説明

竹チップをセメントモルタルで固めた成型体およびその製造方法

【課題】
竹チップに変質を防止する処理を加えてセメントモルタルで固めた、適度の透水性と保水性、必要な強度、柔らか味のある風合いなどを生かした舗装体あるいはブロック体およびその製造法を提供する。
【解決手段】
竹チップの変質防止を(1)80℃以上のネップでの加熱、乾燥、(2)スピラエ属の樹木からの抽出液を噴霧またはそこへの浸漬、(3)シリコーン樹脂を含む液を噴霧またはそこへの浸漬、(4)スピラエ属の樹木からの抽出液を噴霧または浸漬、ついでシリコーン樹脂乳化液を噴霧または浸漬のいずれかの方法で行ない、セメントを水で練ったモルタルの重量100に対して、処理された竹チップを重量で6から140の範囲内で加えて混錬して成型、固化して、舗装体やブロック体にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装体あるいはブロック体として用いられる、従来のセメントコンクリートに代わるものであって、適度の透水性と保水性、必要な強度、柔らか味のある風合いなどの特徴をもつ成型体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントに鉱物質の細骨材、粗骨材を加えて混連し、鉄骨と組み合わせた通常のコンクリートは安定した強度を長期間維持できるという特徴を持っているので広く使われている。しかし、透水性が悪く水が溜まりやすいこと、保水性が小さいことから太陽の照り返しが強いこと、また硬い感じを与えることなどの弱点も有している。そこで、強度についての要求がそれほどきびしくない用途には、透水性を改善するためには、骨材として軽石や発泡ガラスなどを用いる方法などが使われているが、鉱物質であるという弱点は解消されていない。それに対して、セメントと、木や竹などの植物質を組み合わせるという方法として、特許文献1には、海藻生育用に竹の節を貫通加工したものをコンクリートに埋め込んだものを用いる方法が示されている。特許文献2には、大小さまざまな竹をセメントで固めて柱や建築用資材にするする方法が示されている。特許文献3には、水浄化、吸水、保水、脱臭用の多孔質竹炭入りコンクリートが示されている。特許文献4には、竹材繊維を圧縮した成型物とセメント系成型物を組み合わせた護岸用ブロック、魚巣用、法面保護用、よう壁用、舗装用、飛び石歩道用物が示されている。また、特許文献5には、軽量で、切断、釘打ち、ビス止めが容易なコンクリートで、土木、建築、外壁化粧板、農地の畦側面保護、公園、街路樹根回りの雑草繁茂防止剤として、植物租繊維粉末(竹もその1つに挙げられている)、ポルトランドセメントおよび無機質混和液(塩化カルシウム、塩化アンモ二にウム、塩化カリウム、酸化鉄などの混合液)で、全体として細かい空隙を含むブロック状に固まったものが示されている。
しかし竹をチップ状や繊維状にすると、季節、放置時間などによって変質しやすく、それが成型体の強度や長期の安定性に悪影響を及ぼすが、いずれもそれへの対応策が明らかにされていない。なお、特許文献6には荷重分散型舗装ブロックが示されている。
【特許文献1】特開2005−88221号公報
【特許文献2】特開2001−104861号公報
【特許文献3】特開2001−32402号公報
【特許文献4】特開2001−123577号公報
【特許文献5】特開2003−104768号公報
【特許文献6】特願2005−352382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、チップした竹にその繊維質の変質を防止する方策を加えることによって従来法の問題点を解決し、従来のセメントコンクリートに代わって、適度の透水性と保水性、必要な強度、柔らか味のある風合いなどを生かした舗装体あるいはブロック材として用途に用いることのできる成型体およびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するための手段の第1は、次ぎの工程により竹チップをセメントモルタルで固めた成型体を得ることである。
(1)竹をチップ化する第1工程
(2)チップ化した竹を80℃以上の熱風で加熱、乾燥する第2工程
(3)セメントを水で練ったモルタルの重量100に対して、上記第2工程で処理された竹チップを重量で6から140の範囲内で添加し、混錬して成型、固化する第3工程
【0005】
手段の第2は、0004の(2)の代わりに、下記の(2−2)を行うことである。
(2−2)チップ化した竹にスピラエ属の樹木からの抽出液を噴霧するか、またはチップ化した竹をスピラエ属の樹木からの抽出液に浸漬する第2工程。
【0006】
手段の第3は、0004の(2)の代わりに、下記の(2−3)を行うことである。
(2−3)チップ化した竹にシリコーン樹脂を含む液を噴霧するか、またはチップ化した竹をその液に浸漬するかの処理を行う第2工程。
【0007】
手段の第4は、0005の(2−2)と(3)の間に、下記の(2−4)を加えて行うことである。
(2−4)チップ化され、スピラエ属の樹木から抽出液で処理された竹チップにシリコーン樹脂を含む液を噴霧するか、またはその竹チップをシリコーン樹脂を含む液に浸漬するかの処理を行う工程
【0008】
手段の第5は、0004〜0007の方法で作られたものがブロック体であることである。
【0009】
手段の第6は、0004〜0007の方法で作られたものが舗装体であることである。
【発明の効果】
【0010】
これらの手段により、セメントモルタルと竹チップを組み合わせる場合の問題点である竹チップの腐敗、変質などの問題を解決して、適度の透水性と保水性、必要な強度、柔らか味のある風合いなどを生かした用途に適合する成型体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
山林などから切り出した竹の枝を払って得られた幹の部分を、取り扱いやすいように50cm〜2mのサイズに切断したものを、チョッパー(チップ機)にかけて、最大長さ100mm程度、最小長さ1mm以下程度、平均長さ15〜30mm程度のチップを製造する。このチップには繊維状のもの、粉状のものなども含まれているが、これを併せて竹チップという表現をする。このチップをその状態で袋などに詰めて輸送すると、季節によっては輸送中、あるいはセメントモルタルとの混錬の前に、付着した菌や微生物の作用で腐敗や変質が進行する。腐敗や変質が進んだ竹チップをセメントモルタルと混錬して固化させても十分な強度が得られず、また、成型体の表面に現れた竹の繊維がささくれ立ちやすく、使用時にもそれによる問題を生じやすいという問題がある。
【0012】
本発明の処理工程を図1に示す。チップ化した後の竹の腐敗や変質防止のための方法の第1は、80℃以上の熱風を吹き付けて水分含有量を20重量%以下にまで下げて袋などに入れて輸送や保管を行ってからセメントモルタルと混錬することである。これによって、すでに付着していた菌、微生物類を死滅させ、また、新たな菌、微生物の侵入、付着を抑制できる。ただし、この方法では、菌、微生物の耐熱性の程度や、密封までの作業のばらつき、密封の程度などによっては、腐敗、変質が進行するおそれは残されている。
【0013】
チップ化された竹の腐敗、変質防止のための方法の第2は、竹材に特定の植物から抽出された液を付着させることである。各種の樹木などの植物は、害虫や腐敗菌、微生物などから身を守るために、害虫、菌、微生物が忌避する成分を放出している。多くの植物がこの機能を有しているが、とくに強い機能を持っているのがスピラエ属の樹木である。その代表的なものが雪柳である。これからの抽出物を含む液を生ごみなどに散布しておくと、腐敗菌などを忌避するので悪臭を発生しにくいこと、また蝿や蚊などの害虫に対しても忌避作用があること知られている(特開2006−193500号公報)が、本発明が対象とするチップ化された竹に対しても腐敗、変質防止の効果があることがわかった。スピラエ属の樹木からこの機能を持つものを抽出するには、春から夏の時期に葉や枝を採取して必要により粉砕し、たとえば、それに水を加えておけばよい。雪柳の場合には、初夏、花が咲き終わって葉が出た頃、枝ごと採取して粉砕し水に浸漬させておく。本発明の目的には、たとえば樹木の粉砕したもの1kgに対して、水を10kgの割合で加えて抽出させた液を用いることができる。このようにして得られた抽出液を竹チップに加えるための第1の方法は、チップ化された竹に噴霧することである。噴霧と攪拌を繰り返すことによって、チップ化された竹の表面に抽出液を付着させることができる。なお、この場合に竹チップは事前に乾燥をしておく必要はない。第2の方法は、竹チップを液に浸漬してから引き上げることである。これらの方法で、抽出物を含む液の添加量は、竹チップの重量100に対して、0.2以上、望ましくは0.5以上である。このような処理を行った竹チップはビニール製などの袋に入れておくと、抽出物を含む液から蒸発した忌避機能を持つ成分によって、竹チップの腐敗、変質を起こす菌や微生物の侵入を確実に防止し、また、竹チップにすでに付着していたものに対してもその活動を抑制する機能をする。
【0014】
チップ化後の竹の腐敗、変質防止のための方法の第3は、シリコーン樹脂を含む液で処理することである。シリコーン樹脂は、オルガノクロロシラン類を加水分解し重合して得られる三次元網目構造を有するポリマーであり、一般式としてRSiO4−nと表すことができる。通常、RSiO1/2単位、SiO単位、RSiO単位、およびRSiO3/2単位から選択される単位の組み合わせからなるものであることが好ましい。なお、ここでRとしては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロへキシル基などのシクロアルキル基、またはフェニル基などから選択される1種または2種以上の炭素数1〜6の1価炭化水素基を挙げることができる。制限はされないが、全体の80%モル以上がメチル基であるシリコーン樹脂を好適に用いることができる。シリコーン樹脂には、通常オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、エマルジョン型、自己乳化型などがある。制限されないが、本発明で用いられるシリコーン樹脂は、好ましくは水と併用することができるエマルジョン型(O/W型エマルジョン)および自己乳化型である。特に好ましくはエマルジョン型であり、中でも架橋反応により硬化し、シリコーン皮膜を形成する反応性のエマルジョン型シリコーン樹脂が好適に使用できる。ここで反応性のシリコーン樹脂(エマルジョン型)は、シリコーン樹脂のベースポリマーおよび架橋ポリマーに触媒や乳化剤を加え、上記ポリマーを水に乳化分散させたものである。当該乳化液の中でベースポリマーと架橋ポリマーはそれぞれマイクロカプセルの状態で存在しており、竹チップに対して良好な濡れ性を発揮して浸潤するが、水が蒸散してマイクロカプセルが壊れると、架橋反応が生じて硬化が進行して繊維表面に皮膜が形成される。商業的に入手できる反応性のシリコーン樹脂(エマルジョン型)としては、制限されないが、信越化学工業株式会社のPolonMF−20(商品名)、PolonMF−23(商品名)、polonMF−56(商品名)、polonMK-206(商品名)、PolonMWS(商品名)、KM2002T(商品名)、およびKM2002L−1(商品名)などを例示することができる。シリコーン樹脂を含む液、すなわち乳化液は、竹チップをぬらし、竹の腐敗、変質などに関連する菌、微生物の侵入を阻止し、さらに、すでに存在しているものに対してはその活動を抑制するという機能をする。また水が蒸散して乾燥すると、上記するようにマイクロカプセルが壊れること等によって架橋反応が生じて硬化し、竹チップの繊維をシリコーン樹脂内に安定して包み込み保持することができる。
これによって、固まったセメントモルタル内でも、竹チップが長期間にわたって安定し、また、シリコーン樹脂は他の樹脂類と異なって紫外線による劣化を起こさないので、成型物の表面に出た部分もささくれ立ちなどを抑制する。このような機能を発揮するシリコーン樹脂乳化液としては、上記のシリコーン樹脂、好ましくはエマルジョン型のシリコーン樹脂、より好ましくは反応性のエマルジョン型のシリコーン樹脂の単独で使用することもできるが、必要に応じて、当該シリコーン樹脂に、(a)水、(b)粘度調整剤、(c)着色剤より選択される成分を1種または2種以上組み合わせて配合したものを使用することもできる。このようにして得られた液を竹チップに加えるための第1の方法は、チップ化された竹にこの乳化液を噴霧することである。噴霧と攪拌を繰り返すことによって、チップ化された竹の表面に抽出液を付着させることができる。なお、この場合に竹チップは事前に乾燥をしておく必要はない。第2の方法は、竹チップを乳化液に浸漬して引き上げることである。これらの方法でのシリコーン樹脂を含む液の必要添加量は、竹チップの重量100に対して、0.5以上、望ましくは5以上である。このような処理を行った竹チップは24時間以上自然乾燥して、ビニール製などの袋に入れて輸送あるいは保管を行う。
【0015】
チップ化された竹の変質防止のための方法の第4は、0013で述べたスピラエ属の樹木からの抽出物を含む液で処理した後、引き続いて、0014で述べたシリコーン樹脂を含む液での処理を行うことである。これによって、竹チップに付着・浸透したスピラエ属植物の抽出物の持つ忌避作用が、シリコーン樹脂皮膜形成による蒸発抑制効果によって長続きする効果が加わる。また、0014で述べたシリコーン樹脂による竹繊維のささくれ立ち防止の効果などは継承される。
【0016】
0012、0013、0014あるいは0015に述べた方法で処理された竹チップは、セメントと水を混ぜて作られたセメントモルタルと混錬される。セメントと水の配合はセメント重量100に対し、水の重量は20〜100範囲であれば問題はない。竹チップとセメントモルタルの配合は、嵩でいえば、竹チップ/セメントモルタル=
50/50〜95/5の範囲内が適正であるが、重量でいえば、セメントモルタルの重量100に対して、処理された竹チップの添加量を重量で6から140の範囲内になる。この値が6以下の場合には、本発明が目的とする透水性、保水性、柔らかみのある風合いが満足できない。一方、140以上では、成型物の強度が低下し、成型物の寿命が短くなる。特に好ましくは、上記の数字が30〜120の範囲内である。
【0017】
0016の竹チップとセメントモルタルの混錬物で駐車場や歩道などの舗装体を作ることができる。重量物の車輛が通過するところは、加われる強度が大きいので耐用年数の点から本発明の方法は適さない場合もあるが、竹チップの配合率を、0016で述べた範囲内で、強度要求に応じて選定することによって重量車の通行頻度が多くない場合には対応することもできる。必要に応じて鉄筋を用いることもできる。駐車場の場合に、大型車輛が入らないものに使用するのに適しているが、大型の駐車場でも、主として小型車輌が通過、停車する場所に適用するのに適している。竹チップとセメントモルタルを混鎌後、それをプレーナーで表面を押えて平らにし、表面を鏝で処理して平滑度を高める。
【0018】
舗装体などのように成型物の使用現場で、竹チップとセメントモルタルの混錬物を打設し固める方法のほかに、コンクリート工場で型枠に打設してブロック化することもできる。これによって、レンガ状、あるいはその他の形状の成型物を安定して作ることができる。
【0019】
ブロックとして、たとえば歩道用敷石として用いられる場合には、ブロックを敷設した後、歩きやすく、また、その寿命を長くすることが望まれる。とくに山道などの歩きにくい所の一部に本発明のブロックを埋め込んで用いる場合には、強度が安定しない地盤の上にブロックを敷くことになり、個々のブロックにかかる力の違いによって、ブロックの沈み込みや傾斜が生じやすい。それを防止するために、ブロックの形状は次のようにすることが望ましい。図2は、敷設状態を想定しておいたブロックの縦断面の1例を示す。この例で示されるように、長辺側縦断面あるいは/および短辺側縦断面において、(1)中心点(A)に関して点対象の形状とする、(2)上面の隅の点(B)と、同じ側の下面の隅の点(C)を直線で結ぶと、その線が垂直線となす角度(D)が20度以上、45度以下となるようにする、(3)4つの隅部において、2辺あるいはその部分の辺に対する接線がなす角度(E,F)が80度以上、100度以下とする。これらの条件を満足していると、敷設の状態でこのブロックの1つに上から力がかかった時に、その力が隣りのブロックにもかかるようになっており、その力の分散によって不安定な地盤に置いてもその上を歩く人の重量によって個々のブロックが沈み込んだり傾いたりすることが防止できる。上記の縦断面の形状の条件はこのための重なりの必要条件と、一方、それによって各ブロックの一部が薄くなることによる強度低下を許容限度内に押えるための条件を両立させるために決められたものである。なお、このブロックが横方向に1列に敷設される場合には、上記の条件を満足するのは2つの縦断面のうちの1つでよい。一方、ブロックを縦および横に複数並べて平面を形成する場合には、2つの縦断面が上記の条件を満足するようにする。なお、敷設端部の処理方法については、必要により、上記の2種のブロックを2つに切断したもの、あるいは2つに切断したものと同じ形状のブロックを作ったものを用いることによって対応できる。
【実施例1】
【0020】
竹を3月に伐採して枝を除き、茎部を1〜2mに切って、チョッパー(チップ機;小松製作所製)にかけて、長さが15〜30mmのものが約85重量%を占めるチップを得た。これを、約100℃の熱風で加熱、乾燥を行ない、水分を約15%までさげた。これを袋に入れて搬送し、10日後にセメントモルタルと混錬して駐車場の舗装を行った。セメントモルタルはポルトランドセメント重量;水の重量=100;45で混ぜて作り、これを用いてセメントモルタル重量;竹チップ重量=100;15(Aゾーン用)、100:40(Bゾーン用)、100:120(Cゾーン用)の3条件で混錬物を作った。これを用いて、小型車用駐車場で、2m×4mの3つのゾーン(A、B、C)の舗装を行った。そして、2年間、駐車場として使用しながら状況の観察を行った。水はけのよさ、日光の照る返しの軽減、柔らかな風合いなどの長所は、Cゾーンが最も顕著に認められ、次にBゾーン、そしてAゾーンの順であった。なお、破損などのトラブルはいずれの場合にも認められなかった。
【実施例2】
【0021】
竹を6月に伐採し枝を除き、茎部を1〜2mに切って、チョッパー(チップ機;小松製作所製)にかけて、長さが15〜30mmのものが約85重量%を占めるチップを得た。これを雪柳の抽出液で処理した。雪柳の抽出液は次ぎのようにして製造されたものである。雪柳を1年前の6月に枝ごと採取し、これを粉砕機にかけて粉砕し、粉砕物1kgに対して、水を10kgの割合で加えて2ヶ月放置して、固形物を漉して得られたものである。竹チップをかき混ぜながら、この抽出液を噴霧した。噴霧した液の重量は、竹チップ重量100に対して、0.3であった。処理後の竹チップをビニール袋に密封したが、袋の膨張はおこらず、腐敗のような発酵が防止されていたことが伺えた。このビニール袋に詰めた状態で搬送して、14日後、セメントモルタルと混連して駐車場の舗装に用いた。セメントモルタルはポルトランドセメント重量;水の重量=100;50で混ぜて作り、これを用いてセメントモルタル重量;竹チップ重量=100;30(Dゾーン用)、100:120(Eゾーン用の2条件で混錬物を作った。なお、混錬前の竹チップにぬめりは発生していなかった。混錬物を用いて、Eゾーン(小型車専用域)、Dゾーン(大型車も通過する可能性のある場所)の舗装を行った。2年間の観察結果は、水はけのよさ、日光の照る返しの軽減、柔らかな風合いなどの長所は、Eゾーン、Dゾーンの順であった。なお、破損などのトラブルはいずれの場合にも認められなかった。
【実施例3】
【0022】
実施例1で述べたのと同じ条件で得られた竹チップを、シリコーン樹脂を含む液で処理した。シリコーン樹脂を含む液は、信越化学製Polon MF−56(シリコーン樹脂を含有する乳化液)に、同量の水を加えて、その液中に竹チップを浸漬して引き上げて2日間、室内で乾燥した。シリコーン樹脂を含む液の消費量は、処理した竹チップ重量100に対して、約5.5であった。この竹チップを袋に入れて搬送し、15日後に、実施例1で述べたのとの同じ条件でセメントモルタルとの混連と駐車場の舗装を行って、2年間の観察を行ない、実施例1で述べたのとほぼ同じ結果が得られた。とくに、舗装体表面に現れた竹チップにささくれ立ちが全く認められなかったが特徴的であった。
【実施例4】
【0023】
実施例1と同じ条件で、竹の採取、チップ化、ついで雪柳からの抽出液で処理したものを、引き続いてシリコーン樹脂を含む液での処理を行った。シリコーン樹脂を含む液は、信越化学製PolonMF−56(シリコーン樹脂成分を含有する乳化液)に、同量の水を加えたもので、その液中に竹チップを浸漬して引き上げて2日間、室内で乾燥した。シリコーン樹脂を含む液の消費量は、処理した竹チップ重量100に対して、約5.5であった。処理後の竹チップをビニール袋に密封したが、袋の膨張はおこらず、腐敗のような発酵が防止されていたことが伺えた。このビニール袋に詰めた状態で搬送して、30日後、セメントモルタルと混連して駐車場の舗装に用いた。セメントモルタルはポルトランドセメント重量;水の重量=100;60で混ぜて作り、これを用いてセメントモルタル重量;竹チップ重量=100;20(Fゾーン用)、100:110(Gゾーン用)の2条件で混錬物を作った。混錬物を用いて、Gゾーン(小型車専用域)、Fゾーン(大型車も通過する可能性のある場所)の舗装を行った。2年間の観察結果は、水はけのよさ、日光の照る返しの軽減、柔らかな風合いなどの長所は、Gゾーン、Fゾーンの順であった。なお、破損などのトラブルはいずれの場合にも認められなかった。とくに、舗装体の表面に現れた竹チップにささくれ立ちが認められないのが特徴であった。
【実施例5】
【0024】
竹を7月に伐採し枝を除き、茎部を1〜2mに切って、チョッパーにかけて、長さが15〜30mmのものが約85重量%を占めるチップを得た。これを雪柳の抽出液で処理した。雪柳の抽出液は実施例2で述べて方法で得られたのである。竹チップをかき混ぜながら、この抽出液を噴霧した。噴霧した液の重量は、竹チップ重量100に対して、0.2であった。処理後の竹チップをビニール袋に密封した。これをコンクリートブロック製造工場に運んで、短辺側縦断面だけを図2に示したような形状(角度Dは30度、角度E、Fは90度)で、他の長辺側縦断面は長方形のブロックの製造を行った。ブロックの製造条件は次ぎの通りである。セメントモルタルの製造、ポルトランドセメント重量;水の重量=100;80で混合、セメントモルタル重量;竹チップ重量=100;100で混錬。型に打設を蒸気で固化促進。得られたブロックは、山中の遊歩道の傾斜部分に階段状のものを形成するのに、横方向に傾斜部が重なるように3つ並べて用いた。両端部は、このブロックを2つに割ったものを用いて垂直面を形成した。施工後、2年間の状況は、ブロックの破損や傾きがおこらず、歩きやすい状況に変化は認められなかった。
【実施例6】
【0025】
セメントモルタルとの混錬物をつくるまでは、0024で述べたのと同じである。これをコンクリートブロック製造工場に運んで、短辺側、長辺側縦断面の2つとも図2に示すような形状のブロックの製造を行った。(短辺側および長辺側縦断面とも角度Dは30度、角度E、Fは90度)。ブロックの製造条件は次ぎの通りである。セメントモルタルの製造、ポルトランドセメント重量;水の重量=100;60で混合、セメントモルタル重量;竹チップ重量=100;100で混錬、型に打設を蒸気で固化促進し、得られたブロックは、水平面状の歩道に用いた。1つのブロックが周辺の4つのブロックと重なりあう部分を持つように平面状に並べてセメントモルタルで固定した。施工後、2年間の状況は、ブロックの破損や傾きがおこらず、歩きやすい状況に変化は認められなかった
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の方法は、竹以外の植物のチップあるいは繊維質を利用する場合にも適用することができる。また、竹チップをセメントモルタルとの組合せで用いる場合以外に、竹チップや竹繊維の腐敗や変質を防止するのに用いることができる。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のプロセスフローを示す。
【図2】本発明によって作られるブロックの形状について縦断面の1例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次ぎの工程からなることを特徴とする、竹チップをセメントモルタルで固めた成型体の製造方法。
(1)竹をチップ化する第1工程
(2)チップ化した竹を80℃以上の熱風で加熱、乾燥する第2工程
(3)セメントを水で練ったモルタルの重量100に対して、上記第2工程で処理された竹チップを重量で6から140の範囲内で添加し、混錬して成型、固化する第3工程
【請求項2】
請求項1において(2)の代わりに、下記の(2−2)を行うことを特徴とする、竹チップをセメントモルタルで固めた成型体の製造方法。
(2−2)チップ化した竹にスピラエ属の樹木からの抽出液を噴霧するか、またはチップ化した竹をスピラエ属の樹木からの抽出液に浸漬する第2工程
【請求項3】
請求項1において(2)の代わりに、下記に(2−3)を行うことを特徴とする、竹チップをセメントモルタルで固めた成型体の製造方法。
(2−3)チップ化した竹にシリコーン樹脂を含有する液を噴霧するか、またはチップ化した竹をその液に浸漬する処理を行う第2工程
【請求項4】
請求項2において、(2−2)と(3)の間に、下記の(2−4)を行うことを特徴とする、竹チップをセメントモルタルで固めた成型体の製造方法。
(2−4)チップ化され、スピラエ属の樹木から抽出液で処理された竹チップにシリコーン樹脂を含む液を噴霧するか、またはその竹チップをシリコーン樹脂を含む液に浸漬する処理を行う工程
【請求項5】
請求項1、2、3あるいは4の方法で製造された、ブロック体であることを特徴とす
る、竹チップをセメントモルタルで固めた成型体。
【請求項6】
請求項1、2、3あるいは4の方法で製造された、舗装体であることを特徴とする竹チップをセメントモルタルで固めた成型体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−67665(P2009−67665A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241039(P2007−241039)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(307034911)大国竹取物語株式会社 (1)
【Fターム(参考)】