説明

窒素酸化物を含む排ガスの処理方法

【課題】 排ガス中の窒素酸化物を、触媒の存在下に、アンモニア等を用い、排ガス温度が150℃以上200℃未満という低温度域で効率よく還元除去する方法を提供する。
【解決手段】 触媒として、(A)Ti−Si複合酸化物および/またはTi−Zr複合酸化物、および(B)Mnの酸化物を含む触媒、あるいは(A)Ti−Si複合酸化物および/またはTi−Zr複合酸化物、(B)Mnの酸化物、および(C)Cu、Cr、Fe、V、W、NiおよびMoから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素酸化物を含む排ガスの処理方法に関し、詳しくは排ガス中の窒素酸化物をアンモニア、尿素などの還元剤を用い、150℃以上200℃未満という低温度域にて、効率よく還元除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、火力発電所、ゴミ焼却炉などから排出される排ガス中の窒素酸化物を除去する方法としては、アンモニアまたは尿素などの還元剤を用いて排ガス中の窒素酸化物を触媒上で接触還元し、無害な窒素と水とに分解する選択的触媒還元(SCR)法が一般的である。これに用いられる窒素酸化物除去用触媒(脱硝触媒)としては、チタニア担体、チタン(Ti)とケイ素(Si)とからなる二元複合酸化物担体などのチタンを含む酸化物担体にバナジウム(V)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属酸化物を担持してなる触媒が実用されているが、これらの触媒はその使用温度が200℃以上、通常は250℃以上の高温下で効率的な脱硝機能を発揮するよう設計されてなるものである。一方、近年、廃棄物のサーマルリサイクル利用が検討され、廃棄物を燃焼して得られる熱エネルギーを各種用途に利用することが図られている。この各種のサーマルリサイクル設備から排出されるガス中の窒素酸化物を除去する要求が多くなっているが、この種の設備の排ガス温度は200℃以下と低温であり、上記した従来の高温型の脱硝触媒では充分その機能を発揮できないという問題がある。
【0003】
従来、この低温型の脱硝触媒として、種々の触媒系が提案されているが、その中で、チタン酸化物を担体としマンガン(Mn)などの卑金属酸化物を主たる活性成分として担持してなる触媒としては、硝酸根の含有量を0.1質量%以下と極力少なくしたチタン酸化物担体にマンガン酸化物を担持した触媒が、またこの触媒の存在下に150〜300℃の温度域でアンモニアにより脱硝処理する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、マンガン触媒の目的はNOをNO2に変換する酸化目的の酸化触媒であり、脱硝機能があるとは記載されていない。
【0004】
また、200〜500℃の温度域でアンモニア等の存在下脱硝する触媒として、TiおよびSiからなる二元系複合酸化物を担体として、V、W、Mo、Mn、Cu、Cr、CeおよびSnからなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物を担持してなる触媒が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この文献には、上記触媒系を200℃未満の温度域で使用した場合の脱硝性能に関しての開示はない。
【0005】
また、200〜250℃の温度域で炭化水素類、アンモニア等の還元剤の存在下、排ガス流れに対して上流側にTi−Mn系、Ti−Cr系などの窒素酸化物(NO)酸化触媒を配置しその後流側に脱硝触媒を配置してなる触媒装置を用いて脱硝する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかし、この文献にはTi−Mn系、Ti−Cr系などのNO酸化触媒について、触媒組成、触媒調製法などに関する具体的記載が無く、この触媒が如何なる触媒か特定できない。
【0006】
【特許文献1】特開平9−155190号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特公平5−872911号公報(特許請求の範囲、実施例9、10、11)
【特許文献3】特開平8−103636号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、排ガス中の窒素酸化物を、触媒の存在下に、還元剤を用い、排ガス温度が150℃以上200℃未満という低温度域で、しかもアンモニアの分解を抑制しながら、効率よく還元除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの研究によれば、触媒として、(A)チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、および(B)マンガンの酸化物を含む触媒、あるいは上記成分(A)、(B)に加えて、(C)銅、クロム、鉄、バナジウム、タングステン、ニッケルおよびモリブデンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒を含む触媒を用いると上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、排ガス中の窒素酸化物を触媒の存在下に還元剤により還元除去する排ガスの処理方法において、排ガスを150℃以上200℃未満の温度で、(A)チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、および(B)マンガンの酸化物を含む触媒に接触させることを特徴とする窒素酸化物を含む排ガスの処理方法である。
【0010】
また、本発明は、排ガス中の窒素酸化物を触媒の存在下に還元剤により還元除去する排ガスの処理方法において、排ガスを150℃以上200℃未満の温度で、(A)チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、(B)マンガンの酸化物、および(C)銅、クロム、鉄、バナジウム、タングステン、ニッケルおよびモリブデンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒に接触させることを特徴とする窒素酸化物を含む排ガスの処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、150℃以上200℃未満という低温度域で、アンモニア等を分解により損失することなく、排ガス中の窒素酸化物を効率よく還元除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる触媒の一つは、(A)チタンとケイ素との複合酸化物(以下、Ti−Si複合酸化物という。)および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物(以下、Ti−Zr複合酸化物という。)、および(B)マンガンの酸化物を含む触媒であり、他の触媒は、上記成分(A)、(B)に加えて、(C)銅、クロム、鉄、バナジウム、タングステン、ニッケルおよびモリブデンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒である。
【0013】
上記成分(A)のTi−Si複合酸化物およびTi−Zr複合酸化物はともに一般によく知られているものであり、従来から知られている方法に従って容易に調製することができる。
【0014】
チタン源としては、酸化チタンのほか、焼成してチタン酸化物を生成するものであれば、無機および有機のいずれの化合物も使用することができる。例えば、四塩化チタン、硫酸チタンなどの無機チタン化合物、またはシュウ酸チタン、テトライソプロピルチタネートなどの有機チタン化合物を用いることができる。
【0015】
ケイ素源としては、コロイド状シリカ、水ガラス、微粒子ケイ素、四塩化ケイ素などの無機ケイ素化合物、およびテトラエチルシリケートなどの有機ケイ素化合物を用いることができる。
【0016】
また、ジルコニウム源としては、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウムなどの無機ジルコニウム化合物、およびシュウ酸ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物を用いることができる。
【0017】
上記Ti−Si複合酸化物は、例えば、以下の手順(a)〜(d)によって調製することができる。
(a)シリカゾルとアンモニア水を混合し、硫酸チタンの硫酸水溶液を添加して沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
(b)硫酸チタン水溶液にケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、反応して沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
(c)四塩化チタンの水−アルコール溶液にエチルシリケート(テトラエトキシシラン)を添加し、次いで加水分解することにより沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
(d)酸化塩化チタン(オキシ三塩化チタン)とエチルシリケートとの水−アルコール溶液に、アンモニアを加えて沈殿を生じさせ、得られた沈殿物を洗浄・乾燥し、次いで300〜700℃で焼成する。
【0018】
上記の方法のうち、(a)の方法が特に好ましく、具体的には、アンモニア源、ケイ素源およびチタン源を水溶液またはゾル状態で各量が所定量(アンモニア源はNHに、ケイ素源はSiOに、そしてチタン源はTiOに、それぞれ換算)になるように取る。ついで、アンモニア源とケイ素源とを混合し、この混合液を10〜100℃に保ちながら、この混合液にチタン源を滴下して、pH2〜10で1〜50時間保持することにより、チタン−ケイ素の共沈物を生成し、この沈殿物をろ過し、充分に洗浄した後、80〜140℃で10分間から3時間乾燥し、300〜700℃で1〜10時間焼成することにより、目的とするTi−Si複合酸化物を得ることができる。
【0019】
また、Ti−Zr複合酸化物の調製は上記Ti−Si複合酸化物の調製法に準じて行えばよく、シリカ源の代わりに水溶性ジルコニウム化合物などをジルコニウム源として使用して調製すればよい。
【0020】
上記Ti−Si複合酸化物またはTi−Zr複合酸化物における、ケイ素またはジルコニウムの酸化物の含有量は、チタン酸化物に対し、0.5〜 60モル%、好ましくは1.5〜60モル%、より好ましくは1.5〜45モル%である(チタン、ケイ素およびジルコニウムはそれぞれTiO、SiOおよびZrOとして換算)。
【0021】
成分(B)のマンガン源としては、マンガン酸化物のほかに、焼成によって酸化物を生成するものであれば、無機および有機のいずれの化合物も用いることができる。例えば、マンガンを含む水酸化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などを用いることができる。
【0022】
成分(C)の銅、クロム、鉄、バナジウム、タングステン、ニッケルおよびモリブデン源としては、各々の酸化物のほかに、焼成によって酸化物を生成するものであれば、無機および有機のいずれの化合物も用いることができる。例えば、各々の元素を含む水酸化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などを用いることができる。
【0023】
本発明の上記成分(A)および(B)、または(A)、(B)および(C)を含む触媒の調製法としては、通常の含浸担持法、混練法、浸漬法など通常この分野で採用されている公知の方法から適宜選択することができる。例えば、成分(A)および(B)の混合物、あるいは成分(A)、(B)および(C)の混合物の粉体を得た後、所望の形状に成形する。その際、それぞれの成分を粉体またはスラリーの状態で混合して調製してもよいし、各々の塩類の溶液の混合物から共沈させることによって調製してもよい。また、成分(A)に成分(B)、あるいは成分(B)および(C)を担持させる方法としては、成分(A)の粉体またはスラリーの混合物に成分(B)、あるいは成分(B)および(C)の塩類またはその溶液を添加する方法や、成分(A)からなる成型体に成分(B)、あるいは成分(B)および(C)の塩類の溶液を含浸担持させる方法を用いることができる。
【0024】
本発明の触媒の組成については、成分(A)および(B)を含む触媒の場合、成分(B)は、成分(A)の質量基準で、0.1〜40質量%、好ましくは1〜40質量%である[Ti−Si複合酸化物、Ti−Zr複合酸化物は全質量、マンガンはMnOとして換算]。成分(B)の含有量が、成分(A)の0.1質量%より少ないと脱硝活性が低く、一方40質量%を超えてもそれほど大きな活性の向上は認められず、場合によっては活性が低下することもある。
【0025】
成分(A)、(B)および(C)を含む触媒の場合、成分(B)は、成分(A)の質量基準で、0.1〜40質量%、好ましくは1〜40質量%であり、成分(C)は、成分(A)の質量基準で、0.1〜25質量%、好ましくは1〜25質量%である(Ti−Si複合酸化物、Ti−Zr複合酸化物は全質量、マンガンはMnO、銅はCuO、クロムはCr、鉄はFe、バナジウムはV、タングステンはWO 、ニッケルはNiO、モリブデンはMoOとして換算)。成分(B)の含有量が、成分(A)の0.1質量%より少ないと脱硝活性が低く、一方40質量%を超えてもそれほど大きな活性の向上は認められず、場合によっては活性が低下することもある。また、成分(C)の含有量が、成分(A)の0.1質量%より少ないと脱硝活性が低く、一方25質量%を超えてもそれほど大きな活性の向上は認められず、場合によっては活性が低下することもある。
【0026】
本発明の触媒の水銀圧入法で測定した全細孔容積は、0.2〜0.6cm3 /gの範囲にあることが好ましい。触媒の全細孔容積が0.2cm3/gよりも小さいと脱硝活性が低く、一方0.6cm3/gを超えると触媒の機械的強度が低くなるため、好ましくない。本発明の触媒のBET法による比表面積は30〜250m2/g、好ましくは40〜200m2/gの範囲にあるのがよい。触媒の比表面積が30m2/gより小さいと脱硝活性が低くなり、一方250m2/gを超えてもそれほど大きな活性の向上は認められず、場合によっては触媒被毒成分の蓄積量が多くなって、触媒寿命に悪影響を及ぼすこともある。
【0027】
したがって、本発明の触媒においては、成分(B)を成分(A)の0.1〜40質量%の割合で含み、あるいは更に成分(C)を成分(A)の0.1〜25質量%含み、しかも、水銀圧入法で測定した全細孔容積が0.2〜0.6cm3/gの範囲にあり、BET法による比表面積が30〜250m2/gの範囲にある触媒が特に好適に用いられる。
【0028】
本発明の触媒の形状については特に制限はなく、板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状などのうちから選んだ所望の形状に成型して用いてもよく、またアルミナ、シリカ、コーディライト、チタニア、ステンレス金属などよりなる板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状などのうちから選んだ所望の形状の担体に担持して使用してもよい。
【0029】
本発明の触媒は、窒素酸化物を含む各種排ガスの処理に用いられる。排ガスの組成については特に制限はないが、本発明の触媒は、ボイラ、焼却炉、ガスタービン、ディーゼルエンジンおよび各種工業プロセスから排出される窒素酸化物の分解活性に優れるため、これら窒素酸化物を含む排ガスの処理に好適に用いられる。
【0030】
本発明の脱硝処理は、触媒として上記本発明の触媒を用いる点を除けば、一般に知られている方法に従って行うことができる。具体的には、窒素酸化物を含む排ガスを、窒素酸化物を還元除去するに必要な量のアンモニアとともに、本発明の触媒に接触させればよい。この際の条件については、特に制限がなく、脱硝処理に一般的に用いられている条件で実施することができる。具体的には、排ガスの種類、性状、要求される窒素酸化物の分解率などを考慮して適宜決定すればよい。なお、本発明の脱硝処理を行う際の排ガスの空間速度は、通常、100〜100000Hr- 1(STP)であり、好ましくは200〜50000Hr- 1(STP)である。100Hr- 1未満では、処理装置が大きくなりすぎるため非効率となり、一方100000Hr- 1を超えると分解効率が低下する。
【0031】
本発明の脱硝処理を行う際の排ガスの温度は、150℃以上200℃未満であり、好ましくは170〜200℃未満である。排ガス温度が150℃より低いと脱硝効率が低下して好ましくない。本発明にかかる還元剤(アンモニア等とも記載する)は窒素酸化物を還元しうるものであり、好ましくはアンモニア及び/又は尿素であり、排ガス処理温度を考慮すると更に好ましくはアンモニアである。
【0032】
なお、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)濃度は1%以下であるのがよい。排ガス中のSOx濃度が1%を超えると触媒の活性劣化が大きくなるからである。
【0033】
本発明の有利な実施態様を示している以下の実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
【触媒調製例1】
【0034】
10質量%アンモニア水700リットルにスノーテックス−20(日産化学(株)製シリカゾル、約20質量%のSiO含有)21.3kgを加え、攪拌、混合した後、硫酸チタニルの硫酸溶液(TiOとして125g/リットル、硫酸濃度550g/リットル)340リットルを攪拌しながら徐々に滴下した。得られたゲルを20時間放置した後、ろ過、水洗し、続いて150℃で10時間乾燥した。これを500℃で焼成し、粉体を得た。得られた粉体の組成は、TiO:SiO=8.5:1.5(モル比)であり、粉体のX線回折チャートではTiOやSiOの明らかな固有ピークは認められず、ブロードな回折ピークによって非晶質な微細構造を有するチタンとケイ素との複合酸化物(Ti−Si複合酸化物)であることが確認された。
【0035】
上記Ti−Si複合酸化物10kgにメタバナジン酸アンモニウム2.1kg、シュウ酸2.4kgおよびモノエタノールアミン0.6kgを水7リットルに溶解させた溶液とパラタングステン酸アンモニウムに10%メチルアミン水溶液(三酸化タングステンとして400g/リットル)3リットルを加え、さらに成形助剤としての有機バインダー(デンプン0.5kg)を加えて混合し、さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで充分混練りし、ハニカム状に押出成形した。形状は目開き4.35mm、肉厚0.6mm、長さ500mmの格子状に成形した。次いで、得られた成形物を80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下において焼成して、バナジウム・タングステン(V・W)担持Ti−Si複合酸化物成形体を得た。
【0036】
次いで、上記V・W担持Ti−Si複合酸化物成形体を硝酸マンガン[Mn(NO・6HO]水溶液(300g−Mn/リットル)に含浸し、その後120℃で乾燥し、420℃で3時間焼成して触媒(a)を得た。この触媒(a)の組成は、Ti−Si複合酸化物:V:WO:MnO=67.5:3.75:3.75:25(質量比)(成分(B)/成分(A)=37.0質量%、成分(C)/成分(A)=11.1質量%)であった。
【触媒調製例2】
【0037】
触媒調製例1で得られたV・W担持Ti−Si複合酸化物成形体を硝酸マンガン[Mn(NO・6HO]水溶液(200g−Mn/リットル)に含浸し、その後120℃で乾燥し、420℃で3時間焼成して触媒(b)を得た。この触媒(b)の組成は、Ti−Si複合酸化物:V:WO:MnO=76.5:4.25:4.25:15(質量比)(成分(B)/成分(A)=19.6質量%、成分(C)/成分(A)=11.1質量%)であった。
【触媒調製例3】
【0038】
10質量%アンモニア水700リットルにスノーテックス−20(日産化学(株)製シリカゾル、約20質量%のSiO含有)21.3kgを加え、攪拌、混合した後、硫酸チタニルの硫酸溶液(TiOとして125g/リットル、硫酸濃度550g/リットル)340リットルを攪拌しながら徐々に滴下した。得られたゲルを20時間放置した後、ろ過、水洗し、続いて150℃で10時間乾燥した。これを500℃で焼成し、粉体を得た。得られた粉体の組成は、TiO:SiO=8.5:1.5(モル比)であり、粉体のX線回折チャートではTiOやSiOの明らかな固有ピークは認められず、ブロードな回折ピークによって非晶質な微細構造を有するチタンとケイ素との複合酸化物(Ti−Si複合酸化物)であることが確認された。
【0039】
上記Ti−Si複合酸化物10kgに有機バインダー(デンプン0.5kg)を加え、さらに適量の水を加えつつブレンダーでよく混合した後、連続ニーダーで充分混練りし、ハニカム状に押出成形した。形状は目開き4.35mm、肉厚0.6mm、長さ500mmの格子状に成形した。次いで、得られた成形物を80℃で乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下において焼成して、Ti−Si複合酸化物成形体を得た。
【0040】
次いで、上記Ti−Si複合酸化物成形体を硝酸マンガン[Mn(NO・6HO]水溶液(300g−Mn/リットル)に含浸し、その後120℃で乾燥し、420℃で3時間焼成して触媒(c)を得た。この触媒(c)の組成は、Ti−Si複合酸化物:MnO=75:25(質量比)(成分(B)/成分(A)=33.3質量%)であった。
【触媒調製例4】
【0041】
触媒調製例3で得られた、Ti−Si複合酸化物成形体を硝酸マンガン[Mn(NO・6HO]水溶液(200g−Mn/リットル)に含浸し、その後120℃で乾燥し、420℃で3時間焼成して触媒(d)を得た。この触媒(d)の組成は、Ti−Si複合酸化物:MnO=85:15(質量比)(成分(B)/成分(A)=17.6質量%)であった。
【触媒調製例5】
【0042】
触媒調製例1で得られたV・W担持Ti−Si複合酸化物成形体をそのまま比較用触媒(e)とした。この触媒(e)の組成は、Ti−Si複合酸化物:V:WO=90:5:5(質量比)であった。
【実施例1】
【0043】
触媒調製例1〜5で得られた触媒(a)、(b)、(c)、(d)、および比較用触媒(e)について活性試験を行った。各ハニカム型触媒を外形15.5mm(3×3セル)、長さ126mmに切断し、これを直径35mmの触媒反応装置にガスの流れ方向に対して平衡となるように充填した。下記組成の合成ガス0.5Nm/hをアンモニア(NH)とともに触媒層に供給した。
(ガス組成)NOx:350ppm、NH:350ppm、O:15%、SO:0ppm、HO:10%、N:バランス
(ガス温度)150℃、180℃、195℃
反応器出口のNOx濃度を測定し、下記式に従ってNOx除去率を求めた。
NOx除去率=[(反応器入口NOx濃度)−(反応器出口NOx濃度)]÷(反応器入口NOx濃度)×100
結果を表1に示す。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素酸化物を触媒の存在下に還元剤により還元除去する排ガスの処理方法において、排ガスを150℃以上200℃未満の温度で、(A)チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、および(B)マンガンの酸化物を含む触媒に接触させることを特徴とする窒素酸化物を含む排ガスの処理方法。
【請求項2】
排ガス中の窒素酸化物を触媒の存在下に還元剤により還元除去する排ガスの処理方法において、排ガスを150℃以上200℃未満の温度で、(A)チタンとケイ素との複合酸化物および/またはチタンとジルコニウムとの複合酸化物、(B)マンガンの酸化物、および(C)銅、クロム、鉄、バナジウム、タングステン、ニッケルおよびモリブデンから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む触媒に接触させることを特徴とする窒素酸化物を含む排ガスの処理方法。


【公開番号】特開2006−68661(P2006−68661A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256690(P2004−256690)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】