図22】穿刺機構の動作を説明するための要部断面図である。
【図23】バイオセンサにおいて血液が導入される過程を説明するための要部断面図である。
【図24】搾液機構の他の例を示す要部断面図である。
【図25】指先に血液を集めるための構成の他の例を示す断面図である。
【図26】指の根元側を拘束するための(拘束手段)の他の例を示す要部断面図である。
【図27】密着部材の他の例を説明するための穿刺装置の要部断面図である。
【図28】本発明の実施形態に係る穿刺装置を示す正面図である。
【図29】図28に示した穿刺装置における第1および第2ロック機構を説明するためのものであり、図28のXXIX−XXIX線に沿う断面に相当する断面図である。
【図30】ロック機構の他の例を説明するための穿刺装置の正面図である。
【図31】図30に示した穿刺装置におけるロック機構を説明するためのものであり、図30のXXXI−XXXI線に沿う断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
まず、本発明の参考例について、図1ないし図23を参照して説明する。
【0020】
図1ないし図3に示した穿刺装置1は、ランセット2を装着して使用するものであり、装置本体3と、この装置本体3との間に指先10を挿入するための収容空間11(図4参
照)を形成するための蓋4と、を備えている。
【0021】
図2に示したように、装置本体3は、穿刺機構5および搾液機構6を備えている。
【0022】
図2および図3に示したように、穿刺機構5は、収容空間11に保持された指先10(
図4参照)を穿刺するためのものであり、ハウジング50、ランセットホルダ51および
作用部52を有している。
【0023】
ハウジング50は、ランセット2およびランセットホルダ51を収容するためのものである。このハウジング50は、開口部53、貫通孔54、および一対の段部55を有している。
【0024】
開口部53は、ランセット2を挿入する際に利用されるものであり、切欠53aを有している。切欠53aは、後述するランセット2の凸部22Cを係合させるためのものである(図16参照)。開口部53の上方には、密着部材56が配置されている。この密着部材56は、収容空間11に指先10を挿入した状態において、指先10に密着させるためのものである(図4参照)。密着部材56には、貫通孔56aが形成されている。この貫通孔56aは、ハウジング50の開口部53よりも径が大きくされている。このような密着部材56は、指先10との密着性を大きく確保するために、たとえばゴムや発泡体などの弾性体により形成されている。
【0025】
貫通孔54は、後述するランセットホルダ51の係合部51aの移動を許容し、その周辺部54aにおいて係合部51aを係止させるための部分である。
【0026】
一対の段部55は、後述するランセット2の収容部22に押圧力を作用させるためのものであり、ハウジング50の内方に向けて突出している。一対の段部55は、図2および図3における上方側の部分がテーパ状に形成されている。
【0027】
ランセットホルダ51は、ランセット2を保持するためのものである。ランセットホルダ51には、係合部51aおよびフランジ部51bが設けられている。係合部51aは、ハウジング50における貫通孔54の周辺部54aに係合可能なフック状に形成されている。フランジ部51bと貫通孔54の周辺部54aとの間には、コイルバネ57が配置されている。コイルバネ57は、係合部51aを貫通孔54の周辺部54aに係合させた状態では、圧縮状態となるようになっている。したがって、係合部51aが貫通孔54の周辺部54aに係合した状態を解除すれば、コイルバネ57の弾発力がフランジ部51bに作用し、ランセットホルダ51が矢印N1方向に移動させられる。フランジ部51bと段部55との間には、コイルバネ58が配置されている。コイルバネ58は、ランセットホルダ51を矢印N1方向に移動させたときに圧縮されるものであり、そのときの弾発力をフランジ部51bに作用させてランセットホルダ51を矢印N2方向に移動させるための
ものである。ただし、コイルバネ58は省略してもよい。
【0028】
作用部52は、ランセットホルダ51の係合部51aが貫通孔54の周辺部54aに係合した状態を解除するためのものであり、矢印N3,N4方向に移動可能とされている。
すなわち、作用部52は、矢印N3方向に移動させられたときに係合部51aに干渉して係合部51aに押圧力を作用させ、係合部51aが貫通孔54の周辺部54aに係合した状態を解除することができる。この作用部52は、図外の制御手段により矢印N3,N4
方向への移動が制御されている。制御手段は、たとえば蓋4の開閉動作に連動させてアクチュエータ59によって作用部52を矢印N3方向に移動させ、係合部51aの係合状態を解除するように構成されている。蓋4の開閉の確認は、たとえば後述する蓋4の凹部40bが装置本体3の凸部31に係合されたことを確認することにより、あるいは収容空間11にセンサを設けて指先10の存在を確認することにより行うことができる。もちろん、手動により作用部52を移動させるように構成することもできる。
【0029】
図2および図4に示したように、搾液機構6は、指先10における穿刺対象部位10aよりも根元側の部分から穿刺対象部位10aに向けて血液を送って、穿刺対象部位10aから血液を搾り出すためのものである。この搾液機構6は、歯車として構成された回転体60を有している。この回転体60は、矢印N5方向に回転可能とされており、シート材61を介して収容空間11に収容された指先10に接触するように配置されている。
【0030】
図4および図5に示したように、蓋4は、本体部40に対して一対の圧迫部41および拘束部42を支持した構成を有している。
【0031】
本体部40は、装置本体3との間に指先10を挿入するための収容空間11を形成するためのものであり、装置本体3における密着部材56の貫通孔56aを覆う状態と覆わない状態とを選択できるように構成されている(図1参照)。この本体部40は、装置本体3を覆い得るように下方に開放しているとともに、収容空間11に指先10を挿入できるように側方に開放している。本体部40には、図1および図2に示したように、端部に軸部40aが設けられている。この軸部40aは、装置本体3の貫通孔30に嵌合させるためのものであり、本体部40は軸部40aを支点として装置本体3に対して回転可能に支持されている。本体部40にはさらに、端部に凹部40bが設けられている。この凹部40bは、ロック機構を構成するものであり、蓋4によって装置本体3を覆ったときに、装置本体3の凸部31(凹部40bとともにロック機構を構成するもの)に係合し、蓋4が閉じた状態を維持するためのものである。この状態では、図4に示したように、収容空間11が側方に開放している。
【0032】
図4および図6に示したように、一対の圧迫部41は、収容空間11に指先10を挿入した状態において、指先10における穿刺対象部位10aを装置本体3における密着部材56の貫通孔56aに押し付けるためのものである。各圧迫部41は、本体部40により装置本体3を覆った状態において、密着部材56の直上に位置するように、本体部40の内面に支持されている。この状態では、2つの圧迫部41の表面は、指先10の表面形状に倣ったものとなっている。
【0033】
図4、図5および図7に示したように、拘束部42は、指における穿刺対象部位10aよりも根元部分を拘束し、指先10を鬱血させるためのものである。この拘束部42は、板バネ43を介して本体部40に支持されており、本体部40に対して揺動可能とされている。この拘束部42は、収容空間11に指先10を挿入した状態では、搾液機構6の回転体60に向かい合うように配置されている。そのため、収容空間11に挿入された指の根元部分には、板バネ43のバネ力が拘束部42を介して作用し、指の根元部分が回転体60に向けて押し付けられる。これにより、拘束部42によって指先10が鬱血させられ
る。
【0034】
図3に示したように、ランセット2は、指先10を穿刺するための要素(穿刺針20a)を含んでおり(図22(c)参照)、装置本体3におけるハウジング50に挿入して使用するものである。このランセット2は、図8ないし図10に示したように、ランセット本体20、キャップ部21、収容部22、およびバイオセンサ23を備えている。
【0035】
ランセット本体20は、穿刺針20a、穿刺針20aの針先側の端部を覆う保護部20b、および穿刺針20aにおける針先とは反対側の端部を埋設した保持部20cを有している。保護部20bと保持部20cとの間には、切り込み20dが形成されており、この切り込み20dにおいて保護部20bと保持部20cとを分離できるように構成されている。保護部20bには、凹部20eが形成されている。この凹部20eは、後述するキャップ部21の係合支持部21aを嵌合させるためのものである。
【0036】
図9ないし図11に示したように、キャップ部21は、収容部22に対して着脱自在に保持されているとともに、係合支持部21aを介して、ランセット本体20を保護部20bにおいて支持している。そのため、収容部22からキャップ部21を分離させるときには、ランセット本体20において保護部20bを分離させて穿刺針20aを露出させることができる。
【0037】
図8ないし図10に示したように、収容部22は、ランセット本体20およびバイオセンサ23を保持するためのものであり、全体として円筒状に形成されている。この収容部22は、3組の一対の凸部22Aa, 22Ab,22B,22Cを有している。
【0038】
図10および図12に示したように、一対の凸部22Aa,22Abは、ランセット本体20を保持部20cにおいて密着させるためのものであり、収容部22の内面22aから、第1の直径軸D1に沿った方向に突出して設けられている。凸部22Aaからは、図10および図13に良く表れているように、バイオセンサ23を支持するための支持部22Eが延出している。この支持部22Eは、板バネとして機能するバネ部22Ea、およびバイオセンサ23が載置される載置部22Ebを有している。載置部22Ebには、切欠22Ecが設けられている。図14に仮想線で示したように、切欠22Ecの内面22Edは、載置部22Ebが自然状態よりも若干外方側に位置させた状態で、ランセット本体20の保護部20bに当接している。また、切欠22Ecの内面22Edは、ランセット本体20において保護部20bを分離させて穿刺針20aを露出させた状態では、自然状態に位置する。このとき、切欠22Ecの内面22Edと穿刺針20aとの間には、隙間が設けられる。
【0039】
図3および図9に示したように、一対の凸部22Bは、装置本体3におけるハウジング50の段部55に干渉させるためのものであり、収容部22の外面22bの下部位置において、図12に示したように第1直径軸D1に直交する第2直径軸D2に沿った位置に設けられている。
【0040】
図12および図16に示したように、一対の凸部22Cは、収容部22の外面22bの上部位置において、第1の直径軸D1上に設けられている。この凸部22Cは、装置本体3のハウジング50にランセット2を挿入するときに、開口部53における切欠53aに係合させるためのものある。すなわち、凸部22Cは、ハウジング50にランセット2を挿入するときに位置決めするのに利用されるものである。
【0041】
このような収容部22は、たとえば樹脂成形により全体が弾性変形可能なように形成されている。このため、図15および図16に示したように、一対の凸部22Bに対して、第2の直径軸D2に沿って内方側に向けた力を作用させた場合には、少なくとも一対の凸部22Bが設けられた部分において収容部22が変形する。これにより、一対の凸部22Bの距離が小さくなる一方で、一対の凸部22Aa,22Abの距離が大きくなり一対の凸部22Aa,22Abとランセット本体20との間に隙間が形成される。その結果、ランセット本体20は、収容部22に対して、矢印N1,N2方向に相対動することができ
る。
【0042】
図17ないし図20に示したバイオセンサ23は、毛細管力により血液を移動させるとともに、血液中の特定成分(たとえばグルコース)の濃度を、電極法により測定できるように構成されたものである。より具体的には、バイオセンサ23は、基板23a、一対のスペーサ23bおよびカバー23cによって構成されているとともに、これらの要素23a〜23cによって規定されるキャピラリ23dを備えている。
【0043】
基板23aの表面には、作用極23e、対極23fおよび試薬部23gが設けられている。作用極23eおよび対極23fは、図17を参酌すれば分かるように、装置本体3における分析回路(図示略)に、端子35を介して導通させるための部分である。試薬部23gは、作用極23eおよび対極23fを繋ぐように形成されており、たとえば酸化還元酵素および電子伝達物質を含んでいる。
【0044】
一対のスペーサ23bは、キャピラリ23dの幅寸法および高さ寸法を規定するためのものであり、基板23aの表面において、試薬部23gを挟み込むように間隔を隔てて配置されている。これらのスペーサ23bは、たとえば両面テープにより構成される。
【0045】
バイオセンサ23には、図13および図20に良く表れているように、半円状の切欠23hが設けられている。この切欠23hは、ランセット本体20を矢印N1方向に移動させたときに穿刺針20aの移動を許容するためのものであり、この切欠23hにおいて、キャピラリ23dに血液を導入するための開口23jが開放している。バイオセンサ23は、その切欠23hが載置部22Ebにおける切欠22Ecに対応する位置において、載置部22Ebに固定されている。したがって、載置部22Ebが自然状態にある場合には、切欠23hと穿刺針20aとの間には、隙間が設けられる。
【0046】
図2および図3に示したように、穿刺装置1を用いての穿刺作業に当たっては、まず蓋4を開けた状態として、密着部材56の貫通孔56aを介して、ハウジング50にランセット2を挿入する。図21(a)および図21(b)に示したように、ランセット2の挿入は、ハウジング50の切欠53aに対して、ランセット2の凸部22Cを位置合わせしつつ(図16参照)、ハウジング50にランセット2を押し込むことにより行うことができる。
【0047】
ハウジング50にランセット2を押し込んだ場合には、ランセット本体20の保持部20cがランセットホルダ51に嵌めこまれる一方で、収容部22の凸部22Bがハウジング50の段部55に干渉する。これにより、図15および図16に示したように、収容部22が変形し、ランセット本体20が収容部22に対して相対動可能な状態とされる。このとき、ランセット本体20の保持部20cがランセットホルダ51に嵌めこまれることから、ランセット本体20は、ランセットホルダ51とともに移動することができる。また、ハウジング50にランセット2を挿入するときに、ランセットホルダ51を矢印N2方向に移動させ、ランセットホルダ51の係合部51aをハウジング50における貫通孔54の周辺部54aに係合させることができる。これにより、コイルバネ57が圧縮させられ、コイルバネ57に弾発力が蓄えられる。もちろん、ランセットホルダ51の係合部51aは、ランセット2を保持させる動作とは別に、貫通孔54の周辺部54aに係合させてもよい。つまり、ランセットホルダ51にランセット2を保持させる前に、係合部51aを貫通孔54の周辺部54aに係合させておいてもよい。
【0048】
次いで、図11、図21(b)および図21(c)に示したように、ランセット2において、キャップ部21を取り外す。このとき、図11に良く表れているように、キャップ部21の係合支持部21aがランセット本体20における保護部20bの凹部20eに嵌合しているために、キャップ部21を取り外すときに、ランセット2において保護部20bが
引き抜かれる。これにより、穿刺針20aの針先が露出した状態とされる。このとき、図14に示したように、バイオセンサ23は、その切欠23h、すなわち開口23jと穿刺針20aの針先との間に若干の間隔を隔てた位置に変位し、また図17を参照すれば分かるように、バイオセンサ23の作用極23eおよび対極23fは、装置本体3に設けられた端子35に接触する。この状態では、作用極23eと対極23fとの間に電圧を印加することができ、また作用極23eに供給された電子の量を電流値として測定することができる。
【0049】
次いで、図4に示したように、密着部材56の貫通孔56aの塞ぐようにして装置本体3の上部に指先10を置き、蓋4を閉める。蓋4を閉めた状態は、蓋4の凹部40bを装置本体3の凸部31に係合させることにより維持される(図2参照)。この状態では、蓋4と装置本体3との間に収容空間11が形成され、この収容空間11に指先10が保持される。図4および図6に示したように、収容空間11においては、圧迫部41が指先10における穿刺対象部位10aの周囲を密着部材56に押し付ける。この状態では、密着部材56の貫通孔56aから穿刺対象部位10aが突出した状態となり、ランセット2の収容部22に内部に入り込む。これにより、穿刺対象部位10aが鬱血させられ、穿刺対象部位10aに血液が集められ、図22(a)に示したように収容部22において穿刺対象部位10aがバイオセンサ23に接触する。また、収容空間11においてはさらに、図4および図7に示したように、拘束部42が指の根元部分を回転体60に押し付ける。この状態では、指先10が鬱血し、指先10に血液が滞留した状態が維持される。
【0050】
次いで、図22(a)〜図22(c)に示したように、ランセット本体20を矢印N1方向に移動させて、穿刺針20aを指先10における穿刺対象部位10aに突き刺す。ランセット本体20の移動は、作用部52を移動させて係合部51aに作用部52を干渉させ、ランセットホルダ51がハウジング50に係合した状態を解除することにより行われる。ランセットホルダ51の係合状態を解除した場合には、コイルバネ57の弾発力によってランセットホルダ51がランセット本体20とともに矢印N1方向に移動し、ランセット本体20の穿刺針20aは穿刺対象部位10aに突き刺さる。
【0051】
図22(c)に示したように、穿刺針20aが穿刺対象部位10aに突き刺さった場合には、指先10における穿刺対象部位10aが切開され、血液が出液する。このとき、穿刺針20aとバイオセンサ23の開口23jとの間に若干の隙間が設けられているため、バイオセンサ23によって、血液の出液が阻害されることはない。指先10ひいては穿刺対象部位10aには、圧迫部41、拘束部42(図4、図6および図7参照)および密着部材56の作用により血液が集められている。そのため、穿刺対象部位10aからは、適切に血液を出液させることができる。
【0052】
図22(c)および図22(d)に示したように、穿刺針20aを穿刺対象部位10aに突き刺した後には、コイルバネ57,58の弾発力によってランセットホルダ51が後退し、穿刺針20aは指先10から即座に引き抜かれる。これと同時的に、図4に示した回転体60が矢印N5方向に回転させられる。これにより、指の根元部分にはシート材61を介して指の根元部分が指先10に向けて擦られ、血液が指先10に集められる。このような回転体60の作用によっても、穿刺対象部位10aからは、より適切に血液を出液させることができるようになる。なお、回転体60を回転させるタイミングは、穿刺針20aを穿刺対象部位10aに突き刺した後に限らず、穿刺針20aを突き刺す前に行ってもよく、また穿刺針20aを突き刺す前後において連続的に行ってもよい。
【0053】
図23(a)に示したように、穿刺対象部位10aから出液した血液Bは、バイオセンサ23の開口23jに到達する。穿刺針20aとバイオセンサ23の開口23jとの間に若干の隙間が設けられているため、皮膚から出液した血液Bは、穿刺針20aに阻害される
ことなく、開口23jに対して適切に導入される。バイオセンサ23では、図23(a)〜図23(c)に示したように、キャピラリ23dにおいて生じる毛細管力により、血液Bがキャピラリ23dの内部を移動する。このとき、血液Bによって試薬部23gが溶解させられ、キャピラリ23dの内部に液相反応系が構築される。液相反応系においては、血液中の特定成分、たとえばグルコースから電子が取り出され、それが作用極23eに供給される。装置本体3においては、端子35(図17参照)を介して作用極23eと対極23fとの間に電圧を印加し、作用極23eに対する電子の移動量が電流値として端子35(図17参照)によって測定される。装置本体3ではさらに、測定された電流値に基づいて、特定成分の分析、たとえばグルコース濃度の演算が行われる。
【0054】
穿刺装置1は、先に説明した実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば、指先に血液を集めるための手段としては、図24(a)〜図24(c)および図25に示した構成を採用することができ、指先を鬱血させるために指の根元側を拘束するための手段としては、図26(a)および図26(b)に示した構成を採用することができ、密着部材としては、図27(a)および図27(b)に示したものを採用することができる。
【0055】
図24(a)に示した構成は、周縁部が鋸歯状に形成された回転体60Aを採用したものである。図24(b)に示した構成は、表面の摩擦抵抗が比較的に大きくされた外周部材62Bを備えた回転体60Bを採用したものである。外周部材62Bは、たとえばゴムなどにより形成される。回転体60Bの表面の摩擦抵抗を比較的に大きくする場合には、シート材61(図4参照)を省略し、回転体60Bの一部を装置本体3から露出させるように構成される。図24(c)に示した構成は、回転体60,60A,60Bに代えて、N3,N4方向に往復移動可能な移動体60Cを設けたものである。もちろん、移動体の形態は図示した例には限定されない。また、図示した例では、移動体60Cの一部が装置本体3から直接突出しているが、移動体60Cをシート材61(図4参照)によって覆う構成を採用することもできる。
【0056】
図25に示した構成は、板バネとして構成された作用部62によって指先10に血液を集めるものである。作用部62は、使用者が収容空間11から指先10を抜き出す方向(N4方向)に力を作用させることにより、指先10に対して穿刺対象部位10aに向けた方向(N3方向)に力を作用させるためのものである。この作用部62は、たとえば金属板を折り曲げることにより形成することができる。また、作用部62は、たとえばインサート成形により本体部40に一体化されている。もちろん、板バネとしての作用部62は、装置本体3に対して一体的に樹脂成形してもよい。
【0057】
図26(a)および図26(b)に示した構成は、蓋4に拘束部42Aを設ける一方で、装置本体3に対しても拘束部42Bを設けたものである。図示した構成を採用する場合には、少なくとも一方の拘束部42A,42Bは、拘束すべき部位の形状に対応させた切欠42a,42bを有するものとして形成するのが好ましい。
【0058】
図27(a)および図27(b)に示した密着部材56′は、テーパ部56A′、フランジ部56B′、および挿入部56C′を備えたものであり、たとえばゴムや発泡体などの弾性体により形成されることにより、全体が弾性を有するものとされている。
【0059】
テーパ部56A′は、フランジ部56B′の周縁部から上方に向けて突出したものであ
り、上方に向かうほど外径が大きくなるテーパ状に形成されている。このテーパ部56A′は、外方に向けて弾性変形可能なように構成されている。
【0060】
フランジ部56B′は、テーパ部56A′と挿入部56C′との間において、内方に向けて突出したものであり、貫通孔56D′を規定している。
【0061】
挿入部56C′は、装置本体3に密着部材56′を固定するために、装置本体3の開口部53に挿入される部分である。
【0062】
上述の密着部材56′では、テーパ部56A′およびフランジ部56B′に対して指先10を押し付けた場合には、指先10の穿刺対象部位10aを適切に鬱血させることができる。すなわち、指先10を密着部材56′に押し付けた場合には、テーパ部56A′が外方に向けて弾性変形する。このとき、フランジ部56B′には、このフランジ部65B′の周縁(貫通孔56Dの周辺部)に対して内方または上方に向けた力が作用する。その一方で、フランジ部56B′は、指先10によって下方に押し付けられる。そのため、指先10に対しては、貫通孔56D′によって穿刺対象部位10aを挟み付ける力が作用する。さらに、フランジ部65B′に指先10を押し付けた場合には、その押圧力により穿刺対象部位10aが貫通孔65D′の内部に進出し、このことによっても貫通孔56D′によって穿刺対象部位10aを挟み付ける力が作用する。これらの作用により、穿刺対象部位10aは、密着部材56′によって適切に鬱血させられる。また、フランジ部65B′の周縁(貫通孔56Dの周辺部)に対して内方または上方に向けた力が作用した場合には、ハウジング50の内部から空気が排出されてハウジング50の内部に負圧が発生することが期待され、その場合には負圧の作用によって穿刺対象部位10aが鬱血させられる。したがって、密着部材65′においては、適切に穿刺対象部位10aを鬱血させることができる。
【0063】
次に、本発明の実施の形態について、図28および図29を参照して説明する。ただし、これらの図面おいては、本発明の参考例において説明した要素と同一のものについては同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
【0064】
図28および図29に示した穿刺装置1Aは、蓋4Aならびに第1および第2ロック機構7A,8Aを除いて、基本的な構成が先に説明した本発明の参考例に係る穿刺装置1(図1ないし図3参照)と同様である。
【0065】
蓋4Aは、装置本体3Aとの間に指先を挿入するための収容空間11を形成するためのものであり、装置本体3Aにおける密着部材56の貫通孔56aを覆う状態と覆わない状態とを選択できるように構成されている。蓋4Aは、装置本体3Aを覆い得るように下方に開放しているとともに、収容空間11に指先を挿入できるように両側方(N3,N4方向)に開放している。すなわち、蓋4Aは、収容空間11に対して、両側方(N3,N4方向)から指先が挿入された状態を達成できるように構成されている。
【0066】
蓋4Aは、端部片40A,41Aの内面側に設けられた凹部42A,43Aおよび端部片40A,41Aの外面側に設けられた凸部44A,45Aを有している。凹部42A,43Aは、後述する付勢手段70A,80Aの係止部材71A,81Aを係合させるためのものであり、断面円形状に形成されている。各凹部42A,43Aは、第1および第2ロック機構7A,8Aを構成している。一方、凸部44A,45Aは、第1および第2ロック機構7A,8Aにおいて蓋4Aがロック状態とされているときに、ロック状態を解除するときに使用者によって操作される部分である。凸部44A,45Aは、凹部42A,43Aに対して若干オフセットした位置に設けられている。凸部44A,45Aもまた、第1および第2ロック機構7A,8Aを構成している。
【0067】
第1および第2ロック機構7A,8Aは、蓋4Aを閉じた状態と蓋4Aが回転可能な状態とを選択可能とするためのものであり、それぞれが蓋4Aの端部片40A,41Aにおいて蓋4Aを閉じた状態を維持できるように構成されている。そのため、穿刺装置1Aでは、第1および第2ロック機構7A,8Aのうちの一方のロック機構7A,8Aにおいて、蓋4Aを装置本体3から開放された状態(非ロック状態)とすることにより、他方のロック機構7A,8Aを支点として蓋4Aを回動させることができる。すなわち、穿刺装置1Aは、図28において実線で示した回動状態と、同図において仮想線で示した回動状態とを選択することができる。
【0068】
各ロック機構7A,8Aは、上述した蓋4Aに設けられた凹部42A,43Aおよび凸部44A,45Aに加えて、装置本体3Aに設けられた付勢手段70A,80Aを有している。この付勢手段70A,80Aは、一対の棒状部材71A,81Aおよびコイルバネ72A,82Aを備えている。
【0069】
図29(a)に示したように、一対の棒状部材71A(81A)は、蓋4Aによって装置本体3Aを覆ったときに蓋4Aの凹部42A(43A)に係合させ、蓋4Aが装置本体3Aにロックされた状態を達成するためのものである。これらの棒状部材71A(81A)は、外観形状が略円柱である棒状に形成されているとともに、一端部71Aa(81Aa)が装置本体3Aから突出した状態で、装置本体3Aの貫通孔32Aに対してN6,N7方向に往復移動可能に挿通されている。各棒状部材71A(81A)は、一端部71Aa(81Aa)において面取りされている一方で、他端部71Ab(81Ab)に凹部71Ac(81Ac)が設けられている。凹部71Ac(81Ac)は、コイルバネ72A(82A)を固定するためのものである。各棒状部材71A(81A)にはさらに、ストッパ部71Ad(81Ad)が設けられている。このストッパ部71Ad(81Ad)は、各棒状部材71A(81A)が装置本体3Aの外方に向けて移動するのを制限し、装置本体3Aからの棒状部材71A(81A)の最大突出量を規定するためのものである。
【0070】
一方、コイルバネ72A(82A)は、棒状部材71A(81A)に対して付勢力を作用させるためのものであり、一対の棒状部材71A(81A)の相互を連結するように、端部が棒状部材71A(81A)の凹部71Ac(81Ac)において固定されている。
【0071】
穿刺装置1Aでは、第1および第2ロック機構7A,8Aにおけるロック状態は、端部片40A,41Aの凹部42A,43Aと棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaとの係合により達成することができる。その一方、ロック状態の解除は、端部片40A,41Aの凸部44A,45Aに対して、使用者が装置本体3Aの内方側に向けた力を作用させることによって行うことができる。すなわち、凸部44A,45Aに対して内方側に向けた力を作用させた場合には、凸部44A,45Aが凹部42A,43Aに対してオフセットしているために、図29(b)に良く表れているように、端部片40A,41Aが撓まされる。これにより、凹部42A,43Aが装置本体3Aの外方側に変位する。その一方で、棒状部材71A,81Aは、装置本体3Aの外方に向けての移動が制限されているために外方側へは移動できない。その結果、凹部42A,43Aと棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaとの係合状態が解除され、ロック状態が解除される。
【0072】
穿刺装置1Aでは、図28から分かるように、図において左右両開きとなっているとともに、収容空間11(図29参照)に対して左右のいずれからも指先を挿入した状態を達成することができる。そのため、穿刺装置1Aでは、使用者にとって都合の良い方の手を選択し、その手の指から血液を出液させることができるため、便利で使い勝手が良くなる。また、第1および第2ロック機構7A,8Aにおけるロック状態を解除した場合には、
装置本体3Aから蓋4Aを取り外すことができる。これにより、たとえば装置本体3Aおよび蓋4Aを容易に洗浄することができ、装置本体3Aおよび蓋4Aを衛生的に使用することが可能となる。
【0073】
第1および第2ロック機構7A,8Aは、たとえば凸部44A,45Aに対して内方側に向けた力を作用させ、その力を棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaに作用させることによりロック状態を解除するように構成してもよい。すなわち、棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaに作用させることによって棒状部材71A,81Aを内方側に移動させ、凹部42A,43Aと棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaとの係合状態を解除するように構成してもよい。
【0074】
穿刺装置1Aにおいては、ロック機構として、図30および図31に示した構成のものを採用することもできる。
【0075】
これらの図に示したロック機構9Aは、先に説明した実施の形態におけるロック機構7A,8A(図28および図29参照)と同様に、蓋4Aに設けられた凹部42A,43Aおよびを装置本体3Aに設けられた付勢手段90Aを有している。ロック機構9Aはさらに、装置本体3Aに設けられた操作部99Aを有している。
【0076】
図31(a)および図31(b)に示したように、付勢手段90Aは、先のロック機構7A,8A(図28および図29参照)と同様に、一対の棒状部材91Aおよびコイルバネ92Aを備えており、棒状部材91Aの相互がコイルバネ92Aによって連結されている。
【0077】
一対の棒状部材91Aは、一端部91Aaが装置本体3Aから突出した状態で、装置本体3Aの貫通孔32Aに対してN6,N7方向に往復移動可能に挿通されている。各棒状部材91Aの他端部91Abには、ピン91Acが設けられている。ピン91Acは、後述する操作部99Aのテーパ部99Abに干渉させるための部分である。
【0078】
操作部99Aは、棒状部材91Aに対して、棒状部材91AをN6,N7方向に移動させるための力を作用させるためのものである。この操作部99Aは、一端部99Aaが装置本体3Aから突出した状態で、装置本体3Aの貫通孔33Aに対してN3,N4方向に往復移動可能に挿通されている。操作部99Aは、一対のテーパ部99Abを有している。これらのテーパ部99Abは、棒状部材91Aのピン91Acに干渉させるための部分であり、カム面99Acを有している。カム面99Acは、操作部99Aを装置本体3Aの内方側に移動させたときに棒状部材91Aを内方側に移動させる一方で、操作部99Aを装置本体3Aの外方側に移動させたときに棒状部材91Aを外方側に移動させるように形成されている。
【0079】
ロック機構9Aでは、ロック状態の解除は、操作部99Aに対して、使用者が装置本体3Aの内方側に向けた力を作用させることによって行うことができる。すなわち、操作部99Aに対して内方側に向けた力を作用させた場合には、ピン91Acがカム面99Acに沿って相対的に移動する。すなわち、ピン91Acは、互いに近づくように内方に向けて移動する。これにより、棒状部材91Aが内方側に移動し、棒状部材91Aの一端部99Aaと蓋4Aの凹部42A,43Aとの係合状態が解除され、ロック状態が解除される。
【0080】
ロック機構9Aにおいては、たとえば蓋4Aに対して、この蓋4Aを一定以上開けたときに操作部99Aに干渉する部分を設けてもよい。その場合には、一方のロック機構9Aを解除して蓋4Aを一定以上開ければ、蓋4Aが操作部99Aに干渉して操作部99Aが
内方側に移動する。これにより、他方のロック機構9Aのロック状態が解除され、装置本体3Aから蓋4Aを取り外すことができるようになる。
【0081】
本発明の実施の形態に係る穿刺装置1Aにおいて採用されるロック機構として、参考例に係る穿刺装置1において採用されていたロック機構31,40b(図1および図2参照)を採用することもできる。また、本発明の参考例に係る穿刺装置1における装置本体3に対して蓋4を回動可能に支持する構成(装置本体3の貫通孔30および蓋の軸部40a)(図1および図2参照)として、実施の形態におけるロック機構7A,8A,9A(図28および図29、または図30および図31参照)を採用して本発明としてもよい。その場合には、蓋4Aを支持する部分(ロック機構7A,8A,9A)を、容易に解除することができるようになる。そのため、装置本体3Aから蓋4Aを容易に取り外すことができるため、装置本体3Aおよび蓋4Aの洗浄を、容易かつ適切に行えるようになる。さらに、本発明の参考例に係る穿刺装置1において、図30および図31を参照して説明したロック機構9Aを採用する場合には、たとえば蓋4Aに対して、この蓋4Aを一定以上開けたときに操作部99Aに干渉する部分を設け、蓋4Aを操作部99Aに干渉させることにより、装置本体3Aから蓋4Aを取り外すことが可能なように構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A 穿刺装置
10 指先
11 収容空間
20a 穿刺針(穿刺要素)
3,3A 装置本体(本体部)
31 (装置本体の)凸部(ロック機構を構成するもの)
4,4A 蓋
40b (蓋の)凹部(ロック機構を構成するもの)
41 圧迫部(圧迫片)
42 拘束部(拘束手段)
42A 拘束部(第2の挟持部)
42B 拘束部(第1の挟持部)
43 板バネ
5 穿刺機構
56,56′ 密着部材
56a,56D′ (密着部材の)貫通孔(本体部の開口部)
56A′ (密着部材の)テーパ部(筒状部)
56B′ (密着部材の)フランジ部
6 搾液機構(搾液手段)
60,60A,60B 回転体(作用部材)
60C 移動体(作用部材)
61 シート材
62 作用部(搾液手段)
7A 第1ロック機構
8A 第2ロック機構
9A ロック機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先から血液などの体液を採取する際に利用される穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚から血液を採取する場合には、皮膚に針を突き刺すように構成された穿刺装置が用いられている。穿刺装置においては、血液の出液を促進するために種々の方法が採用されている。代表的なものとしては、穿刺装置に組み込んだポンプを用いて皮膚に負圧を作用させ、皮膚を盛り上げて血液を集める方法(たとえば特許文献1参照)、あるいは指を圧迫して鬱血させる方法が挙げられる(たとえば特許文献2−4参照)。
【0003】
しかしながら、負圧を作用させる方法では、穿刺装置に電動式あるいは手動式のポンプを組み込む必要がある。そのため、電動式のポンプを用いる方法では、ポンプおよびポンプの駆動源によって装置が大型化するとともに重量が大きくなる。その結果、電動式のポンプを採用した穿刺装置は、携帯性が悪いものとなってしまう。また、ポンプを駆動源によって駆動すれば、消費電力が大きくなってランニングコストが高くなる。一方、手動式のポンプを用いる方法では、負圧を発生させるためのポンプ機構を設けることによって装置構成が複雑化して製造コストが高くなり、また使用者にとっては、ポンプ機構を動作させるために煩わしい操作を強いられる。
【0004】
負圧を作用させる方法では、電動式あるいは手動式を問わず、穿刺装置の先端部を適切に皮膚に押し付けた状態を維持しなければ穿刺装置の先端部に空気が流入する。また、穿刺装置の先端部と皮膚との間に体毛が介在することによって穿刺装置の先端部に空気が流入する。その結果、負圧を作用させる方法では、何らの手立ても講じなければ、皮膚に対して適切に負圧を作用させることができないといった問題がある。
【0005】
一方、指を圧迫する方法では、穿刺装置にカフおよび駆動源を設け、駆動源によってカフに空気を注入することにより指を圧迫する方法が採用されている。そのため、カフおよび駆動源によって装置の大型化および重量増加を招き、携帯性が悪いものとなる。また、カフを駆動するための動力が必要なために、消費電力ひいてはランニングコストが大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001−515377号公報
【特許文献2】特開平9−89885号公報
【特許文献3】特開平9−313465号公報
【特許文献4】特開平10−5199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コスト的に有利に製造でき、少ないランニングコストで、簡易な操作によって血液などの体液を適切に採取できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、指先の穿刺対象部位に穿刺要素を突き刺して穿刺対象部位から血液を出液させるための穿刺装置であって、上記穿刺要素が移動する方向に開放しているとともに、穿刺時において、指先により封鎖される開口部を有する本体部と、上記開口部を覆う状態と覆わない状態とを選択可能であり、かつ上記開口部を覆った状態において、上記本体部との間に指先を挿入するための収容空間を形成するための蓋と、上記蓋によって上記開口部が覆われた状態を維持するための第1および第2ロック機構と、を含んでおり、上記第1ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第2ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第1ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができる一方で、上記第2ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第1ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第2ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができるように構成されていることを特徴とする、穿刺装置が提供される。
【0009】
蓋は、たとえば指先によって開口部を閉塞した状態において、蓋により開口部を覆ったときに、指先を開口部に向けて押し付けるための圧迫手段を備えたものとして構成される。
【0010】
圧迫手段は、たとえば指先の表面形状に倣った形態を有する一対の圧迫片を有するものとして構成される。
【0011】
本体部は、蓋により上記開口部を覆ったときに、指先における穿刺対象部位の周りに密着させるための密着部材を備えたものとして構成するのが好ましい。密着部材は、たとえば開口部の形状を規定する貫通孔を有するものとして構成され、弾性体により構成するのが好ましい。この場合、密着部材は、たとえば上記貫通孔が形成されたフランジ部と、このフランジ部から上方に延出する筒状部を有するものとされる。筒状部は、上方に向かうほど外径が大きくなるテーパ状に形成するのが好ましい。
【0012】
本発明の穿刺装置は、指における穿刺対象部位よりも根元側を拘束して指先を鬱血させるための拘束手段をさらに備えているのが好ましい。拘束手段は、たとえば蓋に対して揺動可能に支持される。この拘束手段は、たとえば板バネを備えたものとして構成される。拘束手段は、本体部に設けられた第1の挟持部と、蓋に設けられ、かつ第1の挟持部とともに指を挟みこむための第2の挟持部と、を有するものとして構成することもできる。
【0013】
本発明の穿刺装置は、穿刺対象部位よりも指の根元側から穿刺対象部位に向けて血液を送って、当該穿刺対象部位から血液を搾り出すための搾液手段をさらに備えていてもよい。搾液手段は、たとえば指における穿刺対象部位よりも根元側の部分に対して、指先に向けた力を作用させるための作用部材を有するものとして構成される。この作用部材は、たとえば回転体、あるいは根元側の部分から穿刺対象部位に向けた方向に移動可能な移動体として構成され、必要に応じて、シート材を介して指に接触するように構成される。
【0014】
搾液手段は、たとえば上記収容空間に挿入した指先に上記収容空間から指先を抜脱する方向に力を作用させることによって、指先に対して穿刺対象部位に向けた力を作用させるための作用部を有するものとして構成することもできる。この作用部は、たとえば収容空間において突出する板バネとして構成される。
【0015】
本発明の穿刺装置は、たとえば穿刺要素を移動させて指先における穿刺対象部位を穿刺するための穿刺機構と、穿刺装置における穿刺要素を移動させるタイミングを制御する制御部と、を備えたものとして構成される。この場合、制御部は、開口部が上記蓋によって覆われたことを確認したときに、穿刺機構によって穿刺要素を移動させるように構成するのが好ましい。
【0016】
本発明の穿刺装置は、皮膚から出液させた血液に基づいて、血液中における特定成分を分析するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の参考例に係る穿刺装置を示す正面図である。
【図2】図1に示した穿刺装置の断面図である。
【図3】図1に示した穿刺装置における穿刺機構を説明するための要部を拡大した断面図である。
【図4】図1に示した穿刺装置における搾液機構を説明するための要部を拡大した断面図である。
【図5】図1に示した穿刺装置における蓋を、この蓋の本体部を透視して示した斜視図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図1に示した穿刺装置において使用されるランセットの全体斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図8〜図10に示したランセットにおいて、キャップを取り外した状態を示す断面図である。
【図12】図8のXII−XII線に沿う断面図である。
【図13】ランセットの内部構成を説明するための一部を切り欠いて示した要部斜視図である。
【図14】図13に示した状態のランセットの平面図である。
【図15】ランセットの動作を説明するための断面図である。
【図16】ランセットの動作を説明するための断面図である。
【図17】ランセットに組み込まれたバイオセンサの全体斜視図である。
【図18】図17に示したバイオセンサの分解斜視図である。
【図19】図17のXIX−XIX線に沿う断面図である。
【図20】図17のXX−XX線に沿う断面図である。
【図21】穿刺機構の動作を説明するための要部断面図である。
【図22】穿刺機構の動作を説明するための要部断面図である。
【図23】バイオセンサにおいて血液が導入される過程を説明するための要部断面図である。
【図24】搾液機構の他の例を示す要部断面図である。
【図25】指先に血液を集めるための構成の他の例を示す断面図である。
【図26】指の根元側を拘束するための(拘束手段)の他の例を示す要部断面図である。
【図27】密着部材の他の例を説明するための穿刺装置の要部断面図である。
【図28】本発明の実施形態に係る穿刺装置を示す正面図である。
【図29】図28に示した穿刺装置における第1および第2ロック機構を説明するためのものであり、図28のXXIX−XXIX線に沿う断面に相当する断面図である。
【図30】ロック機構の他の例を説明するための穿刺装置の正面図である。
【図31】図30に示した穿刺装置におけるロック機構を説明するためのものであり、図30のXXXI−XXXI線に沿う断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
まず、本発明の参考例について、図1ないし図23を参照して説明する。
【0020】
図1ないし図3に示した穿刺装置1は、ランセット2を装着して使用するものであり、装置本体3と、この装置本体3との間に指先10を挿入するための収容空間11(図4参
照)を形成するための蓋4と、を備えている。
【0021】
図2に示したように、装置本体3は、穿刺機構5および搾液機構6を備えている。
【0022】
図2および図3に示したように、穿刺機構5は、収容空間11に保持された指先10(
図4参照)を穿刺するためのものであり、ハウジング50、ランセットホルダ51および
作用部52を有している。
【0023】
ハウジング50は、ランセット2およびランセットホルダ51を収容するためのものである。このハウジング50は、開口部53、貫通孔54、および一対の段部55を有している。
【0024】
開口部53は、ランセット2を挿入する際に利用されるものであり、切欠53aを有している。切欠53aは、後述するランセット2の凸部22Cを係合させるためのものである(図16参照)。開口部53の上方には、密着部材56が配置されている。この密着部材56は、収容空間11に指先10を挿入した状態において、指先10に密着させるためのものである(図4参照)。密着部材56には、貫通孔56aが形成されている。この貫通孔56aは、ハウジング50の開口部53よりも径が大きくされている。このような密着部材56は、指先10との密着性を大きく確保するために、たとえばゴムや発泡体などの弾性体により形成されている。
【0025】
貫通孔54は、後述するランセットホルダ51の係合部51aの移動を許容し、その周辺部54aにおいて係合部51aを係止させるための部分である。
【0026】
一対の段部55は、後述するランセット2の収容部22に押圧力を作用させるためのものであり、ハウジング50の内方に向けて突出している。一対の段部55は、図2および図3における上方側の部分がテーパ状に形成されている。
【0027】
ランセットホルダ51は、ランセット2を保持するためのものである。ランセットホルダ51には、係合部51aおよびフランジ部51bが設けられている。係合部51aは、ハウジング50における貫通孔54の周辺部54aに係合可能なフック状に形成されている。フランジ部51bと貫通孔54の周辺部54aとの間には、コイルバネ57が配置されている。コイルバネ57は、係合部51aを貫通孔54の周辺部54aに係合させた状態では、圧縮状態となるようになっている。したがって、係合部51aが貫通孔54の周辺部54aに係合した状態を解除すれば、コイルバネ57の弾発力がフランジ部51bに作用し、ランセットホルダ51が矢印N1方向に移動させられる。フランジ部51bと段部55との間には、コイルバネ58が配置されている。コイルバネ58は、ランセットホルダ51を矢印N1方向に移動させたときに圧縮されるものであり、そのときの弾発力をフランジ部51bに作用させてランセットホルダ51を矢印N2方向に移動させるための
ものである。ただし、コイルバネ58は省略してもよい。
【0028】
作用部52は、ランセットホルダ51の係合部51aが貫通孔54の周辺部54aに係合した状態を解除するためのものであり、矢印N3,N4方向に移動可能とされている。
すなわち、作用部52は、矢印N3方向に移動させられたときに係合部51aに干渉して係合部51aに押圧力を作用させ、係合部51aが貫通孔54の周辺部54aに係合した状態を解除することができる。この作用部52は、図外の制御手段により矢印N3,N4
方向への移動が制御されている。制御手段は、たとえば蓋4の開閉動作に連動させてアクチュエータ59によって作用部52を矢印N3方向に移動させ、係合部51aの係合状態を解除するように構成されている。蓋4の開閉の確認は、たとえば後述する蓋4の凹部40bが装置本体3の凸部31に係合されたことを確認することにより、あるいは収容空間11にセンサを設けて指先10の存在を確認することにより行うことができる。もちろん、手動により作用部52を移動させるように構成することもできる。
【0029】
図2および図4に示したように、搾液機構6は、指先10における穿刺対象部位10aよりも根元側の部分から穿刺対象部位10aに向けて血液を送って、穿刺対象部位10aから血液を搾り出すためのものである。この搾液機構6は、歯車として構成された回転体60を有している。この回転体60は、矢印N5方向に回転可能とされており、シート材61を介して収容空間11に収容された指先10に接触するように配置されている。
【0030】
図4および図5に示したように、蓋4は、本体部40に対して一対の圧迫部41および拘束部42を支持した構成を有している。
【0031】
本体部40は、装置本体3との間に指先10を挿入するための収容空間11を形成するためのものであり、装置本体3における密着部材56の貫通孔56aを覆う状態と覆わない状態とを選択できるように構成されている(図1参照)。この本体部40は、装置本体3を覆い得るように下方に開放しているとともに、収容空間11に指先10を挿入できるように側方に開放している。本体部40には、図1および図2に示したように、端部に軸部40aが設けられている。この軸部40aは、装置本体3の貫通孔30に嵌合させるためのものであり、本体部40は軸部40aを支点として装置本体3に対して回転可能に支持されている。本体部40にはさらに、端部に凹部40bが設けられている。この凹部40bは、ロック機構を構成するものであり、蓋4によって装置本体3を覆ったときに、装置本体3の凸部31(凹部40bとともにロック機構を構成するもの)に係合し、蓋4が閉じた状態を維持するためのものである。この状態では、図4に示したように、収容空間11が側方に開放している。
【0032】
図4および図6に示したように、一対の圧迫部41は、収容空間11に指先10を挿入した状態において、指先10における穿刺対象部位10aを装置本体3における密着部材56の貫通孔56aに押し付けるためのものである。各圧迫部41は、本体部40により装置本体3を覆った状態において、密着部材56の直上に位置するように、本体部40の内面に支持されている。この状態では、2つの圧迫部41の表面は、指先10の表面形状に倣ったものとなっている。
【0033】
図4、図5および図7に示したように、拘束部42は、指における穿刺対象部位10aよりも根元部分を拘束し、指先10を鬱血させるためのものである。この拘束部42は、板バネ43を介して本体部40に支持されており、本体部40に対して揺動可能とされている。この拘束部42は、収容空間11に指先10を挿入した状態では、搾液機構6の回転体60に向かい合うように配置されている。そのため、収容空間11に挿入された指の根元部分には、板バネ43のバネ力が拘束部42を介して作用し、指の根元部分が回転体60に向けて押し付けられる。これにより、拘束部42によって指先10が鬱血させられ
る。
【0034】
図3に示したように、ランセット2は、指先10を穿刺するための要素(穿刺針20a)を含んでおり(図22(c)参照)、装置本体3におけるハウジング50に挿入して使用するものである。このランセット2は、図8ないし図10に示したように、ランセット本体20、キャップ部21、収容部22、およびバイオセンサ23を備えている。
【0035】
ランセット本体20は、穿刺針20a、穿刺針20aの針先側の端部を覆う保護部20b、および穿刺針20aにおける針先とは反対側の端部を埋設した保持部20cを有している。保護部20bと保持部20cとの間には、切り込み20dが形成されており、この切り込み20dにおいて保護部20bと保持部20cとを分離できるように構成されている。保護部20bには、凹部20eが形成されている。この凹部20eは、後述するキャップ部21の係合支持部21aを嵌合させるためのものである。
【0036】
図9ないし図11に示したように、キャップ部21は、収容部22に対して着脱自在に保持されているとともに、係合支持部21aを介して、ランセット本体20を保護部20bにおいて支持している。そのため、収容部22からキャップ部21を分離させるときには、ランセット本体20において保護部20bを分離させて穿刺針20aを露出させることができる。
【0037】
図8ないし図10に示したように、収容部22は、ランセット本体20およびバイオセンサ23を保持するためのものであり、全体として円筒状に形成されている。この収容部22は、3組の一対の凸部22Aa, 22Ab,22B,22Cを有している。
【0038】
図10および図12に示したように、一対の凸部22Aa,22Abは、ランセット本体20を保持部20cにおいて密着させるためのものであり、収容部22の内面22aから、第1の直径軸D1に沿った方向に突出して設けられている。凸部22Aaからは、図10および図13に良く表れているように、バイオセンサ23を支持するための支持部22Eが延出している。この支持部22Eは、板バネとして機能するバネ部22Ea、およびバイオセンサ23が載置される載置部22Ebを有している。載置部22Ebには、切欠22Ecが設けられている。図14に仮想線で示したように、切欠22Ecの内面22Edは、載置部22Ebが自然状態よりも若干外方側に位置させた状態で、ランセット本体20の保護部20bに当接している。また、切欠22Ecの内面22Edは、ランセット本体20において保護部20bを分離させて穿刺針20aを露出させた状態では、自然状態に位置する。このとき、切欠22Ecの内面22Edと穿刺針20aとの間には、隙間が設けられる。
【0039】
図3および図9に示したように、一対の凸部22Bは、装置本体3におけるハウジング50の段部55に干渉させるためのものであり、収容部22の外面22bの下部位置において、図12に示したように第1直径軸D1に直交する第2直径軸D2に沿った位置に設けられている。
【0040】
図12および図16に示したように、一対の凸部22Cは、収容部22の外面22bの上部位置において、第1の直径軸D1上に設けられている。この凸部22Cは、装置本体3のハウジング50にランセット2を挿入するときに、開口部53における切欠53aに係合させるためのものある。すなわち、凸部22Cは、ハウジング50にランセット2を挿入するときに位置決めするのに利用されるものである。
【0041】
このような収容部22は、たとえば樹脂成形により全体が弾性変形可能なように形成されている。このため、図15および図16に示したように、一対の凸部22Bに対して、第2の直径軸D2に沿って内方側に向けた力を作用させた場合には、少なくとも一対の凸部22Bが設けられた部分において収容部22が変形する。これにより、一対の凸部22Bの距離が小さくなる一方で、一対の凸部22Aa,22Abの距離が大きくなり一対の凸部22Aa,22Abとランセット本体20との間に隙間が形成される。その結果、ランセット本体20は、収容部22に対して、矢印N1,N2方向に相対動することができ
る。
【0042】
図17ないし図20に示したバイオセンサ23は、毛細管力により血液を移動させるとともに、血液中の特定成分(たとえばグルコース)の濃度を、電極法により測定できるように構成されたものである。より具体的には、バイオセンサ23は、基板23a、一対のスペーサ23bおよびカバー23cによって構成されているとともに、これらの要素23a〜23cによって規定されるキャピラリ23dを備えている。
【0043】
基板23aの表面には、作用極23e、対極23fおよび試薬部23gが設けられている。作用極23eおよび対極23fは、図17を参酌すれば分かるように、装置本体3における分析回路(図示略)に、端子35を介して導通させるための部分である。試薬部23gは、作用極23eおよび対極23fを繋ぐように形成されており、たとえば酸化還元酵素および電子伝達物質を含んでいる。
【0044】
一対のスペーサ23bは、キャピラリ23dの幅寸法および高さ寸法を規定するためのものであり、基板23aの表面において、試薬部23gを挟み込むように間隔を隔てて配置されている。これらのスペーサ23bは、たとえば両面テープにより構成される。
【0045】
バイオセンサ23には、図13および図20に良く表れているように、半円状の切欠23hが設けられている。この切欠23hは、ランセット本体20を矢印N1方向に移動させたときに穿刺針20aの移動を許容するためのものであり、この切欠23hにおいて、キャピラリ23dに血液を導入するための開口23jが開放している。バイオセンサ23は、その切欠23hが載置部22Ebにおける切欠22Ecに対応する位置において、載置部22Ebに固定されている。したがって、載置部22Ebが自然状態にある場合には、切欠23hと穿刺針20aとの間には、隙間が設けられる。
【0046】
図2および図3に示したように、穿刺装置1を用いての穿刺作業に当たっては、まず蓋4を開けた状態として、密着部材56の貫通孔56aを介して、ハウジング50にランセット2を挿入する。図21(a)および図21(b)に示したように、ランセット2の挿入は、ハウジング50の切欠53aに対して、ランセット2の凸部22Cを位置合わせしつつ(図16参照)、ハウジング50にランセット2を押し込むことにより行うことができる。
【0047】
ハウジング50にランセット2を押し込んだ場合には、ランセット本体20の保持部20cがランセットホルダ51に嵌めこまれる一方で、収容部22の凸部22Bがハウジング50の段部55に干渉する。これにより、図15および図16に示したように、収容部22が変形し、ランセット本体20が収容部22に対して相対動可能な状態とされる。このとき、ランセット本体20の保持部20cがランセットホルダ51に嵌めこまれることから、ランセット本体20は、ランセットホルダ51とともに移動することができる。また、ハウジング50にランセット2を挿入するときに、ランセットホルダ51を矢印N2方向に移動させ、ランセットホルダ51の係合部51aをハウジング50における貫通孔54の周辺部54aに係合させることができる。これにより、コイルバネ57が圧縮させられ、コイルバネ57に弾発力が蓄えられる。もちろん、ランセットホルダ51の係合部51aは、ランセット2を保持させる動作とは別に、貫通孔54の周辺部54aに係合させてもよい。つまり、ランセットホルダ51にランセット2を保持させる前に、係合部51aを貫通孔54の周辺部54aに係合させておいてもよい。
【0048】
次いで、図11、図21(b)および図21(c)に示したように、ランセット2において、キャップ部21を取り外す。このとき、図11に良く表れているように、キャップ部21の係合支持部21aがランセット本体20における保護部20bの凹部20eに嵌合しているために、キャップ部21を取り外すときに、ランセット2において保護部20bが
引き抜かれる。これにより、穿刺針20aの針先が露出した状態とされる。このとき、図14に示したように、バイオセンサ23は、その切欠23h、すなわち開口23jと穿刺針20aの針先との間に若干の間隔を隔てた位置に変位し、また図17を参照すれば分かるように、バイオセンサ23の作用極23eおよび対極23fは、装置本体3に設けられた端子35に接触する。この状態では、作用極23eと対極23fとの間に電圧を印加することができ、また作用極23eに供給された電子の量を電流値として測定することができる。
【0049】
次いで、図4に示したように、密着部材56の貫通孔56aの塞ぐようにして装置本体3の上部に指先10を置き、蓋4を閉める。蓋4を閉めた状態は、蓋4の凹部40bを装置本体3の凸部31に係合させることにより維持される(図2参照)。この状態では、蓋4と装置本体3との間に収容空間11が形成され、この収容空間11に指先10が保持される。図4および図6に示したように、収容空間11においては、圧迫部41が指先10における穿刺対象部位10aの周囲を密着部材56に押し付ける。この状態では、密着部材56の貫通孔56aから穿刺対象部位10aが突出した状態となり、ランセット2の収容部22に内部に入り込む。これにより、穿刺対象部位10aが鬱血させられ、穿刺対象部位10aに血液が集められ、図22(a)に示したように収容部22において穿刺対象部位10aがバイオセンサ23に接触する。また、収容空間11においてはさらに、図4および図7に示したように、拘束部42が指の根元部分を回転体60に押し付ける。この状態では、指先10が鬱血し、指先10に血液が滞留した状態が維持される。
【0050】
次いで、図22(a)〜図22(c)に示したように、ランセット本体20を矢印N1方向に移動させて、穿刺針20aを指先10における穿刺対象部位10aに突き刺す。ランセット本体20の移動は、作用部52を移動させて係合部51aに作用部52を干渉させ、ランセットホルダ51がハウジング50に係合した状態を解除することにより行われる。ランセットホルダ51の係合状態を解除した場合には、コイルバネ57の弾発力によってランセットホルダ51がランセット本体20とともに矢印N1方向に移動し、ランセット本体20の穿刺針20aは穿刺対象部位10aに突き刺さる。
【0051】
図22(c)に示したように、穿刺針20aが穿刺対象部位10aに突き刺さった場合には、指先10における穿刺対象部位10aが切開され、血液が出液する。このとき、穿刺針20aとバイオセンサ23の開口23jとの間に若干の隙間が設けられているため、バイオセンサ23によって、血液の出液が阻害されることはない。指先10ひいては穿刺対象部位10aには、圧迫部41、拘束部42(図4、図6および図7参照)および密着部材56の作用により血液が集められている。そのため、穿刺対象部位10aからは、適切に血液を出液させることができる。
【0052】
図22(c)および図22(d)に示したように、穿刺針20aを穿刺対象部位10aに突き刺した後には、コイルバネ57,58の弾発力によってランセットホルダ51が後退し、穿刺針20aは指先10から即座に引き抜かれる。これと同時的に、図4に示した回転体60が矢印N5方向に回転させられる。これにより、指の根元部分にはシート材61を介して指の根元部分が指先10に向けて擦られ、血液が指先10に集められる。このような回転体60の作用によっても、穿刺対象部位10aからは、より適切に血液を出液させることができるようになる。なお、回転体60を回転させるタイミングは、穿刺針20aを穿刺対象部位10aに突き刺した後に限らず、穿刺針20aを突き刺す前に行ってもよく、また穿刺針20aを突き刺す前後において連続的に行ってもよい。
【0053】
図23(a)に示したように、穿刺対象部位10aから出液した血液Bは、バイオセンサ23の開口23jに到達する。穿刺針20aとバイオセンサ23の開口23jとの間に若干の隙間が設けられているため、皮膚から出液した血液Bは、穿刺針20aに阻害される
ことなく、開口23jに対して適切に導入される。バイオセンサ23では、図23(a)〜図23(c)に示したように、キャピラリ23dにおいて生じる毛細管力により、血液Bがキャピラリ23dの内部を移動する。このとき、血液Bによって試薬部23gが溶解させられ、キャピラリ23dの内部に液相反応系が構築される。液相反応系においては、血液中の特定成分、たとえばグルコースから電子が取り出され、それが作用極23eに供給される。装置本体3においては、端子35(図17参照)を介して作用極23eと対極23fとの間に電圧を印加し、作用極23eに対する電子の移動量が電流値として端子35(図17参照)によって測定される。装置本体3ではさらに、測定された電流値に基づいて、特定成分の分析、たとえばグルコース濃度の演算が行われる。
【0054】
穿刺装置1は、先に説明した実施の形態には限定されず、種々に設計変更可能である。たとえば、指先に血液を集めるための手段としては、図24(a)〜図24(c)および図25に示した構成を採用することができ、指先を鬱血させるために指の根元側を拘束するための手段としては、図26(a)および図26(b)に示した構成を採用することができ、密着部材としては、図27(a)および図27(b)に示したものを採用することができる。
【0055】
図24(a)に示した構成は、周縁部が鋸歯状に形成された回転体60Aを採用したものである。図24(b)に示した構成は、表面の摩擦抵抗が比較的に大きくされた外周部材62Bを備えた回転体60Bを採用したものである。外周部材62Bは、たとえばゴムなどにより形成される。回転体60Bの表面の摩擦抵抗を比較的に大きくする場合には、シート材61(図4参照)を省略し、回転体60Bの一部を装置本体3から露出させるように構成される。図24(c)に示した構成は、回転体60,60A,60Bに代えて、N3,N4方向に往復移動可能な移動体60Cを設けたものである。もちろん、移動体の形態は図示した例には限定されない。また、図示した例では、移動体60Cの一部が装置本体3から直接突出しているが、移動体60Cをシート材61(図4参照)によって覆う構成を採用することもできる。
【0056】
図25に示した構成は、板バネとして構成された作用部62によって指先10に血液を集めるものである。作用部62は、使用者が収容空間11から指先10を抜き出す方向(N4方向)に力を作用させることにより、指先10に対して穿刺対象部位10aに向けた方向(N3方向)に力を作用させるためのものである。この作用部62は、たとえば金属板を折り曲げることにより形成することができる。また、作用部62は、たとえばインサート成形により本体部40に一体化されている。もちろん、板バネとしての作用部62は、装置本体3に対して一体的に樹脂成形してもよい。
【0057】
図26(a)および図26(b)に示した構成は、蓋4に拘束部42Aを設ける一方で、装置本体3に対しても拘束部42Bを設けたものである。図示した構成を採用する場合には、少なくとも一方の拘束部42A,42Bは、拘束すべき部位の形状に対応させた切欠42a,42bを有するものとして形成するのが好ましい。
【0058】
図27(a)および図27(b)に示した密着部材56′は、テーパ部56A′、フランジ部56B′、および挿入部56C′を備えたものであり、たとえばゴムや発泡体などの弾性体により形成されることにより、全体が弾性を有するものとされている。
【0059】
テーパ部56A′は、フランジ部56B′の周縁部から上方に向けて突出したものであ
り、上方に向かうほど外径が大きくなるテーパ状に形成されている。このテーパ部56A′は、外方に向けて弾性変形可能なように構成されている。
【0060】
フランジ部56B′は、テーパ部56A′と挿入部56C′との間において、内方に向けて突出したものであり、貫通孔56D′を規定している。
【0061】
挿入部56C′は、装置本体3に密着部材56′を固定するために、装置本体3の開口部53に挿入される部分である。
【0062】
上述の密着部材56′では、テーパ部56A′およびフランジ部56B′に対して指先10を押し付けた場合には、指先10の穿刺対象部位10aを適切に鬱血させることができる。すなわち、指先10を密着部材56′に押し付けた場合には、テーパ部56A′が外方に向けて弾性変形する。このとき、フランジ部56B′には、このフランジ部65B′の周縁(貫通孔56Dの周辺部)に対して内方または上方に向けた力が作用する。その一方で、フランジ部56B′は、指先10によって下方に押し付けられる。そのため、指先10に対しては、貫通孔56D′によって穿刺対象部位10aを挟み付ける力が作用する。さらに、フランジ部65B′に指先10を押し付けた場合には、その押圧力により穿刺対象部位10aが貫通孔65D′の内部に進出し、このことによっても貫通孔56D′によって穿刺対象部位10aを挟み付ける力が作用する。これらの作用により、穿刺対象部位10aは、密着部材56′によって適切に鬱血させられる。また、フランジ部65B′の周縁(貫通孔56Dの周辺部)に対して内方または上方に向けた力が作用した場合には、ハウジング50の内部から空気が排出されてハウジング50の内部に負圧が発生することが期待され、その場合には負圧の作用によって穿刺対象部位10aが鬱血させられる。したがって、密着部材65′においては、適切に穿刺対象部位10aを鬱血させることができる。
【0063】
次に、本発明の実施の形態について、図28および図29を参照して説明する。ただし、これらの図面おいては、本発明の参考例において説明した要素と同一のものについては同一の符号を付してあり、以下における重複説明を省略する。
【0064】
図28および図29に示した穿刺装置1Aは、蓋4Aならびに第1および第2ロック機構7A,8Aを除いて、基本的な構成が先に説明した本発明の参考例に係る穿刺装置1(図1ないし図3参照)と同様である。
【0065】
蓋4Aは、装置本体3Aとの間に指先を挿入するための収容空間11を形成するためのものであり、装置本体3Aにおける密着部材56の貫通孔56aを覆う状態と覆わない状態とを選択できるように構成されている。蓋4Aは、装置本体3Aを覆い得るように下方に開放しているとともに、収容空間11に指先を挿入できるように両側方(N3,N4方向)に開放している。すなわち、蓋4Aは、収容空間11に対して、両側方(N3,N4方向)から指先が挿入された状態を達成できるように構成されている。
【0066】
蓋4Aは、端部片40A,41Aの内面側に設けられた凹部42A,43Aおよび端部片40A,41Aの外面側に設けられた凸部44A,45Aを有している。凹部42A,43Aは、後述する付勢手段70A,80Aの係止部材71A,81Aを係合させるためのものであり、断面円形状に形成されている。各凹部42A,43Aは、第1および第2ロック機構7A,8Aを構成している。一方、凸部44A,45Aは、第1および第2ロック機構7A,8Aにおいて蓋4Aがロック状態とされているときに、ロック状態を解除するときに使用者によって操作される部分である。凸部44A,45Aは、凹部42A,43Aに対して若干オフセットした位置に設けられている。凸部44A,45Aもまた、第1および第2ロック機構7A,8Aを構成している。
【0067】
第1および第2ロック機構7A,8Aは、蓋4Aを閉じた状態と蓋4Aが回転可能な状態とを選択可能とするためのものであり、それぞれが蓋4Aの端部片40A,41Aにおいて蓋4Aを閉じた状態を維持できるように構成されている。そのため、穿刺装置1Aでは、第1および第2ロック機構7A,8Aのうちの一方のロック機構7A,8Aにおいて、蓋4Aを装置本体3から開放された状態(非ロック状態)とすることにより、他方のロック機構7A,8Aを支点として蓋4Aを回動させることができる。すなわち、穿刺装置1Aは、図28において実線で示した回動状態と、同図において仮想線で示した回動状態とを選択することができる。
【0068】
各ロック機構7A,8Aは、上述した蓋4Aに設けられた凹部42A,43Aおよび凸部44A,45Aに加えて、装置本体3Aに設けられた付勢手段70A,80Aを有している。この付勢手段70A,80Aは、一対の棒状部材71A,81Aおよびコイルバネ72A,82Aを備えている。
【0069】
図29(a)に示したように、一対の棒状部材71A(81A)は、蓋4Aによって装置本体3Aを覆ったときに蓋4Aの凹部42A(43A)に係合させ、蓋4Aが装置本体3Aにロックされた状態を達成するためのものである。これらの棒状部材71A(81A)は、外観形状が略円柱である棒状に形成されているとともに、一端部71Aa(81Aa)が装置本体3Aから突出した状態で、装置本体3Aの貫通孔32Aに対してN6,N7方向に往復移動可能に挿通されている。各棒状部材71A(81A)は、一端部71Aa(81Aa)において面取りされている一方で、他端部71Ab(81Ab)に凹部71Ac(81Ac)が設けられている。凹部71Ac(81Ac)は、コイルバネ72A(82A)を固定するためのものである。各棒状部材71A(81A)にはさらに、ストッパ部71Ad(81Ad)が設けられている。このストッパ部71Ad(81Ad)は、各棒状部材71A(81A)が装置本体3Aの外方に向けて移動するのを制限し、装置本体3Aからの棒状部材71A(81A)の最大突出量を規定するためのものである。
【0070】
一方、コイルバネ72A(82A)は、棒状部材71A(81A)に対して付勢力を作用させるためのものであり、一対の棒状部材71A(81A)の相互を連結するように、端部が棒状部材71A(81A)の凹部71Ac(81Ac)において固定されている。
【0071】
穿刺装置1Aでは、第1および第2ロック機構7A,8Aにおけるロック状態は、端部片40A,41Aの凹部42A,43Aと棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaとの係合により達成することができる。その一方、ロック状態の解除は、端部片40A,41Aの凸部44A,45Aに対して、使用者が装置本体3Aの内方側に向けた力を作用させることによって行うことができる。すなわち、凸部44A,45Aに対して内方側に向けた力を作用させた場合には、凸部44A,45Aが凹部42A,43Aに対してオフセットしているために、図29(b)に良く表れているように、端部片40A,41Aが撓まされる。これにより、凹部42A,43Aが装置本体3Aの外方側に変位する。その一方で、棒状部材71A,81Aは、装置本体3Aの外方に向けての移動が制限されているために外方側へは移動できない。その結果、凹部42A,43Aと棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaとの係合状態が解除され、ロック状態が解除される。
【0072】
穿刺装置1Aでは、図28から分かるように、図において左右両開きとなっているとともに、収容空間11(図29参照)に対して左右のいずれからも指先を挿入した状態を達成することができる。そのため、穿刺装置1Aでは、使用者にとって都合の良い方の手を選択し、その手の指から血液を出液させることができるため、便利で使い勝手が良くなる。また、第1および第2ロック機構7A,8Aにおけるロック状態を解除した場合には、
装置本体3Aから蓋4Aを取り外すことができる。これにより、たとえば装置本体3Aおよび蓋4Aを容易に洗浄することができ、装置本体3Aおよび蓋4Aを衛生的に使用することが可能となる。
【0073】
第1および第2ロック機構7A,8Aは、たとえば凸部44A,45Aに対して内方側に向けた力を作用させ、その力を棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaに作用させることによりロック状態を解除するように構成してもよい。すなわち、棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaに作用させることによって棒状部材71A,81Aを内方側に移動させ、凹部42A,43Aと棒状部材71A,81Aの一端部71Aa,81Aaとの係合状態を解除するように構成してもよい。
【0074】
穿刺装置1Aにおいては、ロック機構として、図30および図31に示した構成のものを採用することもできる。
【0075】
これらの図に示したロック機構9Aは、先に説明した実施の形態におけるロック機構7A,8A(図28および図29参照)と同様に、蓋4Aに設けられた凹部42A,43Aおよびを装置本体3Aに設けられた付勢手段90Aを有している。ロック機構9Aはさらに、装置本体3Aに設けられた操作部99Aを有している。
【0076】
図31(a)および図31(b)に示したように、付勢手段90Aは、先のロック機構7A,8A(図28および図29参照)と同様に、一対の棒状部材91Aおよびコイルバネ92Aを備えており、棒状部材91Aの相互がコイルバネ92Aによって連結されている。
【0077】
一対の棒状部材91Aは、一端部91Aaが装置本体3Aから突出した状態で、装置本体3Aの貫通孔32Aに対してN6,N7方向に往復移動可能に挿通されている。各棒状部材91Aの他端部91Abには、ピン91Acが設けられている。ピン91Acは、後述する操作部99Aのテーパ部99Abに干渉させるための部分である。
【0078】
操作部99Aは、棒状部材91Aに対して、棒状部材91AをN6,N7方向に移動させるための力を作用させるためのものである。この操作部99Aは、一端部99Aaが装置本体3Aから突出した状態で、装置本体3Aの貫通孔33Aに対してN3,N4方向に往復移動可能に挿通されている。操作部99Aは、一対のテーパ部99Abを有している。これらのテーパ部99Abは、棒状部材91Aのピン91Acに干渉させるための部分であり、カム面99Acを有している。カム面99Acは、操作部99Aを装置本体3Aの内方側に移動させたときに棒状部材91Aを内方側に移動させる一方で、操作部99Aを装置本体3Aの外方側に移動させたときに棒状部材91Aを外方側に移動させるように形成されている。
【0079】
ロック機構9Aでは、ロック状態の解除は、操作部99Aに対して、使用者が装置本体3Aの内方側に向けた力を作用させることによって行うことができる。すなわち、操作部99Aに対して内方側に向けた力を作用させた場合には、ピン91Acがカム面99Acに沿って相対的に移動する。すなわち、ピン91Acは、互いに近づくように内方に向けて移動する。これにより、棒状部材91Aが内方側に移動し、棒状部材91Aの一端部99Aaと蓋4Aの凹部42A,43Aとの係合状態が解除され、ロック状態が解除される。
【0080】
ロック機構9Aにおいては、たとえば蓋4Aに対して、この蓋4Aを一定以上開けたときに操作部99Aに干渉する部分を設けてもよい。その場合には、一方のロック機構9Aを解除して蓋4Aを一定以上開ければ、蓋4Aが操作部99Aに干渉して操作部99Aが
内方側に移動する。これにより、他方のロック機構9Aのロック状態が解除され、装置本体3Aから蓋4Aを取り外すことができるようになる。
【0081】
本発明の実施の形態に係る穿刺装置1Aにおいて採用されるロック機構として、参考例に係る穿刺装置1において採用されていたロック機構31,40b(図1および図2参照)を採用することもできる。また、本発明の参考例に係る穿刺装置1における装置本体3に対して蓋4を回動可能に支持する構成(装置本体3の貫通孔30および蓋の軸部40a)(図1および図2参照)として、実施の形態におけるロック機構7A,8A,9A(図28および図29、または図30および図31参照)を採用して本発明としてもよい。その場合には、蓋4Aを支持する部分(ロック機構7A,8A,9A)を、容易に解除することができるようになる。そのため、装置本体3Aから蓋4Aを容易に取り外すことができるため、装置本体3Aおよび蓋4Aの洗浄を、容易かつ適切に行えるようになる。さらに、本発明の参考例に係る穿刺装置1において、図30および図31を参照して説明したロック機構9Aを採用する場合には、たとえば蓋4Aに対して、この蓋4Aを一定以上開けたときに操作部99Aに干渉する部分を設け、蓋4Aを操作部99Aに干渉させることにより、装置本体3Aから蓋4Aを取り外すことが可能なように構成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A 穿刺装置
10 指先
11 収容空間
20a 穿刺針(穿刺要素)
3,3A 装置本体(本体部)
31 (装置本体の)凸部(ロック機構を構成するもの)
4,4A 蓋
40b (蓋の)凹部(ロック機構を構成するもの)
41 圧迫部(圧迫片)
42 拘束部(拘束手段)
42A 拘束部(第2の挟持部)
42B 拘束部(第1の挟持部)
43 板バネ
5 穿刺機構
56,56′ 密着部材
56a,56D′ (密着部材の)貫通孔(本体部の開口部)
56A′ (密着部材の)テーパ部(筒状部)
56B′ (密着部材の)フランジ部
6 搾液機構(搾液手段)
60,60A,60B 回転体(作用部材)
60C 移動体(作用部材)
61 シート材
62 作用部(搾液手段)
7A 第1ロック機構
8A 第2ロック機構
9A ロック機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指先の穿刺対象部位に穿刺要素を突き刺して穿刺対象部位から血液を出液させるための穿刺装置であって、
上記穿刺要素が移動する方向に開放しているとともに、穿刺時において、指先により封鎖される開口部を有する本体部と、
上記開口部を覆う状態と覆わない状態とを選択可能であり、かつ上記開口部を覆った状態において、上記本体部との間に指先を挿入するための収容空間を形成するための蓋と、
上記蓋によって上記開口部が覆われた状態を維持するための第1および第2ロック機構と、を含んでおり、
上記第1ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第2ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第1ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができる一方で、
上記第2ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第1ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第2ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができるように構成されていることを特徴とする、穿刺装置。
【請求項2】
上記本体部は、上記蓋により上記開口部を覆ったときに、上記指先における穿刺対象部位の周りに密着させるための密着部材を備えている、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項3】
上記穿刺対象部位よりも指の根元側から上記穿刺対象部位に向けて血液を送って、上記穿刺対象部位から血液を搾り出すための搾液手段をさらに備えている、請求項1または2に記載の穿刺装置。
【請求項4】
上記穿刺要素を移動させて指先における穿刺対象部位を穿刺するための穿刺機構と、上記穿刺装置における上記穿刺要素を移動させるタイミングを制御する制御部と、を備えており、
上記制御部は、上記開口部が上記蓋によって覆われたことを確認したときに、上記穿刺機構によって上記穿刺要素を移動させるように構成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の穿刺装置。
【請求項5】
上記穿刺対象部位から出液させた血液に基づいて、血液中における特定成分を分析するように構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の穿刺装置。
【請求項1】
指先の穿刺対象部位に穿刺要素を突き刺して穿刺対象部位から血液を出液させるための穿刺装置であって、
上記穿刺要素が移動する方向に開放しているとともに、穿刺時において、指先により封鎖される開口部を有する本体部と、
上記開口部を覆う状態と覆わない状態とを選択可能であり、かつ上記開口部を覆った状態において、上記本体部との間に指先を挿入するための収容空間を形成するための蓋と、
上記蓋によって上記開口部が覆われた状態を維持するための第1および第2ロック機構と、を含んでおり、
上記第1ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第2ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第1ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができる一方で、
上記第2ロック機構において上記蓋がロックされ、かつ上記第1ロック機構において上記蓋がロックされない状態を選択することにより、上記第2ロック機構を支点として上記蓋を回動させることができるように構成されていることを特徴とする、穿刺装置。
【請求項2】
上記本体部は、上記蓋により上記開口部を覆ったときに、上記指先における穿刺対象部位の周りに密着させるための密着部材を備えている、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項3】
上記穿刺対象部位よりも指の根元側から上記穿刺対象部位に向けて血液を送って、上記穿刺対象部位から血液を搾り出すための搾液手段をさらに備えている、請求項1または2に記載の穿刺装置。
【請求項4】
上記穿刺要素を移動させて指先における穿刺対象部位を穿刺するための穿刺機構と、上記穿刺装置における上記穿刺要素を移動させるタイミングを制御する制御部と、を備えており、
上記制御部は、上記開口部が上記蓋によって覆われたことを確認したときに、上記穿刺機構によって上記穿刺要素を移動させるように構成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の穿刺装置。
【請求項5】
上記穿刺対象部位から出液させた血液に基づいて、血液中における特定成分を分析するように構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の穿刺装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−57954(P2010−57954A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276061(P2009−276061)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2004−315534(P2004−315534)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2004−315534(P2004−315534)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]