説明

端子金具付き電線

【課題】電蝕が発生し難い端子金具付き電線を提供する。
【解決手段】端子金具付き電線は、電線10と、電線10の端末部に接続される端子金具20とから構成される。電線10の端末部には、芯線11が露出するように周方向の一部の被覆12が除去された露出部13が形成されている。端子金具20は、この露出部13に露出する芯線11に接触した状態で電線10の端末部に接続されている。露出部13周りは、電線10の被覆12が残っているため、この被覆部分と端子金具20との密着により露出部13への浸水を防ぎ、電蝕を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線と、電線の端末部に接続される端子金具とから構成される端子金具付き電線が開示されている。電線の端末部では、芯線周りの被覆が全て除去されている。端子金具は前部に相手端子に接続される端子接続部が形成され、後部に圧着部が形成されている。圧着部は、端子接続部に連なる底板部と、底板部の左右両側縁から立ち上げられた一対のカシメ片とから形成されている。底板部と一対のカシメ片とで被覆が除去された芯線を包囲するように圧着部がかしめられ、端子金具と電線とが接続されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−59304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の端子金具付き電線では、芯線の全周面が圧着部の内面に接触し、接続されている。このため、芯線がアルミニウム製の電線に対し、異種金属である銅合金製の端子金具を接続すると、アルミニウム製の芯線の全周面に異種金属である銅合金製の圧着部の内面が接触した状態になる。異種金属が接触した状態で、その間に水が侵入すると、各金属のイオン化傾向の差により電蝕が起きる。このため、異種金属の芯線と端子金具との間に水が侵入しにくくすることが望ましい。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、芯線と端子金具が異種金属であっても、電蝕が発生し難い端子金具付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、電線と、電線の端末部に接続される端子金具とから構成される端子金具付き電線において、前記電線の端末部には、芯線が露出するように周方向の一部の被覆が除去された露出部が形成され、前記端子金具は、この露出部に露出する芯線に接触した状態で前記電線の端末部に接続されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記端子金具は、前部に形成され、相手端子に接続される端子接続部と、後部に形成され、前記端子接続部に連なる底板部及び前記底板部の左右両側縁から立ち上げられた一対のカシメ片からなる圧着部とを有し、前記露出部を前記底板部の上面に対向させ、前記底板部と前記一対のカシメ片とで前記電線の端末部を包囲するように前記圧着部がかしめられ圧着されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のものにおいて、前記電線は、前記露出部より先端側の全周が被覆により覆われているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
電線の端末部は、周方向の一部の被覆が除去され、他の部分の被覆が残されるため、直接、露出部に水が侵入することを防止することができる。このため、電蝕を発生し難くすることができる。
<請求項2の発明>
圧着部の底板部の上面に対向して露出部を配置し、圧着部をかしめると、カシメ片の内面には電線の被覆が密着した状態となる。このため、各カシメ片の先端部が重なり合った部分から侵入する水は、カシメ片の内面と電線の被覆との間を浸み込み難く、露出部に至り難くすることができる。よって、さらに電蝕を発生し難くすることができる。
<請求項3の発明>
露出部より先端側の全周が被覆により覆われているため、水が電線の先端部の被覆によって堰き止められ、露出部に至り難くすることができる。よって、さらに電蝕を発生し難くすることができる。また、カシメ片をかしめ、電線の端末部が圧着された際に芯線の先端部が広がることを防止することができる。このため、芯線の先端部がかしめられた後のカシメ片の前端上部より上方へはみ出してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1及び図2を参照して説明する。本実施形態の端子金具付き電線は、電線10と、電線10の端末部に接続される端子金具20とから構成されている。電線10は、複数のアルミニウム製の導線からなる芯線11と、芯線11の周囲を覆う絶縁性を有する被覆12とから形成されている。
【0011】
電線10の端末部には、芯線11が露出するように周方向の一部の被覆12がやすり等により削り取られた露出部13が形成されている。露出部13は、芯線11の長さ方向に沿って長い略矩形状である。露出部13の長手方向の長さは、後述する第1バレル部22Aの前後方向の長さよりも短く形成されている。電線10は、露出部13より先端側の全周が被覆12により覆われている。
【0012】
端子金具20は、所定形状に打ち抜いた銅合金製の板材に曲げ加工等を施すことによって形成された雌形のものである。端子金具20の前部には、角筒状をなし、雄形の相手端子に形成された細長い雄タブが挿入され接続される端子接続部21が形成されている。
【0013】
端子金具20の後部には、電線10の端末部を圧着する圧着部22が形成されている。圧着部22は、第1バレル部22Aと、第1バレル部22Aより後方に位置する第2バレル部22Bとを有している。第1バレル部22Aは、端子接続部21に連なる底板部24及び底板部24の左右両側縁から立ち上げられた一対の第1カシメ片23Aから形成されている。底板部24及び第1カシメ片23Aは左右対称の形状に形成されている。第2バレル部22Bは、第1バレル部22Aより後側の底板部24及び底板部24の左右両側縁から立ち上げられた一対の第2カシメ片23Bから形成されている。底板部24及び第2カシメ片23Bも左右対称の形状に形成されている。第1カシメ片23Aの前端下部は、第1連結部25により端子接続部21の側壁部の後端に連結されている。第1カシメ片23Aの後端下部は、第2連結部26により第2カシメ片23Bの前端下部に連結されている。
【0014】
端子金具20の底板部24には、叩き出しにより前後方向に直線状に連続して延びる補強部27が形成されている。補強部27は、前後方向において、第1バレル部22Aの全域に亘っている。補強部27は、図2に示すように、幅方向において、底板部24の中央部のみが局部的に叩き出され、左右対称の形状である。補強部27の左右断面形状は、全長に亘って一定であり、略台形状に形成されている。補強部27の上面(露出部13と対向する面)は長さ方向に沿って平坦面28が形成されている。
【0015】
このように構成された端子金具20に対して、電線10の端末部に形成された露出部13が第1バレル部22Aの底板部24の上面に対向するように、電線10を底板部24に載置する。この際に、電線10は露出部13が平坦面に当接する向きでセットされる。この状態で、第1カシメ片23A及び第2カシメ片23Bにかしめ加工を行う。第1バレル部22Aでは、第2図に示すように、底板部24と一対の第1カシメ片23Aとで電線10の端末部を包囲し、第1カシメ片23Aの先端縁が底板部24に向かうようにかしめられる。底板部24の上面には、露出部13から露出する芯線11が接触し、第1カシメ片23Aの内面には、電線10の被覆12が密着している。このため、各第1カシメ片23Aの先端部が重なり合った部分から侵入する水は、第1カシメ片23Aの内面と電線10の被覆12との間を浸み込み難く、露出部13に至り難くすることができる。よって、露出部13に露出する芯線11と底板部24の上面との間で電蝕を発生し難くすることができる。
【0016】
電線10は、露出部13より先端側の全周が被覆12により覆われているため、水が電線10の先端部の被覆12によって堰き止められ、露出部13に至り難くすることができる。よって、露出部13に露出する芯線11と底板部24の上面との間で電蝕をさらに発生し難くすることができる。加えて、第1カシメ片23Aがかしめられ、電線10の端末部が圧着された際に芯線11の先端部が広がることを防止している。このため、図示しないが、芯線11の先端部がかしめられた後の第1カシメ片23Aの前端上部よりも上方にはみ出すことなく端子金具20に接続することができる。
【0017】
端子金具20の底板部24に形成された補強部27は、底板部24の幅方向において、第1カシメ片23Aの先端縁に対向する位置に形成され、底板部24の剛性を高めている。このため、第1バレル部22Aをかしめる際に第1カシメ片23Aを上方から押圧する力が底板部24に作用しても、端子金具20が長手方向に上反り変形するのを防止することができる。また、補強部27の上面が平坦面28に形成されているため、芯線11を平坦面28に良好に接触させることができる。
【0018】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図3を参照して説明する。本実施形態2の端子金具付き電線は、端子金具20の底板部24を上記実施形態1とは異なる構造とし、電線10を底板部24に載置する際の露出部13の向きを上記実施形態1とは異なる向きにしたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0019】
本実施形態2の端子金具20の底板部24は、端子接続部21に連なる平坦面である。この端子金具20に対して、電線10の端末部に形成された露出部13が一方の第1カシメ片23Aの内面に対向するように、電線10を底板部24に載置する。この状態で、第1カシメ片23A及び第2カシメ片23Bを上方から押圧する。第1バレル部22Cでは、露出部13から露出する芯線11は、一方の第1カシメ片23Aの内面の中間部から一方の第1カシメ片23A側の底板部24の上面にかけて接触する。また、電線10の被覆12は、第1バレル部22Cの内面の他の部分に密着している。このため、各第1カシメ片23Aの先端部が重なり合った部分から侵入する水は、第1カシメ片23Aの内面と被覆12との間を浸み込み難く、露出部13に侵入し難くすることができる。よって、露出部13に露出する芯線11と一方の第1カシメ片23A等の内面との間で電蝕を発生し難くすることができる。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、芯線がアルミニウム製の電線と銅合金製の端子金具とから構成される端子金具付き電線について説明したが、本発明は、芯線と端子金具とが異種金属である端子金具付き電線に適用することができる。
(2)上記実施形態では、雌形の端子金具について説明したが、本発明は、雄形の端子金具にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の端子金具付き電線に係り、端子金具と電線とを接続する前の状態を示す側面図
【図2】実施形態1の第1バレル部の断面図
【図3】実施形態2の第1バレル部の断面図
【符号の説明】
【0022】
10…電線
11…芯線
12…被覆
13…露出部
20…端子金具
21…端子接続部
22…圧着部
23A、23B…カシメ片(23A…第1カシメ片、23B…第2カシメ片)
24…底板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、電線の端末部に接続される端子金具とから構成される端子金具付き電線において、
前記電線の端末部には、芯線が露出するように周方向の一部の被覆が除去された露出部が形成され、
前記端子金具は、この露出部に露出した芯線に接触する状態で前記電線の端末部に接続されていることを特徴とする端子金具付き電線。
【請求項2】
前記端子金具は、前部に形成され、相手端子に接続される端子接続部と、後部に形成され、前記端子接続部に連なる底板部及び前記底板部の左右両側縁から立ち上げられた一対のカシメ片からなる圧着部とを有し、
前記露出部を前記底板部の上面に対向させ、前記底板部と前記一対のカシメ片とで前記電線の端末部を包囲するように前記圧着部がかしめられていることを特徴とする請求項1に記載の端子金具付き電線。
【請求項3】
前記電線は、前記露出部より先端側の全周が被覆により覆われていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の端子金具付き電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−61906(P2010−61906A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224767(P2008−224767)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】