説明

立体映像表示装置及び方法

【課題】本発明は、3D映像を、視聴者が真の立体映像を知覚できる所定の視聴位置の範囲とは異なる視聴位置で観察した場合、当該視聴者に対して視聴位置が前記所定の視聴位置の範囲と異なることを示す情報映像を視聴者に知らせる装置を提供する。
【解決手段】裸眼式の立体映像表示装置は、所定の視聴位置の範囲から観察すると本来の立体映像として知覚され、前記所定の視聴位置の範囲と異なる位置から観察すると不良立体映像が知覚されるような映像を表示する。3D関連制御器は、前記不良立体映像の信号に対して、視聴位置が前記所定の視聴位置の範囲と異なることを示す、図形若しくは文字若しくはマーク若しくは記号を表示する情報信号を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は立体映像表示装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊な眼鏡を使用することなく立体映像を知覚可能な裸眼式の立体映像表示技術は様々な分類が可能である。一般的な分類は、両眼視差を用いる両眼視差方式と実際に空間像を形成する空間像再生方式である。
【0003】
両眼視差方式はさらに2眼式と多眼式とに分類される。2眼式は、左眼用の画像と右眼用の画像とを左眼と右眼とでそれぞれ見えるようにした方式である。また、多眼式は映像撮影時の観察位置を複数にすることで情報量を増加し、より立体映像を観察できる範囲を広げた方式である。
【0004】
空間像再生方式はさらにホログラフィ方式とインテグラル・フォトグラフィ方式(以下、インテグラル方式と称するが、光線再生法とも称される)に分類される。インテグラル方式は両眼視差方式として分類されている場合もある。インテグラル方式は、光線の経路が撮影時と映像再生時とで全く逆の経路を辿るので、光線数を十分多くし且つ画素サイズを十分小さくできた場合には完全に近い立体映像が再生される。このため、理想的なインテグラル方式は空間像再生方式として分類される。
【0005】
ところで、多眼式やインテグラル方式のように眼鏡無しで立体映像を知覚するには、通常、以下の構成が採用される。2次元画像表示用画素配列上で立体映像表示用画素配列を構成する。立体映像表示用画素配列の前面側に立体映像表示用画素からの光線を制御する機能を有するマスク(光線制御素子とも称される)を配置する。マスクには、立体映像表示用画素よりも遥かに小さな(典型的には2次元画像表示用画素とほぼ同じ大きさの)窓部が立体映像表示用画素に対応した位置に設けられている。
【0006】
マスクとしては、微小なレンズが2次元的に配列されてなるフライアイレンズ、垂直方向に光学的開口が直線状に延び水平方向に周期的に配列される形状のレンチキュラーシート、またはスリットも用いられる。
【0007】
このような構成によると、個々の立体映像表示用画素により表示される要素画像はマスクによって部分的に遮られ、観察者は窓部を透過したもののみを視認することとなる。したがって、或る窓部を介して視認される2次元画像表示用画素を観察位置毎に異ならしめることができ、メガネを使用することなく立体映像を知覚することができる。
【0008】
しかしながら、この構成を採用した場合、正しい位置から観察したときには本来の立体映像,すなわち真の立体映像,が知覚されるものの、観察位置をずらすと、偽(或いは不良)立体映像が知覚される。これは、観察位置をずらすと、広視野角側では、或る立体映像表示用画素に対向した窓部から、その隣の立体映像表示用画素によって表示される要素画像の一部が視認されるためである。この場合、観察者は知覚している立体映像が真の立体映像か偽立体映像かを識別することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−215466号公報
【特許文献2】特開2000−2618285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の裸眼式の立体映像表示装置では、観察者は真の立体映像を知覚しているか否かを認識することが困難であるという課題がある。
【0011】
本発明の目的は、3D映像を、視聴者が真の立体映像を知覚できる所定の視聴位置の範囲とは異なる視聴位置で観察した場合、当該視聴者に対して視聴位置が前記所定の視聴位置の範囲と異なることを示す情報映像を視聴者に知らせることができる立体映像表示装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態によれば、裸眼式の立体映像表示装置は、所定の視聴位置の範囲から観察すると本来の立体映像として知覚され、前記所定の視聴位置の範囲と異なる位置から観察すると不良立体映像が知覚されるような映像を表示する。3D関連制御器は、前記不良立体映像の信号に対して、視聴位置が前記所定の視聴位置の範囲と異なることを示す、図形若しくは文字若しくはマーク若しくは記号を表示する情報信号を挿入する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る立体映像表示装置の概略を示す図である。
【図2】立体映像表示装置と観察位置との関係、及び各観察位置で知覚される像を示す図である。
【図3】立体映像を知覚している観察位置が所定の観察位置の範囲と異なることを示す文字列が表示された例を示す図である。
【図4】立体映像を知覚している観察位置が所定の観察位置の範囲と異なることを示す文字列が表示された他の例を示す図である。
【図5】立体映像表示装置の3D関連制御の設定を行うときの設定画面例を示す図である。
【図6】3D視聴位置の表示領域の例を示す図である。
【図7】立体映像表示装置の3D関連制御の設定を行うときの他の設定画面例を示す図である。
【図8】3D処理モジュールの構成例を示す図である。
【図9】立体映像表示装置が一体化したテレビジョン受信装置の全体構成例を示す図である。
【図10】3D処理モジュール及び3D関連制御器の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
先ず、立体映像表示の原理を説明する。図1は、実施形態に係る立体映像表示装置の一例を概略的に示す断面図である。実施形態はインテグラル方式による立体視の例を説明するが、立体視の方式はインテグラル方式に限定されず、裸眼式であれば何でも良い。
【0016】
図1に示す立体映像表示装置1は、縦横に配列した多数の立体映像表示用画素11を有する表示ユニット10と、それらから離間するとともにそれら立体映像表示用画素11に対応して多数の窓部22が設けられたマスク20とを備えている。
【0017】
マスク20は光学的開口を有し、上記画素からの光線を制御する機能を有し、視差バリアまたは光線制御素子とも呼ばれる。マスク20は透明基板上に多数の窓部22に対応した多数の開口を有する遮光体パターンを形成したものや、遮光板に多数の窓部22に対応した多数の貫通孔を設けたものなどを使用することができる。あるいは、マスク20の他の例としては、多数の微小なレンズを2次元的に配列してなるフライアイレンズ、光学的開口が垂直方向に直線状に延び水平方向に周期的に配列される形状のレンチキュラーレンズも使用可能である。さらに、マスク20として、透過型の液晶表示ユニットのように窓部22の配置、寸法、形状などを任意に変更可能なものを使用してもよい。
【0018】
静止画の立体視の場合は、立体映像表示用画素11は画像が印刷された紙でも良い。しかし、動画像を立体視するためには、液晶表示ユニットを用いて立体映像表示用画素11を実現する。透過型の液晶表示ユニット10の多数の画素が多数の立体映像表示用画素11を構成し、液晶表示ユニット10の背面側には面光源であるバックライト30を配置している。液晶表示ユニット10の前面側には、マスク20を配置している。
【0019】
透過型の液晶表示ユニット10を使用する場合、マスク20はバックライト30と液晶表示ユニット10との間に配置してもよい。液晶表示ユニット10及びバックライト30の代わりに有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置や陰極線管表示装置やプラズマ表示装置などのように自発光型の表示装置を使用しても良い。その場合、マスク20は自発光型表示装置の前面側に配置する。
【0020】
図は、立体映像表示装置1と観察位置A00,A0R、A0L及びAR1の関係を概略的に示している。
【0021】
観察位置は画面(あるいはマスク)との距離を一定に保ったまま表示画面の水平方向に平行移動した位置である。図2は図1に示す各観察位置A00,A0R、A0L及びAR1から観察した場合に知覚される立体映像を概略的に示す図である。
【0022】
この例では、1つの立体映像表示用画素11が、複数の(例えば5つの)2次元表示用画素で構成されている例を示している。画素の数は1つの例であり、5より少なくてもよく(例えば2個))さらに数が多くても良い(例えば9個)。
【0023】
図1において、破線41は隣接する立体映像表示用画素11間の境界に位置する単一画素の中心と、マスク20の窓部22とを結ぶ直線(光線)である。図1において、太線52の領域が真の立体映像(本来の立体映像)が知覚される領域である。観察位置A00,A0R、A0Lは、太線52の領域内である。太線52の外の観察位置、例えば観察位置AR1では、偽立体映像が知覚される。以下、真の立体映像のみが知覚される観察位置を「視域」と称する。
【0024】
立体映像表示用画素11から発せられた光線には本来通過すると仮定したマスク20の窓部22のみを通過する所定方向の光線のみでなく、それ以外の、特に、隣接した窓部を通過する不所望の光線をも含む。不所望の光線は本来知覚されるべき真の立体映像には必要の無い光線であることから、真の立体映像の知覚を阻害すると同時に、この不所望の光線が真の立体映像とは異なる偽立体映像を知覚させる。
【0025】
偽立体映像は、真の立体映像と似通ってはいるものの、通常、設計値のずれが反映されて歪んだ像(不良立体映像)として知覚される。また、不所望の光線が真の立体映像の知覚を阻害する場合には、真の立体映像と偽立体映像とが混在して知覚される。
【0026】
図2に示すように、観察位置A00,A0R、A0Lでは、正常な立体映像51−0,51−L,51−Rが知覚される。これらの視域内で観察した場合でも、観察位置に応じて真の立体映像の見え方は変化する。
【0027】
これに対して、領域52の外、つまり範囲Lからずれた例えば右の観察位置AR1では、真の立体映像53−1と偽立体映像53−2との混在像が知覚される。知覚される混在像に占める偽立体映像53−2の割合は、太線52の領域から離れる程大きくなる。
【0028】
偽立体映像53−2は真の立体映像53−1に対して深さ方向が逆になっている。偽立体映像を含む立体映像(観察位置AR1で知覚される)は逆視像とも称され、真の立体映像(観察位置A00,A0R、A0Lで知覚される)は正視像とも称される。
【0029】
上述の説明は観察位置を表示画面の水平方向に平行移動した場合に関する。しかし、観察位置を表示画面の垂直方向に平行移動した場合でも同様に、観察位置に依存して立体映像の真偽が変わる。ただし、レンチキュラーレンズ、あるいは画面垂直方向に伸びるスリットをマスク20として用いた場合は、観察位置を垂直方向に移動しても知覚される立体映像は変わらない。このようなマスク20は水平視差のみを利用して立体視を実現するからである。フライアイレンズや開口部が2次元的に配列されるマスク20を用いる場合は、水平、垂直の両方向の視差を利用して立体視を実現する。また、観察位置を画面に直交する距離方向に移動する場合、あるいは平行移動と距離方向への移動とが混在した場合、あるいは画面までの距離は不変で、画面の中心を中心とする円周上に移動する場合も同様に、観察位置に応じて立体映像の真偽が変わる。しかし、観察者は立体映像の真偽を識別することは困難である。
【0030】
以上説明したように、裸眼式の立体映像表示装置では、限られた視域以外に観察者が移動した場合は、逆視像(偽立体映像を含む)を知覚してしまう。すなわち、裸眼式の立体映像表示装置では、知覚される画像は観察位置に応じて異なる。観察者が正視像を知覚する位置、逆視像を知覚する位置は、表示装置の画面サイズ、立体視の原理等により固有である。
【0031】
本実施形態では、観察位置AR1で逆視像が知覚されることを積極的に利用する。即ち、領域52の外、つまり範囲Lからずれた観察位置で偽立体映像を提示する映像信号(例えば先の偽立体映像53−2)に対して、グラフィックスによるメッセージを多重しておくのである。メッセージ内容としては、例えば図3に示すように「正面から見てください」というようなメッセージである。図4にも実際に上記のメッセージを表示した際の画面70の例を示している。このグラフィックスメッセージは、立体映像表示用画素の中の一部の画素を任意に選択し、この画素に対応する映像信号にメッセージ用グラフィックス信号を多重することで実現できる。例えば、図1に示した光線42a,42b,43a,43bなどを出力している画素に対して供給する信号に対して、メッセージ用グラフィックス信号が多重される。メッセージ用グラフィックス信号は、この呼び名に限定される必要はなく、観察者の視聴位置が所定の視聴位置の範囲(正常な立体映像を知覚できる範囲)と異なることを示す、図形若しくは文字若しくはマーク若しくは記号を表示する情報信号であればよい。
【0032】
図5(A),図5(B)は、所定の観察位置で知覚される立体映像の画面70の例を示している。またこの図5(A),図5(B)は、3D設定画面71の例を示している。即ち、リモートコントローラの例えばメニューボタンを操作するとメニュー画面が現れ、このメニュー画面の“3D設定”の項目にカーソルを合わせて、決定ボタンを押すと、3D設定画面71が表示される。この3D設定画面71のなかには、”3D視聴位置お知らせ表示”という項目があるので、この項目にカーソルを合わせて決定ボタンを押すと、図5(B)に示すように3D視聴位置(又は3D現在位置)お知らせ表示をオンにするのかオフにするかを選択する選択画面72が表示される。ここで、”オン”の項目にカーソルを合わせて決定ボタンを押すと、逆視像が知覚されるような状態になったとき、図4で説明したような表示を得ることができる。“3D視聴位置”と言う用語は、限定されるものではなく“3D現在位置”、“3D観察位置”、あるいは単純に“現在位置”、“観察位置”などと称しても良い。
【0033】
上記したように、3D視聴位置お知らせ表示は、グラスレス立体映像表示装置をはじめて使用するユーザが正しくない角度から視聴した場合、立体(3D)映像として正しく見えないことを注意喚起することができる。
【0034】
しかし、使い慣れてくると、視聴している立体(3D)映像から、正しい角度から視聴しているかどうかをユーザが判断できるようになり、3D視聴位置お知らせ表示が、かえって映像視聴の妨げになることが考えられる。
【0035】
そこで、3D視聴位置お知らせ表示を「オン」「オフ」でできる設定画面を新たに設けることで、ユーザが3D視聴位置お知らせ表示するかどうかを設定できるようにしている。なお、初期値は「オフ」とする。また2Dでは表示する必要がないため、「オン」設定の場合であっても、2D表示に切り替わったときは文言を表示しない。これは装置が、2Dモードであるか3Dモードであるかを判定できる3D関連制御器(図9に示す)(3D/2D出力検出モジュール、メッセージ出力オンオフ切り換えモジュールなどを含む)が、2Dモードであると判定した場合は、3D視聴位置お知らせ用の情報を映像信号に多重しないようにしている。もちろん、このモジュールは、3D視聴中に、操作入力に応じて3D視聴位置お知らせ表示を「オン」「オフ」可能とし、ユーザは3D映像を見ながら、3D視聴位置お知らせ表示の表示状態を確認できる。
【0036】
図6は、3D視聴位置お知らせメッセージの表示位置の例を示している。例えば、1フレームの画面が800ライン、1280ピクセルであるとする。又この例では画面の下側に80ライン分のマスク部分が確保されているものとする。マスク部分は、画面上下に分割されて配置されていてもよい。このような画面(表示領域)において、3D視聴位置お知らせメッセージ領域は、例えば、画面左右の中央であって、幅640ピクセル±20ピクセル程度で、上下方向の幅は、ライン数80ライン±10ライン程度の場合が効果的であった。この3D視聴位置お知らせ表示は、画面中央に表示する。メッセージ領域と画面との比で述べるとメッセージ領域は、水平方向がメインビデオ画面の約(1/2)±(1/64)であり画面の左右中央位置、垂直方向が表示領域の約(1/9)±(1/72)であり、上下位置は問わない位置であり、これにより視認性の向上が得られた。上記のように画面の水平方向の中央位置に、3D視聴位置お知らせ表示を行うようにすると、画面を正面からみたときに、正常な立体映像に対して3D視聴位置お知らせ表示が混入しなくなる。
【0037】
さらに、3D関連制御器(図9に示す)は、3D視聴位置お知らせ表示を、操作或いは設定に応じて透過にすることができ、視聴している映像に妨げにならないようにすることもできる。また透過率をユーザが設定できる。さらにまたこの場合は、3D視聴位置お知らせの表示位置を修正することも可能である。この実施形態の場合は、図7に示すように、透過率を設定する項目がメニュー画面内に現れる。ユーザは、リモコン操作により、カーソルを所望の設定項目(透過率0%、20%、50%、70%など)の位置に合わせ、決定ボタンを押すことで、3D視聴位置お知らせ表示の透過率を設定できる。このとき、透過の程度を示す3D視聴位置お知らせ表示のサンプル画像75が表示されてもよい。またユーザは、リモコン操作により、“位置調整”の項目にカーソルを合わせて決定ボタンを押すと、3D視聴位置お知らせ表示位置を調整可能となる。決定ボタンをおすと、サンプル画像75が点滅を開始し、カーソル移動ボタンにより、サンプル画像75を画面上の所望の位置へ移動させることができる。ユーザは、サンプル画像75を画面上の所望の位置(上下左右)に移動させた後、決定ボタンを押すと、該移動位置が、今後の3D視聴位置お知らせの表示位置として決定され、サンプル画像75が消去される。
【0038】
また、3D視聴位置お知らせ表示の幅を変更することも可能である。このときは、さらに、ユーザがメニュー画面をスクロールさせると、“3D視聴位置お知らせ表示の幅変更”項目が現れる。この“3D視聴位置お知らせ表示の幅変更”項目を選択し、決定ボタンを押すと、サンプル画像75が表示され、幅変更のためのガイドメッセージが表示される。ユーザは、例えば、カーソルをサンプル画像75のエッジに合わせて、リモコンの矢印ボタンを操作することで幅を調整可能である。サンプル画像75の幅を所望の幅に調整し決定ボタンを押すと、幅が決定され、そしてサンプル画像75は消去される。
【0039】
図8は、上記の処理を実行する3D処理モジュール80の例を示している。この3D処理モジュール80は、例えば高解像度の2Dデジタル入力映像信号を3D用信号フォーマットとして成型するフォーマット設定部81を有する。なお3D用信号が入力した場合は、そのまま採用することができる。
【0040】
フォーマット設定部81で3Dフォーマット化された2Dデジタル入力映像信号は、3D用情報処理部82と、2D/3D変換器83により、3D構成用の複数(例えば9個)の映像プレーンに分解される。又このときメインビデオデータの各画素に対する深さ情報(奥行き情報と称してもよい、この情報は視差情報も含むものとする)、グラフィックスデータの各画素に対する深さ情報などが生成される。
【0041】
3D構成用の複数の映像プレーン及び深さ情報は、3D映像生成部84に入力され、3D映像表示用信号(立体映像表示用信号)に変換される。この3D映像表示用信号は、図1で示した立体映像表示用画素を駆動する絵柄信号となる。
【0042】
3D用信号フォーマットは、メインビデオデータを配置する領域90a、グラフィックスデータ(R,G,B画素を含む)を配置する領域90b、グラフィックスデータの偶数ラインの画素の深さ情報を配置する領域90c1、グラフィックスデータの奇数ラインの画素の深さ情報を配置する領域90c2、メインビデオデータの偶数ラインの画素の深さ情報を配置する領域90d1、メインビデオデータの奇数ラインの画素の深さ情報を配置する領域90d2を有する。メインビデオデータの画素の深さ情報は、偶数画素と奇数画素に関する深さ情報が含まれている。
【0043】
メインビデオデータの領域90aは例えば1280画素×720ライン、領域90bは640画素×720ライン、領域90c1は640画素×360ライン、領域90c2は640画素×360ライン、領域90c1は320画素×360ライン、領域90c2は320画素×360ラインである。
【0044】
メインビデオデータ及びグラフィックスデータの領域90a,90bを除く他の領域90c1,90c2,90d1,90d2は、3D信号生成用制御情報領域と称してもよい。3D信号生成用制御情報は、3D用情報処理部82と、2D/3D変換器83において生成され、所定の領域へ配置される。
【0045】
図9は、実施形態が適用された装置の一例でありテレビジョン放送受信装置2100の信号処理系を概略的に示している。デジタルテレビジョン放送受信用のアンテナ222で受信したデジタルテレビジョン放送信号は、入力端子223を介してチューナ224に供給される。このチューナ224は、入力されたデジタルテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。チューナ224から出力された信号は、デコーダ225に供給されて、例えばMPEG(moving picture experts group)2デコード処理が施された後、セレクタ226に供給される。
【0046】
またチューナ224の出力は、直接セレクタ226に供給されている。この信号から映像・音声情報などが分離され、この映像・音声情報が制御部235を介して記録・再生信号処理器255で処理され、ハードディスクドライブ(HDD)257にて記録されることも可能である。HDD257は、ユニットとして端子256を介して記録・再生信号処理器55に接続されており、交換することも可能である。またHDD257は、信号の記録器、読み取り器を含む。
【0047】
アナログテレビジョン放送受信用のアンテナ227で受信したアナログテレビジョン放送信号は、入力端子228を介してチューナ229に供給される。このチューナ229は、入力されたアナログテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。そして、このチューナ229から出力された信号は、A/D(analog/digital)コンバータ230によりデジタル化された後、セレクタ226に出力される。
【0048】
また、例えばVTRなどの機器が接続されるアナログ信号用の入力端子231に供給されたアナログの映像及び音声信号は、A/Dコンバータ232に供給されてデジタル化された後、セレクタ226に出力される。さらに、例えば光ディスク再生装置などの機器が接続されるデジタル信号用の入力端子233に供給されたデジタルの映像及び音声信号は、そのままセレクタ226に供給される。
【0049】
A/D変換された信号が、HDD257にて記録される場合は、セレクタ226に付随しているエンコーダ・デコーダ236内のエンコーダにより、所定のフォーマット例えばMPEG(moving picture experts group)2方式による圧縮処理が施された後、記録・再生信号処理器255を介してHDD257に記録される。記録・再生信号処理器255は、記録制御器233aと相俟って、HDD257に情報を記録する場合、例えばHDD257の何処のディレクトリに対してどのような情報を記録するかを予めプログラムされている。したがってストリームファイルをストリームディレクトリに格納するときの条件、識別情報を録画リストファイルに格納するときの条件などが設定されている。
【0050】
セレクタ226は、4種類の入力デジタル映像及び音声信号から1つを選択して、信号処理器234に供給している。この信号処理器234は、入力されたデジタル映像信号からオーディオ情報、ビデオ情報を分離し、所定の信号処理を施している。信号処理としては、オーディオ情報に関しては、オーディオデコード・音質調整・ミックス処理などが任意に行われる。ビデオ情報に関しては、カラー・輝度分離処理、カラー調整処理、画質調整処理などが行われる。
【0051】
また信号処理器234内には、先に説明した3D処理モジュール80も含まれる。ビデオ出力部239では、3D・2Dの切り替えに応じて3D信号出力又は2D信号出力の切り替えが行われる。またビデオ出力部239は、制御ブロック235からのグラフィック映像、文字・図形・記号・等の映像、ユーザインターフェース映像、番組表の映像などをメイン映像に多重する合成部も含む。ビデオ出力部235は、走査線数変換を含んでもよい。
【0052】
オーディオ情報は、オーディオ出力回路237でアナログ化され、音量、チャンネルバランスなどの調整を受けた後、出力端子238を介してスピーカ装置2102に出力される。
【0053】
ビデオ情報は、ビデオ出力回路239にて、画素の合成処理、走査線数変換など受けたのち、出力端子242を介して表示装置2103へ出力される。表示装置2103としては、例えば、図1で説明した装置が採用される。
【0054】
このテレビジョン放送受信装置2100は、各種の受信動作を含む種々の動作を制御ブロック235によって統括的に制御されている。この制御ブロック235は、CPU(central processing unit)等を内蔵したマイクロプロセッサの集合である。制御ブロック235は、操作部247からの操作情報、または、リモートコントローラ2104から送信された操作情報がリモコン信号受信部248を取得され、これにより、その操作内容が反映されるように各種ブロックをそれぞれ制御している。
【0055】
制御部235は、メモリ249を使用している。このメモリ249は、主として、そのCPUが実行する制御プログラムを格納したROM(read only memory)と、該CPUに作業エリアを提供するためのRAM(random access memory)と、各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを備えている。
【0056】
またこの装置はインターネットを介して外部サーバーとの通信を行うことも可能である。接続端子244からのダウンストリーム信号は、送・受信器245で復調され変調・復調器246で復調され、制御ブロック235に入力される。またアップストリーム信号は、変調・復調器246で変調され、送・受信器245で送信信号に変換され接続端子244に出力される。
【0057】
制御ブロック235は、外部サーバーからダウンロードされた動画像あるいはサービス情報を変換処理し、ビデオ出力回路239に供給することができる。また制御ブロック235は、リモコン操作に応答して、外部サーバーに向けてサービス要求信号を送信することもできる。
【0058】
さらに制御ブロック235は、コネクタ251に装着されたカードタイプメモリ252のデータを読み取ることも可能である。このために本装置は、例えば、カードタイプメモリ252から写真画像データを取り込み、表示装置2104に表示することが可能である。また特殊なカラー調整などを行う際に、カードタイプメモリ252からの画像データを標準データ或いは参照データとして用いることも可能である。
【0059】
上記装置において、ユーザは、デジタルテレビジョン放送信号の所望の番組を視聴すると共に、HDD257に保存したいと思う場合、リモートコントローラ2104を操作することによりチューナ224を制御し、番組選択を行う。
【0060】
チューナ224の出力は、デコーダ225でデコードされベースバンド映像信号に復号され、このベースバンド映像信号は、セレクタ226から信号処理器234に入力する。これによりユーザは、所望の番組を表示装置2103で見ることができる。
【0061】
また選択された番組のストリーム(多数のパケットからなる)は、セレクタ226を介して制御ブロック235に入力する。ユーザが録画操作を行えば、記録制御器35aは、前記番組のストリームを選択して記録・再生信号処理器255に供給する。記録制御器235a及び記録・再生信号処理器255の動作により、例えば前記番組のストリームに対してファイル番号が付され、ストリームファイルとしてHDD257のファイルディレクトリに格納される。
【0062】
また、ユーザがHDD257に記録されているストリームファイルを再生して視聴したい場合、例えばリモートコントローラ2104を操作して、例えば録画リストファイルの表示を指定する(この録画リストファイルについては後でさらに詳しく説明する)。
【0063】
録画リストファイルは、HDD257にどのようなストリームファイルが記録されているのかを示すファイル番号やファイル名(識別情報と称する)のテーブルを有する。ユーザが録画リストファイルの表示を指定すると、録画リストがメニューとして表示されるので、ユーザは、表示されたリストの中の希望の番組名あるいはファイル番号の位置にカーソルを移動させ、決定ボタンを操作する。すると、所望のストリームファイルの再生が開始される。
【0064】
指定されたストリームファイルは、再生制御器235bの制御のもとで、HDD257から読み出され、記録・再生信号処理器255で復号され、制御ブロック235、セレクタ226を経由して信号処理器234に入力される。
【0065】
ここで、制御ブロック235は、記録制御器235a、再生制御器235b、及び3D関連制御器235cを含む。
【0066】
図10には、3D関連制御器235cと3D処理モジュール80、ビデオ出力回路239を取り出して示している。
【0067】
3D関連制御器235cは、図5で説明したように3D視聴位置お知らせ表示を行うか否かを設定することができる。この設定は、3D視聴位置お知らせ表示設定モジュール80aが操作信号に応じて、メッセイー時挿入モジュール80bを制御することにより実施する。また3D視聴位置お知らせの表示位置の設定(図6で説明した)は、表示領域設定/調整モジュール80dにより実施される。またこの表示領域設定/調整モジュール80dは、操作信号に応じて、3D視聴位置お知らせの表示位置を上下に移動させることができる。さらにまた、透過率制御モジュール80cは、3D視聴位置お知らせの映像の透過率を操作信号に応じて調整することもできるし、初期設定することもできる。
【0068】
上記の説明において、「偽立体映像」と称したが、この呼び名は実施形態において都合が良い表現であるために使用した。しかし本発明は、種々の実施形態、応用が可能である。基本的には、発明の概念は、逆視像が知覚されることを積極的に利用する点にある。したがって、「偽立体映像」は、「変形立体映像」、「副立体映像」、「逆視立体映像」などと称してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10・・・表示ユニット、11・・・立体映像表示用画素、20・・・マスク、30・・・バックライト、22・・・窓部、41,42a, 42b、43a, 43b・・・光線、51−0、51−R,51−L・・・正常な立体映像、53−2、54−2・・・偽立体映像、70・・・画面、71・・・3D設定画面、72・・・選択画面、80・・・3D処理モジュール、235・・・3D関連制御器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の視聴位置の範囲から観察すると本来の立体映像として知覚され、前記所定の視聴位置の範囲と異なる位置から観察すると不良立体映像が知覚されるような映像を表示する裸眼式の立体映像表示装置において、
前記不良立体映像の信号に対して、視聴位置が前記所定の視聴位置の範囲と異なることを示す、図形若しくは文字若しくはマーク若しくは記号を表示する情報信号を挿入する3D関連制御器を有した立体映像表示装置。
【請求項2】
前記3D関連制御器は、前記情報信号の表示映像の領域を、メインビデオ信号の水平方向の幅に対して、約(1/2)±(1/64)の水平幅に設定する手段を含む請求項1記載の立体映像表示装置。
【請求項3】
前記3D関連制御器は、前記情報信号の表示映像をオンオフする手段を含む請求項2記載の立体映像表示装置。
【請求項4】
前記3D関連制御器は、操作入力に応じて前記情報信号の表示映像に対して透過率を制御する手段を含むことを特徴とする請求項3記載の立体映像表示装置。
【請求項5】
前記3D関連制御器は、操作入力に応じて前記情報信号の表示映像を画面上下に移動させる手段を含むことを特徴とする請求項3記載の立体映像表示装置。
【請求項6】
前記不良立体映像は逆視立体映像であり、前記情報信号は、視聴位置を指示する文字列であることを特徴とする請求項1記載の立体映像表示装置。
【請求項7】
所定の視聴位置の範囲から観察すると本来の立体映像として知覚され、前記所定の視聴位置の範囲と異なる位置から観察すると不良立体映像が知覚されるような映像を表示する裸眼式の立体映像表示方法において、
前記不良立体映像の信号に対して、視聴位置が前記所定の視聴位置の範囲と異なることを示す、図形若しくは文字若しくはマーク若しくは記号を表示する情報信号を挿入するようにした立体映像表示方法。
【請求項8】
前記情報信号の表示映像の領域を、メインビデオ信号の水平方向の幅に対して、約(1/2)±(1/64)の水平幅に設定する請求項8記載の立体映像表示方法。
【請求項9】
操作入力に応じて、前記情報信号の表示映像をオンオフする請求項8記載の立体映像表示方法。
【請求項10】
操作入力に応じて前記情報信号の表示映像に対して透過率を制御及びまたは前記情報信号の表示映像を画面上下に移動させる請求項8記載の立体映像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−129706(P2012−129706A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278069(P2010−278069)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【特許番号】特許第4956664号(P4956664)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】