説明

穿孔装置及び曲り孔の穿孔方法

【課題】好適に曲り孔を穿孔可能な穿孔装置及びこれを用いた曲り孔の穿孔方法を提供する。
【解決手段】ロッド体3と、ロッド体3を通じて地盤を穿孔する回転力及び/又は打撃力をビット2に与えるドリフター4と、ドリフター4を進退可能に支持してその進退方向を規制するガイドセル5とを備えた穿孔装置Aであって、略直線状の軸線O1を備えたロッド体3を、穿孔ととともに弾性変形させるロッド湾曲変形機構Bが設けられており、ロッド湾曲変形機構Bは、ロッド体3の進退に従動可能に支持された本体部10と、本体部10から延出した弾性変形可能な第1延出部11と、本体部10から延出し、軸線O1を挟んで第1延出部11と略反対側に設けられた弾性変形可能な第2延出部12と、第1延出部11の先端に設けられた先端当接部13と、第2延出部12の先端に設けられた後端当接部14と、ロッド体3を進退可能に支持するロッド支持部15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネルの切羽面からトンネルの掘進方向に向けて地盤に形成する発破孔の穿孔などに用いる穿孔装置及びこれを用いた曲り孔の穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトンネル掘削では、ドリルジャンボなどの削孔機を用いてトンネル切羽面から掘削計画に平行する複数の発破孔を穿孔し、この発破孔に爆薬や雷管、込め物を装填して、爆薬の爆発エネルギーにより地盤を掘削することが行なわれている。また、発破孔を例えば4〜5m程度の長孔で形成しこの長孔内に爆薬を分散装薬して、一度に大量の岩盤(地盤)を掘削する、いわゆる長孔発破によって効率よく掘削することも行なわれている。
【0003】
この種の発破孔(孔)を穿孔するために用いる削孔機には穿孔装置が備えられ、この穿孔装置は、例えば特許文献1の第3図に示されるように、自走可能な台車に装備され、前後方向に延設したガイドセル(ガイド台)と、このガイドセルに前後方向にスライド移動自在(進退可能)に取り付けられたドリフター(穿孔機)と、ドリフターに接続されてこのドリフターから回転力及び/又は打撃力が伝達されるロッド体と、ロッド体の先端に着脱可能に取り付けられてロッド体を通じて伝達された回転力及び/又は打撃力により地盤を切削(穿孔)するビットとを備えて構成されている。また、この穿孔装置では、直線状の軸線を有するようにロッド体が形成され、このロッド体を用いて穿孔した発破孔は、孔軸が直線で延びるように形成される。
【特許文献1】特開平7−197767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された削孔機が具備する穿孔装置を用いて発破孔の穿孔を行う場合には、孔軸が直線で延びる穿孔を行なう関係上、切羽面の周端側に位置する発破孔を穿孔する際に、ガイドセル(ガイド台)とトンネル掘削面との間を、ロッド体を駆動するドリフター(穿孔機)が通過できるようにするため、特許文献1の第1図や第7図に示されるように、一掘進毎にトンネル掘削面を断面略三角状の段状に形成する必要が生じていた。すなわち、この部分に発破孔を形成するために、掘削計画線よりも例えばトンネル径方向に最大35cm〜45cm程度深く地盤を掘削する余掘りが必要となり、トンネル構築において不要な領域の地盤を掘削することになって、施工性の低下を招く一つの要因となっていた。
【0005】
また、長孔発破の発破孔を穿孔する場合には、長いロッド体を使用するため、掘削面とガイドセルを平行にする長さが長く必要になり、掘削面の凹凸の影響を受けやすくなって、且つ穿孔先端の誤差が削孔長に比例して大きくなることなどの理由から、さらに大きな余掘りが発生するという問題があった。
【0006】
このため、従来の削孔機(穿孔装置)を利用して、切羽面の周端側の発破孔を孔軸が湾曲した曲り孔として形成し、余掘りを極力少なくすることが強く望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、好適に曲り孔を穿孔可能な穿孔装置及びこれを用いた曲り孔の穿孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の穿孔装置は、先端に地盤を穿孔するビットが取り付けられたロッド体と、前記ロッド体の後端が接続され該ロッド体を通じて前記地盤を穿孔する回転力及び/又は打撃力を前記ビットに与えるドリフターと、該ドリフターを進退可能に支持してその進退方向を規制するガイドセルとを備えた穿孔装置であって、略直線状の軸線を備えた前記ロッド体を、前記地盤を穿孔するととともに前記軸線が湾曲するように弾性変形させるロッド湾曲変形機構が設けられており、該ロッド湾曲変形機構は、前記ドリフター及び前記ロッド体の進退に従動可能に前記ロッド体に支持された本体部と、該本体部から前記軸線に沿って前記ロッド体の先端側に延出した弾性変形可能な第1延出部と、前記本体部から前記ロッド体の先端側に前記第1延出部よりも延出長を小として延出し、且つ前記軸線を挟んで前記第1延出部と略反対側に設けられた弾性変形可能な第2延出部と、前記第1延出部の先端に設けられ、前記ロッド体の先端側の外面に当接する先端当接部と、前記第2延出部の先端に設けられ、前記先端当接部よりも前記ロッド体の後端側の外面に当接する後端当接部と、前記ガイドセルに固定して設けられ、前記ドリフターの進退に従動する前記ロッド体を進退可能に支持するロッド支持部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の曲り孔の穿孔方法は、上記の穿孔装置を用いて曲り孔を穿孔する方法であって、前記ドリフターを進出させて前記ビットで穿孔した孔に、穿孔の進行に従って前記先端当接部を挿入させて、該先端当接部を前記孔の内壁面に当接させながら穿孔してゆくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の穿孔装置及び曲り孔の穿孔方法によれば、ドリフターを進出させてこのドリフターに従動したロッド体の先端に取り付けたビットで穿孔を開始し、穿孔した孔がある所定の深さに達した段階で、本体部及び第1延出部に支持されてロッド体の先端側に当接した先端当接部が孔に挿入される。そして、この段階から、先端当接部が孔の内壁面に当接し、この当接によって先端当接部には地盤から押圧力(反力)が作用し、先端当接部を介してこの押圧力をロッド体の先端側に作用させることができる。また、このとき、後端当接部及びロッド支持部によってロッド体の後端側が支持され、且つ先端当接部を支持する第1延出部が弾性変形可能とされていることにより、ロッド体を、先端側に作用した押圧力によってその軸線が湾曲するように曲げ変形させることができる。
【0012】
これにより、ガイドセルに支持されたドリフターを進退させながら地盤を穿孔する従来の穿孔装置に簡易な構成のロッド湾曲変形機構を備えることで、直線状の軸線を備えたロッド体を穿孔時に湾曲させることができ、このようにロッド体を湾曲させながら穿孔することにより、孔軸が湾曲した曲り孔を容易に穿孔することができる。
【0013】
そして、このような穿孔装置を、例えばトンネル構築時の切羽面の周端側に形成する発破孔(孔)の穿孔に用いた場合には、この部分の発破孔を曲り孔として穿孔できるため、ガイドセルとトンネル掘削面とを平行にする必要がなくなり、トンネル掘削面を断面略三角状の複数の段状に形成する必要がなくなって、余掘り量を大幅に低減させることが可能になる。これにより、大幅に施工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1から図10を参照し、本発明の一実施形態に係る穿孔装置及び曲り孔の穿孔方法について説明する。本実施形態は、本発明に係る穿孔装置及び曲り孔の穿孔方法を、トンネル切羽面の周端側に形成する発破孔の穿孔に適用したものである。
【0015】
本実施形態の穿孔装置Aは、図1及び図2に示すように、例えばドリルジャンボなどの削孔機1に装備されており、先端に地盤Gを穿孔するビット2が取り付けられたロッド体3と、ロッド体3の後端が接続されて、このロッド体3を通じて地盤Gを穿孔する回転力及び/又は打撃力をビット2に与えるドリフター4と、ドリフター4を進退可能に支持するとともにその進退方向を規制するガイドセル5と、直線状の軸線O1を備えたロッド体3を、穿孔とともにその軸線O1が湾曲するように弾性変形させるためのロッド湾曲変形機構Bとから構成されている。
【0016】
ここで、本実施形態において、ロッド体3は、例えば穿孔する発破孔(孔、曲り孔7)6の穿孔長に応じて複数の鋼製ロッドを連結することで1本の円柱棒状に形成されている。また、ガイドセル5は、例えば断面略矩形状に形成され、ドリフター4が進退する方向(前後方向)の長さが、この進退方向Hに直交する幅よりも大きく形成されている。このガイドセル5の長さは、ロッド体3の長さ、すなわち穿孔する発破孔6(7)の長さに応じた長さとされている。
【0017】
一方、ロッド湾曲変形機構Bは、図2に示すように、ドリフター4の進退に従動可能にロッド体3に支持された本体部10と、この本体部10の前端に後端が繋がりロッド体3の先端に向けて延出した第1延出部11と、第1延出部11と同様に、本体部10の前端に後端が繋がりロッド体3の先端に向けて延出した第2延出部12と、第1延出部11の先端に設けられたブロック状の先端当接部13と、第2延出部12の先端に設けられたブロック状の後端当接部14と、ガイドセル5に固定して設けられ、ドリフター4の進退に従動するロッド体3を進退可能に支持するロッド支持部15とを備えて構成されている。
【0018】
本体部10は、ロッド体3のドリフター4と接続される後端よりも僅かに先端側に位置する部分のロッド体3に、このロッド体3の軸線O1回りの回転を許容した状態で支持され、且つ下方に突出した下端側がガイドセル5に進退可能に支持されて取り付けられている。これにより、ドリフター4がガイドセル5に沿って(ガイドセル5に進退方向Hを規制されて)進退した際に、本体部10ひいてはロッド湾曲変形機構Bの進退方向が、ドリフター4(及びロッド体3)の進退方向Hと同方向となるように規制されている。
【0019】
第1延出部11は、例えば鋼製の棒状に形成されて弾性変形可能なものとされている。また、この第1延出部11は、本体部10の前端に繋がる後端からロッド体3の軸線O1に沿い且つロッド体3の外側(ロッド体3の軸線O1を挟んで略対向する外面3aの一方の外面3a近傍)を通って、その先端がロッド体3の先端近傍に位置するまで延設されている。
【0020】
第2延出部12は、第1延出部11と同様に、例えば鋼製の棒状に形成されて弾性変形可能なものとされている。一方、第2延出部12は、第1延出部11よりも長さ(延出長)が小とされており、本体部10の前端に繋がる後端からロッド体3の軸線O1に沿い、且つロッド体3の軸線O1を挟んで第1延出部11と略反対側のロッド体3の外側(ロッド体3の軸線O1を挟んで一方の外面3aと略対向する他方の外面3a近傍)を通って延設されている。ここで、本実施形態では、第2延出部12が第1延出部11の約1/2の長さで形成されている。
【0021】
先端当接部13は、図3に示すように、ビット2の先端面(切刃面)2a側からの平面視で、円弧状に形成されており、凸側の外面13aがビット2で穿孔した断面円形の発破孔(孔、曲り孔7)6の曲率半径と略同等の曲率半径で形成され、凹側の内面13bがロッド体3の外面3aの曲率半径と略同等の曲率半径で形成されている。また、この先端当接部13は、内面13bがロッド体3の先端側の外面3aに当接されて設けられている。
【0022】
一方、後端当接部14は、先端当接部13と同形同大で形成されており、内面14bがロッド体3の後端側の外面3aに当接されて設けられている。このとき、先端当接部13が繋がる第1延出部11と後端当接部14が繋がる第2延出部12が、ロッド体3を挟んで互いに対向配置されているため、先端当接部13の内面13bと、後端当接部14の内面14bは、それぞれロッド体3の軸線O1を挟んで互いに略反対側を向く外面3aのそれぞれに当接される。
【0023】
また、図2及び図3に示す穿孔前のロッド体3の軸線O1が直線状の状態において、先端当接部13と後端当接部14は、それぞれの外面13a、14aがビット2の先端の外周端2bよりも僅かに径方向外側に位置するように形成されている。これに対し、第1延出部11と第2延出部12は、ビット2の先端の外周端2bよりも径方向内側(ロッド体3の軸線O1側)に位置するように設けられている。
【0024】
ロッド支持部15は、図2に示すように、ガイドセル5の先端側に固定した状態で取り付けられ、ガイドセル5と隙間をあけて進退するロッド体3に向けて突設されている。また、ロッド支持部15は、その突出方向先端がロッド体3のガイドセル5側を向く外面3aに当接されて、ロッド体3を進退可能に且つ回転可能に支持している。
【0025】
ついで、上記構成からなる穿孔装置Aを用いてトンネルTの切羽面T1からトンネル掘進方向の地盤G内に発破孔6(曲り孔7)を穿孔する方法について説明し、本実施形態の穿孔装置A及び曲り孔7の穿孔方法の作用及び効果について説明する。
【0026】
ここで、軸線O1が真っ直ぐに延びた状態のロッド体3で発破孔6の穿孔を行なう従来の穿孔装置Cにおいては、例えば図4に示すように、トンネル切羽面T1の周端T2側に発破孔6を形成しようとすると、ガイドセル5上を進退するドリフター4の通過高さを確保するために、断面三角形状の掘削面T3を形成する必要があった。すなわち、トンネルの一掘進毎に三角状の余掘りを必要とし、最大概ね35〜40cm程度多く地盤Gを掘削する必要が生じていた。特に、長孔発破を行なうための発破孔6を穿孔する際には、掘削面T3とガイドセル5を平行にする長さが長くなるため、掘削面T3に生じた凹凸によってドリフター4の通過が阻害され易く、また、穿孔先端(発破孔6の孔底6a)の誤差が穿孔長に比例して大きくなるなどの理由で余掘り厚がさらに大きくなるという問題が生じていた。
【0027】
これに対して、本実施形態の穿孔装置Aで、トンネルTの切羽面T1の周端T2側の発破孔7(6)を穿孔する場合には、図5に示すように、はじめに、ロッド体3の軸線O1が真っ直ぐに延びた状態でビット2を切羽面T1に当接させて穿孔を開始する。そして、ドリフター4をガイドセル5に沿って進出させながら穿孔を行なってゆくと、ロッド体3の先端側外面3aに当接した先端当接部13が発破孔7(6)内に挿入される。このとき、先端当接部13は、その外面13aがビット2の先端の外周端2bよりも僅かに径方向外側に位置され、且つ発破孔7(6)の内壁面6bの曲率半径と略同等の曲率半径を有しているため、発破孔7(6)の内壁面6bに外面13aが当接されて、地盤Gから押圧力(反力)S1を受けることになる。そして、この押圧力S1が先端当接部13を介してロッド体3の先端側に作用する。
【0028】
また、このとき、ロッド体3の後端側は、ドリフター4に接続されて支持されるとともに、押圧力S1が作用するロッド体3の外面3aと軸線O1を挟んで反対側の外面3aに後端当接部14とロッド支持部15が当接されて支持されている。このため、ロッド体3の先端側への押圧力S1の作用と、先端当接部13を支持する第1延出部11の弾性変形とにより、先端当接部13に近いロッド支持部15が主たる支持点R1とされて、この支持点R1から先端側のロッド体3がその軸線O1を湾曲させるように曲げ変形することになる。そして、先端当接部13が穿孔した発破孔7(6)内に挿入されていくほどに、すなわち切羽面T1から地盤G内に挿入されて先端当接部13とロッド支持部15のロッド体3の軸線O1方向の間隔が大きくなるほどに、このロッド体3の曲げ変形の曲げ角(直線状の軸線O1に対するロッド体3の先端付近での湾曲した軸線O1の角度)θ1は、大きくなってゆく。
【0029】
このように穿孔とともに湾曲したロッド体3で継続的に穿孔を行った場合には、ロッド体3の曲げ角θ1の大きさに応じてビット2の切刃を有する先端面2aの地盤Gに対する当接角が変化してゆくため、このビット2の地盤Gを切削する方向が順次変化して、孔軸O2が湾曲した曲げ孔7の発破孔6が穿孔される。そして、このとき、ロッド体3の曲げ角θ1が、先端当接部13とロッド支持部15の軸線O1方向の間隔によって主に支配されるため、穿孔時にロッド体3の進出に従い変化するこの間隔を予め起算しておき、すなわち先端当接部13とロッド支持部15の相対位置を調整しておくことで、曲げ孔7で形成される発破孔6の曲げ角(直線状の孔軸O2に対する孔底付近での湾曲した孔軸O2の角度)θ2が制御される。
【0030】
さらに、ドリフター4をガイドセル5に沿って進出させてゆき穿孔を継続的に行なって、図6に示すように、発破孔7(6)内に後端当接部14が挿入された段階で、ロッド体3の曲げ角θ1を支配する主たる支持点R1が、ロッド支持部15から後端当接部14に移行する。すなわち、後端当接部14は、発破孔7(6)内に挿入されるとともに、発破孔7(6)の内壁面6bに外面14aが当接されて、地盤Gから押圧力(反力)S2を受けることになる。そして、このとき、後端当接部14が、先端当接部13が当接するロッド体3の外面3aに対し、ロッド本体3の軸線O1を挟んだ反対側の外面3aに当接されているため、この後端当接部14を介してロッド体3に作用する押圧力S2は、先端当接部13を介してロッド体3の先端側に作用する押圧力S1と略反対側を向いて作用することになる。このため、ロッド体3の先端、すなわち自由端側に作用する先端当接部13からの押圧力S1に対して、後端当接部14からの押圧力S2は支持力として作用する。そして、ロッド体3の曲げ角θ1を支配する主たる支持点R1がロッド支持部15からこの後端当接部14に移行することによって、後端当接部14が発破孔7(6)に挿入された後は、力点と支持点R1の間隔、すなわち先端当接部13と後端当接部14のロッド体3の軸線O1方向の間隔が変化しないため、ロッド体3の曲げ角θ1が略一定に保持されて、曲げ孔7の発破孔6が穿孔される。
【0031】
よって、本実施形態の穿孔装置Aを用いて曲げ孔7の発破孔6を穿孔する場合、後端当接部15が発破孔7(6)に挿入される前段では、先端当接部16とロッド支持部15のロッド体3の軸線O1方向の相対位置を調整しておくことで、また、後端当接部14が発破孔7(6)に挿入された後段では、先端当接部13と後端当接部14のロッド体3の軸線O1方向の間隔を調整しておくことで、任意の曲げ角θ1で発破孔7(6)を形成できる。
【0032】
そして、本実施形態の穿孔装置A及びこの穿孔装置Aを用いて発破孔6を切羽面T1の周端T2側の穿孔する際には、図5及び図6に示すように、発破孔6を従来の穿孔装置Cと同様の操作で曲げ孔7として形成できるため、ガイドセル5と掘削面T3とを平行に維持する必要がなく、掘削面T3の凹凸の影響を受けずに、ドリフター4の通過高さを確保することができる。これにより、例えば、ロッド体3が曲げ変形した際の曲率半径が83.5mとなるように調整して、5mの発破孔(長孔)7(6)を穿孔した場合には、その先端部(孔底6a)で約15cmの余掘り高さにすることができ、平均余掘り厚を10cm程度とすることができる。よって、大幅に余掘り厚を低減することができ、施工性を向上させることが可能になる。
【0033】
また、切羽面T1の周端T2側の発破孔6よりも中央側に位置する発破孔6は、ドリフター4が掘削面T3に干渉するようなことがないため、通常の軸線O1が真っ直ぐに延びた状態のロッド体3で発破孔6の形成を行なえばよいが、例えば図7及び図8に示すように、本実施形態の穿孔装置Aを用いて芯抜きのための発破孔(曲り孔7)20(6)を湾曲形状とすることで、曲り孔20(6、7)と直線孔21(6)で繋がるVカット(アングル型)領域Sを形成することができる。このように芯抜き孔を曲り孔20と直線孔21で形成することにより、例えば図9及び図10に示すように、直線孔21のみでVカット領域Sを形成する場合と比較して、切羽面T全面に形成する発破孔6の穿孔数を大幅に削減することができる。例えば、地山等級がC1の地盤GにトンネルT中心の開口高さLが6350mm、幅Bが8700mmのトンネルTを形成する際に、掘進長を5000mmとした場合、直線孔21のみでは、約115孔の発破孔6を必要とするのに対し、曲り孔20と直線孔21を併用した場合では、約103孔の発破孔6で所望の掘進長の掘削を行なうことが可能になる。
【0034】
したがって、本実施形態の穿孔装置A及びこれを用いた曲り孔7の穿孔方法においては、直線状の軸線O1を備えたロッド体3を進退させながら地盤Gを穿孔する従来の穿孔装置Cに、ロッド湾曲変形機構Bを備えるという簡易な構成で、穿孔時にロッド体3を湾曲させて曲り孔7を穿孔することができる。また、このとき、先端当接部13と後端当接部14のロッド体3の軸線O1方向の間隔を調整することによって、ロッド体3の曲げ角θ1を制御することができ、任意の曲げ角θ1で曲り孔1を形成することが可能になる。
【0035】
そして、このように曲り孔7を好適に穿孔することができる本実施形態の穿孔装置Aを、トンネル掘削の発破孔6の穿孔に用いることで、ガイドセル5と掘削面T3とを平行に維持する必要がなく、余掘り量を低減することができ、また、発破孔6の穿孔数を低減することができる。これにより、施工性を大幅に向上させることが可能になる。
【0036】
以上、本発明に係る穿孔装置A及び曲り孔の穿孔方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、トンネル掘削の発破孔6の穿孔に本発明の穿孔装置Aを適用するものとしたが、これに限定する必要はなく、例えば、薬液注入における注入孔を曲り孔として穿孔するために用いてもよい。
【0037】
これに関連して、本実施形態では、穿孔装置Aがドリルジャンボ(削孔機)に具備されているものとしたが、本発明の穿孔装置Aは、例えばクローラドリルなど自走する台車を備えた他の削孔機に具備されてもよく、さらに、穿孔装置A単体で用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る穿孔装置を備えた削孔機を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る穿孔装置を示す側面図である。
【図3】図2のX−X線矢視図である。
【図4】従来の穿孔装置を用いてトンネル切羽面の周端側の発破孔を穿孔した状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る穿孔装置を用いてトンネル切羽面の周端側の発破孔を穿孔した状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る穿孔装置を用いてトンネル切羽面の周端側の発破孔を穿孔した状態を示す側断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る穿孔装置を用いて形成した発破孔の配置を示す平断面図である。
【図8】図7のX−X線矢視図である。
【図9】従来の穿孔装置を用いて形成した発破孔の配置を示す平断面図である。
【図10】図9のX−X線矢視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 削孔機
2 ビット
3 ロッド体
3a 外面
4 ドリフター
5 ガイドセル
6 発破孔
7 曲げ孔(発破孔)
10 本体部
11 第1延出部
12 第2延出部
13 先端当接部
14 後端当接部
15 ロッド支持部
20 曲げ孔(発破孔)
21 直線孔(発破孔)
A 穿孔装置
B ロッド湾曲変形機構
C 従来の穿孔装置
O1 軸線
O2 孔軸
T トンネル
T1 切羽面
T2 切羽面の周端
T3 掘削面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に地盤を穿孔するビットが取り付けられたロッド体と、前記ロッド体の後端が接続され該ロッド体を通じて前記地盤を穿孔する回転力及び/又は打撃力を前記ビットに与えるドリフターと、該ドリフターを進退可能に支持してその進退方向を規制するガイドセルとを備えた穿孔装置であって、
略直線状の軸線を備えた前記ロッド体を、前記地盤を穿孔するととともに前記軸線が湾曲するように弾性変形させるロッド湾曲変形機構が設けられており、
該ロッド湾曲変形機構は、前記ドリフター及び前記ロッド体の進退に従動可能に前記ロッド体に支持された本体部と、
該本体部から前記軸線に沿って前記ロッド体の先端側に延出した弾性変形可能な第1延出部と、
前記本体部から前記ロッド体の先端側に前記第1延出部よりも延出長を小として延出し、且つ前記軸線を挟んで前記第1延出部と略反対側に設けられた弾性変形可能な第2延出部と、
前記第1延出部の先端に設けられ、前記ロッド体の先端側の外面に当接する先端当接部と、
前記第2延出部の先端に設けられ、前記先端当接部よりも前記ロッド体の後端側の外面に当接する後端当接部と、
前記ガイドセルに固定して設けられ、前記ドリフターの進退に従動する前記ロッド体を進退可能に支持するロッド支持部とを備えていることを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
請求項1記載の穿孔装置を用いて曲り孔を穿孔する方法であって、
前記ドリフターを進出させて前記ビットで穿孔した孔に、穿孔の進行に従って前記先端当接部を挿入させて、該先端当接部を前記孔の内壁面に当接させながら穿孔してゆくことを特徴とする曲り孔の穿孔方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−327189(P2007−327189A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157071(P2006−157071)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】