説明

窒素酸化物浄化用触媒

【課題】急激な温度上昇時の吸着水分による劣化の問題がなく、窒素酸化物浄化性能及びその維持特性に優れた窒素酸化物浄化用触媒を提供する。
【解決手段】金属を担持したゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒であって、ゼオライトが骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子を含み、該触媒に対する25℃、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.05〜0.2(kg−水/kg−触媒)以下である窒素酸化物浄化用触媒。金属源、ゼオライト、並びに平均粒子径0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含む混合スラリーを乾燥させ、得られた乾燥粉体を焼成することによりこの窒素酸化物浄化用触媒を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素酸化物浄化用触媒に関するものであり、特にディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を効率的に分解して浄化することができる、ゼオライトを含む触媒(以下、単に「ゼオライト触媒」と称す場合がある。)と、このゼオライト触媒を効率よく製造する方法に関する。
本発明はまた、このゼオライト触媒を用いた窒素酸化物浄化用素子に関する。
なお、本発明において、「窒素酸化物浄化」とは、窒素酸化物を還元して窒素と水にすることを言う。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関からの排ガスや工場排ガス等に含まれる窒素酸化物は、V−TiO触媒とアンモニアとを用いた選択的触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)により浄化されてきた。しかし、V−TiO触媒は高温において昇華し、排ガスから触媒成分が排出される可能性があるため、特に自動車等の移動体の排ガス浄化には適していない。
【0003】
そこで、近年、自動車、特に窒素酸化物の浄化が難しいディーゼル車の排ガス処理において、SCR触媒として金属を担持したゼオライト触媒が提案されている。
特に、骨格にケイ素、アルミニウム、及びリン原子を含むゼオライトであるシリコアルミノフォスフェート(以下、「SAPO」と称す場合がある。)に金属を担持した触媒が、窒素酸化物の浄化に対し高活性な触媒となることは知られており、8員環構造を有するゼオライトに金属を担持させた触媒が提案されている。(非特許文献1、特許文献1〜特許文献6等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−251246号公報
【特許文献2】特開平11−147041号公報
【特許文献3】国際公開WO2008/118434号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2008/132452号パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2009/099937号パンフレット
【特許文献6】国際公開WO2010/084930号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ishihara, et. al, Journal of catalysis 169,93−102(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなSCR触媒を自動車排ガスの窒素酸化物浄化用触媒として使用する場合、次のような課題があった。
即ち、エンジン停止状態から、エンジンをかけたときに100〜150℃の排ガスが触媒上を通過する。エンジン停止時には、触媒はその重量の0.3〜0.4倍に相当する水分を大気より吸着している。このように水分を吸着している触媒上に、突然100〜150℃の排ガスが流れてきた場合、触媒上の温度は急激に上昇し、その吸着した水を一気に吐き出すために、局所的に非常に高湿度となり、一時的に窒素酸化物を分解する性能が大きく落ちる場合がある。また、その高湿度雰囲気に晒されることにより、触媒は大きなダメージを受け、劣化してしまうことがあり、実用上大きな問題となる。
【0007】
本発明は、急激な温度上昇時の吸着水分による劣化の問題がなく、窒素酸化物浄化性能及びその維持特性に優れたゼオライト触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ね、触媒の水吸着量を下げることにより、上記課題を解決することを考えた。
また、触媒の水吸着量を下げるために、触媒中のゼオライト比を落とした場合、その分、窒素酸化物浄化性能が低下してしまうが、本発明では、吸着した水分による湿気の影響を最小限とした上で、窒素酸化物の浄化性能が高い窒素酸化物浄化用触媒及び窒素酸化物浄化用素子と、この窒素酸化物浄化用触媒を簡便かつ効率的に製造する方法を提供するものである。
【0009】
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
【0010】
[1] 金属を担持したゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒であって、ゼオライトが骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子を含み、該触媒に対する25℃、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.05(kg−水/kg−触媒)以上、0.2(kg−水/kg−触媒)以下であることを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒。
【0011】
[2] 骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子を含むゼオライトに金属を担持してなる窒素酸化物浄化用触媒であって、Cu−Kα線をX線源に用いたX線回折測定を行った際、回折角(2θ)が20.4度以上、20.8以下の範囲に観察される回折ピーク強度に対する、21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピーク強度の比が0.2以上、1.2以下であることを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒。
【0012】
[3] ゼオライトの骨格構造において、Si/(Si+Al+P)(モル比)が0.10以上であるである[1]又は[2]に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0013】
[4] 以下の方法で測定されるNH吸着量が、0.28mmol/g−触媒以上である[1]ないし[3]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
<NH吸着量測定法>
200℃において、触媒にアンモニアを飽和になるまで吸着させた後、下記表1のガス1を流通させアンモニアによるNOの還元反応の平衡状態にする。その後、ガス2を流通させたときに、還元されたNOの総量(mmol)から、下記式よりNH吸着量(mmol/g−触媒)を求める。
NH吸着量=総NO量/触媒重量(g)
【0014】
【表1】

【0015】
[5] 平均粒子径が0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含むことを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0016】
[6] 平均粒子径が0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び無機バインダーを含むことを特徴とする[5]に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0017】
[7] 前記ゼオライトの含有量が30〜99重量%であることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0018】
[8] 前記ゼオライトの構造が、IZAが定めるコードでCHAであることを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0019】
[9] 担持された前記金属が、銅及び/又は鉄であることを特徴とする[1]ないし[8]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0020】
[10] 前記金属酸化物の金属が、アルミニウム、ケイ素、チタン、セリウム、及びニオブよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする[5]ないし[9]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0021】
[11] 前記無機バインダーが、平均粒子径5〜100nmの無機酸化物ゾルの凝集体であることを特徴とする[5]ないし[10]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【0022】
[12] [1]ないし[11]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒が、ハニカム状の成形体に塗布されてなることを特徴とする窒素酸化物浄化用素子。
【0023】
[13] [1]ないし[11]のいずれかに記載の窒素酸化物浄化用触媒を成形してなることを特徴とする窒素酸化物浄化用素子。
【0024】
[14] 金属を担持したゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒の製造方法であって、金属源、ゼオライト、並びに平均粒子径0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含む混合スラリーを乾燥させ、得られた乾燥粉体を焼成することを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
【0025】
[15] 400℃以上の温度で焼成することを特徴とする[14]に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、急激な温度上昇に伴う吸着水の発散による劣化の問題がなく、窒素酸化物浄化性能及びその維持特性に優れた窒素酸化物浄化用触媒と、この窒素酸化物浄化用触媒を用いた窒素酸化物浄化用素子が提供される。
また、本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法によれば、このような窒素酸化物浄化用触媒を簡便かつ効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例5で製造した触媒5のX線回折測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
[窒素酸化物浄化用触媒]
本発明の窒素酸化物浄化用触媒(以下、単に「本発明の触媒」と称す場合がある。)は、金属を担持したゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒であって、ゼオライトが骨格構造に少なくともケイ素(Si)原子、アルミニウム(Al)原子、及びリン(P)原子を含み、該触媒に対する25℃、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.05(kg−水/kg−触媒)以上、0.2(kg−水/kg−触媒)以下であることを特徴とする。
【0030】
本発明の触媒はまた、骨格構造に少なくともケイ素(Si)原子、アルミニウム(Al)原子、及びリン(P)原子を含むゼオライトに金属を担持してなる窒素酸化物浄化用触媒であって、後述する方法でX線回折測定を行った際、回折角(2θ)が20.4度以上、20.8以下の範囲に観察される回折ピーク強度に対する、21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピーク強度の比が0.2以上、1.2以下であることを特徴とする。
【0031】
特に、本発明の触媒は、後述する方法で測定されたNH吸着量が、0.28mmol/g−触媒以上であることが好ましい。
【0032】
{ゼオライト}
<構成原子>
本発明で使用するゼオライトは、骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、リン原子を含むゼオライト(以下、単に「ゼオライト」と称す場合がある。)を含有するものである。
【0033】
本発明で使用するゼオライトの骨格構造中のアルミニウム原子、リン原子及びケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)及び(III)を満たすことが好ましい。
0.05≦x1≦0.25 ・・・(I)
(式中、x1は骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
0.3≦y1≦0.6 ・・・(II)
(式中、y1は骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比を示す)
0.3≦z1≦0.6 ・・・(III)
(式中、z1は骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するリン原子のモル比を示す)
【0034】
さらに、x1は好ましくは0.06以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.075以上、特に好ましくは0.10以上であり、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.18以下、更に好ましくは0.16以下である。
さらに、y1は好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上であり、好ましくは0.55以下である。
さらに、z1は好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上であり、好ましくは0.55以下である。
【0035】
また、本発明におけるゼオライトの骨格構造内には、アルミニウム、リン及びケイ素原子以外の他の原子が含まれていてもよい。含まれていてもよい他の原子としては、リチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などの原子の1種又は2種以上が挙げられ、好ましくは、鉄原子、銅原子、ガリウム原子が挙げられる。
【0036】
これらの他の原子の含有量はゼオライトの骨格構造中に、ケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するモル比で、0.3以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1以下である。
【0037】
なお、上記のゼオライトの骨格構造中の原子の割合は、元素分析により決定するが、本発明における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により求めるものである。
【0038】
<骨格構造>
ゼオライトは通常結晶性であり、メタン型のSiO4四面体あるいはAlO4四面体あるいはPO4四面体(以下、これらを一般化して「TO4」とし、含有する酸素原子以外の原子をT原子という。)が、各頂点の酸素原子を共有し連結した規則的な網目構造を持つ。T原子としてはAl、P、Si以外の原子も知られている。網目構造の基本単位のひとつに、8個のTO4四面体が環状に連結したものがあり、これは8員環と呼ばれている。同様に、6員環、10員環などもゼオライト構造の基本単位となる。
【0039】
なお、本発明におけるゼオライトの構造は、X線回折法(X−ray diffraction、以下XRD)により決定する。
【0040】
本発明におけるゼオライトの構造は、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIのいずれかが好ましく、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYのいずれかがさらに好ましく、燃料由来の炭化水素を吸着しにくいことからCHA構造を有するゼオライトが最も好ましい。
【0041】
本発明におけるゼオライト類のフレームワーク密度は、特に限定されるものではないが、通常13.0T/nm以上、好ましくは、13.5T/nm以上、より好ましくは14.0T/nm以上であり、通常20.0T/nm以下、好ましくは19.0T/nm以下、より好ましくは17.5T/nm以下である。なお、フレームワーク密度(T/nm)は、ゼオライトの単位体積nmあたり存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子(T原子))の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
ゼオライトのフレームワーク密度が上記下限値未満では、構造が不安定となる場合があったり、耐久性が低下する傾向があり、一方、上記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
【0042】
<水の吸着量>
本発明で用いるゼオライトは、25℃の水蒸気吸着等温線で、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.25〜0.35(kg−水/kg−ゼオライト)であることが好ましい。
【0043】
本発明におけるゼオライトは、水蒸気の吸着特性としてある特定の相対蒸気圧の範囲内で大きく水の吸着量が変化する特徴を持つものが好ましい。吸着等温線で評価すると、通常、25℃の水蒸気吸着等温線では、相対蒸気圧0.03以上、0.25以下の範囲で相対蒸気圧が0.05変化したときに水の吸着量変化が0.05(kg−水/kg−ゼオライト)以上となるものが好ましく、より好ましくは0.10(kg−水/kg−ゼオライト)以上となるものである。また、水の吸着量変化は、大きいほど吸着量差が大きく好ましいが、通常1.0(kg−水/kg−ゼオライト)以下である。
【0044】
上記の吸着量変化を示す相対蒸気圧の好ましい範囲は、0.035以上、0.15以下であり、更に好ましくは0.04以上、0.09以下である。
【0045】
このゼオライトの水の吸着量は、後述の本発明の触媒の水の吸着量と同様に測定される。
【0046】
<粒子径>
本発明におけるゼオライトの粒子径について特に限定はないが、通常1μm以上であり、さらに好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常15μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
なお、本発明におけるゼオライトの粒子径とは、下記に説明するゼオライトの製造において、テンプレートを除去した後の粒子径として測定した値をいう。また、この粒子径とは、電子顕微鏡でゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいう。
【0047】
{ゼオライトの製造方法}
本発明におけるゼオライトはそれ自体既知の化合物であり、通常用いられる方法に準じて製造することができる。
【0048】
本発明におけるゼオライトの製造方法は、特に限定されないが、例えば特開2003−183020号公報、国際公開WO2010/084930号パンフレット、特公平4−37007号公報、特公平5−21844号公報、特公平5−51533号公報、米国特許第4440871号明細書等に記載の方法に準じて製造することができる。
【0049】
本発明に用いられるゼオライトは、通常、アルミニウム原子原料、リン原子原料、ケイ素原子原料、及び必要に応じてテンプレートを混合した後、水熱合成することによって得られる。テンプレートを混合した場合は、水熱合成後に通常テンプレートを除去する操作を行う。
【0050】
<アルミニウム原子原料>
本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。取り扱いが容易な点及び反応性が高い点でアルミニウム源としては擬ベーマイトが好ましい。
【0051】
<リン原子原料>
本発明におけるゼオライトのリン原子原料は通常リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。リン原子原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
<ケイ素原子原料>
本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。高純度で、反応性が高い点でヒュームドシリカが好ましい。
【0053】
<テンプレート>
本発明のゼオライトの製造に用いられるテンプレートとしては、公知の方法で使用される種々のテンプレートが使用でき、以下に示す(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物と(2)アルキルアミンとの2つの群から、各群につき1種以上の化合物を選択して用いることが好ましい。
【0054】
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
【0055】
また、ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
【0056】
このようなヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物として、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0057】
(2)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アミン1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。
また、アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。
アルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計が10以下がより好ましい。
また、アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0058】
このようなアルキルアミンとしては、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0059】
上記(1)及び(2)のテンプレートの好ましい組み合わせとしては、モルホリンとトリエチルアミンを含む組合せである。
【0060】
テンプレートの混合比率は、条件に応じて選択する必要がある。
2種のテンプレートを混合して用いるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
3種のテンプレートを混合して用いるときは、通常、3つ目のテンプレートのモル比は、上記で混合された(1)と(2)の2種のテンプレートの合計に対して1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
また、2種以上のテンプレートの混合比は特に限定されるものではなく、条件に応じて適宜選ぶことができるが、例えば、モルホリンとトリエチルアミンを用いる場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は通常0.05以上、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、通常20以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
【0061】
テンプレートには、上記(1)及び(2)以外のその他のテンプレートが入っていてもよいが、その他のテンプレートはテンプレート全体に対してモル比で通常20%以下であり、10%以下が好ましい。
【0062】
本発明で用いるゼオライトであるSAPOの製造に、テンプレートを用いると、得られるSAPO中のSi含有量をコントロールすることが可能であり、窒素酸化物浄化用触媒として好ましいSi含有量、Si存在状態にすることができる。その理由は明らかではないが、以下のような事が推察される。
【0063】
例えば、CHA型構造のSAPOを合成する場合、テンプレートとして(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、例えばモルホリンを用いると、Si含有量の多いSAPOを比較的容易に合成しうる。しかしながら、Si含有量の少ないSAPOを合成しようとすると、デンス成分やアモルファス成分が多く、結晶化が困難である。一方、テンプレートとして(2)アルキルアミン、例えばトリエチルアミンを用いると、CHA構造のSAPOも限られた条件では合成可能であるが、通常、種々の構造のSAPOが混在しやすい。しかし、逆に言えば、デンス成分やアモルファス成分では無く、結晶構造のものにはなりやすい。すなわち、上記(1),(2)のそれぞれのテンプレートはCHA構造を導くための特徴、SAPOの結晶化を促進させる特徴などを有している。これらの特徴を組み合わせる事により、相乗効果を発揮させ、(1)又は(2)のテンプレート単独では実現できなかった効果を得ることができると考えられる。
【0064】
<水熱合成によるゼオライトの合成>
本発明で用いるゼオライトの製造には、まず、上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、テンプレート及び水を混合して水性ゲルを調合する。その混合順序には制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素原子原料とテンプレートを混合する。
【0065】
前記(1),(2)の2つの群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレートを調製した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
【0066】
好ましい水性ゲルの組成は、以下の通りである。
即ち、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料及びリン原子原料を各々の酸化物換算のモル比で表した場合、SiO/Alの値は、通常0より大きく、好ましくは0.02以上であり、また通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。また同様の基準でのP/Alの値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
水熱合成によって得られるゼオライトの組成は、水性ゲルの組成と相関があり、従って、所望の組成のゼオライトを得るためには水性ゲルの組成を、上記の範囲において適宜設定すればよい。
【0067】
テンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Alに対するテンプレートのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。テンプレートの使用量が上記下限以上であるとテンプレート量が十分となり、上記上限以下であるとアルカリ濃度を抑えることができ、従って、上記範囲内であることにより良好な結晶化を行うことができる。
【0068】
また、水性ゲル中の水の割合は、合成のし易さ及び生産性の高さの観点から、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Alに対する水のモル比で、通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
【0069】
水性ゲルのpHは通常5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上であって、通常10以下、好ましくは9以下、さらに好ましくは8.5以下である。
【0070】
なお、水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。水性ゲル中のこれらの他の成分の含有量は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩は、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Alに対するモル比で、通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒は、水性ゲル中の水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0071】
水熱合成は、上記の水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持する事により行われる。水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。この温度範囲のうち、最も高い温度である最高到達温度まで昇温する過程において、80℃から120℃までの温度域に1時間以上置かれることが好ましく、2時間以上置かれることがより好ましい。
この温度範囲での昇温時間が1時間未満であると、得られたテンプレート含有ゼオライトを焼成して得られるゼオライトの耐久性が不十分となる場合がある。また、80℃から120℃までの温度範囲内に1時間以上置かれることが、得られるゼオライトの耐久性の面で好ましい。
一方、この温度範囲での昇温時間の上限は特に制限はないが、長すぎると生産効率の面で不都合な場合があり、通常50時間以下、生産効率の点で好ましくは24時間以下である。
【0072】
前記温度領域の間の昇温方法は、特に制限はなく、例えば、単調に増加させる方法、階段状に変化させる方法、振動等上下に変化させる方法、及びこれらを組み合わせて行う方式など様々な方式を用いることができる。通常、制御の容易さから、昇温速度をある値以下に保持して、単調に昇温する方式が好適に用いられる。
【0073】
また、水熱合成の際の最高到達温度付近に所定時間保持するのが好ましく、最高到達温度付近とは、該温度より5℃低い温度乃至最高到達温度を意味し、最高到達温度に保持する時間は、所望とするゼオライトの合成のしやすさに影響し、通常0.5時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
【0074】
最高到達温度に達した後の温度の変化の方法は、特に制限はなく、階段状に降温させる方法、最高到達温度以下で、振動等上下に変化させる方法、及びこれらを組み合わせて行う方式など様々な方式を用いることができる。通常、制御の容易さ、得られるゼオライトの耐久性の観点から、最高到達温度を保持した後、100℃から室温までの温度に降温するのが好適である。
【0075】
<テンプレートを含有したゼオライト>
水熱合成後、生成物であるテンプレートを含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離するが、テンプレートを含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過又はデカンテーション等により分離し、水洗後、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物を得ることができる。
【0076】
次いで、通常テンプレートを含有したゼオライトからテンプレートを除去するが、その方法は特に限定されない。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下に400℃から700℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出溶剤による抽出等の方法により、含有する有機物(テンプレート)を除去することができる。好ましくは製造性の面で焼成によるテンプレートの除去が好ましい。
【0077】
ただし、本発明においては、後述の如く、ゼオライトからテンプレートを除去せずに、金属の担持に供することもできる。
【0078】
{担持金属}
本発明の触媒では、上述のようなゼオライトに金属が担持されている。
【0079】
<金属>
本発明においてゼオライトに担持される金属は、ゼオライトに担持させて、触媒活性を発揮し得るものであれば、特に限定されるものではないが、好ましくは鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニア等の中の群から選ばれる。ゼオライトに担持させる金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の金属を組み合わせてゼオライトに担持してもよい。ゼオライトに担持させる金属は、更に好ましくは、鉄及び/又は銅である。
【0080】
なお、本発明において「金属」とは、必ずしも元素状のゼロ価の状態にあるものに限定されず、「金属」という場合、触媒中に担持された存在状態、例えばイオン性ないしはその他の種としての存在状態を含む。
【0081】
<担持量>
本発明の触媒におけるゼオライトへの金属の担持量は、特に限定されないが、ゼオライトに対する金属の重量割合で通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上であり、通常10%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。金属担持量が上記下限値未満では活性点が少なくなる傾向があり、触媒性能を発現しない場合がある。金属担持量が上記上限値超過では金属の凝集が著しくなる傾向があり、触媒性能が低下する場合がある。
【0082】
<金属担持方法>
本発明の触媒を製造する際のゼオライトへの金属の担持方法としては、特に限定されないが、一般的に用いられるイオン交換法、含浸担持法、沈殿担持法、固相イオン交換法、CVD法等が用いられる。好ましくは、イオン交換法、含浸担持法である。
【0083】
担持する金属の金属源としては、特に限定されるものではないが、金属塩、金属錯体、金属単体、金属酸化物等が用いられ、通常は、担持金属の塩類が用いられ、例えば硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩等の無機酸塩、又は酢酸塩などの有機酸塩を用いることができる。金属源は、後述する分散媒に可溶であっても不溶であってもよい。
【0084】
なお、本発明における触媒は、ゼオライトに金属を担持する際、テンプレートを除去したゼオライトに金属を担持しても、テンプレートを含有したゼオライトに金属を担持した後にテンプレートを除去してもよいが、製造工程が少なく、簡便な点でテンプレートを含有したゼオライトに金属を担持した後にテンプレートを除去することが好ましい。
【0085】
ただし、イオン交換法によりゼオライトに金属を担持する場合、一般的なイオン交換法ではテンプレートを焼成等により除去したゼオライトを用いることが好ましい。これは、テンプレートが除去された細孔に金属がイオン交換することにより、イオン交換ゼオライトを製造することができ、テンプレートを含有したゼオライトはイオン交換ができないため、イオン交換法による金属の担持には不向きであることによる。
【0086】
テンプレートを除去してから金属担持を行う場合は、上記のように、通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下において、通常400℃以上700℃以下の温度で焼成する方法、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出剤により抽出する方法等の種々の方法により、ゼオライト中に含まれるテンプレートを除去することができる。
【0087】
金属の担持にイオン交換法を採用しない場合には、テンプレートを含有したゼオライトを用い、例えば、ゼオライトと金属源との混合分散液から分散媒を除去し、その後下記のような焼成工程を行なって、テンプレート除去と同時に金属を担持することで触媒を製造することができ、テンプレート除去のための焼成を省略することができるため、製造面ではイオン交換法によらない金属担持法が有利である。
【0088】
含浸担持法による場合、ゼオライト(テンプレートを含有したゼオライトであってもテンプレートを除去した後のゼオライトであってもよく、好ましくはテンプレートを含有したゼオライトである。)と金属源とを含む混合分散液から分散媒を除去した後焼成を行うが、この分散媒を除去する際、一般的には、スラリー状態から、短時間で乾燥させることが好ましく、スプレードライ法を用いて乾燥することが好ましい。
【0089】
乾燥後の焼成温度は特に限定されないが、通常400℃以上、好ましくは600℃以上、さらに好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上であり、上限は通常1000℃以下である。焼成温度が上記下限値未満では金属源が分解しないことがあり、ゼオライト上での金属の分散性を高めると共に、金属とゼオライト表面との相互作用を高めるためには、焼成温度は高い方が好ましいが、上記上限値超過ではゼオライトの構造が破壊し過ぎる可能性がある。
【0090】
ただし、本発明の触媒の製造法の一つとして、本発明の触媒に必要とされる後述の水の吸着量を満足するために、上記のゼオライトへの金属の担持工程において、意図的にゼオライトの一部構造を破壊させて、本発明の触媒の水の吸着量を調整する方法も採用可能である。この場合、上記焼成をより高温(850℃以上、好ましくは900℃以上)で行う方法が有効である。また、同じ目的で以下の焼成中の気体の流通量を大きく設定する方法も採用可能である。即ち、ゼオライトの構造は、ゼオライトの種類や金属担持量、金属の分散度合によっても異なるが、850℃から1000℃の範囲内での焼成で徐々に破壊されて行く場合がある。また、焼成炉のタイプや、焼成時間にも依存し、長時間焼成を行うとより構造が破壊されていく。例えば、担持金属が銅の場合、銅の担持量が4重量%以上では850℃以上で、3重量%以上では900℃以上で、2.5重量%以下では950℃以上で2時間焼成を行うとゼオライト構造が破壊される。
従って、焼成工程で、意図的にゼオライトの構造を壊して、前述のように、25℃の水蒸気吸着等温線で、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.25〜0.35(kg−水/kg−ゼオライト)のゼオライトを用いて、この水の吸着量が0.2(kg−水/kg−触媒)以下の本発明の触媒を製造することも可能である。
但し、焼成温度を上げすぎたり、焼成時間を長くしすぎると、ゼオライト構造の破壊がさらに進み、後述のNH吸着量が大きく低下するために触媒性能が低下する。
【0091】
上記焼成の雰囲気は、特に限定はなく、大気下、又は窒素ガス下、アルゴンガス下等の不活性雰囲気下で行われ、雰囲気中に水蒸気が含まれてもよい。
焼成の方法も特に限定されず、マッフル炉、キルン、流動焼成炉などを用いることができるが、上記雰囲気気体の流通下に焼成する方法が望ましい。
【0092】
気体の流通速度は特に限定されないが、通常被焼成粉体1gあたりの気体の流通量は、0.1ml/分以上、好ましくは5ml/分以上で、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下である。
被焼成粉体1gあたりの気体の流通量が上記下限値未満では乾燥粉体中に残存する金属源由来の酸等が加熱時に除去されずゼオライトが破壊される可能性があり、上記上限値超過では粉体が飛散することがある。
【0093】
なお、上記ゼオライトと金属源とを含む混合分散液の分散媒の種類や固形分濃度、乾燥、焼成条件等の詳細は、後述の[本発明の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合した窒素酸化物浄化用触媒の製造方法]における記載と同様の条件を適用することができる。即ち、金属を担持したゼオライトを含む本発明の触媒は、後述の[本発明の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合した窒素酸化物浄化用触媒の製造方法]において、混合スラリー中に金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合しないこと以外は同様にして製造することができる。
【0094】
{水の吸着量}
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、上記のような金属を担持したゼオライトを含み、かつ触媒に対する25℃の水蒸気吸着等温線で、相対蒸気圧0.5における水の吸着量(以下、単に「水の吸着量」と称す場合がある。)が0.05(kg−水/kg−触媒)以上、0.2(kg−水/kg−触媒)以下であることを特徴とするものである。本発明の触媒において、該水の吸着量は、好ましくは0.18(kg−水/kg−触媒)以下、さらに好ましくは0.15(kg−水/kg−触媒)以下である。水の吸着量が上記上限より多いと、本発明の目的を達成し得ず、急激な温度上昇に伴う吸着水の発散による劣化の問題を解決し得ない。ただし、水の吸着量を過度に低くすると、窒素酸化物の浄化性能に劣る傾向があることから、本発明の触媒の水の吸着量の下限は好ましくは0.08(kg−水/kg−触媒)以上である。
【0095】
なお、本発明の触媒の水の吸着量は、水蒸気吸着量測定装置を用い、25℃における水の吸着等温線を測定し、相対蒸気圧が0.5のときの水の吸着量から求めることができる。
また、簡易的な方法として、次のような方法も用いることができる。
即ち、密閉容器内に飽和硝酸マグネシウム溶液を置き、密閉することにより25℃における平衡相対湿度52.9%(相対蒸気圧0.529)の雰囲気を作る。その雰囲気下に触媒を層高1cm以下の厚さにして12時間以上放置し、水を吸着させる。水吸着後の重量Wを測定後、150〜200℃で重量減少が起こらなくなるまで通常10分以上乾燥させ、乾燥後の重量Wを測定する。下記の式より水の吸着量を求める。
水の吸着量=[(水吸着後の重量W)−(乾燥後の重量W)]/(乾燥後の重量W)
【0096】
上記乾燥及び重量測定は、乾燥機等でサンプルを乾燥後に取り出して、低湿に保ったデシケーター内で冷ました後に重量を測定してもよいが、冷ますとき、及び重量測定時に水が吸着する可能性が高いことから、赤外線水分計等、重量を測定しながら赤外線等で加熱し乾燥できる機械を用いることが好ましい。
【0097】
前述のように、一般に、本発明で使用するゼオライトの水の吸着量は、通常、25℃の水蒸気吸着等温線で、相対蒸気圧0.5において、0.25〜0.35(kg−水/kg−ゼオライト)である。
これに対して、本発明は、触媒として水の吸着量を0.05(kg−水/kg−触媒)以上、0.2(kg−水/kg−触媒)以下としたものを用いると、浄化性能が優れることを見出すことにより達成されたものである。ゼオライトを含む本発明の触媒の水の吸着量を0.2(kg−水/kg−触媒)以下とするためには、本発明の触媒の水の吸着点を減らす必要がある。この水の吸着点を減らす方法としては、例えば、上述のように、金属担持工程での高温焼成により、ゼオライトの骨格構造の一部を壊す方法が挙げられる。一方、触媒が、ゼオライト以外に、平均粒子径が0.1〜10μmである金属酸化物粒子、及び/又は無機バインダー、好ましくは金属酸化物粒子と無機バインダーを含むことで、水の吸着量を0.2(kg−水/kg−触媒)以下とする方法も挙げられる。
【0098】
上記の金属酸化物粒子の金属としては、特に限定されるものではないが、アルミニウム、ケイ素、チタン、セリウム、ニオブが好ましい。また、リン酸アルミニウムのようにリン等を金属以外の元素を含んでも良い。これらの1種又は2種以上の金属の組み合わせがでもよい。
【0099】
また、金属酸化物粒子の平均粒子径は通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜3μmである。金属酸化物粒子の粒子径が大き過ぎるとゼオライトの粒子径より大きくなり、金属を担持したゼオライトが有効に働かず、浄化性能が低下する。なお、ここで金属酸化物粒子の粒子径とは、電子顕微鏡で金属酸化物粒子を観察した際の、任意の10〜30点の金属酸化物粒子の一次粒子径の平均値をいう。以下の無機バインダーの平均粒子径についても同様である。
【0100】
無機バインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、セリアゾルなどが用いられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ゼオライトへの固着能力があり、かつ安価であることから、シリカゾルが好ましい。
【0101】
該無機バインダーは、平均粒子径が5〜100nm、好ましくは4〜60nm、より好ましくは10〜40nmの無機酸化物のゾルであることが好ましい。この平均粒子径が上記上限を超える場合は、ゼオライト表面との相互作用が十分ではなく、無機バインダーの酸点の触媒作用の寄与などが不十分となり、触媒性能が低下する。また、平均粒子径の下限は特にないが、過度に小さな粒子径の無機バインダーを入手することは不可能である。実際の触媒中には無機酸化物ゾルは焼成によって、ゼオライト表面と反応したり、無機酸化物ゾル同士で反応し凝集体として観察される。
【0102】
また、該無機バインダーは、ナトリウム等のアルカリ金属含有量が0.2重量%以下、特に0.1重量%以下、とりわけ0.05重量%以下であることが好ましい。無機バインダーのアルカリ金属の含有量が多い場合は、ゼオライトの細孔内でイオン交換が進行し、銅等のゼオライト上の担持金属の分散を妨げ、触媒性能を低下させることがある。また、無機バインダーのアルカリ金属含有量は少なければ少ないほど好ましく、下限は0重量%である。
【0103】
なお、前記の金属酸化物粒子の金属酸化物と、上記無機バインダーとは化合物として一部重複しているが、本発明においては、平均粒子径が0.1〜10μmと、粒子径の大きいものを金属酸化物粒子とし、このような金属酸化物粒子よりも粒子径の小さい微粒子状のものを無機バインダーとする。
【0104】
このような、金属酸化物粒子及び/又は無機バインダー含むことにより水の吸着量を調整した本発明の触媒は、後述の本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法に従って製造することができる。
【0105】
特に本発明の触媒は、以下の理由から、金属酸化物粒子及び無機バインダーの両方を含むことが好ましい。
即ち、金属酸化物粒子を加えることにより、触媒全体の水の吸着量を下げることができる。但し、該金属酸化物粒子を加えた分、触媒全体としては、浄化性能が低下する。しかし、本発明者らの検討により、無機バインダーを適量加えることにより浄化性能が改善することがわかった。これは、無機バインダーがゼオライト表面を覆うことにより、銅や鉄等の担持金属の分散を向上させるとともに、酸点を付与することにより、触媒反応を加速させる効果があることによると考えられる。このようなことから、金属酸化物粒子を添加して触媒全体の水の吸着量を下げると共に、金属酸化物粒子の添加で低下した浄化性能を無機バインダーの添加で補うようにすることが好ましい。
なお、本発明の触媒が金属酸化物粒子と無機バインダーの両方を含む場合、触媒中の金属酸化物粒子と無機バインダーとの重量割合は、金属酸化物粒子:無機バインダー=1:100〜100:1、特に1:10〜10:1とすることが、これらを併用することによる上記効果を有効に得る上で好ましい。
【0106】
なお、従来、触媒の製造に当たり、混合スラリーを調製する際、粘度調整、あるいは分散媒の除去後の粒子形状、粒子径制御のために、添加剤として、上記の無機バインダーに相当する無機ゾルや、セピオライト、モンモリナイト、カオリンなどの粘土系添加剤等を、触媒性能を低下させないよう、好ましくはゼオライトに対して10重量%以下使用することが知られているが、ゼオライトの水の吸着量を相殺して、得られる触媒の水の吸着量を0.2(kg−水/kg−触媒)以下にすることを目的に使用されているわけではなく、従来行なわれている10重量%以下程度の量では、本発明の触媒のように、ゼオライト含有触媒の水の吸着量を0.2(kg−水/kg−触媒)以下とすることはできない。
【0107】
{ゼオライト含有量}
本発明の触媒のゼオライト含有量は、上記の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダー等の他の成分を含まない場合、前述の好適な金属担持量を満たす値となるが、特に、上記の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含む場合のゼオライトの含有量(担持金属を含むゼオライト含有量)は、好ましくは30〜99重量%、より好ましくは40〜95重量%、とりわけ好ましくは50〜90重量%である。
本発明の触媒中のゼオライト含有量が上記下限値以上であることにより、高い窒素酸化物浄化性能を得ることができ、上記上限値以下であることにより、金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーの配合で水の吸着量の調整が容易となる。
【0108】
なお、本発明の触媒は、上記のような金属酸化物粒子及び/又は無機バインダー以外に、前述の粘土系添加剤や、主鎖にポリシロキサン結合を有するオリゴマー又はポリマーであるシリコーン類(ポリシロキサン結合の主鎖の置換基の一部が加水分解をうけてOH基となったものも含む)、珪酸液由来成分等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0109】
{粒子径}
本発明の窒素酸化物浄化用触媒の粒子径は、平均一次粒子径として通常15μm以下、好ましくは10μm以下であり、下限は、通常0.1μmである。触媒の粒子径が大き過ぎると単位重量当たりの比表面積が小さくなるため、被処理ガスとの接触効率が悪く、従って、窒素酸化物の浄化効率が劣るものとなり、触媒の粒子径が小さ過ぎると取り扱い性が悪くなる。従って、前述の方法でゼオライトに金属を担持して得られた焼成後の触媒、或いは後述の本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法で得られた焼成後の触媒は、必要に応じて、ジェットミル等の乾式粉砕又はボールミル等の湿式粉砕を行ってもよい。なお、触媒の平均一次粒子径の測定方法は、前述のゼオライトの平均一次粒子径の測定方法と同様である。
【0110】
{BET比表面積}
本発明の窒素酸化物浄化用触媒の比表面積(BET法)は通常およそ150〜400m/gの範囲、好ましくは200〜350m/gの範囲であり、一般的に好ましいとされているSCR触媒としてのSAPOの比表面積よりも小さい。
【0111】
{NH吸着量}
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、前記のような水の吸着量の規定に加えて、以下のNH吸着量の測定法で測定されたNH吸着量(以下、単に「NH吸着量」と称す場合がある。)が、0.28mmol/g−触媒以上、特に0.38mmol/g−触媒以上であることが好ましい。
【0112】
<NH吸着量測定法>
200℃において、触媒にアンモニアを飽和になるまで吸着させた後、下記表2のガス1を流通させアンモニアによるNOの還元反応の平衡状態にする。その後、ガス2を流通させたときに、還元されたNOの総量(mmol)から、下記式よりNH吸着量(mmol/g−触媒)を求める。
NH吸着量=総NO量/触媒重量(g)
【0113】
【表2】

【0114】
本発明において、触媒のNH吸着量は、本発明の触媒の前記水の吸着量の規定を満足する範囲内において、SCR触媒としての活性点の量を示すと考えられる。すなわち、水の吸着量が本発明の範囲を超えるものでは、NH吸着量が多くても、水の吸着量が多く、水分を吸着、脱着を繰り返すような実用条件下では、劣化が起こり十分なSCR触媒活性は達成し得ない。一般にNH吸着量が多いと、水の吸着量が多い傾向が見られたが、本発明の触媒では、水の吸着量が少ないが、NH吸着量が比較的多く、SCR触媒活性が優れるという特徴を有する。
なお、本発明の触媒のNH吸着量の上限については、特にないが、触媒のアンモニア吸着点の上限から通常2mmol/g−触媒程度である。
【0115】
なお、上記のNH吸着量の測定法では、まず、アンモニア濃度1000ppmのアンモニアガスと空気との混合ガスを30分流通させることにより、触媒にアンモニアを吸着させ、次いで、前記表2に記載した組成のガス1を20分流通させることにより、触媒上の余剰のアンモニアを脱着させて除去する。その後、前記表2に記載した組成のガス2を流通させて触媒上のアンモニアのみを用いて、NO還元反応を行う。反応管から流出するガス中のNO濃度が反応管に導入したガス2のNO濃度と等しくなるまでガス2を流通させてNO還元反応を行い、このNO還元反応(4NO+4NH+O→4N+6HO)において還元処理された一酸化窒素(NO)の総量(mmol)(総NO量)から、上記式より余剰のアンモニアを脱着させた後の触媒上に吸着されているNH吸着量(mmol/g−触媒)を算出することができる。
上記のアンモニアの吸着、余剰アンモニアの脱着及びNO還元反応は、すべて200℃の温度条件下、ガス流通SV=100000/hで行われる。
【0116】
{X線回折ピーク強度比}
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、以下の方法により、Cu−Kα線をX線源に用いたX線回折測定を行った際、回折角(2θ)が20.4度以上、20.8以下の範囲に観察される回折ピーク強度に対する、21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピーク強度との比(以下、単に「回折ピーク強度比」と称す場合がある。)が0.2以上、1.2以下であることを特徴とする。
【0117】
<X線回析測定方法>
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度=3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
試料の調製:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕した試料約700mgを、同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにする。
強度比の算出:回折ピークが存在しないベースラインからのピークの高さを回折ピーク強度とし、回折角(2θ)が20.4度以上、20.8度以下の範囲に観察される回折ピークの高さに対する、21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピークの高さの比を求める。
【0118】
CuKαをX線源に用いたX線回折測定を行った際、回折角(2θ)が20.4度以上、20.8度以下の範囲に観察される回折ピークは「CHAゼオライトに由来する回折ピーク」である。また、21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピークは、「金属を担持したゼオライトを焼成等の熱処理したことにより生じた回折ピーク」である。
本発明の触媒では、この回折角(2θ)が20.4度以上、20.8度以下の範囲の回折ピーク強度に対する、21.0度以上、21.4度以下の範囲の回折ピーク強度との比が、通常0.2以上、1.2以下、好ましくは0.4以上、1.0以下である。この回折ピーク強度比が上記下限未満であると、触媒の水吸着量が高くなって、触媒性能が悪くなる。また、この回折ピーク強度比が上記上限を超えると、触媒のNH吸着量が少なくなり、触媒性能が悪くなる。
【0119】
[金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含む窒素酸化物浄化用触媒の製造方法]
本発明の窒素酸化物浄化用触媒は、金属担持ゼオライトと、前述の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含むことにより製造することも可能である。
すなわち、前述の担持金属の金属源、ゼオライト、並びに平均粒子径0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを分散媒と混合した混合スラリーを調製し、この混合スラリーを乾燥させて分散媒を除去し、得られた乾燥粉体を焼成する本発明の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法により、本発明の触媒を製造することができる。
【0120】
該分散媒とは、ゼオライトを分散させるための液体であり、分散媒の種類は、特に限定されるものではないが、通常、水、アルコール、ケトンなどの1種又は2種以上が使用され、加熱時の安全性の観点から、分散媒は水を使用することが望ましい。
【0121】
混合スラリー調製の際の混合順序は、特に制限されるものではないが、通常、まず金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含む分散媒に、金属源を溶解又は分散させ、これにゼオライトを混合するのが好ましい。
【0122】
上記の成分を混合して調製されるスラリー中の固形分の割合は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。スラリー中の固形分の割合が前記下限値未満では、除去すべき分散媒の量が多くて、分散媒除去工程に支障をきたす場合がある。また、スラリー中の固形分の割合が前記上限値超過では、金属や、ゼオライト以外の他の成分がゼオライト上に均一に分散しにくくなる傾向がある。
なお、混合スラリーの調製に用いるゼオライトは、前述の如く、テンプレートを含むゼオライトであってもよく、テンプレートを除去したゼオライトであってもよい。
【0123】
混合スラリーの調合温度は通常0℃以上、好ましくは10℃以上、通常80℃以下、好ましくは60℃以下である。
ゼオライトは通常、分散媒と混合すると発熱することがあり、調合温度が上記上限値を超えるとゼオライトが酸又はアルカリにより分解する可能性がある。調合温度の下限は分散媒の融点である。
【0124】
また、混合スラリーの調合時のpHは特に限定されないが、通常3以上、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、通常10以下、好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。pHを前記下限値未満あるいは上限値超過として調合するとゼオライトが破壊される可能性がある。
【0125】
なお、この混合スラリー中には、本発明の触媒に含有されていてもよい、前述の粘土系添加剤や、主鎖にポリシロキサン結合を有するオリゴマー又はポリマーであるシリコーン類(ポリシロキサン結合の主鎖の置換基の一部が加水分解をうけてOH基となったものも含む)、珪酸液等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0126】
混合スラリー調合時の混合の方法としては、十分にゼオライトと金属源及びその他の成分が混合あるいは分散する方法であればよく、各種公知の方法が用いられるが、具体的には攪拌、超音波、ホモジナイザー等が用いられる。
【0127】
<混合スラリーの乾燥>
上記混合スラリーの乾燥方法としては、混合スラリー中の分散媒を短時間で除去できる方法であれば特に限定されないが、好ましくは混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、短時間に除去できる方法である噴霧乾燥法を採用することが好ましい。より好ましくは混合スラリーを均一に噴霧した状態を経て、高温の熱媒体と接触させて除去する方法であり、更に好ましくは、高温の熱媒体として熱風と接触させ乾燥して分散媒を除去することにより、均一な粉体を得ることのできる方法を採用することが好ましい。
【0128】
本発明において、混合スラリーの乾燥に噴霧乾燥を適用する場合、噴霧の方法としては、回転円盤による遠心噴霧、圧力ノズルによる加圧噴霧、二流体ノズル、四流体ノズル等による噴霧などを用いることができる。
【0129】
噴霧したスラリーは、加熱した金属板や、高温ガスなどの熱媒体と接触することにより分散媒が除去される。いずれの場合も、熱媒体の温度は特に限定されないが、通常80℃以上、350℃以下である。熱媒体の温度が上記下限値未満では混合スラリーから十分に分散媒が除去できない場合があり、また上記上限値超過では金属源が分解し、金属酸化物が凝集する場合がある。
【0130】
噴霧乾燥機を用いた場合の乾燥条件については特に限定されないが、通常熱媒体であるガス入口温度を約200〜300℃、ガス出口温度を約60〜200℃として実施する。
【0131】
混合スラリーを乾燥して分散媒を除去するに要する乾燥時間は、好ましくは60分以下であり、より好ましくは10分以下、更に好ましくは1分以下、特に好ましくは10秒以下であり、より短時間で乾燥することが望ましい。この乾燥時間の下限は特に限定されるものではないが、通常0.1秒以上である。
【0132】
前記上限値超過の時間をかけて乾燥を行うと、金属を担持させるゼオライトの表面に金属源が凝集し、不均一に担持されるため、触媒活性低下の原因となる。また、一般的に金属源は酸性、又はアルカリ性を呈するため、分散媒の存在下でそれらの金属を含んだ状態で高温条件に長時間曝されると、金属原子を担持させたゼオライトの構造の分解が促進されると考えられる。そのため乾燥時間が長くなるほど触媒活性が低下すると考えられる。
なお、ここで、混合スラリーから分散媒を除去するための乾燥時間とは、被乾燥物中の分散媒の量が1重量%以下になるまでの時間をいい、水が分散媒の場合の乾燥時間は、混合スラリーの温度が80℃以上になった時点から、被乾燥物中の水の含有量が1重量%以下になるまでの時間をいう。水以外の分散媒の場合の乾燥時間は、その分散媒の常圧における沸点より20℃低い温度になった時点から、被乾燥物中の分散媒の含有量が1重量%以下になるまでの時間をいう。
【0133】
上記混合スラリーの乾燥により分散媒を除去して得られる乾燥粉体の粒子径は特に限定されないが、乾燥を短時間で終了させることができるよう、通常1mm以下、好ましくは200μm以下で、通常2μm以上となるように、混合スラリーの乾燥を行うことが好ましい。
【0134】
<乾燥粉体の焼成>
上記乾燥により得られた乾燥粉体は、次いで焼成することによって本発明の触媒を得る。
【0135】
乾燥粉体の焼成方法は特に限定されず、マッフル炉、キルン、流動焼成炉などを用いることができるが、気体の流通下に焼成する方法が好ましい。
【0136】
焼成時の流通気体としては、特に限定されないが、空気、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン、又はこれらの混合気体などを用いることができ、好ましくは空気が用いられる。また流通気体は水蒸気を含んでいてもよい。焼成は、還元雰囲気で行うこともでき、その場合、水素を流通気体中に混合したり、シュウ酸等の有機物を乾燥粉体に混ぜて焼成することができる。
【0137】
気体の流通速度は特に限定されないが、被焼成粉体1gあたりの気体の流通量は、通常0.1ml/分以上、好ましくは5ml/分以上、通常100ml/分以下、好ましくは20ml/分以下である。粉体1gあたりの気体の流通量が上記下限値未満では乾燥粉体中に残存する酸が加熱時に除去されず、ゼオライトが破壊される可能性があり、上記上限値超過の流通量では粉体が飛散することがある。
【0138】
焼成温度は特に限定されないが、通常400℃以上、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、更に好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上であり、通常1100℃以下、好ましくは1000℃以下である。前述のような、高温焼成によるゼオライト構造の一部破壊により、触媒の水吸着量を0.2(kg−水/kg−触媒)以下とする方法の場合、焼成温度は通常850℃以上、好ましくは900℃以上であり、好ましくは1000℃以下で焼成を行う。
【0139】
焼成時間は、焼成温度によっても異なるが、通常1分〜3日、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜10時間である。焼成時間が短か過ぎると金属源が分解しないことがあり、一方で、徒に焼成時間を長くしても焼成による効果は得られず、生産効率が低下する。
【0140】
焼成後、得られた触媒は、所望の粒子径とするために、前述の如く、ジェットミル等の乾式粉砕又はボールミル等の湿式粉砕を行ってもよい。
【0141】
本発明において、前述のような金属担持工程における高温焼成によって金属担持ゼオライトの水の吸着量が所定量の範囲となった場合、前述のような金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合して触媒としての水の吸着量を調整する必要は無いが、触媒を使用する際に必要な程度の金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを少量配合することも可能である。
【0142】
また、本発明においては、焼成により水吸着量が低下した触媒に、金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合することで水の吸着量を更に低下させ、所定の範囲にすることももちろん可能である。また、金属担持ゼオライトに金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合する場合、金属担持後焼成を行い、金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合した後、再度焼成しても良いが、金属担持工程で焼成せず、金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合した後、焼成しても良いし、金属担持工程で焼成した場合、金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを配合した後は焼成しない方法を採用することもできる。
【0143】
[窒素酸化物浄化用素子]
本発明の触媒は、或いはこの触媒を含む触媒混合物は造粒、成形(成膜を含む)等により所定の形状とすることにより、各種分野における窒素酸化物浄化用素子として使用することができる。特に、本発明の触媒を用いた本発明の窒素酸化物浄化用素子(以下、「本発明の浄化用素子」と称す場合がある。)は、自動車用排ガス触媒(SCR触媒)として有用であるが、その用途は何ら自動車用に限定されるものではない。
【0144】
本発明の触媒の造粒、成形の方法は特に限定されるものではなく、各種公知の方法を用いて行うことができる。通常、本発明の触媒を含む触媒混合物を成形し、成形体として用いる。成形体の形状としては好ましくはハニカム状が用いられる。
【0145】
また、自動車用等の排ガスの浄化に用いられる場合、本発明の浄化用素子は、例えば、本発明の窒素酸化物浄化用触媒をシリカ、アルミナ等の無機バインダーと混合してスラリーを調製し、これをコージェライト等の無機物で作製されたハニカム状の成形体の表面に塗布し、焼成することにより作製される。
また、本発明の窒素酸化物浄化用触媒をシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことにより、好ましくはハニカム状の浄化用素子として製造することもできる。
【0146】
[触媒の使用方法]
本発明の窒素酸化物浄化用触媒又は窒素酸化物浄化用素子は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて排ガス中の窒素酸化物の浄化に用いることができる。
【0147】
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。
窒素酸化物含有排ガスとしては、具体的には、本ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の窒素酸化物含有排ガスが挙げられる。
【0148】
本発明の窒素酸化物浄化用触媒又は窒素酸化物浄化用素子を用いて窒素酸化物含有排ガスを処理する際の、本発明の触媒又は浄化用素子と排ガスとの接触条件としては特に限定されるものではないが、被処理排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは100000/h以下である。また、接触時の排ガス温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上であり、通常700℃以下、好ましくは500℃以下である。
【0149】
なお、このような排ガス処理時には、触媒又は浄化用素子に、還元剤を共存させて使用することもでき、還元剤を共存させることにより、浄化を効率よく進行させることができる。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン類、一酸化炭素、炭化水素、水素等の1種又は2種以上が用いられ、好ましくはアンモニア、尿素が用いられる。
【0150】
本発明の触媒又は浄化用素子を使用して、排ガス中の窒素酸化物の浄化を行う浄化工程の後段の工程に、窒素酸化物の浄化で消費されなかった余剰の還元剤を酸化する触媒による還元剤の分解工程を設けて、処理ガス中の還元剤量を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、そのゼオライト及び酸化触媒として、前述の本発明で用いるゼオライト、及び本発明の触媒を用いることもできる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0152】
尚、以下の実施例及び比較例において、下記の物性測定、処理については、下記条件で行った。
【0153】
[組成分析]
試料をアルカリ融解後、酸溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES法)により分析した。
【0154】
[触媒活性の評価]
調製した触媒をプレス成形後、破砕して粒子径600〜1000μmに整粒した。整粒した各触媒1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。この触媒を充填した反応管に、窒素酸化物含有ガスとして、温度200℃で、NO:350ppm、NH:385ppm、O:15vol%、HO:5vol%を含有する窒素ガスを空間速度SV=100000/hで流通させながら、触媒層を加熱した。反応管出口ガスのNO濃度(出口NO濃度)が一定となったとき、下記式で、NO浄化率を算出し、触媒の窒素酸化物除去活性とした。
NO浄化率={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)×100
【0155】
[水蒸気吸着等温線]
試料を120℃で5時間、真空排気した後、25℃における水蒸気吸着等温線を水蒸気吸着量測定装置(ベルソーブ18:日本ベル(株)社製)により以下の条件で測定した。
空気恒温槽温度 :50℃
吸着温度 :25℃
初期導入圧力 :3.0torr
導入圧力設定点数 :0
飽和蒸気圧 :23.755torr
平衡時間 :500秒
【0156】
[簡易水吸着量測定法]
密閉容器内に飽和硝酸マグネシウム溶液を置き、25℃における平衡相対湿度52.9%(相対蒸気圧0.529)の雰囲気を作った。その雰囲気下に触媒を層高0.5cmの厚さにして12時間放置し、水を吸着させた。水吸着後の重量Wを測定後、赤外線水分計を用い、200℃で90分乾燥させ、乾燥後の重量Wを測定し、下記の式より水の吸着量を求めた。
水の吸着量=[(水吸着後の重量W)−(乾燥後の重量W)]/(乾燥後の重量W)
【0157】
[NH吸着量測定法]
調製した触媒をプレス成形後、破砕して粒子径600〜1000mmに整粒した。整粒した各触媒1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層を温度200℃の恒温条件下とし、この反応管に、空間速度SV=100000/hでアンモニア濃度1000ppmのアンモニアガスと空気との混合ガスを30分流通させてアンモニアを触媒に吸着させた後、下記表3に示した組成のガス1を20分流通させて触媒上の余剰のアンモニアを脱着させた。その後、ガス1からアンモニアガスの供給のみを停止して、下記表3に示した組成のガス2を流通させて、触媒上に吸着されているアンモニアのみを使用してNO還元反応を行った。
反応管から流出するガス中のNO濃度が反応管に導入したガス2のNO濃度と等しくなるまで測定用ガスを流通させてNO還元反応を行い、このNO還元反応において還元処理された一酸化窒素(NO)の総量(mmol)(総NO量)から、下記式よりNH吸着量(mmol/g−触媒)を算出した。
NH吸着量=総NO量/反応管に充填した触媒重量(g)
【0158】
【表3】

【0159】
[X線回析測定法]
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度=3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
試料の調製:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕した試料約700mgを、同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにする。
強度比の算出:回折ピークが存在しないベースラインからのピークの高さを回折ピーク強度とし、回折角(2θ)が20.4度以上20.8度以下の範囲に観察される回折ピーク高さに対する21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピークのピーク高さの比を求める。
【0160】
[実施例1]
水253gに85%リン酸80.8g及び擬ベーマイト(25%水含有、サソール製)68gをゆっくりと加え、攪拌した。これをA液とした。A液とは別に、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)18g、モルホリン43.5g、トリエチルアミン55.7g、及び水253gを混合した液を調製した。これをA液にゆっくりと加えて、3時間攪拌し、水性ゲルを得た。該水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌させながら30℃から190℃まで、16℃/時の昇温速度で直線的に昇温し、最高到達温度190℃で50時間反応させた。最高到達温度に昇温する過程で、80℃から120℃の範囲におかれた時間は2.5時間であった。反応後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、120℃で乾燥後に、乾式粉砕を行った。その後560℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
【0161】
こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/nm)であった。
また、このゼオライトの平均一次粒子径は4μmで、ゼオライト中のAl、Si及びP原子の存在割合は、前記式(I)〜(III)のx1、y1、z1の値で、x1=0.15、y1=0.52、z1=0.33であった。
また、このゼオライトの水の吸着量は0.286(kg−水/kg−ゼオライト)であり、相対蒸気圧0.04以上0.09以下の範囲で相対蒸気圧が0.05変化したときの水の吸着量は0.07(kg−水/kg−ゼオライト)である。
【0162】
50gのシリカゾル(スノーテックスAK−L、日産化学工業社製、粒子径40−50nmの凝集体ゾル)に1.8gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)を加えて溶解し、10gの上記ゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリー(固形分濃度36重量%)とした。この水スラリーを170℃の金属板上に噴霧して乾燥させ、触媒前駆体とした。乾燥に要した時間は10秒以下であった。この触媒前駆体を触媒前駆体1gあたり12ml/分の空気流通中で、800℃で2時間焼成し、触媒1を得た。
触媒1について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0163】
[実施例2]
10gのシリカゾル(スノーテックスO、日産化学工業社製、粒子径10−20nmの凝集体ゾル)を20gの水により希釈し、その後、1.8gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)を加えて溶解させた。次に、8gの酸化チタン粉末(帝国化学社製、AW−200)及び10gの実施例1に記載されたゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリー(固形分濃度43重量%)とした。この水スラリーを実施例1と同様に170℃の金属板上に噴霧して乾燥させ、触媒前駆体とした。乾燥に要した時間は10秒以下であった。この触媒前駆体を触媒前駆体1gあたり12ml/分の空気流通中で、800℃で2時間焼成し、触媒2を得た。
触媒2について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0164】
[実施例3]
27.8gのシリカゾル(スノーテックスO、日産化学工業社製、粒子径10−20nmの凝集体ゾル)を15gの水により希釈し、その後、1.8gの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)を加えて溶解させた。次に、8gのベーマイト粉末(Condea社製、平均粒子径20μm)及び10gの実施例1に記載されたゼオライトを加えてさらに攪拌し、水スラリー(固形分濃度38重量%)とした。この水スラリーを実施例1と同様に170℃の金属板上に噴霧して乾燥させ、触媒前駆体とした。乾燥に要した時間は10秒以下であった。この触媒前駆体を触媒前駆体1gあたり12ml/分の空気流通中で、800℃で2時間焼成し、触媒3を得た。
触媒3について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0165】
[実施例4]
国際公開WO2010/084930号パンフレットの実施例1Aに開示されている方法により、銅担持SAPO触媒(平均粒子径3μm)を調製した。その後、乳鉢で5gの銅担持SAPO触媒と5gの石英粉を混合し、触媒4を得た。
触媒4について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0166】
[実施例5]
水192.6g、75%リン酸76.8g、及び擬ベーマイト(25%水含有、サソール社製)57.1gを混合し、3時間攪拌した。この混合液にfumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)15.1g、及び水228.1gを加え、10分間攪拌した。この混合液にモルホリン37g、及びトリエチルアミン42.9gを加え、1.5時間攪拌して水性ゲルを得た。
この水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら最高到達温度190℃まで昇温時間10時間で昇温し、190℃で24時間保持した。反応後冷却して、濾過、水洗した後、90℃で減圧乾燥した。得られた乾燥粉体を粒子径3〜5μmに粉砕し、その後750℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。
【0167】
こうして得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/nm)であった。
また、このゼオライトの平均一次粒子径は3μmで、ゼオライト中のAl、Si及びP原子の存在割合は、前記式(I)〜(III)のx1、y1、z1の値で、x1=0.17、y1=0.52、z1=0.31であった。
【0168】
以上のようにして得られたゼオライト32kgに5.0kgの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)と、シリカゾル(PL−1、扶桑化学工業、平均粒子径15nmの凝集体ゾル)2.7kgと、52kgの純水を加えて攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを噴霧乾燥機で乾燥した。この乾燥粉体を空気流通中で、860℃で2時間焼成し、触媒5を得た。触媒5の銅の担持量は4.0重量%であった。
【0169】
この触媒5についてX線回析測定を行ったところ、20.4度以上、20.8以下の範囲の回折ピーク強度に対する、21.0度以上、21.4度以下の回折ピーク強度の比は0.75であった。
触媒5のX線回析測定チャートを図1に示す。
触媒5について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0170】
[実施例6]
実施例5と同様にゼオライトを合成し、得られたゼオライト32kgに、5kgの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)と、シリカゾル(PL−1、扶桑化学工業、平均粒子径15nmの凝集体ゾル)2.7kgと、52kgの純水を加えて攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを噴霧乾燥機で乾燥した。この乾燥粉体を空気流通中で、870℃で2時間焼成し、触媒6を得た。触媒6の銅の担持量は4.0重量%であった。
触媒6について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0171】
[比較例1]
実施例5と同様にゼオライトを合成し、得られたゼオライト32kgに、3.77kgの酢酸銅(II)一水和物(キシダ化学社製)と、シリカゾル(PL−1、扶桑化学工業、平均粒子径15nmの凝集体ゾル)2.7kgと、52kgの純水を加えて攪拌し、水スラリーとした。この水スラリーを噴霧乾燥機で乾燥した。この乾燥粉体を空気流通中で、930℃で2時間焼成し、触媒7を得た。触媒7の銅の担持量は3.0重量%であった。
触媒7について、上記条件に基づきNO浄化率と水の吸着量及びNH吸着量を調べ、結果を表4に示した。
【0172】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を担持したゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒であって、ゼオライトが骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子を含み、該触媒に対する25℃、相対蒸気圧0.5における水の吸着量が0.05(kg−水/kg−触媒)以上、0.2(kg−水/kg−触媒)以下であることを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項2】
骨格構造に少なくともケイ素原子、アルミニウム原子、及びリン原子を含むゼオライトに金属を担持してなる窒素酸化物浄化用触媒であって、Cu−Kα線をX線源に用いたX線回折測定を行った際、回折角(2θ)が20.4度以上、20.8以下の範囲に観察される回折ピーク強度に対する、21.0度以上、21.4度以下の範囲に観察される回折ピーク強度の比が0.2以上、1.2以下であることを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項3】
ゼオライトの骨格構造において、Si/(Si+Al+P)(モル比)が0.10以上であるである請求項1又は2に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項4】
以下の方法で測定されるNH吸着量が、0.28mmol/g−触媒以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
<NH吸着量測定法>
200℃において、触媒にアンモニアを飽和になるまで吸着させた後、下記表1のガス1を流通させアンモニアによるNOの還元反応の平衡状態にする。その後、ガス2を流通させたときに、還元されたNOの総量(mmol)から、下記式よりNH吸着量(mmol/g−触媒)を求める。
NH吸着量=総NO量/触媒重量(g)
【表1】

【請求項5】
平均粒子径が0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項6】
平均粒子径が0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び無機バインダーを含むことを特徴とする請求項5に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項7】
前記ゼオライトの含有量が30〜99重量%であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項8】
前記ゼオライトの構造が、IZAが定めるコードでCHAであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項9】
担持された前記金属が、銅及び/又は鉄であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項10】
前記金属酸化物の金属が、アルミニウム、ケイ素、チタン、セリウム、及びニオブよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5ないし9のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項11】
前記無機バインダーが、平均粒子径5〜100nmの無機酸化物ゾルの凝集体であることを特徴とする請求項5ないし10のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒が、ハニカム状の成形体に塗布されてなることを特徴とする窒素酸化物浄化用素子。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の窒素酸化物浄化用触媒を成形してなることを特徴とする窒素酸化物浄化用素子。
【請求項14】
金属を担持したゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒の製造方法であって、金属源、ゼオライト、並びに平均粒子径0.1〜10μmの金属酸化物粒子及び/又は無機バインダーを含む混合スラリーを乾燥させ、得られた乾燥粉体を焼成することを特徴とする窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。
【請求項15】
400℃以上の温度で焼成することを特徴とする請求項14に記載の窒素酸化物浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−148272(P2012−148272A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283509(P2011−283509)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】