説明

窒素酸化物蓄積材料および該材料から製造された窒素酸化物蓄積触媒

マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属およびこれらの混合物から構成されている群から選択された元素の蓄積化合物をベースとし、この蓄積化合物のための支持材料として酸化セリウムでドープされた均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物を有する窒素酸化物蓄積材料が記載されている。この蓄積材料を用いての窒素酸化物蓄積触媒は、幅広い作業範囲、高い蓄積効率および良好な耐老化性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物のための蓄積材料および該材料から製造された希薄混合気燃焼エンジンの排気ガス中の窒素酸化物の濃度を減少させるための窒素酸化物蓄積触媒に関する。
【0002】
種々の組成の窒素酸化物蓄積触媒は、特許刊行物、例えば本出願人の最初の欧州特許出願公開第1317953号明細書A1(米国特許第6858193号明細書B2に対応する)の記載から公知である。
【0003】
欧州特許出願公開第1317953号明細書A1に記載の窒素酸化物蓄積触媒は、支持材料上の酸化活性成分、例えば白金およびマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類およびこれらの混合物から構成される群から選択された元素の酸化物、炭酸塩または水酸化物をベースとする窒素酸化物蓄積成分を有する。欧州特許出願公開第1317953号明細書A1の記載によれば、セリウム−ジルコニウム混合酸化物は、窒素酸化物蓄積成分のための支持材料として使用されている。温度窓の幅、蓄積効率および老化安定性に関連する窒素酸化物蓄積触媒の優れた性質は、主にMg−Al混合酸化物の全質量に対する、1〜40質量%の酸化マグネシウム含量を有する均質なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物からなる支持材料をベースとし、この場合この支持材料は、白金のために使用される。更に、蓄積触媒の好ましい変形は、欧州特許出願公開第1317953号明細書A1の記載によれば、白金触媒の作用を有するMg−Al混合酸化物が含浸によって酸化セリウムまたは酸化プラセオジミウムで付加的にドープされることにより得られる。
【0004】
本出願人のドイツ連邦共和国特許出願公開第19813655号明細書A1(米国特許第6338831号明細書B1に対応する)には、マグネシウム−アルミニウム混合酸化物(MgO・Al23)を有する、酸化硫黄のための蓄積材料が開示されており、この場合この蓄積材料は、1.1:1を上廻る酸化マグネシウム対酸化アルミニウムのモル比を有し、化学量論的に過剰量で存在する酸化マグネシウムは、蓄積材料中に微細に分配された形で均一に分布されている。
【0005】
汚染物質を変換することの増大した要求および触媒の耐久性ならびに同じ触媒性能を維持しながら貴金属含量の減少についての経済的に動機付けされた望みにより、触媒を継続的にさらに開発することが必要とされている。それ故に、本発明の目的は、欧州特許出願公開第1317953号明細書A1の記載に基づいて、改善された窒素酸化物蓄積材料およびこの材料を用いて製造される窒素酸化物蓄積触媒を提供し、さらに改善された汚染物質の変換率および/または貴金属の減少された使用を示すことであった。本発明の工業的背景および従来技術に関連して、引用された特許出願が参照されてよい。
【0006】
本発明の詳細な説明に入る前に、本発明にとって重要である幾つかの用語は、次に定義される:
本発明の目的のためには、混合酸化物は、原子レベルで混合物を形成する少なくとも2つの成分から構成されている酸化物の固体の粉末材料である。この用語は、酸化物の粉末材料の物理的混合物を含む。本発明により触媒の重要な1つの成分は、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの均一な混合酸化物である。この混合酸化物は、本発明の目的のためにMg−Al混合酸化物と呼称される。このMg−Al混合酸化物の組成は、測定精度内で一定であり、即ち粉末粒子の断面に亘って均一である。
【0007】
以下、窒素酸化物蓄積材料と窒素酸化物蓄積成分とは、区別される。窒素酸化物蓄積成分は、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類またはこれらの混合物の酸化物、炭酸塩または水酸化物であり、これらの窒素酸化物蓄積成分は、基本的な性質のために、排気ガスの酸性窒素酸化物と反応することができ、硝酸塩を形成することができ、こうして硝酸塩を蓄積することができる。窒素酸化物蓄積材料は、極めて微細に分配された形で適当な支持材料上に付着された蓄積成分を有し、排気ガスとの大きな相互作用領域を形成する。
【0008】
更に、触媒の重要な成分は、酸素蓄積材料、例えば酸化セリウムをベースとする材料である。酸化セリウムは、酸化状態を+3から+4へ変化する能力および逆の場合も同様に変化する能力のために、酸化セリウムは、希薄混合気燃焼による排気ガス(過剰量の酸素)中の酸素を蓄積することができ、過濃混合気燃焼による排気ガス(不足量の酸素)中で再び酸素を放出することができる。
【0009】
今や、欧州特許出願公開第1317953号明細書A1の窒素酸化物蓄積触媒の性能は、酸化セリウムおよび/または酸化プラセオジミウムでドープされた均一なMg−Al混合酸化物が支持材料として酸化活性成分の白金に対して使用されるだけでなく、窒素酸化物蓄積成分に対しても使用される場合にさらに改善されることができる。
【0010】
それ故に、本発明は、改善された窒素酸化物蓄積材料およびこの蓄積材料を用いて製造された窒素酸化物蓄積触媒を提供する。
【0011】
本発明による窒素酸化物蓄積材料は、希土類酸化物でドープされた、支持材料としての均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物(Mg−Al混合酸化物)上に少なくとも1つの窒素酸化物蓄積成分を有し、この場合マグネシウム−アルミニウム混合酸化物は、マグネシウム−アルミニウム混合酸化物の全質量に対して酸化マグネシウム1〜30質量%を含有する。
【0012】
均一なMg−Al混合酸化物は、有利にMg−Al混合酸化物の全質量に対して酸化マグネシウム5〜28質量%未満、殊に10〜25質量%を含有する。それ故に、蓄積材料の酸化マグネシウムは、全く均一のマグネシウム−アルミニウム混合酸化物として存在し、一方で、遊離酸化アルミニウムは、過剰量で存在する。
【0013】
本発明による蓄積材料に適した希土類酸化物は、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、ランタン、サマリウムおよびこれらの混合物から構成されている群から選択された希土類金属の酸化物、殊に酸化セリウムおよび/または酸化プラセオジミウムおよび殊に酸化セリウムを含む。蓄積材料中の希土類酸化物の濃度は、好ましくは支持材料の全質量に対して5〜15質量%である。
【0014】
窒素酸化物蓄積成分として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属およびこれらの混合物から構成されている群から選択された元素の酸化物、炭酸塩または水酸化物は、好ましい。
【0015】
本発明による窒素酸化物蓄積触媒は、酸化活性成分としての白金および記載された蓄積材料を含み、この場合には、同様に希土類酸化物でドープされた均一なMg−Al混合酸化物は、白金のための支持材料として役立つ。
【0016】
本発明の第2の好ましい実施態様は、白金が窒素酸化物蓄積材料それ自体に塗布され、触媒が付加的に酸化セリウムをベースとする酸素蓄積材料を含有する場合に得られる。
【0017】
Mg−Al混合酸化物中に存在する酸化マグネシウムは、それ自体、基本的な性質のために、窒素酸化物のための蓄積成分として適している。しかし、均一なMg−Al混合酸化物による窒素酸化物の貯蔵に関する本発明者の研究は、不満足な貯蔵作用を示した。Mg−Al酸化物が他の貯蔵成分、殊に酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウムをベースとする成分のための支持材料として使用された場合にのみ、なお定義することができるNOxの蓄積効率の著しい改善が意外なことに観察された。
【0018】
酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムは、適当な支持材料を得るために均一な混合酸化物形成させるのに重要であることが見出された。酸化マグネシウムおよびγ−酸化アルミニウムから形成された混合酸化物において、マグネシウムイオンは、アルミニウムイオンの格子側の部分を占める。この混合酸化物は、良好な熱安定性を有する。しかし、熱安定性は、酸化マグネシウムが混合酸化物の全粒子に亘って極めて均一に分布されていることを保証することに注意する場合にのみ最適である。酸化マグネシウムだけを酸化アルミニウム粒子表面内に導入することは、望ましい熱安定性を生じない。
【0019】
このような材料は、有利にゾルゲル法によって製造される。このような方法は、例えば米国特許第6217837号明細書B1中に記載されている。アルコキシド混合物を用いて、その後に水で加水分解する、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19503522号明細書A1に記載の方法は、同様に適している。
【0020】
酸化マグネシウムの適当な前駆体化合物での酸化アルミニウムの後形成による含浸および前駆体化合物を酸化マグネシウムへ変換するためのか焼は、常用のか焼温度で均一なMg−Al混合酸化物を導かない。均一なMg−Al混合酸化物をか焼温度の上昇によって強制的に形成させることを試みた場合には、触媒の適用に殆んど適していない僅かな表面積の混合酸化物が得られる。
【0021】
他面、均一なMg−Al混合酸化物は、40m2/gを上廻る、殊に100〜200m2/gの比表面積を有する。130〜170m2/gの比表面積を有するMg−Al混合酸化物が特に有利に記載される。
【0022】
本発明によれば、窒素酸化物蓄積成分および酸化活性成分のための支持材料は、均一なMg−Al混合酸化物を希土類酸化物でドーピングすることによって得られる。本発明の目的のためには、"ドーピング"は、Mg−Al混合酸化物の比表面積を他の酸化物で均一に塗布することを意味する。これは、例えばMg−Al混合酸化物を望ましい希土類酸化物の前駆体化合物で含浸し、乾燥し、含浸された材料をか焼することによって達成されうる。か焼は、好ましくは、1〜5時間で400〜600℃の温度で実施される。良好な結果は、500℃の温度および2時間を用いて得られた。
【0023】
Mg−Al混合酸化物をドーピングするための希土類酸化物の適当な前駆体化合物は、例えば希土類金属の硝酸塩および酢酸塩である。
【0024】
窒素酸化物蓄積材料を製造するために、蓄積成分は、支持材料に塗布される。これは、再度支持材料を蓄積成分の前駆体化合物で含浸することによって有利に行なわれる。含浸された支持材料を乾燥し、か焼することにより、完成された蓄積材料が生じる。乾燥およびか焼の条件は、希土類酸化物でのMg−Al混合酸化物のドーピングの条件と同一であることができる。
【0025】
蓄積触媒を形成させるために、蓄積材料は、酸化活性成分、殊に白金と組み合わされ、この場合希土類酸化物でドープされたMg−Al混合酸化物は、同様に白金のための支持材料として使用される。蓄積成分および酸化活性成分の双方のために本発明により支持材料を使用することは、第1の刊行物の欧州特許出願公開第1317953号明細書A1に記載の触媒と比較して老化後に窒素酸化物蓄積触媒の触媒活性の著しい改善を生じ、この場合白金だけは、酸化セリウムでドープされたMg−Al混合酸化物上に支持されていた。
【0026】
希土類酸化物でドープされかつ白金のための支持材料として役立つ均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物は、マグネシウム−アルミニウム混合酸化物の全質量に対して酸化マグネシウム1〜30質量%、特に有利に5〜28質量%未満、殊に10〜25質量%を含有する。ドーパントとして存在する希土類酸化物の量は、好ましくは支持材料の全質量に対して5〜15質量%である。
【0027】
蓄積触媒の2つの主要な実施態様は、区別することができる。第1の実施態様において、白金および蓄積成分は、異なる割合の支持材料上に、即ち希土類酸化物でドープされたMg−Al混合酸化物の異なる割合で付着される。第2の実施態様において、白金は、蓄積成分と一緒に支持材料に塗布される。この第2の場合に、酸化セリウムをベースとする付加的な酸素蓄積成分、殊にセリウム−ジルコニウム混合酸化物(Ce-Zr混合酸化物)を蓄積触媒に添加することは必要であることが見出された。
【0028】
蓄積触媒の再生挙動を改善するために、パラジウムは、付加的に白金から形成されている酸化活性成分に塗布されてよい。蓄積触媒の再生中に脱着される窒素酸化物の極めて完全な変換を達成させるために、ロジウムが付着された他の支持材料を触媒に添加することは、有利である。ロジウムに適した支持材料は、活性の、場合によっては安定化された酸化アルミニウムである。前記目的のために、酸化ランタン1〜10質量%で安定化された酸化アルミニウムを使用することは、好ましい。
【0029】
本発明に触媒は、特に希薄混合気燃焼エンジン、即ち希薄混合気の条件下で操作されるガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンからの排気ガスを清浄化するのみ適している。
【0030】
本発明は、次の実施例および図によって詳説される。
【0031】
NOx蓄積効率の測定
次の実施例および比較例において、完全触媒は、製造され、窒素酸化物に対する前記完全触媒の蓄積効率は、排気ガスの温度の関数として測定される。触媒の蓄積効率は、触媒の性能を評価するために最も重要なパラメーターである。希薄混合気燃焼エンジンの排気ガスからの窒素酸化物の除去に関連する効率が記載される。
【0032】
触媒のNOx蓄積効率は、モデルのガスユニット上で測定された。この目的のために、蓄積触媒は、過濃混合気燃焼/希薄混合気燃焼サイクルに施こされ、即ち希薄混合気燃焼による排気ガスおよび過濃混合気燃焼による排気ガスは、選択的に定義された温度で触媒に通過された。希薄混合気燃焼による排気ガスの組成は、同時に一酸化炭素および水素の導入を中断しながら酸素を導入することによって得られた。過濃混合気燃焼による排気ガスの組成は、反対の方法によって形成された。
【0033】
希薄混合気燃焼段階中、窒素酸化物は、それぞれの触媒によって蓄積された。過濃混合気燃焼段階中、窒素酸化物は、再び脱着され、モデルの排気ガスの還元成分の一酸化炭素、水素および炭化水素と触媒上で反応され、窒素、二酸化炭素および水を形成させた。
【0034】
図1は、理想的な方法での前記事情を示す。測定中、排気ガスは、窒素酸化物(NO)の500vppm(ppm by volume)の一定の濃度を有する。それ故に、蓄積触媒(NOx in)に侵入する窒素酸化物の濃度は、図1中に点線によって示されている。蓄積触媒(NOx out)の下流の窒素酸化物の濃度は、初期には零である。それというのも、理想的な場合には、新しい蓄積触媒は、排気ガス中に存在する全ての窒素酸化物と結合するからである。時間が経過した場合には、蓄積触媒は、窒素酸化物での負荷状態となり、この蓄積触媒の蓄積能力は、減少する。1つの結果として、窒素酸化物の減少量は、蓄積触媒と関連し、したがって窒素酸化物の濃度が上昇するにつれて、触媒の下流の流れが測定可能となり、蓄積触媒が完全に窒素酸化物で飽和状態となった後に、この増加した窒素酸化物濃度は、入口の濃度に近似することになる。それ故に、蓄積触媒の再生は、特殊な時間後に開始されなければならない(図1中、約80秒後)。これは、排気ガスを約10秒間過濃にすることによって達成される。この結果、蓄積された窒素酸化物は、脱着され、理想的な場合には、蓄積触媒上で完全に変換され、したがって窒素酸化物は、再生時間中、蓄積触媒の下流で測定することができない。更に、試験装置は、希薄混合気燃焼による排気ガス上でスイッチバックされ、窒素酸化物の蓄積は、新たに開始される。蓄積触媒の瞬間蓄積効率は、次の比として定義されている。
【0035】
【数1】

【0036】
図1から確認することができるように、この効率は、時間に依存する。それ故に、蓄積触媒を評価するために、それぞれの蓄積段階に亘って積算されかつ8つの連続的な蓄積サイクルに亘って平均化された蓄積効率Sは、次のように測定された:
【数2】

【0037】
従って、蓄積効率Sは、材料の定数ではなく、選択された過濃混合気燃焼サイクル/希薄混合気燃焼サイクルのパラメーターに依存する。製造された蓄積触媒を評価するために、次の条件が選ばれた:
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
次の実施例中で研究された触媒配合物は、種々の成分から構成されている。前記成分は、水性の塗料懸濁液を製造するために処理され、この懸濁液を用いて、62cmのセル密度(単位断面積当たりのハネカム中の流動チャンネルの数)を有する菫青石ハネカムは、浸漬によって塗布された。塗布されたハネカムは、乾燥され、その後に500℃で2時間、空気中でか焼された。
【0040】
塗布されたハネカムの窒素酸化物の蓄積効率は、新しい状態でモデルのガスユニット中での老化後に上記の記載と同様に測定された。老化の目的のために、触媒は、850℃の温度で24時間、空気中で貯蔵された。測定前に、触媒は、最初にモデルの排気ガス条件下で600℃に加熱された。更に、排気ガスの温度は、80℃の複数回の動作で150℃へ減少された。
【0041】
NOx蓄積効率は、それぞれの温度段階で測定された。
【0042】
図2〜5中には、種々の蓄積触媒についてこうして測定された蓄積効率が排気ガス温度の関数としてプロットされている。第3表は、研究された塗膜の組成を示す。第1欄は、触媒が構成されている塗料成分を示す。塗料成分は、それぞれの支持材料およびこの支持材料上に付着された触媒活性の成分を有する。触媒本体の体積に基づく支持材料および触媒活性成分の濃度は、第2〜6欄中に記載されている。
【0043】
第1欄の項目は、次の意味を有する:
1.Mg−Al酸化物:酸化物成分の質量比Al23:MgO=80:20を有する均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物。
【0044】
2.CeO2/Mg−Al酸化物:CeO2でドープされたマグネシウム−アルミニウム混合酸化物。
【0045】
3.Pt/CeO2/Mg−Al酸化物:2.上に支持された白金。
【0046】
4.Pd[Pt/CeO2/Mg−Al酸化物]:3.上に付着されたパラジウム。
【0047】
5.Ce−Zr酸化物:セリウム−ジルコニウム混合酸化物(90/10)。
【0048】
6.Rh/Al酸化物:酸化アルミニウム上に支持されたロジウム。
【0049】
幾つかの実施例において、触媒活性の成分は、2つの支持体酸化物への含浸によって同時に塗布された。これらの場合において、2つの材料上での触媒活性成分(例えば、酸化白金または酸化バリウム)の全ての濃度だけは、第3表中に示されている。混合酸化物粉末Mg−Al酸化物の製造は、欧州特許出願公開第1317953号明細書A1中に詳細に記載されていた。
【0050】
実施例1:(触媒C1)
請求項6記載の蓄積触媒を製造した。この目的のために、Mg−Al混合酸化物を最初に硝酸セリウムでの含浸によって酸化セリウムでドープし、その後にか焼した。ドープされた支持材料中で、酸化物成分は、次の質量比で存在した:
Al23:MgO:CeO2=72:18:10。
【0051】
完成された材料は、105m2/gのBET表面積を有していた。この材料102.8gをエタノールアミン中に溶解したヘキサヒドロ白金酸(H2Pt(OH)6)の水溶液で含浸し、乾燥させ、500℃で空気中でか焼し、したがってこの材料は、白金3.18gを含有していた。
【0052】
蓄積材料を製造するために、同じ材料126.3gを酢酸バリウムで含浸し、その後にか焼した(500℃、2時間)。完成された蓄積材料は、酸化物として計算したバリウム25.3gを含有した。
【0053】
2つの粉末材料を水中に懸濁させた。懸濁液を3〜5μm(d50)の粒径に微粉砕し、浸漬処理により1cm3当たり62個のセルを有する市販の菫青石ハネカムに塗布した。こうして塗布されたハネカムを乾燥炉中で120℃で乾燥させた。その後に、塗布されたハネカムを500℃で2時間か焼した。
【0054】
実施例2:(触媒C2)
請求項7記載の触媒C2を製造するために、酸化セリウムでドープされたMg−Al酸化物を最初に酢酸バリウムで含浸し、乾燥させ、か焼し、その後に、白金を実施例1の記載と同様に前記酸化物に塗布した。付加的に、セリウム−ジルコニウム混合酸化物を触媒に添加した。
【0055】
比較例1:(比較触媒CC1)
比較触媒として、1つの触媒を欧州特許出願公開第1317953号明細書A1の記載と同様に製造した。蓄積成分の酸化バリウムが酸化セリウムでドープされたMg−Al酸化物上に付着されずにセリウム−ジルコニウム混合酸化物上に付着されたことは、本発明による2つの触媒C1およびC2とは区別される。
【0056】
図2および図3は、新しい状態での触媒C1、C2およびCC1(図2)ならびに老化後の触媒C1、C2およびCC1(図3)についての触媒の上流での排気ガス温度の関数としての蓄積効率の測定値を示す。
【0057】
触媒C2は、最も広い作業範囲を有する。C1は、高い排気ガス温度で比較触媒よりも若干良好である。しかし、低い排気ガス温度で、この触媒は、比較触媒と比較して欠点を有する。老化後、触媒C2は、全作業範囲に亘って比較触媒よりもなお良好である。老化後の触媒C1は、高い温度で比較触媒よりも著しく高い効率を示し、触媒C2よりもいっそう高い効率を示す。
【0058】
この結果は、蓄積触媒の触媒活性および老化安定性に対する本発明による窒素酸化物蓄積材料のプラスの効果を証明する。
【0059】
実施例3;比較例2および3(触媒C3、CC2およびCC3)
この一連の実験は、C1およびC2について測定された触媒挙動の改善が酸化セリウムでのMg−Al酸化物のドーピングと密接に関連していることを示す。
【0060】
触媒C3を触媒C1と同様の方法で製造した。この触媒C3の再生挙動を改善するために、白金が塗布された酸化活性塗料成分を付加的にパラジウムで含浸し、付加的にロジウムでドープされた酸化アルミニウムを添加して触媒組成物に変えた。
【0061】
ロジウムでドープされた酸化アルミニウムを製造するために、ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム(BET表面積:202m2/g)を硝酸ロジウム溶液で含浸し、乾燥させ、空気中で500℃でか焼した。
【0062】
比較触媒を得るために、触媒C1の場合に酸化バリウムに使用される支持材料を、比較触媒CC2の場合には、均一なMg−Al混合酸化物とセリウム−ジルコニウム混合酸化物との物理的混合物によって代替し、比較触媒CC3の場合には、Mg−Al混合酸化物と酸化セリウムとの物理的混合物によって代替した。比較触媒CC3は、触媒C3と同様の元素組成を有していた。2つの触媒間の差異は、単に酸化物材料の相対的配置にあった(C1の場合の酸化セリウムでのMg−Al混合酸化物のドーピングおよびCC3の場合のMg−Al混合酸化物と酸化セリウムとの物理的混合)。
【0063】
前記触媒の蓄積効率についての測定結果(図4参照)は、触媒C3(酸化バリウムのための支持材料としての酸化セリウムでドープされたMg−Al混合酸化物)が酸化バリウムのための支持材料としての物理的混合物を使用する比較触媒CC2およびCC3よりも著しく良好な触媒特性を示す。
【0064】
実施例3〜5および比較例4(触媒C3〜C5およびCC4)
比較触媒CC4は、配合に関連して欧州特許出願公開第1317953号明細書A1の触媒C7aに対応する。この触媒を、原理的な組成に関連して請求項4および5に記載の2つの実施態様に対応する触媒C3およびC4(組成については、第3表参照)と比較した。付加的に、C3に対応するが、しかし、低い温度での窒素酸化物蓄積能力が付加的な量のCe−Zr酸化物により増大される触媒(C5)を製造した。
【0065】
老化後の前記触媒の蓄積効率の測定結果は、図5中に示されている。老化後の比較触媒は、全作業範囲に亘って本発明による触媒よりも著しく少ない効率を示す。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】NOx蓄積効率の測定結果を示す線図。
【図2】新鮮な状態での種々の触媒配合物のためのNOx蓄積効率を示す線図。
【図3】炉での老化後の種々の触媒配合物のためのNOx蓄積効率を示す線図。
【図4】種々の支持材料上での酸化バリウムのためのNOx蓄積効率を示す線図。
【図5】炉での老化後の種々の触媒配合物のためのNOx蓄積効率を示す線図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物蓄積材料において、希土類酸化物でドープされた、支持材料としての均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物上に少なくとも1つの窒素酸化物蓄積成分を有し、この場合マグネシウム−アルミニウム混合酸化物は、マグネシウム−アルミニウム混合酸化物の全質量に対して酸化マグネシウム1〜30質量%を含有することを特徴とする、窒素酸化物蓄積材料。
【請求項2】
希土類酸化物がセリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、ランタン、サマリウムおよびこれらの混合物から構成されている群から選択された元素の酸化物を有する、請求項1記載の窒素酸化物蓄積材料。
【請求項3】
希土類酸化物が酸化セリウムおよび/または酸化プラセオジミウムである、請求項2記載の窒素酸化物蓄積材料。
【請求項4】
窒素酸化物蓄積成分が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属およびこれらの混合物から構成されている群から選択された元素の酸化物、炭酸塩または水酸化物を含む、請求項1記載の窒素酸化物蓄積材料。
【請求項5】
支持材料が支持材料の全質量に対して希土類酸化物5〜15質量%を含有する、請求項1記載の窒素酸化物蓄積材料。
【請求項6】
酸化活性成分としての白金および窒素酸化物蓄積材料を含有する窒素酸化物蓄積触媒において、窒素酸化物蓄積材料が請求項1から5までのいずれか1項に記載の材料であり、希土類酸化物でドープされた均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物が同様に白金のための支持材料として役立つことを特徴とする、酸化活性成分としての白金および窒素酸化物蓄積材料を含有する窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項7】
白金が窒素酸化物蓄積材料上に付着されており、触媒が付加的に酸化セリウムをベースとする酸素貯蔵材料を含有する、請求項6記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項8】
付加的に白金を含有する、請求項6または7記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項9】
付加的に酸化ロジウムまたは酸化アルミニウムを含有する、請求項6または7記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項10】
付加的に酸化ロジウムまたは酸化アルミニウムを含有する、請求項8記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項11】
希土類酸化物でドープされかつ白金のための支持材料として役立つ均一なマグネシウム−アルミニウム混合酸化物がマグネシウム−アルミニウム混合酸化物の全質量に対して酸化マグネシウム1〜30質量%を含有し、支持材料の全質量に対して希土類酸化物5〜15質量%を含有する、請求項6記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項12】
触媒が酸化物として計算した窒素酸化物蓄積成分を触媒材料の全質量に対して3〜25質量%含有する、請求項6記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項13】
触媒が酸化物として計算した窒素酸化物蓄積成分を触媒材料の全質量に対して5〜10質量%含有する、請求項12記載の窒素酸化物蓄積触媒。
【請求項14】
セラミックまたは金属から形成された不活性のハネカムに塗膜の形で塗布された、請求項6または7記載の窒素酸化物蓄積触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−530271(P2007−530271A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505452(P2007−505452)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003080
【国際公開番号】WO2005/092481
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】