説明

立体表示装置

【課題】画像表示手段に表示された1つの2次元画像を反射鏡で反射させて立体視させるに際し、反射鏡と観察者との間の距離を短縮して、小さなサイズの二次元画像であっても立体視することができるようにする。
【解決手段】画像表示装置15の表示部15aに表示されている1つの2次元画像を凹円錐鏡24で反射させる際の屈折により、観察者の左右眼26a,26bに左右方向にずれた左右虚像31L,31Rを個別に視認させて、3次元虚像を知覚させる。凹円錐鏡24により反射させて虚像31L,31Rを生成したので、凹円錐鏡24と観察者との間の離間距離を短縮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元画像を凹面鏡で反射させて、観察者に3次元虚像を知覚させるようにした立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体画像を観察する手段としては、両眼視差を含んだ2つの画像を左眼と右眼で個別に視認することで裸眼立体視するものが知られている。2つの画像を裸眼立体視する方法としては、右眼で右側の画像を注視し、左眼で左側の画像を注視する平行法と、右眼で左側の画像を注視し、左眼で右側の画像を注視する交差法とがある。
【0003】
しかし、何れの立体視法であっても、両眼視差を含んだ一対の画像を必ず用意する必要があり、既存の1つの画像を立体視することは困難であった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1(特許第4222627号公報)には、一対の平面鏡を有する映像立体的認識装置をテレビの前方に配設し、テレビからの1つの2次元画像を、一方の平面鏡で反射させて他方の平面鏡に画像を映し出し、この映し出された画像を観察者に3次元虚像として視認させる技術が開示されている。
【0005】
すなわち、観察者が映像立体的認識装置を介してテレビを注視する際の輻輳角から、観察者の他の平面鏡に対する視界幅が狭くなる。この視界幅を0に近づけることで、観察者は他の平面鏡に映し出される画像を片眼で観るような状態となり、これが観察者に立体視として認識させることになる。
【0006】
一方、例えば特許文献2(特許第4365435号公報)には、テレビのスクリーンやパーソナルコンピュータのモニタ等の表示手段の前面にフレネルレンズを配設し、観察者の両眼に、フレネルレンズの屈折によって擬似的視差を生じさせた画像を視認させることで、奥行きを有する3次元虚像を知覚させるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4222627号公報
【特許文献2】特許第4365435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に開示されている技術では、観察者の瞳孔間幅と他のミラーの視界幅との差を大きくするためには、観察者と他のミラーとの間にかなりの離間距離(同文献では60〜70[cm])を確保する必要があり、従って、写真やデジタルフォトフレーム等に表示されたB6サイズ程度の画像を視認するには、距離が離れすぎてしまう問題がある。
【0009】
従って、上述した文献に開示されている映像立体的認識装置は、インチサイズの大きなテレビ画像を視認する等、用途が限定されてしまう問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載されている技術では、フレネルレンズは断面がのこぎり刃状に形成されているため、観察者の知覚する3次元虚像には同心円状の筋が入ってしまう不都合がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、画像表示手段に表示された1つの2次元画像を反射手段で反射させて立体視させるに際し、反射手段と観察者との間の距離を短縮して、小さなサイズの2次元画像であっても立体視することが可能で、広範な用途に適用することのできる立体表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、1つの2次元画像を表示する画像表示手段と、前記2次元画像を反射させて3次元虚像を表示させる反射手段と、前記反射手段を支持する支持手段とを有し、前記反射手段が少なくとも1つの凹面鏡で構成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、画像表示手段に表示された1つの2次元画像を、少なくとも1つの凹面鏡で構成されている反射手段で反射させることで3次元虚像を表示させるようにしたので、凹面鏡の屈折によって、反射手段と観察者との間の離間距離を短縮することができ、従って、小さなサイズの2次元画像であっても立体視することが可能となり、広範な用途に適用することが可能となる。
【0014】
本発明の第2は、第1の発明において、前記凹面鏡が、凹平面鏡、凹円錐鏡、凹湾曲面鏡、凹放物面鏡の何れかであることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、凹面鏡を、凹平面鏡、凹円錐鏡、凹湾曲面鏡、凹放物面鏡の何れかにすることで、三次元画像の種類や、要求される画像の歪度や、コストに応じて、最適な凹面鏡を選択することができる。
【0016】
本発明の第3は、第1の発明において、前記凹面鏡が前記画像表示手段に対して、平面を上下方向に配設すると共に該画像表示手段からの前記2次元画像を上方へ反射させる凹円錐鏡であることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、凹面鏡を凹円錐鏡とし、画像表示手段に対して、凹円錐鏡の平面を上下方向に配設すると共に画像表示手段からの2次元画像を上方へ反射させるようにしたので、観察者は円錐鏡により反射されて歪みの低減された3次元虚像を画像表示手段の上方から容易に知覚することができる。
【0018】
本発明の第4は、第1或いは第2の発明において、前記反射手段が前記画像表示手段からの前記2次元画像を反射する第1の反射鏡と、該第1反射鏡からの反射像を反射する第2の反射鏡とから成り、前記第1の反射鏡が平面鏡であり、前記第2の反射鏡が前記凹面鏡であることを特徴とする。
【0019】
上記発明では、反射手段を画像表示手段からの2次元画像を第1の反射鏡である平面鏡で反射させ、この第1反射鏡からの反射像を第2の反射鏡である凹面鏡で反射させて、観察者に3次元虚像を知覚させるようにしたので、観察者には正像を視認させることができる。
【0020】
本発明の第5は、第1或いは第2の発明において、前記反射手段が前記画像表示手段からの前記2次元画像を反射する第1の反射鏡と、該第1反射鏡からの反射像を反射する第2の反射鏡とから成り、前記第1の反射鏡が凸面鏡または凹面鏡であり、前記第2の反射鏡が前記凹面鏡または凸面鏡であることを特徴とする。
【0021】
上記発明では、反射手段を画像表示手段からの2次元画像を第1の反射鏡である凸面鏡または凹面鏡で反射させた後、その反射像を第2の反射鏡である凹面鏡または凸面鏡で反射させ、この凹面鏡の屈折にて、観察者に3次元虚像(正像)を知覚させる。観察者に知覚される3次元虚像は凸面鏡の反射にて歪みが低減される。
【0022】
本発明の第6は、第1の発明において、前記反射手段が前記画像表示手段からの前記2次元画像を反射する第1の反射鏡と、該第1反射鏡からの反射像を反射する第2の反射鏡とから成り、前記第1の反射鏡が平面を上下方向に配設する凹平面鏡であり、前記第2の反射鏡が平面を左右方向に配設する凹平面鏡であることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、反射手段を画像表示手段からの2次元画像を第1の反射鏡である上下平面の凹平面鏡で反射させた後、その反射像を第2の反射鏡である左右平面の凹平面鏡で反射させて、観察者に3次元虚像を知覚させる。観察者に知覚される3次元虚像は、上下平面の凹平面鏡と左右平面の凹平面鏡との組み合わせにより上下左右の歪みが低減される。
【0024】
本発明の第7は、第4〜第6の発明において、前記支持手段が第1の反射鏡と前記第2の反射鏡とを固設するフレームであり、前記フレームに、前記画像表示手段に固定される固定部が設けられていることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、第1の反射鏡と第2の反射鏡とを支持手段であるフレームで固定して一体化し、このフレームに設けられている固定部を画像表示手段に固定するようにしたので、画像表示手段に簡単に取付けることができ、取扱性がよい。
【0026】
本発明の第8は、第1〜第7の発明において、前記画像表示手段は、写真、書籍、電子書籍、携帯電話、デジタルフォトフレーム、携帯型画像表示装置、デジタルカメラ、フラットコンピュータ、パーソナルコンピュータ用モニタ、テレビ受像機の何れかであることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、1つの2次元画像を反射手段で反射させて3次元虚像を知覚させるようにしたので、2次元画像は静止画、動画の何れでも良く、更に両眼視差を有する一対の2次元画像を用意する必要もなく、通常の写真、書籍、電子書籍、携帯電話、デジタルフォトフレーム、携帯型画像表示装置、デジタルカメラ、フラットコンピュータ、パーソナルコンピュータ用モニタ、テレビ受像機に表示される像を表示対象とすることができ、高い汎用性を得ることができる。
【0028】
本発明の第9は、第1〜第7の発明において、前記画像表示手段には、前記2次元画像を鏡像処理して表示させる鏡像処理手段が設けられていることを特徴とする。
上記発明では、2次元画像を鏡像処理手段で鏡像処理して表示させることで、観察者に正像の3次元虚像を知覚させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、画像表示手段に表示された1つの2次元画像を、少なくとも1つの凹面鏡で構成されている反射手段で反射させることで3次元虚像とするようにしたので、凹面鏡の屈折によって、反射手段と観察者との間の離間距離を短縮することができ、従って、小さなサイズの2次元画像であっても立体視することが可能となり、広範な用途に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態による立体表示装置の斜視図である。
【図2】同、立体表示装置の側面図である。
【図3】同、凹円錐鏡を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図4】同、左眼での画像認識を示す説明図である。
【図5】同、右眼での画像認識を示す説明図である。
【図6】同、左右眼で3次元虚像を知覚する状態示す説明図である。
【図7】同、立体表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態による立体表示装置をパーソナルコンピュータに取付けた状態の斜視図である。
【図9】同、図8の側面図である。
【図10】第3実施形態による立体表示装置をパーソナルコンピュータに取付けた状態の斜視図である。
【図11】第3実施形態による立体表示装置をパーソナルコンピュータに取付けた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1〜図6に本発明の第1実施形態を示す。図1、図2の符号1は立体表示装置のテーブルであり、このテーブル1上に、表示装置用スタンド2とミラースタンド3とが対峙された状態で立設されている。
【0032】
表示装置用スタンド2はスタンドベース4を有している。このスタンドベース4は細長の舟形に形成されており、長手方向の一端である舳先側にスタンド部5が立設され、その後方に、他端である艫側へ延出する長孔4aが穿設されている。この長孔4aに、テーブル1に立設されているねじ6が遊挿され、このねじ6につまみナット7が螺装されている。表示装置用スタンド2のスタンドベース4は、つまみねじ7を緩めることで、テーブル1の上を、長孔4aに遊挿されているねじ6に支持された状態で長手方向(矢印Y方向)へ移動させることができると共に、ねじ6を中心に矢印X方向へ回動させることができる。
【0033】
又、スタンド部5は、テーブル1上に固設されているスタンドホルダ8とスタンド本体9とを有している。スタンドホルダ8には、スタンド本体9の下端に突設されているスタンドロッド9aが挿通されるガイド孔(図示せず)を有する円筒状に形成されており、このスタンドホルダ8の上部にスタンドナット10が設けられている。
【0034】
このスタンドナット10は、スタンドホルダ8のガイド孔に挿通されたスタンドロッド9aをスタンドホルダ8に締め付けて固定するものであり、ガイド孔に対してスタンドロッド9aを上下方向へ進退させることで、スタンド本体9の高さを調整することができる。
【0035】
又、スタンド本体9の上部にボールジョイント機構12を介してアーム13が連設されている。このボールジョイント機構12はアーム13を上下左右方向へ首振り自在に支持するもので、図示しない締結部材によりアーム13を所望の位置で固定することができる。
【0036】
又、このアーム13の先端に取付部13aが固設されており、この取付部13aに画像表示手段としての携帯型画像表示装置(以下、単に「画像表示装置」と称する)15が、表示部15aを前方に指向させた状態で固定される。この画像表示装置としては、電子書籍、携帯電話、デジタルフォトフレーム、携帯型ゲーム機やPDA(Personal Digital Assistant)やPND(Personal Navigation Device)等がある。尚、画像表示手段は、これら画像表示装置15に限らず、携帯型電子端末、デジタルカメラ等のように表示部15aを有しているものであれば、何れのものであっても適用することができる。この場合、デジタルカメラのように表示部(モニタ)15aが機器背面に設けられている機器では、前面を取付部13a側に指向させて取付ける。
【0037】
又、画像表示装置15を取付部13aに固定する手段(固定手段)としては、両面接着テープ、面ファスナー、以外に取付部13aにフックを形成し、このフックを画像表示装置15に形成したフック溝に係合させることで固定させるものなどがある。
【0038】
一方、ミラースタンド3のスタンド本体21がテーブル1に立設され、このスタンド本体21の上部に仰角調整部22を介してアーム23が設けられ、このアーム23の先端にミラー取付部23aが固設されている。このミラー取付部23aに反射手段を構成する凹面鏡の一例である凹円錐鏡24が固定され、その反射面24aが画像表示装置15の表示部15a側に面している。又、凹円錐鏡24の上部にフード25が取付けられている。
【0039】
又、図2に矢印Zで示すように、仰角調整部22は凹円錐鏡24の仰角を調整するものであり、図示しない締め付け部材で締め付けることで位置決め固定される。図3に示すように、凹円錐鏡24は、反射面24aが円錐形の内周面の一部をなす形状に形成され、上下方向に平面が配設されており、又、下側の曲率が上側の曲率に対して大きく設定されている。換言すれば、下側の曲率半径が上側の曲率半径よりも小さく形成されている。画像表示装置15の表示部15aに表示された1つの2次元画像は、凹円錐鏡24の反射面24aで斜め上方へ反射され、そのときの屈折により、観察者の左右眼26a,26bに所定視差を有して視認される。その結果、観察者は凹円錐鏡24からの反射画像を裸眼立体視することで3次元虚像を知覚することができる。
【0040】
次に、このような構成による立体表示装置を用いて1つの2次元画像から視差を有する2つの画像(虚像)を生成し、これを裸眼立体視する場合の作用について説明する。
【0041】
先ず、画像表示装置15をスタンド部5の取付部13aに対し固定手段を介して所定に固定し、表示部15aを凹円錐鏡24側に指向させる。
【0042】
次いで、取付部13aに固設されている画像表示装置15の表示部15aの位置、及び傾斜角、及び凹円錐鏡24の反射面24aの仰角を調整する。図2に示すように、観察者は、左右眼26a,26bで、画像表示装置15の表示部15aに表示されている1つの2次元画像を、凹円錐鏡24の反射面24aで反射させ、そのときの屈折により両眼視差の生じた画像として視認させて3次元虚像を知覚させる。従って、調整作業は、観察者が凹円錐鏡24の反射面24aから反射される画像を目視しながら行う。
【0043】
すなわち、つまみナット7を緩めて、スタンドベース4を前後させることで凹円錐鏡24と表示部15aとの距離を調整し、所定に調整した後、つまみナット7を再度締め付けて固定する。又、スタンド部5のスタンドナット10を緩めて、スタンド本体9の下部に突設されているスタンドロッド9aをスタンドホルダ8から昇降させて、表示部15aの高さを調整し、所定に調整後、スタンドナット10を再び締め付けて高さを固定する。更に、ボールジョイント機構12を固定している締結部材を緩め、アーム13を、スタンド本体9を中心に上下左右に首振りして、表示部15aの向きを調整し、所定に調整後、締結部材を再度締め付けて固定する。
【0044】
一方、凹円錐鏡24の反射面24aの仰角は、スタンド本体21の上部に設けられている仰角調整部22を締め付けている締め付け部材(図示せず)を緩めて調整し、所定に調整後、締め付け部材を再び締め付け固定する。
【0045】
そして、画像表示装置15の表示部15aと凹円錐鏡24の反射面24aとの位置関係を所定に調整した状態で、図2に示すように、観察者の左右眼26a,26bにて、凹円錐鏡24の反射面24aを視認する。ところで、図6に示すように、左右眼26a,26bには瞳孔間距離PD(約6〜7cm)があり、この左右眼26a,26bに写る像の違いから奥行き情報を認識し、それが3次元像として知覚される。
【0046】
図4に示すように、表示部15aに表示された1つの2次元画像を凹円錐鏡24の反射面24aに映し、その反射像を左眼26aで目視すると、反射面24aに写される画像は、凹円錐鏡24の曲率中心から延出する法線に対する入射角θ1に対して対称な角度(反射角)θ2で反射される。又、この左眼26aが凹円錐鏡24の焦点よりも反射面24a側にある場合、左眼26aでは左虚像31Lが視認される。尚、左虚像31Lの符号A’,B’,C’は、表示部15aのA,B,Cに対応する位置が示されており、左虚像31Lは鏡像であることが解る。この反射角θ2は、左眼26aに近い側が鋭角となり、左眼26aから離れるに従い次第に鈍角となる。
【0047】
一方、図5に示すように、右眼26bで凹円錐鏡24の反射面24aから反射像は、右眼26bが凹円錐鏡24の焦点よりも反射面24a側にあるため、右虚像31Rとして視認される。又、反射角θ2は、右眼26bに近い側が鋭角となり、右眼26bから離れるに従い次第に鈍角となる。尚、右虚像31Rの符号A’’,B’’,C’’は、表示部15aのA,B,Cに対応する位置が示されており、右虚像31Rは鏡像であることが解る。この反射角θ2は、左眼26aに近い側が鋭角となり、左眼26aから離れるに従い次第に鈍角となる。
【0048】
その結果、図6に示すように、左右眼26a,26bには、左右に幅δだけずれている左右虚像31L,31Rが個別に視認され、このずれ幅δにより近似的な視差が形成され、観察者に3次元虚像、すなわち奥行きが知覚される。
【0049】
又、本実施形態では、反射手段として凹円錐鏡24を採用し、上下方向を平面とし、下側の曲率を大きくし、上側の曲率を小さくしたので、図2に示すように、反射面24aからの反射像(虚像)を斜め上方から視認すると、反射面24aの下部及び上部と左右眼26a,29bとの距離の違いによる歪みが、凹円錐鏡24の上下の曲率の相違により低減され、良好な3次元虚像を知覚することができる。
【0050】
ところで、図7に示すように、本実施形態による画像表示装置15には、画像記憶部35に記憶されている画像を表示部15aに対して、正像と鏡像との何れでも表示させることができ、しかもマウス等の操作も鏡像上で操作できるように、画像記憶部35の画像(正像)、及び外部入力処理部36から出力されるポインタ(カーソル)を鏡像処理する鏡像処理手段としての鏡像回路部37と、表示部15aに対して画像記憶部3からの正像と、鏡像回路部37からの鏡像とを選択的に表示させる表示選択手段としての表示選択回路部38とが備えられている。
【0051】
表示選択回路部38の切換え操作は、操作者が、画像表示装置15に接続されているマウス(図示せず)や操作ボタン等の外部入力手段を操作し、或いは、表示部15aがタッチパネルとして機能している場合は、この表示部15aを外部入力手段として操作することで行う。
【0052】
そして、操作者が表示選択回路部38を介して、画像記憶部35、及び外部入力処理部36を表示部15aに接続させると、画像記憶部35の正像、及び外部入力処理部36から出力されるポインタ(カーソル)がそのまま表示部15aに表示される。一方、表示選択回路部38を介して外部入力処理部36及び鏡像回路部37を表示部15aに接続させると、画像記憶部35に記憶されている正像、及び外部入力処理部36から出力されるポインタ(カーソル)が、鏡像回路部37で鏡像に変換されて表示部15aに表示される。
【0053】
従って、観察者が画像表示装置15の表示部15aに表示される画像を、凹円錐鏡24を用いて裸眼立体視しようとする場合、表示部15aに、表示選択回路部37を介して鏡像回路部35及び外部入力処理部36を接続し、表示部15aに鏡像を表示させる。その結果、観察者に、鏡像回路部35からの画像を正像の3次元虚像で知覚させることがきる。更に、表示部15aにポインタ(カーソル)が正像の状態で表示されるため、観察者の操作するマウス等の外部入力手段の操作方向と、表示部15a上に表示されるポインタ(カーソル)の移動方向とが一致するので、良好な操作性を得ることができる。
[第2実施形態]
図8、図9に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態では、画像表示手段として携帯型画像表示装置15を例示して説明したが、本実施形態では、ノート型パーソナルコンピュータ(以下、「ノートパソコン」と称する)40に設けられているモニタ41の表示面41aに立体表示装置を取り付けた態様が示されている。
【0054】
図8に示すように、本実施形態による立体表示装置は、左右一対フレーム42を有し、この両フレーム42の先端部側と後端部側と反射手段の一例である第1反射鏡43と第2反射鏡44とが固設されている。
【0055】
第1反射鏡43は平面鏡であり、一対のフレーム42に上部側両端が固設されて、ノートパソコン40のモニタ41に対峙されている。又、第2の反射鏡44は、反射面44aが円筒形の内周の一部をなす形状に形成された凹平面鏡であり、平面が上下方向に配設され、下部側両端がフレーム42に固設されている。又、このフレームの中途に、モニタ41の上部外枠に嵌合する取付溝42aが形成されていると共に、図示しないクリップで取り外し自在に位置決め固定されている。
【0056】
図9に示すように、フレーム42の取付溝42aをモニタ41の上部外枠に装着し、クリップで固定した状態では、平面鏡である第1反射鏡43がモニタ41に対峙され、反射面43aに入射されたモニタ41の表示面41aからの画像は、第2反射鏡44の反射面44aに反射される。
【0057】
本実施形態のように、第1、第2の反射鏡43,44の各反射面43a,44aでモニタ41の表示面41aに表示された画像を反射させたので、観察者の左右眼26a,26に視認される、第2の反射鏡44の反射面44aの屈折により生成される左右虚像31L,31R(図6参照)は、モニタ41の表示面41aに表示されている画像と同じ正像となり、観察者は正像で表示される左右虚像31L,31Rから3次元虚像を知覚することができる。
【0058】
又、第2の反射鏡44は観察者の左右眼26a,26bに対して、正面の比較的近い位置にあるため、上下方向の歪みが少なく、従って、第1の実施形態のような凹円錐鏡を用いることなく、凹平面鏡を用いることで左右の歪みを低減させることができる。
【0059】
尚、本実施形態の第2反射鏡44は、反射面44aが比較的大きな曲率の湾曲面に形成されている凹湾曲面鏡であっても良い。また、反射面44aが球面であってもよい。或いは反射面44aが回転放物形の内周の一部をなす形状に形成された凹放物面鏡であっても良く、この場合、放物線断面の回転軸方向を上下方向とし、曲率の小さい湾曲面を下側に配設する。
[第3実施形態]
図10に本発明の第3実施形態を示す。上述した第2実施形態では、第1の反射鏡43を平面鏡としたが、本実施形態は、第1の反射鏡45を、反射面45aが円筒形の外周の一部をなす形状に形成された凸平面鏡とし、その平面を上下方向に配設したものである。
【0060】
観察者が左右眼26a,26bで視認した左右虚像31L,31Rの左右に縮小方向の歪みがある場合、第1の反射鏡45を、上下方向を平面とする凸平面鏡にすることで、反射面45aから反射する際の屈折により、その歪みを低減させることができる。尚、この場合、第1の反射鏡45を凹平面鏡とし、第2の反射鏡44を凸平面鏡としても良い。
[第4実施形態]
図11に本発明の第3実施形態を示す。上述した第3実施形態では、第1の反射鏡45を、上下方向を平面とする凸平面鏡としたが、本実施形態は、第1の反射鏡46を、平面を左右方向に配設した凹平面鏡にしたものである。
【0061】
観察者が左右眼26a,26bで視認した左右虚像31L,31Rの上下に伸張方向の歪みがある場合、第1の反射鏡46を、左右方向を平面とする凹平面鏡にすることで、その歪みを低減させることができる。
【0062】
本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば観察者が左右眼26a,26bで視認した左右虚像31L,31Rの左右に伸張方向の歪みがある場合、第3実施形態に示されている第1の反射鏡45を、平面を上下方向に配した凹平面鏡にすることで歪みを低減させることができる。又、観察者が左右眼26a,26bで視認した左右虚像31L,31Rの上下に伸張方向の歪みがある場合、第4実施形態に示されている第1の反射鏡46を、平面を左右方向に配した凸平面鏡にすることで、その歪みを低減させることができる。
【符号の説明】
【0063】
2 表示装置用スタンド
3 ミラースタンド
15 携帯型画像表示装置
15a 表示部
24 凹円錐鏡
24a 反射面
26a 左眼
26b 右眼
31L 左虚像
31R 右虚像
36 鏡像回路部
40 ノートパソコン
41 モニタ
41a 表示面
42 フレーム
42a 取付溝
43,45,46 第1の反射鏡
43a,45a,46a 反射面
44 第2の反射鏡
44a 反射面
δ ずれ幅
PD 瞳孔間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの2次元画像を表示する画像表示手段と、
前記2次元画像を反射させて3次元虚像を表示させる反射手段と、
前記反射手段を支持する支持手段と
を有し、
前記反射手段が少なくとも1つの凹面鏡で構成されていることを特徴とする立体表示装置。
【請求項2】
前記凹面鏡が、凹平面鏡、凹円錐鏡、凹湾曲面鏡、凹放物面鏡の何れかであることを特徴とする請求項1記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記凹面鏡が前記画像表示手段に対して、平面を上下方向に配設すると共に該画像表示手段からの前記2次元画像を上方へ反射させる凹円錐鏡であることを特徴とする請求項1記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記反射手段が前記画像表示手段からの前記2次元画像を反射する第1の反射鏡と、該第1反射鏡からの反射像を反射する第2の反射鏡とから成り、
前記第1の反射鏡が平面鏡であり、
前記第2の反射鏡が前記凹面鏡であることを特徴とする請求項1或いは2記載の立体表示装置。
【請求項5】
前記反射手段が前記画像表示手段からの前記2次元画像を反射する第1の反射鏡と、該第1反射鏡からの反射像を反射する第2の反射鏡とから成り、
前記第1の反射鏡が凸面鏡であり、
前記第2の反射鏡が前記凹面鏡であることを特徴とする請求項1或いは2記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記反射手段が前記画像表示手段からの前記2次元画像を反射する第1の反射鏡と、該第1反射鏡からの反射像を反射する第2の反射鏡とから成り、
前記第1の反射鏡が平面を上下方向に配設する凹平面鏡であり、
前記第2の反射鏡が平面を左右方向に配設する凹平面鏡であることを特徴とする請求項1記載の立体表示装置。
【請求項7】
前記支持手段が第1の反射鏡と前記第2の反射鏡とを固設するフレームであり、
前記フレームに、前記画像表示手段に固定される固定部が設けられていることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の立体表示装置。
【請求項8】
前記画像表示手段は、写真、書籍、電子書籍、携帯電話、デジタルフォトフレーム、携帯型画像表示装置、デジタルカメラ、フラットパネルコンピュータ、パーソナルコンピュータ用モニタ、テレビ受像機の何れかであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記画像表示手段には、前記2次元画像を鏡像処理して表示させる鏡像処理手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−145787(P2012−145787A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4473(P2011−4473)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(511011551)株式会社クエイザーテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】