説明

端子金具及びカードエッジコネクタ

【課題】製造効率を向上させた端子金具及びその端子金具を備えるカードエッジコネクタを提供する。
【解決手段】電線41を圧着するバレル部11と、バレル部11の一端に形成され底壁部21、その両側部から一体に立ち上がる側壁部22及び各側壁部22から一体に折り曲げられた天井部23を備える箱形部20と、箱形部20の底壁部21に開口形成された開口部25と、箱形部20のうち底壁部21のバレル部11とは反対側の一端から延出された状態からバレル部11側に向かって折り返されその一部を開口部25から箱形部20の外に突出させて相手側との接触部33を形成する接触片30と、箱形部20内に収容され接触部33を開口部25から突出する方向に付勢する弾性部材40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に形成した導電路に接触される端子金具及びその端子金具を備えるカードエッジコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードエッジコネクタに用いられる端子金具として、特許文献1に記載のものが知られている。この端子金具は、圧着された電線と回路基板の導電路とを接続するものであって、図10に示すように電線の端末に接続されるバレル部2と、バレル部2の一端に連続して設けられ、回路基板側に接続する箱状の本体部3とから構成される。図11に示すように、本体部3内にはその底壁4に沿うように一体に設けられる接触片5が折り曲げて収容されており、接触片5の一部は底壁4に開口した開口部4Aから本体部3の外部に突出し、回路基板の導電路に接触する接触部5Aとされている。本体部3内にはさらに接触部5Aを開口部4Aから突出させる方向に付勢する別部品の板ばね6が収容されており、この板ばね6の弾性力によって、導電路に対する接触部5Aの接圧が保たれている。
【0003】
ところで、このような端子金具1は、図12に示すような端子金具1の材料となる銅合金板7を打ち抜き、その後この打ち抜いた銅合金板7をプレス加工することで得られる。本体部3に関しては、図12に示す一点鎖線に沿って折り曲げることで成形され、底壁4の両側縁を折り返すことで側壁8を形成するとともに、底壁4及び側壁8に並列して打ち抜かれた接触片5を同方向に折り返し線d,e,fに沿って3回折り曲げることで底壁4に重畳される。この接触片5は、さらにその折り曲げ方向とは直交する方向に折り曲げることで接触部5Aを形成し、その後、板ばね6を巻き込みつつ側壁8の側部を折り曲げて底壁4に対向する天井壁9を形成することで、板ばね6を収容した本体部3を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−98062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこのような構成によると、所定形状に打ち抜いた銅合金板7の状態において接触片5は底壁4及び側壁8の側方に横並びとなるように打ち抜かれており、一端子金具1当たりに必要となる銅合金板7の幅が広く、一度にプレス機に導入して得られる端子金具1の数を多く確保することができなかった。また、本体部3を成形するには複数回折り曲げることで接触片5を底壁4上に配置しなければならず、工数の削減による製造効率の向上が求められている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造効率を向上させた端子金具及びその端子金具を備えるカードエッジコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定形状に打ち抜いた金属板をプレス装置によって複数回折り曲げて形成される端子金具であって、電線を圧着するバレル部と、前記バレル部の一端に形成され底壁部、その両側部から一体に立ち上がる側壁部及び各側壁部から一体に折り曲げられた天井部を備える箱形部と、前記箱形部の前記底壁部に開口形成された開口部と、前記箱形部のうち前記底壁部の前記バレル部とは反対側の一端から延出された状態から前記バレル部側に向かって折り返されその一部を前記開口部から前記箱形部の外に突出させて相手側との接触部を形成する接触片と、前記箱形部内に収容され前記接触部を前記開口部から突出する方向に付勢する弾性部材と、を備えることに特徴を有する。
【0008】
このような構成によれば、接触片は、箱形部を構成する底壁部のバレル部とは反対側の一端から延出されており、バレル部側に向かって折り返すことで相手側との接触部を形成するから、従来の例えば接触片が底壁部及び側壁部の側方に横並びになるように形成されている場合と比較して、接触部を形成するために折り返す回数を削減することができ、プレス工程における工数削減による製造効率の向上を図ることができる。また、折り返す回数を削減することで、接触片により形成される接触部の位置精度を向上させることができる。
【0009】
また、接触片の折り曲げる方向と、側壁部及び天井部を折り曲げる方向とが異なるから、先に接触片を折り曲げた後で、例えば弾性部材を巻き込みながら側壁部及び天井部を折り曲げて箱形部を成形することができ、プレススピードを上げることができる。つまり、上記従来例のように、接触片が底壁部及び側壁部に対して横並びに形成されている場合には接触片の折り曲げる方向と側壁部及び天井部を折り曲げる方向とが一致する。そのため、接触片を折り曲げて接触部を形成する工程と、弾性部材を巻き込みながら側壁部及び天井部を折り曲げて箱形部を形成する工程とを同時に同じ方向から行わなければならず、プレススピードを上げることが困難であった。しかしながら、本発明のように接触片の折り曲げ方向を側壁部及び天井部の折り曲げ方向に対して異なる方向とすれば、それぞれの工程を独立して行うことができ、プレススピードを上げることが可能となる。
【0010】
また、接触片を底壁部のバレル部とは反対側の一端から延出させることで、従来例の接触片を底壁部及び側壁部に対して横並びに形成する場合と比較して、端子金具の製造工程において所定形状に打ち抜いた金属板の一端子金具当たりの幅寸法が狭くなるため、一度にプレス機に導入できる金属板の一端子金具当たりの数を増やすことができる。つまり、接触片の位置を変更することによって一度にプレス成形可能な数を増やすことができるから、このような金属板における単なる材料取りの変更によっても製造効率を向上させることができる。
【0011】
前記所定形状に打ち抜かれた前記金属板において、前記天井部となる部分の前記バレル部との反対側には前記天井部側から前記底壁部側に折り曲げられることで前記箱形部の前面壁を構成する前面板部が形成されていることが望ましい。上記従来例の接触片を底壁部及び側壁部に対して横並びに形成する場合においては、前面壁を構成する部位は底壁部のバレル部とは反対側の位置に形成されていた。つまり、本発明の接触片が設けられる位置に前面壁を構成する部位が設けられていたのだが、この前面壁を構成する部位を天井部となる部分のバレル部とは反対側の位置へと移動して前面板部とすることで本発明の接触片を上述の所定位置に形成することを可能にしている。
【0012】
前記所定形状に打ち抜かれた前記金属板において、折り曲げられて前記接触片を構成する部分は、前記底壁部となる部分から延出して途中から前記バレル部側に折り返される接触片本体部と、前記接触片本体部の先端側に位置し、前記接触片本体部が前記開口部を跨った状態となるように前記バレル部側の開口縁部に係止される係止部と、前記接触片本体部のうち前記開口部から前記箱形部の外側へ露出する前記接触部と、前記接触部の幅方向両側部から突出する平板片と、を備え、前記接触部において、前記平板片が前記接触部の中心側に折り返され、前記弾性部材は折り返された前記平板片に接していてもよい。
【0013】
このような構成によれば、弾性部材が接触する部位は接触部の両側部から突出する平板片を折り返すことで形成されるから、例えば接触片本体部を折り返すことで積層させて形成するよりも、弾性部材が接触する部位を構成するのに必要となる金属板量を少なくすることができ、材料費低減及び軽量化を図ることができる。
【0014】
即ち、接触片本体部を折り返すことで積層させて弾性部材が接触する部位を形成しようとすると、接触片本体部の先端部に形成された係止部のさらに先端側にその積層させる分を余分に延出させる必要がある。そして、この積層させる分を折り返して接触部上に配すると、本来積層させる必要のない係止部上にも接触片本体部から延出させた一部が積層することとなる。これに対して、接触部の幅方向両側部から突出する平板片を折り返すことで弾性部材が接触する部位を形成すれば、係止部上に積層する余分な部位が生じない。このように余分な部位が生じない構成とすることにより、材料費削減及び軽量化を実現している。また、接触部の幅方向両側部から平板片を突出させることで、係止部の先端側に弾性部材が接触する部位を形成するよりも、端子金具の延出方向の長さを抑えることができる。加えて、平板片は、金属板のうち打ち抜かれた際に廃棄される余った部分を利用して形成することができるから、材料取りに優れたものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造効率を向上させた端子金具及びその端子金具を備えるカードエッジコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る端子金具の平面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】端子金具の側面図
【図4】図3のB−B断面図
【図5】端子金具の底面図
【図6】同展開図
【図7】電線を圧着した状態の端子金具の平面図
【図8】端子金具を収容したカードエッジコネクタの平面図
【図9】図8のC−C断面図
【図10】従来例の端子金具の平面図
【図11】図10のD−D断面図
【図12】従来例の端子金具の展開図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図9によって説明する。
本実施形態の端子金具10は、図8及び図9に示すように端子側ハウジング51に収容されカードエッジコネクタ50を構成するものであって、回路基板70(基板に相当する)の両側方から一対のカードエッジコネクタ50を装着することで、回路基板70の表裏両面に配索された図示しない導電路と端子金具10に圧着された電線40とを電気的に接続する。以下、端子金具10の端子側ハウジング51への挿入側を前側、電線40側を後側、図1の紙面手前側を上側、同奥側を下側として説明する。
【0018】
端子金具10は、導電性に優れた銅合金等の金属板を図6に示す所定形状に打ち抜いて曲げ加工等を施して形成されたものであって、図1ないし図5に示すように、後述する電線41を圧着するバレル部11と、バレル部11の前方に一体に設けられた箱形部20とを備えている。バレル部11は、電線41の芯線41Aを圧着するワイヤーバレル11Aと、電線40の絶縁被覆部41Bを圧着するインシュレーションバレル11Bとから構成される。
【0019】
ワイヤーバレル11Aから延設された箱形部20は、断面方形をなし、曲げ加工により箱状に成形されたものであって、主に回路基板70側に配される底壁部21と、底壁部21の両側部から立ち上がり、対向状に配される一対の側壁部22と、各側壁部22の上縁に延設され、一方の側壁部22の上縁から他方の側壁部22の上縁に向けて互いに折り返されることで形成され、底壁部21に対向する天井部23とから構成される。天井壁23の前側にはランス係止孔24が形成されており、このランス係止孔24に端子側ハウジング51のキャビティ52内に設けられたランス53が係止されることで、端子金具10を端子側ハウジング51に対して抜け止め状態に保持することができる。
【0020】
底壁部21の前後方向略中間位置には開口部25が開口形成されている。この開口部25は、本端子金具10を収容したカードエッジコネクタ50を回路基板70に装着した際にその表裏両面に配索された導電路に臨む位置に形成されている。開口部25には、底壁部21の前端から延出する接触片30が箱形部20の内側に跨って配されており、このうち、開口部25から箱形部20の外部へ突出する部位は詳しくは後述するが接触部33とされている。
【0021】
箱形部20には、この接触部33を開口部25から突出させる方向に付勢する弾性部材40が収容されている(図2参照)。弾性部材40はステンレス(SUS)材をU字状に折り曲げて形成した板ばねであって、底壁部21と天井部23との間に圧縮状態で収容されている。この弾性部材40の付勢力により接触部33の導電路に対する接圧が確保されている。
【0022】
天井部23のうち、接触部33に対向する位置からは、過度撓み規制片26が底壁部21に向かって突出している。過度撓み規制片26は天井部23から切り起こし形成されており、この天井部23からの突出高さは接触部33が箱形部20内に向かって過度に撓み変形して塑性変形することを規制可能な高さ寸法に設定されている。
【0023】
箱形部20において、ランス係止孔24に対向する底壁部21の前方部分は、図2及び図3に示すように、底壁部21よりも上下方向の厚さが一段薄く形成された前面壁12により構成されている。この前面壁12は、側壁部22の前側上端から延設され、下方に向けて折り曲げられ、さらに底壁部21に向かって折り返されることで形成されている。この前面壁12は端子側ハウジング51のキャビティ52内に設けられた受け壁56に嵌合することで後述する接点部34の位置決めを行い、さらには端子金具10の端子側ハウジング51に対する誤挿入防止機能を果たしている。
【0024】
続いて、接触片30について詳しく説明する。接触片30は、図6に示すように端子金具10を形成すべくプレスによって金属板から所定形状に打ち抜いた後であってプレス曲げする前(展開状態)では底壁部21の前端から底壁部21に対して一直線上に(または端子金具10の軸線を同じとして)延びる片持ち状の接触片本体部31により構成されている。接触片本体部31は、折り返し線aに沿って紙面表面側が谷となるように折り返されることで、図2に示すように箱形部20内の底壁部21上に重畳される。接触片本体部31の先端には係止部32が設けられており、開口部25のバレル部11側の開口縁部25Aにこの係止部32が係止されることで、係止部32後方に設けられた接触部33の抜け止めが図られている。
【0025】
接触部33は、図6に示すように、箱形部20の外側となる下方に向かって突出する接点部34と、接点部34の両側部から突出する一対の平板片35とから構成される。接点部34は図2ないし図5に示すように、接触片本体部31のうち接触部33を形成する部分の略中央部を下方に膨出させて形成され、この突出端部が回路基板70の導電路に接触する。平板片35は図4に示すように、接触部33の中央部に向かって折り込まれることで弾性部材40に当接する当接面35Aを形成する。
【0026】
以上のような構成をなす端子金具10には電線41の端末が接続される。詳しくは後述するが、図7に示すように、電線41の芯線41Aにワイヤーバレル11Aを、電線41の絶縁被覆部41Bにインシュレーションバレル11Bをかしめ付けることで、端子金具10に電線41が接続された状態となる。この電線41を接続した状態の端子金具10は続いて説明する端子側ハウジング51に収容されることでカードエッジコネクタ50を構成する。
【0027】
カードエッジコネクタ50は、図8及び図9に示すように、端子金具10を収容する端子側ハウジング51と、その端子側ハウジング51をさらに収容し回路基板70に装着される基板側ハウジング60とを含んで構成されている。端子側ハウジング51は合成樹脂製であって、図9に示すように前後方向に貫通する複数のキャビティ52が上下2段に形成されている。これらキャビティ52内には後方から端子金具10が挿入可能とされており、キャビティ52内には、挿入された端子金具10の天井部23に形成されたランス係止孔24に係止されるランス53が突設されている。ランス53は上下方向に撓み変形可能であって、端子金具10はランス53を撓ませてキャビティ52に挿入され、ランス係止孔24に弾性復帰したランス53を係止させることで、端子金具10を端子側ハウジング51に対して抜け止め状態に保持させる構成となっている。
【0028】
端子側ハウジング51の上下両側面からは、基板側ハウジング55に収容された際に正規嵌合状態に係止する係止部54が突設されている。また、上下2段のキャビティ52の間には、端子側ハウジング51の前面に開口し回路基板70を受け入れる基板挿入空間55が形成されている。基板挿入空間55のうち、前側の上下側壁を構成する受け壁56は装着される回路基板70を端子側ハウジング51の後方に案内すると共に、キャビティ52側においては端子金具10の前面壁12に嵌合することで端子金具10の端子側ハウジング51に対する誤挿入防止及び接点部34の位置決めを可能にしている。
【0029】
一方、基板側ハウジング60は合成樹脂製であって、前方に開口したフード部61を備え、フード部61内には端子側ハウジング51が嵌合可能とされている。基板側ハウジング60の後側面には端子側ハウジング51を挿入可能なハウジング挿入口62が開口しており、このハウジング挿入口62の開口縁部からはフード部61内を前方に向かって延びる係止受け部63が突設されている。端子側ハウジング51が基板側ハウジング60のハウジング挿入口62から挿入されると、係止受け部63の前端縁部に端子側ハウジング51の係止部54が係止され、これにより端子側ハウジング51は基板側ハウジング60に対して抜け止めすることができる。
【0030】
この端子側ハウジング51を嵌合した一対の基板側ハウジング60をそれぞれ対向する回路基板70の側方から装着し、回路基板70の外周を覆った状態で一対の基板側ハウジング60が互いに嵌り合うことで、カードエッジコネクタ50の嵌合作業が完了する。この際、一対の基板側ハウジング60が互いに嵌合する前端部には、ロック突部64Aとロック孔64Bからなるロック部64が設けられている。一方の基板側ハウジング60に設けられたロック突部64Aが他方の基板側ハウジング60に設けられたロック孔64Bに係止されることで、一対の基板側ハウジング60は互いに嵌合した状態を保持することができる。
【0031】
続いて本実施形態の作用について説明する。
端子金具10はまず、銅合金等の金属板から所定形状を打ち抜くことで、図6に示す平板状の端子金具素片80を成形し、続いて曲げ加工を施す周知の順送プレス工程により製造することができる。端子金具素片80は、長尺帯状をなすキャリア81に並列して連ねられており、このキャリア81の長手方向に沿ってプレス機に導入される。なお、このキャリア81からは、端子金具素片80が所定の端子金具10形状に成形された後のプレス工程の最終段階で切り離される。
【0032】
端子金具素片80は、主にキャリア81に連なるバレル部11と、バレル部11の前端に連なる箱形部20と、箱形部20の底壁部21の前端から同軸上に延びる接触片本体部31とから構成される。接触片本体部31の先端側には、係止部32に続いて接点部34が形成され、接点部34の両側部には平板片35が突設されている。底壁部21の両側部には側壁部22、さらに各側壁部22の幅方向の側部には天井部23が形成され、天井部23の前部には、曲げ加工した際に開口部25となる凹部82が形成されている。また、一方の天井部23のバレル部11とは反対側となる前方には、接触片30に対して並列をなす前面板部83が延出されている。この前面板部83は天井部23側から底壁部21側に向かって折り曲げられることで箱形部20の前面壁12となる。
【0033】
このような構成の端子金具素片80は次のようにして所定の端子金具10形状に成形される。まず、平板片35を接点部34上に折り込んだ状態の接触片本体部31を折り返し線aに沿って紙面表面側が谷となるように折り返して、接触部33を形成する。次に、折り返し線b及び折り返し線cを紙面表面側が谷となるように略直角に折り曲げつつ、弾性部材40を巻き込んだ状態で箱形部20を成形する。その他、必要箇所に曲げ加工、切り起こし加工を施すことにより図1ないし図5に示す端子金具10を得ることができる。
【0034】
続いて、図7に示すように端子金具10に電線41を圧着する。具体的には、端子金具10のワイヤーバレル11A上に電線41の端末において絶縁被覆を剥がすことで露出させた芯線41Aを載置し、インシュレーションバレル11B上には電線41の絶縁被覆部41Bを載置する。この状態の端子金具10及び電線41を外周から押圧することで、ワイヤーバレル11Aを芯線41Aの外周にかしめ付け、インシュレーションバレル11Bも同様に絶縁被覆部41Bの外周にかしめ付ける。
【0035】
こうして、電線41を圧着した端子金具10は、続いて端子側ハウジング51に収容される。具体的には、端子金具10を端子側ハウジング51のキャビティ52の後方から挿入する。すると、キャビティ52の一側壁である受け壁56に端子金具10の前面壁12が合致し、ランス係止孔24にランス53が係止される。このように端子金具10を正規位置に挿入した後、端子側ハウジング51を基板側ハウジング60に組み付けることで、図8又は図9に示すカードエッジコネクタ50を得ることができる。
【0036】
カードエッジコネクタ50を回路基板70に装着するには、まず回路基板70を基板側ハウジング60のフード部61からその奥側に位置する基板挿入空間55に挿入する。回路基板70が基板挿入空間55の正規位置に至ると、回路基板70の表裏両面に形成された導電路に接触部33の接点部34が当接して、端子金具10を介した電線41と導電路との電気的接続がなされる。この状態において回路基板70の両側方から装着されたカードエッジコネクタ50は、基板側ハウジング60に設けられたロック部64により互いに係止されることで回路基板70への装着が完了し、当該回路基板70は基板側ハウジング60内に収容された態様をなす。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、接触片30を構成する接触片本体部31は図6に示すように箱形部20を構成する底壁部21のバレル部11とは反対側の一端から延出されており、この接触片本体部31を折り返し線aに沿って紙面表面側が谷となるように1回折り返すことで底壁部21上に接触片30を配することができる。図12に示す従来例においては、底壁4及び側壁8に並列して接触片5が形成されているために、接触片5は折り返し線d,e,fの少なくとも3回折り曲げなければ底壁4上に配することができない。これに対して、本実施形態においては底壁部21上に配するために折り返す回数を少なくとも3回から1回に削減することができるから、プレス工程における工数削減による製造効率の向上を図ることができる。また、この折り返す回数を削減することで、接触片本体部31により形成される接触部33の特に接点部34の位置精度を向上させることができる。
【0038】
また、折り返し線aに関して接触片本体部31の折り曲げる方向と、折り返し線b,cに関して側壁部22及び天井部23の折り曲げる方向とが異なるから、先に接触片本体部31を折り曲げた後で、側壁部22及び天井部23を折り曲げて形成しつつ、弾性部材40を巻き込みながら箱形部20を成形することができ、プレススピードを上げることができる。つまり、図12に示す従来例においては、接触片5が底壁4及び側壁8に対して横並びに形成されていたため、接触片5の折り曲げる方向と側壁8及び天井壁9の折り曲げる方向とが一致していた。これにより、接触片5を折り曲げて接触部5Aを形成する工程と、板ばね6を巻き込みながら側壁8及び天井壁9を折り曲げて本体部3を形成する工程とを同時に同じ方向から行わなければならず、プレススピードを上げることが困難であった。しかしながら本実施形態によれば、上記2つの工程を独立して行うことができるから、プレススピードを上げることが可能となる。
【0039】
また、接触片本体部31を底壁部21のバレル部11とは反対側の一端から延出させることで、図12に示す従来例の接触片5を底壁4及び側壁8に対して横並びに形成する場合と比較して、端子金具素片80の幅寸法が狭くなるため、一度にプレス機に導入できる端子金具素片80の数を増やすことができる。つまり、一度にプレス成形可能な端子金具素片80の数を増やすことができるから、金属板における単なる材料取りの変更によっても製造効率を向上させることができる。
【0040】
また、前面壁12を形成する前面板部83を天井部23のバレル部11とは反対側となる前方から延出させることで、底壁部21のバレル部11とは反対側の一端から接触片本体部31を延出させることを可能にしている。つまり、図12の従来例において、その接触片本体部31が延出される位置には前面壁12を形成する部位が配されていた。この前面壁12を形成する部位を天井部23の一端側に前面板部83として移動することで、本実施形態の接触片本体部31を所望の位置に形成することを可能にしたのである。
【0041】
また、弾性部材40が接触する当接面35Aは接点部34の両側部から突出する平板片35を接触部33の中央部に向かって折り込まれることで形成されているから、例えば図11に示すように接触片5の先端部を折り返して積層させることで当接面35Aを形成するよりも、端子金具素片80を構成する金属板量を少なくすることができ、材料費低減及び軽量化を図ることができる。つまり、図11に示す従来例の場合には、接触部5Aだけでなく、開口部4Aに係止される部分にも折り返した接触片5が積層している。これに対して、平板片35は接触部33上にのみ積層するから、余分に積層する部位が生じず、材料費削減等に寄与することが可能となる。
【0042】
また、接触部33の幅方向両側部から平板片35を突出させることで、当接面35Aを接触片本体部31を折り返して形成する場合と比較して、その接触片本体部31の延出方向の長さを抑えることができ、さらには、金属板のうち打ち抜かれて廃棄される余った部分を利用して平板片35を形成することができるから、材料取りに優れたものとすることができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
(1)上記実施形態において、弾性部材40に対する当接面35Aは平板片35を接触部33上に折り込むことで形成されていたが、これに限られず、例えば接触片本体部を延長して、その先端を折り返すことで当接面35Aが形成されていてもよい。
【0045】
(2)上記実施形態において、弾性部材40としてはSUS材をU字状に折り曲げた板ばねを例示したが、これに限られず、例えばコイルばねであってもよい。
【0046】
(3)上記実施形態において、端子金具10が収容される端子側ハウジング51のキャビティ52は上下2段に形成されていたが、これに限られず、例えば一段に形成されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…端子金具
11…バレル部
12…前面壁
20…箱形部
21…底壁部
22…側壁部
23…天井部
25…開口部
30…接触片
31…接触片本体部
33…接触部
35…平板片
40…弾性部材
41…電線
50…カードエッジコネクタ
51…端子側ハウジング
60…基板側ハウジング
70…回路基板
80…端子金具素片
83…前面板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に打ち抜いた金属板をプレス装置によって複数回折り曲げて形成される端子金具であって、
電線を圧着するバレル部と、
前記バレル部の一端に形成され底壁部、その両側部から一体に立ち上がる側壁部及び各側壁部から一体に折り曲げられた天井部を備える箱形部と、
前記箱形部の前記底壁部に開口形成された開口部と、
前記箱形部のうち前記底壁部の前記バレル部とは反対側の一端から延出された状態から前記バレル部側に向かって折り返されその一部を前記開口部から前記箱形部の外に突出させて相手側との接触部を形成する接触片と、前記箱形部内に収容され前記接触部を前記開口部から突出する方向に付勢する弾性部材と、を備える端子金具。
【請求項2】
前記所定形状に打ち抜かれた前記金属板において、前記天井部となる部分の前記バレル部との反対側には前記天井部側から前記底壁部側に折り曲げられることで前記箱形部の前面壁を構成する前面板部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記所定形状に打ち抜かれた前記金属板において、折り曲げられて前記接触片を構成する部分は、前記底壁部となる部分から延出して途中から前記バレル部側に折り返される接触片本体部と、前記接触片本体部の先端側に位置し、前記接触片本体部が前記開口部を跨った状態となるように前記バレル部側の開口縁部に係止される係止部と、前記接触片本体部のうち前記開口部から前記箱形部の外側へ露出する前記接触部と、前記接触部の幅方向両側部から突出する平板片と、を備え、
前記接触部において、前記平板片が前記接触部の中心側に折り返され、前記弾性部材は折り返された前記平板片に接していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記接触部は基板の表面に形成した導電路に接触することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子金具。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の前記端子金具を備えたカードエッジコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−38422(P2012−38422A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174400(P2010−174400)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】