説明

競技場用土壌及びその製造方法

【課題】 本発明は、極力メンテナンスに掛ける労力を抑えつつ、良好なコンディション(色彩・透水性・保水性・クッション性など)の競技場を維持することの出来る競技場用土壌とその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 少なくとも黒土と、粒状若しくは粉末状の炭化物によって本発明の競技場用土壌を構成する。この競技場用土壌は、黒土とともに粒径が3mm以下の植物材料を200〜400℃で焼成させることで製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、競技場、特に野球場を主とするグラウンドに使用する黒色土壌とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競技場、特に野球場では、黒土と砂とを混合した調整土を使用することが非常に多い。これは、競技中にボールが視にくくなることを防ぐため、グラウンドとボールとのコントラストを明確にするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−161510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような調整土では、粒子の細かい黒土が降雨などによって沈降するために砂分が表面に露出してしまい、定期的に整備を行わなければ表面が砂で白っぽくなって競技に支障が出る恐れが有る。
【0005】
また、埃が立つ、水はけが悪い、土が固くなるなどの問題点も存在しており、良好なグラウンドコンディションを保つにはかなりの労力・コストを掛けなければならなかった。
【0006】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、極力メンテナンスに掛ける労力を抑えつつ、良好なコンディション(色彩・透水性・保水性・クッション性など)の競技場を維持することの出来る競技場用土壌とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の競技場用土壌は、少なくとも黒土と粒状若しくは粉末状の炭化物を含むことを特徴としている(請求項1)。
【0008】
ここで使用する炭化物とは、黒色若しくはそれに類する色で有りさえすれば特に限定はなく、具体的には活性炭,木炭,ヤシ殻炭,竹炭,コーヒー炭などが挙げられる。特にコーヒー粕を原料とした炭化物(コーヒー炭)は、安価且つリサイクルに貢献できる点で好適である。
【0009】
また、この発明は別の観点から、粒径が3mm以下の植物材料と黒土を200〜400℃で焼成することで、雑草種子の駆除と同時に植物材料を炭化させることを特徴とする競技場用土壌の製造方法を提供する(請求項2)。
【0010】
更には、植物材料と黒土を200〜400℃で焼成することで、雑草種子の駆除と同時に植物材料を炭化させ、その後に全体の70%以上を粒径3mm以下に破砕させることで競技場用土壌を製造してもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、砂の代替として炭化物を用いる事により、炭化物の多孔質性によって黒土粒子を吸着させることができるため、降雨による黒土粒子の沈降を抑制することが可能となる。また、炭化物ばかりがグラウンド表面に露出したとしても、その色は黒若しくはそれに類する色で有るため、ボールの視認性を保つ事ができる。更には、炭化物によって適度な保水性・排水性を同時に持たせることが出来るため、乾燥時の埃発生を防ぐとともに水はけを改善でき、空隙によってグラウンドのクッション性も向上させることが出来る。
【0012】
また、この発明における製造方法によれば、黒土内の種子・菌・病害虫駆除とコーヒー粕の炭化を同時に行うことができ、工程短縮化とコスト縮減に貢献することが出来る。
【0013】
更には、生の状態では破砕作業の行いにくい植物材料であっても炭化後であれば破砕作業が容易であるため、大き目の植物材料や大きさの不揃いな植物材料などの使用しにくい植物材料であっても競技場用土壌の構成材料として用いる事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための第1の形態について説明する。
【0015】
本発明における競技場用土壌は、従来のグラウンド用土壌と同様に黒土をベースとし、これに粒状又は粉末状の炭化物(本実施例では粒状活性炭)を混合してなるものである。
【0016】
この混合比率については、所望する透水率などによって適宜設定でき、更には必要に応じて砂,粘土,赤土などを混合させることも可能である。特に砂を使用すると、従来のグラウンド用土壌と物性や維持管理手法を同じ様にすることができ好適である。
【0017】
また、体積において黒土と炭化物の合計割合が競技場用土壌全体の60%以上であることが好適である。これよりも少なくなると、場合によっては土壌表面の黒さが失われて競技に支障が出る恐れが有る。ちなみに、砂を用いる場合は、黒土と炭化物の合計体積割合が砂の倍以上となるように設定する事が好ましい。
【0018】
以上を踏まえ、黒土30%、赤土20%、砂20%、粒状活性炭30%の割合で混合させた競技場用土壌を調整し、これを野球場のグラウンドに施用した。また、同様に従来のグラウンド用土壌を用いた野球場グラウンドを比較対象として用意し、実際に競技・維持管理作業を行って比較した。
【0019】
その結果、本発明における競技場用土壌は従来のグラウンド用土壌と比較して透水性・保水性が向上し、散水作業の効率化および使用時の土埃発生低減が確認できた。
【0020】
また、競技者によるアンケート結果においてクッション性が向上したとの回答が多く有った。これは、炭化物の持つ空隙による効果と考えられ、競技中の怪我発生率を抑えたり、締め固めにより土壌が硬化し過ぎることを防ぐ事に繋がると思われる。
【0021】
その後、1週間(内、2日間は雨天)何も手をつけずに放置して、放置後の状況で比較を行った。その結果、本願発明の競技場用土壌を施用したグラウンドは従来のものよりも表面の色彩が黒いままであることが確認された。
【0022】
この時のグラウンド表面を調べてみた所、従来のグラウンド用土壌は黒土の粒子が減少し砂が多く析出していたが、本発明の土壌では黒土の粒子が炭化物とともに表面付近に多く残存していることも確認できた。これは、炭化物の持つ微細な孔によって黒土の粒子が沈降しにくくなったためと考えられる。
【0023】
また、この状態で更にグラウンドを使用していくことで若干は黒土粒子の沈降も発生するが、その場合でも従来品は表面が砂ばかりで白っぽくなってしまうのに対し、本願発明では砂以外にも黒い炭化物が表面に残る。そのため、グラウンド表面を黒い状態で保つことができ、競技者のボール視認性を十分に確保することが出来るのである。
【0024】
本発明における競技場用土壌は、上述の通り黒土と炭化物を混合する事で製造できるが、黒土と炭化前の粒状植物材料から製造することもできる。以下、この製造方法を第2の実施形態として記載する。
【0025】
まず、元々粒径が3mm以下の植物材料若しくは粒径を3mm以下に調整した植物材料を準備する。利用する植物材料の粒径が3mmよりも大きいと、競技場用土壌としてはこの様な植物材料としては、例えば間伐材や低位利用木材やヤシ殻などを粉砕したもの、コーヒー粕、米ぬか、おがくずなどが挙げられる。特にコーヒー粕は粒径調整が不要且つ環境的観点から好適であるため、本実施形態ではコーヒー粕にて説明を行う。
【0026】
上述のコーヒー粕を黒土・砂とともに焼成装置に投入し、約300℃で1時間ほど焼成させる。この焼成工程は、黒土や砂に含まれる菌や植物種子、微生物などが駆除するために行うものであるが、生の状態であるコーヒー粕もここで炭化され、水分や匂いも除去されることになる。つまり、本製造方法によれば、炭化物ではなく安価なコーヒー粕を利用してコスト面・環境面に配慮するだけでなく、炭化工程を省略化することで製造工程を短縮するとともに製造コストを低減させることができるのである。
【0027】
この際の焼成温度としては、200℃〜400℃であることが望ましい。200℃より温度が低い場合は炭化が進まなかったり菌が死滅しなかったりする恐れがあり、また、400℃より高くしたとしても得られる結果は略同じであるためエネルギー効率が悪くなるからである。
【0028】
勿論、焼成装置に投入する事前に競技場用土壌を構成する材料を全て混合させておき、それを装置に投入しても良い。
【0029】
また、この方法により製造された競技場用土壌は、黒色化のための顔料などは用いておらず、且つ炭化物の原料がコーヒー粕であるため、人体には無害であって誤って口に入ってしまったとしても問題は無く、その他、第1実施形態で記載した競技場用土壌と同等の効果を有する。
【0030】
尚、当初から粒径が3mm以下の植物材料を準備できない場合、準備可能な植物材料と黒土を200〜400℃で焼成して雑草種子の駆除と同時に植物材料を炭化させ、その後に全体の70%以上を粒径3mm以下となるように破砕することで、競技場用土壌を製造することも出来る。
【0031】
この方法によれば、生の状態では破砕作業の行いにくい植物材料であっても炭化後であれば破砕作業が容易であるため、大き目の植物材料や大きさの不揃いな植物材料などの使用しにくい植物材料であっても競技場用土壌の構成材料として用いる事ができることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも黒土と粒状若しくは粉末状の炭化物を含むことを特徴とする競技場用土壌。
【請求項2】
粒径が3mm以下の植物材料と黒土を200〜400℃で焼成することで、雑草種子の駆除と同時に植物材料を炭化させることを特徴とする競技場用土壌の製造方法。
【請求項3】
植物材料と黒土を200〜400℃で焼成することで、雑草種子の駆除と同時に植物材料を炭化させ、その後に全体の70%以上を粒径3mm以下に破砕することを特徴とする競技場用土壌の製造方法。

【公開番号】特開2010−281140(P2010−281140A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136381(P2009−136381)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(501340580)日本フィールドシステム株式会社 (2)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【Fターム(参考)】