窓サッシ
【課題】放送受信用アンテナが、NOx、SOxなどによって腐食したり、倒れたり、折れたりすることがなく、放送受信用アンテナの耐用寿命の延長化が図れる窓サッシを提供する。
【解決手段】2枚の窓ガラス4の間に光線透過性の中間部材5が介在され、中間部材5の表面に薄膜状の放送受信用アンテナ8が形成されていることを特徴とする。
【解決手段】2枚の窓ガラス4の間に光線透過性の中間部材5が介在され、中間部材5の表面に薄膜状の放送受信用アンテナ8が形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅、ビル、ホールの如き施設などの建物に設置される窓サッシに係り、特に内部に放送受信用アンテナを備えた窓サッシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、放送受信用アンテナが住宅の屋根の上やベランダなどに立設され、その放送受信用アンテナから屋内に設置されたテレビまでの間に信号ケーブルが引き回されているのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の放送受信用アンテナは住宅の屋根の上やベランダなどに立設されているため、雨風や大気中に含まれている窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、塩分、塵埃、鳥類の糞などの有害物質によって変色、腐食することがある。また台風などの強風や大雨により、放送受信用アンテナが倒れたり、折れたりしたりして損傷をきたしたり、さらには放送受信用アンテナと信号ケーブルの接続不良を生じ、テレビが視聴できなくなることがある。
【0004】
さらに住宅密集地などでは、各家屋の屋根の上やベランダから放送受信用アンテナが乱立しているため、景観上好ましくないという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、放送受信用アンテナが、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、塩分、塵埃、鳥類の糞などによって変色、腐食することがなく、また強風や大雨により倒れたり、折れたりすることもなく、放送受信用アンテナの耐用寿命の延長化が図れ、鮮明な画像が得られ、建物の景観上もスッキリして好ましい窓サッシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、薄膜状の放送受信用アンテナを直接あるいは後述する中間部材を介して窓ガラスによって担持して、その放送受信用アンテナの端部を受信機に接続するように窓枠の外側に直接あるいは導電部材を介して取り出したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記放送受信用アンテナが光線透過性導電材から形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記放送受信用アンテナが前記窓ガラスの内面に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第4の手段は前記第3の手段において、前記窓ガラスが2枚対向して形成され、その窓ガラスの内面に前記放送受信用アンテナが形成されて、その2枚の窓ガラスの内側周辺部にスペーサが介在され、2枚の窓ガラスとスペーサによって形成されている空間部が気密にシールされていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第5の手段は前記第1または第2の手段において、2枚の前記窓ガラスの間に光線透過性の中間部材が介在され、その中間部材の表面に前記放送受信用アンテナが形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は前述のような構成になっており、放送受信用アンテナが、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、塩分、塵埃、鳥類の糞などによって変色、腐食することがなく、また強風や大雨により倒れたり、折れたりすることがなく、放送受信用アンテナの耐用寿命の延長化が図れ、建物の景観上もスッキリして好ましい窓サッシを提供することができる。特にデジタル放送では、受信効率が良好で、鮮明な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施形態について図面とともに説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る窓サッシの平面図、図2はその窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図、図3は図2A部の拡大図、図4はその積層ガラスをサッシ枠に装着した状態を示す一部拡大断面図、図5は積層ガラスに使用する中間部材の平面図、図6はその窓サッシに使用する挟持部材の拡大展開図、図7はその挟持部材の拡大斜視図である。
【0013】
本実施形態に係る窓サッシ1は図1に示すように、積層ガラス2と、その積層ガラス2の周囲に取り付けられたサッシ枠3とから主に構成されている。
【0014】
積層ガラス2は図2に示すように、対向するように配置された2枚の窓ガラス4と、その窓ガラス4の間に挟まれ窓ガラス4と略同じ広さを有する板状の中間部材5から構成されている。
【0015】
前記中間部材5は合成樹脂の成形板からなるため、表面に平滑性をもたせることは容易であるが、前記窓ガラス4はフローガラスなどから構成され、図3に示すように窓ガラス4の表面全体には微細な凹凸6が形成されており、窓ガラス4と中間部材5の密着性が良好でない。そのため窓ガラス4の中間部材5と接触する表面に予め表面平滑化膜7が形成され、その表面平滑化膜7に中間部材5が密着した構造になっている。
【0016】
この表面平滑化膜7には、例えばポリメタクリル酸メチルエステルやポリアクリル酸エステルなどのアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などの各種合成樹脂、あるいはそれら合成樹脂にベンゾフェノン誘導体やベンゾトリアゾール誘導体などの有機化合物あるいは酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機化合物からなる紫外線を吸収する微粒子を混合したものが使用される。
なお、紫外線吸収物質は、一方又は両方の窓ガラス4の内面に塗布することも可能である。
【0017】
また前記表面平滑化膜7として、下記の分子構造式に示すようにポリマー分子中に紫外線吸収官能を結合した合成樹脂被膜が好適である。なお、このポリマー分子中における紫外線吸収官能基とSiO2のモル比〔(紫外線吸収官能)/(SiO2)〕は1/5である。
【化1】
【0018】
この分子構造式を有する合成樹脂被膜を形成した板厚が3mmのフローガラスの紫外線透過率は1〜2%で、合成樹脂被膜を形成しない同厚のフローガラスの紫外線透過率66%に比較すると、薄膜でも極めて高い紫外線吸収能力を有している。
【0019】
前記中間部材5としては、透明あるいは半透明の光線透過性を有する例えばポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂などが用いられる。
【0020】
次の表はポリカーボネート樹脂板、アクリル樹脂板ならびにガラス板の各物性を比較して示す表である。
【0021】
ポリカーボネート樹脂板 アクリル樹脂板 ガラス板
光線透過率
(%) 85〜91 92 90以上
光屈折率 1.6 1.5 1.5
熱伝導率
(W/m・K) 0.19 0.16〜0.25 1.10
引張降伏応力
(MPa) 59〜69 55〜76 34〜83
曲げ降伏応力
(MPa) 80〜90 82〜118 49
この表から明らかなように、ポリカーボネート樹脂板ならびにアクリル樹脂板はガラス板と略同じ光線透過率と光屈折率を有し、引張降伏応力や曲げ降伏応力などの機械的性質においてはガラス板よりも優れた傾向にある。さらにガラス板よりも77〜85%低い熱伝導率を有しているため、窓サッシに使用した場合に結露防止効果が発揮できる。また、ポリカーボネート樹脂板やアクリル樹脂板はガラス板よりも優れた機械的強度を有しているため、窓サッシに使用した場合に防犯機能ならびに飛散防止機能が発揮できる。
【0022】
図8は、ポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板とガラス板の板厚と熱貫流率との関係を示す特性図で、図中の線Bはポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板、線Cはガラス板の特性線である。
【0023】
この表から明らかなようにポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板はガラス板よりも熱貫流率が低く、その傾向は板厚が増すことによって顕著な差として現れる。従ってこのポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板を窓サッシに使用した場合、冷暖房での保温効果として現れ、高い省エネルギー効果が得られる。
【0024】
この中間部材5の片面あるいは両面には、図2や図5に示すように放送受信用アンテナ8が形成されている。放送受信用アンテナ8は例えばインジウム・スズ酸化物(ITO)などの光線透過性導電層から構成され、図5に示すように櫛歯状あるいは樹木状など受信に適した長さ、面積になるように、蒸着あるいはプリントなどの適宜な手段によって形成されている。窓サッシは比較的面積があるため、放送受信用アンテナ8も広い受信面積を確保することが容易である。
【0025】
放送受信用アンテナ8の2本の端部8a,8bは中間部材5の上端面まで延びている。中間部材5がシート(フィルム)の場合、放送受信用アンテナ8の端部8a,8bを中間部材5の端部付近まで形成し、中間部材5の端部を放送受信用アンテナ8の端部8a,8bが表になるように折り曲げて、放送受信用アンテナ8の端部8a,8bを外側に露呈することもできる。
【0026】
中間部材5を間にして2枚の窓ガラス4を重ね合わせた積層ガラス2の端部(本実施形態では四隅)は、図1に示すように複数の挟持部材9(9a〜9d)によって積層方向に弾性的に挟持されている。複数の挟持部材9(9a〜9d)を積層ガラス2に装着した際に、図5に示すように1つの挟持部材9aが一方のアンテナ8の端部8aと接触し、他の1つの挟持部材9bが他方のアンテナ8の端部8bと接触するようになっている。
【0027】
本実施形態では金属板からなる導電性の挟持部材9が使用され、具体的には板厚が0.25〜0.3mmで、ガス浸炭加工により表面硬化処理が施され、さらに防錆メッキされた鉄板から構成されている。
【0028】
図6に示すように展開した挟持部材9の平面形状は長方形をしており、第1挟持片部10と、その第1挟持片部10から所定の間隔をおいて設けられた第2挟持片部11と、前記第1挟持片部10と第2挟持片部11を連結する連結片部12とから構成され、第1挟持片部10と第2挟持片部11と連結片部12は挟持部材9の長手方向に沿って平行に設けられている。符号13は、第1挟持片部10と連結片部12の接合部ならびに第2挟持片部11と連結片部12の接合部にある谷折り線(仮想線)である。
【0029】
第1挟持片部10と第2挟持片部11の略中央位置には、略90度の開き角度を持って外側に開放した平面形状が略V状の切欠部14が形成されている。その切欠部14を形成する一方の端縁15の中間部には例えば円形の突出部16が形成され、切欠部14を形成する他方の端縁17の中間部、すなわち前記突出部16と対向する位置に突出部16と同形(本実施形態では円形)の嵌入部18が形成されている。
【0030】
図示すように谷折り線13に沿って第1挟持片部10と第2挟持片部11を連結片部12に対して谷折りして、連結片部12を間にして第1挟持片部10と第2挟持片部11を対向させる。さらに谷折り線19に沿って第1挟持片部10と第2挟持片部11と連結片部12の半分部分を残りの半分部分に対して前記切欠部14を中心にして略直角に折り曲げ、前記突出部16を嵌入部18に嵌入して、図7に示すように側面形状が略L字形の挟持部材9を構成する。前記突出部16と嵌入部18の係合(抜け止め)により、挟持部材9のL字形状が維持できる。
【0031】
図7に示すように第1挟持片部10と第2挟持片部11の先端部は互いに若干内側に寄っており、その間隔Wは積層ガラス2の総厚T(図2参照)よりも若干短く設計されている。
【0032】
図1に示すように積層ガラス2の四隅に挟持部材9を圧入、装着することにより、第1挟持片部10と第2挟持片部11の弾性的な挟持力により、窓ガラス4と中間部材5は全体的に圧着される。
【0033】
積層ガラス2に対する挟持部材9の固定は第1挟持片部10と第2挟持片部11の挟持力でも可能であるが、固定を確実にするため両面テープや接着剤を使用するとよい。
【0034】
複数の挟持部材9を積層ガラス2に装着することにより、窓ガラス4と中間部材5は全体的に圧着される。このとき窓ガラス4の表面に合成樹脂からなる表面平滑化膜7を形成しておけば、表面にアンテナ8がパターンニングされている中間部材5とも良好に密着するため、両者の接触面の空気をある程度排除することができる。
【0035】
また挟持部材9の装着で、窓ガラス4と中間部材5の相互の位置ずれが防止でき、一体物として取り扱えるから、次の空気抜き工程への搬入ならびに搬出作業が容易である。さらに、挟持部材9の装着で窓ガラス4の保護、特に窓ガラス4の四隅の保護ができ、取り扱い中での窓ガラス4の欠損、破損などが防止できる。
【0036】
挟持部材9で構成部材が挟持された積層ガラス2は図示しない減圧装置にセットされ、コンプレッサーを稼動して装置内部が所定の圧力まで減圧され、この減圧により窓ガラス4と中間部材5の接触面に残存する微量の空気を除去し、窓ガラス4と中間部材5がさらに緊密に密着する。
【0037】
この空気抜き工程を終了すると積層ガラス2は減圧装置から大気中に取り出されるが、外圧(大気圧)と挟持部材9の挟持圧力の相乗効果により、窓ガラス4と中間部材5の密着状態はそのまま良好に保たれ、窓ガラス4と中間部材5の接触面に再び空気が入り込むことはない。
【0038】
このようにして構成された積層ガラス2をサッシ枠3に取り付ける際、図4に示すように積層ガラス2の外周部は断面形状が略コ字形のビート20又はコーキングを介してサッシ枠3に予め形成されている溝部21内に挿入される。
【0039】
ビート20は通常、合成樹脂の成形体からなりある程度の硬さを有しているため、ビート20の外寸と溝部21の内寸のバラツキなどによって、溝部21に対するビート20の嵌合が弱い場合がある。
【0040】
本実施形態ではこの問題を解決するため、図4に示すようにビート20の溝部21と嵌合する嵌合部22の両側側面あるいは片側側面に、両面粘着テープ等の粘着テープ23を1枚あるいは複数枚予め貼着している。そして溝部21の内寸に合うように粘着テープ23を剥ぎ取って溝部21に挿入することにより、前述の寸法のバラツキに起因する嵌合力の低下を解消して、積層ガラス2をサッシ枠3に適正に取り付けることができる。図4に示す例は、図面に向って左側の粘着テープ23を1枚剥ぎ取って寸法調節した例を示している。
【0041】
本実施形態の場合、空気を排除した窓ガラス4と中間部材5の密着と、ビート20を介しての積層ガラス2のサッシ枠3への取り付けにより、放送受信用アンテナ8は外気から完全に遮断されるため、放送受信用アンテナ8の腐食、変質などが有効に防止できる。
【0042】
図9は本発明の第2実施形態に係る窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図、図10はその積層ガラスに使用するスペーサの拡大断面図、図11は積層ガラスを窓サッシに取り付けた状態を示す一部拡大断面図である。
【0043】
本実施形態に係る積層ガラス2は図9に示すように、対向するように配置された2枚の窓ガラス4と、その窓ガラス4の間の周縁部に連続して介在されたスペーサ24から構成され、そのスペーサ24の内側の2枚の窓ガラス4の間には空間部25が形成されている。
【0044】
一方あるいは両方の窓ガラス4の内面には、ITOなどの光線透過性導電層からなるアンテナ8が蛇行状あるいは渦巻き状など受信に適した長さになるように、蒸着あるいはプリントなどの適宜な手段によって形成されている。アンテナ8の両端部8a,8bは窓ガラス4の左右両端の上端面まで延びている。
【0045】
前記空間部25には、空気よりも熱伝導率が低く、且つ空気よりも比重が重い例えばアルゴン(熱伝導率:3.88×10−5cal/cm・sec・deg 比重:1.8)やクリプトン(熱伝導率:21.2×10−6cal/cm・sec・deg 比重:3.7)などの不活性ガス、あるいは乾燥空気などのガスが封入されて気体層26が形成されている。このように空間部25にガスを充填して気体層26を形成することにより、高い保温効果が得られるとともに、風圧による窓ガラス中央部の内側への変形を抑止することができる。
【0046】
このガスは図9に示す窓ガラス4と後述する支持体27の間の粘着層28に注射針を差し込んで、そこから内部にある空気と置換しながら注入される。また、空間部25と外部を連通する細い管体を予め粘着層28に埋設しておき、その管体を通して前記ガスを注入し、ガス充填後に管体の開口部を潰すなどして閉塞することもできる。このように空間部25には不活性ガスあるいは乾燥空気が封入されているから、窓ガラス4の内面に形成されたアンテナ8が変質、腐食することがなく、アンテナ8の耐用寿命を延長することができる。
【0047】
前記スペーサ24は、支持体27と、その支持体27の外周部全体に被覆・担持された粘着層28とから構成されている。支持体27は細長い例えば合成樹脂の成形体、硬質ゴムの成形体、金属線、金属板、撥水処理した紙質成形体、合成繊維や炭素繊維などの繊維成形体等の粘着層28よりも硬質の材料からなり、本実施形態ではポリ塩化ビニールからなる合成樹脂の成形体が用いられ、断面形状は円形あるいは楕円形をしている。
【0048】
前記粘着層28には、例えばブチルゴムやアクリルゴムなどのオレフィン系ゴム、ブタジエンゴムやイソプレンゴムなどのジェン系ゴム、ポリウレタン系ゴム、シリコーン系ゴムなどが用いられ、中でも水蒸気透過率が他のものよりも低く、ガラスとの密着性が良好で、粘着力が長期間維持できるなどの理由からブチルゴムが賞用される。
【0049】
図示していないが、細長い支持体27の素材はリールから一対の引き出しローラによって所定の速度で引き出されて、押出成型機の金型内に送り込まれる。この金型のキャビティ内には粘着層28の素材である高温状態の溶融物が回転するスクリューによって圧送されて、前記素材の外周部全体を所定の厚さで覆い、素材とともに金型から一対の引き出しローラによって引き出される。この引き出しローラの外周面には、例えばポリテトラフルオロエチレンやシリコーンなどの離型性の良い被膜が形成されている。
【0050】
金型と引き出しローラの間には、水冷式あるいは空冷式の冷却部が設けられており、素材の外周部に被覆・担持された溶融物が冷却されて粘着層28となる。この粘着層28で覆われた素材を所定の長さに切断して、積層ガラス2の組み立てに供される。
【0051】
本実施形態の場合、図10に示す支持体27の外径D1は1.2〜1.8mm、粘着層28の外径D2は3〜10mmで、このスペーサ24が2枚の窓ガラス4,4の間に介挿されて、空間部25の幅L(図9参照)が1.2〜1.8mmに保持される。そのため粘着層28の全体が図9に示すように2枚の窓ガラス4,4によって押し潰されて変形し、粘着層28が窓ガラス4,4の内面に密着する。それと同時に支持体27の断面形状が円形あるいは楕円形であるから、窓ガラス4,4と対向する外周面に接面圧が集中するため、前述した粘着層28の密着との相乗効果で高い気密性が維持できる。
【0052】
第1実施形態と同様に積層ガラス2の四隅は、複数の挟持部材9(9a〜9d)によって積層方向に弾性的に挟持される。挟持部材9a〜9dを積層ガラス2に装着した際、1つの挟持部材9aがアンテナ8の一方の端部8aと接触し、他の1つの挟持部材9bがアンテナ8の他方の端部8bと接触するようになっている(図9参照)。この積層ガラス2は図11に示すように、ビート22を介してサッシ枠3に取り付けられる。
【0053】
前記実施形態では窓ガラス4の内面にアンテナ8を被着したが、空間部25の外周部近くに棒状のアンテナを介在して、2枚の窓ガラス4で棒状のアンテナを挟持することも可能である。
【0054】
前記実施形態では空間部25を介して2枚の窓ガラス4を配置した構成になっているが、1枚の窓ガラス4の内面、すなわち屋内側の表面に放送用アンテナ8を形成することも可能である。その場合、アンテナ8を保護する目的で、アンテナ8を形成した窓ガラス4の内面全体に透明な保護フィルムを貼着するか、あるいは透明な樹脂液を塗布して保護膜を形成するとよい。前記保護フィルムあるいは保護膜は、光や熱を選択的に透過あるいは反射したり、紫外線を吸収したり、ガラスの飛散を防止するなどの機能性を有するものが好適である。
【0055】
図12は、前記実施形態の窓サッシ1を上側レール29と下側レール30の間にセットした状態を示す図である。窓サッシ1の上側の左右両端には導電性を有する接触片31a,31bが取り付けられており、一方の接触片31aは挟持部材9aを介してアンテナ8の一方の端部8aと電気的に接続され、他方の接触片31bは挟持部材9bを介してアンテナ8の他方の端部8bと電気的に接続されている。
【0056】
上側レール29は図13に示すように、その長手方向に沿って電気絶縁層32を介して2本の導電部33a,33bが設けられ、導電部33aに一方の接触片31aが弾性的に接触し、導電部33bに他方の接触片31bが弾性的に接触している。窓サッシ1の下側の左右両端にはポリプロピレンなどの合成樹脂製のローラ34が取り付けられ、ローラ34は下側レール30の上を転動する。
【0057】
図13に示すように上側レール29の導電部33a,33bはテレビジョン受像機35のアンテナ端子部36に信号ケーブル37を介して電気的に接続されている。従って窓サッシ1を開閉しても放送局(図示せず)から発せられる電波は窓サッシ1に内蔵されているアンテナ8によって受信し、受信した映像信号と音声信号をテレビジョン受信機35に送信することができる。
【0058】
下側レール30上を転動するローラ34として金属からなる導電性のものを使用して、ローラ34とテレビジョン受像機35のアンテナ端子部36と電気的に接続することも可能である。しかし、下側レール30上にはゴミ、水、油、その他異物などが付着しやすく、受信信号の伝達に支障をきたす懸念があるため、図12の実施形態に示すように窓サッシ1の上側に接触片31a,31bを取付け、それと上側レール29とを摺接する構造にした方が前述のような問題がなく好適である。
【0059】
前記実施形態では窓サッシ1がレール上を移動する移動式の窓サッシについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定式の窓サッシにも適用可能である。
【0060】
図14に示すように家屋(建物)38には一般的に南北方向や東西方向などに窓サッシ1が設置されているから、アンテナ8の方向性はとりやすい。また、従来のように屋根の上やベランダなどに立設したアンテナであると、強風や地震などの振動によってアンテナが倒れたり、位置や方向がずれたりすることがあるが、そのようなことがなくアンテナ8の固定が確実である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る窓サッシの平面図である。
【図2】その窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図である。
【図3】図2A部の拡大図である。
【図4】その積層ガラスをサッシ枠に装着した状態を示す一部拡大断面図である。
【図5】積層ガラスに使用する中間部材の平面図である。
【図6】その窓サッシに使用する挟持部材の拡大展開図である。
【図7】その挟持部材の拡大斜視図である。
【図8】ポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板とガラス板の板厚と熱貫流率との関係を示す特性図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図である。
【図10】その積層ガラスに使用するスペーサの拡大断面図である。
【図11】積層ガラスを窓サッシに取り付けた状態を示す一部拡大断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る窓サッシを上側レールと下側レールの間にセットした状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る上側レールの導電部とテレビジョン受像機のアンテナ端子部の接続を説明するための図である。
【図14】家屋の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1:窓サッシ、2:積層ガラス、3:サッシ枠、4:窓ガラス、5:中間部材、6:凹凸、7:表面平滑膜、8:放送用受信アンテナ、8a,8b:放送用受信アンテナの端部、9a〜9d:挟持部材、10:第1挟持片部、11:第2挟持片部、12:連結片部、13:谷折り線、14:切欠部、15:端縁、16:突出部、17:端縁、18:嵌入部、19:谷折り線、20:ビート、21:溝部、22:嵌合部、23:粘着テープ、24:スペーサ、25:空間部、26:気体層、27:支持体、28:粘着層、29:上側レール、30:下側レール、31a,31b:接触片、32:電気絶縁層、33a,33b:導電部、34:ローラ、35:テレビジョン受像機、36:アンテナ端子、37:信号ケーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅、ビル、ホールの如き施設などの建物に設置される窓サッシに係り、特に内部に放送受信用アンテナを備えた窓サッシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、放送受信用アンテナが住宅の屋根の上やベランダなどに立設され、その放送受信用アンテナから屋内に設置されたテレビまでの間に信号ケーブルが引き回されているのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の放送受信用アンテナは住宅の屋根の上やベランダなどに立設されているため、雨風や大気中に含まれている窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、塩分、塵埃、鳥類の糞などの有害物質によって変色、腐食することがある。また台風などの強風や大雨により、放送受信用アンテナが倒れたり、折れたりしたりして損傷をきたしたり、さらには放送受信用アンテナと信号ケーブルの接続不良を生じ、テレビが視聴できなくなることがある。
【0004】
さらに住宅密集地などでは、各家屋の屋根の上やベランダから放送受信用アンテナが乱立しているため、景観上好ましくないという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、放送受信用アンテナが、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、塩分、塵埃、鳥類の糞などによって変色、腐食することがなく、また強風や大雨により倒れたり、折れたりすることもなく、放送受信用アンテナの耐用寿命の延長化が図れ、鮮明な画像が得られ、建物の景観上もスッキリして好ましい窓サッシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、薄膜状の放送受信用アンテナを直接あるいは後述する中間部材を介して窓ガラスによって担持して、その放送受信用アンテナの端部を受信機に接続するように窓枠の外側に直接あるいは導電部材を介して取り出したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記放送受信用アンテナが光線透過性導電材から形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記放送受信用アンテナが前記窓ガラスの内面に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第4の手段は前記第3の手段において、前記窓ガラスが2枚対向して形成され、その窓ガラスの内面に前記放送受信用アンテナが形成されて、その2枚の窓ガラスの内側周辺部にスペーサが介在され、2枚の窓ガラスとスペーサによって形成されている空間部が気密にシールされていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第5の手段は前記第1または第2の手段において、2枚の前記窓ガラスの間に光線透過性の中間部材が介在され、その中間部材の表面に前記放送受信用アンテナが形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は前述のような構成になっており、放送受信用アンテナが、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、塩分、塵埃、鳥類の糞などによって変色、腐食することがなく、また強風や大雨により倒れたり、折れたりすることがなく、放送受信用アンテナの耐用寿命の延長化が図れ、建物の景観上もスッキリして好ましい窓サッシを提供することができる。特にデジタル放送では、受信効率が良好で、鮮明な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施形態について図面とともに説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る窓サッシの平面図、図2はその窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図、図3は図2A部の拡大図、図4はその積層ガラスをサッシ枠に装着した状態を示す一部拡大断面図、図5は積層ガラスに使用する中間部材の平面図、図6はその窓サッシに使用する挟持部材の拡大展開図、図7はその挟持部材の拡大斜視図である。
【0013】
本実施形態に係る窓サッシ1は図1に示すように、積層ガラス2と、その積層ガラス2の周囲に取り付けられたサッシ枠3とから主に構成されている。
【0014】
積層ガラス2は図2に示すように、対向するように配置された2枚の窓ガラス4と、その窓ガラス4の間に挟まれ窓ガラス4と略同じ広さを有する板状の中間部材5から構成されている。
【0015】
前記中間部材5は合成樹脂の成形板からなるため、表面に平滑性をもたせることは容易であるが、前記窓ガラス4はフローガラスなどから構成され、図3に示すように窓ガラス4の表面全体には微細な凹凸6が形成されており、窓ガラス4と中間部材5の密着性が良好でない。そのため窓ガラス4の中間部材5と接触する表面に予め表面平滑化膜7が形成され、その表面平滑化膜7に中間部材5が密着した構造になっている。
【0016】
この表面平滑化膜7には、例えばポリメタクリル酸メチルエステルやポリアクリル酸エステルなどのアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などの各種合成樹脂、あるいはそれら合成樹脂にベンゾフェノン誘導体やベンゾトリアゾール誘導体などの有機化合物あるいは酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機化合物からなる紫外線を吸収する微粒子を混合したものが使用される。
なお、紫外線吸収物質は、一方又は両方の窓ガラス4の内面に塗布することも可能である。
【0017】
また前記表面平滑化膜7として、下記の分子構造式に示すようにポリマー分子中に紫外線吸収官能を結合した合成樹脂被膜が好適である。なお、このポリマー分子中における紫外線吸収官能基とSiO2のモル比〔(紫外線吸収官能)/(SiO2)〕は1/5である。
【化1】
【0018】
この分子構造式を有する合成樹脂被膜を形成した板厚が3mmのフローガラスの紫外線透過率は1〜2%で、合成樹脂被膜を形成しない同厚のフローガラスの紫外線透過率66%に比較すると、薄膜でも極めて高い紫外線吸収能力を有している。
【0019】
前記中間部材5としては、透明あるいは半透明の光線透過性を有する例えばポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂などが用いられる。
【0020】
次の表はポリカーボネート樹脂板、アクリル樹脂板ならびにガラス板の各物性を比較して示す表である。
【0021】
ポリカーボネート樹脂板 アクリル樹脂板 ガラス板
光線透過率
(%) 85〜91 92 90以上
光屈折率 1.6 1.5 1.5
熱伝導率
(W/m・K) 0.19 0.16〜0.25 1.10
引張降伏応力
(MPa) 59〜69 55〜76 34〜83
曲げ降伏応力
(MPa) 80〜90 82〜118 49
この表から明らかなように、ポリカーボネート樹脂板ならびにアクリル樹脂板はガラス板と略同じ光線透過率と光屈折率を有し、引張降伏応力や曲げ降伏応力などの機械的性質においてはガラス板よりも優れた傾向にある。さらにガラス板よりも77〜85%低い熱伝導率を有しているため、窓サッシに使用した場合に結露防止効果が発揮できる。また、ポリカーボネート樹脂板やアクリル樹脂板はガラス板よりも優れた機械的強度を有しているため、窓サッシに使用した場合に防犯機能ならびに飛散防止機能が発揮できる。
【0022】
図8は、ポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板とガラス板の板厚と熱貫流率との関係を示す特性図で、図中の線Bはポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板、線Cはガラス板の特性線である。
【0023】
この表から明らかなようにポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板はガラス板よりも熱貫流率が低く、その傾向は板厚が増すことによって顕著な差として現れる。従ってこのポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板を窓サッシに使用した場合、冷暖房での保温効果として現れ、高い省エネルギー効果が得られる。
【0024】
この中間部材5の片面あるいは両面には、図2や図5に示すように放送受信用アンテナ8が形成されている。放送受信用アンテナ8は例えばインジウム・スズ酸化物(ITO)などの光線透過性導電層から構成され、図5に示すように櫛歯状あるいは樹木状など受信に適した長さ、面積になるように、蒸着あるいはプリントなどの適宜な手段によって形成されている。窓サッシは比較的面積があるため、放送受信用アンテナ8も広い受信面積を確保することが容易である。
【0025】
放送受信用アンテナ8の2本の端部8a,8bは中間部材5の上端面まで延びている。中間部材5がシート(フィルム)の場合、放送受信用アンテナ8の端部8a,8bを中間部材5の端部付近まで形成し、中間部材5の端部を放送受信用アンテナ8の端部8a,8bが表になるように折り曲げて、放送受信用アンテナ8の端部8a,8bを外側に露呈することもできる。
【0026】
中間部材5を間にして2枚の窓ガラス4を重ね合わせた積層ガラス2の端部(本実施形態では四隅)は、図1に示すように複数の挟持部材9(9a〜9d)によって積層方向に弾性的に挟持されている。複数の挟持部材9(9a〜9d)を積層ガラス2に装着した際に、図5に示すように1つの挟持部材9aが一方のアンテナ8の端部8aと接触し、他の1つの挟持部材9bが他方のアンテナ8の端部8bと接触するようになっている。
【0027】
本実施形態では金属板からなる導電性の挟持部材9が使用され、具体的には板厚が0.25〜0.3mmで、ガス浸炭加工により表面硬化処理が施され、さらに防錆メッキされた鉄板から構成されている。
【0028】
図6に示すように展開した挟持部材9の平面形状は長方形をしており、第1挟持片部10と、その第1挟持片部10から所定の間隔をおいて設けられた第2挟持片部11と、前記第1挟持片部10と第2挟持片部11を連結する連結片部12とから構成され、第1挟持片部10と第2挟持片部11と連結片部12は挟持部材9の長手方向に沿って平行に設けられている。符号13は、第1挟持片部10と連結片部12の接合部ならびに第2挟持片部11と連結片部12の接合部にある谷折り線(仮想線)である。
【0029】
第1挟持片部10と第2挟持片部11の略中央位置には、略90度の開き角度を持って外側に開放した平面形状が略V状の切欠部14が形成されている。その切欠部14を形成する一方の端縁15の中間部には例えば円形の突出部16が形成され、切欠部14を形成する他方の端縁17の中間部、すなわち前記突出部16と対向する位置に突出部16と同形(本実施形態では円形)の嵌入部18が形成されている。
【0030】
図示すように谷折り線13に沿って第1挟持片部10と第2挟持片部11を連結片部12に対して谷折りして、連結片部12を間にして第1挟持片部10と第2挟持片部11を対向させる。さらに谷折り線19に沿って第1挟持片部10と第2挟持片部11と連結片部12の半分部分を残りの半分部分に対して前記切欠部14を中心にして略直角に折り曲げ、前記突出部16を嵌入部18に嵌入して、図7に示すように側面形状が略L字形の挟持部材9を構成する。前記突出部16と嵌入部18の係合(抜け止め)により、挟持部材9のL字形状が維持できる。
【0031】
図7に示すように第1挟持片部10と第2挟持片部11の先端部は互いに若干内側に寄っており、その間隔Wは積層ガラス2の総厚T(図2参照)よりも若干短く設計されている。
【0032】
図1に示すように積層ガラス2の四隅に挟持部材9を圧入、装着することにより、第1挟持片部10と第2挟持片部11の弾性的な挟持力により、窓ガラス4と中間部材5は全体的に圧着される。
【0033】
積層ガラス2に対する挟持部材9の固定は第1挟持片部10と第2挟持片部11の挟持力でも可能であるが、固定を確実にするため両面テープや接着剤を使用するとよい。
【0034】
複数の挟持部材9を積層ガラス2に装着することにより、窓ガラス4と中間部材5は全体的に圧着される。このとき窓ガラス4の表面に合成樹脂からなる表面平滑化膜7を形成しておけば、表面にアンテナ8がパターンニングされている中間部材5とも良好に密着するため、両者の接触面の空気をある程度排除することができる。
【0035】
また挟持部材9の装着で、窓ガラス4と中間部材5の相互の位置ずれが防止でき、一体物として取り扱えるから、次の空気抜き工程への搬入ならびに搬出作業が容易である。さらに、挟持部材9の装着で窓ガラス4の保護、特に窓ガラス4の四隅の保護ができ、取り扱い中での窓ガラス4の欠損、破損などが防止できる。
【0036】
挟持部材9で構成部材が挟持された積層ガラス2は図示しない減圧装置にセットされ、コンプレッサーを稼動して装置内部が所定の圧力まで減圧され、この減圧により窓ガラス4と中間部材5の接触面に残存する微量の空気を除去し、窓ガラス4と中間部材5がさらに緊密に密着する。
【0037】
この空気抜き工程を終了すると積層ガラス2は減圧装置から大気中に取り出されるが、外圧(大気圧)と挟持部材9の挟持圧力の相乗効果により、窓ガラス4と中間部材5の密着状態はそのまま良好に保たれ、窓ガラス4と中間部材5の接触面に再び空気が入り込むことはない。
【0038】
このようにして構成された積層ガラス2をサッシ枠3に取り付ける際、図4に示すように積層ガラス2の外周部は断面形状が略コ字形のビート20又はコーキングを介してサッシ枠3に予め形成されている溝部21内に挿入される。
【0039】
ビート20は通常、合成樹脂の成形体からなりある程度の硬さを有しているため、ビート20の外寸と溝部21の内寸のバラツキなどによって、溝部21に対するビート20の嵌合が弱い場合がある。
【0040】
本実施形態ではこの問題を解決するため、図4に示すようにビート20の溝部21と嵌合する嵌合部22の両側側面あるいは片側側面に、両面粘着テープ等の粘着テープ23を1枚あるいは複数枚予め貼着している。そして溝部21の内寸に合うように粘着テープ23を剥ぎ取って溝部21に挿入することにより、前述の寸法のバラツキに起因する嵌合力の低下を解消して、積層ガラス2をサッシ枠3に適正に取り付けることができる。図4に示す例は、図面に向って左側の粘着テープ23を1枚剥ぎ取って寸法調節した例を示している。
【0041】
本実施形態の場合、空気を排除した窓ガラス4と中間部材5の密着と、ビート20を介しての積層ガラス2のサッシ枠3への取り付けにより、放送受信用アンテナ8は外気から完全に遮断されるため、放送受信用アンテナ8の腐食、変質などが有効に防止できる。
【0042】
図9は本発明の第2実施形態に係る窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図、図10はその積層ガラスに使用するスペーサの拡大断面図、図11は積層ガラスを窓サッシに取り付けた状態を示す一部拡大断面図である。
【0043】
本実施形態に係る積層ガラス2は図9に示すように、対向するように配置された2枚の窓ガラス4と、その窓ガラス4の間の周縁部に連続して介在されたスペーサ24から構成され、そのスペーサ24の内側の2枚の窓ガラス4の間には空間部25が形成されている。
【0044】
一方あるいは両方の窓ガラス4の内面には、ITOなどの光線透過性導電層からなるアンテナ8が蛇行状あるいは渦巻き状など受信に適した長さになるように、蒸着あるいはプリントなどの適宜な手段によって形成されている。アンテナ8の両端部8a,8bは窓ガラス4の左右両端の上端面まで延びている。
【0045】
前記空間部25には、空気よりも熱伝導率が低く、且つ空気よりも比重が重い例えばアルゴン(熱伝導率:3.88×10−5cal/cm・sec・deg 比重:1.8)やクリプトン(熱伝導率:21.2×10−6cal/cm・sec・deg 比重:3.7)などの不活性ガス、あるいは乾燥空気などのガスが封入されて気体層26が形成されている。このように空間部25にガスを充填して気体層26を形成することにより、高い保温効果が得られるとともに、風圧による窓ガラス中央部の内側への変形を抑止することができる。
【0046】
このガスは図9に示す窓ガラス4と後述する支持体27の間の粘着層28に注射針を差し込んで、そこから内部にある空気と置換しながら注入される。また、空間部25と外部を連通する細い管体を予め粘着層28に埋設しておき、その管体を通して前記ガスを注入し、ガス充填後に管体の開口部を潰すなどして閉塞することもできる。このように空間部25には不活性ガスあるいは乾燥空気が封入されているから、窓ガラス4の内面に形成されたアンテナ8が変質、腐食することがなく、アンテナ8の耐用寿命を延長することができる。
【0047】
前記スペーサ24は、支持体27と、その支持体27の外周部全体に被覆・担持された粘着層28とから構成されている。支持体27は細長い例えば合成樹脂の成形体、硬質ゴムの成形体、金属線、金属板、撥水処理した紙質成形体、合成繊維や炭素繊維などの繊維成形体等の粘着層28よりも硬質の材料からなり、本実施形態ではポリ塩化ビニールからなる合成樹脂の成形体が用いられ、断面形状は円形あるいは楕円形をしている。
【0048】
前記粘着層28には、例えばブチルゴムやアクリルゴムなどのオレフィン系ゴム、ブタジエンゴムやイソプレンゴムなどのジェン系ゴム、ポリウレタン系ゴム、シリコーン系ゴムなどが用いられ、中でも水蒸気透過率が他のものよりも低く、ガラスとの密着性が良好で、粘着力が長期間維持できるなどの理由からブチルゴムが賞用される。
【0049】
図示していないが、細長い支持体27の素材はリールから一対の引き出しローラによって所定の速度で引き出されて、押出成型機の金型内に送り込まれる。この金型のキャビティ内には粘着層28の素材である高温状態の溶融物が回転するスクリューによって圧送されて、前記素材の外周部全体を所定の厚さで覆い、素材とともに金型から一対の引き出しローラによって引き出される。この引き出しローラの外周面には、例えばポリテトラフルオロエチレンやシリコーンなどの離型性の良い被膜が形成されている。
【0050】
金型と引き出しローラの間には、水冷式あるいは空冷式の冷却部が設けられており、素材の外周部に被覆・担持された溶融物が冷却されて粘着層28となる。この粘着層28で覆われた素材を所定の長さに切断して、積層ガラス2の組み立てに供される。
【0051】
本実施形態の場合、図10に示す支持体27の外径D1は1.2〜1.8mm、粘着層28の外径D2は3〜10mmで、このスペーサ24が2枚の窓ガラス4,4の間に介挿されて、空間部25の幅L(図9参照)が1.2〜1.8mmに保持される。そのため粘着層28の全体が図9に示すように2枚の窓ガラス4,4によって押し潰されて変形し、粘着層28が窓ガラス4,4の内面に密着する。それと同時に支持体27の断面形状が円形あるいは楕円形であるから、窓ガラス4,4と対向する外周面に接面圧が集中するため、前述した粘着層28の密着との相乗効果で高い気密性が維持できる。
【0052】
第1実施形態と同様に積層ガラス2の四隅は、複数の挟持部材9(9a〜9d)によって積層方向に弾性的に挟持される。挟持部材9a〜9dを積層ガラス2に装着した際、1つの挟持部材9aがアンテナ8の一方の端部8aと接触し、他の1つの挟持部材9bがアンテナ8の他方の端部8bと接触するようになっている(図9参照)。この積層ガラス2は図11に示すように、ビート22を介してサッシ枠3に取り付けられる。
【0053】
前記実施形態では窓ガラス4の内面にアンテナ8を被着したが、空間部25の外周部近くに棒状のアンテナを介在して、2枚の窓ガラス4で棒状のアンテナを挟持することも可能である。
【0054】
前記実施形態では空間部25を介して2枚の窓ガラス4を配置した構成になっているが、1枚の窓ガラス4の内面、すなわち屋内側の表面に放送用アンテナ8を形成することも可能である。その場合、アンテナ8を保護する目的で、アンテナ8を形成した窓ガラス4の内面全体に透明な保護フィルムを貼着するか、あるいは透明な樹脂液を塗布して保護膜を形成するとよい。前記保護フィルムあるいは保護膜は、光や熱を選択的に透過あるいは反射したり、紫外線を吸収したり、ガラスの飛散を防止するなどの機能性を有するものが好適である。
【0055】
図12は、前記実施形態の窓サッシ1を上側レール29と下側レール30の間にセットした状態を示す図である。窓サッシ1の上側の左右両端には導電性を有する接触片31a,31bが取り付けられており、一方の接触片31aは挟持部材9aを介してアンテナ8の一方の端部8aと電気的に接続され、他方の接触片31bは挟持部材9bを介してアンテナ8の他方の端部8bと電気的に接続されている。
【0056】
上側レール29は図13に示すように、その長手方向に沿って電気絶縁層32を介して2本の導電部33a,33bが設けられ、導電部33aに一方の接触片31aが弾性的に接触し、導電部33bに他方の接触片31bが弾性的に接触している。窓サッシ1の下側の左右両端にはポリプロピレンなどの合成樹脂製のローラ34が取り付けられ、ローラ34は下側レール30の上を転動する。
【0057】
図13に示すように上側レール29の導電部33a,33bはテレビジョン受像機35のアンテナ端子部36に信号ケーブル37を介して電気的に接続されている。従って窓サッシ1を開閉しても放送局(図示せず)から発せられる電波は窓サッシ1に内蔵されているアンテナ8によって受信し、受信した映像信号と音声信号をテレビジョン受信機35に送信することができる。
【0058】
下側レール30上を転動するローラ34として金属からなる導電性のものを使用して、ローラ34とテレビジョン受像機35のアンテナ端子部36と電気的に接続することも可能である。しかし、下側レール30上にはゴミ、水、油、その他異物などが付着しやすく、受信信号の伝達に支障をきたす懸念があるため、図12の実施形態に示すように窓サッシ1の上側に接触片31a,31bを取付け、それと上側レール29とを摺接する構造にした方が前述のような問題がなく好適である。
【0059】
前記実施形態では窓サッシ1がレール上を移動する移動式の窓サッシについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、固定式の窓サッシにも適用可能である。
【0060】
図14に示すように家屋(建物)38には一般的に南北方向や東西方向などに窓サッシ1が設置されているから、アンテナ8の方向性はとりやすい。また、従来のように屋根の上やベランダなどに立設したアンテナであると、強風や地震などの振動によってアンテナが倒れたり、位置や方向がずれたりすることがあるが、そのようなことがなくアンテナ8の固定が確実である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る窓サッシの平面図である。
【図2】その窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図である。
【図3】図2A部の拡大図である。
【図4】その積層ガラスをサッシ枠に装着した状態を示す一部拡大断面図である。
【図5】積層ガラスに使用する中間部材の平面図である。
【図6】その窓サッシに使用する挟持部材の拡大展開図である。
【図7】その挟持部材の拡大斜視図である。
【図8】ポリメタクリル酸メチルエステル樹脂板とガラス板の板厚と熱貫流率との関係を示す特性図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る窓サッシに使用する積層ガラスの拡大断面図である。
【図10】その積層ガラスに使用するスペーサの拡大断面図である。
【図11】積層ガラスを窓サッシに取り付けた状態を示す一部拡大断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る窓サッシを上側レールと下側レールの間にセットした状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る上側レールの導電部とテレビジョン受像機のアンテナ端子部の接続を説明するための図である。
【図14】家屋の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1:窓サッシ、2:積層ガラス、3:サッシ枠、4:窓ガラス、5:中間部材、6:凹凸、7:表面平滑膜、8:放送用受信アンテナ、8a,8b:放送用受信アンテナの端部、9a〜9d:挟持部材、10:第1挟持片部、11:第2挟持片部、12:連結片部、13:谷折り線、14:切欠部、15:端縁、16:突出部、17:端縁、18:嵌入部、19:谷折り線、20:ビート、21:溝部、22:嵌合部、23:粘着テープ、24:スペーサ、25:空間部、26:気体層、27:支持体、28:粘着層、29:上側レール、30:下側レール、31a,31b:接触片、32:電気絶縁層、33a,33b:導電部、34:ローラ、35:テレビジョン受像機、36:アンテナ端子、37:信号ケーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の放送受信用アンテナを窓ガラスによって担持して、その放送受信用アンテナの端部を受信機に接続するように窓枠の外側に取り出したことを特徴とする窓サッシ。
【請求項2】
請求項1に記載の窓サッシにおいて、前記放送受信用アンテナが光線透過性導電材から形成されていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窓サッシにおいて、前記放送受信用アンテナが前記窓ガラスの内面に形成されていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項4】
請求項3に記載の窓サッシにおいて、前記窓ガラスが2枚対向して形成され、その窓ガラスの内面に前記放送受信用アンテナが形成されて、その2枚の窓ガラスの内側周辺部にスペーサが介在され、2枚の窓ガラスとスペーサによって形成されている空間部が気密にシールされていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の窓サッシにおいて、2枚の前記窓ガラスの間に光線透過性の中間部材が介在され、その中間部材の表面に前記放送受信用アンテナが形成されていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項1】
薄膜状の放送受信用アンテナを窓ガラスによって担持して、その放送受信用アンテナの端部を受信機に接続するように窓枠の外側に取り出したことを特徴とする窓サッシ。
【請求項2】
請求項1に記載の窓サッシにおいて、前記放送受信用アンテナが光線透過性導電材から形成されていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窓サッシにおいて、前記放送受信用アンテナが前記窓ガラスの内面に形成されていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項4】
請求項3に記載の窓サッシにおいて、前記窓ガラスが2枚対向して形成され、その窓ガラスの内面に前記放送受信用アンテナが形成されて、その2枚の窓ガラスの内側周辺部にスペーサが介在され、2枚の窓ガラスとスペーサによって形成されている空間部が気密にシールされていることを特徴とする窓サッシ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の窓サッシにおいて、2枚の前記窓ガラスの間に光線透過性の中間部材が介在され、その中間部材の表面に前記放送受信用アンテナが形成されていることを特徴とする窓サッシ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−116699(P2010−116699A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289878(P2008−289878)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(505326508)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(505326508)
【Fターム(参考)】
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