説明

穿孔機

【課題】 ガイドセルを確実に固定することができ、且つガイドセルが不安定になることを防止し、且つガイドセルを固定するのに、時間と労力を節減することのできる穿孔機を提供する。
【解決手段】 ガイドセル(12)と、該ガイドセル上を前後に移動自在に配設され且つ前端に穿孔ビット(26)を具備する穿孔ロッド(24)と、該穿孔ロッドの回転手段(30)とを具備した穿孔機において、一端に前記ガイドセル(12)に支持される固定部を有し、他端に穿孔対象物(10)に設けた凹所(10b)内に挿入される挿入部(22a)を有する回転反力支持手段(22)を具備し、前記挿入部(22a)は前記凹所の周壁を押圧可能に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤でのトンネル掘削、コンクリート構造物の解体、高炉等の改修に際して高炉底からの残銑撤去等の際の孔明け作業に使用される穿孔機、特に、ガイドセルと、該ガイドセル上を前後に移動自在に配設され且つ前端に穿孔ビットを具備する穿孔ロッドと、該穿孔ロッドを回転する回転手段とを具備した穿孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高炉等の改修に際して高炉底から残銑を掘削する装置として、残銑穿孔機が既に実用化されている。この種の穿孔機を使用して残銑に穿孔を行う場合は、ガイドセルを穿孔対象物である残銑に固定する一方で、穿孔ビットを残銑の穿孔予定の個所に押しあて、回転手段により穿孔ロッドを介して穿孔ビットを回転させながら穿孔する。穿孔ロッド及び穿孔ビットは高トルクで回転するために、ガイドセルがそのトルクの反動を受けて不安定になるのを抑制する必要がある。そのため、ガイドセルを搭載したベースマシンにカウンタウエイト(重り)を付加することによりガイドセル及びベースマシンを含む穿孔機全体が回転しないように、ベースマシンの接地面に固定させている。
【0003】
この場合、相当量のカウンタウエイトを付加するため、ベースマシンが大型となり、その移動性に支障をきたすと共に、使用可能な空間が制約される上、ガイドセル自体がねじれ、ガイドセルを確実に固定することは困難となる場合もあった。
【0004】
また、岩盤にトンネル等を掘削する場合に使用する穿孔機においても、精度の良い連続孔(スロット)を穿孔するためには、ガイドセルを穿孔対象物に確実に固定することが必要である。そのため、この種の穿孔機では、ガイドセルに装着されたフートパッドを、穿孔対象物である地山に押し当てることにより固定させていた。この方法の場合、掘削中、ドリルが打撃されることによりフートパッドの押しつけ力が弱まり、ガイドセルが不安定にある場合もあった。コンクリート構造物に穿孔する場合も上記した残銑や岩盤用の固定方法が採用されているが、特に、トルクが高くなる鉄筋埋設部の穿孔においては、その回転反力にガイドセルが抗しきれない場合が多々あり、当該部分の穿孔が非常に困難なものとなっていた。
【0005】
本発明の穿孔機に関連する先行技術として、特許文献1がある。これによると、ロッドの先端部に固定したビットの打撃力ないし回転力により削孔する削岩機であって、前記ビットに並べて、かつ、前記ロッドと平行させて岩盤に食い込み可能なドリル刃を設けるとともに、該ドリル刃を回転させるモータを備えてなる。この削岩機の固定装置によると、削孔位置に近接した岩盤を、ビットと並設した衝撃の少ないドリルで削孔し、このドリルをアンカーとすることにより、削岩機の先端部を固定するものであるから、削岩機の横滑りを防止して、削岩機を岩盤へ強固に固定することができる。
【0006】
しかしながら、この削岩機の固定装置では、ロッドの先端部に固定したビットの駆動とは別に、アンカー用のドリルを回転させる機構を必要とし、構造が複雑であると共に、ドリルにより掘削するための時間が必要であるので、削岩機の固定に時間と労力を必要とすることとなる。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2563452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の穿孔機においては、ガイドセルを確実に固定することは困難で、ガイドセルが不安定になるという問題があった。また、特許文献1に記載の削岩機の固定装置では、構造が複雑で、削岩機の固定に時間と労力を必要とするという問題があった。
【0009】
そこで、本発明では、ガイドセルを確実に固定することができ、且つガイドセルが不安定になることを防止し、且つガイドセルを固定するのに、時間と労力を節減することのできる穿孔機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本発明によれば、ガイドセルと、該ガイドセル上を前後に移動自在に配設され且つ前端に穿孔ビットを具備する穿孔ロッドと、該穿孔ロッドの回転手段とを具備した穿孔機において、一端に前記ガイドセルに固着される固定部を有し、他端に穿孔対象物に設けた凹所内に挿入される挿入部を有する回転反力支持手段を具備し、前記挿入部は前記凹所の周壁を押圧可能に構成されていることを特徴とする穿孔機が提供される。
【0011】
この場合において、回転反力が所定値を越えたとき、前記凹所に挿入されている前記挿入部の一部が該凹所の周壁側へ移動して該周壁を押圧するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、また、ガイドセルと、該ガイドセル上を前後に移動自在に配設され且つ前端に穿孔ビットを具備する穿孔ロッドと、該穿孔ロッドの回転手段とを具備した穿孔機において、一端に前記ガイドセルに固着される固定部を有し、他端に前記ガイドセルと平行に穿孔対象物に貫入可能な少なくとも2つの貫入部材からなる回転反力支持部材を具備することを特徴とする穿孔機が提供される。
【0013】
この場合においても、回転反力が所定値を越えたとき、前記貫入部材を穿孔対象物に貫入されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2は本発明の第1実施形態に係る穿孔機を示し、図1は側面図、図2は図1のA−A断面(a)及びB−Bの詳細断面図(b)である。
【0016】
図1において、10は岩盤、残銑、地山等の穿孔対象物であり、第1実施形態では表面10aが傾斜面である場合を示しているが、本発明の穿孔機は表面10aがこのような傾斜面であっても、水平面或いは垂直面であっても適用可能であることに留意すべきである。
【0017】
長手方向の延びたガイドセル12は穿孔対象物10の表面10aに対して直角な方向に固定保持されるようになっている。即ち、ガイドセル12は、このガイドセル12と平行に配置されたジャッキ付保持枠14の上側に配置され、ジャッキ付保持枠14の前後の案内部14a、14bに沿ってジャッキ付保持枠14と平行に摺動可能(矢印E)となるように保持されている。そして、ジャッキ部14cが駆動されて伸縮することにより、ガイドセル12はジャッキ付保持枠14に対して平行に移動する。一方、図示しない手段により、略水平に保持された固定枠16の先端部に回転可能に垂直方向に立設されたアーム18の上端に水平軸20と、アーム18の下端部から延びたジャッキ22の自由端とによって、ジャッキ付保持枠14の後端部及び前端部が枢着されている。従って、アーム18の回転(矢印C)とジャッキ22の動作(矢印D)によりガイドセル12を所望の角度の位置に設定することができる。
【0018】
即ち、ジャッキ22が駆動されて伸縮することにより、ガイドセル12を保持しているジャッキ付保持枠14を水平軸20を中心に回転し、ジャッキ付保持枠14及びガイドセル12を任意の傾斜角に設定できるようになっている。
【0019】
ガイドセル12の前端部の下側には壁面押圧装置22が取り付けてある。壁面押圧装置22の先端部は、壁面に押圧力を及ぼすことのできる油圧くさび22aが取り付けてあり、この油圧くさび22aは穿孔対象物10の表面10aに直角に予め穿ってある凹所10bに挿入される。
【0020】
ガイドセル12の上側には、このガイドセル12と平行に穿孔ロッド24が配置されている。この穿孔ロッド24は、その前端部がガイドセル12の前端上部に固定されている案内部12aによって案内され、後端部がガイドセル12の前端上部に前後方向に移動可能に設置されている移動台28上に設置されたドリフタ30に装着されている。
【0021】
穿孔ロッド24の前端部には穿孔ビット26が取付けられている。ドリフタ30が駆動されることにより穿孔ロッド24及び穿孔ビット26が回転し(矢印F)、穿孔対象物10に対して穿孔を行うのである。また、移動台28によりドリフタ30が前方に移動することにより穿孔ロッド24及び穿孔ビット26が前進して(矢印G)所望の穿孔が進むのである。
【0022】
穿孔ビット26が回転して穿孔対象物10に対する穿孔が進行する間における穿孔ビット26の回転反力により、図2に示すように、ガイドセル12が穿孔ロッド24に対して左右に振れる(矢印H)。これを防止するため、本発明の第1実施形態では、前述のように、ガイドセル12の前端部の下側に壁面押圧装置22を取り付けた。そして、図1(b)に示すように、壁面押圧装置22の油圧くさび22aを駆動して、油圧くさび22aを凹所10b内に押し込み、凹所10bの壁面に矢印Jに示す両側の方向(矢印J)へ外方に押圧力を加える。この移動方向は、図2に示すように、穿孔ビット26の中心軸26aと壁面押圧装置の中心軸22cとを結んだ線に対して直角な方向(J方向)である。
【0023】
なお、同様な目的に使用する壁面押圧装置22としては、油圧くさび22aの他に、例えば側方ジャッキ(図示せず)等を使用することも可能である。このような側方ジャッキにおいても、凹所10bの壁面に対し、穿孔ビット26の中心軸26aと壁面押圧装置の中心軸22cとを結んだ線に対して直角な方向に両側へジャッキの作動部を移動させて押圧力を加える。
【0024】
なお、凹所10bの壁面に対し直角な方向に両側へ加える押圧力は、穿孔ビット26の回転速度、穿孔対象物10の硬度等により、ガイドセル12にかけられる穿孔ビット26の回転により反力に応じて調整可能であることは言うまでもない。
【0025】
なお、壁面押圧装置22に歪みセンサ(図示せず)等を設け、穿孔ビット26の回転による反力を計測し、反力が所定値以下である場合は、壁面押圧装置22を穿孔対象物10の凹所10bに挿入しただけにしておき、反力が所定値を越した場合に、壁面押圧装置22を両側の方向へ外方に移動させて、凹所10bの壁面に押圧力を加えるように構成しても良いことは勿論である。
【0026】
図3及び図4は本発明の第2実施形態に係る穿孔機を示し、図3は部分側面図、図4は図3のB−B断面図である。
【0027】
この第2実施形態では、穿孔対象物10の表面10aが垂直面である場合を示しているが、第1実施形態の場合と同様、表面10aは傾斜面であっても、また水平面であっても適用可能である。
【0028】
この第2実施形態に係る穿孔機において、第1実施例と異なる部分のみ説明すると、穿孔ビット26の回転反力を支持する手段として、第1実施形態では、穿孔対象物10の凹所10bの壁面を押圧する手段を設けたが、この第2実施形態では、ガイドセル12の前端部の下側に回転反力支持装置として、穿孔対象物10に貫入可能な2つの貫入部材からなる回転反力支持装置を設けた。
【0029】
即ち、ガイドセル12の前端部の下側に移動台40を穿孔ロッド24と平行に前後方向に移動可能に取り付け、移動台40の後方においてガイドセル12の下側に取付けたジャッキ42を駆動して伸縮させることにより、移動台40をガイドセルに対して前後方向に摺動可能としている。移動台40には回転モータ44が搭載され、この回転モータ44の軸から二股に分かれて穿孔ロッド24と平行に前方に延びた2つの平行な貫入部材46が穿孔対象物10の表面10aに対して直角な方向に開けられた2つの孔10cに挿入可能となっている。
【0030】
この2つの孔10cの中心と穿孔ロッド24の中心軸との関係は、図4に示すように、穿孔ロッド24の中心軸を頂点とする2等辺3角形の頂点の関係となっている。
【0031】
この第2実施形態において、穿孔ビット26が回転して穿孔対象物10に対する穿孔が進行する間における穿孔ビット26の回転反力により、図4に示すように、ガイドセル12が穿孔ロッド24に対して左右に振れる(矢印H)。これを防止するため、ガイドセル12の下側に取付けてあるジャッキ42を駆動させた伸縮させ、移動台40及び回転モータ44を前方に移動させる。これに伴い、2つの貫入部材46も前方に移動する。
【0032】
穿孔対象物10の表面10aには、予め2つの孔10cが穿っておき、回転モータ44を回転させて、2つの貫入部材46の位置を2つの孔10cに整合させ且つ2つの貫入部材46を前進させてこれらの孔10cに挿入する。これにより、穿孔ビット26の回転により図4の矢印の方向に作用する回転反力をくい止めることができる。
【0033】
必要に応じて、回転モータ44を回転駆動させて、2つの貫入部材46を穿孔ビット26の回転による矢印方向の回転力に対向する方向のトルクを加え、更に、穿孔ビット26の回転による回転反力を抑制することができる。
【0034】
なお、第2実施形態においても、貫入部材46に例えば歪みセンサ(図示せず)等を設け、穿孔ビット26の回転による反力を計測し、反力が第1の所定値以下である場合は、貫入部材46を穿孔対象物10の2つの孔10cに挿入せず、反力が第1の所定値を越した場合に、貫入部材46を穿孔対象物10の2つの孔10cに挿入し、更に、第2の所定値を越えた場合に、回転モータ44を駆動して、2つの貫入部材46を穿孔ビット26の回転による矢印方向の回転力に対向する方向のトルクを加えるように構成しても良い。
【0035】
以上、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神ないし範囲内において種々の形態、変形、修正等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、穿孔機を穿孔対象物に固定する場合において、穿孔ビットの回転による反力を効率良く抑制する手段を設けたので、穿孔機が穿孔対象物に対して安定的に保持され、穿孔対象物が硬い岩盤等であっても、穿孔ビットによる回転反力な影響を受けずに安定して穿孔作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る穿孔機の側面図である。
【図2】図1の穿孔機のA−A断面図(a)及び凹所のB−B断面図(b)である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る穿孔機の側面図である。
【図4】穿孔ロッドと貫入部材46の位置関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 穿孔対象物
10a 穿孔対象物の表面
10b 凹所
12 ガイドセル
22 壁面押圧ユニット
22a 油圧くさび
24 穿孔ロッド
26 穿孔ビット
30 ドリフタ
40 移動台
46 貫入部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドセルと、該ガイドセル上を前後に移動自在に配設され且つ前端に穿孔ビットを具備する穿孔ロッドと、該穿孔ロッドの回転手段とを具備した穿孔機において、
一端に前記ガイドセルに固着可能な固定部を有し、他端に穿孔対象物に設けた凹所内に挿入される挿入部を有する回転反力支持手段を具備し、前記挿入部は前記凹所の周壁を押圧可能に構成されていることを特徴とする穿孔機。
【請求項2】
回転反力が所定値を越えたとき、前記凹所に挿入されている前記挿入部の一部が該凹所の周壁側へ移動して該周壁を押圧するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の穿孔機。
【請求項3】
ガイドセルと、該ガイドセル上を前後に移動自在に配設され且つ前端に穿孔ビットを具備する穿孔ロッドと、該穿孔ロッドの回転手段とを具備した穿孔機において、
一端に前記ガイドセルに固着可能な固定部を有し、他端に前記ガイドセルと平行に穿孔対象物に貫入可能な少なくとも2つの貫入部材からなる回転反力支持部材を具備することを特徴とする穿孔機。
【請求項4】
回転反力が所定値を越えたとき、前記貫入部材を穿孔対象物に貫入されることを特徴とする請求項3に記載の穿孔機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−161392(P2006−161392A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353999(P2004−353999)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】