説明

端子構造及び車両用端子付ガラス板

【課題】本発明は、配置位置の自由度が高い端子構造の提供を課題とする。
【解決手段】ガラス板11に接着剤で固定可能な端子部18と、この端子部18から給電対象物12まで延ばされ可撓性に富む導電部材19とからなることを特徴とする。
【効果】端子部18から給電対象物12まで可撓性に富む導電部材19を延ばすことにより接続する。可撓性に富む導電部材19を給電対象物12まで延ばす。導電部材19は可撓性を有するため、他の部品等を避けて配置することができる。加えて、導電部材19の長さは任意の長さとすることができる。即ち、給電対象物12から離れた位置であっても自由に端子構造14を配置することができる。配置位置の自由度が高い端子構造ということができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子構造、特に車両用ガラスに好適な端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用端子付ガラス板を例に説明すると、車両用ガラスにはヒータが付属されており、このヒータに外部電源から給電される。給電系は外部電源から延ばしたハーネスをヒータに直接繋ぐことでも完成するが、製造や組立の便利を考えると、給電系を端子で接離自在に接続することが望まれる。
【0003】
このための端子の構造として種々のものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許3957302号公報(図2)
【特許文献2】特表2003−521093公報(図3)
【0004】
図6は特許文献1に係る技術の基本構成を説明する図であり、端子100は、上面に導電膜101が塗布されるガラス板102の上方に半田103、104を介して接合される脚部105、106と、脚部106の先端に支持部107から構成される。
支持部107と接合する接合部108の先端からは、例えば電源等の車内に配置される機器に向かってリード線109が延ばされる。
【0005】
この端子100の端子構造によれば、2本の脚部105、106を用いて半田付けすることにより、適度に接合面積を広げることができる。接合面積が広がることにより、端子100に対して引張り方向に係る荷重に対する強度が増す。
【0006】
図7は特許文献2に係る技術の基本構成を説明する図であり、T字型端子110は、先端に雌型端子部111が配置され、接着剤112及び半田113を介してガラスに接合される。
このT字型端子110によれば、半田113と共に接着剤112を用いることにより、半田113の使用量を減らすことができる。
【0007】
ところで、これらの端子をガラス板上に配置する場合に、端子が配置される位置は、電源から延ばされるリード線の配置される位置や、ヒータの配置される位置から、ある程度一義的に決められる。ある程度一義的に決められることから、端子を配置する位置の自由度が少ない。
【0008】
配置位置の自由度が高い端子構造の提供が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、配置位置の自由度が高い端子構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ガラス板に接着剤で固定可能な端子部と、この端子部から給電対象物まで延ばされ可撓性に富む導電部材とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、導電部材の先端は板状部であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、導電部材の先端は、給電対象物に半田又は導電性接着剤で接合されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、車両用ガラス板と、このガラス板に接着剤で固定された端子部と、この端子部から給電対象物まで延ばされ可撓性に富む導電部材と、からなることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、導電部材の先端は板状部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、端子部から給電対象物まで可撓性に富む導電部材を延ばす。導電部材を延ばすことにより端子及び給電対象物を接続する。導電部材は可撓性を有するため、他の部品等を避けて配置することができる。加えて、導電部材の長さは任意の長さとすることができる。即ち、給電対象物から離れた位置であっても自由に端子部を配置することができる。配置位置の自由度が高い端子構造ということができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、導電部材の先端は板状部である。板状部を介して給電対象物は導電部材に接続される。板状部が給電対象物と導電部材との接続部分を覆うため、接続部分が外観に表れない。接続部分が外観に表れないことにより端子構造の外観が良好になる。
【0017】
請求項3に係る発明では、導電部材の先端は、給電対象物に半田又は導電性接着剤で接合される。半田又は導電性接着剤は、優れた導電性を有する。優れた導電性を有するため、給電対象物及び端子に繋げられる機器の導電性を良好に保つことができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、端子部から給電対象物まで可撓性に富む導電部材を延ばすことにより接続する。可撓性に富む導電部材を給電対象物まで延ばす。導電部材は可撓性を有するため、他の部品等を避けて配置することができる。加えて、導電部材の長さは任意の長さとすることができる。即ち、給電対象物から離れた位置であっても自由に端子を配置することができる。配置位置の自由度が高い端子構造を用いることにより、車両用端子付ガラス板の外観を良好にすることができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、導電部材の先端は板状部である。板状部を介して給電対象物は導電部材に接続される。板状部が給電対象物と導電部材との接続部分を覆うため、接続部分が外観に表れない。接続部分が外観に表れないことにより端子構造の外観が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両用端子付ガラス板を説明する図であり、車両用端子付ガラス板10は、ガラス板11の上面に、ヒータやアンテナ等の給電対象物12、13が配置され、これらの給電対象物12、13に端子構造14(詳細は後述)が電気的に接続されることにより構成される。
【0021】
例えば、給電対象物12がヒータである場合には、ヒータは端子構造14を介してヒータを作動させるための電源に接続される。給電対象物13がアンテナである場合には、アンテナは端子構造14を介して、車内に配置されるテレビに接続される。
【0022】
給電対象物に接続される外部機器には、電源やテレビの他、AMラジオ、FMラジオ、カーナビゲーション、自動料金収受システム等が挙げられる。即ち、外部機器は、給電対象物に接続されるものであれば種類は問わない。
【0023】
給電対象物も同様に、端子構造14を介して接続するものであれば、ヒータやアンテナに限定されない。
次に、端子構造について説明する。
【0024】
図2は図1の2部拡大図であり、図3は図2の3−3線矢視図である。端子構造14はガラス板に固定された基部28と、外部機器に接続される接続部29と、先端に端子部圧着部17とからなる端子部18と、端子部圧着部17に一端が電気的に接続され他端が給電対象物12の上面まで延ばされた導電部材19とから構成される。
【0025】
図3に移り、端子部18は、ガラス板11の上面に穴25、26を通して配置された接着剤27を介して、L字形の基部28に接合することができる。
【0026】
図2に戻り、導電部材19は、一端が端子部圧着部17に圧着されるリード線21と、このリード線21の他端が圧着される導電部圧着部22と、この導電部圧着部22を支持する円盤形状の板状部23とから構成される。
【0027】
導電部材19の先端は板状部23である。板状部23を介して給電対象物12は導電部材19に接続される。板状部23が給電対象物12と導電部材19との接続部分を覆うため、接続部分が外観に表れない。接続部分が外観に表れないことにより端子構造の外観が良好になる。
なお、リード線21は圧着の他、溶接等電気的に接続することのできる手段であれば、接続の方法は任意である。
【0028】
図3に示すように、導電部材19は、板状部23が半田又は導電性接着剤等を配置した導電接合部32を介して給電対象物12に電気的に接続されている。
33、34は、接着剤27又は導電接合部32の高さを均一にするために用いる突起部材である。
【0029】
導電接合部32には、無鉛半田を用いることが望ましい。無鉛半田は鉛を含まないため、導電接合部32に無鉛半田を用いることにより、環境性の高い端子構造14又は車両用端子付ガラス板10を提供することができる。
【0030】
端子部18と給電対象物12は、可撓性に富む導電部材19により接続される。導電部材19は可撓性を有するため、他の部品等を避けて配置することができる。加えて、導電部材19の長さは任意の長さとすることができる。即ち、給電対象物12から端子部18が離れた位置であっても自由に配置することができる。配置位置の自由度が高い端子構造ということができる。
【0031】
加えて、導電部材19の先端は、給電対象物12に半田又は導電性接着剤等の導電接合部32を介して接合される。半田又は導電性接着剤は、優れた導電性を有する。優れた導電性を有するため、給電対象物12及び端子構造14に繋げられる機器の導電性を良好に保つことができる。
【0032】
以下に本発明に係る端子構造の別実施例を説明する。
図4は図2の別実施例図であり、図2と共通要素は符号を流用して、詳細な説明は省略する。リード線(図3リード線21)に代えて、可撓性があり表裏面が絶縁性のフィルムで被覆されている薄い金属板36を配置した。
【0033】
このような構造にした場合であっても、給電対象物12から離れた位置に自由に端子構造14を配置することができる。配置位置の自由度が高い端子構造ということができる。
【0034】
図5は図2の更なる別実施例図であり、(a)に示すようにリード線21及び導電接合部32を直接的に接合させた。即ち、板状部(図2板状部23)を用いない構造とした。
【0035】
このような構造にした場合であっても、給電対象物12から離れた位置に自由に端子構造14を配置することができる。配置位置の自由度が高い端子構造ということができる。
【0036】
また、(b)に示すように、端子部18の側面側に端子部圧着部17を配置した場合や、(c)に示すように、端子部18の接続部29側に端子部圧着部17を配置した場合にも、本発明の効果を得ることができる。即ち、端子部圧着部17は、端子部18のうち、任意の場所に配置することができる。
【0037】
本発明に係る端子構造を用いた場合には、端子部18と可撓性の導電部材19とを分割して配置することにより、端子部18に外部機器を接続するときに、外部から導電部材19にかかる荷重を軽減させることができる。外部からの荷重を軽減させることにより、導電部材19を小型化することができ、導電接合部32に用いる導電性接着剤や半田の使用量を低減させることができ有益である。
【0038】
尚、本発明に係る端子構造は、実施の形態では車両用端子付ガラス板に適用したが、建築用防犯窓ガラスや冷凍ショーケース用防曇ガラスにも適用可能であり、用途は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の端子構造は、車両用端子付ガラス板に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る車両用端子付ガラス板を説明する図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】図2の3−3線矢視図である。
【図4】図2の別実施例図である。
【図5】図2の更なる別実施例図である。
【図6】特許文献1に係る技術の基本構成を説明する図である。
【図7】特許文献2に係る技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
10…車両用端子付ガラス板、11…ガラス板、12、13…給電対象物、14…端子構造、18…端子部、19…導電部材、23…板状部、32…導電接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板に接着剤で固定可能な端子部と、この端子部から給電対象物まで延ばされ可撓性に富む導電部材とからなることを特徴とする端子構造。
【請求項2】
前記導電部材の先端は板状部であることを特徴とする請求項1記載の端子構造。
【請求項3】
前記導電部材の先端は、前記給電対象物に半田又は導電性接着剤で接合されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子構造。
【請求項4】
車両用ガラス板と、このガラス板に接着剤で固定された端子部と、この端子部から給電対象物まで延ばされ可撓性に富む導電部材と、からなることを特徴とする車両用端子付ガラス板。
【請求項5】
前記導電部材の先端は板状部であることを特徴とする請求項4記載の車両用端子付ガラス板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−20918(P2010−20918A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177842(P2008−177842)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】