説明

竪型ミル及びその再生方法

【課題】摩耗が進行した際に被粉砕物の粉砕効率の低下を抑制するとともに、摩耗の進行度合いを明確に認識できるようにする。
【解決手段】粉砕テーブル1と粉砕ローラ2の被破砕物Cを噛み込む面に粉砕層3を形成する。この粉砕層3は三層からなり、この各層3a、3b、3aは、超硬質材4とこの超硬質材4よりも硬度の小さい硬質材5とを、粉砕テーブル1及び粉砕ローラ2の回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に並ぶように、肉盛溶接によって形成されている。そして、この上下の層3a、3bは先に肉盛溶接した超硬質材4の上に硬質材5を、硬質材5の上に超硬質材4を、交互に積層するように構成している。このため、粉砕テーブル1等の粉砕面が凹凸面となり粉砕効率が高まる。さらに、この粉砕面3の摩耗の度合いを、凹凸面の段差の有無によって判断できるため、再生時期の判断を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石炭等の塊を粉砕する竪型ミル、及び、前記粉砕によって摩耗した摩耗部を原状回復させる竪型ミルの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な竪型ミルの構成を図5に示して説明する。この竪型ミルは、回転軸周りに回転する粉砕テーブル1に石炭等の被粉砕物Cを送り込み、粉砕テーブル1と、この粉砕テーブル1の上面側に対向して設けた粉砕ローラ2との間に形成された隙間に、この被粉砕物Cを噛み込ませて粉砕するものである。粉砕された粉砕物は、粉砕テーブル1の下側から送り込まれた空気の気流(同図中の矢印を参照)によって巻き上げられ、分級機7に送られる。そして、この分級機7で所定の粒径以下の粉砕物のみが選別されて、ボイラ等の燃焼機器や貯蔵容器に送り込まれる。
【0003】
この竪型ミルの粉砕テーブル1及び粉砕ローラ2は、被粉砕物Cの粉砕によって次第に摩耗する。この摩耗が進行すると、両者1、2間の隙間が拡大して、この被粉砕物Cを強く噛み込むことができなくなり、その粉砕効率が低下する。そこで、下記特許文献1に示すように粉砕テーブル1等の摩耗部に硬度の高い素材を肉盛溶接する再生処理が行われる。
【0004】
この再生処理は、粉砕テーブル1等の摩耗部に、この摩耗部が元の形状となるように、超硬質層4と、この超硬質層4よりも硬度が小さい硬質層5とを、前記摩耗部の深さ方向に交互に積層するように肉盛溶接するものである。このように、超硬質層4のみでなく、超硬質層4と硬質層5を交互に積層するのは、この超硬質層4が脆く、その厚みを大きくし過ぎると、粉砕処理中に粉砕テーブル1等の表面から剥離する恐れがあるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3804860号公報
【0006】
この特許文献1が開示する技術は、摩耗部の再生処理を対象としているが、粉砕テーブル1等の新規製作の段階で、この粉砕テーブル1等が被粉砕物Cを噛み込む面(粉砕面)に超硬質層4と硬質層5とを交互に積層する構成に、この技術を適用することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超硬質層4と硬質層5を粉砕テーブル1等の粉砕面に交互に積層する構成においては、両層4、5の積層面が前記粉砕面とほぼ平行となっている(図6(a)を参照)。このため、この超硬質層4の広い面積に亘ってほぼ同一の摩耗速度で摩耗が進行する。さらに、この超硬質層4が完全に摩耗すると、この超硬質層4よりも硬度が低い硬質層5が露出し、その摩耗速度が一層加速する。そうすると、摩耗が進行した広い領域に亘って窪み8が形成される(図6(b)を参照)。この窪み8の深さは、超硬質層4と硬質層5の厚みを加えたものに相当し、それぞれの1層当たりの厚みが3mmの場合、その深さは6mmとなる。
【0008】
このように広い窪み8が形成されると、背景技術で説明したように、粉砕テーブル1と粉砕ローラ2の間の隙間が拡大して被粉砕物Cを強く噛み込むことが困難となり、被粉砕物Cの粉砕効率が低下するという問題が生じる。
【0009】
また、この窪み8は広い領域に亘ってなだらかに生じるため、摩耗の進行度合いが目視では分かりにくい。このため、ゲージ等を用いて摩耗の進行度合いを測定する必要があり、その測定作業が非常に煩雑である。
【0010】
そこで、この発明は、摩耗が進行した際に被粉砕物Cの粉砕効率が低下するのを抑制するとともに、摩耗の進行度合いを明確に認識できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明は、回転軸周りに回転する粉砕テーブルと、その粉砕テーブルの上面側に対向して設けた粉砕ローラとの間に被粉砕物を噛み込ませ、この被粉砕物を粉砕する竪型ミルにおいて、前記粉砕テーブル及び粉砕ローラの少なくとも一方に粉砕層を形成し、この粉砕層は、前記粉砕テーブル及び粉砕ローラの素材の硬度よりも高い硬度を有する超硬質材と、この超硬質材よりも硬度が小さい硬質材とを、前記粉砕テーブル又は粉砕ローラの回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に交互に並べて配置した第1粉砕層と、前記第1粉砕層を、前記超硬質材と硬質材の帯状の配列周期の半分だけ前記垂直方向にずらした第2粉砕層とを所定の粉砕層厚となるように交互に積層して形成する構成とした。
【0012】
このように超硬質材と硬質材を帯状に交互に並べると、超硬質材よりも硬度の小さい硬質材が優先的に摩耗するため、第1粉砕層(最表面の層)の表面に、この超硬質材と硬質材の配置に対応した帯状の凹凸面が形成される。さらにその凹部の底には、前記第1粉砕層の一層下側の第2粉砕層の超硬質材が新たに露出する。すなわち、この凹凸面を上から見るとそのほぼ全面に亘って超硬質材が露出した状態となって、高い耐摩耗性を確保できる。
【0013】
さらに、この粉砕層の表面が凹凸面なので、この表面が平坦な場合と比較して被粉砕物が噛み込みやすく、粉砕に寄与する表面積をより多く確保することができる。このため、被粉砕物の粉砕効率が非常に高い。
【0014】
この粉砕層は、例えば粉砕テーブルの場合、円環状の超硬質材と硬質材を土台となるテーブル上に同心円状に交互に並べ、さらに、その上に超硬質材と硬質材を、下層の超硬質材及び硬質材と、各部材が互い違いになるように順次積み重ねたり、このテーブル上に肉盛溶接によって前記超硬質材と硬質材を帯状に形成し、さらに、その上に下層の各部材と上層の各部材とが互い違いになるように複数層に亘って肉盛溶接したりすることによって形成することができる。この粉砕層の形成方法はこれらに限定されるものではなく、同様の構成が達成できるのであれば、それ以外の方法も採用することができる。
【0015】
この帯状に形成する超硬質材及び硬質材の幅は、被粉砕物や粉砕物の大きさに対応して適宜決定し得るが、例えば5〜30mmとする。これよりも広いと、背景技術で説明したように、凹凸面での被粉砕物の強い噛み込みが困難となって粉砕効率が低下する一方で、これよりも狭いと超硬質材の折損が生じやすくなって、却って粉砕効率が低下する恐れが高まるためである。
【0016】
また、第1粉砕層及び第2粉砕層の厚み(超硬質材及び硬質材の厚み)も適宜決定し得るが、例えば1〜10mmとする。これよりも段差が小さいと、後述する摩耗度合いの判断の際に、段差の有無の視認が困難となる一方で、これよりも大きいと被粉砕物が凹部の奥に詰まって、粉砕効率が低下する恐れが高まるためである。
【0017】
この凹凸面は、被粉砕物と強く当接する凸部において優先的に摩耗し、この凸部(第1粉砕層)の超硬質材が完全に摩耗して消失すると、引き続きその下層(第2粉砕層)の硬質材が摩耗し、新たにさらにその下層(第1粉砕層)の超硬質材が露出する。すなわち、この超硬質材が凹部の底となって、常に凹凸面の形状が維持される。このため、摩耗の進行度合いによらず、常に高い粉砕効率及び耐摩耗性を発揮できる。
【0018】
この第1粉砕層と第2粉砕層の積層数が多いほど、摩耗の進行に伴い新たな凹凸面が順次出現するため、長期間に亘って粉砕効率及び耐摩耗性を維持できる。この積層数は、層数増に伴う製作コストの増大と、粉砕効率等のメリットとを比較考量した上で適宜決定する。
【0019】
また、この凹凸面に超硬質材が残存していると、この超硬質材と硬質材の摩耗速度が異なることからその段差が明確に視認できるが、全ての超硬質材が摩耗して消失すると、この段差の端が次第にだれて、明確に視認できなくなる。このように段差が視認できなくなったときに摩耗限界(寿命)が到達したものと判断することにより、寿命が尽きた粉砕テーブル等の摩耗部の再生作業を的確なタイミングで行うことができる。
【0020】
この粉砕層は、粉砕テーブル又は粉砕ローラのいずれか一方に形成すれば、粉砕効率の低下を抑制する作用を発揮できるが、その両方に形成することにより、両者に形成される凹凸面による噛み込み効果が高まるため、被粉砕物の粉砕効率を一層向上することができる。
【0021】
前記構成においては、前記硬質材が、クロムを12重量%以上含む高クロム鋼であり、前記超硬質材が、前記硬質材にタングステン炭化物を20〜40重量%添加して、この硬質材とタングステン炭化物との複合組織を形成したものとするのが好ましい。
【0022】
このようにクロム濃度を12重量%以上とするのは、これ以下の濃度では、十分な耐摩耗性及び耐食性が発揮できないためである。このクロム濃度は、20〜30重量%の範囲とするのがより好ましい。この範囲内とすることによって、より高い耐食性等を発揮し得るからである。これよりクロム濃度を高くしても、クロム添加に伴うコスト上昇が顕著となるため、産業上の実用性は低い。
【0023】
また、タングステン炭化物を20〜40重量%の範囲とするのは、これより低いと十分な硬度向上効果が発揮できないためであり、これより高いとタングステン炭化物自体が脆く、この超硬質材に欠け等が生じやすくなるためである。
【0024】
このタングステン炭化物との複合組織(超硬質材)は、ビッカース硬度が例えばHv900以上である。その一方で、このタングステン炭化物を添加しない高クロム鋼(硬質材)のビッカース硬度は例えばHv600以下程度であって、両者のビッカース硬度は大きく異なる。この硬度差に対応して両者の摩耗速度が大きく異なるため、前記超硬質材と硬質材とを帯状に並べて設けると、粉砕工程によって摩耗が生じた際に、その両材の配置に対応した帯状の凹凸面が形成される。この凹凸面の表面に硬度の高い超硬質材が露出し、この凹凸面の表面形状が維持されるため安定した粉砕効率を得ることができる。
【0025】
また、回転軸周りに回転する粉砕テーブルと、その粉砕テーブルの上面側に対向して設けた粉砕ローラとの間に被粉砕物を噛み込ませ、この被粉砕物を粉砕する竪型ミルの前記粉砕に伴う摩耗部に肉盛溶接を行い、その摩耗部を原状回復させる竪型ミルの再生方法において、前記粉砕テーブル又は粉砕ローラの摩耗部の少なくとも一方に、前記粉砕テーブル及び粉砕ローラの素材の硬度よりも高い硬度を有する超硬質材と、この超硬質材よりも硬度が小さい硬質材とを、前記粉砕テーブル又は粉砕ローラの回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に交互に並ぶように肉盛溶接し、さらに、前記摩耗部が原状回復するまで、先に肉盛溶接した前記超硬質材の上に硬質材を、肉盛溶接した前記硬質材の上に超硬質材を、複数層に亘って順次肉盛溶接する構成とする。
【0026】
この肉盛溶接は、肉盛溶接用ワイヤを用いて行う。この肉盛溶接後の超硬質材及び硬質材の幅及び厚みは、上述したのと同じ理由で、それぞれ5〜30mm及び1〜10mmの範囲とするのが好ましい。また、肉盛溶接の層数は、摩耗部の摩耗度合いに対応して適宜決定する。
【0027】
また、前記構成においては、前記硬質材が、クロムを12重量%以上含む高クロム鋼であり、前記超硬質材が、前記硬質材の溶融プール内にタングステン炭化物を20〜40重量%添加して、この硬質材とタングステン炭化物との複合組織を形成したものとするのが好ましい。
このクロム濃度は、上述したのと同じ理由で、20〜30重量%の範囲とするのがより好ましい。
【0028】
このように、溶接処理の際に生じる溶接プール内に、タングステン炭化物を直接添加すると、この溶接プールの熱によって硬質材とタングステン炭化物とが反応して、複合組織(超硬質材)が簡便に形成できる。また、タングステン炭化物の添加割合を容易に変えることができるため、超硬質材の硬度等の材料特性を自在に調節することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によると、粉砕テーブル等の粉砕面が凹凸面となり、その凹凸面の表面に高い硬度を有する超硬質材が露出するため、粉砕効率が高まるとともにこの粉砕面の耐摩耗性を高めることができる。さらに、この粉砕面の摩耗の度合いを、前記凹凸面の段差の有無によって判断できる。このため、粉砕処理に要するコストが削減できるとともに、再生時期の判断を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本願発明に係る竪型ミルを示す要部側面断面図
【図2】同竪型ミルにおいて摩耗が進行した状態を示す要部側面断面図
【図3】同竪型ミルにおいてさらに摩耗が進行した状態を示す要部側面断面図
【図4】同竪型ミルにおいてさらに摩耗が進行した状態を示す要部側面断面図
【図5】一般的な竪型ミルを示す側面断面図
【図6】従来技術に係る竪型ミルの要部側面断面図を示し、(a)は摩耗が生じる前、(b)は摩耗が進行した状態
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明に係る竪型ミルの全体構成を図5に示す。この竪型ミルの機能の説明は、従来技術で行ったので省略する。
【0032】
この粉砕テーブル1と粉砕ローラ2の要部を図1に示す。この粉砕テーブル1及び粉砕ローラ2の基材はともに鋼製であって、これらの被粉砕物Cを噛み込む面には、粉砕層3が形成されている。この粉砕層3は三層3a、3b、3aからなり、この各層3a、3b、3aは、超硬質材4とこの超硬質材4よりも硬度の小さい硬質材5とを、粉砕テーブル1及び粉砕ローラ2の回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に並ぶように、肉盛溶接によって形成されている。そして、この上下の層3a、3bは先に肉盛溶接した超硬質材4の上に硬質材5を、先に肉盛溶接した硬質材5の上に超硬質材4を、交互に積層するように構成している。つまり、この三層3a、3b、3aの最上層と最下層とは、超硬質材4と硬質材5が同じ配置となっている(同図参照)。
この粉砕層3の層数はもちろん三層に限定されず、必要とする粉砕層3の厚さ(つまり、この粉砕層3の寿命)や粉砕層3の形成に伴う製作コスト等を考慮した上で、適宜選択することができる。
また、粉砕テーブル1等の基材として、高クロム鋳鉄材等の鋳鉄材も採用し得る。
【0033】
この帯状の超硬質材4の幅は約10mm、硬質材5の幅は約20mmであり、各材4、5の厚さは約4mm(つまり、三層で12mm)である。
【0034】
この硬質材5の肉盛溶接に用いる溶接ワイヤは、フラックスコアドワイヤである。すなわち、このワイヤの軸心は中空状態となっていて、この中空部に所定量のクロム、カーボン等の添加成分の粉末が予め充填されている。そして、肉盛溶接時にこの添加成分とワイヤの母材(鋼)とが溶融して反応し、所定の組成(クロムが28重量%、カーボンが6重量%)を有する硬質材5が形成される。
【0035】
その一方で、超硬質材4は、硬質材5の肉盛溶接の際に、その溶接部に形成される溶融プール内にタングステン炭化物の粉末を直接添加して、この溶融プールの熱によって硬質材5とタングステン炭化物との複合組織を形成する。このタングステン炭化物は粒径が0.4〜1.2mmの球状であり、硬質材5への添加量が約30%となるように添加速度を調節する。
【0036】
この粉砕テーブル1及び粉砕ローラ2で石炭等の被粉砕物Cを粉砕すると、この被粉砕物Cによって次第にその粉砕層3が摩耗する。この摩耗の摩耗速度は、超硬質材4よりも硬質材5の方が大きいので、その結果、図2に示すように、超硬質材4と硬質材5の配置に対応した凹凸面6が形成される。すなわち、この凹凸面6の凸部の先端と、凹部の底に超硬質材4が位置することとなって、この超硬質材4によって凹凸面6の形状が維持される。このように表面が凹凸面6だと、平面の場合と比較して被粉砕物Cを容易に噛み込むことができるとともに、粉砕に寄与する表面積が増大するため、この被粉砕物Cの粉砕効率が高まる。
【0037】
さらに粉砕処理を継続して行うと、被粉砕物Cと強く当接する凸部において優先的に摩耗し、この凸部が完全に摩耗して消失すると、その下層3bの硬質材5がさらに摩耗して、図3に示すように、新たにさらにその下層3aの超硬質材4が露出する。このときも、露出した超硬質材4によって凹凸面6の形状が維持され、高い粉砕効率と耐摩耗性が発揮される。
【0038】
さらに摩耗が進むと、超硬質材4全体が失われて、この粉砕テーブル1等の寿命を迎える。このとき、凹凸面6の段差が次第にだれてきて、図4に示すように、その段差が明確に視認できなくなる。このタイミングをもって粉砕テーブル1等が再生時期となったことを判断することにより、その再生作業を的確に行うことができる。
【0039】
この寿命を迎えた粉砕テーブル1等は、被粉砕物Cが強く噛み込む箇所で摩耗量が大きい一方で、それ以外の箇所で摩耗量が小さく、その摩耗量が不均一となっていることが多い。そこで、再生作業にあたり、まず粉砕テーブル1等の表面を機械研磨して、その表面を平らに均す。
【0040】
次に、その表面に超硬質材4及び硬質材5を、粉砕テーブル1等の回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に交互に並ぶように肉盛溶接し、さらに、摩耗部が原状回復するまで、先に肉盛溶接した超硬質材4の上に硬質材5を、先に肉盛溶接した硬質材5の上に超硬質材4を、複数層に亘って肉盛溶接する。この肉盛溶接は、粉砕テーブル1等の製造の際に行った肉盛溶接と同様の手法によって行ったものである。
【0041】
上記の実施形態のように、粉砕テーブル1及び粉砕ローラ2の双方に粉砕層3を形成するのが好ましいが、いずれか一方にのみ、この粉砕層3を形成するようにしてもよい。この一方の凹凸面6によって被破砕物Cが強く噛み込まれるとともに、この粉砕層3の耐摩耗性が発揮されるからである。
【0042】
また、超硬質材4及び硬質材5の材質は、本実施形態に限定されない。硬度の異なる2種の材料を積層して破砕層3を形成することによって、その表面に凹凸面6を形成することができ、所定の粉砕効率、耐摩耗性及び摩耗度合いの視認性を確保することができるからである。
【符号の説明】
【0043】
1 粉砕テーブル
2 粉砕ローラ
3 粉砕層
3a 第1粉砕層
3b 第2粉砕層
4 超硬質材(超硬質層)
5 硬質材(硬質層)
6 凹凸面
7 分級機
8 窪み
C 被粉砕物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転する粉砕テーブル(1)と、その粉砕テーブル(1)の上面側に対向して設けた粉砕ローラ(2)との間に被粉砕物(C)を噛み込ませ、この被粉砕物(C)を粉砕する竪型ミルにおいて、
前記粉砕テーブル(1)及び前記粉砕ローラ(2)の前記被粉砕物(C)の噛み込み面の少なくとも一方に粉砕層(3)を形成し、この粉砕層(3)は、前記粉砕テーブル(1)及び粉砕ローラ(2)の素材の硬度よりも高い硬度を有する超硬質材(4)と、この超硬質材(4)よりも硬度が小さい硬質材(5)とを、前記粉砕テーブル(1)又は粉砕ローラ(2)の回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に交互に並べて配置した第1粉砕層(3a)と、前記第1粉砕層(3a)を、前記超硬質材(4)と硬質材(5)の帯状の配列周期の半分だけ前記垂直方向にずらした第2粉砕層(3b)とを、所定の粉砕層厚となるように交互に積層して形成したものであることを特徴とする竪型ミル。
【請求項2】
前記硬質材(5)が、クロムを12重量%以上含む高クロム鋼であり、前記超硬質材(4)が、前記硬質材(5)にタングステン炭化物を20〜40重量%添加して、この硬質材(5)とタングステン炭化物との複合組織を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の竪型ミル。
【請求項3】
回転軸周りに回転する粉砕テーブル(1)と、その粉砕テーブル(1)の上面側に対向して設けた粉砕ローラ(2)との間に被粉砕物(C)を噛み込ませ、この被粉砕物(C)を粉砕する竪型ミルの前記粉砕に伴う摩耗部に肉盛溶接を行い、その摩耗部を原状回復させる竪型ミルの再生方法において、
前記粉砕テーブル(1)又は粉砕ローラ(2)の摩耗部の少なくとも一方に、前記粉砕テーブル(1)及び粉砕ローラ(2)の素材の硬度よりも高い硬度を有する超硬質材(4)と、この超硬質材(4)よりも硬度が小さい硬質材(5)とを、前記粉砕テーブル(1)又は粉砕ローラ(2)の回転方向に沿いつつ、この回転方向に対して垂直方向に帯状に交互に並ぶように肉盛溶接し、さらに、前記摩耗部が原状回復するまで、先に肉盛溶接した前記超硬質材(4)の上に硬質材(5)を、肉盛溶接した前記硬質材(5)の上に超硬質材(4)を、複数層に亘って順次肉盛溶接することを特徴とする竪型ミルの再生方法。
【請求項4】
前記硬質材(5)が、クロムを12重量%以上含む高クロム鋼であり、前記超硬質材(4)が、前記硬質材(5)の溶融プール内にタングステン炭化物を20〜40重量%添加して、この硬質材(5)とタングステン炭化物との複合組織を形成したものであることを特徴とする請求項3に記載の竪型ミルの再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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