説明

競技用計測システムおよびタイム計測方法

【課題】 競技者個々のタイムを適切に計測することのできる競技用計測システム等を提供する。
【解決手段】 計時地点にて、ランニングタイム送信機15は、無線タグ30に向けて、ランニングタイムを送信する。無線タグ30は、受信したランニングタイムに同期したランニングタイムを計時すると共に、自己のタグIDをタグID受信機16に送信する。タグコンソール17は、タグID受信機16からタグIDを取得するとポーリングリストに登録する。無線タグ30は、計時ラインLを通過時点の計測タイムを特定する。そして、タグコンソール17は、計測タイム受信機19を制御し、ポーリングリストに従って、各無線タグ30から計測タイムを順次取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、競技者個々のタイムを適切に計測することのできる競技用計測システムおよびタイム計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技等において、競技者個々のタイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のタイムを計測する計測システムも実用化されている。
それでもこの計測システムは、ゴール後に所定時間かけてバーコードの読み取りを行うため、そもそも実測よりも遅れたタイムが計測されていた。特に、大勢の競技者が同時期にゴールした場合等では、バーコードの読み取り待ちが生じてしまい、実測よりもかなり遅れたタイムが計測されてしまうという問題があった。
また、ゴールしたタイムだけでなく、各計時ポイント(中間地点等)における通過タイムの計測も行いたいという要望が高まっているが、この計測システムでは、対応できなかった。
【0003】
このような問題を解決するため、種々の計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。新たな計測システムは、より実測に近いタイムを計測するために、また、各計時ポイントにおける計測も可能とするために、非接触にて競技者個々のタイムを計測する形態が主流となっている。
具体的には、競技者が携帯する(ゼッケン等に付けられた)発信器から発せられる電波信号等によりタイムを計測したり、また、撮影した映像から競技者やゼッケン等を識別してタイムを計測する、というものである。
【0004】
中でも、競技者に発信器を携帯させる計測システムは、実用化に向けて種々の工夫がなされている。一例として、ゴールラインに沿った幅の狭い範囲内に発信器により引き金信号を発信させ、競技者と共に発信器がゴールラインに到達すると、発信器から自動的に固有番号信号を送信させるといった技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−57104号公報 (第3−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される技術は、発信器から送信された固有番号信号をレシーバが受信した時点で、スタートからの時間(タイム)を測定するものである。そして、同時期に大勢の競技者がゴールラインに到達すると、各発信器から送信される固有番号信号が重なり合って、その識別を行えない場合がある。そのため、発信器が固有番号信号を1回だけ発信するのではなく、複数回に渡って発信することで、レシーバでの固有番号の読み取り不能(取りこぼし)を回避しようとしている。
【0006】
しかしながら、測定されるタイムが、固有番号信号を受信できた時点で計時されるため、固有番号信号に重なりが生じると、レシーバが固有番号信号をとりこぼし、次の固有番号を受信してしまい、測定されるタイムが実測よりも幾分遅れてしまうという問題があった。
また、固有番号信号の受信によるタイムの計測を、そもそも制限のある範囲内(トリガ信号が送信される幅の狭い範囲内)にて、全て行わなければならないため、固有番号信号の重なりが多数であると、複数回の発信が行われたとしても、固有番号信号の取りこぼしが生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、競技者個々のタイムを適切に計測することのできる競技用計測システムおよびタイム計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技用計測システムは、
競技者に携帯される計時機器と、当該計時機器に基準時刻を送信する送信機と、当該計時機器から送られる識別情報を受信する受信機と、当該計時機器から送られる計測タイムを受信するタイム受信機と、当該タイム受信機を制御するコンソールと、を含む競技用計測システムであって、
前記計時機器は、
前記送信機から送られる基準時刻を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した基準時刻に応答して、自機器を識別するための識別情報を、前記受信機に向けて送信する送信手段と、
前記受信手段が受信した基準時刻に同期した時刻を計時する計時手段と、
所定の計測ゾーン中に前記計時手段が計時した時刻を計測タイムとして特定する特定手段と、
前記特定手段が特定した計測タイムを記憶する記憶手段と、
前記タイム受信機からのポーリングに応答して、前記記憶手段が記憶した計測タイムを前記タイム受信機に向けて送信するタイム送信手段と、を備え、
前記コンソールは、
前記受信機が受信した識別情報及び、前記受信機が受信を行えずに自己の操作部から入力した識別情報を含むポーリングリストを生成し、当該ポーリングリストに従って前記タイム受信機を制御して、前記タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する、
ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、前記計時機器での受信手段は、送信機から送られる基準時刻(例えば、ランニングタイムや現在時刻等)を受信する。送信手段は、受信手段が受信した基準時刻に応答して、自機器を識別するための識別情報(例えば、タグID等)を、受信機に向けて送信する。計時手段は、受信手段が受信した基準時刻に同期した時刻を計時する。特定手段は、所定の計測ゾーン中に計時手段が計時した時刻を計測タイムとして特定する。記憶手段は、特定手段が特定した計測タイムを記憶する。タイム送信手段は、タイム受信機からのポーリングに応答して、記憶手段が記憶した計測タイムをタイム受信機に向けて送信する。一方、コンソールは、受信機が受信した識別情報及び、前記受信機が受信を行えずに自己の操作部から入力した識別情報を含むポーリングリストを生成し、当該ポーリングリストに従ってタイム受信機を制御して、タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する。
このように、計時機器では、まず、送信される基準時刻に同期した時刻を計時する。そして、計測ゾーン中に計時した時刻を計測タイムとして特定する。最後に、ポーリングに応答して、計測タイムをタイム受信機に向けて送信する。一方、コンソールは、受信した識別情報及び入力した識別情報に従って生成したポーリングリストに従ってタイム受信機を制御し、タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する。
この結果、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【0010】
前記計時機器は、前記タイム受信機に向けてポーリングを要求する情報を送信する要求送信手段を更に備え、
前記コンソールは、前記計時機器からのポーリングの要求に応答して、前記タイム受信機を制御して、前記タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得してもよい。
【0011】
前記要求送信手段は、前記特定手段が計測タイムを特定し、所定時間経過しても前記タイム受信機からのポーリングがない場合に、ポーリングを要求する情報を、前記タイム受信機に向けて送信してもよい。
【0012】
前記コンソールは、所定時間経過後にポーリングリストに残ったままの識別情報を、外部機器に報知してもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るタイム計測方法は、
競技者に携帯される計時機器と、当該計時機器に基準時刻を送信する送信機と、当該計時機器から送られる識別情報を受信する受信機と、当該計時機器から送られる計測タイムを受信するタイム受信機と、当該タイム受信機を制御するコンソールと、を含むシステムにおけるタイム計測方法であって、
計時機器において、送信機から送信される基準時刻を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにて受信した基準時刻に応答して、自機器を識別するための識別情報を、受信機に向けて送信する送信ステップと、
前記受信ステップにて受信した基準時刻に同期した時刻を計時する計時ステップと、
所定の計測ゾーン中に前記計時ステップにて計時した時刻を計測タイムとして特定する特定ステップと、
タイム受信機からのポーリングに応答して、前記特定ステップにて特定した計測タイムをタイム受信機に向けて送信するタイム送信ステップと、
コンソールにおいて、受信機が受信した識別情報及び、受信機が受信を行えずに自己の操作部から入力した識別情報を含むポーリングリストを生成する生成ステップと、
前記生成ステップにて生成したポーリングリストに従ってタイム受信機を制御し、タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する取得ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、計時機器において、受信ステップは、送信機から送信される基準時刻(例えば、ランニングタイムや現在時刻等)を受信する。送信ステップは、受信ステップにて受信した基準時刻に応答して、自機器を識別するための識別情報(例えば、タグID等)を、受信機に向けて送信する。計時ステップは、受信ステップにて受信した基準時刻に同期した時刻を計時する。特定ステップは、計測ゾーン中に計時ステップにて計時した時刻を計測タイムとして特定する。タイム送信ステップは、タイム受信機からのポーリングに応答して、特定ステップにて特定した計測タイムをタイム受信機に向けて送信する。一方、コンソールにおいて、生成ステップは、受信機が受信した識別情報及び、受信機が受信を行えずに自己の操作部から入力した識別情報を含むポーリングリストを生成する。取得ステップは、生成ステップにて生成したポーリングリストに従ってタイム受信機を制御し、タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する。
このように、計時機器では、まず、送信される基準時刻に同期した時刻を計時する。そして、計測ゾーン中に計時した時刻を計測タイムとして特定する。最後に、ポーリングに応答して、計測タイムをタイム受信機に向けて送信する。一方、コンソールは、受信した識別情報及び入力した識別情報に従って生成したポーリングリストに従ってタイム受信機を制御し、タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する。
この結果、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態にかかる競技用計測システムについて、以下図面を参照して説明する。なお、一例として、マラソン競技において複数地点にてタイムの計測等を行う競技用計測システムとして説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施の形態に適用される競技用計測システム1の構成の一例を示す模式図である。なお、以下ではタイムの計測を行う中継地点やゴール地点を、便宜的にまとめて計時地点として説明する。つまり、計時地点は、中継地点やゴール地点を示すものとする。また、ゴール地点がスタート地点と異なる場合について説明する。
【0018】
図示するように、競技用計時システム1は、スタート地点に設置されたタイマコンソール11、GPS受信機12、無線通信端末13、時刻表示装置14、ランニングタイム送信機15、タグID受信機16、及びタグコンソール17と、計時地点(中継地点やゴール地点)に設置されたタイマコンソール11、GPS受信機12、無線通信端末13、時刻表示装置14、ランニングタイム送信機15、タグID受信機16、タグコンソール17、トリガ信号発生装置18、計測タイム受信機19、撮影装置20、映像記録装置21、及びデータサーバ22と、各競技者RNにそれぞれ携帯される無線タグ30と、を含んで構成される。
【0019】
なお、スタート地点のタイマコンソール11には、スタートピストルSPが接続されており、また、計時地点のタイマコンソール11には、グリップスイッチGSが接続されている。
スタートピストルSPは、スタータの操作に応答して、スタート信号をタイマコンソール11に供給する。また、グリップスイッチGSは、審判員等の操作に応答して、グリップ信号をタイマコンソール11に供給する。
【0020】
タイマコンソール11は、CPU(Central Processing Unit)等の制御部、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部、ランニングタイムを計時するタイマ、及び、キーボード等の操作部を含んで構成される。
タイマコンソール11は、競技のスタート前までに時刻同期の処理を実行し、GPS受信機12が受信した標準時刻に同期した現在時刻の計時を始める。
【0021】
そして、スタート地点のタイマコンソール11は、競技のスタートに伴って、スタートピストルSPからスタート信号が入力されると、その時刻をスタート時刻(時刻情報)として自己のメモリに保持すると共に、無線通信端末13を制御して、スタート時刻を計時地点のタイマコンソール11に向けて送信する。
一方、計時地点のタイマコンソール11は、スタート地点の無線通信端末13から送られたスタート時刻を無線通信端末13にて受信すると、そのスタート時刻を無線通信端末13から取得して自己のメモリに保持する。
タイマコンソール11は、このようにしてスタート時刻を自己のメモリに保持した後に、自己のタイマが計時する現在時刻と保持しているスタート時刻との差に基づいて、ランニングタイムを順次生成し、タイム情報として時刻表示装置14に供給する。
また、計時地点のタイマコンソール11は、グリップスイッチGPからグリップ信号が入力されると、その時刻をグリップ時刻(時刻情報)として映像記録装置21等に供給する。
【0022】
GPS(Global Positioning System)受信機12は、GPS衛星から送信される標準時刻(GPS時刻)を受信し、受信した標準時刻をタイマコンソール11に供給する。
【0023】
無線通信端末13は、公衆回線(移動体通信網等)を介して他の無線通信端末13との間でデータ通信が可能な携帯電話等からなる。
そして、スタート地点の無線通信端末13は、タイマコンソール11から供給されたスタート時刻を含む通信データを、計時地点の無線通信端末13に送信する。
一方、計時地点の無線通信端末13は、スタート地点の無線通信端末13から送られたスタート時刻を受信し、受信したスタート時刻をタイマコンソール11に供給する。
【0024】
時刻表示装置14は、電光掲示板等からなり、タイマコンソール11から順次供給されるタイム情報に従って、ランニングタイム等を表示する。
【0025】
ランニングタイム送信機15は、各競技者RN(各無線タグ30)に向けて、タイマコンソール11が計時しているランニングタイム等を送信して、無線タグ30が計時する時刻を適宜補正(又は設定)させる。
具体的にスタート地点のランニングタイム送信機15は、スタート直後に全ての無線タグ30に向けて、ブロードキャストにて一斉にランニングタイム、関門ID及び、しきい値nを含む情報を送信する。この関門IDとは、ランニングタイム送信機15(スタート地点や計時地点)に固有の識別情報であり、また、しきい値nとは、送信されたランニングタイムの正確さを無線タグ30にて判別するために使用される値である。
なお、スタート地点のランニングタイム送信機15は、無線タグ30に最初に時刻を設定させるため、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡り、ランニングタイム等を送信する。
一方、計時地点のランニングタイム送信機15は、走行する競技者RNからみて計測ポイント(後述する計時ラインL)より手前に配置されており、近傍に位置する競技者RNの無線タグ30に向けて、ランニングタイム及び、関門IDを含む情報を送信する。
なお、スタート地点のランニングタイム送信機15は、スタート前に、動作確認のために現在時刻等のテストデータを各無線タグ30に向けて送信する。
【0026】
タグID受信機16は、ランニングタイム送信機15が送信したランニングタイムに応答して無線タグ30から返信されるタグID(無線タグ30に固有の識別情報)を受信する。そして、受信したタグIDをタグコンソール17に供給する。
なお、計時地点のタグID受信機16も、ランニングタイム送信機15と同様に、走行する競技者RNからみて計測ポイントより手前に配置されており、競技者RNが後述する計測ゾーンZに到達する前に、無線タグ30から返信されるタグIDを受信する。
また、スタート地点のタグID受信機16は、スタート前に、動作確認のためのテストデータ(現在時刻等)に応答して無線タグ30から返信されるタグIDも受信する。
【0027】
タグコンソール17は、CPU等の制御部、RAM等のメモリ、LCD等の表示部、及び、キーボード等の操作部を含んで構成され、無線タグ30から送信される情報等を管理する。
なお、スタート地点のタグコンソール17は、タグID受信機16から供給されるタグIDだけを管理し、また、計時地点のタグコンソール17は、タグID受信機16から供給されるタグID及び、計測タイム受信機19から供給される計測タイム等も管理する。
具体的にスタート地点のタグコンソール17は、スタート後に取得した各タグIDから、各競技者RNの競技スタートを確認する。なお、スタート前にテストデータに対するタグIDが取得されない場合に、そのタグIDを送信するはずの無線タグ30が故障や電池切れの可能性があるため、適宜交換等が行われる。
【0028】
また、計時地点のタグコンソール17は、自己のメモリ内に図2に示すようなポーリングリストを適宜生成し、計測タイム受信機19を制御して無線タグ30から計測タイム等を受信させる。
具体的に計時地点のタグコンソール17は、タグID受信機16からタグIDを取得すると、図2に示すポーリングリストにそのタグIDを登録する。なお、タグIDが取得できなかった(タグID受信機16がタグIDを受信できなかった)場合に、タグコンソール17は、操作部からの入力によって、対象となるタグIDをポーリングリストに登録することも可能となっている。
このように生成したポーリングリストに従って、計時地点のタグコンソール17は、計測タイム受信機19を制御し、無線タグ30から送られたタグID、計測タイム、関門ID、及び、補正値αを含む情報を取得する。この補正値αは、無線タグ30にてランニングタイムを受信する度に補正した時刻(時差)を累積した累積時差βから求められた値である。
なお、関門IDがその計時地点におけるランニングタイム送信機15の関門IDと異なっている場合(以前に通過した計時地点やスタート地点のランニングタイム送信機15の関門IDである場合)に、タグコンソール17は、計測タイムと共に取得した補正値αを使用して、計測タイムを適宜補正する。
具体的に、マラソンコースの各5km間隔(例えば、5km地点、10km地点、15km地点等)に計時地点があるとき、当該計時地点(例えば、15km地点)で関門IDが一致している場合には、当該計時地点にて無線タグ30にてランニングタイムが補正されている。一方、関門IDが一致していない場合には、当該計時地点にてランニングタイムの補正が行われておらず、以前の計時地点(例えば、10km地点)にて補正されたランニングタイムに基づいて計測タイムが計時されている。
そのため、関門IDが一致している場合に、計測タイムの補正は不要であるが、関門IDが一致していない場合には、タグコンソール17は、補正値αを使用して、計測タイムを補正する必要がある。この際、前の計時地点(10km地点)での補正値αを参酌して、計測タイムを補正する。一例として、タグコンソール17は、以下の数式1に示すように、計測タイムを補正する。
【0029】
(数1)
Ta = T+α・T
Ta:補正した計測タイム
T:計測タイム
α:補正値
【0030】
そして、タグコンソール17は、取得した計測タイム又は補正した計測タイムを、タグIDと共にデータサーバ22に送信する。計測タイム等をデータサーバ22に送信後、タグコンソール17は、対応するタグIDをポーリングリストから削除する。なお、一定時間が経過してもポーリングリストから削除されずに残っているタグIDがある場合、タグコンソール17は、そのタグIDに対応する競技者RNを未通過者として映像記録装置21等に通知し、通過の有無と計測タイムの特定(判定)を要求する。
【0031】
計時地点に設置されるトリガ信号発生装置18は、例えば、走行路の沿道から計時ポイントとなる計時ラインLに向けて設置され、計時ラインLを中心とした所定範囲の計測ゾーンZ内において、トリガ信号を発する。
一例として、トリガ信号発生装置18は、24GHzのマイクロ波を発生させ、所定のパラボラアンテナにより計測ゾーンZ内に向けてトリガ信号を送信する。なお、トリガ信号発生装置18は、トリガ信号の指向性が得られ、同様に計測ゾーンZ内に向けてトリガ信号を送信できればよいため、UWB(Ultra Wide Band)等の通信技術を適用してもよい。
【0032】
計時地点に設置される計測タイム受信機19は、タグコンソール17に制御され、近傍に位置する(計測ゾーンZを通過した後の)競技者RNの無線タグ30からポーリングにて計測タイム等を受信する。
具体的に計測タイム受信機19は、タグコンソール17のポーリングリストの順番に従って、各無線タグ30に計測タイムの送信を要求し、応答して無線タグ30から送信される計測タイム等(タグID、計測タイム、関門ID、及び、補正値α)を受信する。
なお、無線タグ30側から後述するようにポーリング要求が送信された場合に、計測タイム受信機19は、その無線タグ30に計測タイムの送信を要求して計測タイム等を受信する。
【0033】
計時地点に設置される撮影装置20は、例えば、ビデオカメラ等からなり、計時ラインLを通過する競技者RNの映像を撮影する。
具体的に撮影装置20は、走行する競技者からみてトリガ信号発生装置18よりも遠方(前方)に配置され、競技者のゼッケンや顔等が分かるように、競技者の正面(前面)の映像を撮影する。そして、撮影した映像(映像信号)を映像記録装置21に供給する。
【0034】
計時地点に設置される映像記録装置21は、ビデオ記録装置等からなり、撮影装置20から供給される映像信号に、タイマコンソール11から供給されるグリップ時刻やランニングタイム等のタイムデータを合成して(同期させて)、記録する。
【0035】
計時地点に設置されるデータサーバ22は、タグコンソール17や映像記録装置21等から適宜データを取得し、公式タイムや着順等の判定を行う。
また、データサーバ22は、所定の操作部から、競技者RNの選手情報や使用される無線タグ30のタグID等が入力されると、これらの情報を関連付けて記憶し、タイマコンソール11やタグコンソール17に適宜供給する。また、判定した公式タイム等もタイマコンソール11に供給する。
【0036】
競技者RNに携帯される計時機器としての無線タグ30は、スタート地点や計時地点のランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム等を受信して、ランニングタイムに同期した時刻を計時する。そして、トリガ信号発生装置18から発せられるトリガ信号を検出して、計時ラインLにおける計測タイムを特定し、ポーリングに応じて計測タイム受信機19に計測タイムを送信する。
具体的に無線タグ30は、図3に示すように、アンテナ31と、受信手段としての受信ユニット32と、タイム補正ユニット33と、計時手段としての計時ユニット34と、トリガアンテナ35と、トリガ検出ユニット36と、特定手段としてのタイム特定ユニット37と、記憶手段としての記憶部38と、送信手段及びタイム送信手段としての送信ユニット39と、から構成される。
【0037】
アンテナ31は、送受信用のアンテナである。
受信ユニット32は、アンテナ31を介して、ランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム等を受信する。
具体的に受信ユニット32は、スタート直後にスタート地点のランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム、関門ID及び、しきい値nを含む情報を受信する。なおこの際、ランニングタイム送信機15からは、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡って送信されるランニングタイム等を受信する。
また、受信ユニット32は、計時地点のランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム及び、関門IDを含む情報を受信する。
そして、受信ユニット32は、受信したランニングタイム等をタイム補正ユニット33に供給する。
この他にも受信ユニット32は、計時地点の計測タイム受信機19から計測タイムの送信要求(ポーリング)を受信する。そして、受信した送信要求を送信ユニット39に供給する。
【0038】
タイム補正ユニット33は、計時地点にて受信ユニット32が受信したランニングタイムに基づいて、計時ユニット34が計時するランニングタイムを補正する。その際、タイム補正した時差(受信したランニングタイムと計時ユニット34が計時したランニングタイムとの時差)を求め、記憶部38の累積時差βに加算して記憶する。そして、累積時差βから単位時間あたりの補正値αを求め、記憶部38に記憶する(更新する)。また、タイム補正を行った計時地点を明らかにするために、ランニングタイムと共に送られる関門IDを記憶部38に記憶する(更新する)。
なお、競技スタート時点では、それまで計時ユニット34にランニングタイムが未設定であったため、タイム補正ユニット33は、スタート地点にてランニングタイム送信機15から送られるランニングタイムを、受信ユニット32が例えば、1秒間隔で3回以上受信した後に、正当なランニングタイムを計時ユニット34に設定する。
具体的にランニングタイム送信機15から正常時に「1:01,1:02,1:03」と、1秒間隔で3回に渡り、ランニングタイムが送信されるとした場合、タイム補正ユニット33は、経時的に変化するはずの3つのランニングタイムを参酌して、正当なランニングタイムを計時ユニット34に設定する。つまり、3つの内、1つのランニングタイムが不正確な値(「1:99」等の文字化け)であったとしても、多数決により、残りの2つの正常なランニングタイムから正当な(正確な)ランニングタイムを特定して計時ユニット34に設定する。
一例として、「1:01,1:99,1:03」という3つのランニングタイムを受信した場合、ランニングタイムを受信後に、正当な「1:03」が計時ユニット34に設定される。同様に、「1:99,1:02,1:03」というランニングタイムを受信した場合に、「1:03」が計時ユニット34に設定される。更に、「1:01,1:02,1:99」というランニングタイムを受信した場合にも、「1:03」が特定され計時ユニット34に設定される。
なおこの際、タイム補正ユニット33は、スタート地点のランニングタイム送信機15からランニングタイムと共に送られたしきい値nを記憶部38に記憶する。
【0039】
また、計時地点で受信したランニングタイムと計時ユニット34にて計時したランニングタイムとの時差が、記憶部38に記憶したしきい値nよりも大きい場合に、タイム補正ユニット33は、タイム補正を行わない。これは、何らかの原因により、送信されたランニングタイム又は受信されたランニングタイムに文字化け等が生じてしまっていることが考えられるため、タイム補正ユニット33は、不正確と思われるランニングタイムをそのまま破棄する。この場合、関門IDの更新も行わない。
【0040】
計時ユニット34は、タイム補正ユニット33により適宜補正(設定)され、受信ユニット32が受信したランニングタイムに同期したランニングタイムを計時する。
計時ユニット34は、高安定水晶発振器を備えており、ランニングタイムの計時を安定して維持することが可能となっている。
【0041】
トリガアンテナ35は、トリガ信号発生装置18が発するマイクロ波に同調し、トリガ信号を受信する。
トリガ検出ユニット36は、トリガアンテナ35を介して、トリガ信号を検出する。そして、検出結果をタイム特定ユニット37に通知する。例えば、トリガ検出ユニット36は、トリガ信号のONタイミング(トリガ信号を検出していない状態から最初にトリガ信号を検出したタイミング)、及び、トリガ信号のOFFタイミング(トリガ信号を検出していた状態から検出を終えたタイミング)を、タイム特定ユニット37に通知する。
【0042】
タイム特定ユニット37は、トリガ検出ユニット36が検出したトリガ信号に基づいて計測ゾーンZを判別し、計測ゾーンZ内において計時ユニット34が計時したランニングタイムを計測タイムとして特定する。
例えば、タイム特定ユニット37は、競技者RNが計測ゾーンZに到達し、トリガ信号のONタイミングがトリガ検出ユニット36から通知されると、計時ユニット34が計時しているランニングタイムを開始時間として、記憶部38に記憶する。その後、競技者RNが計測ゾーンZを通過し、トリガ信号のOFFタイミングがトリガ検出ユニット36から通知されると、計時ユニット34が計時しているランニングタイムを終了時間として、記憶部38に記憶する。そして、タイム特定ユニット37は、開始時間と終了時間との中間値を求め、競技者RNが計時ラインLを通過した計測タイムとして特定する。
タイム特定ユニット37は、開始時間及び終了時間を記憶部38から消去し、特定した計測タイムを記憶部38に記憶する。
【0043】
記憶部38は、受信ユニット32が受信したしきい値nや、タイム補正ユニット33が求めた補正値α,累積時差βや、タイム補正を行った地点の関門IDや、タイム特定ユニット37が特定した計測タイム等を記憶する。
また、記憶部38は、無線タグ30毎(競技者RN毎)に異なる固有のタグIDを予め記憶している。
【0044】
送信ユニット39は、受信ユニット32がランニングタイムを受信した際に、その応答として、記憶部38から読み出したタグIDをタグID受信機16に向けて送信する。その際、コリジョンの発生を抑えるために、無線タグ30毎に定められた、異なる応答タイミングにて、タグIDを送信する。
また、送信ユニット39は、受信ユニット32が計測タイムの送信要求(ポーリング)を受信した際に、記憶部38からタグID、計測タイム、関門ID、及び、補正値αを読み出して、計測タイム受信機19に送信する。
なお、送信ユニット39は、計測タイム受信機19から計測タイムの送信要求(ポーリング)が送られない場合等に、自ら計測タイム受信機19に対してポーリング要求を送信してもよい。例えば、自己のタグIDがタグコンソール17のポーリングリストに登録されていないことも考慮して、タイム特定ユニット37が計測タイムを記憶部38に記憶してから所定時間経過後(計測タイムから所定時間経過後)までに、計測タイムの送信要求を受信しなかった場合、送信ユニット39は、自発的に計測タイム受信機19に対してポーリング要求を送信する。この際、送信ユニット39は、他の無線タグ30の送信を考慮したタイミングをずらしたり、異なるチャンネルのバンドにてポーリング要求を送信してもよい。
【0045】
以下、上述した構成の競技用計測システム1の動作について、図面を参照して説明する。
最初に図4を参照して、ランニングタイムを受信する無線タグ30の動作について説明する。図4は、無線タグ30が実行するランニングタイム受信処理を説明するためのフローチャートである。このランニングタイム受信処理は、スタート地点や計時地点のランニングタイム送信機15からランニングタイムが送信された際に開始される。
【0046】
まず、無線タグ30は、ランニングタイムを受信する(ステップS11)。つまり、受信ユニット32は、アンテナ31を介して、ランニングタイム送信機15から送信されるランニングタイム及び、関門IDを含む情報を受信する。なお、スタート地点のランニングタイム送信機15からは、ランニングタイム、関門ID(値が0)及び、しきい値nを含む情報を受信する。
【0047】
無線タグ30は、受信した関門IDが0であるか否かを判別する(ステップS12)。すなわち、受信したのがスタート地点のランニングタイム送信機15から送られたランニングタイムであるか否かを判別する。
【0048】
無線タグ30は、関門IDが0である(スタート地点のランニングタイム送信機15から送られたランニングタイムである)と判別すると、複数のランニングタイムを受信する(ステップS13)。つまり、スタート地点のランニングタイム送信機15から連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡って送られるランニングタイムを受信する。
【0049】
無線タグ30は、複数のランニングタイムから正当なランニングタイムを特定する(ステップS14)。すなわち、それまでランニングタイムが未設定であったため、タイム補正ユニット33は、経時的に変化するはずの複数のランニングタイムを参酌して、正当なランニングタイムを特定する。
【0050】
無線タグ30は、特定したランニングタイムを設定する(ステップS15)。つまり、タイム補正ユニット33は、特定したランニングタイムを計時ユニット34に設定する。
【0051】
無線タグ30は、しきい値nを記憶する(ステップS16)。つまり、タイム補正ユニット33は、ランニングタイムと共に送られたしきい値nを記憶部38に記憶する。
【0052】
一方、上述のステップS12にて関門IDが0でない(計時地点のランニングタイム送信機15から送られたランニングタイムである)と判別した場合に、無線タグ30は、計時しているランニングタイムとの時差を求める(ステップS17)。つまり、タイム補正ユニット33は、計時地点で受信したランニングタイムと計時ユニット34にて計時したランニングタイムとの時差を求める。
【0053】
無線タグ30は、求めた時差がしきい値nより大きいか否かを判別する(ステップS18)。すなわち、タイム補正ユニット33は、計時地点で受信したランニングタイムが正確であるか否かを判別する。
そして、無線タグ30は、求めた時差がしきい値nより大きいと判別すると、後述するステップS22に処理をすすめる。つまり、不正確と思われるランニングタイムをそのまま破棄し、関門IDの更新も行わない。
【0054】
一方、求めた時差がしきい値nより大きくない(しきい値n以内である)と判別すると、無線タグ30は、自己のランニングタイムを補正する(ステップS19)。つまり、タイム補正ユニット33は、受信したランニングタイムと同期するように、計時ユニット34が計時するランニングタイムを補正する。
【0055】
無線タグ30は、累積時差βに時差を加算し、補正値αを求めて記憶する(ステップS20)。つまり、タイム補正ユニット33は、求めた時差を記憶部38の累積時差βに加算して記憶すると共に、累積時差βから単位時間あたりの補正値αを求め、記憶部38に記憶する(更新する)。
【0056】
無線タグ30は、関門IDを更新する(ステップS21)。すなわち、タイム補正ユニット33は、タイム補正を行った計時地点等を明らかにするために、ランニングタイムと共に送られる関門IDを記憶部38に記憶する(更新する)。
【0057】
無線タグ30は、ランニングタイムを受信した応答としてタグIDを送信する(ステップS22)。つまり、送信ユニット39は、記憶部38から読み出したタグIDをタグID受信機16に向けて送信する。
【0058】
このように、無線タグ30が行うランニングタイム受信処理により、スタート地点では、受信した複数のランニングタイムから正当なランニングタイムが計時ユニット34に設定される。一方、計時地点では、受信したランニングタイムの正確さがしきい値nにより検証され、ランニングタイムが不正確であれば、計時ユニット34の補正が行われない。また、ランニングタイムが正確であれば、計時ユニット34が補正され、累積時差βに時差が加算され補正値αが求められ、そして、補正を行った計時地点を示す関門IDが記憶される。
【0059】
次に、図5を参照して、ポーリングリストを生成するタグコンソール17(計時地点のタグコンソール17)の動作について説明する。図5は、タグコンソール17が実行するポーリングリスト生成処理を説明するためのフローチャートである。このポーリングリスト生成処理は、競技のスタート後に適宜開始される。
【0060】
まず、計時地点のタグコンソール17は、タグID受信機16からタグIDを取得したか否かを判別する(ステップS31)。つまり、計時地点において、上述した図4のランニングタイム受信処理により、無線タグ30からタグIDが送信され、タグIDを受信したタグID受信機16からそのタグIDがタグコンソール17に供給されたか否かを判別する。
タグコンソール17は、タグIDを取得していないと判別すると、後述するステップS33に処理を進める。
【0061】
一方、タグIDを取得したと判別した場合に、タグコンソール17は、受信したタグIDをポーリングリストに登録する(ステップS32)。つまり、タグコンソール17は、上述した図2に示すようなポーリングリストにタグIDを登録する。
【0062】
タグコンソール17は、手動によるタグIDの入力があったか否かを判別する(ステップS33)。すなわち、タグIDが取得できなかった(タグID受信機16がタグIDを受信できなかった)場合に、審判等は、タグコンソール17を操作して、検出できなかったタグID(対象となる競技者RNの無線タグ30に対応するタグID)を手動で入力する。このため、タグコンソール17は、自己の操作部からタグIDの入力があったか否かを判別する。
【0063】
タグコンソール17は、タグIDの入力が無かったと判別すると、上述のステップS31に処理を戻す。
一方、タグIDの入力があったと判別した場合に、タグコンソール17は、入力されたタグIDをポーリングリストに登録する(ステップS34)。
そして、タグコンソール17は、ステップS31に処理を戻し、上述の処理を繰り返し実行する。
【0064】
このように、計時地点のタグコンソール17が行うポーリングリスト生成処理により、無線タグ30が送信したタグIDが自動的にポーリングリストに登録される。また、タグコンソール17にてタグIDが取得できなかった(タグID受信機16がタグIDを受信できなかった)場合であっても、手動により対象となるタグIDがポーリングリストに登録可能となっている。
【0065】
次に、図6を参照して、計測タイムを取得するタグコンソール17(計時地点のタグコンソール17)の動作について説明する。図6は、タグコンソール17が実行する計測タイム取得処理を説明するためのフローチャートである。この計測タイム取得処理は、上述した図5のポーリングリスト生成処理によりポーリングリストが生成された後に適宜開始される。
【0066】
まず、計時地点のタグコンソール17は、ポーリングリストから1つのタグIDを読み出す(ステップS41)。つまり、タグコンソール17は、ポーリングリストに登録されたタグIDを所定の順番に従って読み出す。
例えば、タグコンソール17は、登録時刻が早い順に従って、1つのタグIDを読み出す。なお、このステップS41が繰り返し実行され、登録時刻が最も遅いタグIDの読み出しを終えると、タグコンソール17は、以前のタグIDが残っている場合に、再度先頭から、登録時刻が早い順に再度タグIDを読み出す。
【0067】
タグコンソール17は、そのタグIDがポーリングリストに登録されてから一定時間が経過しているか否かを判別する(ステップS42)。すなわち、読み出したタグIDが、ポーリング受信が行えずに、一定時間が経過してもポーリングリストから削除されずに残っている状態であるか否かを判別する。
【0068】
タグコンソール17は、一定時間が経過していないと判別すると、計測タイム受信機19に計測タイムをポーリング受信させる(ステップS43)。つまり、タグコンソール17は、計測タイム受信機19を制御してポーリングリストから読み出したタグIDの無線タグ30に計測タイムの送信を要求し、応答してその無線タグ30から送られたタグID、計測タイム、関門ID、及び、補正値αを含む情報を取得する。
【0069】
タグコンソール17は、関門IDが当該計時地点のものと一致しているか否かを判別する(ステップS44)。すなわち、タグコンソール17は、受信した関門IDが当該計時地点のランニングタイム送信機15の関門IDと同じであるか否かを判別する。ここで、関門IDが一致している場合には、当該計時地点にて無線タグ30のランニングタイムが補正されており、一方、関門IDが一致していない場合には、当該計時地点にて補正が行われておらず、以前の計時地点にて補正が行われていることになる。
【0070】
タグコンソール17は、関門IDが一致していると判別すると、計測タイムの補正が不要であるため、後述するステップS46に処理を進める。
一方、関門IDが一致していないと判別した場合に、タグコンソール17は、補正値αを使用して、計測タイムを補正する(ステップS45)。例えば、タグコンソール17は、上述の数式1により計測タイムを補正する。
【0071】
タグコンソール17は、計測タイムをデータサーバ22に送信する(ステップS46)。つまり、タグコンソール17は、取得した計測タイム又は補正した計測タイムを、タグIDと共にデータサーバ22に送信する。
【0072】
タグコンソール17は、ポーリングリストから対象のタグIDを削除する(ステップS47)。すなわち、計測タイムの取得を終えて不要となった無線タグ30のタグIDをポーリングリストから削除する。
【0073】
一方、上述のステップS42にて、一定時間が経過していると判別した場合に、タグコンソール17は、タグIDに対応する競技者RNを未通過者として映像記録装置21等に通知する(ステップS48)。
【0074】
そして、タグコンソール17は、他のタグIDがポーリングリストに登録されているか否かを判別する(ステップS49)。
タグコンソール17は、他のタグIDがあると判別すると、ステップS41に処理を戻し、上述したステップS41〜S49の処理を繰り返し実行する。
一方、他のタグIDがないと判別した場合に、タグコンソール17は、計測タイム取得処理を終了する。
【0075】
このように、計時地点のタグコンソール17が行う計測タイム取得処理により、ポーリングリストの順番に従って、各無線タグ30から順次計測タイムを取得する。このため、コリジョンの発生を適切に回避できる。また、一定時間が経過してもポーリングリストから削除されずに残っているタグIDがあれば、そのタグIDに対応する競技者RNを未通過者として映像記録装置21等に通知する。このため、映像記録装置21等にてその競技者RNの通過の有無や計測タイムの特定(判定)を行うことができる。
【0076】
また、上述したように、無線タグ30は、タグコンソール17に制御された計測タイム受信機19から計測タイムの送信要求(ポーリング)が送られない場合等に、自ら計測タイム受信機19に対してポーリング要求を送信してもよい。
この場合、このポーリング要求に応答して計測タイム受信機19がその無線タグ30から計測タイムを受信するため、タグコンソール17は、ポーリングリストへの登録が漏れたタグIDの無線タグ30からも、計測タイムを取得できる。
【0077】
この結果、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【0078】
上記の実施の形態では、ランニングタイム送信機15からランニングタイムを無線タグ30に向けて送信し、無線タグ30の計時ユニット34にてランニングタイムに同期した時刻を計時する場合について説明した。
しかしながら、ランニングタイム送信機15から送信するのは、ランニングタイムに限られず、他の時刻情報を送信してもよい。例えば、タイマコンソール11にて計時されている現在時刻をランニングタイム送信機15から無線タグ30に向けて送信し、無線タグ30(計時ユニット34)にてこの現在時刻に同期した時刻を計時させるようにしてもよい。
【0079】
具体的に説明すると、スタート地点のランニングタイム送信機15は、競技がスタートする前に、全ての無線タグ30に向けて、ブロードキャストにて一斉に現在時刻、関門ID及び、しきい値nを含む情報を送信する。この際、ランニングタイム送信機15は、連続して複数回(例えば、1秒間隔で3回以上)に渡り、現在時刻等を送信する。
一方、無線タグ30は、経時的に変化するはずの複数の現在時刻を参酌して、正当な現在時刻を計時ユニット34に設定する。そして、現在時刻と共に送られたしきい値n及び、初回設定時刻を記憶部38に記憶する。
【0080】
やがて競技がスタートし、競技者RNが計時地点まで進むと、無線タグ30は、計時地点のランニングタイム送信機15から送られる現在時刻を受信する。この現在時刻を受信すると、無線タグ30(タイム補正ユニット33)は、受信した現在時刻に基づいて、計時ユニット34が計時する時刻を補正する。その際、補正した時差(受信した現在時刻と計時ユニット34が計時した時刻との時差)を求め、記憶部38の累積時差βに加算して記憶する。そして、累積時差βから単位時間あたりの補正値αを求め、記憶部38に記憶する(更新する)。また、補正を行った計時地点を明らかにするために、現在時刻と共に送られる関門IDを記憶部38に記憶する(更新する)。
なおこの場合も、計時地点で受信した現在時刻と計時ユニット34にて計時した時刻との時差が、記憶部38に記憶したしきい値nよりも大きい場合に、タイム補正ユニット33は、時刻の補正を行わない。
【0081】
そして、無線タグ30は、トリガ信号を検出し、特定した計測タイムを記憶部38に記憶した後に、ポーリングに応答して、タグID、計測タイム、関門ID、及び、補正値αを記憶部38から読み出し、計測タイム受信機19に送信する。
一方、タグコンソール17は、計測タイム受信機19を介してこれらの情報を取得すると、関門IDがその計時地点におけるランニングタイム送信機15の関門IDと異なっている場合に、計測タイムと共に取得した補正値αを使用して、計測タイムを適宜補正する。タグコンソール17は、取得した計測タイム又は補正した計測タイムを、タグIDと共にデータサーバ22に送信する。そして、データサーバ22は、スタート時刻と計測タイムとから、各競技者のタイムを特定する。
この場合も、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
上記の実施の形態では、スタート地点とゴール地点とが異なる場合を一例として説明したが、スタート地点とゴール地点が同じ場合にも、同様に適用可能である。
【0082】
上記の実施の形態では、マラソン競技を一例として説明したが、計時対象の競技は、これに限られず任意である。
例えば、駅伝、競歩、身障者車椅子ロードレース、自転車ロードレース、トライアスロン、及び、ランニングやオリエンテーション等の山岳競技等にも適宜適用可能である。
なお、駅伝の場合、競技者RNが区間に応じて交代するため、競技者RNの交代が行われる計時地点では、適宜スタート地点の役割も果たすことになる。つまり、交代前の競技者RN(無線タグ30)からは、計測タイムを取得し、また、交代後の競技者RN(無線タグ30)に対しては、ランニングタイムの設定を行う。
この場合も、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【0083】
以上説明したように、本発明によれば、競技者個々のタイムを適切に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態に係る競技用計測システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】ポーリングリストの一例を示すブロック図である。
【図3】無線タグの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】無線タグが実行するランニングタイム受信処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】タグコンソールが実行するポーリングリスト生成処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】タグコンソールが実行する計測タイム取得処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1 競技用計測システム
11 タイマコンソール
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 時刻表示装置
15 ランニングタイム送信機
16 タグID受信機
17 タグコンソール
18 トリガ信号発生装置
19 計測タイム受信機
20 撮影装置
21 映像記録装置
22 データサーバ
30 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者に携帯される計時機器と、当該計時機器に基準時刻を送信する送信機と、当該計時機器から送られる識別情報を受信する受信機と、当該計時機器から送られる計測タイムを受信するタイム受信機と、当該タイム受信機を制御するコンソールと、を含む競技用計測システムであって、
前記計時機器は、
前記送信機から送られる基準時刻を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した基準時刻に応答して、自機器を識別するための識別情報を、前記受信機に向けて送信する送信手段と、
前記受信手段が受信した基準時刻に同期した時刻を計時する計時手段と、
所定の計測ゾーン中に前記計時手段が計時した時刻を計測タイムとして特定する特定手段と、
前記特定手段が特定した計測タイムを記憶する記憶手段と、
前記タイム受信機からのポーリングに応答して、前記記憶手段が記憶した計測タイムを前記タイム受信機に向けて送信するタイム送信手段と、を備え、
前記コンソールは、
前記受信機が受信した識別情報及び、前記受信機が受信を行えずに自己の操作部から入力した識別情報を含むポーリングリストを生成し、当該ポーリングリストに従って前記タイム受信機を制御して、前記タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する、
ことを特徴とする競技用計測システム。
【請求項2】
前記計時機器は、前記タイム受信機に向けてポーリングを要求する情報を送信する要求送信手段を更に備え、
前記コンソールは、前記計時機器からのポーリングの要求に応答して、前記タイム受信機を制御して、前記タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技用計測システム。
【請求項3】
前記要求送信手段は、前記特定手段が計測タイムを特定し、所定時間経過しても前記タイム受信機からのポーリングがない場合に、ポーリングを要求する情報を、前記タイム受信機に向けて送信する、
ことを特徴とする請求項2に記載の競技用計測システム。
【請求項4】
前記コンソールは、所定時間経過後にポーリングリストに残ったままの識別情報を、外部機器に報知する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の競技用計測システム。
【請求項5】
競技者に携帯される計時機器と、当該計時機器に基準時刻を送信する送信機と、当該計時機器から送られる識別情報を受信する受信機と、当該計時機器から送られる計測タイムを受信するタイム受信機と、当該タイム受信機を制御するコンソールと、を含むシステムにおけるタイム計測方法であって、
計時機器において、送信機から送信される基準時刻を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにて受信した基準時刻に応答して、自機器を識別するための識別情報を、受信機に向けて送信する送信ステップと、
前記受信ステップにて受信した基準時刻に同期した時刻を計時する計時ステップと、
所定の計測ゾーン中に前記計時ステップにて計時した時刻を計測タイムとして特定する特定ステップと、
タイム受信機からのポーリングに応答して、前記特定ステップにて特定した計測タイムをタイム受信機に向けて送信するタイム送信ステップと、
コンソールにおいて、受信機が受信した識別情報及び、受信機が受信を行えずに自己の操作部から入力した識別情報を含むポーリングリストを生成する生成ステップと、
前記生成ステップにて生成したポーリングリストに従ってタイム受信機を制御し、タイム受信機がポーリング受信した計測タイムを取得する取得ステップと、
を備えることを特徴とするタイム計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−55195(P2006−55195A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237204(P2004−237204)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】