説明

竹および殺真菌剤を含有するパネル

竹ストランドおよびホウ素化合物殺真菌剤を含むパネルを開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
竹は、その高い強度、耐久性および優れた寸法安定性ばかりでなく、供給を容易に、補給を早急に行うことができる―最も速く成長する樹種でさえ完全に成熟するまで15〜30年もの長い期間がかかるのに対し、竹は非常に速く成長し、2〜6年以内で完全に成熟に達する―このため竹は、建築資材としてアジア各地で広く使用されているリグノセルロース材料である。
【0002】
しかし、竹にはこれらの利点がある一方、ある種の欠点もあり、例えば、竹は特に真菌類に感染しやすい。真菌類、その最もよく知られている例である褐色腐朽菌(gloeophyllum trabeum)および白色腐朽菌(trametes versicolor)は、炭素源およびエネルギー源などの木材の天然成分を利用して、リグノセルロース材料を活発に分解する。
【0003】
竹が真菌による攻撃を受けやすいのは、竹特有の2つの独立した性質に起因する。第一に、竹の成長は非常に突発的で、30〜90日の間続く単一の成長期内に完全に集中する。この急速な成長を可能とするため、竹は針葉樹または広葉樹の通常樹種よりもはるかにたくさんの澱粉をその組織内に蓄える。このような高い澱粉含有量により、竹は特に真菌による攻撃に弱い。竹はまた、広葉樹および針葉樹に堆積するポリフェノールなどの抗真菌化合物の代謝産物堆積が知られておらず、したがって竹には大部分の樹木にあるような樹齢に伴う真菌攻撃への耐性の増強がないので、真菌による攻撃を受けやすい。
【0004】
リグノセルロース材料中の真菌類および腐朽の問題に取り組むために、様々な技法が開発されてきた。例えば、そのような破壊を防止するために竹をいぶすことができる。しかしこの方法は、労働集約型で、一貫して成功するとは限らない。別の技法である加圧処理は、限られてはいるが、ある程度成功を収めてきた。しかしながら最近では、最も効果的な加圧処理用化学薬品の多くが、環境に有害であると見なされるために市場から姿を消した。安全と考えられる加圧処理用化学薬品は、残念ながら抵抗する有害生物を阻止する上で有意に効力が低い。
【0005】
これらの加圧処理用化学薬品の代替品は、ホウ酸ナトリウム溶液であり、ホウ酸ナトリウム溶液は抵抗する有害生物を阻止するのに有効であることが証明されている。さらにホウ酸ナトリウム溶液は、過度に労働集約型および時間集約型でない。なぜならホウ酸ナトリウム溶液は、水溶性であり、切断したばかりの茎をホウ酸ナトリウム溶液に入れると、竹材料の中へ容易に吸い上げられるからである。しかし、前述の点に関しては、水溶性は利点である一方で、竹が水に接触するとホウ酸ナトリウム溶液が竹から出て溶解するという事実があるなど、水溶性はある種の問題も呈している。
【0006】
上記を考えると、有毒または潜在的に有害である化学薬品を使用せずに、昆虫および真菌類の侵襲に対し抵抗力を与える非水溶性殺真菌剤を含む、竹の複合パネルが当技術分野において必要とされる。
【0007】
発明の簡単な概要
本発明は、竹ストランドおよびホウ素化合物殺真菌剤を含有するパネルを包含する。
発明の詳細な記述
本明細書で使用するすべての部分、百分率および割合は、特に明示されない限り、重量で表す。本明細書の中で引用したすべての文献は参照により組み込まれる。
【0008】
本明細書で使用する場合、「リグノセルロース材料」は、リグニンポリマーで一体に結合されたセルロースおよびヘミセルロースの繊維からなる細胞壁を有する、細胞構造体を意味することを意図している。木材はリグノセルロース材料の一種である。
【0009】
「木質複合材」または「木質複合構成材」とは、リグノセルロース材料、および接着剤またはワックスなどの他の添加剤を1種または複数含む複合材料を意味する。木質複合材の非限定的な例は、構造用複合木材(SCL)、ウェハーボード、パーティクルボード、チップボード、中密度ファイバーボード、合板(plywood)、ならびにストランドおよび積層ベニア(ply veneers)の複合材であるボード類を含む。本発明で使用する場合、「薄片」、「ストランド」および「ウェハー」は互いに同等であると考えられ、互換的に使用される。木質複合材の非独占的な記載は、参照により本明細書に組み込まれているSupplement Volume to the Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,pp765−810,6th Editionに見出すことができる。
【0010】
以下は本発明の好ましい実施形態を記述するものであり、竹ストランドおよびホウ素化合物殺真菌剤を含む複合パネルを提供するものである。竹の複合パネルは、殺真菌剤が完全にストランドに浸透するようにブレンドおよび混合の段階(以下でさらに詳細に記載)において、ホウ素化合物殺真菌剤を添加することにより調製する。ホウ酸亜鉛は、白色腐朽菌および褐色腐朽菌のような真菌類ばかりでなく、シロアリなどの昆虫類にも有効であることを示した。さらにホウ酸亜鉛は、非水溶性であり、これは竹が水と接触した時に竹からのブリードアウトがないことを意味するばかりでなく、ホウ酸亜鉛が、非水溶性の殺真菌剤よりもさらに広範囲の樹脂(以下に記載)との相溶性を有することを意味する。
【0011】
本発明で使用するホウ素化合物は、粒子状で30メッシュサイズのスクリーンを通過するだけ小さいものが好ましい。ホウ酸亜鉛は、好ましいホウ素化合物であるが、より一般的な無水ホウ砂化合物もまた適切である。ホウ素化合物は、約0.25重量%〜約1.25重量%の濃度で使用するのが好ましい。
【0012】
他の木質の材料と同様に、竹の主要成分は、リグニンポリマーで一体に結合されたセルロース繊維であるが、竹はその構成細胞の組織および形態において他の木質材料と異なる。全般的に竹のほとんどの強度特性は(引張り強度、曲げ強度および剛性)、竹および竹繊維の長手方向において最大となる。これは、長手方向のセルロース繊維のミクロフィブリル傾角が比較的小さいためである。竹稈そのものの固さは、竹の繊維束の密度およびその分離の様式に依存する。竹稈の長手方向におけるまたは稈断面における繊維の割合は均一でない。長手方向において、繊維密度は、稈の底から上に行くほど増加し、その一方で稈断面における繊維密度は、外側表面に近くなるほど高くなり、該材料の髄へと深く進むにつれて低下する。
【0013】
本発明において、竹ストランドは好ましくは、約0.5cm(0.2インチ)未満、例えば約0.38cm(0.15インチ)未満、例えば約0.03cm(0.01インチ)〜約0.38cm(0.15インチ)の範囲の厚さに切断し、約0.3cm(0.1インチ)を超える、例えば約0.38cm(0.15インチ)を超える、例えば約1.3cm(0.5インチ)を超える幅に切断する。この切断は、手動で、または機械化した切込装置のいずれかで行ってもよい。強度を強める目的で、竹ストランドは、縦軸方向に沿って、好ましくは約5cm(2インチ)、例えば約8cm(3インチ)、例えば約13cm(5インチ)より長いストランドへと切断するべきである。理論によって制限する意図はないが、ディスクストランド配向装置を使用してストランドを配向した場合、ストリップ長が長いほど、ストランドが近接して整列することになると言われている、さらに理論によって制限するわけではないが、ストランドが近接して整列するほど、最終の木質複合ボード製品の縦軸に沿った弾性率が改善すると言われている。
【0014】
切断した後で、竹ストランドを乾燥し(以下の記載通り)、イソシアネート高分子樹脂で塗布する。イソシアネート樹脂バインダーの濃度は、竹の乾燥重量あたり約2重量%〜約12重量%の範囲内である。1種または複数のイソシアネートバインダー樹脂を使用してもよく、好ましくは、イソシアネートは、ジフェニルメタン−p,p’−ジイソシアナート基のポリマーから選択され、これらのポリマーは他の有機基と反応してポリウレア−NCON−、およびポリウレタン−NCOON−などの高分子基を形成することができるNCO−官能基を有し、約50重量%の4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」)を有するか、または他のイソシアネートオリゴマー(「pMDI」)との混合物中のバインダーが好ましい。適切な市販のpMDI製品は、Huntsman、Salt Lake City、UTより入手できるRubinate1840、およびBayer Corporation、North America、of Pittsburgh、PAより入手できるMondur541である。フェノールホルムアルデヒド(「PF」)、メラミンホルムアルデヒド、メラミンウレアホルムアルデヒド(「MUF」)およびこれらのコポリマーもまた使用に適している。適切な市販のMUFバインダーは、Dynea corporation製のLS2358およびLS2250製品である。
【0015】
ワックス添加物は一般的に、竹ストランドの水分の浸透に対する抵抗を高めるために使用する。好ましいワックスは、軟蝋または乳化蝋である。固型ワックスの添加量レベルは好ましくは、約0.1重量%〜約3.0重量%(竹の重量に対し)の範囲である。
【0016】
本発明で使用する場合、竹はストランド複合木材パネル、好ましくはOSBパネルを形成する。このパネルは完全に竹ストランドから作製してもよいし、または代わりに竹ストランドと天然の広葉樹もしくは針葉樹とを、そのような木材が乾燥(含水量が2重量%〜12重量%の間)でしているか、未乾燥(含水量が30重量%〜200重量%の間)であるかに関わらず、単独または組合せて、混合してもよい。通常木材の出発原料は、原木、再生木のいずれでも、所望の寸法および形のストランド、ウェハーまたは薄片に切断するが、こうした操作は当業者に周知である。パネルが、竹ストランドおよび天然の広葉樹または針葉樹の両方の組み合わせからできている場合、木材のその別の2組を個々に乾燥し、ポリマー樹脂バインダーを塗布し、次いで別の塗布段階の後、塗布済みの広葉樹/針葉樹の木材ストランドおよび塗布済みの竹ストランドを一緒に混合する。
【0017】
ストランドを切断した後、それらを乾燥器の中で乾燥し、次いでイソシアネート高分子バインダー樹脂、ワックス、ホウ素化合物殺真菌剤(ホウ酸亜鉛が特に好ましい)、および場合によっては他の添加剤からなる特別な配合物を塗布する。木材に塗布するバインダー樹脂および他の様々な添加剤は、本明細書では被膜剤と称するが、たとえバインダーおよび添加剤が噴霧粒子または固体粒子などの小さな粒子の形態で、木材上に連続した被膜を形成しなくてもよい。従来通り、バインダー、ワックス、殺真菌剤および他の任意の添加剤は、1種または複数の噴霧、ブレンドもしくは混合の技法によって木材に塗布するが、好ましい技法は、ストランドをドラムブレンダー内で回転させながら、木材ストランド上にワックス、樹脂、殺真菌剤および他の任意の添加剤を噴霧することである。
【0018】
所望の被膜剤および処理用化学薬品で塗布および処理した後、これら塗布済みのストランドを使用して多積層マット、好ましくは3積層マットを形成し、次いでこれを圧縮して木質複合構成材を形成する。この積層は以下の方法で実施し得る。塗布済みの薄片を搬送ベルトの上で広げ、搬送ベルトに対して実質的に列をなすようにまたは平行に配向した第1の層または積層を得る。その後第1の層上に第2の層を堆積させ、第2の層の薄片は、実質的には搬送ベルトに対し垂直に配向する。最後に、第1の層と同様に、実質的には搬送ベルトと列をなすように配向した薄片を有する第3の層を、このような方法で形成した層が隣の層と全体的に垂直に配向した薄片を有するように、第2の層上に堆積させる。好ましくはないが、他の方法として、全ての層のストランドをランダムな方向に配向することができる。複数の層または積層を、一般的に知られているマルチパス技法およびストランド配向装置を用いて堆積させることができる。3層または3積層マットの場合、第1および第3の層が表面層であるのに対し、第2の層がコア層である。各表面層は外面を有する。
【0019】
上記の例は、第1の層の薄片を搬送ベルトに対して実質的に垂直に配向し、次いで第2の層を第1の層上に堆積させ、第2の層の薄片が搬送ベルトに対して実質的に平行に配向するように、異なる相対方向において行ってもよい。本発明においては、搬送ベルトに実質的に平行に配向した薄片が、搬送ベルトに対し実質的に平行となるように実質的に配列および配向され、最終の木材パネル製品の長手方向端部に実質的に平行となるように、ボードの長手方向端部が搬送ベルトに対し平行に形成される。最後に、搬送ベルトに対し実質的に垂直に配向した薄片を有する第3の層は、第1の層と同じ様に、第2の層上に堆積させる。
【0020】
上記に考察したように、本発明の重要な部分は、イソシアネートバインダー樹脂を竹ストランドと共に使用することである。しかし、従来の松、アスペンなどの木質ストランドと同様に、木質複合材について汎用する従来の高分子バインダー樹脂を使用してもよい。これら樹脂はウレアホルムアルデヒド、ポリビニルアセテート(「PVA」)、フェノールホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、メラミンウレアホルムアルデヒド(「MUF」)、上記のイソシアネート、およびこれらのコポリマーを含む。
【0021】
上記に考察した方法に従い多積層したマットを形成した後、これらのマットを、ホットプレス機で圧縮し、このホットプレス機で木材、バインダーおよび他の添加物を共に溶融、結合し、様々な厚さおよび寸法の圧縮OSBパネルを形成する。その高温は、バインダー材料を硬化するためにも作用する。好ましくは、本発明のパネルは約175℃〜約240℃の温度で、2〜15分の間加圧する。OSBパネルの厚さは約0.6cm(約1/4インチ)〜約5cm(約2インチ)、約1.25cm〜約6cmなど、約2.8cm〜約3.8cmなどであろう。
【0022】
実施例
ターゲットの厚さが1.91cm(3/4インチ)およびターゲット密度が46pcfであるOSBパネルを、濃度が5重量%(木質薄片の重量に対して)のMondur G541pMDI樹脂、濃度が2.5重量%のワックスを用いて調製し、0.0重量%、0.25重量%、0.5重量%、1重量%、および1.25重量%の濃度(これも木質薄片の重量に対する)でブレンド中にホウ酸亜鉛を添加した。
【0023】
これらのパネルから立方体を切り出し、次いで試験WDMA/NWWDA TM1のテストプロトコルに従い、その耐真菌性を試験した。このテストでは、OSB試料は、真菌の理想的な成長条件下で12日間、褐色腐朽菌(Gloeophyllum trabeum)および白色腐朽菌(Trametes versicolor)に曝した。試験を行う前、これら立方体のいくつかを、Window and Door Standard NWWDA−TM−1(「Soil Block Test」)に従い、「外気に曝し」、一方で別の立方体は外気に曝さなかった。完全にさらしたら、試料を取り出し、計量し、腐敗による重量減の割合を求める。重量減の量を以下の表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1が示すように、腐敗のために損失した竹の量は、本発明に記載の竹パネルにホウ酸亜鉛が含まれている場合に著しく低下する。これは、ホウ酸亜鉛が優れた殺真菌剤の性能を付与したことを示している。
【0026】
当業者であれば、本発明の広い発明概念から逸脱することなく上記実施形態に変更を施すことができることは理解できよう。したがって、本発明は開示した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨と範囲内の修正を網羅することを意図することが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹ストランドおよびホウ素化合物殺真菌剤を含むパネル。
【請求項2】
ホウ素化合物殺真菌剤がホウ酸亜鉛である、請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
ホウ素化合物殺真菌剤が約0.25重量%〜約1.25重量%の濃度範囲で存在する、請求項1に記載のパネル。
【請求項4】
イソシアネートバインダー樹脂をさらに含む、請求項1に記載のパネル。
【請求項5】
ストランドが、約0.5cm(0.2インチ)未満、例えば約0.03cm(0.01インチ)〜約0.38cm(0.15インチ)の厚さを有する、請求項1に記載のパネル。
【請求項6】
ストランドが、約0.3cm(0.1インチ)を超える厚さを有する、請求項1に記載のパネル。
【請求項7】
イソシアネートバインダー樹脂がMDIである、請求項4に記載のパネル。
【請求項8】
竹ストランドと、約0.25重量%〜約1.25重量%のホウ酸亜鉛と、イソシアネートバインダー樹脂とを含むパネル。

【公表番号】特表2009−509807(P2009−509807A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533374(P2008−533374)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/034483
【国際公開番号】WO2007/040887
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(506016369)フーバー・エンジニアード・ウッズ・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】