説明

窒化物を含む発光素子、その製造方法および発光方法

発光フィルム;および発光フィルムの表面上に形成された、金属微細構造を有する金属層;を含み、この際、発光フィルムは、化学組成:Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である、窒化物を含む発光素子。窒化物を含む発光素子の製造方法および発光方法も提供される。金属層は発光フィルムの表面上に形成され、窒化物を含む発光素子は単純な構造、良好な発光均一性、高い発光効率および良好な発光安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光材料に関し、より詳細には、発光材料からなるガラス基板を含む発光素子、その製造方法および発光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光基板として用いられる従来の材料は、蛍光体、ナノ結晶、ガラスなどを含む。結晶および蛍光体と比較すると、ガラスは透明であり、強固であり、優れた化学的安定性および優れた蛍光特性を有する。また、ガラスは、種々の形およびサイズを有するディスプレイ装置や光源のような種々の形を有する製品に容易に加工することができる。
【0003】
例えば、真空マイクロエレクトロニクスにおいて、フィールド・エミッション素子は発光体として発光基板を用いており、照明およびディスプレイ技術において大きな可能性を示し、内外の研究機関に注目されている。フィールド・エミッション素子の作動原理は、加速電場を形成させるために、真空下でアノードは電解放出アレイ(FEAs)に正電圧を印加し、カソードから放出された電子は、発光材料をアノードプレート上で加速度的に衝突させ、放射される。フィールド・エミッション素子は広い操作温度(−40℃〜80℃)、短い応答時間(corresponding time)(<1ms)、単純な構造、低いエネルギー消費を有し、環境保護の要求を満たす。さらに、蛍光体、発光基板、発光フィルムなどのような材料は、フィールド・エミッション素子において発光材料として有用であるが、これらは全て発光効率が低いという重大な問題を有し、フィールド・エミッション素子の用途、特に照明への適用を著しく限定するものとなっている。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
本開示の一態様において、良好な発光均質性、高い発光効率、良好な安定性、単純な構造を有する、窒化物を含む発光素子ならびに簡便な工程および低コストである製造方法が求められる。
【0005】
本開示の一態様において、単純な操作、良好な信頼性、および発光効率を向上させる、窒化物を含む発光素子の製造方法も求められる。
【0006】
窒化物を含む発光素子は、発光基板;および発光基板の表面上に形成された金属微細構造を有する金属層を含み、この際、金属基板は、化学組成:Ga1−xAlN:yReを有し、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である。
【0007】
窒化物を含む発光素子の製造方法は、化学組成:Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である、を含む発光基板を準備し;発光基板上に金属層を形成させ、金属層の金属微細構造を形成させるために真空中で発光基板および金属層を焼鈍し、次いで、窒化物を含む発光素子を形成するために発光基板および金属層を冷却することを含む、
窒化物を含む発光素子の発光方法は、上述の製造方法によって窒化物を含む発光素子を得て;金属層に陰極線を放射し、陰極線の放射によって金属層および発光基板の間に表面プラズモンを形成させ、次いで発光ガラスに放射線をあてることを含む。
【0008】
上述の窒化物を含む発光素子において、金属微細構造を有する金属層が発光基板の表面上に形成され、陰極線が放射され、金属層および発光基板の間に表面プラズモンが形成されうる。表面プラズモン効果により、発光基板の内部量子効率は非常に増加し、発光基板の自然放出は非常に増加し、その結果、発光基板の発光効率が向上し、発光材料の低効率問題を克服することができる。したがって、窒化物を含む発光素子の発光方法において、陰極線が一旦金属層に放射されると、表面プラズモンが金属層および発光基板間に形成され、発光効率および信頼性が向上するであろう。窒化物を含む発光素子は、発光基板および金属層を含む単純な2層構造を有する。また、発光基板および金属層の間に形成された均一な界面が存在し、その結果良好な発光均質性および安定性が達成される。窒化物を含む発光素子の発光方法において、陰極線が一旦金属層に放射されると、表面プラズモンが金属層および発光基板間に形成され、発光基板の発光効率および信頼性が向上するであろう。
【0009】
窒化物を含む発光素子の製造方法の一実施形態において、発光ガラス上に金属層を形成させ、発光ガラスおよび金属層を焼鈍することによって、窒化物を含む発光素子を得ることができ、したがって、製造方法は単純で安価である。窒化物を含む発光素子は、電界放出ディスプレーのような超高輝度およびハイスピードの動きを有する発光装置に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の構成要素は必ずしも尺度に沿って描かれておらず、本開示の原理を明確に説明する目的で強調されている。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による窒化物を含む発光素子の概略側面図である。
【図2】図2は、窒化物を含む発光素子の製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【図3】図3は、窒化物を含む発光素子の発光方法の一実施形態のフローチャートである。
【図4】図4は、実施例1の窒化物を含む発光素子のX線回折スペクトルである。
【図5】図5は、金属層なしの発光フィルムと比較した実施例1の窒化物を含む発光素子の発光スペクトルであり、陰極線の発光スペクトルの試験条件は、5KV加速電圧によって励起された電子線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は例示のために説明されるものあり、添付の図面の図に限定する目的ではなく、図中、同様の参照は同様の構成要素を示す。なお、本開示における「一」実施形態の意味するところは、必ずしも同じ実施形態ではなく、かような言及は少なくとも一を意味する。
【0012】
図1を参照すると、窒化物を含む発光素子10の一実施形態は、発光フィルム2および発光フィルム2の表面上に形成される金属層3を含む。発光フィルム2は、基板1上に蒸着され、基板1および金属層3の間に位置する。基板1は、石英、サファイア、酸化マグネシウムなどからなる透明または半透明の基板でありうる。金属層3は、ミクロ−ナノ構造とも称される金属微細構造を有する。また、金属微細構造は非周期的である、すなわち、不規則な配列の金属結晶から構成される。
【0013】
発光フィルム2は、化学組成Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である、を有する。好ましくは、Reは、Gd,Ce,Tm,Eu,Tb,Sm,Dy,Er,およびPrからなる群から選択される少なくとも一の元素を表す。優れた発光特性を有する希土類元素を混ぜることによって、発光フィルム2の発光特性は顕著に向上する。また、発光フィルム2はさらに高い光透過性を有する。
【0014】
金属層3は、抗酸化性、耐食性金属のような、良好な化学的安定性を有する金属または通常の金属からなりうる。金属層3は、好適には、Au,Ag,Al,Cu,Ti,Fe,Ni,Co,Cr,Pt,Pd、Mg、およびZnからなる群から選択される少なくとも一の金属からなり、より好ましくは、Au、Ag、およびAlからなる群から選択される少なくとも一の金属からなる。金属層3は、一の金属または複合金属からなりうる。複合金属は、上述の2以上の合金でありうる。例えば、金属層3は、Ag/Al合金層またはAu/Al合金層であり、この際、AgまたはAuの重量パーセンテージは、好ましくは70%を超える。金属層3の厚さは0.5〜200nmの範囲であり、好ましくは1〜100nmの範囲である。
【0015】
窒化物を含む発光素子(luminescent element)として、窒化物を含む発光素子10は、電界放出ディスプレー、電解放出光源、および大画面の広告ディスプレイなどのような超高輝度およびハイスピードの動きを有する発光装置に広く適用できる。図1に示すような電界放出ディスプレーを例にとると、加速電場を形成するために、アノード(示していない)は電界放出陰極に正電圧を印加し、表面プラズモンが金属微細構造を有する金属層3および発光フィルム2の間に形成されるように、カソードが陰極線4、すなわち電子を金属層3に対して放出する。表面プラズモン効果により、発光フィルム2の内部量子効率は非常に高くなり、発光フィルムの発光効率が向上し、発光フィルムの低効率問題が克服されるほどに発光ガラスの自然放出は非常に高まる。また、金属層3が発光フィルム2の表面上に形成されているので、全金属層および発光フィルム2の間に均一な界面が形成され、発光均一性が向上する。
【0016】
図1および図2を参照して、窒化物を含む発光素子の製造方法の一実施形態のフローチャートを示し、該方法は、以下の工程を含む:
工程S01、発光フィルム2を準備し、発光フィルム2は、化学組成Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である、を有する。
【0017】
工程S02、発光フィルム2の表面上に金属層3を形成させる。
【0018】
工程S03、金属層3の金属微細構造を形成させるために、真空中で発光フィルム2および金属層3を焼鈍し、次いで、窒化物を含む発光素子10を形成するために発光フィルム2および金属層3を冷却する。
【0019】
この際、発光フィルム2の準備は以下を含む:適切な基板1を選択し、基板1の両側を磨く、次いで、基板1の表面上にフィルムを形成させる、フィルムは化学組成Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である、を有する。フィルムは、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、化学蒸着、エピタキシャル成長法、パルスレーザー蒸着および噴霧熱分解工程からなる群から選択される一の方法によって基板1の表面上に形成される。基板1は、前述したように、石英、サファイア、酸化マグネシウムなどからなる透明または半透明の基板でありうる。Reは好ましくはGd,Ce,Tm,Eu,Tb,Sm,Dy,Er,およびPrからなる群から選択される少なくとも一の元素でありうる。また、発光フィルム2を有する基板1はあるサイズにまで切断して磨くこともでき、それによって所望のサイズの発光フィルムが得られる。
【0020】
工程S02において、金属層3は、金属をスパッタリングまたは蒸着することによって、発光フィルムの表面上に形成される。前述したように、金属層3は、抗酸化性および耐食性金属のような優れた化学的安定性を有する金属源または通常の金属を蒸着することによって形成される。金属層3は好ましくは、Au、Ag、Al、Cu、Ti、Fe、Ni、Co、Cr、Pt、Pd、Mg、およびZnからなる群から選択される、少なくとも一の金属からなり、より好ましくは、Au、Ag、およびAlからなる群から選択される、少なくとも一の金属からなる。金属層3は上述したように金属の合金からなってもよい。金属層3の厚さは、好ましくは0.5〜200nmの範囲であり、より好ましくは1〜100nmの範囲である。
【0021】
工程S03において、発光フィルム2上への金属層3の形成後、金属層3および発光フィルム2を50〜650℃の温度で5分から5時間真空で焼鈍し、室温まで冷却する。好適なアニール(焼鈍)温度は、100〜600℃であり、好適なアニール時間は、15〜180分であり、真空度は1×10−3Pa未満である。
【0022】
図1〜3を参照して、窒化物を含む発光素子の発光方法のフローチャートを示し、該方法は、以下の工程を含む:
工程S11、前述の製造方法によって窒化物を含む発光素子10を得る。
【0023】
工程S12、金属層3に陰極線4を放射する。陰極線16の放射によって、表面プラズモンが金属層3および発光フィルム2の間に形成され、次いで発光フィルム2に放射線をあてる。
【0024】
窒化物を含む発光素子10は、前述の方法によって得られ、前述のとおりの構造および組成の特徴を有する。応用において、電界放出ディスプレーまたは照明光源によって、窒化物を含む発光素子10を実行することができる。加速電場を形成するために、カソードが陰極線4を放出するように、真空下、電界放出陰極にアノードが正電圧を印加する。陰極線4によって励起されると、電子線は金属層3を透過し、発光フィルム2に放射線があてられる。かような工程の間、表面プラズモンが金属層3および発光フィルム2の間に形成される。表面プラズモン効果により、発光フィルム2の内部量子効率は非常に高くなり、発光フィルム2の発光効率が向上するほどに発光フィルム2の自然放出は非常に高まる。
【0025】
表面プラズモン(SPと略する)は、金属および媒体間の界面に沿って広がる波であり、波の大きさは界面から距離が遠ざかるにつれて指数関数的に減衰する。金属の表面構造を変化させる際に、表面プラズモンポラリトン(SPPs)の特徴、分散関係、励起モード、連成効果はわずかに変化するであろう。SPPsによって引き起こされる電磁場は、サブ波長サイズ構造中の光波の広がりを抑制することができるばかりでなく、光周波数からマイクロ波帯までの電磁放射線を操作することができ、光拡散の能動的操作を行える。したがって、本実施形態では発光フィルム2の光学密度を増加させ、発光フィルム2の自然発生的放出速度を増加させるためにSPPsの励起を用いる。また、表面プラズモンの連成(カップリング)効果を用いることができ、発光フィルム2に放射線を当てる際、共振現象が起き、これにより発光フィルム2の発光効率が向上するほどに発光フィルム2の内部量子効率が非常に高まる。
【0026】
窒化物を含む発光素子の異なる組成および製造方法、ならびにその性能を説明するために複数の実施例を記載する。
【0027】
実施例1
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いで発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法によって基板の表面上に形成する。ここで、発光フィルムは、AlN:0.005Tmの組成を有する。発光フィルムをXRDによって試験し、試験結果を図4に示す。図4において、フィルムは(002)優先的成長(preferential growth)を示し、窒化アルミニウムの結晶方位が得られる。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、厚さ2nmの銀層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよび銀層を真空度<1×10−3Paである真空中で、300℃の温度で0.5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子を得る。希土類元素でドープされた窒化物を含む発光素子の構造が図1に示され、この際、基板は石英からなり、準備された発光フィルム2はAlN:0.005Tmの組成であり、金属層は2nmの厚さを有する銀層である。電子銃からの陰極線は金属層を直接透過し、電子線は初めは金属層3を通過し、発光フィルム2に放射線をあてる。
【0028】
希土類元素でドープされた窒化物を含む準備された発光素子は、電子銃からの陰極線によって照射され、図5に示される発光スペクトルが得られる。図5において、カーブ11は、金属層なしのフィルムの発光スペクトルを示し、カーブ12は、実施例1で製造された希土類元素でドープされた窒化物を含む発光素子の発光スペクトルを表す。図5に示されるように、表面プラズモンが金属層および発光フィルム間に形成されるので、金属層なしの発光フィルムと比較して、実施例1の金属層を有する窒化物を含む発光素子は、300〜650nmの波長において、金属層なしの発光フィルムの1.87倍の発光積分強度を有し、したがって、発光特性は非常に向上している。
【0029】
他の実施例は実施例1と同様の発光スペクトルおよび発光特性を有し、この後には触れない。
【0030】
実施例2
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いで電子ビーム蒸着法によって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.5Al0.5N:0.2Tbの組成を有する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、厚さ0.5nmの金層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよび金層を真空度<1×10−3Paである真空下、200℃の温度で1時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0031】
実施例3
1×1cmの両面磨きサファイア基板を選択し、次いで化学蒸着法によって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.2Al0.8N:0.06Gdの組成を有する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、厚さ200nmのアルミニウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびアルミニウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、500℃の温度で5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0032】
実施例4
1×1cmの両面磨きサファイア基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.8Al0.2N:0.02Ceの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ100nmのマグネシウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびマグネシウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、650℃の温度で5分間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0033】
実施例5
1×1cmの両面磨き酸化マグネシウム基板を選択し、次いでエピタキシャル成長法によって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、GaN:0.08Erの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ1nmのパラジウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびパラジウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、100℃の温度で3時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0034】
実施例6
1×1cmの両面磨き酸化マグネシウム基板を選択し、次いで噴霧分解法によって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、GaN:0.15Euの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ1nmのプラチナ層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびプラチナ層を真空度<1×10−3Paである真空下、450℃の温度で15分間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0035】
実施例7
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.6Al0.4N:0.05Prの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ20nmの鉄層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよび鉄層を真空度<1×10−3Paである真空下、50℃の温度で5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0036】
実施例8
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.4Al0.6N:0.12Smの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ10nmのチタン層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびチタン層を真空度<1×10−3Paである真空下、150℃の温度で2時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0037】
実施例9
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.35Al0.65N:0.04Dyの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ50nmの銅層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよび銅層を真空度<1×10−3Paである真空下、200℃の温度で2.5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0038】
実施例10
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.9Al0.1N:0.18Tbの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ150nmの亜鉛層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよび亜鉛層を真空度<1×10−3Paである真空下、350℃の温度で0.5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0039】
実施例11
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.1Al0.9N:0.09Tbの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ120nmのクロム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびクロム層を真空度<1×10−3Paである真空下、250℃の温度で2時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0040】
実施例12
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.15Al0.85N:0.09Tbの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ40nmのニッケル層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびニッケル層を真空度<1×10−3Paである真空下、80℃の温度で4時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0041】
実施例13
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.85Al0.15N:0.09Tbの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ180nmのコバルト層を発光フィルムの表面上に蒸着する。基板、発光フィルムおよびコバルト層を真空度<1×10−3Paである真空下、400℃の温度で1時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0042】
実施例14
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.75Al0.25N:0.07Dyの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ160nmの銀/アルミニウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。銀/アルミニウム層において、銀は約80重量%であり、アルミニウムは約20重量%である。基板、発光フィルムおよび銀/アルミニウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、380℃の温度で1.5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0043】
実施例15
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.65Al0.35N:0.10Smの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ80nmの銀/アルミニウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。銀/アルミニウム層において、銀は約90重量%であり、アルミニウムは約10重量%である。基板、発光フィルムおよび銀/アルミニウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、180℃の温度で2.5時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0044】
実施例16
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.25Al0.75N:0.14Prの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ30nmの金/アルミニウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。金/アルミニウム層において、金は約80重量%であり、アルミニウムは約20重量%である。基板、発光フィルムおよび金/アルミニウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、280℃の温度で2時間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子を得る。
【0045】
実施例17
1×1cmの両面磨き石英基板を選択し、次いでマグネトロンスパッタリングによって基板の表面上に発光フィルムを形成する。ここで、発光フィルムは、Ga0.7Al0.3N:0.16Smの組成を有する。電子ビーム蒸着装置を用いて、厚さ25nmの金/アルミニウム層を発光フィルムの表面上に蒸着する。金/アルミニウム層において、金は約90重量%であり、アルミニウムは約10重量%である。基板、発光フィルムおよび金/アルミニウム層を真空度<1×10−3Paである真空下、600℃の温度で10分間焼鈍し、室温まで冷却して、窒化物を含む発光素子が得られる。
【0046】
上述した実施例において、金属微細構造を有する金属層3が発光フィルム2の表面上に形成され、表面プラズモンが金属層3および発光フィルム2の間に形成されうるように陰極線が照射される。発光フィルム2の発光効率が向上するほどに、表面プラズモン効果によって、発光フィルム2の内部量子効率は非常に高くなり、発光フィルムの自然放出は非常に高まる。窒化物を含む発光材料はフィルムの形態であり、金属層3は窒化物を含む発光素子材料の表面上に形成され、単純な2層構造を形成する。また、発光フィルム2および金属層3の間に形成された均一な界面が存在し、優れた蛍光均一性および安定性が達成される。窒化物を含む発光素子の発光方法において、一旦金属層3に陰極線を放射すると、表面プラズモンが金属層3および発光フィルム2間に形成され、発光フィルム2の発光効率および信頼性が向上する。
【0047】
窒化物を含む発光素子の製造方法の一実施形態において、発光フィルム2上に金属層3を形成させ、発光フィルムおよび金属層を焼鈍させることによって窒化物を含む発光素子を得ることができ、故に該製造方法は単純でコストが安い。窒化物を含む発光素子は、電界放出ディスプレーのような超高輝度およびハイスピードの動きを持つ発光装置に広く適用することができる。
【0048】
構造的特徴および/または方法論的作用に特有の言葉で本発明を記載してきたが、添付の特許請求の範囲で規定された本発明は、記載された特定の構造または作用に必ずしも限定されないと理解されるべきである。むしろ、特定の特徴および作用は、特許請求の範囲の発明を実施するサンプル型として開示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光フィルム;および
発光フィルムの表面上に形成された、金属微細構造を有する金属層;
を含み、
この際、前記発光フィルムは、化学組成:Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2:を有する、
窒化物を含む発光素子。
【請求項2】
ReはGd,Ce,Tm,Eu,Tb,Sm,Dy,Er,およびPrからなる群から選択される少なくとも一の元素を表す、請求項1に記載の窒化物を含む発光素子。
【請求項3】
前記金属層が、Au、Ag、Al、Cu、Ti、Fe、Ni、Co、Cr、Pt、Pd、MgおよびZnからなる群から選択される少なくとも一の金属からなる、請求項1に記載の窒化物を含む発光素子。
【請求項4】
前記金属層が、Au、Ag、およびAlからなる群から選択される少なくとも一の金属からなる、請求項3に記載の窒化物を含む発光素子。
【請求項5】
前記金属層の厚さが、0.5〜200nmの範囲である、請求項1に記載の窒化物を含む発光素子。
【請求項6】
前記金属層の微細構造は非周期的微細構造である、請求項1に記載の窒化物を含む発光素子。
【請求項7】
化学組成:Ga1−xAlN:yRe、ここでReは希土類元素を表し、0≦x≦1,0<y≦0.2である:を含む発光フィルムを準備し;
発光フィルムの表面上に金属層を形成させ;
金属層の金属微細構造を形成させるために真空中で発光フィルムおよび金属層を焼鈍し、
次いで、窒化物を含む発光素子を形成するために発光フィルムおよび金属層を冷却することを含む、窒化物を含む発光素子の製造方法。
【請求項8】
マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、化学蒸着、エピタキシャル成長法、パルスレーザー蒸着または噴霧熱分解工程によって基板上に発光フィルムを形成し;マグネトロンスパッタリングまたは蒸着によって発光フィルムの表面上に金属層を形成させる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記発光フィルムおよび前記金属層を50〜650℃で5分から5時間焼鈍させる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかの製造方法によって窒化物を含む発光素子を得て;前記金属層に陰極線を放射し、前記陰極線の放射によって前記金属層および前記発光基板の間に表面プラズモンを形成させ、次いで前記発光基板に放射線をあてることを含む、発光素子の発光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503417(P2013−503417A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525840(P2012−525840)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073522
【国際公開番号】WO2011/022881
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512016928)海洋王照明科技股▲ふん▼有限公司 (14)
【Fターム(参考)】