説明

竪型ミル

【課題】微粉炭がラビリンスシール間に詰ることによる、ラビリンスシールの摩耗及び加圧ローラの回転の抑制を防止する竪型ミルを提供する。
【解決手段】分級室を形成するハウジングと、ハウジングの下部に収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブル1と、加圧ローラ4を回転自在に保持する軸保持部17と、加圧ローラと軸保持部の間に設けられたラビリンスシール30と、粉砕テーブルに加圧ローラを押圧し、粉砕テーブル上の塊状物を粉砕するローラ加圧手段29と、ローラ加圧手段の押圧力を制御する制御部57とを具備し、ラビリンスシールは加圧ローラに設けられた回転ラビリンスリング16と、軸保持部に設けられた固定ラビリンスリング21とで構成され、制御部はローラ加圧手段の押圧力を変動させることで回転ラビリンスリング、固定ラビリンスリング間に作用する接線力を脈動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、石灰岩等の塊状物を微粉に粉砕する竪型ミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を燃料とする石炭焚きボイラでは、塊状の石炭を竪型ミルにより粉砕して微粉炭とし、微粉炭を1次空気と共に燃焼装置であるバーナに供給している。
【0003】
先ず、図3、図4に於いて、従来の竪型ミルの概略について説明する。
【0004】
従来の竪型ミルでは、石炭を粉砕する粉砕テーブル1が回転可能に設けられ、該粉砕テーブル1は減速機2を介してテーブル駆動モータ3に連結され、該テーブル駆動モータ3によって前記粉砕テーブル1が回転される。
【0005】
又、前記粉砕テーブル1の上方には、加圧ローラ4を有する加圧ローラユニット5(後述)が複数個、例えば120°間隔で3個設けられており、該加圧ローラユニット5は図示しないローラ加圧装置によって前記粉砕テーブル1上に押下されている。
【0006】
石炭の粉砕処理の際には、図示しない石炭供給装置から塊状の石炭が前記粉砕テーブル1の中央に投下され、それと並行して前記粉砕テーブル1が前記減速機2を介して前記テーブル駆動モータ3により回転される。
【0007】
又、前記加圧ローラ4は回転自在であり、前記粉砕テーブル1に従動回転しており、該粉砕テーブル1上に投下された石炭は、該粉砕テーブル1の回転によって移動し、前記加圧ローラ4に噛込まれることで粉砕される。
【0008】
次に、図5に於いて、従来の前記加圧ローラユニット5について説明する。
【0009】
該加圧ローラユニット5は、ローラ軸8と、該ローラ軸8に回転自在に支持された前記加圧ローラ4と、前記ローラ軸8を保持し、図示しないローラ加圧装置の押圧により前記加圧ローラ4を前記粉砕テーブル1に押下する保持部7とで構成されている。
【0010】
前記加圧ローラ4は、前記ローラ軸8に設けられた軸受9を介して設けられたローラ車輪部11と、該ローラ車輪部11と前記軸受9と前記ローラ軸8とで形成された空間をオイルで満たしたオイルバス12と、前記ローラ車輪部11に外嵌又は装着されたローラタイヤ13とを具備し、該ローラタイヤ13が図示しないローラ加圧装置によって前記粉砕テーブル1に押下される様になっている。
【0011】
又、前記ローラ車輪部11の先端には、先端開口を封止する閉止キャップ14が設けられ、前記加圧ローラ4の基部には前記ローラ軸8と前記軸受9の間を液密に閉塞する軸シール15が設けられ、前記オイルバス12を液密に封止する。
【0012】
前記保持部7は、前記ローラ軸8を支持する軸保持部17と、図示しないローラ加圧装置によって押圧される圧力受け18と、該圧力受け18が押圧された際に回転中心となるピボット軸19とを具備している。
【0013】
前記ローラ車輪部11の後部周縁には、金属製でリング形状の回転ラビリンスリング16が前記ローラ軸8と同心に突設され、前記軸保持部17の先端部20の周縁には、金属製でリング形状の固定ラビリンスリング21が前記ローラ軸8と同心に突設され、前記回転ラビリンスリング16の径は前記固定ラビリンスリング21の径よりも大きくなっている。
【0014】
前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21は、僅かに隙間を空けて重なり合う様になっており、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21でラビリンスシール30が構成されている。該ラビリンスシール30は、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21によって前記加圧ローラ4と前記保持部7の間の開口面積を減少させ、更に後述するシールエアを竪型ミル内に噴出させることで、竪型ミル内からの微粉炭の進入を防止する機能を有している。
【0015】
又、前記ピボット軸19及び前記軸保持部17に掛渡ってシールエア流路22が形成され、該シールエア流路22を介して前記ラビリンスシール30の内側に形成される空間23が竪型ミルの外部と連通しており、前記シールエア流路22は前記空間23の反対側で図示しないシールエア供給手段と接続されている。
【0016】
従来の竪型ミルでは、石炭の粉砕処理中、図示しないシールエア供給手段よりシールエアを前記シールエア流路22を介して前記空間23に供給し、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間から竪型ミル内にシールエアを吹出させることで、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間から前記空間23内に微粉炭が入らない様にしている。
【0017】
然し乍ら、微粉炭の粒径が大きかった場合、或は大量の微粉炭が降り注いだ場合には、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間から吹出るシールエアだけでは進入を防止できない。この為、数ヶ月に一度程度の割合で、微粉炭が前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間に詰ることがある。
【0018】
粉炭が前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間に詰ると、摩擦により前記加圧ローラ4の回転が抑制されると共に、詰った粉炭に微粉炭が堆積することによる目詰りが発生し、更に目詰りした状態で運転した場合は、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21が摩耗する。或は前記加圧ローラ4の回転が停止する。この為、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の交換が必要となり、保守コストが高くなるという問題がある。又、摩耗を防ぐ為には前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の定期的な清掃が必要となる為、やはり保守コストが増すという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2002−59016号公報
【特許文献2】特開平10−146536号公報
【特許文献3】特表2002−519175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は斯かる実情に鑑み、微粉炭がラビリンスシール間に詰ることによる、該ラビリンスシールの摩耗及び加圧ローラの回転の抑制を防止する竪型ミルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、分級室を形成するハウジングと、該ハウジングの下部に収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブルと、加圧ローラを回転自在に保持する軸保持部と、前記加圧ローラと前記軸保持部の間に設けられたラビリンスシールと、前記粉砕テーブルに加圧ローラを押圧し、前記粉砕テーブル上の塊状物を粉砕するローラ加圧手段と、該ローラ加圧手段の押圧力を制御する制御部とを具備し、前記ラビリンスシールは前記加圧ローラに設けられた回転ラビリンスリングと、前記軸保持部に設けられた固定ラビリンスリングとで構成され、前記制御部は前記ローラ加圧手段の押圧力を変動させることで前記回転ラビリンスリング、前記固定ラビリンスリング間に作用する接線力を脈動させる竪型ミルに係るものである。
【0022】
又本発明は、前記ラビリンスシールのシール圧を検知する検知器を更に具備し、前記制御部は前記検知器からの検知結果を基に前記ローラ加圧手段の押圧力を変動させる竪型ミルに係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、分級室を形成するハウジングと、該ハウジングの下部に収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブルと、加圧ローラを回転自在に保持する軸保持部と、前記加圧ローラと前記軸保持部の間に設けられたラビリンスシールと、前記粉砕テーブルに加圧ローラを押圧し、前記粉砕テーブル上の塊状物を粉砕するローラ加圧手段と、該ローラ加圧手段の押圧力を制御する制御部とを具備し、前記ラビリンスシールは前記加圧ローラに設けられた回転ラビリンスリングと、前記軸保持部に設けられた固定ラビリンスリングとで構成され、前記制御部は前記ローラ加圧手段の押圧力を変動させることで前記回転ラビリンスリング、前記固定ラビリンスリング間に作用する接線力を脈動させるので、前記回転ラビリンスリング、前記固定ラビリンスリング間に詰った石炭に繰返し荷重及び変動荷重を与えて粉砕することができ、又従来の前記加圧ローラ及び軸保持部に対して新たに手を加える必要がなく、実施が容易であり、実施の際のコストも削減できる。
【0024】
又本発明によれば、前記ラビリンスシールのシール圧を検知する検知器を更に具備し、前記制御部は前記検知器からの検知結果を基に前記ローラ加圧手段の押圧力を変動させるので、前記ラビリンスシールに詰った石炭を即座に粉砕でき、該ラビリンスシールに石炭が詰ったまま前記加圧ローラを回転させることによる前記ラビリンスシールの摩耗、及び前記加圧ローラの回転の抑制を防止することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に於ける竪型ミルの概略立断面図である。
【図2】本発明に於ける加圧ローラユニットの拡大立断面図である。
【図3】従来の竪型ミルに於ける作用を説明する側面図である。
【図4】従来の竪型ミルに於ける作用を説明する平面図である。
【図5】従来の加圧ローラユニットの拡大立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0027】
先ず、図1に於いて、本発明が実施される竪型ミル10の概略について説明する。尚、図1中、図3〜図5中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
中空構造又は脚構造の基台24に筒状のハウジング25が立設され、該ハウジング25によって密閉された空間が形成される。該空間の下部には減速機2を介して粉砕テーブル1が設けられ、前記減速機2はテーブル駆動モータ3によって駆動され、該テーブル駆動モータ3は前記減速機2によって定速又は可変速で回転される。
【0029】
前記粉砕テーブル1の上面には、断面が円弧状の凹溝26を有するテーブルセグメント27が設けられている。
【0030】
前記粉砕テーブル1の回転中心から放射状に所要組数、例えば3組の加圧ローラユニット5が120°間隔で設けられている。該加圧ローラユニット5は、加圧ローラ4を有し、ピボット軸19を中心に傾動自在となっている。又、前記ハウジング25の下部には、放射状に貫通する3組のローラ加圧装置28が設けられている。該ローラ加圧装置28は、アクチュエータ、例えばローラ加圧手段である油圧シリンダ29を具備し、該油圧シリンダ29によって前記加圧ローラ4を前記凹溝26に押圧する様になっている。
【0031】
前記粉砕テーブル1の下方には1次空気室31が形成され、前記ハウジング25内部の前記粉砕テーブル1より上方は、分級室32となっている。
【0032】
前記ハウジング25の下部には1次空気供給口33が取付けられ、該1次空気供給口33は図示しない送風機に接続されると共に、前記1次空気室31に連通している。前記粉砕テーブル1の周囲には、1次空気の吹出し口34が全周に設けられている。
【0033】
前記ハウジング25の上側には石炭給排部35が設けられており、該石炭給排部35の中心部を貫通する様にパイプ状の給炭管36が設けられ、該給炭管36が前記ハウジング25の内部に延出し、下端が前記粉砕テーブル1の中央上方に位置している。前記給炭管36には石炭が供給され、供給された石炭は前記粉砕テーブル1の中心部に落下する様になっている。
【0034】
前記給炭管36には、回転管37が回転管支持部38に軸受39を介して回転自在に設けられている。前記回転管37は、プーリ41とプーリ42との間に掛渡されたベルト43及び前記プーリ42が設けられた減速機44を介して分級機モータ45によって回転される様になっている。
【0035】
又、前記回転管37、前記プーリ41、前記プーリ42、前記ベルト43、前記減速機44、前記分級機モータ45、ブレード46によって分級機47が構成されている。
【0036】
前記ブレード46は短冊状であり、倒立円錐曲面上に円周方向に所要角度ピッチで配設される。又、前記ブレード46は下端から上端に向って前記回転管37から離反する様に傾斜しており、ブレード支持部48を介して前記回転管37に取付けられている。
【0037】
前記分級機47の下方には、前記分級室32を上下に仕切る様に逆円錐形状のリジェクトシュート49が配設され、該リジェクトシュート49には円周方向に所要角度ピッチで、粉炭を含む1次空気が通過するスリット51が穿設されている。
【0038】
前記リジェクトシュート49は上端を前記ハウジング25に固着されると共に、前記回転管37に固着されたブラケット52を介してリジェクトシュート支持部53によって支持されている。又、前記リジェクトシュート49の下端部は円筒形状となっており、下端は開放されて前記給炭管36との間に開口部54が形成される。
【0039】
前記石炭給排部35には、粉砕された微粉炭を送給する微粉炭送給管55が接続されており、該微粉炭送給管55はボイラのバーナ(図示せず)に接続されている。
【0040】
次に、前記竪型ミル10に於ける石炭の粉砕について説明する。
【0041】
図1中、実線は1次空気の流れを示しており、点線は石炭の流れを示している。
【0042】
前記粉砕テーブル1が、前記減速機2を介して前記テーブル駆動モータ3により回転され、前記1次空気供給口33より200℃前後の1次空気が前記1次空気室31に導入された状態で、前記給炭管36より塊状の石炭が投入される。塊状の石炭は、前記給炭管36の下端より前記粉砕テーブル1の中心部に流落し、該粉砕テーブル1上に供給される。
【0043】
該粉砕テーブル1上の石炭は、該粉砕テーブル1の回転による遠心力で外周方向に移動し、前記加圧ローラ4に噛込まれて粗粉炭と微粉炭からなる粉炭に粉砕され、更に遠心力によって外周に移動する。
【0044】
前記1次空気供給口33より前記1次空気室31に導入された1次空気が、前記粉砕テーブル1の前記吹出し口34より吹上がり、遠心力によって前記テーブルセグメント27を乗越えた粉炭は、前記吹出し口34から吹上がった1次空気に乗って前記分級室32の外周部を前記ハウジング25の壁面に沿って上昇する。
【0045】
前記分級室32の外周を1次空気に乗って上昇する粉炭は、粒径の大きい一部の粗粉炭が上昇途中で自重により前記粉砕テーブル1上に落下し、一部が前記リジェクトシュート49の下面に衝突し、下方外周側に弾かれる。前記リジェクトシュート49に弾かれた粗粉炭は前記粉砕テーブル1上に落下する。残りの粗粉炭及び微粉炭は、1次空気に乗って前記スリット51を通抜け、前記分級室32を更に上昇する。
【0046】
前記スリット51を通り抜けた粗粉炭及び微粉炭は、1次空気と共に前記分級機47に流入する。前記分級機モータ45によって回転する前記ブレード46を横切る際に、所定の粒径以上の粗粉炭は前記ブレード46と衝突して弾かれる。又、前記ブレード46が倒立円錐曲面上に設けられている為、粗粉炭は前記分級室32の外周側に弾き飛ばされる。又、所定の粒径以下の微粉炭は1次空気に乗って前記ブレード46を横切り、前記微粉炭送給管55より送出され、ボイラのバーナ(図示せず)に供給される。
【0047】
前記ブレード46によって弾き飛ばされた粗粉炭は、前記分級室32の外周部を落下し、前記リジェクトシュート49の斜面に沿って滑落し、前記開口部54より前記粉砕テーブル1の中心部に落下する。落下した粗粉炭は、該粉砕テーブル1の回転遠心力によって前記凹溝26迄移動し、前記加圧ローラ4によって再度粉砕される。又、滑落する粗粉炭の一部は前記スリット51からも落下する様になっている。
【0048】
次に、図2に於いて、本実施例に於ける前記加圧ローラユニット5について説明する。尚、図2中、図3〜図5中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
前記加圧ローラユニット5は、加圧ローラ4と保持部7とローラ軸8とで構成され、前記加圧ローラ4はローラ軸8によって回転自在に支持され、前記保持部7は前記ローラ軸8を支持し、前記油圧シリンダ29からの押圧により前記ピボット軸19を介して前記加圧ローラ4を前記粉砕テーブル1上に押下する軸保持部17を有している。
【0050】
前記加圧ローラ4の先端は閉止キャップ14によって覆われ、前記加圧ローラ4基部は軸シール15によって塞がれており、前記閉止キャップ14と前記軸シール15によって前記加圧ローラ4と前記ローラ軸8との隙間が液密に封止される。
【0051】
又、前記軸保持部17の先端には先端部20が形成され、該先端部20の前面周縁には、前記ローラ軸8と同心の固定ラビリンスリング21が突設され、ローラ車輪部11の後面周縁には、前記ローラ軸8と同心の回転ラビリンスリング16が突設されている。尚、該回転ラビリンスリング16の内周及び前記固定ラビリンスリング21の外周には、耐摩耗コーティングを施す、或は摩耗部材を肉盛りする等の耐摩耗加工を施してもよい。
【0052】
前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21でラビリンスシール30が構成され、該ラビリンスシール30と前記ローラ軸8との間には空間23が形成され、該空間23にシールエア流路22を介して図示しないシールエア供給手段よりシールエアが導入される様になっている。
【0053】
該シールエア流路22には、該シールエア流路22を流れるシールエアの圧力を検知する検知器である圧力センサ56が接続され、該圧力センサ56は検知結果を前記ローラ加圧装置28にフィードバックする様になっている。
【0054】
該ローラ加圧装置28は、前記油圧シリンダ29と油圧制御部57を有し、前記油圧シリンダ29は圧力受け18を介して前記保持部7を押圧することで、前記加圧ローラ4を前記粉砕テーブル1に押下する。又、前記油圧制御部57は、前記圧力センサ56からの検知結果を基に前記油圧シリンダ29の押圧力を制御する様になっている。
【0055】
又、図中、Rは前記加圧ローラ4の半径を表し、rは前記先端部20の半径を表し、fは前記加圧ローラ4の圧下力を表し、μは前記粉砕テーブル1の摩擦力を表している。
【0056】
尚、前記加圧ローラユニット5は数年に1度の割合でメンテナンスが行われ、メンテナンスではローラタイヤ13やオイルバス12中のオイルの交換等が行われる。
【0057】
上記構成を有する本実施例の前記竪型ミル10に於いては、石炭の粉砕処理中、前記加圧ローラ4は、前記油圧制御部57により一定の力で前記油圧シリンダ29が前記圧力受け18を押圧されることで、前記粉砕テーブル1上に押下され、該粉砕テーブル1が回転することで従動回転されている。
【0058】
又、図示しないシールエア供給手段より供給されるシールエアが、前記シールエア流路22、前記空間23を経由して前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間から前記分級室32に放出される。給炭管36からは塊状の石炭が投下され、前記加圧ローラ4で粉砕された石炭(粉炭)、或は前記粉砕テーブル1上で弾んだ石炭は、分級室32内を舞上がり、舞上がった石炭の一部が前記加圧ローラユニット5に降り注いでいる。
【0059】
前記圧力センサ56は、粉砕処理中、前記シールエア流路22を流れるシールエアの圧力、即ち前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間のシール圧を常時検知しており、検知結果を前記油圧制御部57にフィードバックしている。
【0060】
上記処理中に、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間に粉炭が詰った場合には、前記空間23から前記分級室32に放出されるシールエアの流路が狭まる為、前記空間23及び前記シールエア流路22の圧力が上昇する。前記圧力センサ56は、前記シールエア流路22の圧力変化を検知し、検知結果を前記油圧制御部57に出力する。
【0061】
前記油圧制御部57は、前記圧力センサ56からの検知結果に基づき、前記ラビリンスシール30が目詰りしているかどうかを判断し、目詰りであると判断した場合は、前記油圧シリンダ29の押圧力を変動させ、μ・f・Rで表される前記加圧ローラ4の転がりトルクを脈動させる。
【0062】
該加圧ローラ4の転がりトルクの脈動と連動し、μ・f・R/rで表される前記ラビリンスシール30の目詰り部の接線力が脈動する。接線力が脈動することで、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間の粉炭に対して繰返し荷重、及び変動荷重が与えられ、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間の粉炭が、前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21によって剪断され、或は磨潰されて粉砕される。
【0063】
前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間の粉炭が粉砕されることで、該ラビリンスシール30の目詰りが解消され、粉砕された粉炭が前記空間23からのシールエアによって前記分級室32へ放出される。前記圧力センサ56が前記シールエア流路22の圧力が正常に戻ったことを検知し、検知結果を前記油圧制御部57に出力する。
【0064】
該油圧制御部57は、前記圧力センサ56より前記シールエア流路22の圧力が正常、即ち前記ラビリンスシール30の目詰りが解消されたという検知結果を受取ると、前記油圧シリンダ29の押圧力の脈動制御を停止し、再び一定の力で前記圧力受け18を押圧し、粉砕処理が続行される。
【0065】
上述の様に、前記圧力センサ56が前記シールエア流路22内のシールエアの圧力を常時検知し、検知結果を前記油圧制御部57にフィードバックし、該油圧制御部57が検知結果に従って前記油圧シリンダ29の押圧力を変動する様にしたので、前記ラビリンスシール30に詰った粉炭は、前記油圧シリンダ29の押圧力の変動による前記加圧ローラ4の回転の変動、即ち前記回転ラビリンスリング16と前記固定ラビリンスリング21の間の接線力の脈動により、該固定ラビリンスリング21と前記回転ラビリンスリング16の間で粉砕され、或は磨潰され、シールエアにより前記分級室32へ放出される。従って、前記ラビリンスシール30に粉炭が詰ったまま長時間処理が続行されることがなく、該ラビリンスシール30に粉炭が詰ったまま処理を続行することにより前記回転ラビリンスリング16及び前記固定ラビリンスリング21が摩耗すること、及び前記加圧ローラ4の回転が妨げられることを抑止することができる。
【0066】
又、本実施例は前記シールエア流路22の圧力を検知し、検知結果に基づいて前記油圧シリンダ29の押圧力を変動するものであるので、前記加圧ローラユニット5自体に変更を加える必要がなく、既存の該加圧ローラユニット5に対しても容易に適用可能である。
【0067】
更に、前記ラビリンスシール30に目詰りが発生するのは運転条件の大幅な変更等の際に限られ、発生頻度が低い為、前記回転ラビリンスリング16及び前記固定ラビリンスリング21に特別な処理を施すことなく実施可能であるが、前記回転ラビリンスリング16及び前記固定ラビリンスリング21に対して耐摩耗加工を施すことで更に長期間安定して実施可能となることは言う迄もない。
【0068】
尚、上記実施例は、塊状の石炭を粉砕する竪型ミルについて説明したが、本発明は、石灰岩等の塊状物の粉砕に対しても実施可能であることは言う迄もない。
【符号の説明】
【0069】
1 粉砕テーブル
4 加圧ローラ
5 加圧ローラユニット
7 保持部
8 ローラ軸
10 竪型ミル
17 軸保持部
22 シールエア流路
28 ローラ加圧装置
29 油圧シリンダ
30 ラビリンスシール
56 圧力センサ
57 油圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級室を形成するハウジングと、該ハウジングの下部に収納され、テーブル駆動装置によって回転駆動される粉砕テーブルと、加圧ローラを回転自在に保持する軸保持部と、前記加圧ローラと前記軸保持部の間に設けられたラビリンスシールと、前記粉砕テーブルに加圧ローラを押圧し、前記粉砕テーブル上の塊状物を粉砕するローラ加圧手段と、該ローラ加圧手段の押圧力を制御する制御部とを具備し、前記ラビリンスシールは前記加圧ローラに設けられた回転ラビリンスリングと、前記軸保持部に設けられた固定ラビリンスリングとで構成され、前記制御部は前記ローラ加圧手段の押圧力を変動させることで前記回転ラビリンスリング、前記固定ラビリンスリング間に作用する接線力を脈動させることを特徴とする竪型ミル。
【請求項2】
前記ラビリンスシールのシール圧を検知する検知器を更に具備し、前記制御部は前記検知器からの検知結果を基に前記ローラ加圧手段の押圧力を変動させる請求項1の竪型ミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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