立体水耕栽培装置
【課題】 栽培装置全体の軽量化と病虫害の防止,多段に配した貯留槽内への培養液の均一な供給により植物を均一に生育させて生産性を高める立体水耕栽培装置の提供。
【解決手段】 温度、湿度および炭酸ガス濃度を調整する空調手段を有する植物栽培用室内において、縦横に配列した多数の支柱の左右両側にそれぞれ多段に形成した複数の栽培棚12と、各支柱11の間を仕切板16で仕切って形成したチャンバー15と、内部に培養液を供給する貯留槽21を有した栽培ベッド20と、前記栽培ベッドの上面に移動可能に被せ、植物の根を下方に突出する複数の孔を有した生育パネル30と、前記植物に人工光を照射して光合成をさせる照明灯40と、前記各栽培ベッドの貯留槽に所定濃度の培養液をそれぞれ供給する送液手段45とを備える。
【解決手段】 温度、湿度および炭酸ガス濃度を調整する空調手段を有する植物栽培用室内において、縦横に配列した多数の支柱の左右両側にそれぞれ多段に形成した複数の栽培棚12と、各支柱11の間を仕切板16で仕切って形成したチャンバー15と、内部に培養液を供給する貯留槽21を有した栽培ベッド20と、前記栽培ベッドの上面に移動可能に被せ、植物の根を下方に突出する複数の孔を有した生育パネル30と、前記植物に人工光を照射して光合成をさせる照明灯40と、前記各栽培ベッドの貯留槽に所定濃度の培養液をそれぞれ供給する送液手段45とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境を制御できる屋内または室内において、植物、例えば、葉物野菜やハーブ類や花卉などを多量に栽培する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋内で植物を育てる水耕栽培技術には多種多様なものがあり、いわゆる野菜工場といわれて屋内で植物を多量に収穫できる水耕栽培は、天候に左右されることなく、無農薬で室内の温度や照明と培養液の管理を人工的に制御することができるので、露地栽培で生産する植物より効率的に収穫することが可能であることから広く行われている。
【特許文献1】特開昭62−55028号公報
【0003】
屋内で水耕栽培を行う場合、栽培装置は植物を効率的に収穫するために室内の許容範囲一杯に栽培棚を多段に設け、各栽培棚に取付けた栽培ベッドに被せた生育マットに植えた苗に十分な光を照射して光合成を行わせるため、多くの人工灯を取付けて苗の生育を促進させている。また、各栽培ベッドに供給する培養液は、各栽培ベッドに効率良く循環させるため最上部の栽培棚からオーバーフロー方式で順次下段の培養槽内に流下して循環させる方法が行われている。
【特許文献2】特公平6−61190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した植物の栽培装置は、以下のような問題点を有している。
(1)栽培ベッドを構成する貯留槽の断面形状が箱型に形成してあり、多段に配した各棚の栽培ベッドに貯留する培養液を多量に必要とするため、培養液を貯留する各段の栽培ベッドの総重量が非常に重くなる。栽培装置は、建物の一部屋だけでなく建物の各階の部屋ごとに形成される場合が多いことから、それぞれの部屋の栽培装置が重いと、建物全体に加わる負荷が大きくなるため、建物の強度によっては栽培段数が制限される場合がある。栽培段数が制限されることは、生産効率が悪化して多量生産を図ることができない。
【0005】
(2)各栽培棚に載置した多数の栽培ベッドに植えた植物が、光合成を効率的に行なえるように照明灯を接近して設置してある。そのため、照明灯から発する輻射熱によって植物の葉が縮れたり黒く変色したりする、いわゆるチップバーン現象や、栽培ベッドに貯留される培養液の温度が高くなるなどの現象が起きてしまう。このチップバーン現象や培養液の温度が高くなると植物の生育は阻害され、植物の商品価値が半減してしまう。
【0006】
(3)各段の栽培ベッドに貯留される培養液の濃度は、前記した流下方式で行うと上段の培養液は一定の濃度を保つが、下段の栽培ベッドに流下するにしたがって培養液中の栄養分は上段で吸収されて養分が薄くなり、植物の生育が悪くなって効率的に生産することができない。また、栽培ベッドに貯留される培養液は、オーバーフロー方式で排水するため、槽内の底面付近の下層培養液は槽内に張った植物の根や微生物の繁殖またはゴミの滞留などでよどみやすく、さらに貯留槽を長尺に形成してあるため培養液の濃度にむらが生じて、植物の生育にばらつきが生じて均一に生育させることができない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、栽培ベッドに貯留される培養液の量を軽減して装置全体の軽量化を図ると共に、照明灯から発する輻射熱を吸引排気して栽培ベッド付近の温度を下げ、チップバーン現象や培養液の温度の上昇を防止する。そして、多段に配した栽培ベッドに送液する培養液の濃度と流量を同じにすることにより、全ての段の植物を均一に生育させて効率良く収穫できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立体水耕栽培装置は、温度、湿度および炭酸ガス濃度を所定値に調整する空調手段を有する植物栽培用室内において、室内の広さに合わせて縦横に配列した多数の支柱11の左右両側にそれぞれ多段に設けた複数の栽培棚12と、縦列方向に位置した各支柱の間を仕切板16で仕切って形成したチャンバー15と、前記栽培棚12にそれぞれ格納され、上面が開口して内部に培養液を供給する貯留槽21を有した栽培ベッド20と、前記栽培ベッド20の上面に移動可能に被せて、植物の根が下方に突出した各植物Xを支持する複数の孔32を有し、且つ、両端に切欠部31を有した生育パネル30と、前記栽培ベッド20の下面に設けて各植物Xに人工光を照射して光合成をさせる照明灯40と、各栽培ベッド20の貯留槽21に所定濃度の培養液Yをそれぞれ供給する送液手段45とを備えてなることを特徴とする。また、前記チャンバー15の仕切板16には、各栽培棚12に設けた照明灯40の照射空間と合致する位置に排気孔17を設け、該排気孔から前記照明灯の照射空間で発生した輻射熱を該チャンバー15内に排気させて各栽培棚12上の空気の流れを良くし、植物Xの生育障害や培養液Yの温度上昇を防止することを特徴とする。さらに、前記栽培ベッド20は、両側面をテーパー状の樋型に形成した一対の貯留槽21の中央部に通気孔24を有した連結板23を一体に形成し、該連結板の両側端および貯留槽21の両側上端に、前記生育パネル30を載せる係止突部25とガイド凸部26を設け、各貯留槽21の一端に設けた給水管52の先端に流量調節用のキャップ55を着脱可能に取付け、他端内部に設けた排水管60の水位筒62の下部に下層水排水用の切欠溝63を設けたことを特徴とする。さらにまた、前記生育パネル30は、長手方向の両端中央に半円状の切欠部31を設け、且つ、両側にそれぞれ互い違いに複数の孔32を形成し、該孔32の幅方向に植物苗挿入用の挿入溝33を有し、底面には長手方向に前記栽培ベッド20の係止突部25およびガイド凸部26と嵌合する係止凹部34及びガイド凹部35を設けてなることを特徴とする。また、前記送液手段45は、所定の培養濃度に調整した培養液Yを貯留する培養タンク46と、前記培養タンク46内の培養液Yを各栽培ベッド20の貯留槽21に送液する送液ポンプ47と、前記培養液Yの不純物を除くフイルター槽48とからなり、培養タンク46内の培養液Yを送液ポンプ47により各貯留槽21にそれぞれ送液し、各貯留槽21から還流した培養液Yを所定濃度に調整して前記フイルター槽48で不純物を除き、前記送液ポンプ47で循環供給させることを特徴とする。
【0009】
したがって、本発明は栽培ベッド20の貯留槽21の容積を小さくし、培養液Yの貯水量を減少させて装置全体の軽量化を図り、照明灯40から発する輻射熱を支柱と支柱との間に設けたチャンバー15の排気孔17から吸引排気して栽培ベッド20付近の輻射熱を除去し、植物Xの生育障害や培養液Yの温度の上昇を防止する。また、各段の貯水槽21の一端に取付けたキャップ55により培養液Yの流入量を調節すると共に、他端内部に配した水位筒62の上部や、下部に設けた切欠溝63から貯留槽21内の下層水を排水させて槽内全体の流れを良好にして培養液Yの養分を均一化し、植物Xを均一に生育させて生産効率を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明にかかる立体水耕栽培装置の一部破断した全体の構成図、図2は立体水耕栽培装置の縦列方向を示す断面図、図3は縦列方向に位置した支柱と支柱との間にチャンバーを設けた状態を示す平面図、図4は栽培棚に設けた照明灯から発生する輻射熱をチャンバーで吸引排気する状態を示す説明図である。立体水耕栽培装置10(以下、栽培装置という)は、温度、湿度および炭酸ガスなどを所定値に調整する空調手段(図示せず)を有する室内に、鉄骨などで縦横に配列した複数の支柱11の左右両側にそれぞれ栽培棚12を多段に形成し、該栽培棚にそれぞれ格納して培養液Yを貯留させる栽培ベッド20と、該栽培ベッドの上面に各種植物Xの苗を取付けた複数の生育パネル30を設け、前記植物Xに人工光を照射して光合成を行なわせる照明灯40を栽培ベッド20の下面に設けてある。
【0011】
前記栽培装置10を構成する各支柱11は、図3に示すごとく、縦列方向に位置した各支柱と支柱との空間を複数の仕切壁16で仕切ってチャンバー15を形成し、このチャンバー15を構成する各仕切壁16の壁面に、前記照明灯40の下方に位置する照射空間と合致する位置に1または複数の排気孔17を設けてある。前記栽培棚12の下面に設けた照明灯40から発生する輻射熱は、チャンバー15の吸引効果によって吸引排気可能に形成してある。
【0012】
前記仕切壁16は、板材を用いて仕切って密封状に形成するだけでなく、ビニールシート等を支柱と支柱の間に展張して内部を密封してチャンバーを形成しても良い。さらに、前記チャンバー15による吸引効果だけでは輻射熱を排気させることが十分でない場合は、図2に示す如く、各チャンバーの上端に排気ブロアー18やファンなどを取付けて輻射熱を強制的に吸引排気し、それによって室内の温度、湿度及び炭酸ガス濃度などを調整する周知の空調手段(図示せず)と相俟って室内温度を一定に調整することができる。
【0013】
前記栽培装置10を構成する支柱11は、室内の広さに合わせて縦横に配置し、図2に示すごとく長手方向に縦列して設けた複数の支柱11を一組とし、各支柱の左右両側には前記栽培ベッド20を格納するための栽培棚12を多段に設けてある。この栽培棚12は、室内の高さが許される限り、天井付近まで多段に取付けることができ、好ましくは、8段から10段の高さに形成し、隣接する各支柱11の間隔は、例えば、2m〜2.5mごとに設置し、点検や補修のための通路として使用できる空間を形成してある。各支柱11の縦列方向の長さは、略15m程度が好ましいが、室内の広さによっては栽植密度を増減させることで長さを調整できる。各栽培棚12の上面には、長尺な栽培ベッド20を取付け、また、下面には照明灯40を上下方向に高さ調整可能に取付けてある。
【0014】
前記栽培ベッド20は、図5に示すごとく、合成樹脂材で長尺な樋状に形成した一対の貯留槽21を連結板23で一体に連結し、該連結板の中央に複数の通気孔24を設けてあり、各貯留槽21の下方には脚部27をそれぞれ一体に形成してある。この通気孔24は円形に限らず、細長い方形でもよいが、強度の点から円形の通気孔が好ましい。
【0015】
貯留槽21は上面を開口して両側面をテーパー状に形成し、従来の断面箱型の貯留槽に比べて内部に収容する容積を小さく形成したことにより、培養液Yの貯留量を減少させてある。各貯留槽21の培養液の貯留量を減少させたことにより、栽培装置全体の軽量化が図れるので、建物全体に対する負担重量を軽減できると共に、循環させる培養液の量を少なくできて経済的である。
【0016】
前記栽培ベッド20の上部には、中央に設けた連結板23の両側端に生育パネル30を水平方向に移動可能に載置するレール状の係止突起25を設け、さらに、貯留槽21の両端にガイド凸部26を設けてあり、該係止突起25とガイド凸部26の上面はほぼ同じ平面をなしている。したがって、栽培ベッド20の上面に被せた生育パネル30は係止突起25及びガイド凸部26のガイド方向以外には移動できない構造になっている。
【0017】
前記生育パネル30は、図3、4、6に示すごとく、発泡性合成樹脂材を用いて全体を平板状に形成し、両端中央に半円形をした切欠部31をそれぞれ設けてある。さらに、該生育パネル30の左右両側には苗保持用の孔32を互い違いに設け、該孔32には幅方向に切り込んだ挿入溝33を形成してあり、該生育パネルの底面には、長手方向に前記栽培ベッド20に設けた係止突起25およびガイド凸部26と合致する係止凹部34およびガイド凹部35をそれぞれ設けてある。
【0018】
生育パネル30の係止凹部34及びガイド凹部35を、前記栽培ベッド20の係止突起25及びガイド凸部26に合致させて被せることにより、栽培ベッド20の一端に位置させた生育パネル30を他端方向に順に送り出す際に、各栽培ベッド30は係止突起25及びガイド凸部26にガイドされてスムースに移動できるため、作業員は移動せずに同じ場所において新しい生育パネル30を次から次へと栽培ベッド上に載置させて送り出すことができるので作業性が向上する。
【0019】
この生育パネルの両端に設けた半円状の切欠部31が、隣接する生育パネルと互に当接させることで略円形をした排気穴31aを形成し、該生育パネル40の下面に溜まる輻射熱を排出することができる。この切欠部31は、栽培ベッド20の一方端部分に於いて生育パネル30を取り外す際に、手を差し込みやすくする機能を有していて便利である。この場合、栽培ベッドの連結板23とこの生育パネル30との間には、図示されているように、密着しないで手先が入る空間を設けてある。
【0020】
前記生育パネル30は、例えば長さを約60cm、幅約30cmに形成し、各孔と孔の距離(好ましくは20cm)を有して互い違いに設けてあるので、各苗に十分な光の照射と空気の循環を良くすると共に、植物の生長と共に大きくなった葉や根が互いに干渉して成長を阻害するのを防止することができる。
【0021】
図4において、40は前記栽培棚12の下面に取付けた一対の照明灯で、各照明灯40はそれぞれ前記栽培ベッド20に設けた貯留槽21と平行に配して生育パネル30に設けた孔32の上方に位置させて長手方向に取付けてある。この照明灯40は、熱の発生を防止するため、通常の白熱灯の代りに蛍光灯や発光ダイオード(LED)などを使用し、輻射熱を排気させることにより極力熱の発生を防止して植物の生育障害の一つであるチップバーン現象を防止している。この場合、LEDは交換可能な構成にして保守管理を容易にし、また、蛍光灯はのその器具の脱着や交換が容易な構造にして保守管理を容易にすることが好ましい。
【0022】
照明灯40の光は、上方からの直射だけでなく、該照明灯40の周囲に取付けた反射板41を介して多重乱反射させることにより、植物全体に光を照射させることができ、そのため、低照度の蛍光灯でも十分に光合成を促進させて植物を生育させることができる。また、照明灯の種類によっては反射板41は必ずしも必要とすることなく、植物に直接照光させる構成でもよい。さらにまた、生育パネル30の上面に反射機能を持たせて該照明灯の光が植物の下側から反射するようにして照射量を有効に利用することも可能である。これにより、葉の裏側にも光を照射させることができる。
【0023】
この照明灯40の取付け位置は、該照明灯の光が植物に十分照射して光合成が効率良く行なわれる距離(好ましくは、1〜10cm)に設置するが、栽培ベッド20の一端に載置する生育パネル30は、苗の本葉が3枚から4枚程度生えた小さな苗のため、照明灯40が通常の位置では、苗と離れ過ぎて十分に光を照射することができない。そこで若苗が位置する栽培ベッド20の一端側に取付ける照明灯40の取付け位置を下げ、生育パネル30に近づけて十分に光を照射させて生育可能にしてある。この場合、収穫直前の植物は急激に大きくなるため、収穫側の照明灯40の取付位置を上げてある。このように、照明灯40は植物の生育度に応じて昭光距離を調整できるように一定範囲で上下動可能に栽培ベッド20の下面に取り付けてある。
【0024】
45は、栽培装置10の各栽培棚12に載置した栽培ベッド20に培養液を循環させる送液手段で、図8に示すごとく、一定の培養濃度に調整した培養液Yを貯留する培養タンク46と、該培養タンク46内の培養液Yを各栽培ベッド20の貯留槽21に送液する送液ポンプ47と、培養液Yに含まれるの不純物を除去するフィルター槽48とにより構成してある。さらに、必要に応じてプレフィルター槽48aを培養タンク46の手前側に設けてもよい。
【0025】
培養液Yの循環は、培養タンク46内の培養液Yをフィルタ−槽48を介して送液ポンプ47により各栽培ベッド20の貯留槽21の一端に接続した給水管52に送水管49を介してそれぞれ送液し、各貯留槽21からは排水筒60および還流管50を介して還流された培養液Yは、プレフィルター槽48aで不純物を除去してから培養タンク46内に戻すようにしてもよいが、該プレフイルター槽48aは必ずしも必要ではない。培養タンク46に戻った培養液は、濃度をECセンサで測定し、pHをpHセンサで測定して濃度を調整した後、再度、送液ポンプ47により送り出して循環させることにより、全ての栽培ベッド20に一定濃度の培養液Yを同量ずつ供給することができるので、植物の生長むらがなく全ての植物を均一に成長させることができる。
【0026】
52は各栽培ベッド20に設けた長尺な貯留槽21の一端に一体または別体に取付けた給水管で、図7に示すごとく、貯留槽21の外側に設けた連結部53に前記送液手段45の送水管49を接続し、貯留槽21の内側に設けた給水管52、即ち内筒54の先端に培養液の流入量を調節する流入口57を有したキャップ55を着脱可能に取付けてある。
【0027】
この場合、図7、8に示すように、キャップ55の中心に流入口57を設けてあると、培養液の供給量が大となって水圧が強くなった場合には、培養液が貯留槽21から飛び出す危険が高い。
【0028】
図10は、キャップの他の実施例を示したもので、キャップ55の中心部ではなく、給水管52の先端に取り付けるキャップの周面部に流入口57aを形成し、該流入口57aは下向き位置するように設けてある。このキャップの周面部に流入口57aを設ける場合、その孔明け位置を調整して形成すれば、給水管52の先端、即ち内筒54の先端に該キャップ55を螺合させて取り付けることも可能である。この場合、キャップ55の締め付け位置が多少ずれて流入口57aの位置が、正確に真下ではなく、少し位手前に停止したり、多少行き過ぎて固着しても支障はない。さらにまた、キャップ55を前記内筒54の先端に装着してボルト(図示せず)で固着してもよい。
【0029】
図9に示すごとく、キャップ55は蓋部56の中心部分に培養液の流入量を調節するための流入口57を設けてあるが、図10に示すようにキャップの周面部に設けてもよい。即ち、培養液Yは、送液手段45の送液ポンプ47によって多段に載置した各栽培ベッド20の貯留槽21内に送液されるが、栽培ベッド20に取付けた各給水管52の内径が同じ場合、多段に載置された栽培ベッド20の貯留槽21内に供給される培養液の流量は最上段と最下段とでは高低差を有しているので水圧が相違するため、流入口57、57aの口径が同じだと上段と下段とでは流量が相違する。
【0030】
多段に設けた各貯留槽21内に送液される培養液Yの流量が相違すると、該栽培ベッドで生育する植物Xの生育速度が相違して均一な生育と収穫を図ることができない。そこで、下段の貯留槽21の内筒54に被せるキャップ55の流入口57、57aの径を小さく、上段に位置した貯留槽21の内筒54に被せるキャップ55の流入口57、57aの径を大きくして各貯留槽21に流入する流入量を簡単に調節することができる。このように、流入口52の径を相違させたキャップ55によって培養液の供給量を同一になるように調整することができる。
【0031】
水平方向に位置した同じ段の各貯留槽21の流量調節を行う場合、従来のごとく、流量調節弁を取付けて流量を調節すると装置が複雑になってコストが上昇し、各貯留槽21に同じ流量の培養液を流入させることが困難である。しかし本発明では、多段に設けた貯留槽21の高さに応じた口径の流入口57、57aを具えたキャップ55を着脱可能に取付けるだけで簡単に流量を均一化することができる。
【0032】
60は、前記栽培ベッド20の各貯留槽21の他端の内部底面に取付けた排水管で、図7、11、12に示すごとく、貯留槽21の外側に位置させた接続部61に前記送液手段45の培養タンク46に還流させる還流管50の一端を接続し、さらに、貯留槽21の内側に、培養液Yの水位調節を兼ねた水位筒62を一体または別体に取付け、該水位筒の下方部分には水平方向に切欠溝63を設けてある。
【0033】
各貯留槽21内を循環する培養液Yは、栽培ベッド20が長尺で水平方向に位置することから流れにくく、また各貯留槽内には植物の根が多数生え、さらには貯留槽21内の培養液Yは水位筒62の上端からオーバーフローさせて排水していることから、貯留槽21内の培養液Yは、上層の培養液は流れやすく、下層の培養液はよどみやすい。貯留槽21内の下層によどんだ培養液には、有機物残渣や微生物が繁殖しやすく、また、養分の少なくなった培養液が残留しやすい。そのため植物Xが病気になったり生育にばらつきを生じるなど、植物の生長が阻害されやすくなる。そこで、前記水位筒62の下部に水平方向に切欠溝63を設け、該切欠溝から貯留槽21内の下層によどんだ培養液を排出できるようにしてある。
【0034】
貯留槽21の下層によどんだ培養液Yが切欠溝63から流れ始めると、各貯留槽21の両側面はテーパー状に形成してあるため上層流より下層流の流れが良くなり、下層に溜まった有機物残渣や微生物を含む培養液を効率良く排水できる。そのため、貯留槽21内に常に新鮮な培養液Yを循環させて、生育パネル30に植えた植物の生育を促進させて均一に成長させることができ、且つ、一定の品質を有する植物を定期的に収穫することができる。
【0035】
前記栽培装置10で栽培する植物Xは、主に葉もの野菜やハーブ類や花卉などである。ここで、葉もの野菜としてはレタス、サンチュ、みず菜、春菊、葉ねぎなど、ハーブ類としてはミント、バジル、セージ、タイムなど、花卉としてはスプレーギク、カーネーションなどであるが、これらに限るものではない。
【0036】
以下本発明に係る実施の形態の作用について説明すると、栽培装置10は、温度、湿度および炭酸ガスなどを所定値に調整する空調手段を有する植物栽培用の屋内または室内に縦横に配置された各支柱11に栽培棚12を多段に配し、該栽培棚12にそれぞれ植物Xの光合成を促進させる照明灯40と、植物に栄養を供給する培養液Yを貯留する貯留槽21を有した栽培ベッド20とを設け、各栽培ベッドの上面に植物Xの苗を取付けた複数の生育パネル30をそれぞれ載置し、各貯留槽21に送液手段45によって培養液Yを供給する。
【0037】
植物栽培を行う場合、植物の本葉が3枚から4枚程度に生えた小さな苗を取付けた生育パネル30の下面に設けた係止凹部34とガイド凹部35を、栽培ベッド20の上面に設けた係止凸部25とガイド凸部26に摺動可能に嵌合させることにより、長尺に設けてある栽培ベッド20上を移動する生育パネル30が栽培ベッド20から外れることなくスムースに移動することができる。
【0038】
次いで、苗が生長する一定期間ごとに次の新しい苗を植えた生育パネル30を栽培ベッド20の一端に位置させる。このとき、既に栽培ベッド20の一端に位置している生育パネル30を前方に押し出して長手方向に移動させる。
【0039】
このように一定期間ごとに次々と新しい苗を植えた生育パネル30を栽培ベッド20の他端方向に送り出すことにより、栽培ベッド20の反対側には収穫可能に成長した植物を取付けた生育パネルが移動し、該生育パネルを栽培ベッドから外して植物を収穫することができる。葉もの野菜の場合、生育パネル30を栽培ベッド20の一端に乗せ、他端まで移動させて生育した植物を回収するまでの期間は約12日のサイクルで次々と収穫することが可能である。栽培ベッドに乗せるまでの時間は、育苗などを他の場所で行う。この野菜の収穫サイクルは、野菜によって当然相違する。
【0040】
照明灯40は、植物の光合成を促進させるため、植物に近接して取付けてある。また、栽培棚12は上下幅を狭く形成し、下方をに栽培ベッド20、上方には反射板41で塞がれた狭い照射空間に光が照射する。そのため、栽培棚12上の狭い空間は空気の流れが悪く、照明灯の光からの照射により発生する輻射熱で植物Xの生育障害であるチップバーン現象が起こりやすい。
【0041】
そこで、図2から4に示すごとく、各栽培棚12に格納した複数の栽培ベッド20の連結板23に設けた通気孔24と、生育パネル30の両端中央に設けた切欠部31を互いに当接させて形成した複数の排気穴31aと、照明灯40付近の仕切壁16に設けた複数の排気孔17からチャンバー15内に、各栽培棚12上の狭い照射空間内によどんだ輻射熱により高温になった空気を吸引排出して流れを良くして温度上昇を防いでいる。
【0042】
各栽培棚12上の照射空間内に溜まった輻射熱は、排気孔17からチャンバー15内に吸引排気して輻射熱を下げ、連結板23に設けた通気孔24と、生育パネル30の両端中央に設けた切欠部31を互いに当接させて略円形状をした排気穴31aにより、栽培ベッド20付近の狭い空間内の空気の流れを良くして貯留槽21内の培養液Yの温度の上昇を防止し、植物の生育障害であるチップバーン現象を防止して収穫量の向上を図ることができる。
【0043】
前記チャンバー15を利用して自然に吸込排出するだけでは各栽培棚12の照明灯40付近に溜まる輻射熱を排出することができない場合には、図2に示すごとく、チャンバー15の上端または栽培装置を設置した室内に排気ブロアー18などを取付けて強制的に吸引排気しても良い。
【0044】
さらに、各栽培ベッド20に取付けた植物Xを均一に生長させるために供給される培養液Yは、最上段と最下段とでは高低差を有するため各貯留槽21に流入する培養液Yの量が相違する。そのため、それぞれ各段ごと、または、2〜3段ごとに口径が相違する流入口57、57aを有したキャップ55を給水管52の先端に位置する内筒54に着脱可能に装着して簡単に培養液Yの流入量を均一化することができる。前記キャップは、内筒54にシールパッキン58を介してシールするだけでなく、キャップと内筒54にそれぞれねじ部を設けて螺着させても良いし、さらに、ボルト(図示せず)で固着してもよい。
【0045】
特に、水平方向に位置させた多数の貯留槽への培養液の流入量の調節は、同一口径をした流入口57、57aを有するキャップ55を取付けるだけで、簡単に同一流量に調節することができるので作業能率の向上を図ることができる。この場合、水圧の関係で栽培ベッドが位置する高さに応じてキャップに設ける流入口57、57aの径は相違する。
【0046】
また、不使用の栽培ベッドの貯留槽への培養液の流入を防止するには、流入口57,57aを有しないキャップを内筒54に装着するだけで簡単に培養液の流入を止めることができ、栽培ベッドごとに高価な流量調節弁を取付けることなく簡単に流量を調節することができるので安価で経済的となる利点がある。さらに、各段の貯留槽21に供給される培養液Yの流入量を均一化することにより、植物Xの生育むらを防止し、均一な植物の生育を行なうことができるので、無駄なく多量の収穫を期待することができる。
【0047】
貯留槽21内の培養液Yは、水位筒62の上端からオーバーフローさせて排出させるだけでなく、水位筒62の下方に設けた切欠溝63からも貯留槽21内の下層部分によどんだ培養液を排出することにより、下層に溜まった有機物残渣や微生物を含んだ培養液を効率的に排水できる。また、貯留槽21内には常に一定濃度を有する培養液Yを循環させることにより、生育パネル30に植えた植物の病虫害を防ぎ、健康な植物を均一に成長させることができ、且つ、一定の品質を有する植物を定期的に収穫できる。
【0048】
各貯留槽21内を循環する培養液Yは、図8に示すごとく、培養タンク46内の培養液Yを送水ポンプ47で各栽培ベッド20の貯留槽21に取付けた給水パイプ52に送水管49を介してそれぞれ送液し、各貯留槽から還流した培養液はプレフィルター48aで不純物を除去し、再度、培養タンク46内に戻して培養液の濃度はECセンサで測定し、pHはpHセンサで測定して培養濃度を一定に調整した後、送液ポンプ52供給し、該送液ポンプの前方に設けたフィルター槽48により不純物を除去して、各キャップ55に設けた流入口が塞がらないようしてある。送液ポンプ52で循環させることにより全ての栽培棚12の栽培ベッド20に一定濃度の培養液Yを送液できるため、植物の生長むらがなく照明灯40の光による光合成とあいまって全ての培養ベッド20の植物を均一に成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかる立体水耕栽培装置の一部破断した全体の構成図である。
【図2】立体水耕栽培装置の縦列方向を示す断面図である。
【図3】縦列方向に位置した支柱と支柱との間にチャンバーを設けた状態を示す断面図である。
【図4】栽培棚に設けた照明灯から発生する輻射熱をチャンバーで吸引排気する状態を示す説明図である。
【図5】栽培ベッドの一部破断した斜視図である。
【図6】生育パネルの一部破断した斜視図である。
【図7】貯留槽内の培養液の流れを示す説明図である。
【図8】各栽培ベッドの貯留槽に供給する培養液の送液手段を示す説明図である。
【図9】キャップの正面図である。
【図10】キャップの他の実施例を示した断面図である。
【図11】水位筒の正面図である。
【図12】貯留槽に取付けた水位筒の下部に設けた切欠溝から培養液を排水する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 支柱
12 栽培棚
15 チャンバー
16 仕切板
17 排気孔
20 栽培ベッド
21 貯留槽
23 連結板
24 通気孔
25 係止突起
26 ガイド凸部
30 生育パネル
31 排気孔
32 孔
33 挿入溝
34 係止凹部
35 ガイド凹部
40 照明灯
45 送液手段
46 培養タンク
47 送液ポンプ
48 フイルター槽
52 給水管
55 キャップ
60 排水管
62 水位筒
63 切欠溝
X 植物
Y 培養液
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境を制御できる屋内または室内において、植物、例えば、葉物野菜やハーブ類や花卉などを多量に栽培する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋内で植物を育てる水耕栽培技術には多種多様なものがあり、いわゆる野菜工場といわれて屋内で植物を多量に収穫できる水耕栽培は、天候に左右されることなく、無農薬で室内の温度や照明と培養液の管理を人工的に制御することができるので、露地栽培で生産する植物より効率的に収穫することが可能であることから広く行われている。
【特許文献1】特開昭62−55028号公報
【0003】
屋内で水耕栽培を行う場合、栽培装置は植物を効率的に収穫するために室内の許容範囲一杯に栽培棚を多段に設け、各栽培棚に取付けた栽培ベッドに被せた生育マットに植えた苗に十分な光を照射して光合成を行わせるため、多くの人工灯を取付けて苗の生育を促進させている。また、各栽培ベッドに供給する培養液は、各栽培ベッドに効率良く循環させるため最上部の栽培棚からオーバーフロー方式で順次下段の培養槽内に流下して循環させる方法が行われている。
【特許文献2】特公平6−61190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した植物の栽培装置は、以下のような問題点を有している。
(1)栽培ベッドを構成する貯留槽の断面形状が箱型に形成してあり、多段に配した各棚の栽培ベッドに貯留する培養液を多量に必要とするため、培養液を貯留する各段の栽培ベッドの総重量が非常に重くなる。栽培装置は、建物の一部屋だけでなく建物の各階の部屋ごとに形成される場合が多いことから、それぞれの部屋の栽培装置が重いと、建物全体に加わる負荷が大きくなるため、建物の強度によっては栽培段数が制限される場合がある。栽培段数が制限されることは、生産効率が悪化して多量生産を図ることができない。
【0005】
(2)各栽培棚に載置した多数の栽培ベッドに植えた植物が、光合成を効率的に行なえるように照明灯を接近して設置してある。そのため、照明灯から発する輻射熱によって植物の葉が縮れたり黒く変色したりする、いわゆるチップバーン現象や、栽培ベッドに貯留される培養液の温度が高くなるなどの現象が起きてしまう。このチップバーン現象や培養液の温度が高くなると植物の生育は阻害され、植物の商品価値が半減してしまう。
【0006】
(3)各段の栽培ベッドに貯留される培養液の濃度は、前記した流下方式で行うと上段の培養液は一定の濃度を保つが、下段の栽培ベッドに流下するにしたがって培養液中の栄養分は上段で吸収されて養分が薄くなり、植物の生育が悪くなって効率的に生産することができない。また、栽培ベッドに貯留される培養液は、オーバーフロー方式で排水するため、槽内の底面付近の下層培養液は槽内に張った植物の根や微生物の繁殖またはゴミの滞留などでよどみやすく、さらに貯留槽を長尺に形成してあるため培養液の濃度にむらが生じて、植物の生育にばらつきが生じて均一に生育させることができない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、栽培ベッドに貯留される培養液の量を軽減して装置全体の軽量化を図ると共に、照明灯から発する輻射熱を吸引排気して栽培ベッド付近の温度を下げ、チップバーン現象や培養液の温度の上昇を防止する。そして、多段に配した栽培ベッドに送液する培養液の濃度と流量を同じにすることにより、全ての段の植物を均一に生育させて効率良く収穫できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立体水耕栽培装置は、温度、湿度および炭酸ガス濃度を所定値に調整する空調手段を有する植物栽培用室内において、室内の広さに合わせて縦横に配列した多数の支柱11の左右両側にそれぞれ多段に設けた複数の栽培棚12と、縦列方向に位置した各支柱の間を仕切板16で仕切って形成したチャンバー15と、前記栽培棚12にそれぞれ格納され、上面が開口して内部に培養液を供給する貯留槽21を有した栽培ベッド20と、前記栽培ベッド20の上面に移動可能に被せて、植物の根が下方に突出した各植物Xを支持する複数の孔32を有し、且つ、両端に切欠部31を有した生育パネル30と、前記栽培ベッド20の下面に設けて各植物Xに人工光を照射して光合成をさせる照明灯40と、各栽培ベッド20の貯留槽21に所定濃度の培養液Yをそれぞれ供給する送液手段45とを備えてなることを特徴とする。また、前記チャンバー15の仕切板16には、各栽培棚12に設けた照明灯40の照射空間と合致する位置に排気孔17を設け、該排気孔から前記照明灯の照射空間で発生した輻射熱を該チャンバー15内に排気させて各栽培棚12上の空気の流れを良くし、植物Xの生育障害や培養液Yの温度上昇を防止することを特徴とする。さらに、前記栽培ベッド20は、両側面をテーパー状の樋型に形成した一対の貯留槽21の中央部に通気孔24を有した連結板23を一体に形成し、該連結板の両側端および貯留槽21の両側上端に、前記生育パネル30を載せる係止突部25とガイド凸部26を設け、各貯留槽21の一端に設けた給水管52の先端に流量調節用のキャップ55を着脱可能に取付け、他端内部に設けた排水管60の水位筒62の下部に下層水排水用の切欠溝63を設けたことを特徴とする。さらにまた、前記生育パネル30は、長手方向の両端中央に半円状の切欠部31を設け、且つ、両側にそれぞれ互い違いに複数の孔32を形成し、該孔32の幅方向に植物苗挿入用の挿入溝33を有し、底面には長手方向に前記栽培ベッド20の係止突部25およびガイド凸部26と嵌合する係止凹部34及びガイド凹部35を設けてなることを特徴とする。また、前記送液手段45は、所定の培養濃度に調整した培養液Yを貯留する培養タンク46と、前記培養タンク46内の培養液Yを各栽培ベッド20の貯留槽21に送液する送液ポンプ47と、前記培養液Yの不純物を除くフイルター槽48とからなり、培養タンク46内の培養液Yを送液ポンプ47により各貯留槽21にそれぞれ送液し、各貯留槽21から還流した培養液Yを所定濃度に調整して前記フイルター槽48で不純物を除き、前記送液ポンプ47で循環供給させることを特徴とする。
【0009】
したがって、本発明は栽培ベッド20の貯留槽21の容積を小さくし、培養液Yの貯水量を減少させて装置全体の軽量化を図り、照明灯40から発する輻射熱を支柱と支柱との間に設けたチャンバー15の排気孔17から吸引排気して栽培ベッド20付近の輻射熱を除去し、植物Xの生育障害や培養液Yの温度の上昇を防止する。また、各段の貯水槽21の一端に取付けたキャップ55により培養液Yの流入量を調節すると共に、他端内部に配した水位筒62の上部や、下部に設けた切欠溝63から貯留槽21内の下層水を排水させて槽内全体の流れを良好にして培養液Yの養分を均一化し、植物Xを均一に生育させて生産効率を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明にかかる立体水耕栽培装置の一部破断した全体の構成図、図2は立体水耕栽培装置の縦列方向を示す断面図、図3は縦列方向に位置した支柱と支柱との間にチャンバーを設けた状態を示す平面図、図4は栽培棚に設けた照明灯から発生する輻射熱をチャンバーで吸引排気する状態を示す説明図である。立体水耕栽培装置10(以下、栽培装置という)は、温度、湿度および炭酸ガスなどを所定値に調整する空調手段(図示せず)を有する室内に、鉄骨などで縦横に配列した複数の支柱11の左右両側にそれぞれ栽培棚12を多段に形成し、該栽培棚にそれぞれ格納して培養液Yを貯留させる栽培ベッド20と、該栽培ベッドの上面に各種植物Xの苗を取付けた複数の生育パネル30を設け、前記植物Xに人工光を照射して光合成を行なわせる照明灯40を栽培ベッド20の下面に設けてある。
【0011】
前記栽培装置10を構成する各支柱11は、図3に示すごとく、縦列方向に位置した各支柱と支柱との空間を複数の仕切壁16で仕切ってチャンバー15を形成し、このチャンバー15を構成する各仕切壁16の壁面に、前記照明灯40の下方に位置する照射空間と合致する位置に1または複数の排気孔17を設けてある。前記栽培棚12の下面に設けた照明灯40から発生する輻射熱は、チャンバー15の吸引効果によって吸引排気可能に形成してある。
【0012】
前記仕切壁16は、板材を用いて仕切って密封状に形成するだけでなく、ビニールシート等を支柱と支柱の間に展張して内部を密封してチャンバーを形成しても良い。さらに、前記チャンバー15による吸引効果だけでは輻射熱を排気させることが十分でない場合は、図2に示す如く、各チャンバーの上端に排気ブロアー18やファンなどを取付けて輻射熱を強制的に吸引排気し、それによって室内の温度、湿度及び炭酸ガス濃度などを調整する周知の空調手段(図示せず)と相俟って室内温度を一定に調整することができる。
【0013】
前記栽培装置10を構成する支柱11は、室内の広さに合わせて縦横に配置し、図2に示すごとく長手方向に縦列して設けた複数の支柱11を一組とし、各支柱の左右両側には前記栽培ベッド20を格納するための栽培棚12を多段に設けてある。この栽培棚12は、室内の高さが許される限り、天井付近まで多段に取付けることができ、好ましくは、8段から10段の高さに形成し、隣接する各支柱11の間隔は、例えば、2m〜2.5mごとに設置し、点検や補修のための通路として使用できる空間を形成してある。各支柱11の縦列方向の長さは、略15m程度が好ましいが、室内の広さによっては栽植密度を増減させることで長さを調整できる。各栽培棚12の上面には、長尺な栽培ベッド20を取付け、また、下面には照明灯40を上下方向に高さ調整可能に取付けてある。
【0014】
前記栽培ベッド20は、図5に示すごとく、合成樹脂材で長尺な樋状に形成した一対の貯留槽21を連結板23で一体に連結し、該連結板の中央に複数の通気孔24を設けてあり、各貯留槽21の下方には脚部27をそれぞれ一体に形成してある。この通気孔24は円形に限らず、細長い方形でもよいが、強度の点から円形の通気孔が好ましい。
【0015】
貯留槽21は上面を開口して両側面をテーパー状に形成し、従来の断面箱型の貯留槽に比べて内部に収容する容積を小さく形成したことにより、培養液Yの貯留量を減少させてある。各貯留槽21の培養液の貯留量を減少させたことにより、栽培装置全体の軽量化が図れるので、建物全体に対する負担重量を軽減できると共に、循環させる培養液の量を少なくできて経済的である。
【0016】
前記栽培ベッド20の上部には、中央に設けた連結板23の両側端に生育パネル30を水平方向に移動可能に載置するレール状の係止突起25を設け、さらに、貯留槽21の両端にガイド凸部26を設けてあり、該係止突起25とガイド凸部26の上面はほぼ同じ平面をなしている。したがって、栽培ベッド20の上面に被せた生育パネル30は係止突起25及びガイド凸部26のガイド方向以外には移動できない構造になっている。
【0017】
前記生育パネル30は、図3、4、6に示すごとく、発泡性合成樹脂材を用いて全体を平板状に形成し、両端中央に半円形をした切欠部31をそれぞれ設けてある。さらに、該生育パネル30の左右両側には苗保持用の孔32を互い違いに設け、該孔32には幅方向に切り込んだ挿入溝33を形成してあり、該生育パネルの底面には、長手方向に前記栽培ベッド20に設けた係止突起25およびガイド凸部26と合致する係止凹部34およびガイド凹部35をそれぞれ設けてある。
【0018】
生育パネル30の係止凹部34及びガイド凹部35を、前記栽培ベッド20の係止突起25及びガイド凸部26に合致させて被せることにより、栽培ベッド20の一端に位置させた生育パネル30を他端方向に順に送り出す際に、各栽培ベッド30は係止突起25及びガイド凸部26にガイドされてスムースに移動できるため、作業員は移動せずに同じ場所において新しい生育パネル30を次から次へと栽培ベッド上に載置させて送り出すことができるので作業性が向上する。
【0019】
この生育パネルの両端に設けた半円状の切欠部31が、隣接する生育パネルと互に当接させることで略円形をした排気穴31aを形成し、該生育パネル40の下面に溜まる輻射熱を排出することができる。この切欠部31は、栽培ベッド20の一方端部分に於いて生育パネル30を取り外す際に、手を差し込みやすくする機能を有していて便利である。この場合、栽培ベッドの連結板23とこの生育パネル30との間には、図示されているように、密着しないで手先が入る空間を設けてある。
【0020】
前記生育パネル30は、例えば長さを約60cm、幅約30cmに形成し、各孔と孔の距離(好ましくは20cm)を有して互い違いに設けてあるので、各苗に十分な光の照射と空気の循環を良くすると共に、植物の生長と共に大きくなった葉や根が互いに干渉して成長を阻害するのを防止することができる。
【0021】
図4において、40は前記栽培棚12の下面に取付けた一対の照明灯で、各照明灯40はそれぞれ前記栽培ベッド20に設けた貯留槽21と平行に配して生育パネル30に設けた孔32の上方に位置させて長手方向に取付けてある。この照明灯40は、熱の発生を防止するため、通常の白熱灯の代りに蛍光灯や発光ダイオード(LED)などを使用し、輻射熱を排気させることにより極力熱の発生を防止して植物の生育障害の一つであるチップバーン現象を防止している。この場合、LEDは交換可能な構成にして保守管理を容易にし、また、蛍光灯はのその器具の脱着や交換が容易な構造にして保守管理を容易にすることが好ましい。
【0022】
照明灯40の光は、上方からの直射だけでなく、該照明灯40の周囲に取付けた反射板41を介して多重乱反射させることにより、植物全体に光を照射させることができ、そのため、低照度の蛍光灯でも十分に光合成を促進させて植物を生育させることができる。また、照明灯の種類によっては反射板41は必ずしも必要とすることなく、植物に直接照光させる構成でもよい。さらにまた、生育パネル30の上面に反射機能を持たせて該照明灯の光が植物の下側から反射するようにして照射量を有効に利用することも可能である。これにより、葉の裏側にも光を照射させることができる。
【0023】
この照明灯40の取付け位置は、該照明灯の光が植物に十分照射して光合成が効率良く行なわれる距離(好ましくは、1〜10cm)に設置するが、栽培ベッド20の一端に載置する生育パネル30は、苗の本葉が3枚から4枚程度生えた小さな苗のため、照明灯40が通常の位置では、苗と離れ過ぎて十分に光を照射することができない。そこで若苗が位置する栽培ベッド20の一端側に取付ける照明灯40の取付け位置を下げ、生育パネル30に近づけて十分に光を照射させて生育可能にしてある。この場合、収穫直前の植物は急激に大きくなるため、収穫側の照明灯40の取付位置を上げてある。このように、照明灯40は植物の生育度に応じて昭光距離を調整できるように一定範囲で上下動可能に栽培ベッド20の下面に取り付けてある。
【0024】
45は、栽培装置10の各栽培棚12に載置した栽培ベッド20に培養液を循環させる送液手段で、図8に示すごとく、一定の培養濃度に調整した培養液Yを貯留する培養タンク46と、該培養タンク46内の培養液Yを各栽培ベッド20の貯留槽21に送液する送液ポンプ47と、培養液Yに含まれるの不純物を除去するフィルター槽48とにより構成してある。さらに、必要に応じてプレフィルター槽48aを培養タンク46の手前側に設けてもよい。
【0025】
培養液Yの循環は、培養タンク46内の培養液Yをフィルタ−槽48を介して送液ポンプ47により各栽培ベッド20の貯留槽21の一端に接続した給水管52に送水管49を介してそれぞれ送液し、各貯留槽21からは排水筒60および還流管50を介して還流された培養液Yは、プレフィルター槽48aで不純物を除去してから培養タンク46内に戻すようにしてもよいが、該プレフイルター槽48aは必ずしも必要ではない。培養タンク46に戻った培養液は、濃度をECセンサで測定し、pHをpHセンサで測定して濃度を調整した後、再度、送液ポンプ47により送り出して循環させることにより、全ての栽培ベッド20に一定濃度の培養液Yを同量ずつ供給することができるので、植物の生長むらがなく全ての植物を均一に成長させることができる。
【0026】
52は各栽培ベッド20に設けた長尺な貯留槽21の一端に一体または別体に取付けた給水管で、図7に示すごとく、貯留槽21の外側に設けた連結部53に前記送液手段45の送水管49を接続し、貯留槽21の内側に設けた給水管52、即ち内筒54の先端に培養液の流入量を調節する流入口57を有したキャップ55を着脱可能に取付けてある。
【0027】
この場合、図7、8に示すように、キャップ55の中心に流入口57を設けてあると、培養液の供給量が大となって水圧が強くなった場合には、培養液が貯留槽21から飛び出す危険が高い。
【0028】
図10は、キャップの他の実施例を示したもので、キャップ55の中心部ではなく、給水管52の先端に取り付けるキャップの周面部に流入口57aを形成し、該流入口57aは下向き位置するように設けてある。このキャップの周面部に流入口57aを設ける場合、その孔明け位置を調整して形成すれば、給水管52の先端、即ち内筒54の先端に該キャップ55を螺合させて取り付けることも可能である。この場合、キャップ55の締め付け位置が多少ずれて流入口57aの位置が、正確に真下ではなく、少し位手前に停止したり、多少行き過ぎて固着しても支障はない。さらにまた、キャップ55を前記内筒54の先端に装着してボルト(図示せず)で固着してもよい。
【0029】
図9に示すごとく、キャップ55は蓋部56の中心部分に培養液の流入量を調節するための流入口57を設けてあるが、図10に示すようにキャップの周面部に設けてもよい。即ち、培養液Yは、送液手段45の送液ポンプ47によって多段に載置した各栽培ベッド20の貯留槽21内に送液されるが、栽培ベッド20に取付けた各給水管52の内径が同じ場合、多段に載置された栽培ベッド20の貯留槽21内に供給される培養液の流量は最上段と最下段とでは高低差を有しているので水圧が相違するため、流入口57、57aの口径が同じだと上段と下段とでは流量が相違する。
【0030】
多段に設けた各貯留槽21内に送液される培養液Yの流量が相違すると、該栽培ベッドで生育する植物Xの生育速度が相違して均一な生育と収穫を図ることができない。そこで、下段の貯留槽21の内筒54に被せるキャップ55の流入口57、57aの径を小さく、上段に位置した貯留槽21の内筒54に被せるキャップ55の流入口57、57aの径を大きくして各貯留槽21に流入する流入量を簡単に調節することができる。このように、流入口52の径を相違させたキャップ55によって培養液の供給量を同一になるように調整することができる。
【0031】
水平方向に位置した同じ段の各貯留槽21の流量調節を行う場合、従来のごとく、流量調節弁を取付けて流量を調節すると装置が複雑になってコストが上昇し、各貯留槽21に同じ流量の培養液を流入させることが困難である。しかし本発明では、多段に設けた貯留槽21の高さに応じた口径の流入口57、57aを具えたキャップ55を着脱可能に取付けるだけで簡単に流量を均一化することができる。
【0032】
60は、前記栽培ベッド20の各貯留槽21の他端の内部底面に取付けた排水管で、図7、11、12に示すごとく、貯留槽21の外側に位置させた接続部61に前記送液手段45の培養タンク46に還流させる還流管50の一端を接続し、さらに、貯留槽21の内側に、培養液Yの水位調節を兼ねた水位筒62を一体または別体に取付け、該水位筒の下方部分には水平方向に切欠溝63を設けてある。
【0033】
各貯留槽21内を循環する培養液Yは、栽培ベッド20が長尺で水平方向に位置することから流れにくく、また各貯留槽内には植物の根が多数生え、さらには貯留槽21内の培養液Yは水位筒62の上端からオーバーフローさせて排水していることから、貯留槽21内の培養液Yは、上層の培養液は流れやすく、下層の培養液はよどみやすい。貯留槽21内の下層によどんだ培養液には、有機物残渣や微生物が繁殖しやすく、また、養分の少なくなった培養液が残留しやすい。そのため植物Xが病気になったり生育にばらつきを生じるなど、植物の生長が阻害されやすくなる。そこで、前記水位筒62の下部に水平方向に切欠溝63を設け、該切欠溝から貯留槽21内の下層によどんだ培養液を排出できるようにしてある。
【0034】
貯留槽21の下層によどんだ培養液Yが切欠溝63から流れ始めると、各貯留槽21の両側面はテーパー状に形成してあるため上層流より下層流の流れが良くなり、下層に溜まった有機物残渣や微生物を含む培養液を効率良く排水できる。そのため、貯留槽21内に常に新鮮な培養液Yを循環させて、生育パネル30に植えた植物の生育を促進させて均一に成長させることができ、且つ、一定の品質を有する植物を定期的に収穫することができる。
【0035】
前記栽培装置10で栽培する植物Xは、主に葉もの野菜やハーブ類や花卉などである。ここで、葉もの野菜としてはレタス、サンチュ、みず菜、春菊、葉ねぎなど、ハーブ類としてはミント、バジル、セージ、タイムなど、花卉としてはスプレーギク、カーネーションなどであるが、これらに限るものではない。
【0036】
以下本発明に係る実施の形態の作用について説明すると、栽培装置10は、温度、湿度および炭酸ガスなどを所定値に調整する空調手段を有する植物栽培用の屋内または室内に縦横に配置された各支柱11に栽培棚12を多段に配し、該栽培棚12にそれぞれ植物Xの光合成を促進させる照明灯40と、植物に栄養を供給する培養液Yを貯留する貯留槽21を有した栽培ベッド20とを設け、各栽培ベッドの上面に植物Xの苗を取付けた複数の生育パネル30をそれぞれ載置し、各貯留槽21に送液手段45によって培養液Yを供給する。
【0037】
植物栽培を行う場合、植物の本葉が3枚から4枚程度に生えた小さな苗を取付けた生育パネル30の下面に設けた係止凹部34とガイド凹部35を、栽培ベッド20の上面に設けた係止凸部25とガイド凸部26に摺動可能に嵌合させることにより、長尺に設けてある栽培ベッド20上を移動する生育パネル30が栽培ベッド20から外れることなくスムースに移動することができる。
【0038】
次いで、苗が生長する一定期間ごとに次の新しい苗を植えた生育パネル30を栽培ベッド20の一端に位置させる。このとき、既に栽培ベッド20の一端に位置している生育パネル30を前方に押し出して長手方向に移動させる。
【0039】
このように一定期間ごとに次々と新しい苗を植えた生育パネル30を栽培ベッド20の他端方向に送り出すことにより、栽培ベッド20の反対側には収穫可能に成長した植物を取付けた生育パネルが移動し、該生育パネルを栽培ベッドから外して植物を収穫することができる。葉もの野菜の場合、生育パネル30を栽培ベッド20の一端に乗せ、他端まで移動させて生育した植物を回収するまでの期間は約12日のサイクルで次々と収穫することが可能である。栽培ベッドに乗せるまでの時間は、育苗などを他の場所で行う。この野菜の収穫サイクルは、野菜によって当然相違する。
【0040】
照明灯40は、植物の光合成を促進させるため、植物に近接して取付けてある。また、栽培棚12は上下幅を狭く形成し、下方をに栽培ベッド20、上方には反射板41で塞がれた狭い照射空間に光が照射する。そのため、栽培棚12上の狭い空間は空気の流れが悪く、照明灯の光からの照射により発生する輻射熱で植物Xの生育障害であるチップバーン現象が起こりやすい。
【0041】
そこで、図2から4に示すごとく、各栽培棚12に格納した複数の栽培ベッド20の連結板23に設けた通気孔24と、生育パネル30の両端中央に設けた切欠部31を互いに当接させて形成した複数の排気穴31aと、照明灯40付近の仕切壁16に設けた複数の排気孔17からチャンバー15内に、各栽培棚12上の狭い照射空間内によどんだ輻射熱により高温になった空気を吸引排出して流れを良くして温度上昇を防いでいる。
【0042】
各栽培棚12上の照射空間内に溜まった輻射熱は、排気孔17からチャンバー15内に吸引排気して輻射熱を下げ、連結板23に設けた通気孔24と、生育パネル30の両端中央に設けた切欠部31を互いに当接させて略円形状をした排気穴31aにより、栽培ベッド20付近の狭い空間内の空気の流れを良くして貯留槽21内の培養液Yの温度の上昇を防止し、植物の生育障害であるチップバーン現象を防止して収穫量の向上を図ることができる。
【0043】
前記チャンバー15を利用して自然に吸込排出するだけでは各栽培棚12の照明灯40付近に溜まる輻射熱を排出することができない場合には、図2に示すごとく、チャンバー15の上端または栽培装置を設置した室内に排気ブロアー18などを取付けて強制的に吸引排気しても良い。
【0044】
さらに、各栽培ベッド20に取付けた植物Xを均一に生長させるために供給される培養液Yは、最上段と最下段とでは高低差を有するため各貯留槽21に流入する培養液Yの量が相違する。そのため、それぞれ各段ごと、または、2〜3段ごとに口径が相違する流入口57、57aを有したキャップ55を給水管52の先端に位置する内筒54に着脱可能に装着して簡単に培養液Yの流入量を均一化することができる。前記キャップは、内筒54にシールパッキン58を介してシールするだけでなく、キャップと内筒54にそれぞれねじ部を設けて螺着させても良いし、さらに、ボルト(図示せず)で固着してもよい。
【0045】
特に、水平方向に位置させた多数の貯留槽への培養液の流入量の調節は、同一口径をした流入口57、57aを有するキャップ55を取付けるだけで、簡単に同一流量に調節することができるので作業能率の向上を図ることができる。この場合、水圧の関係で栽培ベッドが位置する高さに応じてキャップに設ける流入口57、57aの径は相違する。
【0046】
また、不使用の栽培ベッドの貯留槽への培養液の流入を防止するには、流入口57,57aを有しないキャップを内筒54に装着するだけで簡単に培養液の流入を止めることができ、栽培ベッドごとに高価な流量調節弁を取付けることなく簡単に流量を調節することができるので安価で経済的となる利点がある。さらに、各段の貯留槽21に供給される培養液Yの流入量を均一化することにより、植物Xの生育むらを防止し、均一な植物の生育を行なうことができるので、無駄なく多量の収穫を期待することができる。
【0047】
貯留槽21内の培養液Yは、水位筒62の上端からオーバーフローさせて排出させるだけでなく、水位筒62の下方に設けた切欠溝63からも貯留槽21内の下層部分によどんだ培養液を排出することにより、下層に溜まった有機物残渣や微生物を含んだ培養液を効率的に排水できる。また、貯留槽21内には常に一定濃度を有する培養液Yを循環させることにより、生育パネル30に植えた植物の病虫害を防ぎ、健康な植物を均一に成長させることができ、且つ、一定の品質を有する植物を定期的に収穫できる。
【0048】
各貯留槽21内を循環する培養液Yは、図8に示すごとく、培養タンク46内の培養液Yを送水ポンプ47で各栽培ベッド20の貯留槽21に取付けた給水パイプ52に送水管49を介してそれぞれ送液し、各貯留槽から還流した培養液はプレフィルター48aで不純物を除去し、再度、培養タンク46内に戻して培養液の濃度はECセンサで測定し、pHはpHセンサで測定して培養濃度を一定に調整した後、送液ポンプ52供給し、該送液ポンプの前方に設けたフィルター槽48により不純物を除去して、各キャップ55に設けた流入口が塞がらないようしてある。送液ポンプ52で循環させることにより全ての栽培棚12の栽培ベッド20に一定濃度の培養液Yを送液できるため、植物の生長むらがなく照明灯40の光による光合成とあいまって全ての培養ベッド20の植物を均一に成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかる立体水耕栽培装置の一部破断した全体の構成図である。
【図2】立体水耕栽培装置の縦列方向を示す断面図である。
【図3】縦列方向に位置した支柱と支柱との間にチャンバーを設けた状態を示す断面図である。
【図4】栽培棚に設けた照明灯から発生する輻射熱をチャンバーで吸引排気する状態を示す説明図である。
【図5】栽培ベッドの一部破断した斜視図である。
【図6】生育パネルの一部破断した斜視図である。
【図7】貯留槽内の培養液の流れを示す説明図である。
【図8】各栽培ベッドの貯留槽に供給する培養液の送液手段を示す説明図である。
【図9】キャップの正面図である。
【図10】キャップの他の実施例を示した断面図である。
【図11】水位筒の正面図である。
【図12】貯留槽に取付けた水位筒の下部に設けた切欠溝から培養液を排水する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 支柱
12 栽培棚
15 チャンバー
16 仕切板
17 排気孔
20 栽培ベッド
21 貯留槽
23 連結板
24 通気孔
25 係止突起
26 ガイド凸部
30 生育パネル
31 排気孔
32 孔
33 挿入溝
34 係止凹部
35 ガイド凹部
40 照明灯
45 送液手段
46 培養タンク
47 送液ポンプ
48 フイルター槽
52 給水管
55 キャップ
60 排水管
62 水位筒
63 切欠溝
X 植物
Y 培養液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度、湿度および炭酸ガス濃度を所定値に調整する空調手段を有する植物栽培用室内において、
室内の広さに合わせて縦横に配列した多数の支柱(11)の左右両側にそれぞれ多段に設けた複数の栽培棚(12)と、
縦列方向に位置した各支柱(11)の間を仕切板(16)で仕切って形成したチャンバー(15)と、
前記栽培棚(12)にそれぞれ格納され、上面が開口して内部に培養液(Y)を供給する貯留槽(21)を有した栽培ベッド(20)と、
前記栽培ベッド(20)の上面に移動可能に被せて、植物の根が下方に突出した各植物(X)を支持する複数の孔(32)を有し、且つ、両端に切欠部(31)を有した生育パネル(30)と、
前記栽培ベッド(20)の下面に設けて各植物(X)に人工光を照射して光合成をさせる照明灯(40)と、
各栽培ベッド(20)の貯留槽(21)に所定濃度の培養液(Y)をそれぞれ供給する送液手段(45)とを備えてなることを特徴とする立体水耕栽培装置。
【請求項2】
前記チャンバー(15)の仕切壁(16)には、各栽培棚(12)に設けた照明灯(40)の照射空間と合致する位置に排気孔(17)を設け、該排気孔から前記照明灯の照射空間内に発生した輻射熱を該チャンバー(15)内に排気させて各栽培棚(12)上の空気の流れを良くし、植物(X)の生育障害や培養液(Y)の温度上昇を防止することを特徴とする請求項1記載の立体水耕栽培装置。
【請求項3】
前記栽培ベッド(20)は、両側面をテーパー状の樋型に形成した一対の貯留槽(21)の中央部に通気孔(24)を有した連結板(23)を一体に形成し、該連結板の両側端及び該貯留槽の両側上端に、前記生育パネル(30)を移動可能に載置させる係止突部(25)とガイド凸部(26)を設け、各貯留槽(21)の一端に設けた給水管(52)の先端に流量調節用のキャップ(55)を着脱可能に取付け、他端内部に設けた排水管(60)の水位筒(62)の下部に下層水排水用の切欠溝(63)を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の立体水耕栽培装置。
【請求項4】
前記生育パネル(30)は、長手方向の両端中央に半円状の切欠部(31)を設け、且つ、両側にそれぞれ互い違いに複数の孔(32)を形成し、該孔の幅方向に植物苗挿入用の挿入溝(33)を有し、底面には長手方向に前記栽培ベッド(20)の係止突部(25)およびガイド凸部(26)と嵌合する係止凹部(34)及びガイド凹部(35)を設けてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の立体水耕栽培装置。
【請求項5】
前記送液手段(45)は、所定の培養濃度に調整した培養液(Y)を貯留する培養タンク(46)と、該培養タンク内の培養液(Y)を各栽培ベッド(20)の貯留槽(21)に送液する送液ポンプ(47)と、培養液(Y)中の不純物を除くフィルター槽(48)とからなり、培養タンク(46)内の培養液(Y)を送液ポンプ(47)で各貯留槽(21)にそれぞれ送液し、各貯留槽(21)から還流した培養液(Y)を所定濃度に調整して前記フィルター槽(48)で不純物を除いて、前記送液ポンプ(47)で循環供給させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載の立体水耕栽培装置。
【請求項1】
温度、湿度および炭酸ガス濃度を所定値に調整する空調手段を有する植物栽培用室内において、
室内の広さに合わせて縦横に配列した多数の支柱(11)の左右両側にそれぞれ多段に設けた複数の栽培棚(12)と、
縦列方向に位置した各支柱(11)の間を仕切板(16)で仕切って形成したチャンバー(15)と、
前記栽培棚(12)にそれぞれ格納され、上面が開口して内部に培養液(Y)を供給する貯留槽(21)を有した栽培ベッド(20)と、
前記栽培ベッド(20)の上面に移動可能に被せて、植物の根が下方に突出した各植物(X)を支持する複数の孔(32)を有し、且つ、両端に切欠部(31)を有した生育パネル(30)と、
前記栽培ベッド(20)の下面に設けて各植物(X)に人工光を照射して光合成をさせる照明灯(40)と、
各栽培ベッド(20)の貯留槽(21)に所定濃度の培養液(Y)をそれぞれ供給する送液手段(45)とを備えてなることを特徴とする立体水耕栽培装置。
【請求項2】
前記チャンバー(15)の仕切壁(16)には、各栽培棚(12)に設けた照明灯(40)の照射空間と合致する位置に排気孔(17)を設け、該排気孔から前記照明灯の照射空間内に発生した輻射熱を該チャンバー(15)内に排気させて各栽培棚(12)上の空気の流れを良くし、植物(X)の生育障害や培養液(Y)の温度上昇を防止することを特徴とする請求項1記載の立体水耕栽培装置。
【請求項3】
前記栽培ベッド(20)は、両側面をテーパー状の樋型に形成した一対の貯留槽(21)の中央部に通気孔(24)を有した連結板(23)を一体に形成し、該連結板の両側端及び該貯留槽の両側上端に、前記生育パネル(30)を移動可能に載置させる係止突部(25)とガイド凸部(26)を設け、各貯留槽(21)の一端に設けた給水管(52)の先端に流量調節用のキャップ(55)を着脱可能に取付け、他端内部に設けた排水管(60)の水位筒(62)の下部に下層水排水用の切欠溝(63)を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の立体水耕栽培装置。
【請求項4】
前記生育パネル(30)は、長手方向の両端中央に半円状の切欠部(31)を設け、且つ、両側にそれぞれ互い違いに複数の孔(32)を形成し、該孔の幅方向に植物苗挿入用の挿入溝(33)を有し、底面には長手方向に前記栽培ベッド(20)の係止突部(25)およびガイド凸部(26)と嵌合する係止凹部(34)及びガイド凹部(35)を設けてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の立体水耕栽培装置。
【請求項5】
前記送液手段(45)は、所定の培養濃度に調整した培養液(Y)を貯留する培養タンク(46)と、該培養タンク内の培養液(Y)を各栽培ベッド(20)の貯留槽(21)に送液する送液ポンプ(47)と、培養液(Y)中の不純物を除くフィルター槽(48)とからなり、培養タンク(46)内の培養液(Y)を送液ポンプ(47)で各貯留槽(21)にそれぞれ送液し、各貯留槽(21)から還流した培養液(Y)を所定濃度に調整して前記フィルター槽(48)で不純物を除いて、前記送液ポンプ(47)で循環供給させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載の立体水耕栽培装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−262750(P2006−262750A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83851(P2005−83851)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(505058470)株式会社みらい (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(505058470)株式会社みらい (1)
【Fターム(参考)】
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