説明

竪型射出成形機

【課題】ボールねじ機構からのグリースの飛散を確実に防止することができる。
【解決手段】竪型射出成形機1における射出スクリュ6を駆動するためのボールねじ機構10は、固定プレート5と可動プレート7との間に介在され、一端が固定プレート5に回転自在に支持されたボールねじ軸11と、ボールねじ軸11の他端側に螺合されて可動プレート7に固定されたボールナット12と、固定プレート5と可動プレート7との間でボールねじ軸11に同軸に固定されていて電動サーボモータに連動して回転する従動プーリ13とを備えている。ボールねじ軸11には、ボールナット12と従動プーリ13との間の位置に、オイルシール21を介して回転可能に挿通された状態でオイルパン20が取り付けられている。従動プーリ13には、ボールねじ軸11の周方向に沿って上面を窪ませた凹陥部30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置の駆動部にボールねじ機構を備えた竪型射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動式の竪型射出成形機では、上下方向に向けて配した加熱筒内の溶融樹脂を金型内に射出するために、電動サーボモータの回転をベルトやプーリを介してボールねじ機構に伝達させて回転運動を直線運動に変え、射出スクリュを加熱筒内に押し込むように下降させる装置が知られている。このような射出装置では、射出スクリュを上下方向に移動させるための機構として、ボールねじ機構を使用して回転運動を直線運動に変えるための機構を採用したものがある。ところで、ボールねじ機構においては、ナットとボールねじ軸との間にボールを介在させることでナットとボールねじ軸との抵抗を相対的に少なくして円滑に回転させるものであり、これらの円滑な回転のためにナット内には潤滑用のグリースが充填されている。
【0003】
ところが、ナット内のグリースは、ボールねじ軸の動作に伴ってナット内から漏れ出し、ボールねじ軸の下部に溜まり、そのグリースがボールねじ軸の周辺に飛散することがあった。そして、飛散したグリースが例えば射出スクリュに付着すると、その射出スクリュから加熱筒内の溶融樹脂にグリースが混入し、成形品に成形不良が生じるおそれがあった。そこで、このようなグリースの飛散を防止する対策として、例えば特許文献1で提案されているものがある。
【0004】
特許文献1は、電動モータにより回転駆動されるナットと、ナットの中心軸上に設けられる貫通孔内に内蔵されるボールと、ナットの貫通孔に挿入されてナットに対してボールを介して接続され、ナットが回転することによってナットに対して相対的にその軸方向に送り出されるボールねじ軸とによって構成され、そのボールねじ軸に円筒形状の樹脂性の素材からなるグリース飛散防止カバーを挿入し、そのカバーをナットの中心軸上の貫通孔の下端を覆うようにしてナットに固定した構成であって、ナットから流出したグリースをカバー内に溜めることでボールねじ軸の周囲にグリースが飛散することを防止する構成について記載したものである。
【特許文献1】特開2000−246761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の射出成形機におけるグリースの飛散防止方法では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、グリース飛散防止カバーをナット側に固定し、ボールねじ軸に対しては挿通させただけの非固定状態とされ、カバーとボールねじ軸との密着性が低い構造となっていた。つまり、射出時にボールねじ機構が駆動する際には、カバーに対してボールねじ軸が上下方向に移動することになり、互いに密着していない状態のカバーとボールねじ軸との間からグリースが漏れ出し、それが周囲に飛散するおそれがあった。そのため、ナットから漏れ出すグリースを確実に受け止めて周囲に飛散しないようにする必要があり、その点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ボールねじ機構からのグリースの飛散を確実に防止することができる竪型射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る竪型射出成形機は、上下方向に向けて配した加熱筒を有する固定プレートと、加熱筒内に挿入された射出スクリュを回転自在に支持する可動プレートと、固定プレートに対して可動プレートを射出スクリュの軸方向に移動自在に連結するとともに射出用モータによって駆動するボールねじ機構とを備えた竪型射出成形機であって、ボールねじ機構は、固定プレートと可動プレートとの間に介在されていて、一端が固定プレートに回転自在に支持されたボールねじ軸と、ボールねじ軸の他端側に螺合されるとともに可動プレートに固定されたボールナットと、固定プレートと可動プレートとの間でボールねじ軸に同軸に固定されていて射出用モータの回転に連動して回転する従動プーリとを備え、ボールねじ軸には、ボールナットと従動プーリとの間の位置に、リング状のオイルシールを介して回転可能に挿通された状態でオイルパンが取り付けられ、従動プーリには、前記ボールねじ軸の周方向に沿って上面を窪ませた凹陥部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、ボールナットから漏れ出すグリースをオイルパンによって受けることができ、そのオイルパン内に溜めておくことができる。そして、オイルパンはボールねじ軸と分離されていてボールねじ軸と一緒に回転しない構造であるので、オイルパン内に溜まったグリースがボールねじ軸の回転による遠心力によって周囲に飛散することを防ぐことができる。また、オイルパンは回転するボールねじ軸にオイルシールを介して取り付けられているので、オイルパンとボールねじ軸との接触部分での漏出が防止され、グリースをより確実に溜めておくことができる。さらに、例えばオイルシールが磨耗等で劣化して前記接触部分からグリースが漏れ出す場合には、オイルパンの下方の従動プーリに形成された凹陥部でそのグリースを受け止めることができ、グリースの従動プーリの外方への流出を抑制することができるので、ボールねじ機構の周囲へのグリースの飛散を防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る竪型射出成形機では、凹陥部の周壁面には、上から下に向けてボールねじ軸の中心軸線から離れる方向に傾斜する第1テーパ面が形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明では、従動プーリの回転による遠心力によって凹陥部に溜まったグリースが第1テーパ面に沿って上方に移動することが規制され、グリースの従動プーリの外方への流出を抑制して周囲にグリースが飛散することを防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る竪型射出成形機では、オイルシールは、周方向の一部が分割されていることが好ましい。
【0012】
本発明では、磨耗等により劣化したオイルシールを交換する際には、オイルシールの分割部分を開放してボールねじ軸から取り外すことができるので、オイルパンをボールねじ軸から引き抜いて交換するといった手間のかかる作業が不要となり、交換作業の簡略化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る竪型射出成形機では、従動プーリには、凹陥部に連通するとともに上下方向に貫通する貫通穴が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明では、凹陥部に溜まったグリースを貫通穴から従動プーリの下面側に流下させ、回転動作のない固定プレート上に排出させることができ、回転する従動プーリの上面側の凹陥部内に溜まるグリースの量を少なくすることで、従動プーリにおけるグリースの飛散を抑制することができる。
【0015】
また、本発明に係る竪型射出成形機では、従動プーリの下面には貫通穴に連通する窪み部が形成され、窪み部の外周側周壁面には、下から上に向けてボールねじ軸の中心軸線から離れる方向に傾斜する第2テーパ面が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明では、従動プーリの凹陥部から流下して下面側の窪み部に流れ込んで第2テーパ面に付着したグリースが、従動プーリの回転による遠心力によって第2テーパ面に沿って上方に移動するようになるので、従動プーリの回転中において窪み部からグリースが流下することを抑制して周囲にグリースが飛散することを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による竪型射出成形機によれば、オイルパンが回転するボールねじ軸に対してオイルシールを介して密接する構造であり、さらにオイルパンに加えて従動プーリの上面に形成される凹陥部を設けた二重の飛散防止手段とすることで、ボールねじ機構のボールナット内から漏れ出すグリースを確実に受け止めることができ、グリースの周囲への飛散を一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の竪型射出成形機の実施の形態について、図1乃至図7に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による竪型射出成形機の射出装置の概略構成を示す一部破断正面図、図2は図1に示す射出装置の一部破断側面図、図3は射出装置の一部破断平面図、図4はオイルパンの構成を示す側断面図、図5は図4に示すオイルパンの平面図、図6は従動プーリの詳細な構成を示す側断面図、図7は図6に示す従動プーリの平面図である。
【0019】
図1及び図2における符号1は、本実施の形態による電動式の竪型射出成形機を示している。すなわち、竪型射出成形機1は、上下方向に配した略中空円筒形状の加熱筒4内の溶融樹脂を射出する射出装置2と、射出装置2から溶融樹脂を注入する金型の型締めを行うための図示しない型締装置とからなる。
なお、前記型締装置は、とくに図示しないが、金型をそれぞれ取り付けた可動盤とその可動盤の下方に位置する固定盤とが所定間隔をもって配置され、固定盤に対して可動盤を近接離反するようにして上下動させることで両者に取り付けた金型どうしを開閉させて型締めを行うように構成された周知の技術のものとされる。なお、型締装置におけるその他の詳しい説明については省略する。
【0020】
図1に示すように、射出装置2は、加熱筒4を鉛直方向に保持して略水平方向に配置された固定プレート5と、加熱筒4に挿入された状態で周方向に回転自在かつ軸方向に往復移動自在とされる射出スクリュ6と、固定プレート5の上方で所定の間隔をあけて略水平方向に配置されるとともに射出スクリュ6の上端を支持する可動プレート7と、固定プレート5に対して可動プレート7を近接離反するように上下方向に往復動作されるボールねじ機構10とから概略構成されている。そのため、加熱筒4と射出スクリュ6とがそれぞれの軸心を一直線上に一致させて配置されている。
そして、ボールねじ機構10には、ボールナット12(後述する)内に充填されたグリースが周囲に飛散しないように防止するためのグリース飛散防止手段(後述するオイルパン20、及び従動プーリに形成した凹陥部30など)が設けられている。
【0021】
固定プレート5は、上述した可動盤上に立設された支柱(図示省略)に沿って上下方向に移動自在に設けられている。つまり、型締装置によって固定盤と可動盤とのそれぞれに固定した金型同士を嵌合させてから、固定プレート5を下降させて加熱筒4の下端の射出ノズル(図示省略)を金型の樹脂注入口に挿入係合させるように構成されている。
そして、図2及び図3に示すように、固定プレート5のボールねじ機構10から離れた位置には、回転軸8aを後述するボールねじ軸11の軸線方向と平行に配置した射出用の電動サーボモータ8(射出用モータ)が取り付けられている。
【0022】
可動プレート7は、上述したようにボールねじ機構10の作動によって図示しないガイドレールに案内されて昇降自在に構成され、射出スクリュ6の回転軸を回転自在に保持させている。そして、可動プレート7には、スクリュ回転用モータ9が取り付けられている。
【0023】
図1及び図2に示すように、ボールねじ機構10は、加熱筒4の両側の位置に一対で配置され、加熱筒4の先端側の射出ノズル(図示省略)から溶融樹脂を金型内へ射出するために、可動プレート7を介して射出スクリュ6を加熱筒4内で上下方向に往復移動させるものであり、その駆動源は上述した射出用の電動サーボモータ8となっている。なお、図1では、一方のボールねじ機構10のみが示されている。
すなわち、ボールねじ機構10は、固定プレート5に対して垂直上方に延びるようにして一端を固定プレート5に軸周りに回転可能に支持された一対のボールねじ軸11、11と、各ボールねじ軸11に螺合されたボールナット12と、ボールねじ軸11の固定プレート5側に同軸に固定された従動プーリ13とから構成されている。
【0024】
ボールねじ軸11の基端11aは、固定プレート5に固定された軸受11bを介して回転自在に支持されている。そして、ボールねじ軸11の他端側(可動プレート7側)のねじ溝11cが、ボールナット12の貫通孔内のボール(図示省略)に係合した状態になっている。
【0025】
ボールナット12は、可動プレート7に厚さ方向に挿通された状態で一体に固定され、可動プレート7に対して回転不能な状態となっている。そして、ボールナット12の貫通孔には、ボールねじ軸11に対する回転潤滑用のグリースが充填された状態になっている。
【0026】
図2及び図3に示すように、一対の従動プーリ13、13は、射出用の電動サーボモータ8の回転軸8aとともに巻き掛けられたタイミングベルト8bによって連動して回転するようになっている。つまり、電動サーボモータ8の回転が従動プーリ13、13に伝達してボールねじ軸11を回転させ、その回転をボールねじ機構10によって回転運動から直線運動へ変換し、これによって図2に示すボールナット12、12がそれぞれのボールねじ軸11の軸方向に沿って移動する直線的な往復動作を行う機構になっている。これにより、ボールナット12に一体に設けられた可動プレート7は、固定プレート5に対して近接離反する方向、つまり射出スクリュ6の軸方向に移動自在にする構成となっている。
【0027】
次に、ボールねじ機構10に設けられるグリース飛散防止手段の構成について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、ボールねじ機構10のボールねじ軸11には、ボールナット12と従動プーリ13との間の位置で、リング状のオイルシール21を介して回転可能に挿通された状態でオイルパン20が取り付けられている。
【0028】
図4及び図5に示すように、オイルパン20は、平面視円形で略円筒有底形状をなし、その平面視中心位置にボールねじ軸11を挿通させるための挿通孔20aが形成され、その挿通孔20aに隣接してボールねじ軸11に沿った環状の凹部20bが形成され、その凹部20bにリング状のオイルシール21がボールねじ軸11に液密に接した状態で設けられている。このようなオイルパン20は、図1に示すボールナット12内から漏れ出してボールねじ軸11を伝って流下するグリースを、受け部20cで受け止めて溜めておくことがきるようになっている。
【0029】
そして、オイルパン20は、従動プーリ13を跨ぐようにして固定プレート5の上面に固定した略櫓形状のブラケット22にボルト22aによって取り付けられている。そのため、オイルパン20は、ボールねじ軸11と分離されていてボールねじ軸11と一緒に回転しない状態で配置されている。
【0030】
オイルシール21は、凹部20bに係合された状態で、ボールねじ軸11のねじ溝11cのない平坦面の箇所に位置するように配置され、上側から押さえ板23よって押さえられて収納された状態となっている。押さえ板23は、ボールねじ軸11の周方向に沿ったリング形状をなし、周方向に分割され、外周側が受け部20cの底部にボルト23aによって固定されるとともに、内周側の下面でオイルシール21を押さえるようにして係止させる構成となっている。
【0031】
さらに、オイルシール21は、周方向の一部にスリット21aが形成された分割可能なものが用いられている。つまり、本オイルパン20では、押さえ板23を着脱することによって、オイルシール21を交換することができるようになっている。そして、オイルシール21の交換時には、押さえ板23を取り外し、オイルシール21のスリット21aの分割部分を広げて開放することでボールねじ軸11から取り外すことができるようになっている。
【0032】
また、オイルパン20の側壁部には、受け部20cに連通する貫通孔24が形成されている。貫通孔24には、図示しない蓋が取り付けられている。つまり、オイルパン20内に溜まったグリースは、貫通孔24より排出することができるようになっている。
【0033】
次に、図6及び図7に示すように、従動プーリ13には、ボールねじ軸11の周方向に沿って上面を窪ませた凹陥部30と、その凹陥部30に連通するとともに上下方向(従動プーリ13の厚さ方向)に貫通する複数(本実施の形態では図7に示すように6箇所)の貫通穴31、31、…と、従動プーリ13の下面において各貫通穴31に連通する窪み部32とが形成されている。
【0034】
凹陥部30は、従動プーリ13の上周縁部から例えば10mm程度、窪んだ形状をなしている。凹陥部30の周壁面には、上から下に向けてボールねじ軸11の中心軸線から離れる方向に傾斜する第1テーパ面30aが形成されている。
【0035】
窪み部32は、平面視でボールねじ軸11と同軸となるリング形状をなし、その外周側周壁面には下から上に向けてボールねじ軸11の中心軸線から離れる方向に傾斜する第2テーパ面32aが形成されている。
ここで、第1テーパ面30a及び第2テーパ面32aの傾斜角度としては、鉛直方向に対して例えば5°程度に設定することができる。
【0036】
また、図1及び図3に示すように、射出装置2には、射出スクリュ6の周囲を覆うように略箱状に形成されたオイルフェンス3が固定プレート5に固定されている。
【0037】
次に、このように構成されるボールねじ機構10を用いた竪型射出成形機1の射出装置2による射出動作と、ボールねじ機構10に設けたオイルパン20と従動プーリ13に形成した凹陥部30等の作用について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、射出スクリュ6を加熱筒4内に押し込む際には、図2に示す電動サーボモータ8を駆動させ、その回転をタイミングベルト8bを介して従動プーリ13に伝達し、従動プーリ13に同軸に接続されているボールねじ軸11が回転する。そして、ボールねじ軸11のねじ溝11cに螺合するボールナット12がボールねじ軸11の軸方向に沿って移動し、可動プレート7が固定プレート5側に向けて移動する。これによって、可動プレート7に支持された射出スクリュ6が加熱筒4内に押し込まれ、加熱筒4の射出ノズル(図示省略)から溶融樹脂を金型内へ射出する。そして、射出動作が終了した後、スクリュ回転用モータ9により射出スクリュ6を回転させることで、加熱筒4内の樹脂を前方(下方)に移動させる。このとき、電動サーボモータ8をフリーにさせることで射出スクリュ6が樹脂圧に押され、後方(上方)に移動し、元の位置まで戻り、次回の射出動作に備える。
【0038】
このように行われる射出動作においては、ボールナット12内から漏れ出したグリースがオイルパン20及び従動プーリ13に形成された凹陥部30によって受け止められることになる。
つまり、ボールナット12から漏れ出すグリースが、ボールナット12の直下に位置するオイルパン20によって受けることができ、その受け部20cに溜めておくことができ、受け部20cに所定量のグリースが溜まったときには適宜貫通孔24(図4参照)を開けて排出する。そして、オイルパン20はボールねじ軸11と分離されていてボールねじ軸11と一緒に回転しない構造であるので、オイルパン20内に溜まったグリースがボールねじ軸11の回転による遠心力によって周囲に飛散することを防ぐことができる。
【0039】
また、オイルパン20は回転するボールねじ軸11にオイルシール21を介して取り付けられているので、オイルパン20とボールねじ軸11との接触部分での漏出が防止され、グリースをより確実に溜めておくことができる。
なお、磨耗等により劣化したオイルシール21を交換する際には、オイルシール21のスリット21aを開放してボールねじ軸11から取り外すことができるので、オイルパン20をボールねじ軸11から引き抜いて交換するといった手間のかかる作業が不要となり、交換作業の簡略化を図ることができる。
【0040】
そして、例えばオイルシール21が磨耗等で劣化して前記接触部分からグリースが漏れ出す場合には、オイルパン20の下方の従動プーリ13に形成された凹陥部30でそのグリースを受け止めることができ、グリースの従動プーリ13の外方への流出を抑制することができるので、ボールねじ機構11の周囲へのグリースの飛散を防止することができる。
【0041】
また、従動プーリ13の凹陥部30の周壁面には第1テーパ面30aが形成されているので、従動プーリ13の回転による遠心力によって凹陥部30に溜まったグリースが第1テーパ面30aに沿って上方に移動することが規制され、グリースの従動プーリ13の外方への流出を抑制して周囲にグリースが飛散することを防止することができる。
【0042】
さらに、従動プーリ13では、凹陥部30に溜まったグリースを貫通穴31から従動プーリ13の下面側に流下させ、回転動作のない固定プレート5上に排出させることができ、回転する従動プーリ13の上面側の凹陥部30内に溜まるグリースの量を少なくすることで、従動プーリ13におけるグリースの飛散を抑制することができる。
【0043】
しかも、従動プーリ13の凹陥部30から流下して下面側の窪み部32に流れ込んで第2テーパ面32aに付着したグリースが、従動プーリ13の回転による遠心力によって第2テーパ面32aに沿って上方に移動するようになるので、従動プーリ13の回転中において窪み部32からグリースが流下することを抑制して周囲にグリースが飛散することを防止することができる。
【0044】
上述のように本実施の形態による竪型射出成形機では、オイルパン20が回転するボールねじ軸11に対してオイルシール21を介して密接する構造であり、さらにオイルパン20に加えて従動プーリ13の上面に形成される凹陥部30を設けた二重の飛散防止手段とすることで、ボールねじ機構10のボールナット12内から漏れ出すグリースを確実に受け止めることができ、グリースの周囲への飛散を一層確実に防止することができる。
【0045】
以上、本発明による竪型射出成形機の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では従動プーリ13に凹陥部30に連通するとともに上下方向に貫通する貫通穴31が設けられ、従動プーリ13の下面側に第2テーパ面32aを形成した窪み部32を設けた構成としているが、このような構成に限定されることはなく、例えば窪み部32を設けない構成や、或いは窪み部32及び貫通穴31を設けない構成であってもよい。また、貫通穴31の配置数は、本実施の形態では6箇所としているが、これに限定されることはなく、任意に設定することができる。そして、凹陥部30では、第1テーパ面30aを形成させた周壁面であることに制限されることはなく、第1テーパ面30aを設けない構造であってもかまわない。
【0046】
また、本実施の形態ではオイルパン20に備えたオイルシール21が周方向の一箇所のスリット21aを形成したものを採用しているが、周方向に分割されないリング状に一体となっているオイルシールを使用してもかまわない。
さらに、オイルパン20の取り付け位置はボールナット12と従動プーリ13との間の位置であればよく、とくに限定されることはない。また、オイルパン20は、ブラケット22を介して固定プレート5上に固定されているが、このような固定形態に制限されることはなく、要は、オイルパンはボールねじ軸11と分離されていてボールねじ軸11と一緒に回転しないように固定されていればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態による竪型射出成形機の射出装置の概略構成を示す一部破断正面図である。
【図2】図1に示す射出装置の一部破断側面図である。
【図3】射出装置の一部破断平面図である。
【図4】オイルパンの構成を示す側断面図である。
【図5】図4に示すオイルパンの平面図である。
【図6】従動プーリの詳細な構成を示す側断面図である。
【図7】図6に示す従動プーリの平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 竪型射出形成機
2 射出装置
4 加熱筒
5 固定プレート
6 射出スクリュ
7 可動プレート
8 電動サーボモータ(射出用モータ)
10 ボールねじ機構
11 ボールねじ軸
12 ボールナット
13 従動プーリ
20 オイルパン
21 オイルシール
21a スリット
30 凹陥部
30a 第1テーパ面
31 貫通穴
32 窪み部
32a 第2テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に向けて配した加熱筒を有する固定プレートと、前記加熱筒内に挿入された射出スクリュを回転自在に支持する可動プレートと、前記固定プレートに対して前記可動プレートを前記射出スクリュの軸方向に移動自在に連結するとともに射出用モータによって駆動するボールねじ機構とを備えた竪型射出成形機であって、
前記ボールねじ機構は、前記固定プレートと前記可動プレートとの間に介在されていて、一端が前記固定プレートに回転自在に支持されたボールねじ軸と、該ボールねじ軸の他端側に螺合されるとともに前記可動プレートに固定されたボールナットと、前記固定プレートと前記可動プレートとの間で前記ボールねじ軸に同軸に固定されていて前記射出用モータの回転に連動して回転する従動プーリとを備え、
ボールねじ軸には、前記ボールナットと前記従動プーリとの間の位置に、リング状のオイルシールを介して回転可能に挿通された状態でオイルパンが取り付けられ、
前記従動プーリには、前記ボールねじ軸の周方向に沿って上面を窪ませた凹陥部が形成されていることを特徴とする竪型射出成形機。
【請求項2】
前記オイルシールは、周方向の一部が分割されていることを特徴とする請求項1に記載の竪型射出成形機。
【請求項3】
前記凹陥部の周壁面には、上から下に向けて前記ボールねじ軸の中心軸線から離れる方向に傾斜する第1テーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型射出成形機。
【請求項4】
前記従動プーリには、前記凹陥部に連通するとともに上下方向に貫通する貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の竪型射出成形機。
【請求項5】
前記従動プーリの下面には前記貫通穴に連通する窪み部が形成され、
該窪み部の外周側周壁面には、下から上に向けて前記ボールねじ軸の中心軸線から離れる方向に傾斜する第2テーパ面が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の竪型射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−96151(P2009−96151A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272619(P2007−272619)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【特許番号】特許第4081612号(P4081612)
【特許公報発行日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】