説明

端子およびこれを用いたコネクタ

【課題】奥行きが浅く、床面積が小さい省スペース型の端子およびこれを用いたコネクタの提供。
【解決手段】基材に圧入固定する圧入用固定部31と、前記圧入用固定部31に交差するように上方側に突設した支持部32と、前記支持部32の先端に設けた分岐部33から蛇行させながら下方側に延在して蛇行したスリット35aを形成する2本の延在部34a,34bと、前記延在部34a,34bの自由端を一体化した先端部に前記基材の接点孔から出し入れ可能に突出する可動接点部36と、からなる端子30である。そして、前記支持部32を、変位する前記延在部34bの先端部に当接しないように外側に湾曲させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は端子、例えば、ハウジングに組み込まれてコネクタを形成するだけでなく、基板に直接実装して使用できる端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子としては、例えば、基幹部を支持辺部に連接したバネ辺部を介して端子接点部を一体に形成したICソケット用コンタクトにおいて、前記バネ辺部は、連結部から前記端子接点部へ延びる上片アームと前記基幹部へ延びる下片アームとにより構成される横向き略U形を呈し、その上片アームが、それぞれ互いに離間し並行状に延在する第1バネ部、第2バネ部により構成され、前記下片アームが、それぞれ互いに離間し並行状に延在する第3バネ部、第4バネ部により構成され、さらに、前記バネ辺部が、前記連結部側から基幹部側へ向けて下る傾斜状であることを特徴とするICソケット用コンタクトがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のICソケット用コンタクトでは、例えば、特許文献1の図4に示すように、直線状の上片アーム2および下片アーム3を連結部8で接続している。このため、奥行きが長く、床面積が大きいので、大きな設置スペースを必要とする問題点がある。
本発明に係る端子は、奥行きが浅く、床面積が小さい省スペース型の端子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る端子は、前記課題を解決するために、基材に圧入固定する圧入用固定部と、前記圧入用固定部に交差するように上方側に突設した支持部と、前記支持部の先端に設けた分岐部から蛇行させながら下方側に延在して少なくとも1本の蛇行したスリットを形成する複数本の延在部と、前記延在部の自由端を一体化した先端部に前記基材の接点孔から出し入れ可能に突出する可動接点部と、からなる端子であって、前記支持部を、変位する前記延在部の先端部に当接しないように外側に湾曲させた構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下方側に延在した延在部の先端部が側方に変位しても、延在部の先端部が当接しないように前記支持部を外側に湾曲させてある。このため、延在部の先端部と支持部の基部との間の水平距離を小さくでき、奥行きが浅く、床面積の小さい省スペース型の端子が得られる。
【0007】
本発明の実施形態としては、スリットの巾寸法が、動作時に隣り合う延在部が相互に接触しない巾寸法であってもよい。
本実施形態によれば、延在部が相互に当接することがないので、不快な当接音が生じないとともに、円滑な動作を行う端子が得られる。
【0008】
本発明の別の実施形態としては、複数本の延在部の巾寸法は異なってもいてもよい。
本実施形態によれば、必要に応じてスリットの巾寸法を適宜、選択することにより、応力集中を防止でき、耐久性が向上するとともに、延在部相互の当接を防止でき、不快な当接音が発生せず、円滑な動作を行う端子が得られる。
【0009】
本発明の異なる実施形態としては、延在部の大きく湾曲する部分の巾寸法を漸次、大きくしてもよい。
本実施形態によれば、過度の応力集中を防止でき、耐久性が向上し、寿命がより一層長い端子が得られる。
【0010】
本発明の別の実施形態としては、可動接点部の周囲に、基材の位置規制用受け部に当接する位置規制用当接部を設けた構成としてもよい。
本実施形態によれば、端子の延在部を所定の位置に正確に位置決めできるので、動作特性が向上する。
【0011】
本願の発明に係るコネクタとしては、前述に記載された端子の圧入用固定部を、基材であるハウジングの圧入孔に圧入して固定するとともに、前記ハウジングに設けた接点孔から端子の可動接点部が出し入れ可能に突出する構成としてある。
本発明によれば、接触信頼性が高く、寿命の長いコネクタが得られる。
【0012】
本発明の実施形態としては、ハウジングの接点孔の開口縁部に設けた位置規制用受け部に、端子の可動接点部の周囲に設けた位置規制用当接部を当接させて位置決めする構成としてもよい。
本実施形態によれば、端子の可動接点部を高い位置決め精度で位置決めできるので、動作特性にバラツキのないコネクタが得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aおよび1Bは本願発明の実施形態に係る端子を組み込んだコネクタを示す斜視図および平面図である。
【図2】図2A,2Bは図1で図示した実施形態に係る端子を組み込んだコネクタの断面斜視図および端子単体の斜視図である。
【図3】図3A,3Bは図1で示した実施形態に係る端子の動作前後を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る端子の実施形態を図1ないし図3の添付図面に従って説明する。
本実施形態は、図1ないし図3に示すように、樹脂成形された断面縦長のハウジング10の下面両側縁部に固定金具20を圧入するとともに、前記固定金具20,20の間に接続端子30を所定のピッチで圧入したコネクタに適用した場合である。
【0015】
前記ハウジング10は、図1に示すように、その底面の両側縁部に配置した第1収納スペース11に固定金具20を下方側から圧入してあるとともに、前記第1収納スペース11の間に背面側から接続端子30を圧入できる第2収納スペース13を設けてある(図2)。さらに、前記ハウジング10は、その正面側に、前記第2収納スペース13に連通し、かつ、後述する可動接点部36を出し入れできる接点孔14を設けてあるとともに、前記第2収納スペース13に連通する圧入孔15を設けてある。ついで、前記接点孔14の上方縁部に位置規制用受け部17を形成してある。
【0016】
固定金具20は、図1に示すように、薄板をプレス加工で打ち抜いて形成した略L字形状のプレス成形品であり、その垂直部21を前記第1収納スペース11に下方側から圧入することにより、抜け止めされる。そして、前記固定金具20の固定用下端部22が前記ハウジング10の底面から接続固定できるように露出する(図3)。また、前記ハウジング10は、その底面にプリント基板(図示せず)の貫通孔に挿入できる位置決め金具23を圧入してある。
【0017】
接続端子30は、図2に示すように、圧入用固定部31から交差するように上方に突出し、かつ、外側に湾曲する支持部32の先端に分岐部33を設けてある。また、前記圧入用固定部31には、その一端部の上面に係止爪31aを突設してある一方、その他端部の下面に接続部31bを設けることにより、圧入用切り欠き部31cを形成してある。さらに、前記分岐部33から蛇行する第1,第2延在部34a,34bを延在することにより、第1スリット35aを形成してある。そして、前記第1,第2延在部34a,34bの先端部を一体化して形成した自由端部に可動接点部36を設けてある。また、本実施形態の接続端子30は、第1延在部34aのうち、前記可動接点部36の近傍に設けた位置規制用当接部38をハウジング10の位置規制用受け部17に当接させて位置規制する構造となっている。
なお、本実施形態に係る第1スリット35aの巾寸法は、接続端子30の可動接点部36を動作させても第1,第2延在部34a,34bが相互に接触しない隙間となっている。このため、所定の動作時には接触することがなく、不快な接触音が生じないという利点がある。
【0018】
そして、図2に示すように、前記ハウジング10の第2収納スペース13に背面側から前記接続端子30を挿入し、前記圧入用固定部31を圧入孔15に圧入し、係止爪31aを圧入孔15の内面に係止するとともに、切り欠き部31cをハウジング10の縁部に係合することにより、抜け止めできる。そして、接続端子30の位置規制用当接部38がハウジング10の位置規制用受け部17に当接して位置規制される。
【0019】
図示しないプリント基板に実装したコネクタの可動接点部36を押し込むと、第1,第2延在部34a,34bが弾性変形するとともに、支持部32が弾性変形する。このとき、所定の押し込み量の範囲内であれば、第1スリット35aの巾寸法を大きくしてあるので、第1,第2延在部34a,34bが相互に接触することがなく、摩擦音を発生させることなく、円滑な動作が可能なる。
【0020】
なお、可動接点部36と圧入用固定部31との間に支持部32および第1,第2延在部34a,34bが配置されているので、バネ長が長く、応力集中が生じにくい。このため、接触信頼性が高く、寿命の長いコネクタが得られるという利点がある。
また、本実施形態によれば、可動接点部36が内側に押し込まれても、支持部32が外側に湾曲しているので、第2延在部34bの先端部が支持部32に当接することがない。このため、奥行きが浅く、床面積の小さい省スペース型のコネクタが得られるという利点がある。
【0021】
本実施形態では、2本の第1,第2延在部34a,34bを延在することにより、第1スリット35aを形成する場合について説明したが、3本の延在部を蛇行するように延在して2本のスリットを形成してもよい。この場合、延在部の一端部を同一直線上に配置してもよく、また、支持部の先端から第1分岐部と第1延在部を延在するとともに、前記第1分岐部から第2延在部と第3延在部とを延在してもよい。
また、前記可動接点部の周囲に位置規制用突起を突設し、接点孔の開口縁部に設けた位置規制用受け部に当接させて位置決めするようにしてもよい。
【0022】
さらに、前述の実施形態では、2枚1組の接続端子と1枚の接続端子とを組み合わせる場合について説明したが、全て1枚の接続端子だけで構成してもよく、また、全て2枚1組の接続端子で構成してもよい。さらに、3枚1組で接続端子を組み込んでも良く、必要に応じて接続端子の数を選択できることは勿論である。
そして、前記第1延在部と第2延在部とは同一巾寸法である必要はなく、例えば、外側に位置する延在部のうち、大きく湾曲する部分の巾寸法を漸次、大きくすることにより、過度の応力集中を防止し、耐久性を高めるようにしてもよい。
ついで、前記実施形態では、基材であるハウジングに接続端子を組み込む場合について説明したが、プリント基板を基材とし、その側端面に本願の接続端子を直接組み込んでもよい。これによれば、ハウジグおよび固定金具を必要とせず、結果として装置全体をより一層小型化できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る端子は、前述の形状に限らず、蛇行する複数本の延在部を有するものであれば、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0024】
10:ベース
13:第2収納スペース
14:接点孔
17:位置規制用受け部
20:固定金具
23:位置決め金具
30:接続端子
31:圧入用固定部
32:支持部
33:分岐部
34a,34b:第1,第2延在部
35a:第1スリット
36:可動接点部
38:位置規制用当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に圧入固定する圧入用固定部と、
前記圧入用固定部に交差するように上方側に突設した支持部と、
前記支持部の先端に設けた分岐部から蛇行させながら下方側に延在して少なくとも1本の蛇行したスリットを形成する複数本の延在部と、
前記延在部の自由端を一体化した先端部に前記基材の接点孔から出し入れ可能に突出する可動接点部と、からなる端子であって、
前記支持部を、変位する前記延在部の先端部に当接しないように外側に湾曲させたことを特徴とする端子。
【請求項2】
スリットの巾寸法が、動作時に隣り合う延在部が相互に接触しない巾寸法であることを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項3】
複数本の延在部の巾寸法が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の端子。
【請求項4】
延在部の大きく湾曲する部分の巾寸法を漸次、大きくしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
可動接点部の周囲に、基材の位置規制用受け部に当接する位置規制用当接部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の端子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の端子の圧入用固定部を、基材であるハウジングの圧入孔に圧入して固定するとともに、前記ハウジングに設けた接点孔から端子の可動接点部が出し入れ可能に突出することを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
ハウジングの接点孔の開口縁部に設けた位置規制用受け部に、端子の可動接点部の周囲に設けた位置規制用当接部を当接させて位置決めすることを特徴する請求項6に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−99397(P2012−99397A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247556(P2010−247556)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【特許番号】特許第4811530号(P4811530)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】