説明

端子の接続構造及び接続方法

【課題】樹脂によるモールド表面とほぼ同一面に接点の表面が現れるよう構成したとしても樹脂を接点に回り込みづらくすることができ、接点と端子を確実に接合できる接続構造及び接続方法を提供する。
【解決手段】金属板1には、離れる方向に向かって拡径する傾斜面を有する円錐台形状の円錐台部7aが設けられ、この円錐台部7aの先端平面部分には、円筒形状の突起7bが設けられることにより、接点7が構成されている。この接点7の周囲には、突起7bの先端平面部分と略同一平面となるよう樹脂2がモールドされており、アース端子9がプロジェクション溶接によって接点7に接合されている。このため、型を複雑化させずに樹脂によりモールドした接点7にアース端子9を確実に接合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂によってモールドされる接点に端子を溶接して接合する接続構造及び接続方法に関し、特に、自動車に設置されるコントロールユニット等のモールド部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板を基板として、その表面に絶縁層である樹脂モールド等を施し、更に絶縁層の表面から金属板の一部であるアース部が現れており、このアース部にアース回路を接続した回路基板が考えられている。
【0003】
特許文献1には、金属板に絶縁層を予めモールドし、絶縁層がモールドされた金属板の一部をプレスによって突出させることで絶縁層の一部を破断させて金属板の一部がアース部として絶縁層から現れるものが開示されている。また、絶縁層から現れたアース部に半田によってアース回路を接続することにより金属板とアース回路とを電気的に接続することができる。
【0004】
【特許文献1】実公平6−17331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、絶縁層がモールドされた金属板の一部をプレスによって突出させているので破断した絶縁層がプレスによって突出したアース部の先端に残ってしまう。このため、半田や溶接によりアース回路を接続する際に絶縁層である樹脂が接合の邪魔となり、確実な接合ができないといった問題があった。
【0006】
ここで、アース部の先端に絶縁層が残らないよう、金属板の一部を突出させた後に絶縁層をモールドすることも考えられるが、絶縁層より高い位置にアース部を突出させなければ、絶縁層としての樹脂が射出される際に樹脂がある程度の速さで流れるため、樹脂がアース部に回り込んでしまう。また、アース部を絶縁層より高い位置に突出させた場合には、型に金属板の突出部が挿入される凹部を形成する必要がある。このため、型が複雑化、かつ、精密なものが必要となり高価なものとなってしまうといった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、樹脂によるモールド表面とほぼ同一面に接点の表面が現れるよう構成したとしても樹脂を接点に回り込みづらくすることができ、接点と端子を確実に接合できる接続構造及び接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、接点の先端に突起を有し、該突起の先端のみがモールド表面から現れるようにしたことを特徴としている。この発明によれば、樹脂を流し込む際に接点における突起の周囲部にて樹脂の流速を減少させることができる。このため、突起の先端に樹脂が回り込むことを極力防止することができる。
【0009】
請求項2の発明は、モールド表面から現れる接点の表面の周囲にモールド成形時の樹脂の流速を低減する流速低減手段を設けたことを特徴としている。この発明によれば、請求項1と同様に樹脂を流し込む際に樹脂の流速を減少させることができるので接点に樹脂が回り込むことを極力防止することができる。
【0010】
請求項3の発明は、モールド表面から現れる接点の表面の周囲に、その外周部分よりモールド部分が薄肉となる部分を設けたことを特徴としている。この発明によれば、請求項1及び請求項2同様に樹脂を流し込む際に樹脂の流速を減少させることができるので接点に樹脂が回り込むことを極力防止することができる。
【0011】
請求項4の発明は、接点にアンダーカット部を形成したことを特徴としている。この発明によれば、接点を利用してモールドされた樹脂が剥離してしまうことを防止できる。
【0012】
請求項5の発明は、金属板に一側面方向から凸形状の接点を押し出し成形する工程と、該凸形状部分の先端を他側面方向から押し出すことにより、凸形状部分の先端に更に突起を形成する工程と、該突起の先端表面を残して、凸形状部分の周囲に樹脂を射出して金属板にモールド部を形成する工程と、突起の先端表面に端子を溶接する工程によって接続することを特徴としている。この発明によれば、凸形状部分の先端を凸形状部分の押し出し方向と逆の方向から押し出すことにより、凸形状部分の先端に形成される突起の縁部分を直角に近づけることができる。このため、モールド表面とほぼ同一面に接点の表面が現れるよう構成したとしても樹脂を流し込む際に樹脂の流速を減少させることができることに加え、突起の縁部分によって接点に樹脂が回り込むことを極力防止することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1の発明をコントロールユニットに適用している。コントロールユニットにおいて請求項1と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、型を複雑化させずに樹脂によりモールドした接点に端子を確実に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、自動車用コントロールユニットの配線板の正面図であり、図2は、その縦断面図、図3は、その裏面図である。このコントロールユニットは、自動車の自動変速機を油圧によって制御する機構のために用いられるものである。
【0017】
コントロールユニットの配線板8は、プレス加工によって成形されたアルミ材等の熱伝導性の高い材料からなる金属板1と、該金属板1の表面にアウトサートモールドされた樹脂部2にて構成されており、樹脂部2は、金属板1を両側から挟み込むように一体に形成されている。
【0018】
また、コントロールユニットの配線板8上には、図3に示すように自動変速機の油圧回路における配管の油圧を検出して変速状態を検出するための5つ油圧スイッチ3が金属板1の裏面に設けられており、この油圧スイッチ3にはアースのための端子と検出されたものを外部に出力するための端子が夫々設けられており、アースの端子は後述するように金属板1の裏面に接続されている。
【0019】
次に油圧スイッチ3におけるアース端子9の接続構造の詳細を正面図である図4及び断面拡大図である図5を基に説明する。図4に示すように略円筒形状の油圧スイッチ3の本体部10からは、2つの金属板からなるアース端子9が周方向外側に向かって延びている。また、このアース端子9は、図5に示すように本体部10の軸方向略中央位置から段付き状に本体部10の載置面に接触できるよう折曲されている。
【0020】
金属板1には、離れる方向に向かって拡径する傾斜面を有する円錐台形状の円錐台部
7aが設けられ、この円錐台部7aの先端平面部分には、円筒形状の突起7bが設けられることにより、接点7が構成されている。
【0021】
この突起7bの先端平面部分には油圧スイッチ3のアース端子9がプロジェクション溶接によって接合される。このように金属板1は、アースを取るための電気的接点の役割も兼ね備えている。
【0022】
尚、接点7の周囲には、突起7bの先端平面部分と略同一平面となるよう樹脂部2がモールドされており、油圧スイッチ3の本体部10は、この樹脂部2の表面に形成された固定部に圧入されることで固定され、更にアース端子9がプロジェクション溶接によって接点7に接合される。また、接点7における円錐台部7aがアンダーカット形状となっているため、樹脂部2をモールドすることにより、金属板1から樹脂部2が離脱することを防止することができる。
【0023】
次に金属板1に接点7を成形する手順について、図6を基に説明する。まず、工程1に示すように、金属板1上に先端に円筒状の凹部を有するダイ5を載置し、その後、ダイ5の反対側の面から、円筒上の成形パンチ4で金属板1をダイ5の凹部内に押し出し、円筒形状の凸形状部分11を成形する。
【0024】
尚、凹部の内径とダイ5の外径は、ほぼ同一寸法、もしくは凹部の内径よりダイ5の外径を小さくすると凸形状部分11が成形しやすいが、押し出し成形を行っているため、この凸形状部分11の先端縁部分は略直角とはならず、若干、曲面状に縁取りされた形状となってしまう。よって、このまま、樹脂部2によってモールドしてしまうと樹脂部2が凸形状部分11の先端までまわり込んでしまいアース端子9を確実に溶接できなくなってしまうといった問題が生じてしまう。
【0025】
ここで図6における工程2に示すよう、凸形状部分11の先端側から金属板1に向かって、つまり、凸形状部分11の押し出し方向とは逆方向から成形パンチ6によって凸形状部分11の先端を押し出す。
【0026】
尚、成形パンチ6の先端には、深さが浅く形成された円筒状の凹部が形成されると共に、先端の外径は、凸形状部分11の外径よりも十分に大きく形成されている。このため、凸形状部分11の先端には、高さが低い円筒形状の突起7bが形成されると共に、凸形状部分11の材料が横方向に塑性流動して、円錐台形状のアンダーカット部である円錐台部7aが形成される。このように突起7bは、突出方向の裏側から押し出されるのではなく突出方向から成形されるので先端縁部分が略直角形状となる。
【0027】
次に金属板1をモールド金型に挿入し、突起7bの周囲に樹脂部2を射出して突起7bの先端平面と略同一となる位置に表面がくるように樹脂部2を流し込む。ここで突起7bの先端縁部分が略直角形状となっていることに加え、円錐台部7aの先端とモールド金型との間の隙間によって樹脂部2の流速が低減されるため、樹脂部2が突起7bの先端平面にまわり込むことを防止することができる。このように流速低減手段は、円錐台部7aの先端とモールド金型の間の隙間によって構成される。
【0028】
このように接点7の周囲に樹脂部2をモールドすると、円錐台部7aの先端と接点7の先端平面が現れるモールド表面との間の部分は、その外周部分よりモールド部分が薄肉となるように構成されることとなる。
【0029】
次に本実施例の作用効果を以下に示す。
【0030】
本実施例は、円錐台部7aの先端とモールド金型との間の隙間が他の部分に対して狭くなっていることから樹脂部2を射出する際、絞りとして作用して流速を低減させることができる。このため、突起7bの先端へのまわり込みを極力防止することができる。
【0031】
また、本実施例は、円錐台部7aがアンダーカット形状となっているため、接点7を樹脂部2の離脱防止機構として用いることができる。このため、樹脂部2のはがれを防止することができる。
【0032】
また、本実施例は、突起7bを突出方向から押し出しているので先端縁部が直角に近づく。このため、突起7bの先端へのまわり込みを更に防止することができる。
【0033】
また、本実施例は、金属板1に接点7を押し出し成形によって形成しているので樹脂部2を射出したとしても金属板1の裏側にまわり込んでしまうことがなく、また、安価に製造することができる。
【0034】
また、本実施例は、突起7bの先端平面がモールド表面とほぼ同一面に現れるようにしたのでモールド金型を簡単な形状とすることができ、この点からも安価に製造することができる。
【0035】
以上、本実施例は、自動車用コントロールユニットの配線板として説明したが、電気接点を構成するものであれば他の部品にも適用することができる。
【0036】
また、本実施例では、接点7における円錐台部7aと突起7bを押し出しによって成形するようにしたが切削によって成形することも可能である。このように切削によって突起7bを成形すると突起7bの先端縁部分をより直角に近づけることができる。
【0037】
また、本実施例では、接点7における円錐台部7aを円錐台形状としたが、円錐台形状としなくともアンダーカットしていれば樹脂部2の剥離を十分防止することができる。
【0038】
また、本実施例では、流速低減手段を円錐台部7aの先端とモールド金型の間の隙間として構成したが、射出される樹脂部2の流速を低減できればよいので樹脂部2の流れ方向に対して流れの抵抗となる抵抗部を形成して流速低減手段とすることもできる。
【0039】
また、本実施例では、接点7における突起7bを円錐台部7aの先端平面から円筒形状に突出させたが円錐台部7aの縁部から突起7bの先端までをテーパ状もしくは曲面状に連続させることも可能である。
【0040】
また、本実施例では、接点7と端子9をプロジェクション溶接にて接合する例を説明したが、半田等によって接合することも可能である。
【0041】
次に、上記の各実施形態から把握し得る請求項に記載以外の発明について、以下にその作用効果と共に記載する。
【0042】
(1)前記接点は、離れる方向に向かって拡径する傾斜面を有する円錐台形状の円錐台部と、該円錐台部の先端平面部分に形成された円筒形状の突起とから構成されていることを特徴とする請求項4に記載の端子の接続構造。以上のような構成によれば、円錐台形状の傾斜部分がアンダーカットとなるので樹脂を受ける面積を拡大させることができ、確実に抜け止めを行うことができる。
【0043】
(2)前記接点は、段差状に大径部と前記突起としての小径部とから構成され、該小径部の先端縁部は、前記先端縁部よりも直角に近くなっていることを特徴とする請求項1に記載の端子の接続構造。以上のような構成によれば、射出する際に小径部の先端縁部に樹脂がまわり込むのを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】自動車用コントロールユニットの配線板の正面図である。
【図2】自動車用コントロールユニットの配線板の縦断面図である。
【図3】自動車用コントロールユニットの配線板の裏面図である。
【図4】アース端子の接続構造の正面図である。
【図5】アース端子の接続構造の断面図である。
【図6】金属板に接点を成形する工程図である。
【符号の説明】
【0045】
1…金属板、2…樹脂部、3…油圧スイッチ、4…成形パンチ、5…ダイ、6…成形パンチ、7…接点、8…配線板、9…端子、10…油圧スイッチ本体部、11…凸形状部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂によるモールド表面とほぼ同一面に接点の表面が現れるよう構成し、該接点に端子が溶接される端子の接続構造であって、前記接点は先端に突起を有し、該突起の先端のみがモールド表面から現れるようにしたことを特徴とする端子の接続構造。
【請求項2】
樹脂によるモールド表面とほぼ同一面に接点の表面が現れるよう構成し、該接点に端子が溶接される端子の接続構造であって、前記モールド表面から現れる前記接点の表面の周囲にはモールド成形時の樹脂の流速を低減する流速低減手段が設けられていることを特徴とする端子の接続構造。
【請求項3】
樹脂によるモールド表面とほぼ同一面に接点の表面が現れるよう構成し、該接点に端子が溶接される端子の接続構造であって、前記モールド表面から現れる前記接点の表面の周囲には、その外周部分よりモールド部分が薄肉となる部分を設けたことを特徴とする端子の接続構造。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の前記接点にはアンダーカット部が形成されていることを特徴とする端子の接続構造。
【請求項5】
金属板に一側面方向から凸形状の接点を押し出し成形する工程と、該凸形状部分の先端を他側面方向から押し出すことにより、凸形状部分の先端に更に突起を形成する工程と、該突起の先端表面を残して、凸形状部分の周囲に樹脂を射出して前記金属板にモールド部を形成する工程と、前記突起の先端表面に端子を溶接する工程とからなる端子の接続方法。
【請求項6】
先端に突起を有する接点を一体に有する金属板に樹脂をアウトサートモールドして、モールド表面とほぼ同一面に前記突起の先端表面が現れるよう構成し、前記突起の先端表面に端子を溶接してアースを取るための電気接点とすることを特徴とするコントロールユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−157512(P2007−157512A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351398(P2005−351398)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】