説明

端子付電線及び端子圧着装置

【課題】端子付電線において、圧着端子の被覆圧着部が、電線に加わる応力に起因して電線の絶縁被覆から外れることを防止すること。
【解決手段】端子付電線1は、電線9とその電線9の端部に取り付けられた圧着端子10を備える。圧着端子10は、電線9の端部における絶縁被覆92に圧着された被覆圧着部20、及び電線9の端部における絶縁被覆92から伸び出た芯線91に圧着された芯線圧着部40を有する。被覆圧着部20は、第一方向から絶縁被覆92を支持する底板部21と、曲げ加工により第一方向に対して反対の第二方向から絶縁被覆92に対してかしめられた第一かしめ部220とを有する。さらに、底板部21の一部に、隆起した形状で絶縁被覆92に対してかしめられた第二かしめ部である隆起部211が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線と圧着端子とを含む端子付電線、及び電線の端部に圧着端子を取り付ける端子圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイヤハーネスにおける電線の端部には、金属製の圧着端子が取り付けられる。また、圧着端子としては、特許文献1に示されるように絶縁被覆を押さえる部分を有する圧着端子と、絶縁被覆を押さえる部分がない圧着端子とが存在する。
【0003】
絶縁被覆を押さえる部分を有する圧着端子は、電線の端部における被覆に圧着される被覆圧着部と、電線の端部における被覆から伸び出た芯線に圧着される芯線圧着部と、相手側の端子と嵌り合うことによって相手側の端子に接続される端子接続部とを有している。そして、被覆圧着部及び芯線圧着部の各々の一部が折り曲げられて絶縁被覆に対してかしめられることにより、被覆圧着部が電線の絶縁被覆を把持し、芯線圧着部が電線の芯線を把持する。その結果、圧着端子は、電線の端部に固定される。
【0004】
圧着端子において、被覆圧着部は、圧着端子を電線に強固に保持する役割を担い、芯線圧着部は、主として圧着端子と電線の芯線とを電気的に接続する役割を担う。なお、被覆圧着部、芯線圧着部及び端子接続部は、それぞれインシュレーションバレル、ワイヤバレル及びコンタクトと称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−151941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の圧着端子が取り付けられた電線において、圧着端子の被覆圧着部は、電線における絶縁被覆の部分を支える底板部と、その底板部に対向する方向へ曲げられることによって絶縁被覆に対して一方向からかしめられたかしめ部とを有する。即ち、従来の端子付き電線において、圧着端子の被覆圧着部は、電線の絶縁被覆に対し、一方向からかしめられているだけである。また、電線の絶縁被覆は柔軟性を有する。そのため、従来の端子付電線は、被覆圧着部が電線の絶縁被覆を保持する性能が十分に高いとはいえない。即ち、従来の端子付電線は、圧着端子の部分が固定された状態で引っ張り応力又は曲げ応力が繰り返し加わった場合に、被覆圧着部が電線の絶縁被覆から外れるという問題点を有している。
【0007】
本発明の目的は、端子付電線において、圧着端子の被覆圧着部が、電線に加わる応力に起因して電線の絶縁被覆から外れることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る端子付電線は、電線とその電線の端部に取り付けられた圧着端子を備える。その圧着端子は、電線の端部における絶縁被覆に圧着された被覆圧着部及び電線の端部における絶縁被覆から伸び出た芯線に圧着された芯線圧着部を有する。さらに、第1発明に係る端子付電線において、圧着端子の被覆圧着部は、第一方向から絶縁被覆を支持する底板部と、曲げ加工により第一方向に対して反対の第二方向から絶縁被覆に対してかしめられた第一かしめ部と、を有する。さらに、被覆圧着部の底板部の一部に、隆起した形状で絶縁被覆に対してかしめられた第二かしめ部が形成されている。
【0009】
また、第2発明に係る端子付電線は、第1発明に係る端子付電線の構成に加え、さらに以下の構成を有する。即ち、第2発明に係る端子付電線において、圧着端子の被覆圧着部は、電線の長手方向において間隔を空けて並ぶ複数の第一かしめ部を有し、さらに、底板部の第二かしめ部は、複数の第一かしめ部各々の間に対向する位置に形成されている。
【0010】
また、本発明は、電線の端部に圧着端子を圧着する端子圧着装置の発明として捉えられることもできる。即ち、第1発明に係る端子圧着装置は、相互に対向し接近可能に支持されたアンビル及びクリンパを備える。アンビル及びクリンパは、電線の端部における絶縁被覆を支える底板部とその底板部から起立する起立部とが形成された被覆圧着部を有する圧着端子を挟み込むことにより、被覆圧着部を電線の端部の絶縁被覆に圧着する。さらに、第1発明に係る端子圧着装置は、かしめ用突起部と曲げ成形部とを備える。かしめ用突起部は、アンビルにおける、被覆圧着部の底板部を第一方向から支える支持面の一部に形成され、底板部の一部を、絶縁被覆に向かって隆起した形状へ成形しつつ絶縁被覆に対してかしめる部分である。一方、曲げ成形部は、クリンパに形成され、被覆圧着部の起立部に接触することにより、その起立部を曲げつつその起立部の先端側の一部を第一方向に対して反対の第二方向から絶縁被覆に対してかしめる部分である。
【0011】
また、第2発明に係る端子圧着装置は、第1発明に係る端子圧着装置の構成に加え、さらに以下の構成を有する。即ち、第2発明に係る端子圧着装置において、クリンパの曲げ成形部は、圧着端子の被覆圧着部に電線の長手方向において間隔を空けて並んで形成された複数の起立部を絶縁被覆に対してかしめる部分である。さらに、第2発明に係る端子圧着装置において、アンビルのかしめ用突起部は、電線の長手方向において、支持面に配置された被覆圧着部における複数の起立部の間の位置に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、圧着端子の被覆圧着部は、電線における柔軟性を有する絶縁被覆に対し、第一かしめ部及び第二かしめ部の部分で、絶縁被覆の両側からかしめられる。そのため、本発明における圧着端子の被覆圧着部は、従来の端子付電線における被覆圧着部と比べ、電線の絶縁被覆をより強固に保持する。従って、本発明が採用された場合、圧着端子の部分が固定された状態で電線に対して引っ張り応力又は曲げ応力が繰り返し加わった場合においても、圧着端子の被覆圧着部は、電線の絶縁被覆から外れにくい。
【0013】
また、第2発明においては、圧着端子の被覆圧着部は、電線の長手方向において間隔を空けて並ぶ複数の第一かしめ部を有し、底板部の第二かしめ部は、複数の第一かしめ部各々の間に対向する位置に形成されている。そのため、電線の端部における絶縁被覆の部分は、後述するように、被覆圧着部により、第二かしめ部が接触する部分において曲がった状態で保持される。そのため、第2発明において、圧着端子の被覆圧着部は、電線に加わる応力、特に、電線に対してその長手方向に加わる引っ張り応力に対し、電線の絶縁被覆をより強固に保持する。その結果、圧着端子の被覆圧着部は、電線の絶縁被覆からより外れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る端子付電線1の主要部の側面図である。
【図2】端子付電線1の主要部の平面図である。
【図3】端子付電線1における被覆圧着部の部分の横断面図である。
【図4】端子付電線1が備える圧着端子10の斜視図である。
【図5】圧着端子10の被覆圧着部を含む部分の側断面図である。
【図6】圧着端子10の被覆圧着部を含む部分の平面図である。
【図7】圧着端子10及び電線がセットされた本発明の第1実施形態に係る端子圧着装置70の断面図である。
【図8】端子圧着装置70が備えるアンビルにおける圧着端子の被覆圧着部を支える部分の平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る端子付電線1Aの主要部の側面図である。
【図10】端子付電線1Aの主要部の平面図である。
【図11】端子付電線1Aが備える圧着端子10Aの斜視図である。
【図12】圧着端子10Aの被覆圧着部を含む部分の側断面図である。
【図13】圧着端子10Aの被覆圧着部を含む部分の平面図である。
【図14】圧着端子10A及び電線がセットされた本発明の第2実施形態に係る端子圧着装置70Aの正断面図である。
【図15】端子圧着装置70Aが備えるアンビルにおける電線の絶縁被覆を支持する部分の平面図である。
【図16】圧着端子10及び電線がセットされた端子圧着装置70Aの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0016】
<端子付電線:第1実施形態>
まず、図1から図6を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る端子付電線1の構成について説明する。端子付電線1は、電線9とその端部に取り付けられた圧着端子10とを備える。
【0017】
なお、図1における破線は、隠れ線である。また、図4において斜線のハッチングで表された断面は、図5に示されるD−D断面である。
【0018】
<電線>
図1から図3に示されるように、圧着端子10が取り付けられる対象となる電線9は、長尺な導体である芯線と、その芯線の周囲を覆う絶縁体である絶縁被覆とを有する。圧着端子10が取り付けられる電線9の端部は、予め一定の長さの分の芯線の周囲から絶縁被覆が剥がれた状態、即ち、一定の長さ分の芯線が絶縁被覆から伸び出た状態に加工されている。
【0019】
以下、電線9の端部において、絶縁被覆の端から伸び出た芯線を裸芯線91と称する。また、電線9の絶縁被覆における端部の一定の範囲(数ミリメートルから十数ミリメートル程度の長さの範囲)の部分を被覆端部92と称する。
【0020】
端子付電線1において、電線9の芯線は、例えば、銅又はアルミニウムを主成分とする金属の線材である。
【0021】
<圧着端子>
以下、図4から図6を参照しつつ、電線9に取り付けられる圧着端子10について説明する。図4から図6に示されるように、圧着端子10は、直線方向に沿って一列に並んで形成された、被覆圧着部20、第一連結部30、芯線圧着部40、第二連結部50及びコンタクト部60を有している。
【0022】
以下、圧着端子10における被覆圧着部20から芯線圧着部40及びコンタクト部60へ向かう直線方向を延伸方向と称する。延伸方向は、圧着端子10が取り付けられる電線9の長手方向でもある。各図に示される座標軸のX軸方向が延伸方向である。
【0023】
圧着端子10は、銅もしくは黄銅などの銅合金の部材、又はそれらの部材に錫(Sn)メッキもしくは錫に銀(Ag)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)などが添加された錫合金のメッキが施された導体の部材である。
【0024】
<圧着端子:被覆圧着部>
被覆圧着部20は、曲がって形成された板状の部分であり、電線9に圧着される前の状態において、電線9の被覆端部92が挿入される溝を形成している。即ち、被覆圧着部20は、被覆圧着部20が形成する溝の内側に挿入された被覆端部92に対して圧着される。被覆圧着部20の内側面は、電線9の被覆端部92に対向する面である。
【0025】
被覆圧着部20は、第一底板部21と、対向する2つの起立部22,23とを有する。第一底板部21は、圧着端子10が取り付けられる対象の電線9における被覆端部92が載置される部分である。また、2つの起立部22,23は、第一底板部21から起立して形成された部分である。
【0026】
一方の起立部22における先端側の一部の範囲を占める部分は、第一底板部21に対向する向きへ折り曲げられて被覆端部92にかしめられるかしめ部220である。同様に、他方の起立部23における先端側の一部の範囲を占める部分も、第一底板部21に対向する向きへ折り曲げられるかしめ部230である。
【0027】
但し、図1及び図2に示されるように、起立部23のかしめ部230は、起立部22のかしめ部220の外側に重ねられてかしめられる。即ち、圧着端子10の被覆圧着部20は、いわゆるオーバーラップタイプの圧着部である。なお、図3は、電線9と、電線9に圧着された圧着端子10とを備える端子付電線1における被覆圧着部20の部分の横断面図である。
【0028】
以下、2つの起立部22,23各々におけるかしめ部220,230以外の部分のことを側壁部と称する。一方の起立部22における側壁部は、第一底板部21及びかしめ部220に連なり、それらを繋ぐ部分である。他方の起立部23における側壁部は、第一底板部21及びかしめ部230に連なり、それらを繋ぐ部分である。被覆圧着部20が被覆端部92に圧着された場合、第一底板部21の内側面と、一方の起立部22における側壁部及びかしめ部220の内側面と、他方の起立部23における側壁部とが、被覆端部92に接触する。
【0029】
図4から図6に示される例では、第一底板部21及び起立部22,23は、いずれも平板状であるが、これらは、湾曲した周面を形成する被覆端部92の外形に沿うように、湾曲した板状である場合もある。以下、延伸方向(X軸方向)に直交し、2つの起立部22,23が対向する方向を幅方向と称する。さらに、延伸方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)に直交する方向を高さ方向と称する。2つの起立部22,23は、第一底板部21から高さ方向へ起立して形成されている。各図に示される座標軸のY軸方向及びZ軸方向が、それぞれ幅方向及び高さ方向である。
【0030】
<圧着端子:芯線圧着部>
芯線圧着部40は、曲がって形成された板状の部分であり、電線9に圧着される前の状態において、電線9の裸芯線91が挿入される溝を形成している。即ち、芯線圧着部40は、芯線圧着部40が形成する溝の内側に挿入された裸芯線91に対して圧着される。芯線圧着部40の内側面は、電線9の裸芯線91に対向する面である。
【0031】
芯線圧着部40は、第二底板部41と、対向する2つの起立部42,43とを有する。第二底板部41は、圧着端子10が取り付けられる対象の電線9における裸芯線91が載置される部分である。また、2つの起立部42,43は、第二底板部41から起立して形成された部分である。芯線圧着部40における2つの起立部42,43も、高さ方向に起立し、幅方向において対向して形成されている。
【0032】
一方の起立部42における先端側の一部の範囲を占める部分は、第二底板部41に対向する向きへ折り曲げられて裸芯線91にかしめられるかしめ部420である。同様に、他方の起立部43における先端側の一部の範囲を占める部分も、第二底板部41に対向する向きへ折り曲げられて裸芯線91にかしめられるかしめ部430である。
【0033】
芯線圧着部40が裸芯線91に圧着された場合、第二底板部41の内側面と、2つの起立部42,43各々の内側面とが、裸芯線91に接触する。
【0034】
図4から図6に示される例では、第二底板部41及び起立部42,43は、いずれも平板状であるが、これらは、湾曲した板状である場合もある。
【0035】
<圧着端子:第一連結部、第二連結部>
第一連結部30は、被覆圧着部20と芯線圧着部40とを繋ぐ部分である。また、第二連結部50は、芯線圧着部40とコンタクト部60とを繋ぐ部分である。
【0036】
<圧着端子:コンタクト部>
コンタクト部60は、圧着端子10の接続相手となる不図示の相手側端子と嵌り合うことによって相手側端子と直接接触し、相手側端子に接続される部分(端子接続部)である。図1及び図4に示されるコンタクト部60は、相手側端子が嵌め入れられる孔である端子挿入孔61が形成された筒状の部分である。なお、コンタクト部60が、相手側端子の端子挿入孔に嵌め入れられる棒状の導体である場合もある。
【0037】
<圧着端子:その他>
図1から図3に示されるように、端子付電線1において、電線9に圧着された圧着端子10は、電線9の被覆端部92に圧着された被覆圧着部20、及び電線9の裸芯線91に圧着された芯線圧着部40を有する。
【0038】
さらに、被覆圧着部20における絶縁被覆92に接触する内側面のうち、かしめ部230に対向して絶縁被覆92を支持する第一底板部21の内側面に、隆起した形状で被覆端部92に対してかしめられた隆起部211が形成されている。隆起部211は、第一底板部21における、かしめ部220に対向する位置において、被覆端部92に食い込んだ状態で形成されている。例えば、端子付電線1において、第一底板部21の内側面における隆起部211の高さ方向の寸法は、電線9における絶縁被覆の厚みの寸法よりも小さい。
【0039】
なお、図1に示される隆起部211は、概ね円錐台状であるが、円柱状、角柱状など、他の形状であってもかまわない。また、第一底板部21に複数の隆起部211が形成された例の他、第一底板部21に1つの隆起部211のみが形成された例も考えられる。
【0040】
隆起部211は、後述する端子圧着装置70により、圧着端子10が電線9の端部に圧着される際に形成される。即ち、隆起部211は、後述する端子圧着装置70により、被覆圧着部20の第一底板部21の外側面の一部が内側へ向けて突かれることにより形成される。そのため、図1に示されるように、そのため、第一底板部21の外側面には、内側面の隆起部211に対応するへこみ部212が形成されている。
【0041】
なお、第一底板部21は、第一方向(Z軸の負方向)から被覆端部92を支持する底板部の一例である。また、起立部22のかしめ部220は、曲げ加工により第二方向(Z軸の正方向)から被覆端部92に対してかしめられた第一かしめ部の一例である。また、隆起部211は、第一底板部21の一部において、隆起した形状で被覆端部92に対してかしめられた第二かしめ部の一例である。
【0042】
以上に示した構成を備えた端子付電線1において、圧着端子10の被覆圧着部20は、柔軟性を有する被覆端部92に対し、かしめ部220及び隆起部211の部分で、被覆端部92の両側からかしめられる。そのため、端子付電線1における圧着端子10の被覆圧着部20は、従来の端子付電線における被覆圧着部と比べ、被覆端部92をより強固に保持する。従って、端子付電線1においては、圧着端子10の部分が固定された状態で電線9に対して引っ張り応力又は曲げ応力が繰り返し加わった場合においても、圧着端子10の被覆圧着部20は、被覆端部92から外れにくい。
【0043】
また、隆起部211は、後述する端子圧着装置70により、圧着端子10が電線9の端部に圧着される際に形作られる。そのため、端子付電線1は、従来の一般的な圧着端子10を採用することによって容易に実現できる。
【0044】
<端子圧着装置:第1実施形態>
次に、図7及び図8を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る端子圧着装置70について説明する。圧着端子10は、端子圧着装置70を用いて電線9に対して圧着される。図7は、圧着端子10及び電線9がセットされた端子圧着装置70の断面図である。また、図8は、端子圧着装置70が備えるアンビル71における、圧着端子10の被覆圧着部20を支える部分の平面図である。なお、図7に示される端子圧着装置70の断面は、圧着端子10の被覆圧着部20を被覆端部92に圧着する部分の断面を示す。
【0045】
端子圧着装置70は、電線9及び圧着端子10を支持するアンビル71と、圧着端子10における被覆圧着部20及び芯線圧着部40各々のかしめ部220,230,420,430を内側へ折り曲げてかしめるクリンパ72とを備える。アンビル71及びクリンパ72は、不図示の支持機構により、それらの一方又は両方が移動可能に支持されている。アンビル71及びクリンパ72は、支持機構により、相互に対向する状態で接近すること及び離隔することが可能に支持されている。
【0046】
アンビル71には、圧着端子10における被覆圧着部20の第一底板部21及び第二底板部41をその外側面から支える支持面711が形成されている。図7に示されるように、支持面711が被覆圧着部20の第一底板部21を支える方向は、被覆圧着部20の第一底板部21が被覆端部92を支える方向と同じ方向である。
【0047】
一方、クリンパ72には、圧着端子10における被覆圧着部20のかしめ部220,230に接触し、かしめ部220,230を滑らせつつ内側へ曲げる成形面721,722が形成されている。さらに、クリンパ72には、圧着端子10における芯線圧着部40のかしめ部420,430に接触し、かしめ部420,430を滑らせつつ内側へ曲げる成形面も形成されている。但し、図7には、芯線圧着部40の成形面は示されていない。なお、クリンパ72における成形面721,722が形成された部分は、曲げ成形部の一例である。
【0048】
被覆圧着部20のかしめ部220,230は、オーバーラップタイプであるため、クリンパ72において、被覆圧着部20における一方の起立部22のかしめ部220を成形する成形面721の形状と、他方の起立部23のかしめ部230を成形する成形面722の形状とは異なる。即ち、クリンパ72における被覆圧着部20のかしめ部220,230をかしめる成形面721,722は、幅方向において左右非対称に形成されている。
【0049】
一方、図2に示されるように、圧着端子10において、芯線圧着部40のかしめ部420,430は、重ならずに裸芯線91にかしめられるタイプであり、オーバーラップタイプではない。そのため、クリンパ72における芯線圧着部40のかしめ部420,430をかしめる不図示の成形面は、幅方向において左右対称に形成されている。
【0050】
アンビル71及びクリンパ72の一方又は両方が、それらが接近する方向へ移動することにより、圧着端子10は、アンビル71とクリンパ72との間で押しつぶされつつ被覆端部92及び裸芯線91に圧着される。その際、被覆圧着部20の一方のかしめ部220は、クリンパ72の成形面721に沿って第一底板部21に対向する向きへ曲がり、被覆端部92へかしめられる。また、被覆圧着部20の他方のかしめ部230は、クリンパ72の成形面722に沿って第一底板部21に対向する向きへ曲がり、一方のかしめ部220の外側へかしめられる。また、芯線圧着部40のかしめ部420,430は、クリンパ72における不図示の成形面に沿って第二底板部41に対向する向きへ曲がり、裸芯線91にかしめられる。
【0051】
また、アンビル71における、被覆圧着部20の第一底板部21を支える支持面711の一部には、複数のかしめ用突起部712が形成されている。これらかしめ用突起部712は、支持面711における被覆圧着部20を支える領域の一部に形成されている。アンビル71及びクリンパ72が、接近して被覆圧着部20を挟み込むことにより、かしめ用突起部712は、被覆圧着部20の第一底板部21の一部を、被覆端部92に向かって隆起した形状へ成形しつつ被覆端部92に対してかしめる。これにより、図1及び図3に示される隆起部211が、被覆圧着部20の第一底板部21に形成される。
【0052】
また、アンビル71における支持面711の外縁部分には、支持面711で支えられた圧着端子10の端部に接して圧着端子10を位置決めするストッパー713が形成されている。圧着端子10は、その端部がストッパー13に接触する状態で端子圧着装置70にセットされることにより、端子圧着装置70における適切な位置に位置決めされる。
【0053】
端子圧着装置70が用いられることにより、端子付電線1は、従来の一般的な圧着端子10を採用することによって容易に作製される。
【0054】
<端子付電線:第2実施形態>
次に、図9から図13を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る端子付電線1Aについて説明する。端子付電線1Aは、電線9と、その電線9の端部に圧着された圧着端子10Aとを備える。端子付電線1Aは、端子付電線1と比較して、圧着端子10Aの被覆圧着部20の部分の構造のみが異なる。以下、図9から図13において、図1から図6に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、圧着端子10Aにおける圧着端子10と異なる点についてのみ説明する。
【0055】
なお、図9及び図10は、端子付電線1Aの主要部の側面図及び平面図である。また、図11は、端子付電線1Aが備える圧着端子10Aの斜視図である。また、図12及び図13は、圧着端子10Aの被覆圧着部を含む部分の側断面図及び平面図である。また、図9における破線は、隠れ線である。また、図12において斜線のハッチングで表された断面は、図13に示されるE−E断面である。
【0056】
図9から図13に示されるように、圧着端子10Aの被覆圧着部20は、延伸方向(X軸方向)において間隔を空けて並ぶ2組の起立部(22,23)及び(24,25)を有している。そして、それら2組の起立部(22,23)及び(24,25)各々の先端側の一部が、第一底板部21に対向する方向へかしめられるかしめ部220,230,240,250である。
【0057】
また、図1及び図2に示されるように、2組の起立部(22,23)及び(24,25)において、一方の組におけるかしめ部220,230と,他方の組におけるかしめ部240,250とは、オーバーラップタイプの圧着部である。
【0058】
端子付電線1Aにおいて、一方の組における起立部22のかしめ部220と、他方の組における起立部24のかしめ部240とは、第一底板部21に対向する方向へ折り曲げられて被覆端部92に対して直接圧着されている。また、一方の組における起立部23のかしめ部230と、他方の組における起立部25のかしめ部250とは、第一底板部21に対向する方向へ折り曲げられてかしめ部22,24各々の外側面に対して圧着される。
【0059】
即ち、端子付電線1Aが備える圧着端子10Aの被覆圧着部20において、被覆端部92に圧着される2つのかしめ部220,240は、延伸方向において間隔を空けて並ぶ状態で被覆端部92に圧着されている。
【0060】
図12及び図13において、第一底板部21は、延伸方向の位置が異なる3つの領域21A,21C,21Bに区分されて示されている。第一領域21Aは、一方のかしめ部220が被覆端部92にかしれられた場合にそのかしめ部220に対向する領域である。第二領域21Bは、他方のかしめ部240が被覆端部92にかしめられた場合にそのかしめ部240に対向する領域である。また、第三領域21Cは、第一領域21Aと第二領域21Bとの間の領域、即ち、被覆端部92にかしめられた2つのかしめ部220,240の間に対向する領域である。
【0061】
また、図1に示されるように、端子付電線1Aの圧着端子10Aにおいて、第一底板部21の隆起部211は、2つのかしめ部220,240各々の間に対向する位置に形成されている。即ち、隆起部211は、第一底板部21における第三領域21Cにおいて隆起して形成される。隆起部211は、後述する端子圧着装置70Aにより、圧着端子10Aが電線9の端部に圧着される際に形作られる。
【0062】
例えば、端子付電線1Aにおいて、第一底板部21の内側面における隆起部211の高さ方向の寸法は、電線9における絶縁被覆の厚みの寸法と同等又はそれよりも大きい。そのため、被覆端部92は、図1に示されるように、被覆圧着部20により、第一底板部21の隆起部211が接触する部分、即ち、延伸方向に並ぶ2つのかしめ部220,240の間の部分、において湾曲した状態で保持される。
【0063】
圧着端子10Aの被覆圧着部20は、被覆端部92を湾曲した状態で保持することにより、電線9に加わる応力、特に、電線9に対して延伸方向に加わる引っ張り応力に対し、被覆端部92をより強固に保持する。その結果、圧着端子10Aの被覆圧着部20は、被覆端部92からより外れにくくなる。
【0064】
<端子圧着装置:第2実施形態>
次に、図14から図16を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る端子圧着装置70Aについて説明する。圧着端子10Aは、端子圧着装置70Aを用いて電線9に対して圧着される。図14から図16において、図7及び図8に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、端子圧着装置70Aにおける端子圧着装置70と異なる点についてのみ説明する。
【0065】
図14は、圧着端子10及び電線9がセットされた端子圧着装置70Aの正断面図である。また、図15は、端子圧着装置70Aが備えるアンビル71Aにおける、圧着端子10Aの被覆圧着部20を支える部分の平面図である。図16は、圧着端子10及び電線9がセットされた端子圧着装置70Aの側断面図である。なお、図14に示される端子圧着装置70の断面は、圧着端子10の被覆圧着部20を被覆端部92に圧着する部分の断面を示す。
【0066】
端子圧着装置70Aは、相互に対向する状態で接近すること及び離隔することが可能に支持されたアンビル71A及びクリンパ72を備える。即ち、端子圧着装置70Aは、端子圧着装置70におけるアンビル71が他のアンビル71Aに置き換えられた構成を有している。
【0067】
端子圧着装置70Aにおいて、クリンパ72の成形面721,722は、圧着端子10Aの被覆圧着部20における2組の起立部(22,23)及び(24,25)を被覆端部92に対してかしめる。そのため、図16に示されるように、クリンパ72の成形面721,722は、延伸方向において2組の起立部(22,23)及び(24,25)に渡る範囲に形成されている。
【0068】
また、端子圧着装置70Aにおいて、アンビル71Aには、圧着端子10における被覆圧着部20の第一底板部21及び第二底板部41をその外側面から支える支持面711が形成されている。
【0069】
アンビル71A及びクリンパ72の一方又は両方が、それらが接近する方向へ移動することにより、圧着端子10Aは、アンビル71Aとクリンパ72との間で押しつぶされつつ被覆端部92及び裸芯線91に圧着される。その際、被覆圧着部20のかしめ部220,240は、クリンパ72の成形面721に沿って第一底板部21に対向する向きへ曲がり、被覆端部92へかしめられる。また、被覆圧着部20のかしめ部230,250は、クリンパ72の成形面722に沿って第一底板部21に対向する向きへ曲がり、かしめ部220,240の外側へかしめられる。また、芯線圧着部40のかしめ部420,430は、クリンパ72における成形面723に沿って第二底板部41に対向する向きへ曲がり、裸芯線91にかしめられる。
【0070】
また、アンビル71Aにおける、被覆圧着部20の第一底板部21を支える支持面711の一部には、幅方向(Y軸方向)に伸びる尾根の線を形成するかしめ用突起部714が形成されている。このかしめ用突起部714は、支持面711における、第一底板部21の第三領域21Cを支える部分に形成されている。即ち、かしめ用突起部714は、延伸方向(X軸方向)において、支持面711に配置された被覆圧着部20における2組の起立部(22,23)及び(24,25)の間の位置に形成されている。
【0071】
アンビル71A及びクリンパ72が、接近して被覆圧着部20を挟み込むことにより、かしめ用突起部714は、被覆圧着部20の第一底板部21における第三領域21Cを、被覆端部92に向かって隆起した形状へ成形しつつ被覆端部92に対してかしめる。これにより、図9に示される隆起部211が、被覆圧着部20の第一底板部21に形成される。
【0072】
以上に示した端子圧着装置70Aにより、端子付電線1Aにおける圧着端子10Aの隆起部211は、圧着端子10Aが電線9の端部に圧着される際に形作られる。そのため、端子付電線1Aは、圧着端子10Aを採用することによって容易に実現できる。
【0073】
図9に示されるような隆起部211が形成された圧着端子10A、及びその圧着端子10Aが取り付けられた電線9とを備える端子付電線1A、及びその端子付電線1Aを作製するための端子圧着装置70Aも、本発明の実施形態の一例である。
【0074】
<その他>
以上に示された第1実施形態の圧着端子10において、被覆圧着部20は、対向する2つの起立部22,23のかしめ部220,230が重なる状態でかしめられるオーバーラップタイプである。しかしながら、被覆圧着部20は、図2に示される芯線圧着部40と同様に、2つの起立部22,23のかしめ部220,230が重ならない状態で被覆端部92に対してかしめられるタイプであってもよい。同様に、第2実施形態の圧着端子10Aにおいて、被覆圧着部20は、2組の起立部(22,23)及び(24,25)のかしめ部(220,230)及び(240,250)は、重ならない状態で被覆端部92に対してかしめられるタイプであってもよい。
【0075】
また、各実施形態の圧着端子10,10Aにおいて、かしめ部220,230,240,250は、被覆端部92の両側から折り曲げられてかしめられる部分である。しかしながら、圧着端子10,10Aの延伸方向における各位置において、かしめ部が、被覆端部92の片側にのみ形成された構成も考えられる。
【0076】
また、第2実施形態における圧着端子10Aは、被覆端部92にかしめられる部分として、延伸方向において間隔を空けて並ぶ2つのかしめ部220,240を有する。しかしながら、圧着端子10Aが、被覆端部92にかしめられる部分として、延伸方向において間隔を空けて並ぶ3つ以上のかしめ部を有することも考えられる。
【0077】
以下、2以上の整数をNとする。例えば、圧着端子10Aが、被覆端部92にかしめられる部分として、延伸方向において間隔を空けて並ぶN個のかしめ部を有する場合、第一底板部211には、(N−1)個の隆起部211が、N個のかしめ部の間の位置に形成される。この場合、端子圧着装置70Aにおけるアンビル71の支持面711には、(N−1)個のかしめ用突起部714が、延伸方向において間隔を空けて設けられる。
【符号の説明】
【0078】
1,1A 端子付電線
9 電線
10,10A 圧着端子
20 被覆圧着部
21 第一底板部
22,23,24,25 被覆圧着部の起立部
30 第一連結部
40 芯線圧着部
41 第二底板部
42,43 芯線圧着部の起立部
50 第二連結部
60 コンタクト部
61 端子挿入孔
70,70A 圧着装置
71,71A アンビル
72 クリンパ
91 裸芯線(芯線)
92 被覆端部(絶縁被覆)
211 隆起部
220,230,240,250 被覆圧着部のかしめ部
420,430 芯線圧着部のかしめ部
711 アンビルの支持面
712,714 かしめ用突起部
721,722 クリンパの成形面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の端部に取り付けられ、前記電線の端部における絶縁被覆に圧着された被覆圧着部及び前記電線の端部における前記絶縁被覆から伸び出た芯線に圧着された芯線圧着部を有する圧着端子と、を備えた端子付電線であって、
前記圧着端子の前記被覆圧着部は、第一方向から前記絶縁被覆を支持する底板部と、
曲げ加工により第一方向に対して反対の第二方向から前記絶縁被覆に対してかしめられた第一かしめ部と、を有し、
前記被覆圧着部の前記底板部の一部に、隆起した形状で前記絶縁被覆に対してかしめられた第二かしめ部が形成されていることを特徴とする端子付電線。
【請求項2】
前記圧着端子の前記被覆圧着部は、前記電線の長手方向において間隔を空けて並ぶ複数の前記第一かしめ部を有し、
前記底板部の前記第二かしめ部は、複数の前記第一かしめ部各々の間に対向する位置に形成されている、請求項1に記載の端子付電線。
【請求項3】
相互に対向し接近可能に支持され、電線の端部における絶縁被覆を支える底板部と該底板部から起立する起立部とが形成された被覆圧着部を有する圧着端子を挟み込むことにより、前記被覆圧着部を前記電線の端部の前記絶縁被覆に圧着するたアンビル及びクリンパを備えた端子圧着装置であって、
前記アンビルにおける、前記被覆圧着部の前記底板部を第一方向から支える支持面の一部に形成され、前記底板部の一部を、前記絶縁被覆に向かって隆起した形状へ成形しつつ前記絶縁被覆に対してかしめるかしめ用突起部と、
前記クリンパに形成され、前記被覆圧着部の前記起立部に接触することにより、前記起立部を曲げつつ前記起立部の先端側の一部を前記第一方向に対して反対の第二方向から前記絶縁被覆に対してかしめる曲げ成形部と、を備えることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項4】
前記クリンパの前記曲げ成形部は、前記圧着端子の前記被覆圧着部に前記電線の長手方向において間隔を空けて並んで形成された複数の前記起立部を前記絶縁被覆に対してかしめる部分であり、
前記アンビルの前記かしめ用突起部は、前記電線の長手方向において、前記支持面に配置された前記被覆圧着部における複数の前記起立部の間の位置に形成されている、請求項3に記載の端子圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−155890(P2012−155890A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11840(P2011−11840)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】