説明

立体表示用シート

【課題】非立体液晶表示装置に設置が可能で、安価なパターン位相差フィルムを提供すること。
【解決手段】水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を規則的に発することが可能な液晶表示装置の表示面に貼り付け可能な立体表示用シートであって、透明樹脂基材の一面側に、光配向膜、位相差層、及び前記表示面に対する接着性を有する接着層がこの順序で設けられており、位相差層は、液晶表示装置の左目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して左目用画像の光を円偏光に変換可能な位相差層(L)と、右目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して右目用画像の光を円偏光に変換可能な位相差層(R)がパターン状に形成されており、位相差層(L)の遅相軸の方向と位相差層(R)の遅相軸の方向が異なることを特徴とする、立体表示用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像表示方式の一つとして、例えば、表示装置の水平ライン(走査線)の奇数ラインからは左目用画像の光を発し、水平ラインの偶数ラインからは右目用画像の光を発するというように、表示装置の水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を発し、これを偏光によって分離する方式(以下、「ライン・バイ・ライン方式」という)がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
図3は、一般的なライン・バイ・ライン方式による立体液晶表示装置の構成を分解して模式的に示した斜視図である。一般的なライン・バイ・ライン方式の液晶表示装置は、バックライト100、液晶パネル120、液晶パネル120の両側に配置された2枚の偏光板110、130、パターン位相差フィルム140からなる。通常、2枚の偏光板110、130の偏光軸160と170はそれぞれ、直交するように配置される。パターン位相差フィルム140は、液晶パネル120の左目用の水平ラインと右目用の水平ラインにそれぞれ対応した左目用の位相差層(L)と右目用の位相差層(R)を有する。通常、位相差フィルム140の左目用の位相差層(L)の遅相軸の方向と右目用の位相差層(R)の遅相軸の方向は直交している。
【0004】
一般的なライン・バイ・ライン方式による立体液晶表示装置の表示原理は以下のとおりである。バックライト100から自然光(偏光のない光)であって左目用と右目用の区別のない光が発せられる。
次いで、バックライト100から発せられた光は、偏光板110によって、偏光軸160に平行な振動方向の直線偏光であって左目用と右目用の区別のない光に変換される。
【0005】
その光は、液晶パネル120の左目用画像のライン(L)を通過すると、直線偏光であって左目用画像の光となる。次いで、その液晶パネル120を通過した左目用画像の光のうち、偏光板130の偏光軸170に平行な振動方向の直線偏光が偏光板130を通過する。そして、その偏光板130を通過した左目用画像の光は、パターン位相差フィルム140の左目用の位相差層(L)を通過することによって、左目画像用の円偏光(又は楕円偏光)150に変換される。
【0006】
一方、右目用画像の光の場合は、液晶パネル120の右目用画像のライン(R)やパターン位相差フィルム140の右目用の位相差層(R)を通過して、右目用画像の円偏光(又は楕円偏光)151が生ずる。
このとき、パターン位相差フィルム140の左目用の位相差層(L)の遅相軸と右目用の位相差層(R)の遅相軸が直交していることにより、パターン位相差フィルム140を通過した左目用画像の円偏光(楕円偏光)150と右目用画像の円偏光(楕円偏光)151の回転方向が反対となる。
【0007】
このように、立体液晶表示装置から発せられた画像の光は、左目用画像の光150と右目用画像の光151に分離される。そして、立体映像の観察者の装着した偏光メガネによって、分離された左目用画像の光のみを左目に届け、一方、分離された右目用画像の光のみを右目に届け、立体視を行っている。なお、図3においては、偏光メガネを装着した観察者は省略している。また、本発明の模式図においては、説明の便宜上、縦横の寸法比、各層及び各部材の寸法、各部材間の距離は実寸から変えて誇張して示している。
【0008】
図4は、一般的な立体表示に対応していない液晶表示装置の構成を分解して模式的に示した斜視図である。一般的な立体表示に対応していない(以下、「非立体」ともいう)液晶表示装置では、立体液晶表示装置と異なり、液晶パネル121において、水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を区別して発するのではなく、全ての水平ラインで右目用と左目用の区別のない光を発する。そして、非立体液晶表示装置ではパターン位相差フィルム140を備えていない。
そのため、一般的な非立体液晶表示装置では、液晶パネル121を通過した光は左右の区別がない。偏光板130を通過した左右の区別のない直線偏光180が視聴者の左目と右目に届くため、立体液晶表示装置のような立体感を感ずることができない。
【0009】
また、従来、非立体液晶表示装置の使用者が立体映像を観賞するためには、立体液晶表示装置を新たに購入しなければならず、多くの費用が必要であった。
【0010】
これに対して、一般的な非立体液晶表示装置であっても、ソフトウェアの変更によって、液晶パネル121を駆動させているシステムを変更して、水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を発する液晶パネル120とすることは可能である。
また、ライン・バイ・ライン方式の立体液晶表示に必要とされる偏光メガネは、立体液晶表示装置自体と比べれば、安価に購入できる。
そのため、非立体液晶表示装置であっても、上述したように液晶パネルのシステムの変更を行い、偏光メガネを購入した上で、パターン位相差フィルム140を非立体液晶表示装置に設置すれば、立体映像を観賞することが可能となる。
【0011】
これらのことから、非立体液晶表示装置に設置が可能で、安価なパターン位相差フィルムが要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−230084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、非立体液晶表示装置を立体液晶表示装置とするために、非立体液晶表示装置に設置が可能で、安価なパターン位相差フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らが鋭意検討した結果、パターン位相差フィルムの基材側の表面に、液晶表示装置の画像表示面に対する接着性を有する接着層を設けることで、パターン位相差フィルムを非立体液晶表示装置に設置することが可能となり、当該パターン位相差フィルムも安価であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明に係る立体表示用シートは、水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を規則的に発することが可能な液晶パネルを備える液晶表示装置の表示面に貼り付け可能なシートであって、透明樹脂基材の一面側に、光配向膜、位相差層、及び前記表示面に対する接着性を有する接着層がこの順序で設けられており、前記位相差層は、前記液晶表示装置の左目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該左目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(L)と、前記液晶表示装置の右目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該右目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(R)がパターン状に形成されており、当該位相差層(L)の遅相軸の方向と当該位相差層(R)の遅相軸の方向が異なることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る立体表示用シートは、前記接着層が、自己粘着性を有する材料からなることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る立体表示用シートは、さらに、前記透明樹脂基材の光配向膜が形成されていない面側に防汚の機能を有する層及び/又はハードコートの機能を有する層が積層されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る立体表示用シートは、液晶表示装置の表示面に接着性を有する接着層を備え、当該表示面に貼り付けが可能であるため、水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を発することができる液晶パネルを備える非立体液晶表示装置を、安価に立体液晶表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係る立体表示用シートの構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】図2は、光配向膜を形成する工程の一例を示した模式図である。
【図3】図3は、一般的なライン・バイ・ライン方式による立体液晶表示装置の構成を分解して模式的に示した斜視図である。
【図4】図4は、一般的な立体表示に対応していない液晶表示装置の構成を分解して模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
本発明において、(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を表し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
【0022】
(立体表示用シート)
本発明に係る立体表示用シートは、水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を規則的に発することが可能な液晶パネルを備える液晶表示装置の表示面に貼り付け可能なシートであって、透明樹脂基材の一面側に、光配向膜、位相差層、及び前記表示面に対する接着性を有する接着層がこの順序で設けられており、前記位相差層は、前記液晶表示装置の左目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該左目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(L)と、前記液晶表示装置の右目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該右目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(R)がパターン状に形成されており、当該位相差層(L)の遅相軸の方向と当該位相差層(R)の遅相軸の方向が異なることを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明に係る立体表示用シートの層構成の一例を模式的に示した断面図である。立体表示用シート1は、透明樹脂基材10の一面側に、光配向膜30、位相差層40、及び接着層20を備える。透明樹脂基材10と接着層20の間に光配向膜30と位相差層40がこの順に配置されている。位相差層4がこの位置に配置されている理由は、なるべく位相差層を液晶表示装置の表示面に近づけるほうが、斜め上下方向から見た場合のクロストーク(右目用画像、左目用画像がそれぞれ左目、右目に観察される)を小さくすることが可能になるからである。位相差層40では、液晶表示装置の左目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該左目用画像の光を円偏光(楕円偏光)に変換可能な位相差層(L)41と、液晶表示装置の右目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該右目用画像の光を円偏光(楕円偏光)に変換可能な位相差層(R)42がパターン状に形成されている。なお、位相差層(L)41の遅相軸の方向と位相差層(R)42の遅相軸の方向は異なるように設定されている。
【0024】
立体表示用シート1の接着層20が接着性を有するため、当該接着層20によって立体表示用シート1を液晶表示装置に貼り付けることができる。これによって、水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を発することができる液晶パネルを備える非立体液晶表示装置を、安価に立体液晶表示装置とすることができる。
【0025】
以下、本発明に係る立体表示用シートを構成する透明樹脂基材、光配向膜、位相差層、接着層を順に説明する。
【0026】
(透明樹脂基材)
透明樹脂基材10は、従来公知の位相差フィルムの基材フィルムを用いることができる。例えば、特開2007−86680号公報に記載のトリアセチルセルロース(TAC)、JSR(株)製の商品名アートン、日本ゼオン(株)製の商品名ゼオネックス等のノルボルネン系ポリマー、日本ゼオン(株)製の商品名ゼオノア等のシクロオレフィン系ポリマー及びポリメチルメタクリレートを用いることができる。
透明樹脂基材10の可視光領域380〜780nmにおける平均透過率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。
なお、平均透過率は、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製の商品名UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定することができる。
【0027】
透明樹脂基材10の厚さは、通常、20〜500μmであり、50〜200μmであることが好ましい。透明樹脂基材10とその一面側に設けられる光配向膜30との密着性を高めるため、透明樹脂基材10に、例えば、ケン化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火災処理等の表面処理を施しても良く、プライマー層(接着剤層)を形成しても良い。
【0028】
(光配向膜)
光配向膜30は、所望の位相差層40のパターンを形成するために設けられる膜(層)である。光配向膜30は、光配向性材料を用いて形成される。
光配向膜30の光配向性材料は、例えば、特開2009−230069号公報に記載の分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物及びアゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマー等の光異性化型材料並びに特開2009−230069号公報に記載の側鎖にケイ皮酸エステル、クマリン又はキノリンを含む反応性ポリマー及び特開2006−350322号公報に記載の光反応型材料等を用いることができる。
この他、特開2009−193014号公報に記載の光配向層の材料を用いても良い。
【0029】
光配向膜30の厚さは、通常、1〜1000nmであるが、コストを抑え、かつ、十分な配向能を得る観点から、3〜100nmであることが好ましい。
【0030】
図2は、光配向膜30を形成する工程の一例を示した模式図である。
まず、(i)工程として、透明樹脂基材10上に光配向性材料を塗布し、塗膜31を形成する。
次いで、(ii)工程として、所望の光配向膜30のパターンを形成することができる遮光部51と非遮光部52を有するフォトマスク50を介して、直線偏光60により塗膜31をパターン露光(偏光露光)する。
(iii)工程では、パターン露光した後にフォトマスク50を除去することで、パターン露光された部分の光配向性材料が特定方向に配向した塗膜31が得られる。
次いで、(iv)工程で、その塗膜31を、(ii)工程の直線偏光とは異なる偏光軸を有する直線偏光61により全面露光する。
それによって、(v)工程では(ii)工程で露光されなかった部分(未露光部分)が露光され、光配向性材料が異なる方向に配向した2つの領域32、33が形成され、光配向膜30が得られる。この領域32は、位相差層(L)41が形成される領域となり、一方、領域33は、位相差層(R)42が形成される領域となる。
【0031】
前記(i)工程で、透明樹脂基材10上に、光配向性材料を塗布する方法は特に限定されず、ロールコート又はスロットダイコート等の従来公知の方法を用いることができる。
(ii)工程で用いるフォトマスクは、例えば、特開2005−191180号公報記載のフォトマスク等の従来公知のフォトリソグラフィー等で用いられているフォトマスクを用いることができる。フォトマスクの非遮光部の波長300〜400nmにおける紫外線透過率は、光配向膜の露光部を十分に配向させる観点から50%以上であることが好ましい。
また、(ii)工程のパターン露光(偏光露光)と(iv)工程の全面露光を行う際の直線偏光61と62の偏光軸の設定は、光配向膜30上に形成される位相差層40の遅相軸(光軸)が左目用位相差層(L)41と右目用位相差層(R)42で異なるように行えば良く、当該設定は直交するように行うことが好ましい。
前記(ii)工程のパターン露光(偏光露光)と(iv)工程の全面露光の光源の照射波長としては300〜400nmにピークを有することが好ましい。パターン露光の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等を用いることができる。露光量は、通常、5〜1000mJ/cmであり、10〜500mJ/cmが好ましい。
【0032】
(位相差層)
位相差層40は、液晶表示装置から発せられた左目用画像の直線偏光を左目用画像の円偏光又は楕円偏光に変換し、液晶表示装置から発せられた右目用画像の直線偏光を右目用画像の円偏光又は楕円偏光に変換する働きを有する層である。
位相差層40では、図1に示すように、液晶表示装置から発せられた左目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(L)41と、当該液晶表示装置から発せられた右目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(R)42がパターン状に形成されており、当該位相差層(L)41の遅相軸の方向と当該位相差層(R)42の遅相軸の方向が異なる。そして、当該位相差層(L)41は、本発明に係る立体表示用シート1を貼り付ける対象の液晶表示装置の左目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して配置されている。位相差層(R)42も、本発明に係る立体表示用シート1を貼り付ける対象の液晶表示装置の右目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して配置されている。
【0033】
位相差層40の材料は、従来公知の位相差層の材料を用いて良い。例えば、特開2007−86680号公報に記載のネマチック液晶材料やコレステリック液晶材料を用いることができる。また、特開2009−193014号公報に記載の位相差層の材料を用いても良い。
位相差層40の遅相軸を固定するために、上記液晶材料等の分子に光硬化性を有する(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を導入することが好ましい。
位相差層40を形成する材料(組成物)には、上記液晶性材料の他、位相差層表面の液晶性材料の配向を調整するために、従来公知のカイラル剤や界面活性剤等が含まれていても良く、光重合反応を促進するために光重合開始剤が含まれていても良い。
位相差層40の厚さは、液晶表示装置側から入射した直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換できる厚さであれば良く、位相差層の液晶材料等を考慮して適宜設定すれば良い。
【0034】
位相差層40は、図2の(v)工程で得られた光配向膜30上に上記液晶材料等の位相差層の材料を塗布し、乾燥や光照射により配向処理と遅相軸の固定化を行うことにより形成することができる。位相差層40の液晶材料の配向方向は、光配向膜30の配向によって制御されるため、光配向性材料の配向方向が異なる領域32、33を有する光配向膜30上に形成した位相差層40は、領域32と33のパターンと同様のパターン状に液晶材料の配向方向が異なる。したがって、位相差層40はパターン状に遅相軸が異なる。
乾燥温度は、用いる液晶材料等に応じて適宜調節すれば良い。光照射は上記光配向膜30と同様に行えば良い。
【0035】
(接着層)
接着層20は、液晶表示装置の表示画像を視認することができる透明性を有し、当該接着層20によって立体表示用シート1を液晶表示装置の表示面に貼り付けが可能であれば、従来公知の接着材料を用いることができる。
接着層20の可視光領域380〜780nmにおける平均透過率は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。
【0036】
このような透明性を有する接着層20の材料としては、例えば、特許3611234号に記載のシリコーンゴムやエチレンプロピレンゴム、WO2006−0062265に記載のカルボン酸変成熱可塑性エラストマー、カルボン酸未変成熱可塑性エラストマー及び可塑剤の混合物を用いることができる。
本発明に係る立体表示用シートは、接着層が自己粘着性である(容易に貼着することができるとともに、容易に引き剥がすことができる)ことが貼り合せ時の修正を行う可能性いわゆるリワーク性の観点から好ましい。好適な材料としては、シリコーンゴムが挙げられる。
【0037】
接着層20は、接着層20の材料を位相差層40上に従来公知の塗布方法によって塗布することによって形成することができる。
接着層20の材料を塗布する方法は特に限定されず、ロールコート又はスロットダイコート等の従来公知の方法を用いることができる。
【0038】
本発明においては、さらに、前記透明樹脂基材の光配向膜が形成されていない面側に防汚の機能を有する層及び/又はハードコートの機能を有する層が積層されていてもよい。防汚の機能を有する層としては、親水性グラフトポリマーの塗膜などの基材表面を親水化させる層が用いられる。基材表面を親水化させることにより、自動車の排気ガス中のカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、皮脂などの疎水性汚染物が付着しにくく、また、付着してもふき取りや水洗により簡単に落とすことが可能になる。また、酸化チタンを光励起させることにより親水性を持たせた層を防汚層として用いることも可能である。
また、ハードコートの機能を有する層としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を10μmの厚みで塗工した塗膜で、鉛筆硬度3Hレベルであることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0040】
(実施例1)
1.被照射基材の準備
特開2002−107503号公報に記載の方法でトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム(株)製の商品名フジタック)上にハードコート(HC)層を作製した。配向膜用組成物を特開2009−230069号公報に記載の方法で調製し、上記TACフィルムのHC層が形成されていない側に配向膜用組成物を塗布して厚さ0.05μmの配向膜を形成し、被照射基材を得た。
【0041】
2.偏光紫外線露光
ライン291μm、スペース291μmのストライプ状のフォトマスクを介し、上記の方法で得られた被照射基材の配向膜に偏光紫外線を照射した。偏光紫外線の偏光軸はフォトマスクのストライプの方向に対して90°である。その後、再度フォトマスクがない状態で偏光紫外線を配向膜に照射し、光配向膜を得た。このときの偏光紫外線の偏光軸は1回目の偏光紫外線の軸に対して直交する方向である。
【0042】
3.位相差層形成
上記光配向膜の偏光紫外線を照射した配向膜にネマチック液晶を約1μm塗布し、乾燥した後、紫外線硬化を行うことにより、幅291μmの90°の遅相軸のストライプパターンを有する部分、および幅291μmの0°の遅相軸のストライプパターンを有する部分を交互に有する位相差層を形成した。位相差値はいずれの部分でも125nmであった。
【0043】
4.接着層形成
WO2006−2006265公報の実施例1に記載の方法で上記位相差層上に自己粘着性の接着層を形成し、接着層付のパターン位相差フィルムを得た。
【0044】
5.円偏光眼鏡の準備
眼鏡のレンズ部分に直線偏光板を使用し、直線偏光板の外側に左右それぞれ直線偏光板の透過軸に対し45°、−45°の遅相軸を有するλ/4板を貼合し、円偏光眼鏡を得た。
【0045】
6.液晶ディスプレイへの貼合
走査線の幅が291nmの対角3インチのTN型液晶ディスプレイに3Dの静止画像を表示させ、液晶ディスプレイと同じ大きさに切り出した上記接着層付のパターン位相差フィルムの接着層を、上記円偏光眼鏡をかけながらディスプレイ表面に3D画像が認識できるようアライメントをとりながら貼合した。
上記方法によって作製した液晶ディスプレイにライン・バイ・ライン方式による動画及び静止画の種々の3D画像を表示させ、円偏光眼鏡をかけた状態で観察したところ3D画像を認識することができた。
【符号の説明】
【0046】
1…立体表示用シート
10…透明樹脂基材
20…接着層
30…光配向膜
31…光配向性材料の塗膜
32、33…特定の配向方向の領域
40…位相差層
41…位相差層(L)
42…位相差層(R)
50…フォトマスク
51…遮光部
52…非遮光部
60、61…直線偏光
100…バックライト
110、130…偏光板
120…立体液晶表示装置の液晶パネル
121…非立体液晶表示装置の液晶パネル
140…パターン位相差フィルム
150、151…円偏光(楕円偏光)
160、170…偏光板の偏光軸
180…直線偏光の偏光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平ライン毎に左目用画像の光と右目用画像の光を規則的に発することが可能な液晶パネルを備える液晶表示装置の表示面に貼り付け可能なシートであって、
透明樹脂基材の一面側に、光配向膜、位相差層、及び前記表示面に対する接着性を有する接着層がこの順序で設けられており、
前記位相差層は、前記液晶表示装置の左目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該左目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(L)と、前記液晶表示装置の右目用画像の光を発することが可能な水平ラインに対応して当該右目用画像の光を円偏光又は楕円偏光に変換可能な位相差層(R)がパターン状に形成されており、当該位相差層(L)の遅相軸の方向と当該位相差層(R)の遅相軸の方向が異なることを特徴とする、立体表示用シート。
【請求項2】
前記接着層が、自己粘着性を有する材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の立体表示用シート。
【請求項3】
さらに、前記透明樹脂基材の光配向膜が形成されていない面側に防汚の機能を有する層及び/又はハードコートの機能を有する層が積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体表示用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37041(P2013−37041A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170379(P2011−170379)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】