説明

竪型炉のレンガ支持構造

【課題】吊下部全体を冷却して耐火レンガの被支持部分の亀裂発生を防止できる竪型炉のレンガ支持構造を提供する。
【解決手段】内部に冷却媒体を流通する金属製のジャケットの底部から垂下して設けられている、吊下部材12は、内部に冷却媒体流路12Bが形成されており、該吊下部材12の幅が上下に向け広がる楔状をなすテーパ支持面12Aが形成され、耐火レンガ部13,14が周方向で隣接する二つの吊下部材のテーパ支持面で支持されており、耐火レンガ部が上側レンガ部13と該上側レンガ部13よりも耐火性の高い下側レンガ部14とから形成されていて、上側レンガ部13は複数のブロックがアーチ状をなすように下側レンガ部14の上に積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型炉の炉蓋におけるレンガ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型炉は、鉛直な軸線に対し半径方向に拡がる面を形成し軸線位置の中央部に落下孔が形成された環板状の炉床と、該炉床の外周部から立ち上がり円筒状に形成された外筒壁部と、該外筒壁部の上端側を塞ぐ炉蓋とを有している。
【0003】
かかる竪型炉では、上記炉蓋が、外筒壁部の上端周縁に接続されていて外筒よりも半径方向内方で炉床の上方に位置する環板状部と、該環板状部の内周縁から垂下し上記外筒壁部と同心をなす内筒壁部と、該内筒壁部の下端周縁と接続部を介して接続され内筒壁部よりも半径方向内方で落下孔の上方に位置する円板状の天板部とを有していて、上記炉床、外筒壁部そして炉蓋の内筒壁部及び天板部とで加熱空間を形成しており、該炉蓋は、加熱処理されるべき原料の供給管が環状板部に接続されていると共に、加熱ガス供給装置と燃料供給装置の少なくとも一方が天板部に設けられている。
【0004】
このように形成される竪型炉では、上記炉床上へ供給管から供給された原料が加熱空間における加熱ガスにより加熱される。したがって、炉蓋の上記接続部は高温にさらされる。
【0005】
このような竪型炉は、特許文献1で知られており、高温にさらされる上記接続部に冷却のための金属製のジャケットを備えている。該ジャケットからは、下方に向け幅を広げる楔状部が形成された吊下金属板が垂下していて、二つの吊下金属板の上記楔状部で加熱空間に面する耐火レンガを吊下支持している。該吊下金属板は、ジャケットに接する上端面で該ジャケットにより冷却される。耐火レンガは、その上部で上記楔状部により支持されていて、その下方に大きく延びる部分は該楔状部によっては支持されておらず、上記上部でのみ吊下されている形態をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2952785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、耐火レンガは上下方向では一つのレンガとして形成されており、加熱空間からの熱をこの一つの耐火レンガで直接受けてこれに耐えるためには、該耐火レンガは上下方向での寸法、すわわち厚みは十分に大きくなくてはならない。一般に、レンガは、比重が大きく、したがって、上記耐火レンガは重量と熱容量が大きくなる。その結果、楔状部で支持される耐火レンガの被支持部分には、耐火レンガの全重量が作用するので、応力は大きい。しかも、市場で入手できる耐火レンガは、その材質が幾種か存在するが、加熱空間からの熱を直接受けるには、最も耐火性の高いレンガが求められる。一般に、耐火性が高くなる程、熱を受けた際に脆くなるという傾向がある。特許文献1では、耐火レンガは一部材であるため、熱応力、しかも変動する熱応力が大きく生じる。このような自重そして熱による応力が、耐火性は高いが脆性も大きい上記耐火レンガに生ずると、これらの応力により、最も応力の大きい上記被支持部分に亀裂が生じやすい。亀裂は、耐火レンガの部分的破損そして脱落につながり、炉自体の耐火性に問題を生ずる。
【0008】
さらに、耐火レンガを吊下する吊下金属板は、ジャケットにより冷却されるものの、該吊下金属板の上端面でのみの冷却であるために、全体にわたり冷却されず十分に冷却されているとは言い難い。したがって、上記吊下金属板により支持される上記耐火レンガの上記被支持部分も十分には冷却されない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、耐火レンガに生ずる応力を極力小さくすると共に、吊下部材全体を冷却して耐火レンガの被支持部分を強度に影響のない程度にまで冷却して亀裂発生を防止できる竪型炉のレンガ支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る竪型炉のレンガ支持構造は、鉛直な軸線に対し半径方向に拡がる面を形成し軸線位置の中央部に落下孔が形成された環板状の炉床と、該炉床の外周部位置で上下方向に延びる円筒状の外筒壁部と、該外筒壁部の上端側を塞ぐ炉蓋とを有し、上記炉蓋が、外筒壁部の上端周縁に接続されていて外筒部より半径方向内方で炉床の上方に位置する環板状部と、該環板状部の内周縁から垂下し上記外筒壁部と同心をなす内筒壁部と、該内筒壁部の下端周縁と接続部を介して接続され内筒壁部よりも半径方向内方で落下孔の上方に位置する円板状の天板部とを有していて、上記炉床、外筒壁部そして炉蓋の内筒壁部及び天板部とで加熱空間を形成しており、該炉蓋は、加熱処理されるべき原料の供給管が環状板部に接続されていると共に、加熱ガス供給装置と燃料供給装置の少なくとも一方が天板部に設けられており、炉床の落下孔の内周縁から筒状をなして垂下し内部に焼成空間を形成する焼成筒部とその下方で冷却空間を形成する冷却筒部が設けられている。
【0011】
かかる竪型炉のレンガ支持構造において、本発明では、接続部は、内部に冷却媒体の流通のための環状空間が形成された金属製のジャケットと、該ジャケットに対して上記軸線方向で炉内側に位置し、周方向の複数位置で、上記ジャケットの底部から垂下して設けられた金属製の吊下部材と、該吊下部材で支持される耐火レンガ部とを有し、該吊下部材は上記周方向での該吊下部材の幅が上下に向け広がる楔状をなすテーパ支持面が形成され、上記耐火レンガ部が周方向で隣接する二つの吊下部材のテーパ支持面で支持されており、上記耐火レンガ部が上側レンガ部と該上側レンガ部よりも耐火性の高い下側レンガ部とから形成されていて、上記上側レンガ部は複数のブロックがアーチ状をなすように上記下側レンガ部の上で積層されており、さらに、吊下部材は内部に冷却媒体流路が形成されていて冷却媒体が流通することを特徴としている。
【0012】
このような構成の本発明によると、耐火レンガ部が上側レンガ部と下側レンガ部と二つの部分に分けられているため、一つのレンガ部については自重が減り、その分、レンガの被支持部で吊下部材により吊下されたとき、自重による応力が小さくなる。特に、加熱ガスから直接熱せられる下側レンガ部に、上側レンガ部よりも耐火性の高いレンガを用い、該下側レンガ部を上側レンガ部に比して薄く、すなわち、高さ寸法を小さくすることで、この下側レンガ部における自重による応力はきわめて小さくできる。したがって、下側レンガ部は、材質自体が上側レンガ部よりも脆くとも、被支持部が適度に冷却されている限り、自重による被支持部における応力が十分小さいので、これに十分耐えられる。これに対し厚い上側レンガ部は加熱ガスにはあまり直接触れないので下側レンガ部ほどには加熱されない上、複数のブロックを積層して形成されているので、昇温してもブロック同士は互いに熱変位可能であり、ブロック単位での熱応力が小さい。さらには、上側レンガ部も下側レンガ部も、内部から十分に冷却される吊下部材により被支持部がその接触面全域で冷却されるので、該被支持面での熱応力が小さい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上のように、吊下部材を内部から冷却すると共に、耐火レンガ部を上側レンガ部と下側レンガ部とに分けたので、上側レンガ部も下側レンガ部もそれぞれ自重そして熱容量が小さくなって、自重による応力、そして熱応力が小さくなり、しかも上側レンガ部が複数のブロックで成っているので、互いの熱変位を吸収でき、全体としての熱応力も小さくなり、耐火レンガ部は被支持部分での亀裂、ひいては破損が防止され、炉として長期にわたり、安定した操業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としてのレンガ支持構造を有する竪型炉の要部を示す軸線含む面での縦断面図である。
【図2】図1でのII−II線拡大断面図である。
【図3】図1の耐火レンガ部のみを拡大して示す、図1と同じ面での断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す、図2対応の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面にもとづき、本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のレンガ支持構造を有する竪型炉の軸線を含む面での主要部についての縦断面図である。
【0017】
図1において、符号1で示される炉床は、鉛直な炉の軸線Xを中心とした落下孔2が形成されている。該炉床1は、軸線Xに対し半径方向に拡がる炉床面1Aを有している。本実施形態では炉床1は軸線Xまわりに回転するが、本発明においては、非回転であってもよい。この炉床1の下方は、上記落下孔2の内周縁から筒状をなして垂下する焼成筒部(図示せず)と、さらに下方に延びる冷却筒部(図示せず)を有していて、上記炉床1上の原料Pが上記落下孔2から落下して焼成筒部で自己保有熱により焼成後、降下して上記冷却筒部で冷却されて、炉外に取り出されるようになっているが、これらの構成は、本発明の主眼とするところではないので、これ以上の説明は省略する。
【0018】
上記炉床1の上方には、該炉床1の外周縁の位置で上下に延びる非回転の外筒壁部3が設けられている。該外筒壁部3の下端縁3Aは上記回転せる炉床1の炉床面1Aに近接し隙間を形成している。通常、上記下端縁3Aと炉床面1Aとの間には、互いの相対回転を許容し上記隙間をシールするシール装置(図示せず)が設けられている。炉床1が非回転の形成の炉の場合は、炉床1と上記外筒壁部3は連続して一体に形成することができる。
【0019】
上記外筒壁部3の上端縁には、炉蓋4がその外周縁で接続されている。すなわち、炉蓋4は外筒壁部3に対して一体的に連続接続され上記外筒壁部3に対しその半径方向内方に位置している。
【0020】
上記炉蓋4は、上記外筒壁部3の上端縁に接続され半径方向内方に向け延び炉床1と平行な面をなす環板状部(図示せず)と、該環板状部の内周縁から垂下する内筒壁部5と、半径方向で該内筒壁部5内に位置し、上方に向け凸弯曲する円板状の天板部6と、該天板部6の外周縁と上記内筒壁部5の下端縁とを接続する環状の接続部7とを有している。上記内筒壁部5は、半径方向で炉床1の範囲内に位置している。上記炉蓋4は、その外面側(図では上面側)に鋼板製の補強体8により覆われて補強されている。該補強体8は、上記内筒壁部5の下部と天板部6の外周端との間に形成されている環状空間に位置する環状ジャケット9を有している。該環状ジャケット9は、その閉じられた環状空間に冷却媒体としての冷却水が導かれ、該環状ジャケット9が接面する内筒壁部5そして天板部6さらに接続部7のそれぞれの対応部分を冷却する。なお、冷却媒体は空気等の冷却用ガスであってもよい。
【0021】
上記炉床1の上方に位置する炉蓋4の環状板部(図示せず)には、周方向の複数位置に原料の供給管(図示せず)と排気管(図示せず)が接続部されていて、該供給管を経て外部から原料が炉床1上に落下供給され、落下して炉床1上に形成された原料Pの粒間を透過する排ガスが上記排気管から炉外へ排出されるようになっている。一方、炉蓋4の天板部6には、上記軸線Xの位置で天板部6を貫通して、燃料供給管10と燃焼用空気供給管11とが配置されている。この燃料供給管10から炉内に供給される燃料は、主として液体あるいはガス燃料であるが、これに代えあるいは併せて固体(粉体)燃料を用いてもよい。併せて固体燃料を用いる場合は、液体あるいはガス燃料のための供給管とは別途設けられた供給管から固体燃料が供給されることが好ましい。
【0022】
上記内筒壁部5と天板部6は耐火レンガで作られており、天板部6にあっては、該耐火レンガの保持を強固にするために、該耐火レンガと鋼板製の補強体8との間にはモルタル層6Aが設けられている。
【0023】
上記内筒壁部5の下端縁と天板部6の外周縁を接続する接続部7は、周方向の複数位置で上記環状ジャケット9の底板部9Aから垂下する金属製の吊下部材12により支持されている。
【0024】
上記環状ジャケット9の底板部9Aから垂下する吊下部材12は、図1にも見られるように、炉の半径方向にも延びていて板状をなし、図2に見られるように、下半部でその板幅、すなわち炉の周方向での寸法が下方に向け次第に大きくなる楔状をなすテーパ支持面12Aを有している。該吊下部材12は、その板厚内に、冷却水媒体流路として循環路12Bが形成されている。該循環路12Bは、図3に見られるように、吊下部材12の上端に開口し、クランク形状をなしつつ下方に延びる流路が該吊下部材12の両端側に形成されていて、一方が流入路12B−1、他方が流出路12B−2となっており、さらには、流入路12B−1と流出路12B−2がそれらの下端で水平方向に延びる連通路12B−3により連通されている。かくして、環状ジャケット9内の冷却水は、流入路12B−1へ流入後、連通路12B−3を経て流出路12B−2から上記環状ジャケット9へ帰還する。かくして、吊下部材12は、全体にわたり冷却される。上記循環路12Bは、吊下部材12の広い範囲にわたり形成されていること、なるべく長い路長を有していることが、冷却効果の向上、さらには吊下部材の軽量化の点からも好ましい。
【0025】
吊下部材12により吊下支持されている接続部7は、図2に見られるように、耐火レンガ部として、上側レンガ部13と下側レンガ部14とを有している。下側レンガ部14は、隣接する二つの吊下部材12間距離に及ぶ寸法を有し、上側レンガ部よりも耐火性の高い材料で一部材として作られていて、上記吊下部材12の下半部に形成されたテーパ支持面12Aの下端部分に接面して吊下支持される傾斜面14Aが、該下側レンガ部14の左右上隅部に切欠き状に形成されている。該傾斜面14Aよりも下方部分は、本実施形態では、上記吊下部材12の下端面12Cの半分に接面して該下端面12Cの半分を覆うようにして、該下端面12Cより下方に延びている。該下側レンガ部14はその下面14Bは平坦面をなしているが、上面14Cは図2にて左右方向(炉の周方向)中央部が上方に凸弯曲しているアーチ状曲面をなしている。該下側レンガ部14は図2にて、紙面に対して直角方向、すなわち炉の半径方向で、上記二つの吊下部材12の間へ挿入されて取り付けられる。
【0026】
一方、上側レンガ部13は、環状ジャケット9の底板部9Aと、隣接する二つの吊下部材12と上記下側レンガ部14とで囲まれる空間を埋める複数のブロックにより形成されている。図において、複数のブロックは、上下方向で三層に積層されそして各層内で左右方向に複数に分割配置されていて、熱を受けても互いに独立して熱変位できるようになっている。最下層のブロック13Aはその下面が上記下側レンガ部14の上面に沿ったアーチ状形状に配されており、下側レンガ部14の上面との間に充填材としてのモルタル15を介している。中間層のブロック13Bも、上記最下層のブロック13Aと同様にアーチ状に配されていて、下面が最下層のブロック13Aの上面に接面している。上記最下層そして中間層のブロック13A,13Bの複数のブロックのうち左右両端に位置するブロックは、上記吊下部材12のテーパ支持面12Aに接面しており、アーチをなす最下層そして中間層の複数のブロック13A,13Bは、アーチ形状の層をなすことによって上記テーパ支持面12Aによって支持されるようになると共に、下側レンガ部14上に位置することで該下側レンガ部14によっても支持されることとなる。最上層のブロック13Cは、上記中間層とジャケット9の底板部9Aとの間を埋めるように配されている。
【0027】
このような上側レンガ部13は、最下層13A、中間層13Bそして最上層13Cの三層に分かれていると共に、各層が複数のブロックに分かれていて、各ブロックは熱応力を受けた際、互いに独立して熱変位できる自由度を有している。
【0028】
このような構成の本実施形態のレンガ支持構造をもつ竪型炉の作動は、次のごとくである。
【0029】
(1)原料Pが原料供給管から炉床1上に落下供給され、原料堆積層を形成する。この原料堆積層は、図1のごとく、その積層上面が外筒壁部3と内筒壁部5の間の環状空間にまで及ぶ。
【0030】
(2)次に、燃料供給管10から燃料が、そして燃焼用空気供給管11から燃焼用空気が炉内に吹き込まれて燃料が燃焼し、炉蓋4の下方に形成されている加熱空間Fで生成される火炎による熱で、炉床1上で炉内に面する原料堆積層の表面層を加熱する。
【0031】
(3)加熱された上記表面層の原料は、図示しないプッシャにより落下孔2の方へ押し出されて落下孔2へ落下し、下方の焼成筒部に堆積されて、自己保有熱で焼成されつつ降下し、冷却筒部内を上昇する冷却空気により該冷却筒部で冷却された後に炉外へ取り出される。
【0032】
(4)焼成原料を冷却しつつ上昇し自ら昇温する空気は加熱空間Fで燃料の燃焼に寄与した後、炉床1上の原料堆積層の原料粒子間に進入し、堆積層内部の原料を加熱しながら排ガスとして炉蓋4の環状板部に設けられた排気管から炉外へ排出される。
【0033】
(5)一方、上記加熱空間F内の火炎の熱により接続部7は加熱を受ける。したがって、接続部7を形成する上側レンガ部13と下側レンガ部14も熱を受けるが、下側レンガ部14の方が上側レンガ部13に比し、より直接的にこの熱を受ける。しかしながら、本実施形態では、吊下部材12がその全体で、循環路12Bを流れる冷却水により冷却されているので、該吊下部材12の全側面で、接続部7の上側レンガ部13と下側レンガ部14の両端側の被支持部たる傾斜面14Aと接面して、広面積で上記上側レンガ部13そして下側レンガ部14の上記被支持部及びその近傍の内層部を冷却する。上側レンガ部13そして下側レンガ部14のレンガ自体は、耐火性の高いものであり、上記両端側以外の中間部は然程冷却されないが、十分に耐え得る。仮に、下側レンガ部14が、従来のように、耐火性の高いレンガであっても、何ら冷却されていないと、吊下部材12により支持される両端の被支持部が高熱により脆くなり欠けることがあり、これが大きな問題となる。しかし、本実施形態では、接続部7の両端の被支持部たる傾斜面14Aは、十分に冷却されている吊下部材12と広い面積で接面しているので、該両端の被支持部は強度を維持するのには十分に冷却され、脆くなることはない。さらには、上記下側レンガ部14は、上側レンガ部13とは別体として形成されているので小寸法となっていて、該下側レンガ部14の自重は大きくなく、上記吊下部材12と接面して吊下される傾斜面に作用する荷重は小さい。したがって、被支持部としてのこの傾斜面では、上記冷却が十分になされている上に、作用する荷重が小さいので、炉の運転中に熱を受けても脆くなることはない。
【0034】
一方、上記下側レンガ部14上の上側レンガ部13は、直接加熱空間Fからは大面積では熱せられないこと、吊下部材12から冷却されていることに加え、上方からジャケット9の底板部9Aを介して冷却されていることもあり、下側レンガ部14にくらべて高温とはならない。たとえ、或る程度の高温になっても、上側レンガ部13は三層に分かれていて、さらに各層が複数のブロックに分かれているので、各ブロックは相対的に熱変位が可能であり、上側レンガ部13全体として大きな熱応力を生ずることなない。
【0035】
このように、本実施形態によると、接続部は、加熱空間からの熱を受けても、吊下部材との接面部分となる被支持部での強度低下によって脆くなるということがなくなり、長期にわたり吊下部材によりしっかりと吊下支持される。かくして、接続部が吊下部材との接面部分で亀裂が生じて、部分的に破損落下するという不具合はなくなる。
【0036】
以上のように、本発明によると、下側レンガ部14はその被支持面をなす傾斜面14Aで吊下部材12のテーパ支持面12Aと接面するので、内部から冷却されている吊下部材12により上記傾斜面14Aが冷却されて脆くなることがなくなり表面から破損しないようになる。しかし、仮に、若干の破損があって、しかもモルタル15から離間したときには、上記下側レンガ部14は下方へ降下することもあり得るが、たとえ降下しても、上記傾斜面14Aが吊下部材12のテーパ支持面12Aに対して下方へスライドして下方へ位置が移動するだけであり、依然として該テーパ支持面12Aにより吊下支持され、かつその接面により引き続き吊下部材12によって冷却される。しかも、下側レンガ部14が若干降下しても、上側レンガ部13は、上記下側レンガ部14との間に隙間を形成するだけで、下側レンガ部14から何の影響を受けることなく、当初の位置に留まっている。
【0037】
本発明において、高温側となる下側レンガ部には、マグネシアクロムレンガを、そしてそれよりも低温となる上側レンガ部にはハイアルミナアーチレンガを用いることができる。
【0038】
本発明は、図1ないし図3に図示され説明された形態には限定されず、種々変更が可能である。
【0039】
例えば、加熱空間からの熱を直接受け、より高い耐火性を求められる下側レンガ部は、その被支持部での応力を小さく抑制できれば、その層(高さ方向寸法)が大きい方が好ましい。
【0040】
図4の形態の場合、下側レンガ部14は、左右で二つに分割されていて、図2の形態の場合に比し、高さ寸法が大きくなっている。したがって、高さ寸法が大きいが故に、その耐火性は高い。しかし、二つの部分に分割されているため、一つの部分の自重が大きくなることはない。しかも、高さ寸法が大きいことに対応して、吊下部材12も下側レンガ部14の下端位置にまで達するようにして、冷却媒体の循環路12Bも広い範囲で長く形成されていて冷却効果を向上せしめ、上記下側レンガ部14とも広い面積で接触して良好に冷却している。さらに、この図4の形態では、吊下部材12の下端に突出部12Dを形成して、ここに下側レンガ部14の下端を係止せしめて、テーパ支持面12Aに加えて、支持能力を高めている。なお、分割された下側レンガ部14の二つの部分の間には、下側レンガ部14と上側レンガ部13との間にモルタル15を充填したのと同様にモルタルを介してもよいし、耐火性のある他の緩衝材を配してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 炉床
2 落下孔
4 炉蓋
5 内筒壁部
6 天板部
7 接続部
9 環状ジャケット
10 燃料供給装置(管)
12 吊下部材
12A テーパ支持面
12B 冷却媒体流路(循環路)
13 上側レンガ部
14 下側レンガ部
F 加熱空間
P 原料
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直な軸線に対し半径方向に拡がる面を形成し軸線位置の中央部に落下孔が形成された環板状の炉床と、該炉床の外周部位置で上下方向に延びる円筒状の外筒壁部と、該外筒壁部の上端側を塞ぐ炉蓋とを有し、上記炉蓋が、外筒壁部の上端周縁に接続されていて外筒部より半径方向内方で炉床の上方に位置する環板状部と、該環板状部の内周縁から垂下し上記外筒壁部と同心をなす内筒壁部と、該内筒壁部の下端周縁と接続部を介して接続され内筒壁部よりも半径方向内方で落下孔の上方に位置する円板状の天板部とを有していて、上記炉床、外筒壁部そして炉蓋の内筒壁部及び天板部とで加熱空間を形成しており、該炉蓋は、加熱処理されるべき原料の供給管が環状板部に接続されていると共に、加熱ガス供給装置と燃料供給装置の少なくとも一方が天板部に設けられており、炉床の落下孔の内周縁から筒状をなして垂下し内部に焼成空間を形成する焼成筒部とその下方で冷却空間を形成する冷却筒部が設けられている竪型炉のレンガ支持構造において、
接続部は、内部に冷却媒体の流通のための環状空間が形成された金属製のジャケットと、該ジャケットに対して上記軸線方向で炉内側に位置し、周方向の複数位置で、上記ジャケットの底部から垂下して設けられた金属製の吊下部材と、該吊下部材で支持される耐火レンガ部とを有し、該吊下部材は上記周方向での該吊下部材の幅が上下に向け広がる楔状をなすテーパ支持面が形成され、上記耐火レンガ部が周方向で隣接する二つの吊下部材のテーパ支持面で支持されており、上記耐火レンガ部が上側レンガ部と該上側レンガ部よりも耐火性の高い下側レンガ部とから形成されていて、上記上側レンガ部は複数のブロックがアーチ状をなすように上記下側レンガ部の上で積層されており、さらに、吊下部材は内部に冷却媒体流路が形成されていて冷却媒体が流通することを特徴とする竪型炉のレンガ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−102955(P2012−102955A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253341(P2010−253341)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(390034212)株式会社チサキ (20)
【Fターム(参考)】