説明

突入電流対応非絶縁型昇圧回路

【課題】起動時低抵抗負荷に対し、スイッチング式昇圧回路を用いたキャパシタ電源から突入電流を制限しないで起動することにより起動しやすくすると共に、突入電流により昇圧スイッチが破壊されるのを防ぐ。
【解決手段】低抵抗で起動される負荷4に対し突入電流を流して起動する突入電流対応非絶縁型昇回路であって、直列リアクトルL1と昇圧スイッチSW1を有する昇圧回路と、昇圧スイッチSW1をPWM制御するPWM制御手段2と、昇圧回路の出力側に直列接続される電源スイッチSW3と、負荷4の起動信号に基づき電源スイッチSW3をオンにし該オンにした後に所定の条件によりPWM制御手段2をオンにする起動制御手段3とを備え、負荷4の起動信号に基づき電源スイッチSW3をオンにして負荷4に突入電流を流し突入電流が減衰してからPWM制御手段2をオンにして昇圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低抵抗で起動される負荷に対し突入電流を流して起動する突入電流対応非絶縁型昇回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばモータや白熱球、ハロゲンヒータ等は、起動時の抵抗が低くほぼ短絡状態に近い起動時低抵抗負荷であり、起動時に大きな突入電流が流れる。そのためこのような起動時低抵抗負荷に給電する電源においては、大きな突入電流が流れるのを抑制する手段が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3281822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような起動時低抵抗負荷の起動時に突入電流を制限すると、起動しにくくなり、起動に時間がかかるという問題がある。低温の環境になると、さらに起動特性が悪くなり起動しにくくなる。
【0004】
キャパシタは、二次電池に比べて大電流を供給することができるので、負荷の起動時間や待機時間を短縮することができる。このようなキャパシタ電源にスイッチング式昇圧コンバータを用い、起動時低抵抗負荷に突入電流を制限することなく給電すると、起動時に大きな突入電流が流れるため、昇圧コンバータのスイッチング回路が破壊される。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、起動時低抵抗負荷に対し、スイッチング式昇圧回路を用いたキャパシタ電源から突入電流を制限しないで起動することにより起動しやすくすると共に、突入電流により昇圧スイッチが破壊されるのを防ぐことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、低抵抗で起動される負荷に対し突入電流を流して起動する突入電流対応非絶縁型昇回路であって、直列リアクトルと昇圧スイッチを有する昇圧回路と、前記昇圧スイッチをPWM制御するPWM制御手段と、前記昇圧回路の出力側に直列接続される電源スイッチと、負荷の起動信号に基づき前記電源スイッチをオンにし該オンにした後に所定の条件により前記PWM制御手段をオンにする起動制御手段とを備え、前記負荷の起動信号に基づき前記電源スイッチをオンにして前記負荷に突入電流を流し前記突入電流が減衰してからPWM制御手段をオンにして昇圧することを特徴とする。
【0007】
起動制御手段は、前記所定の条件として、前記電源スイッチをオンにし一定時間経過後に前記PWM制御手段をオンにすることを特徴とし、また、起動制御手段は、前記所定の条件として、前記負荷に突入電流が流れピークを過ぎて所定値まで電流が減衰したことを判定して前記PWM制御手段をオンにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷の起動信号に基づき昇圧回路の出力側に直列接続される電源スイッチをオンにして負荷に突入電流を流し突入電流が減衰してからPWM制御手段をオンにして昇圧するので、負荷の起動時に突入電流を流し起動しやすくすることができると共に、突入電流により昇圧回路の昇圧スイッチが突入電流により破壊されるのを防ぐことができる。したがって、負荷の起動時間や待機時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る突入電流対応非絶縁型昇圧回路の実施の形態を説明する図であり、1はキャパシタ電源、2はPWM制御部、3は起動制御部、4は負荷、C1、C2、C11、C12はコンデンサ、L1は直列リアクトル、PD11、PD12はフォトダイオード、PT11、PT12はフォトトランジスタ、R11〜R17は抵抗、SW1〜SW3はスイッチ素子、TR11〜TR13はトランジスタを示す。
【0010】
図1(a)において、キャパシタ電源1は、充電電源により充電して負荷4の給電要求により放電するものであり、負荷4は、起動時の抵抗が低くほぼ短絡状態に近いモータや白熱球、ハロゲンヒータ等の起動時低抵抗負荷である。キャパシタ電源1と負荷4との間には、直列リアクトルL1、スイッチ素子SW2、SW3を直列接続し、直列リアクトルL1の出力端にスイッチ素子SW1を接続して、キャパシタ電源1と直列リアクトルL1との直列回路を短絡している。直列リアクトルL1とスイッチ素子SW1、SW2は、PWM制御部2によりスイッチ素子SW1、SW2をオン−オフしてPWM(Pulse Width Modulation :パルス幅変調)制御し昇降圧する回路を構成するものである。スイッチ素子SW1は昇圧用のスイッチであり、キャパシタ電源1からトランス等を介することなく、直列リアクトルL1、スイッチ素子SW2、SW3を通して負荷4に給電する非絶縁型昇圧回路を構成している。スイッチ素子SW3は、負荷4を起動するときに投入する、所謂負荷4の電源投入スイッチである。スイッチ素子SW1〜SW3は、FET素子で示しているが、サイリスタ素子や接点であってもよい。直列リアクトルL1の入力側及びスイッチ素子SW2の出力側に接続されているコンデンサC1、C2は平滑用である。起動制御部3は、負荷4を起動する起動(オン)信号にしたがいスイッチ素子SW3のオン(SW3−ON)と、PWM制御部2のオン(PWM−ON)を制御するものであり、先にスイッチ素子SW3をオンにして負荷4に突入電流を流して負荷4を起動しやすくしてから、所定の条件でPWM制御部2をオンにする。
【0011】
起動制御部3の具体的な回路構成例を示したのが図1(b)である。図1(b)において、負荷4を起動する起動(オン)信号は、抵抗R11とコンデンサC11との並列回路を通してNPNのトランジスタTR11のベース−エミッタ回路に入力される。そして、トランジスタTR11のコレクタに抵抗R12とフォトダイオードPD11が直列に接続され、フォトダイオードPD11とフォトカプラを構成するフォトトランジスタPT11からスイッチ素子SW3のオン(SW3−ON)信号が出力される。
【0012】
また、抵抗R12とフォトダイオードPD11との直列回路に並列に抵抗R13とR14との直列回路、抵抗R13にPNPのトランジスタTR12のエミッタ−ベース回路がそれぞれ接続される。さらに、トランジスタTR12のコレクタに抵抗R15と抵抗R16の直列回路が接続され、抵抗R16と並列にコンデンサC12、NPNのトランジスタTR13のベース−エミッタ回路が接続される。そして、そのトランジスタTR13のコレクタに抵抗R17とフォトダイオードPD12が直列に接続され、フォトダイオードPD12とフォトカプラを構成するフォトトランジスタPT12からPWM制御部2のオン(PWM−ON)信号が出力される。
【0013】
この起動制御部3の回路により、負荷4を起動する起動(オン)信号が入力すると、トランジスタTR11がオンになって、フォトカプラのフォトダイオードPD11−フォトトランジスタPT11を介してスイッチ素子SW3をオンにする。トランジスタTR11がオンになると、トランジスタTR12もオンになってコンデンサC12の電圧がトランジスタTR13をオンにする電圧に達するまでのタイムデレィをもった後、トランジスタTR13がオンになってフォトカプラのフォトダイオードPD12−フォトトランジスタPT12を介してPWM制御部2をオンにする。このように、スイッチ素子SW3をオンにしてから一定時間遅延させた後、PWM制御部2をオンにするので、その間に負荷4に突入電流を流して、負荷4の起動時間を短縮することができる。また、突入電流が流れている間は、PWM制御によるスイッチ素子SW1のオン−オフ動作は行わないようにして、突入電流が減衰してからスイッチ素子SW1のオン−オフ動作を行うので、昇圧用のスイッチ素子SW1が突入電流により破壊されるのを防ぐことができる。
【0014】
図2は負荷の起動とPWM制御のタイミングを説明する図、図3は本発明に係る突入電流対応非絶縁型昇圧回路の他の実施の形態を説明する図、図4は図3に示す起動制御部の構成例を示す図、図5は図3に示す起動制御部の他の構成例を示す図である。図中、図1と同じ符号は図1と同じのものを示し、21は信号立ち下がり検出回路、22は信号立ち上がり検出回路、23、28、30はラッチ回路、24、25はコンパレータ、26はインバータ、27、29はアンド回路、PD21、PD22はフォトダイオード、PT21、PT22はフォトトランジスタ、R1は電流検出用抵抗、R21〜R24、R31〜R36は抵抗、TR21〜TR25はトランジスタ、X31はシャントレギュレータを示す。
【0015】
図1に示す実施形態では、遅延回路を使って負荷4に給電するスイッチ素子SW3のオンからPWM制御のオンまで、突入電流が減衰するまでの一定時間を遅延させるようにしたが、図2に示すように突入電流を検出して、突入電流を基準値Vs で判定してPWM制御のオンのタイミングを制御してもよい。この場合の突入電流が基準値Vs まで減衰するのを判定するためには、それより高い図2に示す基準値Vr により基準値Vs の判定回路を有効にすることが必要になる。その実施形態を図3〜図5により説明する。
【0016】
図3に示す実施形態では、電流検出用抵抗R1をキャパシタ電源1の出力に直列に挿入して接続し、起動制御部3は、起動(オン)によりスイッチ素子SW3をオンにした後、電流検出用抵抗R1により検出される電流に基づく突入電流が減衰したことを判定してPWM制御部2のオン(PWM−ON)の制御を行う。そのための起動制御部3を、例えば図4、図5に示す。
【0017】
図4において、信号立ち下がり検出回路21は、起動(オン)の信号を入力してその立ち下がりを検出し、信号立ち上がり検出回路22は、同じく起動(オン)の信号を入力してその立ち上がりを検出して、それぞれ検出した時点で検出パルスを出力する。ラッチ回路23は、信号立ち上がり検出回路22からの検出パルスによりラッチして、スイッチ素子SW3のオン(SW3−ON)信号を出力する。コンパレータ24は、電流検出用抵抗R1により検出された電流の検出値VI と基準値Vr とを入力して比較し、電流の検出値VI が基準値Vr を越えると、それまでのLからHになる信号を出力するものである。コンパレータ25は、電流検出用抵抗R1により検出された電流の検出値VI と基準値Vs とを入力して比較し、電流の検出値VI が基準値Vs を越えると、それまでのLからHになる信号を出力するものであり、インバータ26は、コンパレータ25の出力を反転させ、電流の検出値VI が基準値Vs まで減衰すると、コンパレータ25のL信号を反転させたH信号を出力する。アンド回路27は、ラッチ回路23の出力とコンパレータ24の出力とをアンド処理して、ラッチ回路28にその結果をラッチする。アンド回路29は、ラッチ回路28の出力とコンパレータ25の出力をインバータ26で反転した出力とをアンド処理して、ラッチ回路30にその結果をラッチしてPWM制御部2のオン(PWM−ON)信号を出力する。ラッチ回路23、28、30は、信号立ち下がり検出回路21からの検出パルスによりクリアされる。
【0018】
上記の回路によれば、図2に示すt0のタイミングでラッチ回路23がラッチされてスイッチ素子SW3のオン(SW3−ON)信号が出力され、t1のタイミングでラッチ回路28がラッチされる。このラッチ回路28がラッチされることにより、その後、突入電流が減衰するとt2のタイミングでアンド回路29のアンド条件に成立し、ラッチ回路30がラッチされてPWM制御部2のオン(PWM−ON)信号が出力される。
【0019】
図5に示す回路は、図1(b)に示した遅延回路に代えて、突入電流が減衰したタイミングでフォトダイオードPD12とフォトカプラを構成するフォトトランジスタPT12からPWM制御部2のオン(PWM−ON)信号を出力する回路を構成したものである。図5(a)において、抵抗R12とフォトダイオードPD11との直列回路に並列にフォトトランジスタPT21、抵抗R21、R22、トランジスタTR21、TR22からなる回路を接続し、電流の検出値VI が基準値Vr を越えるとトランジスタTR22をオンにする。この回路では、NPNのトランジスタTR22のコレクタ−ベースとPNPのトランジスタTR21のベース−コレクタとを相互に接続して、電流の検出値VI が基準値Vr を越えるとオンするフォトトランジスタPT21によりトランジスタTR22をオンにするベース電流を供給する。
【0020】
さらに、フォトトランジスタPT22、抵抗R23〜R24、トランジスタTR23〜TR25からなる回路を接続し、電流の検出値VI が基準値Vs まで減衰すると、トランジスタTR13をオンにして、フォトカプラのフォトダイオードPD12−フォトトランジスタPT12を介してPWM制御部2のオン(PWM−ON)信号を出力する。この回路では、トランジスタTR22のオンと共にオンするNPNのトランジスタTR23のコレクタに抵抗R23を通して、電流の検出値VI が基準値Vs を越えるとオンするフォトトランジスタPT22、PNPのトランジスタTR24のベース−エミッタ回路の並列回路を接続する。そして、トランジスタTR13にも、そのコレクタ−ベース回路とPNPトランジスタのベース−コレクタ回路とを相互に接続すると共に、トランジスタTR24のコレクタ出力をトランジスタTR13のベースに接続して、トランジスタTR24によりトランジスタTR13をオンにするベース電流を供給する。
【0021】
電流検出用抵抗R1により検出される電流の検出値VI と基準値Vr 、Vs とを比較して基準値を越えた電流の検出を行う回路の構成例を示したのが図5(b)である。図5(b)に示す回路では、抵抗R31とR32との直列回路、抵抗R34とR35との直列回路に電流検出用抵抗R1により検出される電流の検出値VI を印加している。そして、抵抗R31とR32との直列接続点をNPNのトランジスタTR31のベースに接続し、エミッタに基準値Vr の基準電圧源Refを接続して、コレクタに抵抗R33とフォトダイオードPD21を接続して、電流の検出値VI が基準値Vr を越えるとフォトダイオードPD21を介してフォトトランジスタPT21をオンにする。また、抵抗R34とR35との直列接続点を基準値Vs で動作するシャントレギュレータX31のゲートに接続し、アノードに抵抗R36とフォトダイオードPD22を接続して、電流の検出値VI が基準値Vs を越えるとフォトダイオードPD22を介してフォトトランジスタPT22をオンにする。これらの回路は、トランジスタを用いた構成でも、シャントレギュレータを用いた構成でも、他の構成でもよく、それぞれに同じ構成の回路が用いられるのが通常であり、例として異なる構成の回路を示したものである。
【0022】
次に、図5に示す回路の動作を説明する。起動(オン)の信号を入力すると、まずトランジスタTR11がオンになり、フォトダイオードPD11を介してフォトトランジスタPT11をオンにすることにより、スイッチ素子SW3のオン(SW3−ON)信号が出力される。このとき、電流の検出値VI は、基準値Vr 、Vs より小さく、フォトトランジスタPT21、PT22はオフであるので、トランジスタTR21はオフである。したがって、他のトランジスタTR22〜TR24、TR13のいずれもがオフである。負荷4に突入電流が流れ、電流の検出値VI が大きくなり、初めに基準値Vs を越えると、フォトトランジスタPT22がオンになるが、トランジスタTR23がオフであるため、他のトランジスタTR24、TR13もオフのままである。さらに電流の検出値VI が大きくなり、基準値Vr を越えると、フォトトランジスタPT21もオンになり、トランジスタTR22、TR23がオンになって、トランジスタTR24もオンになる。このとき、トランジスタTR24は、フォトトランジスタPT22がオンであり、エミッタ−ベース回路が短絡されているため、オフの状態が保持される。
【0023】
その後、突入電流がピークを過ぎて減衰を始め、電流の検出値VI が基準値Vr より小さくなりフォトトランジスタPT21がオフになっても、ベース−コレクタ回路が相互に接続されているトランジスタTR21とTR22はオンを保持し、トランジスタTR23もオンを保持する。つまり、トランジスタTR21、TR22は、フォトトランジスタPT21のオンにより一端オンになると、その後は、フォトトランジスタPT21のオン/オフに関係なくオンの状態を保持するホールド回路である。
【0024】
さらに電流の検出値VI が基準値Vs より小さくなりフォトトランジスタPT22がオフになると、トランジスタTR24がオンになるので、トランジスタTR13がオンになり、PWM制御部2のオン(PWM−ON)信号を出力する。トランジスタTR13のオンによりトランジスタTR25がオンになると、その後、トランジスタTR13とトランジスタTR25も、トランジスタTR24のオンにより一端オンになると、トランジスタTR24のオン/オフに関係なくオンの状態を保持するホールド回路である。このようにしてオンの状態が保持されている、トランジスタTR21〜TR23からなるホールド回路、及びトランジスタTR25とTR13からなるホールド回路は、負荷4の停止モードにより起動(オン)の信号がHからLになり、トランジスタTR11がオフになるのと、リセットされる。
【0025】
図6は本発明に係る突入電流対応非絶縁型昇圧回路の他の実施の形態を説明する図である。上記実施の形態では、負荷4の電源投入スイッチSW3を昇圧回路の出力側の負荷4との間に挿入したが、図6に示すように昇圧回路の入力側のキャパシタ電源1と間に負荷4の電源投入スイッチSW3′、SW3″を挿入してもよい。図1に示した実施の形態では、電源投入スイッチSW3を非絶縁型の昇圧回路の出力側に接続しているので、キャパシタ電源1から昇圧回路に漏れ電流が流れるのを電源投入スイッチSW3により阻止することはできない。しかし、図6に示す実施の形態によれば、電源投入スイッチSW3′、SW3″を昇圧回路の入力側に接続しているので、昇圧回路に漏れ電流が流れないようにすることができる。図1に示した実施の形態の場合、電源投入スイッチSW3は、電源投入時に負荷4の突入電流が流れるだけであるので、電流容量は、突入電流に対して設計を行えばよい。しかし、図6に示す実施の形態の場合には、昇圧回路の入力側で電源投入を行うので、電源投入時に、負荷4の突入電流が流れるだけでなく、コンデンサC1、C2にも突入電流が流れる。そのため、図6(a)に示す電源投入スイッチSW3′としては、図1に示す電源投入スイッチSW3よりも大きな電流容量のものが必要となる。また、電源投入スイッチSW3′の電流容量を小さく抑えるには、図6(b)に示すように電源投入スイッチSW3′と並列に電流制限抵抗R3″が直列接続された電源投入スイッチSW3″を接続して、まず、電流制限抵抗R3″が直列接続された電源投入スイッチSW3″を電源投入後、時間差を持たせて電源投入スイッチSW3′を投入する、電源投入スイッチSW3′とSW3″のタイミング制御を行うことが必要となる。したがって、図6に示す実施の形態は、図1に示す実施の形態より起動時間も長くなるが、図6に示す実施の形態により負荷4の突入電流を大きく制限しないで起動することにより、実質的にモータや白熱球、ハロゲンヒータ等の負荷4を起動しやすくすると共に、突入電流により昇圧スイッチが破壊されるのを防ぐことはできる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態では、起動制御部として、トランジスタを用いて構成した回路で説明したが、細部は設計により適宜変更可能であることはいうまでもない。例えば図5に示す回路では、トランジスタTR21〜TR23からなるホールド回路、トランジスタTR25とTR13からなるホールド回路を負荷4の停止モードによりリセットさせるようにしたが、トランジスタTR21〜TR23からなるホールド回路は、トランジスタTR25とTR13からなるホールド回路によりリセットさせるようにしてもよい。また、抵抗R23をトランジスタTR22のコレクタに接続してトランジスタTR23を省いてもよいし、トランジスタTR25と抵抗R24を省いてもよい。トランジスタTR25と抵抗R24を省き、ホールド回路をなくすと、基準値Vs を通常状態で負荷4に流れる電流の範囲内の検出値より大きく設定することにより、負荷4の通常の運転中は、フォトトランジスタPT22がオフになることはない。しかし、通常状態で基準値Vs を越える異常電流が流れた場合には、フォトトランジスタPT22がオフになって、トランジスタTR13をオフにして、PWM制御をオフにすることができる。また、この信号は、異常報知信号とし、スイッチ素子SW3をオフにする信号として使うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る突入電流対応非絶縁型昇圧回路の実施の形態を説明する図。
【図2】負荷の起動とPWM制御のタイミングを説明する図。
【図3】本発明に係る突入電流対応非絶縁型昇圧回路の他の実施の形態を説明する図。
【図4】図3に示す起動制御部の構成例を示す図。
【図5】図3に示す起動制御部の他の構成例を示す図。
【図6】本発明に係る突入電流対応非絶縁型昇圧回路の他の実施の形態を説明する図。
【符号の説明】
【0028】
1…キャパシタ電源、2…PWM制御部、3…起動制御部、4…負荷、C1、C2、C11、C12…コンデンサ、L1…直列リアクトル、PD11、PD12…フォトダイオード、PT11、PT12…フォトトランジスタ、R11〜R17…抵抗、SW1〜SW3…スイッチ素子、TR11〜TR13…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低抵抗で起動される負荷に対し突入電流を流して起動する突入電流対応非絶縁型昇回路であって、
直列リアクトルと昇圧スイッチを有する昇圧回路と、
前記昇圧スイッチをPWM制御するPWM制御手段と、
前記昇圧回路の出力側に直列接続される電源スイッチと、
負荷の起動信号に基づき前記電源スイッチをオンにし該オンにした後に所定の条件により前記PWM制御手段をオンにする起動制御手段と
を備え、前記負荷の起動信号に基づき前記電源スイッチをオンにして前記負荷に突入電流を流し前記突入電流が減衰してからPWM制御手段をオンにして昇圧することを特徴とする突入電流対応非絶縁型昇回路。
【請求項2】
起動制御手段は、前記所定の条件として、前記電源スイッチをオンにし一定時間経過後に前記PWM制御手段をオンにすることを特徴とする請求項1記載の突入電流対応非絶縁型昇回路。
【請求項3】
起動制御手段は、前記所定の条件として、前記負荷に突入電流が流れピークを過ぎて所定値まで電流が減衰したことを判定して前記PWM制御手段をオンにすることを特徴とする請求項1記載の突入電流対応非絶縁型昇回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−306812(P2008−306812A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150350(P2007−150350)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【特許番号】特許第4076572号(P4076572)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(393013560)株式会社パワーシステム (127)
【Fターム(参考)】