説明

立体画像表示装置およびその方法

【課題】複数の立体再生像を表示する場合であっても、それぞれの再生像の解像度の劣化を抑えることが可能な立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】立体画像表示装置1は、予め設定された光の強度に対応する光線からなる光線群を平行光として投射する画像投射手段10と、この平行光を、光線ごとに反射する複数の2軸可動反射型表示素子210を、2次元状に配置した画像反射手段20と、2軸可動反射型表示素子210の向きを個別に切り換える制御手段30と、を備え、立体再生像を構成する個々の位置に、それぞれ複数の反射光を集光させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を表示する立体画像表示装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、任意の視点から自由に立体画像を視聴することが可能な立体画像表示方式の一つとして、平面状に配列された凸レンズ群あるいはピンホール群を利用したインテグラルフォトグラフィ(Integral Photography:以下IP)方式が知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
ここで、図9を参照して、IP方式の概念について説明する。図9は、従来のIP方式の概念を説明するための説明図であって、(a)は撮像時、(b)は表示時の状態を示している。
図9(a)に示すように、従来のIP方式による立体画像撮像装置100は、同一平面状に配列された複数の微小凸レンズ101,101,…,101からなるレンズ群101と、フィルム等の撮像板102とを平行に配置している。ここで、観察者O側から、立体画像撮像装置100により、被写体Hを撮像すると、被写体Hは、レンズ群101を通して、レンズ群101を構成する微小凸レンズ101,101,…,101の数だけ、撮像板102に像(以下、「要素画像」という)103,103,…,103が撮像される。
【0004】
また、図9(b)に示すように、従来のIP方式による立体画像表示装置200は、同一平面状に配列された複数の微小凸レンズ101,101,…,101からなるレンズ群101と、図9(a)の撮像板102で撮像された要素画像103,103,…,103を点対称に変換した要素画像104,104,…,104を表示する表示板(表示素子)105とを平行に配置している。この表示板105には、通常、高精細画像が表示可能なLCD(液晶ディスプレイ:Liquid Crystal Display)等が用いられる。また、この表示板105は、撮像板102により撮像された要素画像103,103,…,103をそのまま表示すると、奥行きが逆転した像が表示されてしまう。そこで、この逆視像を回避するため、撮像された要素画像を点対称に変換し、表示用の要素画像104,104,…,104としている。ここで、観察者Oが、レンズ群101を通して、表示板105を観察すると、被写体Hの立体再生像Mが視認されることになる。
【0005】
このように、IP方式により立体再生像Mを表示する場合、要素画像104,104,…,104を表示する表示板105の前面にレンズ群101を配置する必要がある。このため、立体画像表示装置200は、要素画像104,104,…,104を背面から投射する背面投射型の表示装置として実現されることになる。
【特許文献1】特開2002−228974号公報(段落0023〜0028、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したIP方式による立体再生像の表示方法によれば、レンズの焦点位置に最適な立体再生像を表示することができる。しかし、レンズの焦点位置に合焦しない画像の解像度は劣化するため、さらに解像度を高めた立体再生像を求める要望があった。
この解像度の劣化について、図10を参照して説明を行う。
【0007】
図10(a)に示すように、IP方式による立体画像撮像装置100において、複数の被写体H,Hを撮像する場合(H,Hが同一被写体の異なる場所である場合でも同様である)、被写体Hに合焦するようにレンズ群101と撮像板102とが設定されているとすると、撮像板102で撮像された被写体Hの要素画像103,103,…,103は、撮像板102上に焦点が合っていないため、解像度の劣化した画像となる。そして、図10(b)に示すように、立体画像表示装置200において、被写体Hの立体再生像Mに合焦するようにレンズ群101と表示板105とが設定されているとすると、被写体Hの立体再生像Mは、さらに、解像度が劣化することになる。
【0008】
なお、立体画像表示装置200において表示する要素画像104は、被写体の3次元構造が既知の場合、立体画像撮像装置100を用いずに、解像度が劣化していない画像をコンピュータ等によって生成することは可能である。しかし、立体画像表示装置200において、立体再生像Mに合焦するようにレンズ群101と表示板105とが設定されているとすると、被写体Hの立体再生像Mは、観察者からは、焦点の合わない像となるため、解像度が劣化した立体再生像として視認されることに変わりはない。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、解像度の高い立体再生像を表示することが可能であり、さらに、複数の立体再生像を表示する場合であっても、それぞれの再生像の解像度の劣化を抑えることが可能な立体画像表示装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載の立体画像表示装置は、3次元空間上に表示される再生像の各画素の光の強度に対応する光線を、前記画素ごとに複数の位置から集光させることで、前記再生像を立体再生像として表示する立体画像表示装置であって、前記光線ごとの光の強度を示す光強度情報に基づいて、前記光の強度に対応する複数の光線からなる光線群を平行光として投射する画像投射手段と、この画像投射手段で投射された平行光を前記光線ごとに反射する2軸方向に回転駆動可能な2軸可動反射素子を、2次元状に配置した画像反射手段と、前記再生像の画素位置を示す表示位置情報に基づいて、前記画素ごとに予め定めた複数の位置に対応する前記2軸可動反射素子の光の反射方向を前記画素位置方向に変更する制御手段と、を備える構成とした。
【0011】
かかる構成によれば、立体画像表示装置は、画像投射手段によって、画素ごとの光の強度を示す光強度情報に基づいて、再生像の画素ごとの光の強度に対応する光線を平行光とすることで、画像反射手段における2次元状に配置した2軸可動反射型表示素子のそれぞれに、光の強度の異なる光線を投射することができる。
そして、立体画像表示装置は、制御手段によって、表示位置情報で示される再生像の画素位置を示す表示位置情報に基づいて、2軸可動反射型表示素子の光の反射方向を変更することで、平行光の光線を、立体再生像を表示させたい方向に反射させることができる。
【0012】
なお、立体再生像を構成する画素位置には、複数の2軸可動反射型表示素子からの反射光を集光させることで、複数の位置から反射光を認識することができ、3次元空間上の画素位置に表示点が存在しているものと認識することができる。そして、この光の集光位置(画素位置)を、立体再生像の3次元形状に合わせて複数設けることで、立体再生像として表示されることになる。
【0013】
また、請求項2に記載の立体画像表示装置は、請求項1に記載の立体画像表示装置において、前記画像投射手段が、点光源として光を照射する照射手段と、この照射手段の照射位置を焦点位置として、当該照射手段から照射される光を平行光に変換する投射レンズ系と、この投射レンズ系で変換された平行光を投射されることで、当該平行光を画素ごとに、前記光強度情報に基づいた光の強度の異なる前記光線群として出力する背面投射型の表示手段と、を備える構成とした。
【0014】
かかる構成によれば、立体画像表示装置は、凸レンズ等の投射レンズ系の焦点位置に照射手段を配置することで、点光源である照射手段が照射した光は、投射レンズ系によって平行光となる。
そして、立体画像表示装置は、表示手段において、光強度情報に基づいて、背面から投射される光の透過率を変化させることで、表示手段から出力される平行光は、画素ごとに異なる光の強度の光線からなる光線群となる。そして、この個々の光線が、それぞれ2軸可動反射型表示素子によって反射されることで、複数の位置から視認することが可能になり、立体再生像として視認されることになる。
【0015】
さらに、請求項3に記載の立体画像表示装置は、請求項1に記載の立体画像表示装置において、前記光強度情報は、光の3原色のそれぞれの強度を示す情報であって、前記画像投射手段が、前記光の3原色をそれぞれ点光源として照射する複数の照射手段と、この複数の照射手段のそれぞれの照射位置を焦点位置として、当該照射手段から照射される光を平行光に変換する複数の投射レンズ系と、この投射レンズ系で変換された平行光を投射されることで、当該平行光を画素ごとに、前記光強度情報に基づいた光の強度の異なる前記光線群として出力する前記投射レンズ系ごとに設けた複数の表示手段と、この複数の表示手段から出力される光線群の光路を同一方向に変更する光路変更手段と、を備える構成とした。
【0016】
かかる構成によれば、立体画像表示装置は、複数の表示手段から出力される平行光が、それぞれ光の3原色の光線群となる。そして、立体画像表示装置は、光路変更手段によって、各色の光線群の投射方向を同一にして、画像反射手段に投射することができる。これによって、光の集光位置(画素位置)に各色の光を集光させることで、立体再生像が多色化されて視認されることになる。
【0017】
また、請求項4に記載の立体画像表示装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の立体画像表示装置において、前記画像投射手段が、時系列に変化する前記光強度情報に基づいて、前記光線群の光の強度を切り換えて投射し、前記制御手段が、時系列に変化する前記表示位置情報に基づいて、前記2軸可動反射型表示素子の光の反射方向を制御する構成とした。
【0018】
かかる構成によれば、立体画像表示装置は、画像投射手段によって、時系列に変化する光強度情報に基づいて光線群の個々の光線の光の強度を切り換えて、2軸可動反射型表示素子に投射する。そして、立体画像表示装置は、制御手段によって、時系列に変化する表示位置情報に基づいて2軸可動反射型表示素子の光の反射方向を制御することで、時系列に変化する立体再生像を表示することができる。
【0019】
さらに、請求項5に記載の立体画像表示方法は、3次元空間上に表示される再生像の各画素の光の強度に対応する光線を、前記画素ごとに複数の位置から集光させることで、前記再生像を立体再生像として表示する立体画像表示方法であって、画像投射手段により、前記画素ごとの光の強度を示す光強度情報に基づいて、前記光の強度に対応する複数の光線からなる光線群を平行光として、2次元状に複数配置した2軸方向に回転駆動可能な2軸可動反射素子に投射するとともに、制御手段により、前記再生像の画素位置を示す表示位置情報に基づいて、前記画素ごとに予め定めた複数の位置に対応する前記2軸可動反射素子の光の反射方向を前記画素位置方向に変更することを特徴とする。
【0020】
かかる方法によれば、立体画像表示方法は、画像投射手段によって、画素ごとの光の強度を示す光強度情報に基づいて、再生像の画素ごとの光の強度に対応する光線を平行光とすることで、画像反射手段における2次元状に配置した2軸可動反射型表示素子のそれぞれに、光の強度の異なる光線を投射することができる。
そして、立体画像表示方法は、制御手段によって、表示位置情報で示される再生像の画素位置を示す表示位置情報に基づいて、2軸可動反射型表示素子の光の反射方向を変更することで、平行光の光線を、立体再生像を表示させたい方向に反射させることができる。
【0021】
なお、立体再生像を構成する画素位置には、複数の2軸可動反射型表示素子からの反射光を集光させることで、複数の位置から反射光を認識することができ、3次元空間上の画素位置に表示点が存在しているものと認識することができる。そして、この光の集光位置(画素位置)を、立体再生像の3次元形状に合わせて複数設けることで、立体再生像として表示されることになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
請求項1、2、5の発明によれば、反射光を、立体再生像を構成する個々の画素位置に集光させることで、光が反射されてくる方向から立体再生像を視認することができる。また、このとき、反射光のみによって、立体再生像を視認するため、IP方式のように表示時の焦点位置による解像度の劣化がなく、立体再生像が複数存在する場合であっても、それぞれの立体再生像の解像度の劣化を抑えることができる。
【0023】
また、請求項3に記載の発明によれば、立体再生像をカラーの再生像として視認させることができる。
さらに、請求項4に記載の発明によれば、静止した立体再生像を表示するだけでなく、時系列に立体再生像を変化させることができるため、立体動画像として視認させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[立体画像表示装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明に係る立体画像表示装置の構成について説明する。図1は、立体画像表示装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、立体画像表示装置1は、3次元空間上に表示される再生像の各画素の光の強度に対応する光線を、複数の異なる投射位置から投射することで、再生像を立体再生像として表示するものである。ここでは、立体画像表示装置1は、画像投射手段10と、画像反射手段20と、制御手段30とを備えている。
【0025】
画像投射手段10は、画像情報に含まれる光強度情報に基づいて、画素ごとの光の強度に対応する光線からなる光線群を平行光として投射するものである。ここでは、画像投射手段10は、照射光源11と、投射レンズ12と、表示素子13と、光路変更手段14とを備えている。なお、光強度情報は後記する制御手段30から入力される輝度情報である。
【0026】
照射光源11は、点光源として光を照射するものであって、表示素子13を背面から照射するバックライトである。この照射光源11から照射された光は、投射レンズ12を介して、表示素子13を背面から照射することになる。
【0027】
投射レンズ(投射レンズ系)12は、照射光源11から照射された光を平行光に変換するものであって、凸レンズ等である。このように照射光源11からの光を平行光とするため、照射光源11は、投射レンズ12の焦点位置に設置される。また、投射レンズ12は、表示素子13の表示領域を覆う大きさのレンズである。なお、この投射レンズ12は、1枚の凸レンズで構成してもよいし、複数のレンズによって、点光源の光を平行光に変換するレンズ系として構成してもよい。
【0028】
表示素子(表示手段)13は、投射レンズ12で変換された平行光を、画素ごとに、光強度情報に基づいた光の強度の異なる光線群として出力するものである。この表示素子13は、光強度情報に基づいて、光の透過率を増減させる液晶ディスプレイ等の背面投射型のディスプレイにより構成することができる。なお、この表示素子13は、投射レンズ12から投射される平行光に垂直となるように配置される。このように、表示素子13は、投射レンズ12から投射される平行光により、画素に対応する光の強度の異なる光線群を、平行光として出力する。
【0029】
光路変更手段14は、入射してくる光の光路を変更するものである。ここでは、光路変更手段14を、ハーフミラーで構成し、表示素子13から平行光として入射されてくる光の一部を、画像反射手段20の方向に反射させ、画像反射手段20から入射されてくる光の一部を透過させる。これによって、観察者Oは、画像反射手段20からの反射光を視認することができる。
【0030】
画像反射手段20は、画像投射手段10から入射されてくる平行光(光線群)を光線ごとに反射するものである。ここでは、画像反射手段20は、光反射手段21と、駆動手段22とを備えている。
【0031】
光反射手段21は、画素ごとに対応して設けられた2軸方向に反射方向を回転駆動可能なミラー(2軸可動反射型表示素子:以下、微小ミラーという)210を2次元状に配置したものである。この微小ミラー210は、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)等のマイクロミラーデバイスである。この個々の微小ミラー210は、駆動手段22によって駆動されることで、光の反射方向を変える。
なお、ここでは、光反射手段21を、個別にミラー面が分離した微小ミラー210によって構成しているが、ミラー面が連続した曲面ミラーを用いることとしてもよい。
【0032】
駆動手段22は、光反射手段21の個々の微小ミラー210に対して、2軸(X軸,Y軸)の駆動量を駆動信号として出力することで、個々の微小ミラー210の反射角を変更するものである。なお、駆動手段22は、後記する制御手段30の駆動量出力手段34から、微小ミラー210に対する駆動量を入力する。
このように、複数の微小ミラー210の反射光の方向(光線ベクトル)を変更することで、立体画像表示装置1は、観察者Oに対して、立体再生像を視認させることができる。
【0033】
ここで、図2を参照(適宜図1参照)して、立体画像表示装置1が立体再生像を表示する仕組みについて説明する。図2は、立体画像表示装置の表示の仕組みを示す模式図である。図2(a)は、立体再生像を光反射手段21に対して、観察者Oに近い位置に表示する様子を示し、図2(b)は、立体再生像を光反射手段21に対して、観察者Oから遠い位置に表示する様子を示している。なお、図中の表示位置F、Fは、立体再生像の表示点のうち、ある1点を示しているものとする。
【0034】
図2(a)に示すように、複数の微小ミラー210の反射光の方向(光線ベクトル)を3次元空間の立体再生像の表示位置Fに向かせることで、観察者Oは、反射方向の範囲で反射光を視認することができる。これによって、光反射手段21より観察者O側に近い位置に立体再生像が表示されることになる。また、図2(b)に示すように、複数の微小ミラー210の反射光の逆方向(光線ベクトルの逆向きベクトル)を立体再生像の表示位置Fに向かせることで、観察者Oは、反射方向の範囲で反射光を視認することができる。これによって、立体画像表示装置1は、光反射手段21よりも奥側に立体再生像を表示することができる。
【0035】
さらに、図3を参照(適宜図1参照)して、立体画像表示装置1が、立体再生像の表示面の異なる位置(表示点)を表示する手法について説明する。図3は、立体再生像を表示する場合の微小ミラーの状態を示す模式図であって、表示位置FF1と、表示位置FF2とに立体再生像の異なる表示点を再生した状態を示している。
【0036】
ここでは、表示点Mを再生するための平行光La,La,La,Laが、それぞれ微小ミラー210a,210a,210a,210aに入射されている。また、表示点Mを再生するための平行光Lb,Lb,Lbが、それぞれ微小ミラー210b,210b,210bに入射されている。
このとき、微小ミラー210a,210a,210a,210aによって、それぞれの平行光La,La,La,Laを表示位置FF1の方向に反射させることで、表示位置FF1に表示点Mを表示させることができる。
【0037】
同様に、微小ミラー210b,210b,210bによって、それぞれの平行光Lb,Lb,Lbを表示位置FF2の方向に反射させることで、表示位置FF2に表示点Mを表示させることができる。
【0038】
このように、立体再生像を表示する場合、どの微小ミラー210をどの表示点用に使用するかは特に限定されるものではない。例えば、図4(a)に示すように、光反射手段21における微小ミラー210を、表示点ごとに重なりがないように区分(ここでは、区分A1,A2)することとしてもよいし、図4(b)に示すように、重なりを持たせて区分することとしてもよい。なお、ここでは、表示点を2つとして例示したが、実際は、複数の表示点によって立体再生像が構成されることになる。
図1に戻って、立体画像表示装置1の構成について説明を続ける。
【0039】
制御手段30は、立体画像表示装置1を制御するものであって、画像投射手段10に対して光強度情報を出力することで画像を表示させたり、画像反射手段20に対して微小ミラー210の駆動量を出力することで光の反射方向を制御したりするものである。ここでは、制御手段30は、画像情報記憶手段31と、光強度出力手段32と、反射角演算手段33と、駆動量出力手段34とを備えている。なお、制御手段30は、一般的なコンピュータを用いて実現することができる。
【0040】
画像情報記憶手段31は、立体再生像を表示するための3次元空間の位置(画素位置)を示す表示位置情報と、当該位置における画素ごとの光の強度を示す光強度情報とからなる画像情報を記憶するものである。なお、表示位置情報と光強度情報とは対応付けて記憶されているものとする。また、表示位置情報には、光反射手段21のどの微小ミラー210によって、光を反射させるかを示す反射位置情報も含まれているものとする。
また、画像情報は、立体再生像を表示するための3次元空間の1つの位置(画素位置)に対して、複数の反射位置情報(微小ミラー210)を対応付けておく。これによって、1つの画素は、複数の微小ミラー210からの反射光として、観察者Oに視認されることになる。
【0041】
光強度出力手段32は、微小ミラー210に対応する位置に投射する光の強度を画像投射手段10に出力するものである。ここでは、光強度出力手段32は、画像情報記憶手段31から光強度情報を読み出し、当該光強度情報を強度信号として画像投射手段10に出力する。
【0042】
反射角演算手段33は、個々の微小ミラー210の光の反射角を演算するものである。ここでは、反射角演算手段33は、画像情報記憶手段31から、微小ミラー210の位置に対応する立体再生像の表示位置情報を読み出し、微小ミラー210における表示位置方向への光の反射角を演算する。なお、演算された反射角は、駆動量出力手段34に出力される。
【0043】
ここで、図5を参照(適宜図1参照)して、反射角演算手段33が、3次元座標である表示位置情報から、微小ミラー210の反射角を演算する方法について説明する。図5は、微小ミラーの反射角を演算する方法を説明するための説明図である。なお、図5は、光反射手段21をY軸方向上部から見た状態を示している。
【0044】
ここでは、立体再生像を表示させる表示位置情報である3次元座標(X,Y,Z)を、(X,Y,Z)とし、求める微小ミラー(ここでは210)のX軸方向の反射角をθとする。また、微小ミラー201は、3次元座標で(X,Y,0)に配置されているものとする。この場合、反射角演算手段33は、微小ミラー210のX軸方向の反射角θを以下の(1)式により演算する。
【0045】
θ=arctan((X−X)/Z) …(1)
同様に、反射角演算手段33は、微小ミラー210のY軸方向の反射角θを以下の(2)式により演算する。
θ=arctan((Y−Y)/Z) …(2)
図1に戻って、立体画像表示装置1の構成について説明を続ける。
【0046】
駆動量出力手段34は、反射角演算手段33で演算された反射角を駆動量として、駆動手段22に出力するものである。
以上、立体画像表示装置1の構成について説明したが、本発明は、この構成に限定されるものではない。
【0047】
例えば、ここでは、画像投射手段10を、表示素子13に対して背面から平行光を投射することで、立体再生像を表示するための画像を平行光として投射する構成としたが、予め当該画像が映像信号として生成してある場合は、当該映像信号をある画角で投射した後に、投射レンズ12によって、平行光とする構成としてもよい。
【0048】
また、ここでは、画像投射手段10を、単一の表示素子13により構成したが、複数の表示素子を用いることも可能である。例えば、図6に示すように、画像投射手段10の他の構成(10B)として、赤、緑、青の光を照射する照射光源11R,11G,11Bと、それぞれの照射光源11R,11G,11Bに対応する投射レンズ12R,12G,12Bと、表示素子13R,13G,13Gとを備え、表示素子13R,13G,13Gから出射される平行光を、ダイクロイックプリズム15によって、同一方向の平行光とし、画像反射手段20に投射する構成としてもよい。この場合、光路変更手段14とダイクロイックプリズム15とが光路変更手段として機能することになる。そして、制御手段30(図1)は、各々の色に対応する輝度情報を光強度情報として、それぞれの表示素子13R,13G,13Gに出力する。これによって、立体再生像をカラーで表示することができる。
【0049】
また、ここでは、画像投射手段10に、光路変更手段14を備える構成としたが、図7に示すように、画像投射手段10の他の構成(10C)として、光路変更手段14を省略し、直接、画像反射手段20に投射する構成としてもよい。あるいは、画像投射手段10Cを、図6で説明した照射光源11R,11G,11Bと、投射レンズ12R,12G,12Bと、表示素子13R,13G,13Gとで構成してもよい。
【0050】
また、ここでは、制御手段30が、立体再生像を表示する表示位置情報から、微小ミラー210の反射角を演算することとしたが、予め微小ミラー210の反射角を求めておき、画像情報記憶手段31に記憶しておくこととしてもよい。この場合、制御手段30から、反射角演算手段33を省略することができる。
以上説明したように、立体画像表示装置1は、微小ミラー210によって、平行光を構成する光線群を個別に反射させるだけの構成であるため、IP方式のように、奥行き方向で解像度が劣化することがなく、解像度の高い立体再生像を表示することが可能になる。
【0051】
[立体画像表示装置の動作]
次に、図1を参照して、本発明に係る立体画像表示装置の動作について説明する。
(初期動作)
まず、立体画像表示装置1は、立体再生像を表示するための3次元空間の位置を示す表示位置情報と当該位置における光の強度を示す光強度情報とからなる画像情報を、予め画像情報記憶手段31に記憶しておく。
【0052】
(画像投射動作)
そして、立体画像表示装置1は、画像投射手段10において、投射レンズ12によって、照射光源11が照射する光を平行光に変換する。そして、立体画像表示装置1は、表示素子13によって、制御手段30の光強度出力手段32から出力される光強度情報に基づいて、平行光を、画素ごとに光の強度の異なる光線群とする。この光線群は、光路変更手段14によって、光路が変更されて、画像反射手段20に投射される。
【0053】
(画像反射動作)
そして、立体画像表示装置1は、画像反射手段20において、駆動手段22によって、制御手段30から出力される微小ミラー210に対する駆動量により、微小ミラー210の反射角を変更する。その後、立体画像表示装置1は、個々の微小ミラー210によって、画像投射手段10から投射された平行光である光線群を反射させる。
【0054】
以上の動作によって、立体画像表示装置1は、画像情報記憶手段31に記憶されている画像情報に基づいて、立体再生像を表示することができる。
なお、画像投射手段10における画像投射動作と、画像反射手段20における画像反射動作は、制御手段30によって、ほぼ並行に動作することが可能である。
【0055】
また、立体画像表示装置1は、制御手段30の光強度出力手段32によって、画像情報記憶手段31に記憶されている光強度情報を時系列に画像投射手段10に出力し、制御手段30の駆動量出力手段34によって、微小ミラー210の駆動量を時系列に画像反射手段20に出力することで、立体再生像を動画として再生することができる。
【0056】
[補足説明:複数立体再生像の表示について]
前記までの説明では、説明を簡略化するため、立体再生像を1つ表示する場合について説明を行ったが、立体画像表示装置1は、同時に複数の立体再生像を表示することもできる。以下、図8を参照して、立体画像表示装置1が、複数の表示再生像を表示する手法について説明を行う。図8は、立体画像表示装置において、複数の立体再生像を表示した状態を示す模式図である。なお、ここでは、説明を簡略化するため、立体画像表示装置1の光反射手段21のみを図示し、装置を上側から見た状態を示している。
【0057】
図8(a)は、光反射手段21からの反射光によって、立体再生像M,Mが表示されている例を示している。また、立体再生像Mの表示点のうちのある1点をP、立体再生像Mの表示点のうちのある1点をPとしている。ここで、表示点Pは、光反射手段21のWの範囲の微小ミラー(図示せず)の反射光(反射光L11,L12の範囲)によって生成されている。また、表示点Pは、光反射手段21のWの範囲の微小ミラー(図示せず)の反射光(反射光L21,L22の範囲)によって生成されている。
このとき、反射光L11,L12の範囲では表示点Pを視覚することができるが、それ以外の領域Baでは、表示点Pを視覚することができない。しかし、観察者は、右方向(図中上方向)に視点をずらすことで表示点Pを視覚することができる。
【0058】
図8(b)は、光反射手段21からの反射光によって、立体再生像M,Mが表示されている例を示している。また、立体再生像Mの表示点のうちのある1点をP、立体再生像Mの表示点のうちのある1点をPとしている。ここで、表示点Pは、光反射手段21のWの範囲の微小ミラー(図示せず)の反射光(反射光L11,L12の範囲)と、光反射手段21のWの範囲の微小ミラー(図示せず)の反射光(反射光L21,L22の範囲)とによって生成されている。また、表示点Pは、光反射手段21のWの範囲の微小ミラー(図示せず)の反射光(反射光L31,L32の範囲)によって生成されている。
このとき、反射光L11,L12の範囲および反射光L21,L22の範囲では表示点Pを視覚することができるが、それ以外の領域Baでは、表示点Pを視覚することができない。しかし、観察者は、左右方向(図中上下方向)に視点をずらすことでPを視覚することができる。
【0059】
このように、立体画像表示装置1は、複数の立体再生像を同時に表示した場合であっても、見る方向によって、立体再生像を認識することができないようにすることが可能である。これによって、例えば、観察者から見て、立体再生像Mを立体再生像Mによって遮蔽した状態を実現することができる。また、立体画像表示装置1は、奥行き方向の異なる位置に立体再生像を表示する場合であっても、観察者がそれぞれの立体再生像に割り当てられた反射光を視認する構成であるため、個々の立体再生像の解像度が劣化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る立体画像表示装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明に係る立体画像表示装置の表示の仕組みを示す模式図である。
【図3】立体再生像を表示する場合の微小ミラーの状態を示す模式図である。
【図4】立体再生像を表示する際の微小ミラーの区分の一例を示す図である。
【図5】微小ミラーの反射角を演算する方法を説明するための説明図である。
【図6】カラーの立体再生像を表示するための画像投射手段の構成示す概略図である。
【図7】光路変更手段を省略した画像投射手段の構成示す概略図である。
【図8】立体画像表示装置において複数の立体再生像を表示した状態を示す模式図である。
【図9】従来のIP方式の概念を説明するための説明図である。
【図10】従来のIP方式における解像度を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 立体画像表示装置
10 画像投射手段
11 照射手段
12 投射レンズ(投射レンズ系)
13 表示素子(表示手段)
14 光路変更手段
20 画像反射手段
21 光反射手段
210 微小ミラー(2軸可動反射型表示素子)
22 駆動手段
30 制御手段
31 画像情報記憶手段
32 光強度出力手段
33 反射角演算手段
34 駆動量出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間上に表示される再生像の各画素の光の強度に対応する光線を、前記画素ごとに複数の位置から集光させることで、前記再生像を立体再生像として表示する立体画像表示装置であって、
前記画素ごとの光の強度を示す光強度情報に基づいて、前記光の強度に対応する複数の光線からなる光線群を平行光として投射する画像投射手段と、
この画像投射手段で投射された平行光を前記光線ごとに反射する2軸方向に回転駆動可能な2軸可動反射素子を、2次元状に配置した画像反射手段と、
前記再生像の画素位置を示す表示位置情報に基づいて、前記画素ごとに予め定めた複数の位置に対応する前記2軸可動反射素子の光の反射方向を前記画素位置方向に変更する制御手段と、
を備えていることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記画像投射手段は、
点光源として光を照射する照射手段と、
この照射手段の照射位置を焦点位置として、当該照射手段から照射される光を平行光に変換する投射レンズ系と、
この投射レンズ系で変換された平行光を投射されることで、当該平行光を画素ごとに、前記光強度情報に基づいた光の強度の異なる前記光線群として出力する背面投射型の表示手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記光強度情報は、光の3原色のそれぞれの強度を示す情報であって、
前記画像投射手段は、
前記光の3原色をそれぞれ点光源として照射する複数の照射手段と、
この複数の照射手段のそれぞれの照射位置を焦点位置として、当該照射手段から照射される光を平行光に変換する複数の投射レンズ系と、
この投射レンズ系で変換された平行光を投射されることで、当該平行光を前記画素ごとに、前記光強度情報に基づいた光の強度の異なる前記光線群として出力する、前記投射レンズ系ごとに設けた複数の表示手段と、
この複数の表示手段から出力される光線群の光路を同一方向に変更する光路変更手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記画像投射手段が、時系列に変化する前記光強度情報に基づいて前記光線群の光の強度を切り換えて投射し、
前記制御手段が、時系列に変化する前記表示位置情報に基づいて前記2軸可動反射型表示素子の光の反射方向を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
3次元空間上に表示される再生像の各画素の光の強度に対応する光線を、前記画素ごとに複数の位置から集光させることで、前記再生像を立体再生像として表示する立体画像表示方法であって、
画像投射手段により、前記画素ごとの光の強度を示す光強度情報に基づいて、前記光の強度に対応する複数の光線からなる光線群を平行光として、2次元状に複数配置した2軸方向に回転駆動可能な2軸可動反射素子に投射するとともに、制御手段により、前記再生像の画素位置を示す表示位置情報に基づいて、前記画素ごとに予め定めた複数の位置に対応する前記2軸可動反射素子の光の反射方向を前記画素位置方向に変更することを特徴とする立体画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−322764(P2007−322764A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153136(P2006−153136)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】