説明

端子カバー

【課題】複数列の端子部に対して、少ない工数で実装できるとともに、確実に固定することができる端子カバーを実現する。
【解決手段】機器の端子部をカバーする端子カバーであって、特に列ごとに高さが異なる複数列の端子部を有する機器の端子カバーに関するものである。
複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部をカバーする第1のカバーと、複数列の端子部のうち、高い方の位置にある端子部をカバーする第2のカバーと、第1のカバーと第2のカバーの間にあり、それぞれと折り曲げ可能に連結するカバー連結部とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の端子部を被覆(カバー)する端子カバーであって、特に列ごとに高さが異なる複数列の端子部を有する機器の端子カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用計器等の機器の端子部には、誤接触による感電防止や、誤動作等の防止のため、端子カバーが設けられている。
【0003】
図6は従来の端子カバーの使用例を示した図である。図6(a)は従来の端子台の正面図、図6(b)は従来の端子台の側面図である。
端子台1の各端子間隔壁に切り欠きを設け、コの字型の端子カバー2の弾性を利用し、端子カバー2を変形させ、コの字型の両端を端子台1の切り欠きに引っ掛けることにより固定している。
また、端子カバーを確実に固定するため、板状の端子カバーの両端を端子台等にねじで固定しているものもある。
【0004】
温度調節計や温度指示計等のパネル計器の小型化の阻害とならない端子カバーの構造を示したものとして、例えば特許文献1に記載されたものがあった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−304124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来例では次の問題点があった。
図6のような端子カバーの場合、不意な接触により端子カバーが外れる可能性があった。
また、装置内に複数列の端子台がある場合、それぞれに端子カバーを設ける必要があり、端子カバーの設置に手間が掛かっていた。
さらに、装置内に複数列の端子台がある場合、その端子台に接続した配線を引き出すために、端子台と端子カバーの間に隙間が生じ、不意に装置の通電部分に接触する可能性があった。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、複数列の端子部に対して、少ない工数で実装できるとともに、確実に固定することができる端子カバーを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を達成するために、本発明は次のとおりの構成になっている。
(1)列ごとに高さが異なる複数列の端子部を有する機器の端子カバーであって、
前記複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部をカバーする第1のカバーと、
前記複数列の端子部のうち、高い方の位置にある端子部をカバーする第2のカバーと、
前記第1のカバーと第2のカバーの間にあり、それぞれと折り曲げ可能に連結するカバー連結部と、
を有することを特徴とする端子カバー。
【0009】
(2)前記第1のカバーは、前記複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部を該端子部の上から同時にカバーするとともに、前記高い方の位置にある端子部をカバーしないように避ける切り抜き部を有することを特徴とする(1)記載の端子カバー。
【0010】
(3)前記第1のカバーは、前記複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部を該端子部の横方向からカバーするリブを有することを特徴とする(1)又は(2)記載の端子カバー。
【0011】
(4)前記第1のカバーは、前記機器にねじにより固定されることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の端子カバー。
【0012】
(5)前記第2のカバーは、前記カバー連結部と前記第1のカバーの間及び前記カバー連結部と第2のカバーの間が折り曲がることにより、前記第1のカバーに重なり、前記複数の端子部のうち、高い方の位置にある端子部を該端子部の上から同時にカバーすることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の端子カバー。
【0013】
(6)前記第2のカバーは、前記複数列の端子部のうち、高い方の位置にある端子部を該端子部の横方向からカバーするリブを有することを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の端子カバー。
【0014】
(7)前記第2のカバーは、肉厚の円筒であるボスを有し、第2のカバーが前記第1のカバーに重なったときに前記ボスで第1のカバーを押さえるとともに、前記機器にねじにより固定されることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の端子カバー。
【0015】
(8)前記第1のカバー、第2のカバー及びカバー連結部は、樹脂による一体成型で、前記カバー連結部と前記第1及び第2のカバーとの間は樹脂を薄肉にすることで折り曲げ可能であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の端子カバー。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば次のような効果がある。
列ごとに高さが異なる複数列の端子部に対して、低い方の位置にある端子部と高い方の位置にある端子部をそれぞれの位置ごとに同時にカバーし、ねじ固定をするので、端子列ごとに端子カバーを実装する必要がない。
よって、複数列の端子部に対して、端子カバーを少ない工数で実装できるとともに、確実に固定することができる。
【0017】
また、端子カバーの側面にリブを設けることにより、側面から端子の通電部への不意の接触を防ぐことができる。
さらに、一体成形することにより、取り扱いのし易い端子カバーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成図である。図1(a)は左からの斜視図、図1(b)は右からの斜視図である。
端子カバー100は、第1のカバー110、第2のカバー120及び、カバー連結部130からなる。
第1のカバー110は、複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部をカバーする。第2のカバー120は、複数列の端子部のうち、高い方の位置にある端子部をカバーする。カバー連結部130は、第1のカバーと第2のカバーの間にあり、それぞれと折り曲げ可能に連結している。
【0019】
具体的に、端子カバー100は、樹脂を型に流して一体的に成型し、第1のカバー110とカバー連結部130の間及び、第2のカバー120とカバー連結部130の間の樹脂を薄肉にすることで、それぞれが折り曲げ可能に構成されている。
端子カバー100を一体成型することにより、安価に作成することができるとともに、第1のカバー110、第2のカバー120、カバー連結部130が一体となっているので部品管理や、実装作業等の取り扱いがし易くなる。
樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂等が用いられる。
別の例としては、第1のカバー110、第2のカバー120、カバー連結部130をそれぞれ別部品とし、第1のカバー110とカバー連結部130の間及び、第2のカバー120とカバー連結部130の間をヒンジで結合するような構成にしてもよい。
【0020】
図2は本発明の端子カバーの取付説明図である。
温度調節計や電力モニタ等の機器200を取り付け盤300に取り付けた状態を機器200の裏側から表している。
機器200には、列ごとに高さが異なる複数の端子列210a,210b,220a,220b,230がある。
第1のカバー110には、機器200の複数ある端子列のうち、高い位置にある端子列210b,220a,220bをカバーしないように避けるための切り抜き部がある。
【0021】
図3は複数列の端子部を有する機器の構成例を示した図である。
機器200を電力モニタであるとした場合の端子構成例を説明する。
端子列210a,210bは電力の測定用端子でM4サイズのねじを使用している。端子列210aと210bはそれぞれの端子へ配線がやりやすいように段差になっており、端子列210bの方が高い位置になっている。
端子列220a,220bは4〜20mA出力、通信等の信号線を接続する端子でM3サイズのねじを使用している。端子列220aと220bはそれぞれの端子へ配線がやりやすいように段差になっており、端子列220bの方が高い位置になっている。端子列220a,220bは端子列210a,210bよりサイズが小さいねじ端子であるので、その段差も端子列210aと210bの段差よりも小さくなっている。
端子列230は機器200の駆動用電源を接続する端子でM4サイズのねじを使用している。端子列230の高さは、端子列210aと同じ高さに位置している。
このように、機器200には端子のサイズや高さが違う端子列が複数存在している。
【0022】
図4は本発明の端子カバーの取付説明図である。
まず、最下段の端子列210a,230に配線を行い、端子カバー100の第1のカバー110を端子列210a,230を覆うように機器200の裏面に嵌め込み、第1のカバー110の貫通穴を通し、ねじを機器200本体のねじ穴に締結し、第1のカバー110を固定する。
このように、最下段の端子列210a,230のカバーを一度にすることでき、端子カバーを少ない工数で実装することができる。
また、第1のカバー110には、リブ111,112があるので、端子列210a,230の横方向から指等が触れることを防ぐことができるとともに、第1のカバー110はねじで固定されているので、不意な接触により端子カバー100が外れることもなく安全である。
【0023】
図5は本発明の端子カバーの取付説明図である。
次に、残りの端子列210b,220a,220bに配線を行う。端子カバー100を折り曲げ、第2のカバー120が端子列210b,220a,220bを覆うようにする。ボス123の貫通穴及び第1のカバー110に設けた貫通穴を通して、ねじを機器200本体のねじ穴に締結し、第2のカバー120を固定する。これにより、端子カバー100全体が確実に固定される。
このように、端子列210b,220a,220bのカバーを一度にすることができ、端子カバーを少ない工数で実装することができる。
また、第2のカバー120には、リブ121,122があるので、端子列210b,220a,220bの横方向からの指等が触れることを防ぐことができるとともに、第2のカバー120は、ねじで固定されているので、不意な接触により端子カバーが外れることもなく安全である。
【0024】
以上のように、列ごとに高さが異なる複数列の端子部に対して、低い方の位置にある端子部と高い方の位置にある端子部をそれぞれの位置ごとに同時にカバーし、ねじ固定をするので、端子列ごとに端子カバーを実装する必要がない。
よって、複数列の端子部に対して、端子カバーを必要最小限の工数で確実に実装することができる。
【0025】
この例では、第1のカバー110の切り抜き部分は図2に示すように、切り抜き部が穴状になっており、切り抜き部の下方に第1のカバー110が残っている状態であるが、切抜き部の下方にある第1のカバー110の該当部分が無くなるように構成にしてもよい。
このようにすることで、端子列の各配線はそのままに、図4でねじを外した状態から端子カバーを図4の上方向に引き抜くことができ、逆に、全ての配線後に端子カバーを差し込むことができるので、機器200への配線の変更等の作業効率も改善することができる。
【0026】
また、この例では、列ごとに高さが異なる複数列の端子部に対して第1のカバー110、第2のカバー120、カバー連結部130により、はじめに低い方の位置の端子部をカバーし、次に高い方の位置の端子部をカバーするというように2段階に端子部をカバーするものであるが、カバー及びカバー連結部の数を適宜変更することより、3段階、4段階というように端子部をカバーする段数を変更することができる。
【0027】
また、第1の端子カバー110のねじ固定位置のうち1点を、カバー連結部130に付随させることにより、最下段の端子配線時にも端子カバーを機器200に固定することができ、再配線時のねじ締結作業の削減や端子カバーの脱落防止等、作業効率を改善することができる。端子カバーに固定ねじを一体化することにより、さらに作業効率は改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の端子カバーの取付説明図である。
【図3】複数列の端子部を有する機器の構成例を示した図である。
【図4】本発明の端子カバーの取付説明図である。
【図5】本発明の端子カバーの取付説明図である。
【図6】従来の端子カバーの使用例を示した図である。
【符号の説明】
【0029】
100 端子カバー
110 第1のカバー
111,112,121,122 リブ
120 第2のカバー
123 ボス
130 カバー連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列ごとに高さが異なる複数列の端子部を有する機器の端子カバーであって、
前記複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部をカバーする第1のカバーと、
前記複数列の端子部のうち、高い方の位置にある端子部をカバーする第2のカバーと、
前記第1のカバーと第2のカバーの間にあり、それぞれと折り曲げ可能に連結するカバー連結部と、
を有することを特徴とする端子カバー。
【請求項2】
前記第1のカバーは、前記複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部を該端子部の上から同時にカバーするとともに、前記高い方の位置にある端子部をカバーしないように避ける切り抜き部を有することを特徴とする請求項1記載の端子カバー。
【請求項3】
前記第1のカバーは、前記複数列の端子部のうち、低い方の位置にある端子部を該端子部の横方向からカバーするリブを有することを特徴とする請求項1又は2記載の端子カバー。
【請求項4】
前記第1のカバーは、前記機器にねじにより固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の端子カバー。
【請求項5】
前記第2のカバーは、前記カバー連結部と前記第1のカバーの間及び前記カバー連結部と第2のカバーの間が折り曲がることにより、前記第1のカバーに重なり、前記複数の端子部のうち、高い方の位置にある端子部を該端子部の上から同時にカバーすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の端子カバー。
【請求項6】
前記第2のカバーは、前記複数列の端子部のうち、高い方の位置にある端子部を該端子部の横方向からカバーするリブを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の端子カバー。
【請求項7】
前記第2のカバーは、肉厚の円筒であるボスを有し、第2のカバーが前記第1のカバーに重なったときに前記ボスで第1のカバーを押さえるとともに、前記機器にねじにより固定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の端子カバー。
【請求項8】
前記第1のカバー、第2のカバー及びカバー連結部は、樹脂による一体成型で、前記カバー連結部と前記第1及び第2のカバーとの間は樹脂を薄肉にすることで折り曲げ可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の端子カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−134252(P2007−134252A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328133(P2005−328133)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】